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485 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:00:37 ID:bwAoZRz2O
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#####
ミセ*゚ー゚)リ『ローマーはー太いーなー、まーるーいなー♪』
∧ ∧
( ФωФ)『噛み殺すぞ』
ミセ*゚ー゚)リ『ふう、あっついなあ。海行きたいけどG県は海ないもんなあ……。
ロマ暑くないの? 毛むくじゃらだしお肉ついてるし』
∧ ∧
( ФωФ)『噛み殺すぞ』
ミセ*゚ー゚)リ『いかん、暑さのあまりロマの語彙が後退しとる。
ばあちゃん家にビニールプールあったかな、水浴びしようロマ。きっと涼しいよ』
∧ ∧
( ФωФ)『噛み殺して埋めるぞ』
ミセ*゚ー゚)リ『よっしゃ語彙が進化し始めた』
#####
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486 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:01:54 ID:bwAoZRz2O
-
( ‐ω‐)
( ぅω‐)
( ^ω^)
眩しかった。
目が痛んで、一瞬、闇を探した。
横へ動いた瞳が、友人の顔を捉える。
(´<_` )「ブーン」
( ^ω^)「弟者」
呼び掛けられたので、呼び返した。
がたがたと硬いものが揺れる音がして、今度は、きゅっと聞こえた。
椅子から勢い良く立ち上がって靴底を床に擦ったら、多分、こういう音が鳴る。
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487 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:03:13 ID:bwAoZRz2O
-
(;・∀・)「ブーン!」
(;-_-)「……ブーン」
名前を呼ばれてばかりだ。
仕方ないので内藤も返した。モララー、ヒッキー。
やけに白の目立つ部屋で、病室か、とぼんやり思った。
全身の疲労が凄まじく、頭があまり働かない。
眠っていたのか。
辛うじて──学校で起きたこと、それが理由で家出したことを思い出せた。
改めてモララー達を見据え、どうしようもなく安堵する。
彼らは内藤を案ずるような顔付きだった。
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489 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:04:41 ID:bwAoZRz2O
-
( ^ω^)「いま何日の何時だお?」
起き上がらないまま、何となく訊いてみる。
それより気になることはたくさんあったが、一番単純で手短に済みそうな質問がそれだった。
( ・∀・)「24日の、えーっと、昼前」
(´<_` )「それ答えになってないだろ。11時半だよ」
( ・∀・)「昼前じゃん」
(´<_` )「何時かって訊いたんだから」
弟者とモララーのやり取りは、いつも通り。
彼らが会話する姿を見るのはたかだか数日ぶりだというのに、いやに久しく感じた。
少し躊躇ってから、仲直りしたのか、と問う。
( ・∀・)「おう。さっきな。弟者と喧嘩してたらヒッキーにキレられた」
(´<_` )「恐かった」
( ^ω^)「なんでヒッキー……」
(;-_-)「き、キレたってほどじゃないでしょ」
( ・∀・)「いや、あれマジギレだろ……小学生のとき以来だわ」
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490 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:06:51 ID:bwAoZRz2O
-
以下の説明は、弟者から聞いた話。
まず、昨夜。
内藤が倒れていたのを発見した──とギコから流石家へ連絡が行った。
内藤の書き置きを居間で見付けた弟者がそのことを伝えると、
ギコが、内藤はこちら(法廷のことだろう)には来ていなかったと答えた。
書き置きで示されていたのとは全く違う場所で内藤が見付かった旨を聞かされ、
本当は家出をするつもりだったのではないかと弟者は勘づく。
それから朝一番に、内藤が病院に運ばれたことをモララー達へ伝え、
すぐに病院へやって来た彼らと話をした。
(´<_` )「ブーンが家出したのは──あのー……学校の、あれが原因だろうと思って。
それなら、モララーやヒッキーが庇わなかったのも一因だろうって言った」
( ・∀・)「それ言うならキレまくってブーンに喋らせなかった弟者も悪いじゃんって思ったから
そう言った、ら、喧嘩になった」
(-_-)「で、僕が、みんな悪いところあるだろって怒った」
そうして、内藤をそっちのけにしたまま弟者達が仲違いしてもしょうがない、という結論に至ったらしい。
そもそも弟者もモララーも、決して対立した立場ではなかったそうなので。
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491 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:08:06 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)「……そうかお」
訊きたいことを頭の中で整理しようとしたが、上手くまとまらない。
すると、今まで座っていた弟者も腰を上げて、モララーの隣に並んだ。
ごめんなさい、と3人が同時に頭を下げる。
返事が思い浮かばずに内藤がぼうっと見つめていると、
反省点を聞いてくれないかというモララーの声を合図に、3人は顔を上げた。
(-_-)「……僕ビビりだから、あのときちゃんと喋れなかったんだ。
別に、ブーンに近付きたくないと思ったわけじゃないんだよ。
でも、もしかしたらとか考えたら、どうやって関わればいいのか分かんなかった。
すぐに庇ってあげられなかった」
話すヒッキーの顔は泣きそうだ。
ずっと思い悩んでいたのだろう。
(´<_` )「さっきモララーが言った通り、俺が熱くなったせいでみんなが引いたんだと思う。
ややこしくしたのは俺だし、冷静でいられたら、もっとマシになってた」
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492 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:09:55 ID:bwAoZRz2O
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( ・∀・)「俺はちょっと無神経だったわ。
……まー、ぶっちゃけ、考え自体は今もあんまり変わってないんだけどな」
(´<_` )「モララー」
( ・∀・)「だってブーンが絶対に違うって言えばそうなんだろうけどさあ。
自分のせいかも、なんて顔されちゃ、分かんなくなる」
内藤は自分の頬を摩った。
「自分のせいかもしれない」──あのときそう思ったのは、事実。
モララーはそれを察したのだ。
今度こそ、答えを間違ってはいけない。
躊躇ってはいけない。
みんなの目を順繰りに見つめて、内藤は言った。
( ^ω^)「……僕は、本当に、何もしてないお」
( ・∀・)「おう」
分かった。そう返して、モララーは椅子に座った。
続いてヒッキーと弟者も。
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493 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:11:00 ID:bwAoZRz2O
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( ・∀・)「俺やヒッキーのこと許せないなら言ってくれ」
( ^ω^)「いいお。みんなの気持ちも分かるし」
ああいう風に言われれば──本当に、よく分かる。
彼らの性格を考えれば、納得もいく。
自分の悩んでいたことの一部が、杞憂だったのだ、と解きほぐされた。
彼らは友人でいてくれる。
内藤を拒絶することもなく。
( ・∀・)「ごめんな。俺とヒッキーからも、みんなに言っとくから」
(-_-)「弟者とモララーがぴりぴりしてたから皆も困ってただけで、
僕らが普通にしてれば大丈夫だよ」
( ^ω^)「……そういうもんかお?」
( ・∀・)「わっかんね。
でもお前が暗い顔して黙ってるだけじゃ、いい方向には行かないんじゃねえの」
もしかしたら、一番冷静なのはモララーなのかもしれない。
いたずらっ子(可愛げのある言い方に留めれば)なので、
おとなしい内藤達に比べれば、揉め事にはやや慣れている。
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494 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:12:30 ID:bwAoZRz2O
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(´<_` )「俺じゃなくてブーンがキレてたら、すぐに話は終わってたかもな」
( ^ω^)「僕が怒ったら、みんなもっと怯えたと思うけど」
(;-_-)「どうだろ、ブーンが怒らないから真剣味が伝わらなかったのかも」
そう──なのか。
ずっと当たり障りなく、いい顔だけしていても、必ずしも事態が良くなるわけではない。
当然のことなのに、勇気が出なくて、結局すべて流れのままに任せてしまっていた。
( ・∀・)「おまえ普段疑われることないから、いざそういう状況になったときに立ち回りが下手なんだよ」
(-_-)「モララーなんて逆ギレとかして有耶無耶にしたりするもんね。
そういうのも、一種の手だよ」
( ・∀・)「そうそう。経験から得た知恵よ知恵」
(´<_` )「お前の場合は日頃から悪さばっかりしてるから、疑われるのに慣れただけなんだけどな」
(-_-)「真似しろと堂々と言えたもんじゃないのは確かだよね……」
(;・∀・)「うっせえなあ!」
笑うと、少し気力が出た。
半身を起こす。大丈夫か、と問う弟者に首肯を返した。
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495 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:13:31 ID:bwAoZRz2O
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ふと、弟者が何かに気付いたように再び立ち上がる。
(´<_` )「姉者たち呼んでこないと」
(-_-)「あ、そうだね。じゃあ僕らは一旦帰るよ。検査とかあるだろうから」
( ・∀・)「結局ブーンは何で倒れたんだ?」
( ^ω^)「さあ……」
──昨夜、家出した。
ドクオと一緒に歩いた。
ドクオに憑依を頼み──そうして、先ほど目覚めた。
なぜ自分は倒れていたのだろう。
何故こうも体が怠い。
(´<_` )「そうだ、おじさんとおばさんも来てるよ。姉者達と外で話してる」
このタイミングで弟者の言う「おじさん」「おばさん」ときたら、誰を指しているかすぐに分かる。
内藤の両親だ。
学校での出来事が原因となれば、余計に心配させてしまうかもしれない。
小学校の苛めを理由にこちらの町に預けられたわけだから。
不安を和らげるためにも、友達のおかげでだいぶ楽になったことは言っておこう。
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496 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:14:52 ID:bwAoZRz2O
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身支度を整えていたモララーが、不意に振り返った。
( ・∀・)「お前ほんとにツンさんと知り合いだったんだなあ」
( ^ω^)「ツンさん?」
どうしてそれを知ったのか、というのと、どうしてそんな呼び方をするのか、というのと。
疑問が二つ、顔を出す。
ツンが変人として有名なのは知っている。
が、ツンさん、と親しげに呼ぶのに違和感。
( ・∀・)「俺とヒッキーが病院に来たとき、先に来てたんだよ、あの人」
(-_-)「それで何かモララーとホラーゲームの話題で盛り上がって、ちょっと仲良くなってた。
噂されてるほど恐い人じゃないね」
(*・∀・)「極秘の私立探偵やってて、ブーンもこっそり手伝ってたんだって? かっけえなあ。
もっと怪しげな人かと思ってた」
( ^ω^)(何してんだあの女)
何を言っているのだ。極秘の探偵って何だ。恥ずかしくないのか。充分怪しい。
というか来ていたのか。
どことなく決まりが悪くて、内藤は首を擦った。
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497 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:15:58 ID:bwAoZRz2O
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( ・∀・)「とりあえず出回ってるイメージとは違う人だって、みんなにも話しとくから。
そしたら誤解もとけやすいんじゃねえかな」
( ^ω^)「……モララー」
( ・∀・)「だからほんと、俺らのこと許してなー」
笑って、モララーはヒッキーと弟者と共に出ていった。
閉じた扉をしばらく見つめてから、内藤は布団に目を落とした。
ぽたりと雫が落ちて、染みを作る。
悲しくはなかった。
安堵していた。
ただ、それ以上に、結局周りに頼って
自分で自分を守ることすら出来ていない己が情けなかった。
*****
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499 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:17:23 ID:bwAoZRz2O
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∬;_ゝ;)「良かった、ブーン君っ、ブーン君、起きなかったらどうしようって思ってたぁああ!」
内藤の頭を抱えるようにして、姉者はわんわん泣いていた。
とても柔らかい。とても。
l从・∀・ノ!リ人「姉者、あんまり胸を押しつけたらブーンが息できないのじゃ」
(;´_ゝ`)「せっかく目覚めたのに今度は弟者の手で永眠させられかねないから、その辺にしとけ」
∬;_ゝ;)「ひうっぐっうぐぐうっう」
鼻水まで垂らしながら泣きじゃくる姉者に、妹者がティッシュペーパーを差し出す。
姉者が鼻をかむために手を離したことで、内藤はようやく解放された。
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500 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:18:38 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)「お騒がせしましたお」
( ´_ゝ`)「本当になあ。──弟者、殺気まき散らすのやめて、
母者に連絡してきてくれ。異常なしって」
(´<_` )「分かった」
先ほど検査をした結果、脳も体も特に異常はないと診断された。
学校で色々あったということだけは弟者から医者に話が行っていたようなので、
極度のストレスと疲労が重なって、体に不調を来して気を失ったのではないか、との結論が出た。
念のため、用心をとってもう一日だけ病院に泊まることになったが、とにかく容態は然ほど問題ない。
内藤の両親は安堵していた。今は医者と話しに行っている。
改めて病室を見渡し、内藤は首を捻った。
他にベッドがない。個室だ。
∬;_ゝ;)「そうだ、後でツンちゃん来てくれるって」
( ^ω^)「はあ……あのう、個室で大丈夫なんですかお、その、お金とか」
l从・∀・ノ!リ人「ギコさんのとこが払ってくれるらしいのじゃ!」
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502 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:20:40 ID:bwAoZRz2O
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∬;_ゝ;)「うん、あのね、何かの事件に関わってるかもしれないんですって。
だから多分もう少ししたらギコ君が話を聞きに来るかも──……」
はっとして、姉者は口を噤んだ。
兄者は何も知らない。彼に聞かせるわけにはいかないと判断したのだろう。
ともかく幽霊裁判関連で何かが起こったのは理解したので、
内藤は「分かりました」と頷いた。
( ´_ゝ`)「なーんか俺だけ除け者にされてる気がするなあ最近」
Σ∬;ぅ_ゝ;)「そ、そんなことない! そんなことない!」
l从・∀・ノ!リ人「流石じゃ姉者、2回言うことで怪しさ倍増」
( ´_ゝ`)「別にいいけどな。
ブーンだって、何も知らない相手の方が楽なときもたまにはあるだろうし」
ぺちぺち、兄者が内藤の頭を叩く。
それを咎めながら、涙を引っ込めた姉者はサイドテーブルに手を伸ばした。
新品の紙コップをいくつか取り、テーブルに置かれているポットの中身を注ぐ。
深い茶色の液体は、匂いからして、ほうじ茶だ。先ほど看護師が置いていった。
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503 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:22:03 ID:bwAoZRz2O
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( ´_ゝ`)「ドライブに連れてくとか、安いメシ奢るとか、それぐらいしか出来んが
まあ何かしんどいときは言ってくれ。気を紛らわすには丁度いいだろ。
倒れるくらい悩む前にな」
悩んだせいで倒れたわけでもないと思うが。
まあ他に言いようもないので、内藤は黙って姉者が差し出した紙コップを受け取った。
ほうじ茶を啜る。
ぬるくて薄い。兄者の態度に似ている。悪い意味ではなくて。
ほっとする。
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504 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:24:26 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)「……ありがとうございますお」
∬*´_ゝ`)「兄者がマトモなこと言った……!」
l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者はたまに輝くのう」
(*´_ゝ`)「妹者は常にきらきら輝かしい!」
l从・∀・ノ!リ人「えっ……そんな当たり前のこと言われても……」
さっそく内藤そっちのけで兄者と妹者がじゃれ始めた。
正確には、兄者が妹者にじゃれつき素気無くあしらわれている。
弟者と姉者は内藤に対して甘いというか丁寧に扱う面があるが、
兄者と妹者は構いすぎることがない。それでも内藤を気にかけてくれているのは分かるから、
疎外感を抱かせることもない。この兄弟はバランスがいい。
改めて客観的に見てみて、自分が如何に恵まれた環境にいるのかが分かる。
それを自分は昨夜、無下にした。
内藤はもう一度「ありがとう」と言って、それから「ごめんなさい」と頭を下げた。
.
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506 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:25:20 ID:bwAoZRz2O
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弟者が戻り、入れ替わりに兄者と妹者が先に帰宅して。
午後3時頃、また新たな客が来た。
ξ゚听)ξ「お加減いかが?」
lw´‐ _‐ノv「やっほう」
( ^ω^)「……どうも、秘密の探偵さん」
ξ゚听)ξ「どうも助手君」
lw´‐ _‐ノv「何だいそりゃ」
ツンとシュール。
ツンはともかく、シュールが来るのは完全に予想外だったので驚いた。
驚いた点は他にもある。
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507 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:26:45 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)「ツンさん、珍しい格好を」
ξ゚ー゚)ξ「そうねー、内藤君の前で黒以外の服着るのは初めてかしら。似合うでしょ」
ツンは白いブラウスの上に明るいグレーのジャケット、同色のタイトスカートを身につけていた。
脇に抱えたコートもベージュ色と明るい。
黒くない服も持っていたのか。
∬´_ゝ`)「こんにちはツンちゃん。そっちの子は?」
ξ゚听)ξ「内藤君の友達」
lw´‐ _‐ノv「シュールです。はじめまして」
∬´_ゝ`)「あ、えっと、お世話になってます」
シュールが見舞品だと言って紙袋を差し出した。
駅前のおにぎり専門店のメニュー、個人的ベストセレクション。彼女らしい。
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508 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:27:59 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「悪いんだけど、ちょっと内藤君と話したいことがあるから
姉者は席を外してもらえる? 弟者君は残って」
(´<_` )「うん?」
∬;´_ゝ`)「わ、分かった。……危ないことに関わってたりするの?」
ξ゚听)ξ「さあね」
∬;´_ゝ`)「さあねって」
ξ゚听)ξ「まだよく分かんないの」
∬;´_ゝ`)「そっか……でも、ツンちゃんに任せれば平気よね。ツンちゃん頼もしいから……。
何か手伝えることあったら言ってね」
ξ;*゚д゚)ξ「うるっせえバーカ! バーカ! あんたはもう!!」
Σ∬;´_ゝ`) ビクッ
ひとまず家から替えの衣類と日用品を持ってくると言って、姉者は病室を出ていった。
彼女が扉を閉める間際、ちらり、女性が顔を覗かせる。
川 ゚ 々゚)
くるうだ。
内藤が様子を窺っていると、ツンはくるうを呼び寄せた。
彼女は1人だった。
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509 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:30:00 ID:bwAoZRz2O
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川 ゚ 々゚)「ブーン、大丈夫?」
( ^ω^)「はあ。どうしてここに」
ξ゚听)ξ「彼女の力が必要かなと思って、お借りしたの」
(´<_`;)「何の話をしてるんだ?」
弟者が訝しげな顔をする。
彼の視点では、あらぬ方向を見ながら会話している2人にしか映らぬだろう。
ξ--)ξ「あー……くるうさん」
川 ゚ 々゚)「うん」
内藤には視覚的に変化はなかったが、くるうが頷いた直後、
弟者が思いきり空気を吸い込んで後ろに退いた。
椅子に腰掛けたままそうしたので、椅子から落ちて転んでいた。
(´<_`;)「なっ、あ、あんた、裁判の、」
震える声で言いかけ、弟者はシュールを一瞥して口を噤んだ。
が、間もなくして、この場にいる時点でシュールも無関係ではないと理解したのか
「監視官だか何だか言う人だろう」とくるうに向かって言い切った。
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510 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:31:19 ID:bwAoZRz2O
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一旦、シュールとくるうも椅子に座る。
室内には椅子が3つまでしか用意されていなかったので、ツンはベッド脇に立った。
新しい紙コップにほうじ茶を注いでそれぞれに差し出す。
喉が渇いていたのか、ツンが一気に呷った。
ξ゚听)ξ「──なぜ裁判に来ずに、あんな時間に外にいたの?」
( ^ω^)「……家出ですお」
ξ゚听)ξ「あなたの意思で?」
( ^ω^)「もちろん」
ξ゚听)ξ「ドクオさんがあなたに憑依していたけれど」
( ^ω^)「僕が家出したとこを見かけて、心配して付いてきてたんですお」
──帰った方がいい、と彼は何回も言ってくれた。内藤は言うことを聞かなかったけれど。
色々なことが辛くなって、それらから逃れるためにドクオに憑依を頼んだ。
そして、気付いたらここに。
ぽつりぽつりと昨夜の流れを話す。
ツンはくるうを見て、彼女が黙っているのを確認すると、「そう」と頷いた。
反応はそれだけだった。
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511 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:32:25 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)「……誰も僕が家出したこと叱ってくれませんお」
ξ゚听)ξ「倒れられちゃ、それどころじゃないものね。叱ってほしかった?
家出って色々理由があるけど、あなたはどれかしら。
心配してほしい、気を引きたい、家から逃げたい、1人になりたい、その他」
( ^ω^)「よく分かりませんお」
ξ゚听)ξ「まあ家出した理由はどうでもいいわ。
ただ、きっかけになった出来事については弟者君たちから聞かせてもらいました」
弟者に目を向ける。
別に非難する意味はなかったが、弟者はそう受け取ったようだった。
(´<_` )「ごめん、この人には話した方がいいかと思って」
( ^ω^)「いいお」
ツンはサイドテーブルに寄り掛かると、紙袋に手を突っ込み、勝手におにぎりを一つ取った。
見舞品だと言っているのに。
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512 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:33:37 ID:bwAoZRz2O
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lw´‐ _‐ノv「私の友達が君らと同じクラスだけど、
内藤君が病院に運ばれたこと、もう聞かされたみたいだよ。
何か大変そうだね、色々」
(´<_` )「……モララーが言い触らしてるな」
ξ゚听)ξ「言い触らすように私が頼んだの」
苦々しげな顔をする弟者へツンが言い、弟者の顔がますます険しくなる。
鋭い視線を意にも介さず、ツンは包みを剥がして天むすに口をつけた。
ξ゚听)ξ「これで、内藤君も『祟られた』ことになる。
つまり内藤君がクラスメートを呪ったわけではない、って話を広めやすくなるわ」
(´<_`;)「え? うちのクラスが呪われてるのは事実なのか?」
ξ゚听)ξ「いいえ。
──いや、呪われてるって言やあ、呪われてるのかもね。
ただし術者は無意識のクラスメート達」
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513 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:35:09 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「前に、アサピーから聞いたことがある。とても単純な呪い。『思い込み』」
呪われたせいで自分は不幸なのだ、呪われたせいで怪我をした──そういった思い込みが
自分自身を呪うのだと、ツンは簡単に説明した。
たしかにクラスメートの身に起きた不幸の大体は、日頃の不注意で起こり得るものだった。
ξ゚听)ξ「内藤君のクラスメートはその呪いにかかってる。
思い込みってのは厄介だわ。思い込んだからには、その認識をいきなりゼロには出来ない」
ξ゚听)ξ「だから、まずはみんなの思う『事実』を曲げる」
( ^ω^)「曲げる?」
ξ゚听)ξ「『内藤君がみんなを呪った』──この思い込みを変えるの。
幸い、今回のこの事件でそれは容易になった」
(´<_` )「ブーンも不幸に遭った、ブーンも呪われた被害者だ、って?」
ξ゚听)ξ「そう。これによって、みんなの認識がぐらつく」
天むすを食い尽くし、ツンが更にもう一つおにぎりを奪う。
咎められなかった。彼女は──内藤のために「改善策」を講じてくれている。
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516 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:37:00 ID:bwAoZRz2O
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lw´‐ _‐ノv「内藤君が容疑者から外れるだけで、また新しい犯人探しが始まるんじゃ?」
ξ゚听)ξ「放っておけばそうなるわね。だから放っておいちゃいけない。
──ここでようやく、『そもそも本当に祟りなんてものはあったのか?』と
根本的で現実的で、それ故に見落としがちな疑問が改めて顔を出すのよ」
ξ゚听)ξ「そこが狙い目。
『呪われたんじゃないんだ』『みんな偶然だったんだ』っていう
現実を認めさせることで、この騒ぎは終わるわ」
先ほどモララーとヒッキーにも根回しを頼んでおいたと言って、
梅じゃこおにぎりにかぶりつく。
弟者は微妙な表情だ。
今まで散々毛嫌いしてきた女が自分の身の回りに手を出していくことへの反発心と、
それにより内藤が救われるかもしれないことへの期待に戸惑っているのだろう。
そんな弟者を横目に見て、指についた米を舌で掬いつつ彼女は苦笑した。
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517 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:38:37 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚ー゚)ξ「これらの発案はアサピーよ。
呪術師だもの。呪うのも、呪いを解くのもあいつの専門でしょ」
( ^ω^)「アサピーさんが」
ξ゚听)ξ「まあ思い込みが原因なんだから、それを解ければいいわけね。
モララー君たちの根回しが効けば、何とかなる……かも」
(´<_`;)「確定じゃないのかよ」
ξ゚听)ξ「後押しするような、インパクトのある何かが起きれば確実だろうけど」
放っておくとツンに全て食べられそうなので、内藤もおにぎりに手を伸ばした。
いなり寿司。こういうのもおにぎりと言うのだろうか。寿司とはっきり言っているが。
じゅわっと甘い煮汁が滲み出し、薄味の酢飯に染み込んで、ほぐれる。
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518 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:40:31 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)「──ほとんどがみんなの勘違いでも、不思議なことは実際に起こってましたお」
酢飯に混ざる胡麻を噛み砕き、記憶を手繰っていた内藤は、言った。
( ^ω^)「誰もいない場所で突き飛ばされて、怪我をした生徒がいましたお」
(´<_`;)「そうだ、そうだよ、それも思い込みだっていうのか?」
ツンが名前を呟いた。
正に、その、「無人の階段で突き落とされた」クラスメートの名だった。
ξ゚听)ξ「その子なら、さっき会ってきた」
(´<_`;)「は?」
ξ゚听)ξ「モララー君、ヒッキー君と一緒に。
こういう格好して、クラスメート同行させるだけで私のこと信用するんだから単純よねえ……。
普段の黒服ってそんなに怪しい?」
( ^ω^)「ツンさんの場合は手加減なしで真っ黒だから怪しいんですお」
ξ--)ξ「失礼ね。ま、ともかく、その右腕骨折した子に会って話してきたわ。
くるうさんにも、こっそり付いてきてもらってね」
川 ゚ 々゚)「うん」
今まで欠伸をしながら話を聞いていた──聞いていたのかもよく分からないが──くるうが、
とつぜん名前を呼ばれたことで、意識をこちらに向けた。
-
520 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:42:32 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「結果から言うと、あの子は嘘をついてない。
本当に、『姿の見えない何者か』に背中を押されたみたいよ」
川 ゚ 々゚)「ん、そう。臭わなかったの」
駄賃代わりか何なのか、ツンはくるうにもおにぎりを渡した。おかか。
そして見舞品はなくなった。受け取り主である筈の内藤はいなり寿司一つを食べたのみ。
( ^ω^)「……監視官って、私用に付き合わせていいんですかお?」
ξ゚听)ξ「本当はあんまり良くない。
監視官は裁判官に次いで偉くて厳正たる立場の者だから
弁護士なんかが軽々しく連れ出していいもんじゃないの」
ξ-∀-)ξ「ただ、くるうさんが『自分の意思で』外出して、『たまたま』私と同じ場所にいて
その場で嘘の臭いがしたかどうかを『独り言』で呟いても、それは仕方ないことよね」
( ^ω^)「せこい」
(´<_`;)(せこい)
せこい。
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524 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:45:12 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「まあ裁判長がなかなか離さないから大変だったわ、正直」
川*゚ 々゚) キャッ
(´<_`;)「──で、結局あいつは本当に、……お、おばけか何かに突き落とされたのか?」
ξ゚听)ξ「そうそう、それに関して、シュールさんから大事なお話があります」
ツンがシュールの肩を叩く。
眠たげな顔を傾けたシュールは、頬を掻いた。
lw´‐ _‐ノv「クラスメートが階段から落ちたのって、4日前──水曜の放課後だったっけ」
( ^ω^)「そうだお」
lw´‐ _‐ノv「……私さ、少し霊感あるけど、姿を見るのは稀だって言ったよね。
その分、気配はよく分かるとも言った。
霊によって、気配ってちょっとずつ違うんだ」
それは、まあ、そうなのだろう。
だからこそキュートの「気配」を探すことが出来ているわけなのだし。
lw´‐ _‐ノv「そんで、この前、ちょっと覚えのある気配がした」
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525 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:46:39 ID:bwAoZRz2O
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lw´‐ _‐ノv「キュートの依頼をした日にツン先生の事務所で感じた気配……男の人の。
ほら、ツン先生が、『このひと見えるか』って指差したときの」
( ^ω^)「ドクオさん?」
lw´‐ _‐ノv「名前は知らないけど、その人のに似てた。
水曜と木曜に学校で。時間帯は違うな、水曜は放課後で木曜は朝だ」
──ドクオが水曜日にも学校に来ていた?
lw´‐ _‐ノv「つっても、あれだよ。気配の名残がしただけで、対面したわけではないし
──本当にそのドクオさんってのと同じだったか、自信があるわけじゃないけどさ。
でも感覚はたしかに似てた……はず」
くるうは普通におにぎりを食べて茶を飲んでいる。
嘘だと指摘する様子はない。
情報を与えられっぱなしでいっぱいいっぱいの頭を、左手で押さえる。
特に意味はないけれど、内藤は右手を上げて制止するような仕草を見せた。
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526 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:47:49 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)「……木曜の朝に、ドクオさんと学校で会ったお。
すぐ──昇降口のとこで別れたけど」
lw´‐ _‐ノv「私が気配を感じたのは1組の前だよ。
遅刻ぎりぎりで始業の直前って時間だった。
名残がまだ濃かったから、あの人が教室に居たのとそんなに時間変わらなかったんじゃないかな」
(´<_`;)「……教室でモメてたとき、うちのクラスにいたってことか? ブーン見たか?」
( ^ω^)「いや……」
見ていない。
──けれど、彼が居なかったとも断言できない。
あのときは、それどころではなかった。
しっかりと顔を上げて周囲を見るのが億劫だった。
もしもあそこにドクオがいたのなら、彼は騒ぎを見ていた筈。
しかし昨夜、彼は学校で何が起こったのかを知らない素振りをした。
嘘をついた?
何のために。
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527 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:49:45 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「……昨夜の裁判のいきさつを話すわ」
話題がころっと変わった──ように見えて、変わっていないのだろう。
実際、ツンがそれから語った経緯は、最終的にドクオへ帰結した。
ロマネスクの主張する「事実」。
クラスの周囲にちらつくドクオの影。
憑依。病院に運ばれた内藤。
ξ゚听)ξ「……まだ何も分かっていないの。
あれこれ推測することは出来ても、今のところドクオさんは事件に関与してないと言い張ってるし」
( ^ω^)「ドクオさんは今どこに?」
川 ゚ 々゚)「神社でしぃ達と話してる」
ξ゚听)ξ「あの人は、内藤君に憑依している際に検事達と会っても逃げなかった。
くじのことも否定しているし、家出した内藤君にも帰宅を何度も促したようだし、
──彼は何も嘘を言っていなくて、私が勝手に怪しんでいるだけなのかもしれない」
( ^ω^)「嘘をついてるかもしれないのだって、確かなんでしょう」
ξ゚听)ξ「……そうね、どちらかだわ。
ドクオさんかロマネスクさん、どちらが嘘つきなのか分かれば、今回の件は終わると思う」
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528 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:51:18 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「これ以外の件では、ドクオさんは間違いなく嘘をついてることがある。
ただ、その嘘が何のためにつかれたものなのか、まだ分からない……」
ツンが歯噛みした。
──昨夜の閉廷から今に至るまでの間に、彼女はあちこち駆けずり回ったのだろう。
ドクオと話して、モララー達と会って話して、くるうを借りて、内藤のクラスメートに会って、シュールにも会って、ここに来て。
休む暇など、ほとんど無かったのではないか。目の下にうっすらと隈がある。
弟者も察したようで、腰を上げてツンに席を譲ろうとした。
しかし、そろそろ帰るからと断られてしまう。
行儀悪く紙コップの縁を齧って、ツンは視線を落としたまま新たな発言を落とした。
ξ゚听)ξ「キュートさんが見付かったわ」
今度こそ話題が別方向へ転がった──と思ったが。
ツンの真剣な表情が、それを否定する。
内藤は咄嗟にシュールの顔色を窺った。
何ら変わりない。既に聞かされたのか。
思うに、ツンがシュールにキュートの話をしに行って、
そのときにシュールから先の「気配」の話を聞かされた──といった順番だろう。
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533 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:53:20 ID:bwAoZRz2O
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( ^ω^)「……今度はシュールさんの妹とドクオさんに関わりが?」
ξ゚听)ξ「いえ、キュートさんは何も関係なくてね」
( ^ω^)「じゃあ何ですかお」
ξ゚听)ξ「キュートさんが見付かったのが、ワカッテマスさんの部屋だったの。
亡くなって間もない頃からちょくちょく遊びに来てたみたい」
ξ゚听)ξ「……あの部屋の『先住民』がドクオさんと関わってる」
先住民。
ワカッテマス達より早く住んでいた者──
──「ぽぽちゃん」か。
どういう風に関わっているのかと内藤が問うと、彼女は、「これ以上は法廷で」と答えた。
紙コップを捨て、ベージュのコートを羽織る。
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536 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:56:06 ID:bwAoZRz2O
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(´<_`;)「法廷で、って……ブーンはそういうのに関わってたからこんなことになったんだぞ。
行かせられるわけないだろ」
( ^ω^)「……えっと」
ξ゚听)ξ「内藤君、8月の弁護依頼料はもうチャラよ。事務所には来なくていい。
ときどき流石家へはお邪魔するかもしれないけど、別に私と話さなくていい。
どうしてもと言うなら流石家にも近付かない。
あなたが幽霊裁判との関わりを絶っても、誰も咎めない。好きにしていい」
──何故。
胸が痛む。
ξ゚听)ξ「でもね、関わった分の責任ぐらいはとってちょうだい。
次の裁判には絶対来て。あなたにも証言してもらわなきゃいけないから」
( ^ω^)「……はい」
目が覚めてから、甘やかされっぱなしだったかもしれない。
大して変わりのない世界に高を括っていたかもしれない。
ここに来て突き放されて、体の中のどこかが震えた。
いや、突き放されたと言う程でもない。
まだ充分に優しい。
それでもやはり、──寂しい。
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537 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:57:43 ID:bwAoZRz2O
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日時はあとで知らせる。そう言って、ツンは鞄を抱えた。
川 ゚ 々゚)「お大事にね」
( ^ω^)「はい、お気を付けて」
lw´‐ _‐ノv「じゃあ、また今度学校で」
( ^ω^)「うん、──シュールさん」
内藤が呼び掛けると、シュールは「ん?」と首を傾げた。
( ^ω^)「僕の頼み、聞いてくれるって言ったおね」
lw´‐ _‐ノv「言ったよ」
( ^ω^)「なら──この裁判が終わるまでの間だけ、ツンさんを手伝ってあげてほしいお。
事務所の掃除くらいでいいから。
あのひと掃除下手なんだお。僕はもう事務所に行くことはないから、だから……」
lw´‐ _‐ノv「ん、いいよ。裁判終わるまでね。
私じゃ、きっと内藤君の代わりにはならないけど」
唇を噛む。
シュールの今の発言に「嬉しい」と感じたのが、理解できなかった。──理解したくなかった。
見舞品がほとんどツンに食べられたからと、シュールは鞄に入っていた米菓をサイドテーブルに置いていった。
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538 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 20:59:13 ID:bwAoZRz2O
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lw´‐ _‐ノv「……内藤君って、それが素かい? 結構印象変わるね。そっちのが格好いいよ」
( ^ω^)
返事をするより先に、自身の顔に触れていた。
──目覚めてからずっと、素のまま喋っていた。
素とは言っても顔つき自体は元から軟らかいからともかくとして、
普段から気を付けていた、明るい振る舞いと幼い感情表現を、思い切り忘れていた。
慌てて相応しい表情を作り、その白々しさに自嘲の念が浮かんで、結局消した。
( ^ω^)「どうしよう弟者」
(´<_` )「別にそれでもモララー達と普通に話せてたじゃないか」
──そうか。
たしかに。友達と、このまま話せていた。
普通に。そうか。
良かったのか、あれでも。
( ^ω^)「……今までの僕って何だったんだお……」
ξ゚听)ξ「今までの内藤君だって無意味じゃないでしょ」
扉の前に立ったツンが言う。
内藤は顔を上げた。
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540 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:00:02 ID:bwAoZRz2O
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ξ゚听)ξ「さっきも言ったけど、今、モララー君達がクラスメートに根回ししてくれてる。
上手く行くかはまだ分かんないけど」
ξ゚听)ξ「でも、内藤君が今までたくさん刷り込んできた『明るくて優しい子』ってイメージは、
間違いなく有利に働くはず。
──内藤君が自分の身を守るための武器として、非常に有効なものだったのは事実でしょ」
( ^ω^)「……武器」
ξ゚听)ξ「あなたに合ってたし、とても優れてると思う。
あなた自身の本心と上手く摺り合わせられるようになれば、もっとね」
自棄になって全部捨てちゃ駄目よ。
その言葉を最後に、ツンは病室を出ていった。
くるうとシュールも続く。
急に静かになった気のする室内で、内藤は弟者と顔を見交わした。
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541 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/09/19(金) 21:01:38 ID:bwAoZRz2O
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(´<_` )「俺も、すごいと思ってるよ。
俺には出来ないことだし、ブーンは演技や嘘を悪いことに使ってないだろ。……あんまり」
( ^ω^)「僕って、嘘つきのままでいいのかお」
(´<_` )「ブーンがしたいようにすればいい」
( ^ω^)「普通の僕じゃ、嫌われるかもしれないお」
(´<_` )「うちの連中や出連さんに嫌われてると思うか?」
内藤はベッドに体を横たえた。
ジュース買ってくる、と弟者が立ち上がる。
久しぶりに一人きりになった部屋の中、内藤は顔の上で手を組み、思考し、ゆっくりと手をほどいた。
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