-
593 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:46:54 ID:bwAoZRz2O
-
翌日、夕方。
ヴィップ署、取調室。
ξ゚д゚)ξ
机に突っ伏してぐったりしている女が1人。
川 ゚ 々゚)「じゃあねー」
(*゚ー゚)「ご足労かけまして」
(,,゚Д゚)「ごめんねー、わざわざ。はいケーキ。オサムちゃんと食べて」
川*゚ 々゚)「わーい! いっつも和菓子ばっかだからオサム喜ぶ!」キャッキャ
(*゚ー゚)「あちらで宮司さんがお待ちです。気を付けてお帰りください」
川*゚ 々゚)「はーい」
(,,゚Д゚)「あなたも宮司さんに預けないとね。大丈夫?」
(*‘ω‘ *)" ポッ…
「ぽぽちゃん」が席を立つ。
ツンに深々と頭を下げてから、ギコに続く形で取調室を出ていった。
-
594 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:47:54 ID:bwAoZRz2O
-
部屋に残ったのは、ツンとしぃ。
ツンは閉められたドアをひたすら眺めた。
(*゚ー゚)「……今の話は本当なんですね」
ξ゚д゚)ξ「くるうさんが嘘だって言わないし……
ぽぽちゃんさんも異議唱えなかったでしょ……」
なかなか立ち上がらないツンを見下ろして、しぃが呆れた顔をする。
「早く立ってください」と急かされても、体が言うことを聞かない。
白状すると、昨日も寝ていないのだ。
2日徹夜した状態でぽぽちゃんの取り調べに同席し、
しかも結局ほとんどツンが1人で喋ったようなものなので、ひどく疲れた。
ぽぽちゃんはカンオケ神社に預けられるだろう。
凶悪犯というわけではない。強く拘束されることもあるまいが、さて、どうなるか。
-
596 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:49:06 ID:bwAoZRz2O
-
気付けば常に何かを考えっぱなしで、まったく休まらない。
疲労も眠気も感じるが、頭も体も動かしてばかりで。
しぃが溜め息をつき、机に寄り掛かった。
(*゚ー゚)「……鬱田さんについて、どうお考えですか」
ξ゚З゚)ξ「……」
左頬をべったり机につけたまま、目だけを動かしてしぃを見上げる。
ξ゚听)ξ「あなたは?」
(*゚ー゚)「僕が犯人だと思っているのはロマネスクだ」
ξ゚听)ξ「そう」
(*゚ー゚)「で、あなたの答えは?」
どう言おうか。
目を閉じ、考える。考える。考える。
瞼が持ち上がらなくなった。
開きかけた口がもごもごとしか動かない。
「ツンさん」と呼び掛ける、しぃの、声が、
.
-
597 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:50:29 ID:bwAoZRz2O
-
(;、;トソン『ありがとうございました、ツンさん、本当にありがとうございました』
ξ;゚听)ξ『どんだけ泣くのトソンさん。裁判終わったの昨日よ』
(;、;トソン『だ、だって、ずっと恐くてえっ。どうしようって思っててっ。ツンさん、ツンさん、ありがとうございました』
ξ;゚听)ξ『内藤君の手柄だわ。あの子の証言のおかげで無罪判決が出たんだから』
(;、;トソン『もちろん内藤さんもそうですけど、でもでもツンさんだってすごく頑張ってくれたからあっ』
ξ;゚听)ξ『私は本当に時間稼ぎしか……』
(;、;トソン『ツンさんが私のこと信じてくれたからじゃないですか!
ツンさんが私のこと守ってくれたからじゃないですか……』
ξ゚听)ξ『……』
-
598 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:51:43 ID:bwAoZRz2O
-
(;、;トソン『あ、あんなの、最初から諦められてもしょうがなかったのに、
ツンさんはずっと、ずっと私の無実を信じてくれました』
(;、;トソン『だから私もツンさんのこと信じられたんです、任せようって……』
ξ゚听)ξ『逆だわ、トソンさん。あなたが私を信用してくれたから、私もそう出来たのよ。
……あなたに信用されなければ、私も分からなかったわ』
(;、;トソン『も、もう、順番なんてどうだっていいんです。
……嬉しかったです、私。ありがとうございました……』
ξ゚听)ξ『そろそろ泣き止まない?』
(;、;トソン『無理です』
ξ゚听)ξ『無理かー』
(;、;トソン『私、一生ツンさんについていきます……一生終わってますけど……』
ξ゚听)ξ『笑えないわ……』
(;、;トソン『冗談言うの苦手で……。
でも、ツンさんについていきたいっていうのは本当です』
(;ー;*トソン『私、ずっとずっとツンさんのこと信じてますから』
.
-
600 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:53:45 ID:bwAoZRz2O
-
目を覚ますと、眼鏡が視界を覆っていた。
ξ )ξ「ふんっ!!」
(-@∀@)「きゃんっ! モー痛いなァ、センセイ」
頭突きをかますと眼鏡が仰け反った。
身を起こす。
建物の中だ。廊下だろうか。スーツや警官の制服を纏った男女が行き来している。
体の下で、ぎしりと軋む音。やや硬めの長椅子に寝かせられていたようだ。
(*゚ー゚)「起きました?」
ξ゚听)ξ「えーっと……どこ」
(*゚ー゚)「ヴィップ署の廊下です。
取調室でいきなり寝始めて、いくら声をかけても起きないし、
居眠りで部屋を占領するのも良くないので廊下に引きずってきました」
ξ;゚听)ξ「うっそ、どんぐらい寝てた!?」
(*゚ー゚)「一時間くらい?」
-
603 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:55:43 ID:bwAoZRz2O
-
ξ;゚听)ξ「一時間ここで!? 人目に晒されて!?」
(*゚ー゚)「よだれ垂らしてイビキかいてました」
ξ;*∩凵ソ)ξ「いやあっ! お嫁に行けない!」
(*゚ー゚)「ですって、もらってあげたらいかがです」
(-@∀@)「遠慮します」
ξ;゚听)ξ「つか何でアサピーがいるの!」
(*゚ー゚)「家に運んでもらおうかと思って、そのへん探したら案の定いました」
ξ゚听)ξ「つきまとい罪で訴えよう」
(-@∀@)「センセイが無茶してそうだったから心配してあげてたッテいうのに失礼な」
ξ゚听)ξ「ていうかこいつに運ばせようとするのやめて。身の危険を感じる。
そこそこ美形で心優しくて由緒ある家系の高身長独身男性にして」
(*゚ー゚)「すみませんギコは仕事があるので」
ξ゚听)ξ「つくづく勿体ねえ」
口を動かしていると頭も回ってきた。
仮眠のおかげか、一時間前よりはすっきりしている。
-
609 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:59:26 ID:bwAoZRz2O
-
ξ゚听)ξ「……寝言とか言った?」
(*゚ー゚)「……トソンさん、とは言いましたね、一度」
ξ゚听)ξ「そう」
隣に座ったアサピーが、缶コーヒーをツンの手に持たせた。
お礼代わりに、姿勢悪く背凭れにだらんと寄り掛かって足を組んでいる彼を叩く。
(-@∀@)「どーします、センセ。帰るなら送りマスヨ。
今なら特別キャンペーンで、送り終わったら僕も素直に帰りマス」
ξ゚听)ξ「ん……」
ちびちび、コーヒーを飲む。
どうしてあんな夢を見たのだろう。去年の夏の記憶だった。
どうして今、トソンの夢を。
昨日今日と、ドクオや内藤のことばかりで、トソンを思い返す暇がなかったのに。
ξ゚听)ξ「……ギコどこ?」
(*゚ー゚)「デスクじゃないですか」
ξ゚听)ξ「ちょっとここで待ってて」
(-@∀@)「ハイハイ」
飲みかけのコーヒーをアサピーに押しつけ、ツンはおばけ課へ向かった。
.
-
611 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:00:54 ID:bwAoZRz2O
-
(,,゚Д゚)「べたべた触らないでね。汚しちゃ駄目よ」
ξ゚听)ξ「分かってるわよ」
ギコの机の前で、ツンは一つの小袋を掲げた。
トソンがミセリに憑依するために書いてもらった契約書。
指紋採取のための溶液につけたのか、変色してしまっている。
(,,゚Д゚)「何回見ても中身変わんないわよ?」
ξ゚听)ξ「分かってるってば……」
他の職員に呼ばれたギコが、席を離れた。
所用で出ている者が多いのか近くに人はいない。
ツンは机の陰に隠れるようにしゃがみ込み、小袋を開けた。
契約書を取り出す。
トソンという霊が確かに存在していたことを示すものは、最早これだけだ。
彼女自身は、もう消えてしまった。
-
613 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:01:59 ID:bwAoZRz2O
-
ξ゚听)ξ「トソンさん」
自分が彼女にしてやれたことなど、本当に少ない。
ξ゚听)ξ「……トソンさん」
彼女が望んだことは何だったろう。
ミセリが目覚めること。
真実が明らかになればミセリが目覚めるのではないかと、彼女は言った。
ミセリを起こさないと。
真実を、明かさないと。
ξ )ξ「トソンさん……」
呼び掛ける。
返事など、あろう筈もないのに──
-
615 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:02:53 ID:bwAoZRz2O
-
──最初に感じたのは、熱だった。
体中を削り取られたような痛みが走る。
それから一瞬遅れて、脳裏を駆け巡る情景があった。
-
616 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:03:47 ID:bwAoZRz2O
-
月明かりが辺りをうっすらと照らしている。
白い。壁。床。
ベッド。
横たわる女。──ミセリ。
病室だ。
ベッドの脇で縺れる影。2人の男。
それを、「自分」は床に伏せながら見ている。
-
618 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:05:47 ID:bwAoZRz2O
-
動かなければ。逃げなければ。
手も足も動かない。逃げられない。
痛い。痛い。苦しい。──死ぬ。死んでしまう。
争っていた片方のシルエットが、もう片方のシルエットを踏みつけた。
男は少し迷った様子で、こちらを見た。
それから病室の入口を睨み、舌打ちして窓から去っていく。
よろけながらも、先程まで踏まれていた方の男が立ち上がった。
かと思えば屈み込み、何かを拾って、それをミセリの手に握らせる。
そうしてようやく、逃げた男の後を追った。
早く──
──ツンのところに、行かないと。
思うのに、やはり体は動かない。
死が全身を回る。
二度目の死。これで本当に、最後。
最後の最期に思ったことは。
-
620 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:06:41 ID:bwAoZRz2O
-
「ミセリの目覚めるところ、見たかったなあ」
ツンの口が勝手に動いた。
吐息のような小さな声だった。
-
622 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:08:14 ID:bwAoZRz2O
-
目まぐるしい記憶の渦。
全てを理解する。
今の光景、感情、その視点の主と、彼女の末路。
はらはらと涙が零れる。
彼女の感情の名残なのか、彼女を想ったツンの悲嘆なのかは分からない。
涙を拭って契約書を何十秒も何分も見つめ続け、何度も名を呼んだが、
二度と、先の情景は訪れなかった。
サイコメトリー。
物に宿る残留思念を読み取る力。
いつぞや、彼はツンの力がそれではないかと言った。
なるほどたしかに似ているが──やはり、別物だ。
-
623 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:11:29 ID:bwAoZRz2O
-
ξ;;)ξ
文面を親指の腹で撫でる。
今の今まで、ここに「トソン」がいたのだ。
誰にも感知できなかったほど、極々わずかな。
残り香程度の、小さな小さな彼女の残滓。
ツンを信じると言った彼女が、
ツンに知らせなければという最後の使命を終わらせるために。
戻ってきたギコが、袋から証拠品を出しているツンを咎めようとしたが、
ツンが涙を流しているのに気付くと、口を閉じた。
*****
-
625 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:12:48 ID:bwAoZRz2O
-
#####
ミセ*;−;)リ
∧ ∧
( ФωФ)『貴様ようやく帰っ──……臭いぞ』
ミセ*;−;)リ『ただいまロマ……』
∧ ∧
( ФωФ)『……』
.
-
626 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:13:32 ID:bwAoZRz2O
-
ミセ*;−;)リ グスッ、グスッ
∧ ∧
( +ω+)
ミセ*;−;)リ グスッ…
∧ ∧
( +ω+)(最近は落ち着いていたくせに、面倒な女である)
ミセ*;−;)リ『ロマ』
∧ ∧
( Фω+)
ミセ*;−;)リ『ロマ、聞いてる?』
∧ ∧
( +ω+)
ミセ*;−;)リ『……あのね、いつでもいいの、いつでもいいから……』
-
628 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:14:28 ID:bwAoZRz2O
-
ミセ*;−;)リ『私のこと、殺してくれないかなあ……』
∧ ∧
( ФωФ)
#####
-
629 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:15:20 ID:bwAoZRz2O
-
3月2日。
土曜日。
廃工場。
(*゚ー゚)「今夜で終わらせますよ」
学生服の裾を軽く引き、背筋を伸ばしてしぃが言う。
ξ゚听)ξ「私もそのつもり」
首元の白いリボンを結び直し、爪先を鳴らしてツンが言う。
──静かだった。
傍聴席はすっかり埋まっていて、おばけも人も話し声を発しているのに、
ツンとしぃの間は何物も入り込めないかのように。
静かだった。
-
634 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:16:45 ID:bwAoZRz2O
-
(,,゚Д゚)「ブーンちゃん大丈夫?」
( ^ω^)「はいお」
しぃの隣でギコが問う。
ツンの隣で内藤は頷く。
大丈夫、というのには、色々な意味があったろう。
体調。学校のこと。諸々の心労。
全てが大丈夫かと問われれば手放しに認められないが、それでも「大丈夫」と答えた。
(´<_` )『これで最後にしろよ』
小一時間前、見送りながら弟者はそう言った。
内藤は「分かった」と答えたし、ツンも「無事で帰すから」と弟者に約束した。
最後。
内藤が関わるのはこれが最後なのだから、ツンの足を引っ張るわけにはいかない。
-
637 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:18:42 ID:bwAoZRz2O
-
【+ 】ゞ゚)「静粛に」
オサムが木槌を宙に打ちつける。
傍聴席が静まった。
lw´‐ _‐ノv o川*゚ー゚)o
傍聴席の最前列に、シュールとキュートの姉妹が並んでいる。
誰にでもおばけが見える法廷内ならキュートに会える、というツンの言葉に従いシュールは傍聴に来たという。
ツンや内藤は裁判の準備でごたついたので、2人の再会シーンには立ち会えなかった。
あれだけ探し求めた妹と会えたのにも関わらず、シュールは相変わらず眠たそうな目でこちらを見つめている。
本当にマイペースというか。
( <●><●>) ( ><) (*‘ω‘ *)
さらにその隣に、ワカッテマスとビロード、ぽぽちゃんが。
ぽぽちゃんは──何か、逮捕される(かもしれない)ようなことをしたと、ツンから聞いた。
重い罪ではないし、本人も反抗的でないらしく、そのため傍聴を許されたという。
近くでおばけ課の職員が監視してはいるようだが。
ぽぽちゃんを横目に見るビロードの瞳は、ひどく悲しげだった。
-
640 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:20:24 ID:bwAoZRz2O
-
──それから内藤の視線は、ツンを挟んで反対隣の方へ向けられた。
( ФωФ)
ロマネスクが椅子に座っている。
背はやや丸く曲がり、目は一点を見つめて──睨んでいる。
( ^ω^)「……ロマネスクさんはあっちに立たないんですかお?」
内藤達のいる場と傍聴席とを区切るロープを指差しながら、小声でツンに問う。
ヴィップ町の幽霊裁判では、被告人はオサムと向かい合う位置に立たされる筈だが、
今日のロマネスクは弁護人席に座らされている。
ξ゚听)ξ「今日はドクオさんの証言が主だし、訊くことも多くなるだろうから
ドクオさんをあそこに立たせるんだと思う」
( ^ω^)「適当なもんですお」
-
641 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:23:18 ID:bwAoZRz2O
-
【+ 】ゞ゚)「証人、向こうに立ってもらえるか」
タイミング良く、オサムが自身の斜め後ろに控えていた男へ指示を出した。
男が返事をし、オサムの傍を過ぎると、弁護人席と検察席の間を進んでいく。
彼の動きをロマネスクの顔が追う。入廷してからずっと、ロマネスクは彼を睨んでいた。
そうして男は、傍聴席から2メートルほど距離を空けた位置で立ち止まると、
傍聴席に背を向け、オサムを正面から見据えた。
('A`)「……この町じゃ、ここは被告人の立ち位置じゃねえんスかね」
【+ 】ゞ゚)「今夜はこの方が都合がいい。
今の段階では、証人は検察側とも弁護側ともつかないから
どちらの席に立たせるのかも悩むしな」
男──ドクオは肩を竦めた。
腕を組んで、あちこちに視線を飛ばしては長息する。
苛立っているのは明白だ。
不服と不安の混じる表情は、つきまとい罪や道連れ罪の裁判で幾度か見てきたものだった。
【+ 】ゞ゚)「……くるう、そろそろ始めるぞ」
川 ゚ 々゚)「うん」
オサムの左手とくるうの右手が絡む。
それから、2人はゆっくりと手を離した。
-
642 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:24:15 ID:bwAoZRz2O
-
【+ 】ゞ゚)「準備はいいな」
ξ゚听)ξ「はい」
(*゚ー゚)「問題ありません」
オサムが右手を持ち上げる。
木槌を握る手に力が篭る。
【+ 】ゞ゚)「それではこれより、被告人ロマネスクの幽霊裁判を──」
傍聴席の空気がたじろぐ。
ツンの顔がオサムに向いた直後、木槌は振り下ろされた。
【+ 】ゞ゚)「──開廷する」
*****
-
645 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:25:34 ID:bwAoZRz2O
-
(*゚ー゚)「おさらいをしましょう」
初めに、しぃが前回の審理の流れを掻い摘まんで説明した。
17年前の拝み屋の不審死に端を発した憑依事件。
ミセリの事件を含むそれらは、共通点の多さから同一犯によるものとされた。
また、ロマネスクの痕跡が何件も見付かっていることが、彼の犯行を示している。
しかし、ミセリの病室で警備の霊と都村トソンの殺害事件が発生した日、
ロマネスクでもトソンでも、警備の者でもない何者かが現場に居合わせた可能性が出てきた。
さらにロマネスクは、昨年の夏、ミセリの病室でドクオと遭遇した際
ドクオが逃げ出したため彼を追いかけ、結局取り逃がした、と語った。
憑依事件はともかくとして、法廷は、
ドクオが何らかの形でミセリの件に関与している──恐れがあるという結論に至る。
(*゚ー゚)「先週はそこで閉廷となりました。
今日は、その続きから始めます」
しぃは、書類へ伸ばした手を止めた。
早速ツンが挙手していたのだ。右手を高々と。
-
646 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:28:16 ID:bwAoZRz2O
-
【+ 】ゞ゚)「どうした弁護人」
下ろした手を、腰に当てる。
左手は机につき、やや前のめりになった彼女は上目にしぃを見た。
表情は真剣だ。
ξ゚听)ξ「前回は曖昧なまま進めて悪かったわ。
だから今日は、こちらの方針を言わせてもらう」
(*゚ー゚)「……」
椅子に腰掛けたまま、ロマネスクがツンの顔を見上げた。
目を一度合わせて、ツンはドクオへ顔を向ける。
ξ゚听)ξ「ドクオさん」
('A`)「何だよ」
ξ゚听)ξ「私は──」
ツンが息を吸い込む。
瞳には力が込められていて、しかし睨むのとは違う強さがあった。
一拍。
唇が動く。
黒衣の弁護士は、一言、告げた。
-
647 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:28:58 ID:bwAoZRz2O
-
ξ゚听)ξ「あなたを告発します」
その発言の直後、ロマネスクが難しい顔をして、目を閉じた。
-
648 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:30:12 ID:bwAoZRz2O
-
( ^ω^)「……こくはつ……」
ドクオを──何らかの罪に問うというのか。
流れからして、ツンの意図を推測するにも一つの答えしか浮かばない。
傍聴席が、瞬時にどよめく。
オサムが木槌を一度打っただけでは騒ぎが収まらず、二度三度と続けてようやく鎮静化した。
(;'A`)「……何の冗談だよ、弁護士」
ξ゚听)ξ「私が訊きたいくらい」
ドクオは驚愕に声を震わせていた。
内藤も戸惑ってはいたが、本人のそれとは比べ物にならないであろう。
当然のように、困惑は怒りへ変わり出す。
(#'A`)「てめえ、やっぱり俺を!!
……弁護士が人に罪なすりつけんのかよ!!」
-
650 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:32:03 ID:bwAoZRz2O
-
【+ 】ゞ゚)「落ち着け証人。
──弁護人、告発と言うが、何の罪について告発するというんだ」
ξ゚听)ξ「一連の憑依事件。及び、先日の殺霊事件」
(*゚ー゚)「全て彼の仕業だと?」
ξ゚听)ξ「ええ。それと、内藤君への憑依殺人未遂も追加で」
ちらりと内藤を一瞥し、ツンの目は正面へ向けられる。
相対しているしぃが鼻白んだ。
(*゚ー゚)「やっぱりそう来ますか」
(,,゚Д゚)「予想の範疇だわね」
(#'A`)「なに落ち着いてやがる! てめえら言っただろ、俺を疑っちゃいないって!」
(*゚ー゚)「ええ勿論。──弁護人! 僕は事件の犯人がロマネスクであると確信している。
前回の審理でも明白であるし、今回、鬱田さんの証言を聞いてもそれが揺らぐことはないでしょう」
-
653 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:35:35 ID:bwAoZRz2O
-
(*゚ー゚)「であるにも拘わらず、そこまで言い出したからには、鬱田さんが犯人であることを
証拠でもってはっきり示してもらわなければなりません。
『疑わしい』『もしかしたら犯人かも』、その程度では足りないのです!」
ξ゚听)ξ「……行けっかなー……」
( ^ω^)「は?」
(*゚ー゚)「この法廷にて、あなたの主張を証明できなければ
今日こそ被告人の有罪は確定します。……よろしいですね」
こくり、無言で頷くツン。
いや待て、ついさっき小声でとても危なっかしいことを言わなかったか。
決め顔で頷いている場合か。
また傍聴席で声が上がり、それを切っ掛けにして波及していく。
ただし、今度は木槌一発で収まった。
( ФωФ)「……弁護士」
ロマネスクが小さな声でツンを呼び、しかしそれ以上は言葉を飲み込んだ。
-
658 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:41:26 ID:bwAoZRz2O
-
【+ 】ゞ゚)「告発に至った根拠は何だろうか」
ξ゚听)ξ「殺霊事件の日にミセリさんの病室から見付かった外れくじ、
前回の審理での被告人の証言、内藤君に憑依していた事実──などです。
ドクオさんが亡くなったのが18年前で、最初の事件が起きたのが17年前といった時期の近さも」
(#'A`)「だから! 外れくじが俺のものだと決めつけてんのもおかしいが、
そもそも、その被告人の証言が正しいって証拠がねえだろうがよ!!」
川;゚ 々゚)「……オサム……」
怒鳴り声に怯えたくるうが、オサムの袖口を掴む。
それに気付くとドクオは口を噤んだ。
(*゚ー゚)「……外れくじを引いたのは、僕を含め大勢いました。
職員による回収が始まる前に法廷を出た霊や人は──回収したくじの数から計算すると、21人。
内3名は僕とギコと同行者で、僕達は帰宅してからごみ箱に捨てましたので、それを除いて18人。
さらにそこから鬱田さんとアサピーさんを抜いて16人」
その16人の確認はとれているという。
どのような捜査方法かは分からないが、よく見付け出したものだ。
アサピーのようにメモ紙に使ったという者が1人だけいて、それを除けば、
やはり外れくじを保管しているような者はいなかった。
大抵は屑籠か道端に捨ててしまったそうだ。
が、事件が起きた時間帯のアリバイはほとんど裏が取れたし、
そうでない者にもミセリやトソン達との関係は全く見られなかったため、
彼らが事件に関与した可能性は著しく低い。
-
659 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:43:11 ID:bwAoZRz2O
-
(*゚ー゚)「──ですので、あの外れくじが鬱田さんのものだという点には同意します」
(;'A`)「……おい、検事……」
しかし、と、力強い声でしぃは続ける。
(*゚ー゚)「病室で落としたのだと、誰が言い切れます?」
ξ゚ -゚)ξ「……」
( ^ω^)「……別の場所で落としたものを、誰かが病室に運んだ?」
(*゚ー゚)「そう考えることは出来る」
本来あった場所から別の場所へ──
内藤の脳裏に浮かんだのは、N県の事件だった。
死体が動かされたことで、内藤とドクオに嫌疑がかけられた事件。
(*゚ー゚)「そして鬱田さんが言うように、
被告人の証言が真実であるのか否かは、まだ誰にも分かっていない!
少なくとも──僕らが調べても、それを裏付けるものは出てこなかった」
-
660 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:44:24 ID:bwAoZRz2O
-
ξ゚听)ξ「ロマネスクさんは証言する際、くじの件と8月の病室での件が
関連していると匂わせるような発言をしたでしょう。
それも嘘だっていうの?」
(*゚ー゚)「8月に被告人は鬱田さんと接触している。
殺霊事件の日にも、鬱田さんと接触したのなら──
そして鬱田さんがどこかで外れくじを落としたことに被告人が気付いていたのなら」
ドクオに罪を被せるための嘘を思いついてもおかしくはない──
しぃの言葉に、傍聴席の幾人かが納得するように唸った。
ξ゚ -゚)ξ「……せっかく思いついた嘘を、何で土壇場になるまで喋らなかったのよ」
(*゚ー゚)「外れくじが消えてしまったからですよ」
ツンが片眉を上げ、黙る。
どういうこと、とくるうが訊ねた。
-
661 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:47:34 ID:bwAoZRz2O
-
(*゚ー゚)「被告人の計画では、まず、くじを警察に発見させることが前提にあった。
それから鬱田さんの件を証言すれば、警察の目は鬱田さんにも向けられる筈ですから」
(*゚ー゚)「しかし、くじは消えてしまった。拾った看護師が警察に届け忘れていたからですが──
ともかく警察がくじの存在に気付かなかったため、布石が崩れたんです。
こうなると、余計なことを話せば墓穴を掘りかねない。だから黙っていた」
(,,゚Д゚)「でも、法廷でようやくくじのことが俎上に載せられたのよね。
被告人にとってはチャンスだわ。
まあ今まで黙ってたのにどうして今さら話すんだって疑われそうなのがネックだったでしょうけど……」
(*゚ー゚)「それも周りが勝手に解消してくれた。
──結果的には、被告人にとって何もかもが完璧なタイミングだったんではないでしょうか」
【+ 】ゞ゚)「当初の計画が、より効果的な形で成されたわけだ」
その通りだとすれば、たしかに願ったり叶ったりだったろう。
ロマネスクは無表情で聞いている。
しかし瞳には、何か堪えるような色があった。
ツンが反論の足掛かりを見失っていた。
沈黙する彼女から、しぃは目線を外した。
-
662 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:50:19 ID:bwAoZRz2O
-
(*゚ー゚)「まあ、くじの件はあくまで僕の推測です。
というわけで鬱田さん、証言をお願いします」
ドクオが、はっとしたように顔を上げた。
もう一度しぃが証言を促すと、頷き、咳払いをしてみせる。
ドクオの顔からは怒りが消え、困ったような表情になっていた。
(;'A`)「あー……っと……。……今更、すげえ言いにくいんだけどよお……」
数分前に怒鳴っていた彼とは、まったくの別人だった。
その様子に、検察側の空気が乱れる。
(;'A`)「でも、もう、こうなっちまったら本当のこと話さなきゃいけねえだろうし……参ったな……。
……は、話すぞ? 話すからな? 怒んなよ?」
(*゚ー゚)「……何ですか」
-
663 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 22:52:21 ID:bwAoZRz2O
-
(;'A`)「──俺、たしかにあの日、病室に寄ったんだよ。オサム様の裁判の日」
ξ;゚听)ξ「は」
【+ 】ゞ゚)
(*゚−゚)
それは、たった今披露されたしぃの推論を、思いきり否定する発言だった。
ツンが目を見開く。
オサムが眉間に皺を寄せる。
しぃのこめかみが、引き攣った。
(*゚−゚)「は?」
(;,゚Д゚)「何で最初に認めなかったの!?」
(;'A`)「だって絶対に疑うじゃねえかよ! 現に、弁護士は俺を犯人だと言いやがる!
でもやっぱ小心者だからよお、結局こうやって話しちまったわ……」
( ^ω^)(やっぱスムーズな審理にはならんお)
病室には寄っていないとか、どこかでくじを落としたとか、
そう証言すれば、無実を訴えるドクオにはとても有利だったろう。
けれど、彼は結局、正直に話すことを選んだ。