■( ´_ゝ`)どうあがいても絶望のようです(´<_` )
└最終話
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485 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:07:58 ID:CynjgAA60
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『しかし、君、誤解してはいけない。
僕は決して、絶望の末の虚無みたいなものになっているわけではない。
船の出帆は、それはどんな性質な出帆であっても、必ず何かしらの幽かな期待を感じさせるものだ。
それは大昔から変りのない人間性の一つだ。
君はギリシャ神話のパンドラの匣という物語をご存じだろう。
あけてはならぬ匣をあけたばかりに、病苦、悲哀、嫉妬、貪慾、猜疑、陰険、飢餓、憎悪など、
あらゆる不吉の虫が這い出し、空を覆ってぶんぶん飛び廻り、それ以来、人間は永遠に不幸に悶えなければならなくなったが、
しかし、その匣の隅に、けし粒ほどの小さい光る石が残っていて、その石に幽かに「希望」という字が書かれていたという話。』
《太宰治 『パンドラの匣』》
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487 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:09:57 ID:CynjgAA60
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――――なるほどな。
つまりハイゼンベルクの『不確定性原理』によって
『ラプラスの魔』の存在は完全に否定されてしまった訳だな?
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) そういうことだな。
( ´_ゝ) / ⌒i この世界の支配者が力学的ベクトルに規定される決定論から
/ \ | | 『確率』、すなわち『可能性』に変わった瞬間、と言ってもいい。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
\/____/ (u ⊃
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488 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:11:37 ID:CynjgAA60
-
ふむ。
要するに20世紀初頭の種々の科学的発見はミクロとマクロ双方から起こった
17世紀科学革命以来のパラダイム・シフトであったと。
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) ああ、つまりアインシュタインの相対性理論と
( ´_ゝ`) / ⌒i 量子論から成る新しい物理学がだな……っ。
/ \ | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
\/____/ (u ⊃
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489 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:12:51 ID:CynjgAA60
-
……? どうした弟者?
∧_∧
∧_∧ ( <_ ) ……………。
( ´_ゝ) / ⌒i
/ \ | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
\/____/ (u ⊃
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491 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:14:11 ID:CynjgAA60
-
お、おい? 弟者! 弟者!!
∧
∧_∧ (:::::::::::・*:.。. .。.:*・゚゚・*:
( ; ´_ゝ) /:::::::::::::::i
/ \ :::::::::::::|::::|
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/::::|
__(__ニつ/ FMV /:::|:::|____
\/ / (u ⊃
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492 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:16:00 ID:CynjgAA60
-
――――弟者……ッ!!
ll∧_∧ll ガバッ
ll( ; ゚_ゝ゚)そ
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
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493 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:16:55 ID:CynjgAA60
-
おと……。
∧_∧ ゼェ、ゼェ...
(; ´_ゝ`)o。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
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494 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:18:23 ID:CynjgAA60
-
…………夢、か……。
∧_∧
(; ´_ゝ`)o。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
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495 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:20:01 ID:CynjgAA60
-
…………そうか。そうだよな。
は、はは……馬鹿みたいだよな、俺。
弟者がいるわけないじゃないか。
∧_∧
( _ゝ )
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
-
496 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:21:50 ID:CynjgAA60
-
だって、弟者は…………。
∧_∧
( _ゝ )
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
-
497 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:23:12 ID:CynjgAA60
-
…………もう、死んだんだから。
.
-
500 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:25:44 ID:CynjgAA60
-
∧_∧
( ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
弟者が死んでから、もう一ヶ月ほどが経つ。
だけど俺は、そのショックからまったく抜け出せずにいた。
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502 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:27:46 ID:CynjgAA60
-
弟者が死んだのは、妹者の手料理を食べたあの夜だった。
別に、妹者の手料理で死んだわけじゃない。
あの夜、料理を食べて泡吹きながらひっくり返った弟者は、妹者があわてて呼んだ救急車で病院に搬送されていった。
顔色はガミラス星人顔負けの尋常でない色になってはいるものの特に後遺症の心配などがあるわけでもなかったらしい。
数日安静にしていれば全快すると車内の救急隊員の人から十数分後に連絡があったそうだ。
ひとまず胸をなでおろした妹者は、弟者曰く『自室で疲れて眠りこけて』いたらしい俺を起こしにいった。
弟者の乗った救急車が搬送先の病院まであと数百メートルというところの交差点で
大型トラックに追突されたのは、その少し後のことだった。
『流石弟者さんの乗った救急車が、交通事故に巻き込まれました。
ご家族様はすぐにVIP大学付属病院救急医療センターまで来てください』
( ´_ゝ`)】「…………えっ?」
妹者に叩き起こされた俺がその事故の一報を受けたのは、
妹者から弟者が病院に搬送された旨を聞いて病院までの交通手段を調べているときだった。
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503 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:29:24 ID:CynjgAA60
-
頭がまっ白になった。
月並みな表現だが、本当にそうとしか言えない。
膝が笑い、手先が震え、まともな論理的思考能力が丸ごと吹き飛んだ。
それでも、体だけは迅速に行動した。
それは思考というよりも、ほとんど本能といったほうが近いかもしれない。
財布と携帯をポケットにねじ込むと、妹者の手をつかんで家を飛び出した。
大通りを走るタクシーを捕まえて、目的地だけを告げるとすぐさま車内から家族に携帯で連絡を入れた。
病院までは車で30分ほど。
永遠のように長かった気もするが、一瞬にも満たないほどの時間だった気もする。
妹者は今なにが起きているのかもよく理解できていなかっただろう。
ただ、いま進んでいる事態が好ましい出来事とは限りなく遠いのであろうことは肌で感じていたようだった。
l从・−・;ノ!リ人「…………」
隣に座るまだ幼い俺達の妹は、ぎゅっと口を一文字に結び、今にもこぼれそうな涙を必死でこらえていた。
病院の正面玄関前の車回しに到着する。
タクシーの運転手に押しつけるように数枚の紙幣を渡し、釣り銭は要らない旨を告げ、正面玄関から受付窓口横のロビーに飛び込んだ。
-
505 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:31:15 ID:CynjgAA60
-
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)
∬´_ゝ`)
ほとんど人のいない薄暗いロビーの隅。
避難誘導灯の光だけがやたらと眩しい、窓と観葉植物に挟まれた一角に父者と姉者はいた。
( ・∀・)
二人は白衣を着た医師らしき人物と話をしていた。
どうやら母者はまだ着いていないらしい。
医師の表情は暗かった。
そのことが、喉に詰まるような不安感をさらに駆り立てる。
(;´_ゝ`)「おと……ッ!! ……弟者は!!?」
荒い呼吸とまとまらない思考をなんとか落ち着かせようと努力しながら、必死で言葉を出力した。
-
506 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:33:03 ID:CynjgAA60
-
俺の言葉に中年二歩手前くらいのまだ若い医師はこちらに首を向けると、
悪事のばれた子供のような、ばつの悪そうな表情を作った。
( ・∀・)「……まだ、お母様は到着していないようですが。――先に、お会いになりますか?」
意味がわからなかった。
『先に』? 『お会いに』?
何故母者がいないとまずいのか?
いや、そもそも。なんで照明の消えたロビーの端っこの一角なんかで彼らは話している?
ドラマなんかでの知識しかないが、こういうのは治療が行われている治療室かなにかの前で話をするものじゃないのか?
それとも事故に巻き込まれたと言ってもほんのかすり傷程度の軽いケガで、ほとんど治療の必要がないとか?
だが、それならまず本人の病室とかに行くはずでは?
入院生活で退屈を持て余している中でのサプライズお見舞いじゃあるまいに、わざわざ母者の到着を待つ理由は?
( _ゝ )「……どこだ」
気が付けば俺は、その医師の襟元を掴んでいた。
(#´_ゝ`)「弟者はどこだっ!!」
-
508 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:35:16 ID:CynjgAA60
-
案内されたのは、ロビーからしばらく廊下を歩いた先の、どん詰まりになっている最奥の部屋だった。
重苦しい金属製のドアに『処置室』とだけ書かれた簡素なプラスチックのプレートが付けられていた。
ドアを開けて蛍光灯の白っぽい光で照らされた部屋に入ると、まず薄緑色をしたカーテンの仕切りがあった。
カーテンの右手にはスチール製の小さな机。その上には弟者が使っていたお気に入りの鞄が置かれていた。
鞄の隅には、わずかに赤黒い何かが付着していた。
(;´_ゝ`)「…………」
震える脚で、ゆっくりと仕切りの奥へと進む。
そこにあったのは病室に普通にあるようなパイプのベッドではなかった。オフィステーブルにも似た、単なるキャスター付きの台だった。
そして、その台の上には。
厚手のビニールか合成ゴムで出来た、黒い『袋』。
(; _ゝ )「……嘘……だよな?」
その『袋』を目にした瞬間。
呼吸が、時間が、世界の全てが止まった気がした。
.
-
509 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:37:20 ID:CynjgAA60
-
後ろから父者たちが入ってくる音がした。
『袋』を目にし、ひっ、と怯えるように息を呑んだのは姉者だろうか。
やや遅れて、一緒にさっきの医者もやってきたらしい。
( ・∀・)「……流石、弟者さんです」
沈痛そうな口ぶりで、この『袋』の『中身』を告げた。
俺も、父者も、誰も返答の言葉を発することが出来なかった。
姉者と妹者はただしゃくり上げるような嗚咽だけを漏らしていた。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「……弟者の顔は、見られないのですか?」
しばらくの沈黙の後、そう尋ねたのは父者だった。
普段家族からさんざん「威厳がない」だの「頼りない」だの言われている人物だとは思えない、冷静な口調だった。
-
510 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:39:03 ID:CynjgAA60
-
( ・∀・)「……正直に申し上げて、ご遺体の損傷度合からお勧めは出来かねます」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「絶対に不可能なのですか」
( ・∀・)「それをご承知の上で、ご遺族が希望なされば」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「……そうですか。……姉者。妹者を連れて外に出てなさい。兄者、お前はどうする」
( _ゝ )「俺は……」
( ´_ゝ`)「……ここにいるよ」
∬´_ゝ`)「……わかったわ。じゃあ妹者、行きましょ。こっちよ」
l从 ∀ ノ!リ人「あにじゃ……」
そんな呟きだけを残し、妹者は姉者に手を引かれて部屋を出ていった。
-
511 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:41:20 ID:CynjgAA60
-
ドアがしっかり閉められたのを確認すると、白衣を着た医師はこちらに向き直った。
( ・∀・)「もう一度確認しますが、ご遺体の損傷はかなり激しいです。それでも、ご覧になるのですね」
丁寧な口調ながらも、やや語気を強めて尋ねる。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「はい」
( ´_ゝ`)「……あぁ」
( ・∀・)「……わかりました」
俺たちの言葉に浅く頷くと、医師は『袋』の上部についていたファスナーをゆっくり数十センチ引き下げた。
彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「…………ッ!!」
父者の顔が引きつる。
袋の口が開いたその瞬間、むわっと、むせ返るほどの血のにおいがした。
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512 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:43:08 ID:CynjgAA60
-
( <_ )
弟者の頭から胴体にかけてくらいが露わになる。
それは、俺の知ってる弟の姿をしてはいなかった。
そいつには、左肩から先の腕がまるごと無かった。消えた部分には鎖骨らしきぬらぬらした白い棒が飛び出していた。
そいつの右まぶたはへこんでいた。まるで、その内側に収まってべき球体がどこかへ飛び出していってしまったように。
そいつは、かじられたリンゴかなにかのように、頭の一部が欠けていた。
この灰色のブヨブヨしたなにかは、かつてそいつの思考や記憶を司っていた部位ではないだろうか。
-
513 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:45:40 ID:CynjgAA60
-
(; _ゝ )「あ、あ、ああぁあぁっぁぁああぁ、」
いま自分がどんな表情をしているのかわからない。
(; _ゝ )「あああ、ぁああぁぁああああああああ」
いま自分の躰がどんな状態になっているのかわからない。
わからない。わからない。わからない。わから
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
そこで、俺の意識は途切れた。
-
515 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:47:04 ID:CynjgAA60
-
そこからの記憶は曖昧にしか残っていない。
目を覚ましたときには俺はロビーの長椅子に寝かされてて、そばには姉者と妹者がいた。
父者もさっきまでいたのだが、先程ようやく母者が着いたので一緒に弟者の所に行っているとのことだった。
少ししてロビーに戻ってきた母者は、いつもとあまり変わらない表情に見えた。
ただ一点。目の端から頬にかけてなにかの跡が伝い、非常口の鈍い光を淡く照り返していた以外は。
-
516 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:49:04 ID:CynjgAA60
-
弟者の通夜と葬式はそれから数日経って行われた。
俺や弟者の友人たちなどたくさんの人が訪れ、各々が弟者の冥福を祈ってくれた。
从 ゚∀从「あ……兄者。この度は……その……俺も、残念だよ」
_
( ゚∀゚)「……おう、兄者。気にするな、って言っても無理だろうが……まぁ、なにかあったら俺たちにもいつでも言ってくれ。出来る限りのことはするからよ」
その中には泣きすらせずただ下を向いて俯くだけの俺に声をかけてくれた人もいた。
そんな彼ら彼女らに俺がなんと言って返したのか、ほとんど覚えていないが、
从 -从、
彼らと別れるときの表情を見た限り、あまり気の利いた言葉を返すことは出来なかったらしい。
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517 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:51:06 ID:CynjgAA60
-
葬式までが終わり、火葬場へと移動することになった。
家族や親戚の立ち会いのもと、単調な機械音とともに台車に乗せられた木製の棺が炉の中に収められていく。
姉者や妹者の泣く声だけが機械音に混じって部屋に響いていた。
焼却が終わるまでの間は待合室で待つように言われた。
しばらくは待合室の長椅子に座っていたが、どうも落ち着かなかった。
今この瞬間、自分の双子の弟が炎に包まれている。そう考えると心臓がしぼられるように痛んだ。
-
518 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:53:00 ID:CynjgAA60
-
気分転換に建物の外へ出た。
雲ひとつ無い、晴れやかな青空が頭上いっぱいに広がっていた。
その青い空に突き出た薄汚れた火葬場の煙突から、わずかに揺らめく白い煙が一筋昇っていた。
( ´_ゝ`)「あぁ、あれが……弟者なのか」
煙突の先から出た煙は、ゆっくり空へと昇りながら大気と混じり、陽炎のように消えていく。
それは、弟者がかたちを無くして空と大地に還っていくようにも見えた。
( _ゝ )「なぁ、弟者。なんで……」
( ;_ゝ;)「なんで、俺を置いていっちまったんだ?」
そのとき。
あの夜以降、俺ははじめて涙を流した。
.
-
519 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:55:02 ID:CynjgAA60
-
何もする気が起きなくなった。
この一ヶ月あまり、外に出たのは片手で数えられるほどしかない。
自室にこもり、電源の入ってないPCの画面だけを見つめる毎日。
父者と姉者は仕事に復帰していた。
「なにかしていたほうが気が紛れるから」――――姉者はそう言っていた。
母者はいつも通りに見えた。
時折、ひとりになるとぼうっと弟者の写真を見ていることはあったが、家族の前では努めて普段通りに振舞っているようだった。
妹者はしばらくの間部屋にこもっていたが、最近は再び学校へも通い始めた。
本当にたまにだが、笑顔も見せるようになった。そしてそれはこの先少しずつ増えていくのだろう。
俺が、俺だけが、ただずるずると自分の心の泥の中でうずくまったままだった。
.
-
520 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:56:38 ID:CynjgAA60
-
――なぁ、弟者。俺そろそろ
政界に進出しようと思うんだ。
∧_∧
( ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
-
521 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 22:58:00 ID:CynjgAA60
-
……おい、なんとか言えよ。
いつもみたいに馬鹿みたいなツッコミしてくれよ。
∧_∧
( ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
-
522 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:00:00 ID:CynjgAA60
-
「ハハハ。で、そりゃなんて漫画の影響だ?」とか!
「どうした、ついに脳ミソが豆腐に変わったか」とか!
なんでもいいから! 答えてくれよ!!
∧_∧
( ;_ゝ;)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
-
523 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:01:33 ID:CynjgAA60
-
くそっ……、なんで……
なんで、こんな……。
::∧_∧::
::( ∩ゝ∩)::
// / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ / FMV /______
\/____/
-
524 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:03:01 ID:CynjgAA60
-
う、うぅぅっ……あぁ……。
::∧_∧::
::( ∩ゝ∩)::
// / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ / FMV /______
\/____/
-
525 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:05:00 ID:CynjgAA60
-
――――ねぇ。流石弟者に逢いたいかい?
.
-
526 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:06:55 ID:CynjgAA60
-
……っ!? だ、誰だ!?
∧_∧
(; ;_ゝ;)そ
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
-
527 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:08:07 ID:CynjgAA60
-
・ ・
ひどいなぁ。また、忘れちゃったの?
.
-
529 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:09:40 ID:CynjgAA60
-
おい、どこだ!
お前は誰だ!?
∧_∧ キョロキョロ
⊂( ; ´_ゝ)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
-
530 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:11:26 ID:CynjgAA60
-
まぁ、それに関してはとりあえずいいや。
どこに居るか、だって?
面白いことを訊くね、『流石兄者』。
僕は君のすぐそばにいるのに。
.
-
531 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:12:37 ID:CynjgAA60
-
……すぐ、そば?
∧_∧
( ; ´_ゝ)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
\/____/
-
533 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:14:15 ID:CynjgAA60
-
そう、すぐそばだよ。
例えば――――。
.
-
536 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:16:25 ID:CynjgAA60
-
――――君の真後ろ、とか。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`)そ …………!?
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
538 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:18:44 ID:CynjgAA60
-
ああ、そのまま前を向いてて。
今日は別に『思い出して』もらうのが目的じゃない。
僕の話を聞いてほしくて、ここまで出てきたんだ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……話だって?
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
539 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:20:30 ID:CynjgAA60
-
そう。さっきも言った通りのことだよ。
流石弟者にもう一度逢いたいか、って話さ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`)そ !!
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
540 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:22:11 ID:CynjgAA60
-
君のこの一ヶ月あまりの様子、僕は陰ながらだけどずっと見てきた。
点いてもないPCの画面を朝から晩までじっと眺めて終える日々。
『他人事』とはいえ、とても見れたものじゃなかったよ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) …………。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
541 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:24:04 ID:CynjgAA60
-
言うまでもなく、君がそうなった原因は流石弟者の死だ。
そして僕はそれを『解決出来る方法』を知っている。
だからこうして君の前に現れたんだ。……おっと、君の『後ろ』かな。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……解決出来る方法?
/ \ それは、つまり……。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
542 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:26:11 ID:CynjgAA60
-
そうだね。端的に言えば、
『流石弟者を生き返らせる方法』だ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) !!
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
543 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:27:48 ID:CynjgAA60
-
もっとも、より正確に言えば
『死ななかったことにする方法』かな。
まぁ別にどちらでも大差はないだろう?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( ; _ゝ ) ……あり得ない。
/ \ 弟者は死んだんだ。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
544 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:29:54 ID:CynjgAA60
-
確かに、およそ常識の埒外にあるハナシなことは否定しないよ。
でもひとまず僕の話を全て聞いてくれないかな、流石兄者。
信じる信じないを決めるのはそれからでも遅くはないだろ?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) …………。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
545 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:31:16 ID:CynjgAA60
-
さて、まずはどこから話せばいいかな。
そうだな……、『二重スリット実験』って知っているかい?
量子力学をかじった人なら誰でも知っている有名な実験だ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧ スリット
し(; ´_ゝ`) ……2つの格子と電子を使った実験だな。
/ \ コペンハーゲン解釈とかエヴェレット解釈なんかの。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
546 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:33:14 ID:CynjgAA60
-
うん、エヴェレット解釈を知っているなら話は早い。この解釈は簡単に要約すれば
『この世界の現実はいくつもの可能性の中のほんのひとつにすぎない』、とでも言えるかな。
厳密にはちょっと違うのだけど。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……その量子力学の実験が弟者とどう関係するんだ?
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
547 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:34:37 ID:CynjgAA60
-
つまりさ、この世界が『流石弟者の死んだ世界』なら、
その可能性の海の中には『流石弟者の死ななかった世界』もある、
ってことにならないかい?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) そりゃ、理論上はそうなるだろうけど……。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
549 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:36:24 ID:CynjgAA60
-
じゃあ、その『理論上』のことを『現実』にする力が存在するとしたら?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……不可能だ。
/ \ あり得ない。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
551 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:38:07 ID:CynjgAA60
-
可能だろうさ。
チカラ
僕の『能力』を使えばね。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……なぁ、そろそろ教えてくれないか。
/ \ お前は……何者なんだ?
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
552 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:40:10 ID:CynjgAA60
-
僕かい?
そうだね……僕は『超能力者』、かな?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) 超……能力者……。
/ \ そりゃ、大きく出たもんだ。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
553 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:42:02 ID:CynjgAA60
-
もっとも、この僕は掌から炎も出せなければカードを透視することも出来ないけどね。
目に見えることではせいぜい自分や物体を浮かせる程度が関の山だ。
あ、あとはちょっと直接脳内に声を送ったりか。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……そのテレキネシスでどう弟者を生き返らせるんだ?
/ \ 謎の超能力者さんよ。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
554 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:43:59 ID:CynjgAA60
-
そ れ
違う違う。浮游能力はオマケみたいなものだよ。
僕のチカラはもっと別の、本源的な能力だ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ほー、そいつは凄い。
/ \ そのオマケだけでも万国びっくりショー
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ グランプリ獲得だってのに。
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
555 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:46:09 ID:CynjgAA60
-
ともかく、僕の本来の能力。
それが流石弟者を生き返らせる鍵になる。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) それならもったいぶらずに早くそいつを教えてくれないか?
/ \ 超能力者さんよ。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
556 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:48:06 ID:CynjgAA60
-
――――僕の能力は、『この世界の可能性に干渉すること』。
言うなれば僕は確率の世界を飛び回る不安定なチェシャ猫なんだよ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……可能性への、干渉?
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
557 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:50:00 ID:CynjgAA60
-
少し解りにくいかな? じゃあ別の言い方をしようか。
『時間』というものを3つに区分するとき、
『過去』『現在』『未来』に分けられることは言うまでもないね?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……まあな。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
558 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:52:00 ID:CynjgAA60
-
当然ながらこの3つは連続したひとつの流れだ。
にも関わらずその間には明確な断絶が存在する。
それは関わる法則性の違いだ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
559 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:54:00 ID:CynjgAA60
-
つまりだ。過去は『必然性』に、現在は『随意性』に。
そして未来は『不確実性』に深く関わっているということだ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) …………。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
561 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:56:02 ID:CynjgAA60
-
そう。僕の能力は過去の持つ固定化された『必然性』をこじ開け、
その中に未来の持つ『不確実性』を埋め込み、
そしてそれを現在による『随意性』を以って操作し、現実の流れを変えることなんだ。
……わかってくれたかい?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……なんともわかり易いぶっ飛んだ電波話をどーも。
/ \ アインシュタインでも連れてきたら感涙にむせぶだろうよ。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
562 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/07(金) 23:58:00 ID:CynjgAA60
-
もっとも、確率の世界を跳ねまわる関係上、僕自身とても不安定な存在でね。
昨日まで友人や家族だったのに、今日は誰ひとり僕のことを覚えていない。
そんな経験だって今まで何度もあった。……ま、もう慣れたけどね。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) …………。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
563 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:00:04 ID:wMOfRYVg0
-
……話が逸れたね。
さて、ここまで説明を重ねて、ようやく本題にたどり着く。
流石兄者、君にひとつの選択をしてもらいに僕はここへ現れた。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……選択……。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
564 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:01:50 ID:wMOfRYVg0
-
単刀直入に訊こうか。
流石兄者、君は弟の為に未来を捨てられるかい?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ……『未来』を?
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
566 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:04:04 ID:wMOfRYVg0
-
結論から言えば、流石弟者を生き返らせることは可能だ。
一ヶ月前、流石弟者が交通事故にあったあの夜。
もしもあの日、あの瞬間にあの交差点にいなかったなら。
あの交差点に差し掛かるのがもう1分早いか遅いかしていれば、彼は死ななかった。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
567 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:06:19 ID:wMOfRYVg0
-
彼が流石妹者の料理を食べてるとき、もし手をひっかけてコップの水をこぼしていたら。
それによって料理を食べ終わるのが1分遅れたなら、彼は死ななかった。
僕が干渉するのはその程度のほんの小さな『あり得たかもしれない可能性』だ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) そんなことが、本当に……出来るのか?
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
568 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:08:00 ID:wMOfRYVg0
-
出来る。ただ、それには君の協力が必要なんだ。
というより、もし僕一人で出来るのならとっくにやっているよ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
569 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:09:35 ID:wMOfRYVg0
-
無から有を創りだすことは出来ない。
それと同じように、新たな『可能性』を生み出すには
なにかの『可能性』を犠牲にしなければいけないんだ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) そうか……なるほど。さっき代償は俺の未来って言ったな。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
570 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:11:03 ID:wMOfRYVg0
-
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) つまり。使うのは『あり得たかもしれない未来の可能性』。
/ \ ――――要するに、代価は『俺の寿命』。そういうことだろ?
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
571 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:12:25 ID:wMOfRYVg0
-
……へぇ。話が早くて助かるよ、流石兄者。
その通りだ。代価は君の『残り半分の寿命』。
つまり寿命があと20年ならば10年、あと60年なら30年になるってわけだ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) たった一ヶ月前の可能性を曲げるのに、か。
/ \ 随分とゴキゲンな契約内容だな。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
574 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:14:00 ID:wMOfRYVg0
-
可能性への干渉というのはそれほど大掛かりなことなんだよ、流石兄者。
観測、干渉、誘導、固定。全てに大きなエネルギーが必要だ。
その上エネルギー変換効率は極めて悪い。白熱電球以下の効率だ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) このエコの時代に非効率的なこった。
/ \ もっと改良してくれっての。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
575 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:16:02 ID:wMOfRYVg0
-
別に『寿命の半分』というのはその残りの寿命の年数に拠るものじゃない。
極端な話、余命があと3日でも1.5日分の寿命を払えば同じだけのエネルギーは取り出せる。
要するに割合として『それだけの可能性を支払った』、ということが重要だからね。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) ほー、そいつぁお得な話だ。
/ \ それならもっと不摂生しとけばよかったよ。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
576 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:18:06 ID:wMOfRYVg0
-
……さて、説明は以上だ。
それじゃあこれらの事実を踏まえた上で、もう一度訊こうか。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`) …………。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
577 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:20:00 ID:wMOfRYVg0
-
――――流石兄者。
過去から現在へと繋がる可能性を生み出す為に、
君の未来の可能性を遣う覚悟はあるかい?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し(; ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
578 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:21:46 ID:wMOfRYVg0
-
当然これは強制なんかじゃない。イヤならやめてももちろん構わない。
決めるのは君で、代償を負うのも君だ。そしてその恩恵を受けるのは君じゃない。
はっきり言って割に合わない条件だ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( ; _ゝ ) …………。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
579 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:23:23 ID:wMOfRYVg0
-
まぁ、そう急ぐ話でもない。悩むのが当たり前だ。
そう余裕があるわけでもないけど、少しは時間をあげようか。
そうだね、3日くらいで……
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( _ゝ ) ――――やるよ。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
580 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:25:00 ID:wMOfRYVg0
-
…………えっ?
∧_∧
(;´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( ´_ゝ`) 聞こえなかったか?
/ \ その話、乗るって言ったんだ。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
583 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:26:30 ID:wMOfRYVg0
-
……そうかい。随分と早い決断だね。
本当にいいのかい?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( ´_ゝ`) ああ。
/ \ やるならさっさとやってくれ。決意が揺らぐ。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
584 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:28:01 ID:wMOfRYVg0
-
わかった。すぐに取り掛かろう。
……だけど流石兄者、ひとつだけ尋ねてもいいかな?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( ´_ゝ`) なんだ? 手短にな。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
585 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:29:30 ID:wMOfRYVg0
-
なんでやると決めたんだい?
弟とはいえ、流石弟者は流石弟者であって自分ではない。あくまでもただの他人だ。
あと数年もすれば君たちは一人立ちして、互いに顔を合わせることさえ減るだろう。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
586 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:31:00 ID:wMOfRYVg0
-
そんな『他人』の為に、たった一度きりの自分の人生を
切り売りしようとするのは何故なのかな?
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( ´_ゝ`) ……なにかと思えば、そんなことか。
/ \ そんなの決まってるじゃないかよ、謎の超能力者。
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
\/____/
-
587 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:32:16 ID:wMOfRYVg0
-
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( ´_ゝ`) 弟者は俺の『家族』だから。
/ \ それ以上の理由が要るのか?
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
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-
588 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:34:02 ID:wMOfRYVg0
-
……そう。回答に感謝するよ。
それじゃあ始めようか、流石兄者。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( ´_ゝ`) オーケー、ばっちこいや。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
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-
589 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:35:30 ID:wMOfRYVg0
-
じゃあ、目をつぶって。
すぐに強い眩暈みたいなのが起きて意識がブラックアウトする。
次に目を覚ました時には、きっとここではない新しい世界になっているよ。
∧_∧
( ´_>`)
/r i i |
〜( U∧_∧
し( -_ゝ-) ……おう。
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
____(_ニつ / FMV /______
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-
590 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:37:00 ID:wMOfRYVg0
-
「始めるよ」
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591 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:38:16 ID:wMOfRYVg0
-
ll(;-_ゝ-)ll「!! うぐっ……!」
それはすぐにやってきた。
眩暈どころの騒ぎではない。
エレベーターの動き始めの嫌な浮遊感を400倍に増幅したような、
立ちくらみを1000倍強力にしたような、なんとも言えない感覚。
上下どころか左右さえもまぜこぜにされたような不思議な世界。
たまらず目を開けようとしたが、筋肉に命令を送る電気信号さえ体内で迷走したかのようにまぶたはピクリとも動かなかった。
そして俺の意識がまさに途切れようとした、その時だった。
「…………いいなぁ。『家族だから』、か」
かろうじて機能を保っていたらしい聴覚が拾ったほんの小さなつぶやきは、さっきまで俺の後ろにいた超能力者のものだった。
.
-
592 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:40:00 ID:wMOfRYVg0
-
――――じゃ
――――にじゃ
∧_∧
( / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /
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593 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:41:16 ID:wMOfRYVg0
-
∧_∧
(:::::::::::::::) ――に者、兄者!
/:::::::::::::i
∧_∧ :::::::::::::|::::|
( / ̄ ̄ ̄ ̄/:::::|
__(__ニつ/ FMV /:::|:::|____
\/ / (u ⊃
-
594 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:43:00 ID:wMOfRYVg0
-
!! ∧_∧
(゚<_゚ # ) ……いい加減起きろ、クソ馬鹿兄者っ!!
ll∧_∧ll / ⌒i
Σll(; ´_ゝ`)ll/ | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
\/____/ (u ⊃
-
595 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:45:00 ID:wMOfRYVg0
-
……は……え?
∧_∧
(´<_` # ) ……ったく、人がこんだけ大声で呼んでるのに
∧_∧ / ⌒i よくもまぁ熟睡してられるもんだな兄者。
(; ´_ゝ`) / | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
\/____/ (u ⊃
-
596 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:46:46 ID:wMOfRYVg0
-
……お……お、とじゃ?
なのか? 本当に?
∧_∧
∧_∧ (´<_` # ) 何寝ぼけたこと言ってるんだ。当たり前だろ。
( ; ´_ゝ) / ⌒i 寝過ぎて脳ミソが豆腐に変わったか。
/ \ | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
\/____/ (u ⊃
-
597 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:48:20 ID:wMOfRYVg0
-
このツッコミ……間違いない、弟者だ……。
∧_∧
∧_∧ (´<_` # ) 誰がツッコミか、誰が。
( ; ´_ゝ) / ⌒i
/ \ | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
\/____/ (u ⊃
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598 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:50:00 ID:wMOfRYVg0
-
……弟者。弟者だ……。
∧_∧
∧_∧Σ(´<_` ; ) は!?
( ;_ゝ) / ⌒i な、なんで泣いてるんだ兄者!
/ \ | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
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600 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:51:00 ID:wMOfRYVg0
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う、うぁぁ……うああああっ……
∧_∧
::∧_∧:: (´<_` ; ) OK兄者、時に泣きやめ!
::( ∩ゝ∩):: / ⌒i 俺も怒りすぎたから!
::// \\ | |
( ' / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
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602 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:52:01 ID:wMOfRYVg0
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〜〜〜ただいま落ち着いています〜〜〜
/\⌒ヽペタン
/ /⌒)ノ ペタン
∧_∧ \ (( ∧_∧
( ´_ゝ`))' ))(´<_` )
/ ⌒ノ ( ⌒ヽ⊂⌒ヽ
.(O ノ ) ̄ ̄ ̄()__ )
)_)_) (;;;;;;;;;;;;;;;;)(_(
〜〜〜しばらくお待ち下さい〜〜〜
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604 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:54:00 ID:wMOfRYVg0
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……ふう。
やはりコーヒーはハワイ・コナに限るな。
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) 特売のインスタントコーヒーでなにカッコつけてるんだ兄者。
( ´ ゝ`) / ⌒i
//E| ̄|¬ | |
( ' /~`-/ ̄ ̄ ̄ ̄/ |
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ζ
[ ̄]つ
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605 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:56:16 ID:wMOfRYVg0
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馬鹿言え、俺は違いが分かる男だぞ。
ふむ、このまったりとしてそれでいてしつこくない味は……。
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) はいはいワロスワロス。
( ´ ゝ) / ⌒i で、なんでまた珍しくPC広げっぱなしで熟睡してたんだ。
//E| ̄|¬ | | テキストエディタだけ起動したままで。
( ' /~`-/ ̄ ̄ ̄ ̄/ |
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606 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 00:58:00 ID:wMOfRYVg0
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は? テキストエディタ?
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) ほら、PCの画面見てみろ。
( ´_ゝ`) / ⌒i 短いけど文章も入力してあるだろ。
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∬ / / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
c| ̄| _(__ニつ/ FMV / .| .|__
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607 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:00:00 ID:wMOfRYVg0
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……『兄者 弟者 兄弟仲良くね』。
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) 兄者、こりゃどういう意味だ?
( ´_ゝ`) / ⌒i
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__(__ニつ/ FMV / .| .|____
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608 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:02:01 ID:wMOfRYVg0
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……いや。
これは俺の打った文章じゃないさ。
∧_∧
∧_∧ (´<_` ; ) は? 兄者じゃない?
( ´_ゝ`) / ⌒i んじゃ誰が……。
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__(__ニつ/ FMV / .| .|____
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609 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:04:00 ID:wMOfRYVg0
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兄者たちー! 夕ごはんなのじゃー!>
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) ……おっと、もうそんな時間か。
( ´_ゝ`) / ⌒i 行こうぜ兄者。あんまり待たせると母者がキレる。
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610 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:06:01 ID:wMOfRYVg0
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ああ、そうだな。
あ、でもちょっと先行っててくれないか。
俺もすぐに行くから。
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) ん、そうか?
( ´_ゝ`) / ⌒i じゃ早く来いよ。
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611 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:08:01 ID:wMOfRYVg0
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妹者ー、今日の夕飯はなんだー?>
今日は母者特製・鶏唐揚げなのじゃー!……>
∧_∧
( ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
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612 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:10:00 ID:wMOfRYVg0
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――――そうか。そうだよな。
お前だって『家族』が欠けるのは嫌だったんだよな。
∧_∧
( ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
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613 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:12:01 ID:wMOfRYVg0
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今日すぐ今から、って訳にはいかないかもしんないけどさ。
また今度、一緒に夕飯食ったり弟者も混ぜて遊んだりしようぜ。
∧_∧
( ´_ゝ`)
/ \
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/
__(__ニつ/ FMV /______
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614 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:13:46 ID:wMOfRYVg0
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だから……またな、『末者』。
∧_∧
( ´_ゝ`)
/ \
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__(__ニつ/ FMV /______
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615 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:15:00 ID:wMOfRYVg0
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おおっ、美味そー!>
いただきますなのじゃー!>
あっおい兄者、唐揚げにレモンをかけるんじゃない!!>
/ ̄ ̄ ̄ ̄/
____ / FMV /______
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616 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:16:46 ID:wMOfRYVg0
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∧_∧
( _> ) ――――「またな」、かぁ。
/r i i |
〜( U U
し'`J
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____ / FMV /______
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617 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:18:30 ID:wMOfRYVg0
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∧_∧
( ´_>`) ……ありがとう。
/r i i | それじゃあ……「またね」、『お兄ちゃん』。
〜( U U
し'`J
/ ̄ ̄ ̄ ̄/
____ / FMV /______
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618 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:20:00 ID:wMOfRYVg0
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/ ̄ ̄ ̄ ̄/
____ / FMV /______
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619 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:22:00 ID:wMOfRYVg0
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『それはもう大昔からきまっているのだ。
人間には絶望という事はあり得ない。
人間は、しばしば希望にあざむかれるが、しかし、また「絶望」という観念にも同様にあざむかれる事がある。
正直に言う事にしよう。人間は不幸のどん底につき落され、ころげ廻りながらも、いつかしら一縷の希望の糸を手さぐりで捜し当てているものだ。
それはもうパンドラの匣以来、オリムポスの神々に依っても規定せられている事実だ。
楽観論やら悲観論やら、肩をそびやかして何やら演説して、ことさらに気勢を示している人たちを岸に残して、
僕たちの新時代の船は、一足おさきにするすると進んで行く。何の渋滞も無いのだ。
それはまるで植物の蔓が延びるみたいに、意識を超越した天然の向日性に似ている。』
《太宰治 『パンドラの匣』》
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620 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:25:31 ID:wMOfRYVg0
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( ´_ゝ`)どうあがいても絶望のようです(´<_` )
最終話
パンドラの匣の底に最後に残ったもの
―完―
.
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625 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:30:00 ID:wMOfRYVg0
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\____________________/
○
o
。
――――っていう夢を見たんだよ。
∧_∧
∧_∧ (´<_` ) そうか。氏ね。
( ´_ゝ`) / ⌒i
/ \ | | ←妹者の料理で入院するも
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ | 普通に3日ほどで全快退院
__(__ニつ/ FMV / .| .|____
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〜本当の本当に完〜
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632 名前: ◆SSG/N3UK92[] 投稿日:2013/06/08(土) 01:36:01 ID:wMOfRYVg0
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∧_∧ この作品の投下は以上だ。
(*´_>`)
/r i i | ∧_∧
〜( U∧_∧ (´<_` *) 縁があったらいつかまた会おう。
し(* ´_ゝ`) / ⌒i
/ \ | |
/ / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
____(_ニつ / FMV ./ .| .|______
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<<<第七話 ◆ あとがき>>>
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