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666 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:54:48 ID:bwAoZRz2O
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(;'A`)「だ、だが、弁護士が思ってるような理由で病室に行ったんじゃねえ!」
川 ゚ 々゚)「じゃあ何で?」
(;'A`)「くじ引きの後、刑事が言ってたんだよ。
『おばけ課がオサム様の事件で手一杯で、他の事件が手薄だ』って」
(;'A`)「俺も病室の警備任されたことあるし、乗りかかった船っつうか……一応、気にはなっててな。
大丈夫かよって思って、ちょっと様子見に行ったわけだ」
暇だったからってのもある、とドクオは付け足した。
(;'A`)「そしたら──その、都村トソンが被告人に襲われてたからな。病室で。
見て見ぬふりは出来ねえわな」
【+ 】ゞ゚)「助けようとしたのか?」
(;'A`)「まあ、ご覧の通りひょろいし、しがない浮遊霊だから勝つ見込みはなかった。
結局、身の危険を感じたもんで、何とか紛れ当たりで怯ませた隙にナースコール押して逃げた。情けねえ話。
……くじも、そのときに落としたな」
(;,゚Д゚)「ナースコールはドクオさんが押したものだったの?」
(;'A`)「ああ」
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668 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:56:56 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)「警察に言わなかったんですおね? どうして……」
('A`)「……二回も不当に逮捕されたことのある身だぜ。警察に行くのは嫌だった。
俺が行かなくても──都村が警察に話すだろうと思ったしな」
('A`)「俺が逃げ出したときにはまだ生きてたし……霊が生きてるってのもおかしな言い方だが。
そんで被告人はしばらく俺を追い掛けてきてたから、てっきり、その間に
都村も逃げただろうと思ってたんだよ」
実際、翌日になって病院を覗いてみると警察が出入りしていたので、
トソンが通報したのだと解釈したらしい。
('A`)「俺んとこに警察が話を訊きに来ないのが気になったが……まあ
あの姉ちゃんも必死で、俺のことなんか分かってなかったのかもしれねえし
実際に聞き込みに来られたとしても大した情報持ってねえから、
俺が関わらなくて済むんなら、それが一番楽だろうと思って、黙ってた」
('A`)「まさかあのまま病室で消えちまってたなんて、知らなかったんだよ」
──トソンは消えてしまった。
裁判の前にツンから聞いてはいたが、改めて別の者から聞かされると、やけに重たく響いた。
逃げ出したときにすぐ警察に駆け込めば良かったと、ドクオが唸るような声で言う。
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671 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:58:59 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「……あなたは本心で言ってるの」
('A`)「ああ。あんたは俺を非情な殺人犯だと思いたいようだがな」
ツンが顎に手をやり、黙りこくる。
椅子に座るロマネスクは、膝に乗せた手を握ったり開いたりしていた。
何かに焦れるように。
【+ 】ゞ゚)「それで結局のところ、弁護人は、今の証言を否定できる証拠を持っているのか?」
ξ゚听)ξ「……いいえ」
【+ 】ゞ゚)「被告人から意見は?」
( +ω+)
【+ 】ゞ゚)「今日も喋らないか。えー……つまり殺霊事件については、依然として
被告人の疑いは晴れないということになる」
(*゚ー゚)「そのようです」
( ^ω^)「……ツンさん」
内藤の声は無意識に低くなっていた。
あれだけ大見得きって、ものの10分でこの体たらく。
いくらなんでも冗談では済まされない状況だというのに。
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672 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:59:57 ID:bwAoZRz2O
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ξ;゚听)ξ「いや、だって自分から認めるなんて……」
【+ 】ゞ゚)「次は何の証言をしてもらおうか」
ξ;゚听)ξ「ふぇいっ! ……あ、えと、内藤君に憑依したときのことを」
ふぇいって。
オサムは提案を了解し、木槌を打った。
そこへ、しぃが確認のために「憑依」の件を振り返る。
先週の土曜日。閉廷後にしぃ達がドクオの捜索を開始し、
住宅街で内藤を見付けたため、聞き込みをしようとしたところ
内藤に憑依していることをドクオ自ら説明し、憑依を解いた。
憑依の時間は然程長くなかったが、内藤は半日ものあいだ目覚めないほど体力を奪われていた──
(*゚ー゚)「憑依に至った経緯の説明をお願いします」
('A`)「ああ」
頷いたものの、ドクオはなかなか話し出さなかった。
内藤とツンを見、溜め息。
仕方ないといった様子で、ようやく口を開いた。
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673 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:02:12 ID:bwAoZRz2O
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('A`)「切っ掛けの話からするなら、当日の何日か前から始めないといけない。
──俺は、度々ヴィップ中学に寄ってた」
ξ;゚听)ξ「──!!」
ツンが絶句した。
ドクオの言葉に、驚愕の表情を浮かべる。
先刻、彼が病室にいたのを認めた際に見せた表情を、数倍増幅させたような。
('A`)「ちょっと前から内藤少年の様子がおかしかったから、学校で何かあったのかと思って
覗きに行ってたんだよ。──正直に言うと、心配してたからじゃない。好奇心だった。
生意気な少年が何に悩んでんのか興味があっただけだ」
('A`)「こんなことバレたら少年もいい気はしねえだろうから、黙ってたんだがな」
「今言うの」──ツンが呟く。
呆然とした声だった。
( ^ω^)(……ツンさんの武器だったんだ)
ドクオの気配が学校に残っていたというシュールの話。
それがツンの「手」だったのだ。
けれど、本人が先に話してしまえば──
ツンが後出しするのとは、全く違う印象になる。
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675 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:04:16 ID:bwAoZRz2O
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('A`)「少年のクラスメートがひそひそ『祟り』がどうのこうの言ってんの聞いちまって、
ああ面倒なことになってそうだなと思ったよ」
('A`)「そんで──木曜日か。
登校中の少年に声をかけて……まあ追い払われはしたんだが、
そのとき見かけた少年の友達の調子が変でな。いよいよヤバそうだったから
こっそり教室覗いたんだ。そしたら大騒ぎになってて」
ドクオは気まずそうに内藤をちらちら見ながら、教室での出来事を語った。
どれも正しくて、実際に聞いていたのだという証明になるものだった。
('A`)「少年がもうドン底って感じでな。明らかに危ねえ状態だった。
妙なこと仕出かしやしねえかって不安になったから、常にとは言わんが見張ってたよ。
だから土曜日の夜、少年が家出したのもすぐに見付けられたんだ」
そうして、彼は内藤の後をついていき──
限界を迎えた内藤から憑依するように言われて、それに従った。
以上だとドクオは言う。
机に手をつき項垂れていたツンは顔を上げ、内藤へ目をやった。
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676 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:05:18 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「……内藤君からも、そのときの話をして」
( ^ω^)「はあ……」
内藤から、と言っても、今のドクオの証言と大差ない。
ひとまず内藤は、学校でのことを一部始終話した。
内藤の過去やプギャーの件についてはここで初めて話題にあがったが、
それ以外は、オサム達も同じ話を繰り返されたようにしか感じなかっただろう。
川 ゚ 々゚)「ブーンかわいそう……」
【+ 】ゞ゚)「それで家出を?」
( ^ω^)「はい。──その後のこともドクオさんが言うのと変わりませんお。
ドクオさんは心配してくれてるみたいでした」
記憶を手繰り、そのときのドクオの様子などを説明した。
殊更そうしようという気はなかったが、擁護するような言い方になる。
最後は、公園でのこと。
( ^ω^)「泣き止もうとしても出来ないから、ドクオさんに取り憑いてくれと頼みました。
とにかく僕の体で泣き続けたくなかったんですお」
そこから先は覚えていない。
病室で目をさましたのだ。
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677 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:06:54 ID:bwAoZRz2O
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(*-ー-)「鬱田さんの証言と一致します」
川 ゚ 々゚)「嘘の臭いもしないよ」
【+ 】ゞ゚)「しかし、昼頃まで目覚めないほど衰弱していたんだよな。
それほど長く憑依していたのか?」
('A`)「や、大体2時間くらい……つっても少年が歩き通しで疲労が溜まってたようだし、
俺も休み休みとはいえ結構移動してたから、そのせいで弱っちまったのかと」
ξ゚听)ξ「ドクオさん」
ツンが声を挟み込む。
ドクオは口を止め、目付きで彼女に応えた。
ξ゚听)ξ「質問させて」
('A`)「おう」
長机の上から折り畳まれた紙を選んで、それを広げた。
地図だ。西の方が流石家周辺。
大きく印刷された地図の片側を内藤に持たせ、反対側をツンが支える。
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680 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:09:48 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「内藤君に憑依した公園っていうのは、ここにあるものよね」
赤いマジックで小さな公園を囲んだ。
ああ、とドクオが肯定する。
オサム達が把握したのを確認してから、ツンは指で道を辿ると、
細い道路に再びマジックで印をつけた。
ξ゚听)ξ「でも、あなた達が見付かったのは、公園から2キロメートルも離れた住宅街だった。
何故その場でじっとせずに移動したの?」
(,,゚Д゚)「外は寒いし、暖かい場所でも探してたんじゃ?」
ξ゚ -゚)ξ「公園を出てすぐ近くにコンビニがあるのに、それを無視して?」
('A`)「……流石んとこの家に戻ろうと思ったんだよ。
少年の意思にゃ反するだろうが、やっぱり、そうした方がみんなのためだろ」
ξ゚听)ξ「流石家とは全くの逆方向だわ。道筋としては単純な筈なんだけど」
たしかに地図で見てみると、何度か曲がりはするが大体が真っ直ぐで単調な道だ。
淀みなく答えていたドクオの口が、僅かのあいだ止まった。
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683 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:13:41 ID:bwAoZRz2O
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('A`)「……迷ったんだ。知らねえ道だったから」
ξ゚听)ξ「ドクオさんは平成7年の大晦日に亡くなって、
それからすぐにヴィップ町へ来たって前に言ってたわよね」
('A`)「何だよいきなり。
……そうだよ、ずっとこの町にいた。
だから過去に他県で起きてた憑依事件だって関係ねえし──」
ξ゚听)ξ「十何年もずっとここにいたのに、迷ったの?
さっきも言ったけど大して入り組んでない簡単な道よ。大通りにも近い」
口籠もる。
少ししてから、「本当に知らない道だった」と答えた。
ツンは納得していないようだったが、しかし、それ以上言えることもなかったのだろう。
地図を畳んでファイルに挟み込む。
【+ 】ゞ゚)「内藤ホライゾンへの憑依殺人未遂──だったか。
それも証明できなかったようだが」
ξ゚听)ξ「……今の段階では」
負け惜しみに聞こえなくもない。
しぃが白けた様子で肩を竦める。
オサムは鼻で息をつき、木槌の先で内藤を指した。
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684 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:15:42 ID:bwAoZRz2O
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【+ 】ゞ゚)「内藤ホライゾンはどう思っているんだ。
殺されかけたと感じているか?」
問いを反芻する。
先週のドクオとのやり取りが思い浮かび、それから、どんどん記憶を遡っていった。
( ^ω^)「僕は……」
──体を貸せと何度も頼まれた。
しかしそれには理由があった。
夏の裁判で、彼は法廷の床を叩きながら泣いた。
慟哭した。
母を想い、犯人を憎み、泣き叫んだ。
( ^ω^)「……ドクオさんが、悪いことするようには思えませんお」
('A`)「少年……」
焦りの滲んでいたドクオの顔が、ふっと和らいだ。
ありがとう、と呟いている。
傍聴席がさざめく。
多くは、ドクオを告発すると言ったツンへの疑念を呈する声だ。
だが。
鼻をひくひくさせたくるうだけが、首を傾げた。
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685 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:17:09 ID:bwAoZRz2O
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川 ゚ 々゚)「……ちょっと、嘘のにおいがする」
(;,゚Д゚)「へ?」
──そうだろうな、と思う。
ドクオから目を逸らす。
こつりと鳴った木槌の音が催促なのは分かっているので、言葉を続けた。
( ^ω^)「でも僕は、ツンさんがそう言うのなら、
そこにちゃんと意味があるんだろうとも思うんですお」
弁護士として功績を残すために無実の者を犯人に仕立て上げるような、そんな人間ではない。
少なくとも今の時点の内藤には、ドクオもツンも怪しいと言えなかった。
ツンの肩が僅かに下がる。力が抜けたのだろう。
緊張がほぐれたのか、呆れたのかは判断がつかなかったが。
('A`)「……そうかよ」
結局どっちなんだと野次が飛ぶ。
オサムが木槌を持ち上げたが、しぃが声を発すると、傍聴人達はぴたりと口を閉じた。
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688 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:20:40 ID:bwAoZRz2O
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(*゚ー゚)「まあ内藤君がそっちの席にいる時点で弁護人の味方なのは分かってたことですがね。
ただ忘れないでほしい、今のところ、弁護人は何も立証できていません」
(,,゚Д゚)「ブーンちゃんはああ言うけど、あたしはツンが早まった気がしてならないのよねー……」
( ФωФ)「……」
ふ、とロマネスクが吐息を漏らす。
──笑った?
ξ゚听)ξ「正直焦ってはいるけどね、早まっちゃいないわよ。
まだ訊きたいこともある」
(;'A`)「粘んなよー、もう……」
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689 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:22:44 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「──ロマネスクさんが捕まったのは、ある青年との出会いが切っ掛けだった」
話は次へ移った。
ロマネスクが傍聴席を瞥見する。
青年というのはワカッテマスのことだ。
先週、彼のおかげでロマネスクが証言するに至ったと聞いた。
(*゚ー゚)「猫の姿で現れた被告人に、何度か食事を与えていた彼ですね」
ξ--)ξ「彼からご飯をもらうのは、いつも決まった場所でした。
その青年が住むアパートの近く」
ξ゚听)ξ「そのアパートがどこにあるか、検事は当然知ってるわよね」
(*゚ー゚)「そりゃ勿論……このヴィップ町ですが」
ξ゚听)ξ「もっと細かな区域の話」
(*゚ー゚)「……ラウンジ××丁目」
川 ゚ 々゚)「ラウン寺?」
(*゚ー゚)「読みは同じですが……」
「ラウンジ××丁目のアパート」。
うっすらと聞き覚えがある。
いや、聞き覚え、と言える程はっきりした感覚でもない。
ただ、この状況と絡んで、何かを想起させる要素ではあった。
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690 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:24:38 ID:bwAoZRz2O
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ラウンジ。アパート。──幽霊裁判。
ドクオ──
( ^ω^)「あ……」
【+ 】ゞ゚)「つきまとい罪の現場と同じ場所か。昨年の」
内藤が至った答えを、オサムが口にした。
ツンは首肯する。
昨年の梅雨頃、ドクオが被告人となった裁判。
内藤が初めて参加した裁判。
証人として現れた女が真犯人だった裁判。
あの事件で亡くなった被害者が住んでいたアパートが、たしかにそこだった。
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692 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:27:33 ID:bwAoZRz2O
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【+ 】ゞ゚)「もしかして、ラウン寺と同じ名の土地だから何度も訪れていたのか?」
( +ω+)「……」
(*゚ー゚)「どうでしょうか。
あの一帯には猫が多いです。飼い猫も野良猫も、猫の霊も。
猫が寄りつきやすい土地で、被告人もそれに引かれただけかもしれません」
かつての住み処と同じ響きを持つ地だから近付いた、
猫として何となく引かれるものがあったから近付いた、
そのどちらになるかで印象は変わる。
彼は、ラウン寺で世話になった僧を殺した容疑をかけられているのだから。
──その点は今の問題ではない。
そう言って、ツンは自分へ注意を引き戻す。
ξ゚听)ξ「昨年、そのアパートに住む男性が亡くなりました。
おばけに付きまとわれた結果、浴室で……」
ξ゚听)ξ「犯人はとある妖怪でしたが、ドクオさんが誤認逮捕されました。
──そのアパートに出入りしていたのを目撃されたからです」
(;‘ω‘ *)
ドクオの背後。傍聴席。
ぽぽちゃんが、膝の上で手を握り締めていた。
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693 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:29:22 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「死亡事故があったのは1階の一部屋。
一方ドクオさんが出入りしていたのはアパート2階、右端の部屋」
ワカッテマスの部屋。
つきまとい罪の裁判に関する記憶を掘り返しつつ、ツンの話に耳を傾ける。
ξ゚听)ξ「この部屋は霊が溜まりやすくなっていて、
そのため人が住んでもなかなか続かず……」
溜まり場となっていたから、ドクオはそこで様々な情報収集を行っていたと語ったのだったか。
そうして内藤のことを知り、取り憑かせろとまとわりつくようになったのだ。たしか。
そのおかげで彼は昨年、容疑者として捕まってしまったのであった。
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695 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:30:46 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「しかしつきまとい罪の後、おばけ課とカンオケ神社の職員によってお祓いがされました。
たった一体のおばけを除いて、他の霊達は成仏するなり他の土地に移るなりしたそうです」
【+ 】ゞ゚)「なぜ一体は残したんだ?」
(,,゚Д゚)「他の霊から、彼女──あ、その『一体』は女性のおばけね。
彼女は無害だし昔からここに住んでるって聞いたから、
無理に追い出す必要もないかと思って」
ぽぽちゃんだ。
お祓いを終えてから少しして、ワカッテマスとビロードが越してきたそうだ。
無害という評価に違わず、彼らからは円満にやっている印象を受けた。
特にビロードと仲が良かったように思う。
──ツンが手のひらをスーツに擦りつけ、握りしめる。
次いで手を開き、同様に口を動かした。
ξ゚听)ξ「──彼女は、ドクオさんから命令を受けていました」
.
-
698 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:32:40 ID:bwAoZRz2O
-
(;‘ω‘ *)
ぽぽちゃんは膝の上で両手を重ね、ひたすらに俯いている。
その隣で、ビロードの瞳はぽぽちゃんと自身の足元を往復していた。
次に内藤はドクオを見る。
彼は眉を顰めていたが、口は反論もないまま引き結んでいた。
【+ 】ゞ゚)「命令?」
ξ゚听)ξ「『この部屋は霊道が歪みやすいから幽霊妖怪がよく集まる。
その影響で部屋の住人にも霊的な力が宿ることがあるだろう、
特に強い力を持つような奴がいたら、仲良くなって、いずれ俺に寄越せ。
取り憑くなら霊感持ちがいい』──大体このようなことを」
しぃとギコは何も言わない。
既に知っていたようだった。
オサムは目を丸くさせて(といっても元からぎょろりとした目付きなので大した違いは無いが)、
内容を整理するように沈黙すると、木槌で肩を叩き、
「あー」と発言の取っ掛かりと思しき唸り声をあげた。
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700 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:33:36 ID:bwAoZRz2O
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【+ 】ゞ゚)「それは……なかなか不穏というか、結構大事な話じゃないか」
ξ゚听)ξ「はい、なかなか不穏で結構大事な話です」
( ^ω^)「僕もそう思うんですが」
(,,゚Д゚)「そうよねえ」
──事実、ワカッテマスとビロードは、あの部屋に住み始めてから霊が見えるようになったと言っていた。
ワカッテマスはそこまで強い霊感を得なかったようだが、
ビロードは兄よりも顕著だった筈だ。
ξ゚听)ξ「彼女は言われた通りにしました。
新たな住人であった兄弟の、弟の方に目をつけ──
自分に懐くように仕向け、信頼を得ていったんです」
(;><)
傍聴席のビロードが唇を噛み締めている。
ワカッテマスが何か話しかけると、ビロードは首を振った。
そうして顔をしっかりと持ち上げ、涙の滲む目でこちらを見据えた。
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703 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:36:47 ID:bwAoZRz2O
-
('A`)「……」
ドクオはといえば、先程までの焦りと裏腹に
腕を組んで悠然と構えていた。悠然と、というのも違うのかもしれないが、僅かばかり余裕が見える。
彼の目は胡乱げにツンを捉えている。
【+ 】ゞ゚)「それは、そのおばけを呼んで詳しく話を聞くべきではないのか?」
ξ゚听)ξ「彼女は人と話すのが苦手ですので」
(*゚ー゚)「まあ──真実ではあるようです。念入りに確認しましたから」
川 ´々`)「あれ疲れた」
しぃが情報を追加する。
くるう立ち会いのもと、ツンを「通訳」にして、しぃとギコがぽぽちゃんの話を聞いたのだそうだ。
具体的に言えば、ぽぽちゃんから聞いたという話をツンがギコ達に語り、
逐一ぽぽちゃんには「今のが本当なら頷いてくれ」と言って、
くるうにはツンの言葉の臭いを確認してもらう、という方法。面倒臭い。
オサムは労るようにくるうの頭を撫で、ドクオへ向き直った。
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704 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:38:34 ID:bwAoZRz2O
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【+ 】ゞ゚)「証人、何故そのような命令をしたんだ? 目的は何だ」
('A`)「……質問に答える前に、ちょっと、こっちからも質問いいスかね」
【+ 】ゞ゚)「……重要なことならば」
ドクオは腕を解き、後ろへ振り返った。
傍聴席へ歩いていく。彼が近付く度に傍聴人達のざわめきが増した。
そして彼は、ロープの向こうに座る彼女──
ぽぽちゃんの腕を掴んだ。
(;‘ω‘ *) ポッ…
(;><)「あ、ぽ、ぽぽちゃん!」
('A`)「そのおばけってのが、こいつだよな。たしかに俺の知り合いだ。
命令の件の真偽は別として」
ドクオが手を引けば、彼女は観念したかのように立ち上がった。
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706 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:40:20 ID:bwAoZRz2O
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【+ 】ゞ゚)「ああ、そのおばけか。最近うちに預けられたから何かと思ったが」
(;,゚Д゚)「聞いてなかったのオサムちゃん……」
【+ 】ゞ゚)「宮司が説明しなかったんだ」
手を離し、ドクオはわざとらしくツンとぽぽちゃんを見比べる。
「ふうん」と唸り、顎に手をやって、ツンに問うた。
('A`)「弁護士。『聞いた』んだな? こいつから話を聞いたっつったな」
ξ゚听)ξ「……聞いたわ」
('A`)「こいつと話をしたってことだな?」
ξ゚ -゚)ξ「……」
【+ 】ゞ゚)「弁護人?」
黙るツンに、オサムが怪訝な声を漏らした。
内藤は隣から顔を覗き込む。しぃもギコも不思議そうにしていたので、
ツンが何か隠しているのは間違いなさそうだ。
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708 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:41:32 ID:bwAoZRz2O
-
('A`)「なあ、あんた」
(;‘ω‘ *) ポ…
('A`)「さっきオサム様も言ったけど、あんたの証言は重要だ。
折角ここに居るんだし、いっぺんあんたの口から話してやったらどうかな」
(;‘ω‘ *) …ポッ…
ξ;゚听)ξ「っだ、だから彼女は話すのが苦手で……!」
('A`)「でも弁護士には話したんだろ」
(;‘ω‘ *)「……、……っ」
何だ。ツンは何を焦っている。
ただごとではない。
ぽぽちゃんが着物を握りしめる。
全員が彼女の挙動に注目している。
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710 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:44:05 ID:bwAoZRz2O
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──とても長く感じる沈黙を経て、彼女は声を発した。
(;‘ω‘ *) ……ミャア
高くて、細くて、甘えるような。
(;*゚ー゚)
(;,゚Д゚)
しぃとギコが、面喰らう。
内藤の口元が、ひくりと動く。
ξ;--)ξ
ツンだけが額に手を当て、後悔を面輪に浮かべていた。
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712 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:46:32 ID:bwAoZRz2O
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(;‘ω‘ *) ニャア、ニャウ、…ミィ
川 ゚ 々゚)「……にゃんこ」
【+ 】ゞ゚)「ふざけているわけではないよな」
(;‘ω‘ *)" コクコク
【+ 】ゞ゚)「ええと……猫の妖怪か何かか」
(;‘ω‘ *)" コクコク
('A`)「前に俺と話したときも、こういう鳴き声しか出しませんでしたよ」
( ФωФ)
ロマネスクがぽぽちゃんを見る。
彼になら、彼女の言葉の意味が分かるだろうか。
分かったところで、教えてはくれないだろうけれど。
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714 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:47:38 ID:bwAoZRz2O
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内藤は前を向いたままツンの脇腹をつついた。
つついたというか軽く打った。
( ^ω^)「ツンさん」
ξ;゚听)ξ「……私だって、先週初めて知ったのよ」
ドクオが事件に関わっていると知り、ならばドクオと面識のありそうな彼女に話を聞くべきだと
ワカッテマスの部屋で彼女と向かい合い、いざ話そうとしたら──これだ。
さぞ困ったことだろう。
ξ;゚听)ξ「苦労したんだからね、本人にも検事にも怪しまれないように事を運ぶの……。
警戒解くのも時間かかったし……」
(;,゚Д゚)「ちょっと、何ひそひそ話してんの」
ξ;゚听)ξ「いえ別に」
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715 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:48:38 ID:bwAoZRz2O
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(;*゚ー゚)「おい! あんた、おい! 何だあれは!」
ξ;゚听)ξ「……な、何って?」
(;*゚ー゚)「本人から『聞いた』って言っただろう! ほんとに聞いたのか!? あれで!」
ξ;゚听)ξ「聞、いた……っていうか……見たっていうか」
尻窄みに小さくなっていく声。
しぃは最早、青筋すら立てて「あ?」などと柄悪く聞き返していた。
表情が感情に追いついていないのか、見開いた目と歪な笑みを浮かべた口が恐い。
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716 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:50:02 ID:bwAoZRz2O
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川 ゚ 々゚)「でもツンが『あの人から聞いた』って言ったとき、臭わなかったよ。
ツンが話してる間も全然……」
(#゚ー゚)「説明しろ!!」
ξ;゚听)ξ「き、聞いたのは確かなのよ、ほんとに……」
(#゚ー゚)「彼女は人間の言葉を話せるのか? それとも字が書けるのか」
"(;‘ω‘ *)" ブンブン
(;,゚Д゚)「無理みたいだけど」
【+ 】ゞ゚)「しかし本人から聞いたというのは確かなんだろう?」
(;*゚ー゚)「ああもう、どうなってるんだ!」
どうなっているのか、は。
内藤にとっては然程不思議ではない。
──ツンが「聞いた」のは事実だろう。
彼女が聞いたのは、ぽぽちゃんからの証言ではなく、
ぽぽちゃんの記憶の中のドクオの声だ。
ならば、それは確かに、本当にあったことなのだ。
内藤はそのことが分かる。
けれど──しぃ達は分からない。
この流れへの疑問は証言そのものへの疑惑に変わる。
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719 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:51:55 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)(……ドクオさんは?)
ツンの「追体験」について知っているのは、内藤とドクオだけ。
ドクオも分かっている筈だ、その力のおかげで情報を得たのだと。
彼はどんな意図で、この展開へ運んだのだろう。
彼の真意は。
皆の目がツンに向けられる中、内藤だけが、ドクオを盗み見た。
そして──それが、視界に映った。
( ^ω^)「、」
ドクオの瞳が一瞬、ひどく冷たいものになったのを。
それでいながら、笑むように歪んだのを。
本当に一瞬のことで、すぐに無気力な眼差しへと戻ったが。
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721 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:53:17 ID:bwAoZRz2O
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(;*゚ー゚)「──」
ξ;--)ξ「──」
言い合う声が遠ざかる。
いや、耳には入るが、その意味を理解しようとしていないため、音でしかなくなった。
──今の目は何だ。
今は、彼が喜ぶような場面なのか。たしかに論点は彼からズレている。
だとしても、あの冷たさは。あの暗い色は。
音が途切れた。
そこに割り込むように、ドクオが唇を動かした。
頭の切り替えが一瞬遅れ、初めの呼び掛けも音でしか認識できなかったが、直後の言葉は声となって脳に届いた。
('A`)「──お得意の『あれ』でも使ったってのか?」
木槌による牽制はなかった筈だけれど、法廷は静まり返っていた。
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722 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:54:17 ID:bwAoZRz2O
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(;*゚ー゚)「……あれとは何です」
総意でもある問い掛けを、しぃが投げる。
ぽぽちゃんも答えを求めてドクオの顔を窺った。
待って、というツンの制止は間に合わない。
間に合ったところで、無視されていただろうけれど。
ともかく彼は、それを言ってしまった。
('A`)「おばけの記憶を辿れるんだとよ。
今までにも、何度もやってたらしい」
ξ;゚听)ξ「……あ……」
ツンの漏らした声は、ひどく弱々しかった。
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728 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 23:57:36 ID:bwAoZRz2O
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('A`)『あんたは俺を信じてくれたし、俺も信じる。誰にも言わねえ』
かつてのドクオの言葉が、脳裏で弾けて消える。
当然の流れのように思えて、いっそ滑稽だった。
ツンがドクオを信じることをやめたから、彼も、彼女の秘密を暴露したのだ。
【+ 】ゞ゚)「……本当か」
固まるしぃに代わり、オサムが問う。
臭いを嗅ぎ漏らすまいとしているのか、くるうは真っ直ぐツンに顔を向けていた。
暖房は充分に機能しているのに、いやに寒い。
ξ;--)ξ
ツンの唇がわななく。
一度きつく瞼を閉じて、それから、目と口をゆっくり開いた。
ξ;゚听)ξ「……はい……」
臭いの有無を確認し、くるうがオサムを見上げて首を振った。
ギコが頬に添えた手が、するりと落ちる。