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814 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:08:21 ID:KoL7RGjsO
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ツンはパイプ椅子を用意したものの、座りもせず、机を睨み続けた。
時折思い出したように書類をめくるが、唇を噛んでファイルを閉じる。
何も見付からぬまま、時間が過ぎていく。
('A`)
定位置に立ったまま、ドクオは手持ち無沙汰に待ち続けている。
(;,゚Д゚)(*゚−゚)
ギコとしぃは、検察席の椅子に腰掛けツンの挙動を見守っている。
【+ 】ゞ゚)川;゚ 々゚)
オサムは未だに怯えるくるうを宥めている。
傍聴席に目をやった内藤は、ひらひら動くものを見付けた。
( <●><●>)づ
ワカッテマスが手招きしている。
内藤はドクオに接近しない程度に遠回りをして、傍聴席の最前列にいるワカッテマスの前に立った。
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815 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:10:00 ID:KoL7RGjsO
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( <●><●>)「……大丈夫なんでしょうか」
( ^ω^)「……さあ……」
本当に分からない。
まったく読めないのだ。
内藤の中でドクオは既に「怪しい人」になっているが、勿論ツンが何かを勘違いしている可能性もゼロではないので。
ビロードに目をやると、ぽぽちゃんの手を握っていた。
空気が重い。
( ^ω^)「あの……えっと、……ぽぽちゃんさん? ぽぽさん?」
(*‘ω‘ *)" ポッ…
( ^ω^)「ドクオさんに、ビロードさんのこと渡すつもりでしたかお?」
( <●><●>)「君って奴は直球な」
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816 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:12:14 ID:KoL7RGjsO
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ひそひそと小声で会話を交わす。
ぽぽちゃんは丸い瞳で内藤を見つめると、
(*‘ω‘ *)"
まずは頷き、
"(*‘ω‘ *)"
続いて首を横に振った。
意味を考える。
( ^ω^)「……初めはそのつもりだったけど、そうじゃなくなった?」
希望的観測だ。
ぽぽちゃんは、一度だけ深く頷いた。内藤の希望を認めた。
ビロードが更に強く彼女の手を握る。
それが事実なら、罪が重くなることもないだろう。
何となく、ほっとする。
次に内藤は反対隣、少女へ目をやった。
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817 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:15:01 ID:KoL7RGjsO
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( ^ω^)「君がキュートちゃんかお」
o川*゚ー゚)o「ん……」
かつてシュールが言った特徴が、たしかに当て嵌まっている。
敢えて言うなら、シュールやヒールが褒めちぎっていたので絶世の美少女を想像していたのだが、
存外、庶民的な範疇に収まる可愛さであった。
キュートは内藤を見上げ、「えっと」と困惑したような声を漏らした。
どうしたのだろうと首を傾げる内藤の腕を、シュールが引く。
lw´‐ _‐ノv「内藤君、内藤君」
( ^ω^)「どうしたお?」
lw´‐ _‐ノv「ちょっと」
尚も引っ張られるので、内藤は身を屈めた。
シュールが内藤の耳に顔を近付ける。
lw´‐ _‐ノv「なんか、今これ言うのも申し訳ないんだけども──」
*****
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818 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:16:26 ID:KoL7RGjsO
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──時間がない。
証拠がない。
ツンは横に座る男に、縋るような声をかけた。
ξ;゚听)ξ「ロマネスクさん、何か話してもらえないかしら……」
( ФωФ)「……我輩は何も言わぬと決めた。ワカッテマスへの恩も前回の件で返したのである」
てっきりまた無視されるのではないかと思っていたが、返答はあった。
何も言わないというなら、今までと同じように黙っていれば良かった筈なのに。
ロマネスクの瞳に見入る。
彼はツンを一瞥して目を逸らし、──また、ツンを見た。
諦念でも怒りでも無気力でもない。
期待するような色が塗り込められている。
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819 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:18:10 ID:KoL7RGjsO
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( ФωФ)「どうせすぐに終わると思っていた」
ξ゚听)ξ「え?」
( ФωФ)「裁判が」
それは──ロマネスクに有罪判決が下されて、という意味だろう。
事実、ツンが彼の指示通り黙っていれば、前回の開廷から一時間もかからずに終わっていた筈だ。
( ФωФ)「……まさか、あの男をこの場に引きずり出せるとは思っていなかった」
ξ゚听)ξ「あの男って……」
ロマネスクは視線でドクオを指し、そしてまたツンへと戻した。
ξ゚听)ξ「……ドクオさんとあなたに、何かあるの」
( +ω+)「喋りすぎたのである」
ξ゚听)ξ「あなたから見て、私にまだ手はある?」
( Фω+)「……無いとは言わん」
ξ;゚听)ξ「教えてよ!」
( ФωФ)「我輩から言うのは無理だ。……が」
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820 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:19:09 ID:KoL7RGjsO
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( ФωФ)「『手』は、前回も今回も、近くにあった」
今度こそ沈黙し、ロマネスクは目を伏せた。
「手」──とは、どれのことだ。
「前回」と「今回」とは何だ。裁判。審理。
一週間前の裁判と今日の裁判、そのときに、ロマネスクの認識できる範囲にあった何か?
一週間前と今日、近くに存在している?
( ^ω^)「……」
足音に意識をやれば、内藤が首を傾げながら戻ってきたところだった。
どうしたの、と訊いてみる。
( ^ω^)「いや、シュールさんが……」
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822 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:20:09 ID:KoL7RGjsO
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ξ;゚听)ξ「なあに?」
( ^ω^)「キュートちゃんをキュートちゃんじゃないって言うんですお」
ξ;゚听)ξ「──え?」
( ^ω^)「気配……というかそもそも見た目そのものが、全然違うって」
別人?
別人。
ああ、それは、資料として写真をもらっておかなかった自分の責任だ。後で謝らねば。
ひとまず今は裁判優先だ。
キュート探しは一旦後回しに、
いや。
ξ;゚听)ξ「でも──でもあの子、シュールさんの名前に反応したわよ」
( ^ω^)「ですおね、僕もツンさんからそう聞いてたから不思議で」
ξ;゚听)ξ「事故のことだって──」
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823 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:21:25 ID:KoL7RGjsO
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キュートの発言が、代わる代わる脳裏に浮上する。
異様に回転する頭が、平素ならここで思い出すことのないような記憶を拾い上げ、
互いに絡ませ始めた。
心臓が跳ねる。
そんなわけがない。まさか。違う。でも──。
緊張と興奮に呼吸が乱れ、しかし思考は整然と情報を並べ立てていく。
ξ;゚听)ξ「キュートさんを連れてきて!」
大きな声が出た。しぃが目を丸くする。
内藤は返事もそこそこに傍聴席へ駆け寄ると、キュートの手を取った。
.
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826 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:22:22 ID:KoL7RGjsO
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(;ФωФ)『何故ここに──』
あのときロマネスクは誰を見た?
ワカッテマスだとツンは認識していた。
けれども。
キュートも、ワカッテマスの隣にいた筈だ。
あのときロマネスクが見たのは──
.
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828 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:24:08 ID:KoL7RGjsO
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内藤と共にこちらへ歩いてくるキュートを横目に、ツンはファイルから憑依契約書のコピーを引っ張り出した。
文面の更に下、メモ用紙に元から印刷されていた文字を指でなぞる。
(*゚ー゚)『ヴィップ町の不動産会社に事務として勤めており、その日も会社に出勤していた』
川*` ゥ´)『父さんの建設会社で事務やってんだ今。人間として』
素直ヒールの父は、建設会社の社長。
建設会社と不動産会社ならば仕事を共にすることもあろう。
o川*゚−゚)o『……あ、何か……素直……聞き覚え……うう……?』
キュートが反応を示したのは、シュールの名ではない。
「素直」だ。
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831 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:25:09 ID:KoL7RGjsO
-
そして。
o川;> -<)o『……事故……交通事故が……』
交通事故は。
「彼女」の親友の、都村トソンの死因。
.
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832 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:26:36 ID:KoL7RGjsO
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皆の視線を一身に集めたキュートは、何事かと辺りを見渡し、
不安げに体をそわそわさせていた。
o川;゚ー゚)o「あの、今、私なんかに構ってる状態じゃないんじゃ……。
私とシュールさんのことは後でいいよ」
ξ゚听)ξ「……今じゃなきゃ駄目だわ」
しゃがみ込み、目線を合わせる。
ツンは、キュートの──少女の髪に触れた。
(゚、゚トソン『髪長かったんですよ。まっすぐで、綺麗で……』
少女の髪は、するすると、ツンの指先を滑っていく。
ξ゚听)ξ「……なんだ……」
何故だか、目元がじんわりと熱を帯びた。
瞳が潤む。
唇が、ほんの僅かに笑みを浮かべた。
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835 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:28:11 ID:KoL7RGjsO
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ξ゚ー゚)ξ「──ミセリさん、こんなとこにいたのね」
*****
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840 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:30:33 ID:KoL7RGjsO
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o川;゚−゚)o「……みせり……?」
呆然と、少女が復唱する。
今まで何度も出た名前だった。
今まで何度も中心となった名前だった。
一体何を言い出したのかと、皆がこちらを見ている。
混乱している。
o川;゚−゚)o「……みせり……」
二度目を口にし、少女は突然唸って、その場に膝をついた。
頭を抱え、ミセリ、その名を繰り返す。
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842 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:32:40 ID:KoL7RGjsO
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──初めは、目の錯覚かと思った。
内藤は目を擦り、それが気のせいでないのを悟る。
少女が成長していっている。
歳を重ねるごとに、セーターからセーラー服へ、セーラー服からブレザーへと服装も変化する。
法廷で何度も繰り返された名前の筈なのに、それを自身に向けられて初めて、
彼女はその意味を真に理解したのだろう。
彼女と共に、内藤の認識も追いついていく。
──「トソン」。
別の名を呼んだ瞬間、彼女の成長は止まった。
ミセ;- -)リ
半袖のブラウスにベスト、スカート。
OL然とした服装の女性が蹲っている。
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843 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:33:49 ID:KoL7RGjsO
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女性はゆっくり目を開けると、顔を持ち上げ、ツンを──
いや、ツンの向こうに座るロマネスクを見た。
ミセ;゚ー゚)リ「──ロマ……」
( ФωФ)「……」
20代後半ほど。内藤が病室で見た姿よりも若い。
そこにいるのは、間違いなく三森ミセリその人だった。
.
-
844 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:35:17 ID:KoL7RGjsO
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ツンとロマネスクを除く全員が呆気にとられている。
オサムさえも、口を開け放して弁護人席を凝視していた。
ロマネスクが腰を上げ、ミセリに手を伸ばす。
その手を取ったミセリが立ち上がって、ようやく、法廷の時が再び動き出した。
(;*゚ー゚)「……ぁ……」
動き出したが、やはり、頭はまだ追いついていないようだ。
( ФωФ)「この馬鹿が。記憶をなくしていたのであるか。本当に馬鹿である。馬鹿女」
ミセ;゚ー゚)リ「ひ──ひっどいな相変わらず! ……ロマだって馬鹿だ! なに捕まってんだよバーカ!」
(#ФωФ) カーッ
ミセ;゚ー゚)リ「あーもう言い返せなくなるとすぐ威嚇する!
ていうか何だよ、猫の方が可愛いのに、何だよその格好……おっさんじゃん……。
……もう、わけ分かんない……トソン、トソン……」
せっかく立ち上がったのに、ミセリはしゃがんでしまった。
膝に腕を乗せ、顔を伏せる。
か細い声でトソンを呼び続けるミセリ。
それを眺めていたしぃの頭が、ようやく現状に到達したようだった。
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846 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:36:18 ID:KoL7RGjsO
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(;*゚ー゚)「おい」
ξ゚听)ξ「はい?」
(;*゚ー゚)「何が起こってる」
ξ゚听)ξ「ご覧の通り」
(;*゚ー゚)「ご覧になっているが分からん」
ξ゚听)ξ「ミセリさんの霊魂がここにいます。
──弱ってたのか何なのか知らないけど、記憶をなくして子供の姿で彷徨ってたみたい」
みたい、って。
簡単に言ってくれる。
皆を代表するように、ギコが呟いた。
(;,゚Д゚)「……そんなの有り?」
( ^ω^)(ええ本当に)
誰もが同意したに違いない。
内藤も賛同したかったのに、声が出なかった。
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848 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:37:32 ID:KoL7RGjsO
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川 ゚ 々゚)「オサム」
【+ 】ゞ゚)「んあ」
恋人に呼び掛けられ、はたとオサムが我に返った。
休憩時間が終わってから3分ほど経過している。
【+ 】ゞ゚)「……この女が弁護士になってからというもの、
本当に予想外のことばかり起こる」
そんな言葉と共に、オサムは木槌で開廷を知らせた。
ドクオは。
('A`)
表情をなくしている。
じとりと、湿った目でツンを睨んでいる。
ξ゚听)ξ「告発のための証拠は見付かりませんでしたが──
重要な証人は見付かりました」
【+ 】ゞ゚)「……そりゃあ、被害者だからな」
ツンは得意顔である。
別にツンの手柄では──あるか。
ミセリをここに呼んだのはツンだ。
-
849 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:38:59 ID:KoL7RGjsO
-
ミセ; − )リ「うー……」
(;,゚Д゚)「あ──……っと、大丈夫? 急なことだし、まだ調子が……」
( ФωФ)「立て。ずっと傍聴していたのであろう。
するべきことくらい、分かっている筈である」
ミセ; ー )リ「……ロマ、相変わらず厳しいなあ……おっさんのくせに……」
( ФωФ)「噛み殺すぞ貴様。そもそも貴様こそ今年でもう37ではないか」
ミセ; ー )リ「なに言ってんのまだぎりぎり20代だよ……まだお姉さんよ」
( ФωФ)「もう8年経っている」
ミセ; ー )リ「……8年も寝てたんだなあ、私」
ロマネスクは饒舌になっていた。
今までと比べて、だが。
彼の手を借りずにミセリは立った。
気分は最悪だが体の調子はいい、と嘯く。
彼女の体は病院に置いてきているだろうに。
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851 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:40:25 ID:KoL7RGjsO
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ξ゚听)ξ「……ミセリさん、いけそう?」
ミセ*゚ー゚)リ「ん。私の意識は8年前のまんまだ。
事件のこと、ほんとに昨日のことみたいに思い出せる」
それは、とても頼もしい宣言だった。
ただ、顔付きはしっかりしているのに──
瞳だけは、悲哀を湛えている。
散々聞かされてきた「殺された都村トソン」が自身の友だった事実に突然直面したのだ、
それだけでも随分ダメージがあるだろう。
【+ 】ゞ゚)「証言を頼めるだろうか」
ミセ*゚ー゚)リ「もちろん」
力強く頷いたものの、ミセリはしばし黙り込み、ロマネスクに振り返った。
「どう言えばいいの」。ミセリが訊ねる。
「知るか馬鹿」。ロマネスクは冷たく返した。
随分と親しそうだ。
首を左右交互に捻ったミセリは、息を吸い込むと、右手を持ち上げた。
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855 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:42:17 ID:KoL7RGjsO
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ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、単刀直入に」
人差し指を立てる。
華奢な指先は、ある一点へ向かった。
──ドクオへ。
ミセ*゚ー゚)リ「私に取り憑いたのは、あの人でした。ロマじゃない」
ツンが目を閉じ、息を吐く。
満足感も達成感も、そこに無い。
まだ、一区切りついただけなのだ。
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857 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:43:17 ID:KoL7RGjsO
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(;*-ー-)
腕を組んだしぃが天井を見上げ、深く長い溜め息を吐き出した。
ギコもまた、頬に手を当て長嘆息。
('A`)「……あーあ」
ドクオの声は、色も熱もなかった。
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860 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:46:12 ID:KoL7RGjsO
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ドクオから目を離さぬまま、オサムはミセリに詳細を求めた。
昨日のことのように思い出せるという言葉は真実らしく、記憶を手繰るのに時間はとらなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「トソンに体を貸して、トソンと別れて……会社に戻ろうとしたときに
声を、かけられました」
#####
('A`)『──あんた、霊が見えるんだな』
#####
ミセ*゚ー゚)リ「トソンに会えた嬉しさで、少し、浮かれてたんだと思います。
ちょっとだけならいいよって、体を……」
( ФωФ)「馬鹿が」
ミセ*゚ー゚)リ「馬鹿だよ。……そこからはもう、記憶はないです」
意見はあるかとオサムが問う。
ミセリは少し戸惑ったが、ドクオへの呼び掛けだと気付き口を閉じた。
気怠そうに頭を掻きながら、ドクオはぞんざいに言う。
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861 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:48:18 ID:KoL7RGjsO
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('A`)「……その姉ちゃんの証言が事実だって、誰が証明する」
ミセ;゚ー゚)リ「に、人間が相手なら嘘の臭いが分かるんでしょう?
私、病室に戻って──お、起きます、起きてみせます!
そしたら臭いで確認できますよね!」
('A`)「だよなあ、……そうなるよなあ……」
声が沈んでいく。
やがて観念したように、ドクオは俯いた。
鬱田さん──しぃが名を呼んだ瞬間、彼はぽつりと呟いた。
('A`)「──認める」
(;*゚−゚)「……え」
('A`)「……認める……」
(;*゚ー゚)「何を……」
('A`)「全部。一連の憑依事件も。三森ミセリを殺そうとしたのも。……殺霊も……」
──俺がやった。
.
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863 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:50:31 ID:KoL7RGjsO
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きんと、空気が冷え渡る。
長い、長い間、静寂に包まれた。
不用意に声を発すれば、全てが溶けてしまいそうだった。
誰に問われるでもなく、ドクオは静かに語り始める。
('A`)「……カーチャンが、詐欺に引っ掛かった。
生活が苦しくなって、家の中がめちゃくちゃになって、……俺は自殺した。
いわゆる霊感商法ってやつだったが、詐欺師は本当に霊能力者だった」
そしてまた沈黙。
誰も急かすことが出来なかった。
ドクオが瞳を揺らす。言葉を探している。
口を震わせながら開いた瞬間、涙が落ちた。
(#;A;)「……憎かったんだよ!! 霊能力者って奴が、みんな憎かったんだよ!!」
その叫びは、N県で聞いた慟哭よりも、さらに激しかった。
血反吐を吐くような、全身から絞り出すような憎悪と悲しみ。
それは初めの一言だけで、続く言葉はひどく弱々しい。
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864 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:51:46 ID:KoL7RGjsO
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(;A;)「初めに殺した霊能力者たちだって、確かに力はあったが、
みんな法外な料金を請求したり裏で悪さやってたり、ろくでもねえ奴らばっかりだった。
許せなかったんだ……」
嗚咽が後を引く。
緊張感を飲み下し、ギコが声を発した。
(;,゚Д゚)「でも途中からは、ただ霊感を持つだけの一般人まで……」
(;A;)「悪い奴ら殺しても、恨みが消えなかったんだよ。
……憎しみがどんどん増すばっかりで……もう、『そういう』奴ってだけで憎くて……」
(;*゚−゚)「……」
しぃが口を開いた。
しかし小さな小さな声が喉の奥で詰まっただけに留まり、彼女は顔を歪めた。
こつん。木槌の音。
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869 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/20(土) 01:53:42 ID:KoL7RGjsO
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【+ 】ゞ゚)「……お前のやったことが許されることでないのは分かっているな。
動機面に些か同情出来る点は確かだが」
オサムの声は決して優しくなかったが、突き放しもしなかった。
ドクオが何度も首を縦に振る。
【+ 】ゞ゚)「今ここで処罰を決めることは出来ない。
後日、じっくりと精査する必要があるだろう」
(;A;)「すみませんでした、本当に、──本当に、すみませんでした……」
ぼたぼたと涙が落ちて消えていく。
しぃは尚も何か言いたげだったが、ギコによって押し留められた。
泣き声が響く。
涙が落ちる。
オサムが木槌を振り上げ──
ξ゚听)ξ「──その辺にしておきましょう」
声と涙とオサムの手が、止まった。