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254 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:10:14 ID:W0iIunUcO
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──工場の奥に、6畳程度の部屋がある。
もともと休憩室として使われていたらしく、傷みきった畳が敷かれている。
そこにシートを広げ、ツンはどっかと座り込んだ。
横に鞄を下ろす。
ξ;゚听)ξ「……あー……もう」
光量の少ない電球を見上げて、溜め息。
視線を休憩室の出入口へ送る。
( ФωФ)「……貴様、なぜ我輩の言うことを聞かないのである」
ドアの前。
拘束札の白光に捕らわれながら、ロマネスクが凄みを利かせた声でいった。
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255 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:12:10 ID:W0iIunUcO
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ξ゚听)ξ「……裁判ってさあ……」
( ФωФ)「……」
ξ゚听)ξ「色ーんな人が関わってるからさあ……。
万人が納得する結末って、なかなかないのよね」
( ФωФ)「何の話であるか」
ξ゚听)ξ「あなたは納得できてる?」
ロマネスクが詰まった。
肯定ではない。かといって真意もはかれないが。
ξ゚听)ξ「……検察側は、10年以上前の憑依事件の方の犯人があなただとは、まだ証明しきれていないわ。
ただ『限りなくクロに近い』とは確信しているし、裁判長にそう思わせることにも成功してる。
私も正直そう思う」
ここまで来てしまえば、ロマネスクが「違う」と言っても、
否認するだけの証拠がないのなら認識の変化は見込めない。
「限りなく怪しい」という疑惑は確実に残る。
しぃ達からすれば、それで充分。
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256 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:12:42 ID:W0iIunUcO
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ξ゚听)ξ「……あちらが起訴してるのは、あくまでミセリさんの憑依事件。
間違いなくあなたが犯人だとみんなが思ってる。
これからの審理でも補強されていくわ」
( ФωФ)「……」
ξ゚听)ξ「このまま行くなら、きっとあなたは有罪と判断される。
そうなれば──さっきの審理が生きてくる」
( ФωФ)「過去にも同じことを繰り返した凶悪犯だと」
ξ゚听)ξ「ええ」
ツンはロマネスクに顔を向けた。
猫目を、じっと見つめる。
何も見えない。聞こえない。
幾度試しても、彼は一瞬たりとも警戒を解かない。
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257 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:15:08 ID:W0iIunUcO
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( ФωФ)「我輩はそれでいい」
ξ゚听)ξ「……ロマネスクさん、私、あなたが無実なら何が何でも助けるわよ」
( ФωФ)「だから、それがいらないのだと言っているのである」
ξ゚听)ξ「それは罪を認めるって意味?」
──また沈黙だ。
いっそ頭突きでもかましてやろうか。なんて思いながら微笑む。
結局、その後ロマネスクは喋らなかった。
無為に10分が過ぎていく。
そろそろ法廷に戻らなければ、とツンは腕時計を見て立ち上がった。
喉の渇きを覚え、鞄から麦茶のペットボトルを取り出す。
( ФωФ)
ロマネスクが。
目を見開いた。
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258 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:16:18 ID:W0iIunUcO
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( ФωФ)「──貴様」
ξ゚听)ξ「え?」
( ФωФ)「その鞄に何を入れているのである」
背中が冷える。うなじがちりちりとざわつき、恐怖が足元にまとわりつく。
これは──殺気か。
ξ;゚听)ξ「何って……資料とかは全部机に出したから、今は空っぽで……
このペットボトルしか」
ロマネスクの敵意を察知し、拘束が強まる。
その苦痛に顔を歪ませながら、それでも尚ロマネスクは食い下がった。
( ФωФ)「違う。何か入っている」
ツンは一歩下がり、鞄の中を探った。
やはり空っぽだ。
布を撫でる感触ばかり。
ξ゚听)ξ「、」
──内側のポケットに指が引っ掛かる。
そこに手を忍ばせると、何かに触れた。
それを引っ張り出せば、ロマネスクの表情がますます険しくなる。
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260 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:17:03 ID:W0iIunUcO
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ξ;゚听)ξ「あ」
( ФωФ)「──それは」
紙。手のひらに収まる程度の。
ヴィップ総合病院で、カウという看護師から預かったものだった。
直後にトソンの件でごたついたので、ギコ達に渡すのを忘れていたのだ。
ツンが紙を見下ろしていると、ロマネスクは呆然としたような声を出した。
( ФωФ)「なぜ貴様が──」
「ツンさん、再開しますよ」
ドアの向こうからしぃの声が掛かり、張り詰めていた空気が切れた。
はっとして、ロマネスクが口を閉ざす。
不意に、ツンは違和感と既視感を覚えた。
それに戸惑い、返事をするのに間があいた。
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261 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:18:39 ID:W0iIunUcO
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──おい、という声が背後からかかる。
内藤はそれに応えずに歩を進める。
おい。もう一度。
ざくり。返事の代わりに雪を踏む音が大きく響いた。
(;'A`)「少年。やめとけって」
( ^ω^)「……」
(;'A`)「どこ行くってんだよ。こんな夜によお」
どこに行くか、など。
内藤にも分からない。
けれども、じっとしてもいられなかった。
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262 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:19:38 ID:W0iIunUcO
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( ^ω^)(……もう、裁判は始まってるお)
考え、頭を振る。
幽霊裁判。ツン。
関わってはいけない。
好奇心に負けてあんなものに関わったから──自分は。「失敗」したのだ。
(;'A`)「こんな時間に出掛けたら、すぐバレる」
( ^ω^)「……裁判の傍聴に行くって書き置きしてきたから、
それなりに時間稼ぎは出来ますお」
(;'A`)「遅くても朝にゃみんな気付くって。──なあ、やめようぜ、家出なんか」
( ^ω^)「ドクオさんには関係ないじゃありませんかお」
(;'A`)「知り合いのガキが夜中に家出してるとこ見て放っておけるほど薄情じゃねえんだ」
ざくり。ざくり。
普段通らぬ道を進む。
目的地など、特にない。
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263 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:21:42 ID:W0iIunUcO
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──クラスメートが、右腕の骨を折った。
水曜日の昼休み、担任に頼まれて内藤が掲示物の貼り替えを行っていたところ、
走り回って遊んでいたクラスメートがぶつかってきたため、踏み台にしていた椅子から落ちてしまった。
内藤は右手の甲に掠り傷を負う程度で済んだのだが。
放課後。
「階段で突き落とされて」、そのクラスメートが転落し右腕を折ったのだという。
そのとき、周りには誰もいなかったらしい。
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266 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:24:52 ID:W0iIunUcO
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あっという間に、ほとんどのクラスメートのもとへ話が伝わった。
もはや些細な不幸とはいえない事態、
そして「無人の場所で突き落とされる」という不可解な現象から、
皆が異様なものを感じ取ってしまうのも、当たり前ではあった。
木曜日にそれを聞かされ、内藤は困り果てた。
ああ、自分の知らないところで、事は深刻なところへ発展していたのだ──と。
('A`)「なあ。少年ってば。えーっと、何だ、よく分からんが学校で嫌なことあったんだろ?
おまえ人気者だっていうし、どうとでもなるんじゃねえの?」
( ^ω^)「……」
内藤は演技が得意だけれども。
場の空気を操るのが得意なわけではない。
多数が作り出す「空気」に抗えることが出来るのなら、小学生のときだって苛めになんか負けなかっただろう。
そもそもあれは、内藤が純真だろうが穏和だろうが関係ない。
「内藤に『何か』すると、祟られる」──それ自体が問題になっているのだから。
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267 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:26:27 ID:W0iIunUcO
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( ^Д^)『祟り、まだ健在だったかあ。こえーこえー。あ、こういう風に言ったら俺もやべえのかな』
プギャーの発言はあくまで茶化すものであった。
だが一部の生徒は本気で怯えていた。
故に、他のみんなが距離を掴み損ねた。
そんなことが本当に起こるわけがない。しかし実際に被害は出ている。有り得ない。でも──。
そうやって、判断しかねて。どう触れるべきか見失ったのだろう。
(;^ω^)『偶然だお! 僕、みんなに──怒ったことだってないし……
そもそも祟ったりなんか出来ないお!』
必死にそう言ってみせれば、半数は「そうだよな」と納得したが
残りは、まだ腑に落ちずにいた。
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268 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:28:54 ID:W0iIunUcO
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何より内藤本人が、自分を疑ってしまったのが悪かったのかもしれない。
他の被害報告はともかくとして、骨折の件は明らかに異常なのだ。
有り得ない状況で「突き飛ばされた」という主張。これだけが異質だ。
骨折した本人は内藤と仲が良く、内藤を嵌めるために嘘をつくとも思えない。
そうして内藤の脳裏に呪詛罪の裁判が過ぎってしまえば──もう、自分のせいではないと言い切れなくなった。
凛々島リリは無意識に呪術を行っていた。
彼女の呪いも、多くは他人を転ばせたり怪我をさせたりするような類だった。
もしや自分も同じことをしたのではないか。
そう考えてしまって、自分の潔白を信じられなくなった。
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269 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:29:45 ID:W0iIunUcO
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('A`)「おーい……夏だったら俺だってここまで気にしねえけどよお……。
冬だぜ。この寒い中、野宿でもしようもんなら死ぬぞマジで」
( ^ω^)「……財布は持ってきてますから、どっか泊まりますお」
('A`)「んで朝になったら電車に乗って遠くへ──なんて考えてねえだろうな」
( ^ω^)「……」
('A`)「やめとけって、本当にさあ……」
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(;^ω^)『……僕は、そんなこと……』
それでも、内藤がひたすらに否定し続ければ、クラスメート達だって
今回の件が如何に馬鹿らしいか理解してくれただろう。
だが。
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270 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:30:49 ID:W0iIunUcO
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『──でも、俺、ブーンがあの人と一緒にいるところ何回か見たよ。
ほら、いつも黒い服着てる、金髪の……あれ、「霊感女」』
一人の生徒から上がった発言が、決定打となった。
『出連さん? 聞いたことあるよ、うちのお兄ちゃんと同級生だった』
『あの人も幽霊がどうとか言ってたんでしょ』
『──そういえば去年さ、その人と内藤くん校門のとこで話してたよね』
知らない、と。
言えなかった。
言いたくなかった。
ツンとのことを否定したくなかった。
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271 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:31:48 ID:W0iIunUcO
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(´<_`#)『──……いい加減にしろよ!!』
代わりに言葉を発したのは弟者。
(´<_`#)『みんな祟りだ何だって本気で言ってるのか!?
冷静に考えろって、現実にそんなのあるわけないだろ!』
『だけどさあ……』
(´<_`#)『ブーンはそんなことする奴じゃないだろ? ……だよな、ヒッキー』
内藤や弟者と普段から一緒にいる友人として、彼はヒッキーに話を振ったのだろう。
内藤の絶対的な味方になると信じて。
しかし。
(;-_-)『……あう……』
ヒッキーは、頷いてくれなかった。
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272 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:33:16 ID:W0iIunUcO
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当然ではある。彼は人一倍臆病だ。
祟りを臭わせる情報がいくつも示されてしまえば、恐怖も覚えるし
無条件に内藤を信じることも難しくなったのだろう。
彼は決して悪くない。
内藤だって、立場が違えば──たとえ表面は取り繕ったとしても、本心では──同じような反応をとる。
だからこそ胸に刺さった。
既に、一番仲のいい友人からも疑われてしまう段階に行き着いているのだと。
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273 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:35:10 ID:W0iIunUcO
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(´<_`#)『ヒッキー!』
( ・∀・)『……怒んなって、こうなったらもうしょうがないんだから』
(´<_`#)『……お前が余計なこと吹き込んだんじゃないのか?
お前、初めからずっとブーンのこと疑ってただろ』
(#・∀・)『はあ!? 疑うって何だよ、好奇心で訊いてただけじゃんか!
俺は別に、ほんとに祟りがあったとしてもブーンが悪いとは思ってねえし!』
(´<_`#)『何だそれ、ブーンが本当に祟ってると思ってるってことか!?』
(#・∀・)『だって分かんねえじゃん! みんなに色々あったのは事実だろ!』
(;-_-)『ま──待って、2人共、ごめん、違うよ、信じる! 僕はブーン信じるから! 喧嘩しないで!』
(´<_`#)『そんな風に「信じる」って言われて納得できると思うか!?』
(#・∀・)『どっちにしろ怒られんならヒッキーはどうすりゃいいんだよ!
弟者は黙ってろよ、お前が出しゃばるとこじゃねえんだって!
今はブーンが何か言わなきゃ意味ねえだろ!』
(´<_`#)『な──』
(;^ω^)『弟者! 弟者、……弟者……』
どうやって止めればいいのか分からず、名前を呼ぶことしか出来なかった。
2人の言い合いを続けさせるべきでないことしか認識できなかった。
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274 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:36:10 ID:W0iIunUcO
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弟者が口を閉じる。モララーも黙ったが、両者は睨み合いを続けていた。
周囲のクラスメートは──今の騒ぎに、一気に距離を置いてしまっていた。
不安。気まずさ。恐怖。それらが混在し、空気が重たくなっていて。
( ^ω^)『……ごめんお……』
その元凶が己にあることに耐えきれず、内藤はそう呟いた。
そうすることで、また一層、気まずさに拍車がかかる。
( ^ω^)『僕は、何もしてないんだお……』
それ以外に言うべきこともない。
(´<_` )『……悪かった』
弟者も、謝罪の言葉を口にした。
モララーとヒッキーに向けてなのか、内藤に向けてなのか、皆に向けたものなのかの判断はつかなかったが。
( ^Д^)
一歩引いたところで、プギャーが笑ってそれを見ていた。
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276 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:38:32 ID:W0iIunUcO
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その日と金曜日は、クラスの雰囲気が歪に軋んだままだった。
内藤を敵視する者こそいなかったが、積極的に話しかけてくれる者もいなかった。
モララーとヒッキーは弟者とのことがあって近付いてこなかったし、
弟者は弟者で周囲に苛ついてばかりいた。
それが、どうしようもなく辛い。
('A`)「あー、少年。おまえ居候だろ。
預かってる息子さんが家出したなんてことになったら、流石家の連中、めちゃくちゃ大変だぞ。
思春期だし家出したくなることもあるだろうけどよ、他所様の家に迷惑かけちゃ駄目だって」
( ω )「……うるさいお」
('A`)「……」
足を止める。
見知らぬ公園。
ひどく狭くて、遊具などブランコや滑り台程度しかなく、砂場は雪に埋もれていた。
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277 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:41:07 ID:W0iIunUcO
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( ω )「……何で、あんたらみたいなのが見えるってだけで、こんなことにならなきゃいけないんだお。
これさえなけりゃ、きっと僕は普通に暮らせてましたお。
苛められなくて済んだ。腫れ物みたいに扱われずに済んだ」
(# ω )「──普通で良かったんだお!!
全員から好かれなくても!! 普通に友達が出来て、普通に過ごせればそれで良かった!!」
──なるべく敵を作らぬように、演技することを覚えた。
友達をたくさん作るためでも、周りを味方で埋めるためでもなく。
ただ、みんなが自分を排除しないでいてくれるなら、それで良かった。
けれど、予想外に周囲は内藤を好いてくれた。
必要としてくれた。
それがどれだけ嬉しかったか。
疎まれ蔑まれ続けた子供が、一転して愛されるようになってしまえば、
その環境に依存するのは当たり前だった。
あんな心地よささえ知らなければ、こんなに辛くならずにいられたかもしれないのだ。
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279 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:42:33 ID:W0iIunUcO
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('A`)「見えるもんはしょうがねえじゃねえか。
埴谷刑事は上手くやってたんだろ、あの人は色んな奴から好かれてる」
('A`)「……あー、いや、あれは育った家がそもそも特殊みたいだしな。
少年と比べても仕方ねえか」
慰めの言葉も浮かばないようで、ドクオは口ごもってしまった。
ブランコの雪が内藤の頬を冷やす。
頭は一向に冷えない。
財布と携帯電話だけを持って家を出てみたものの、これからどうするか、などと考えていなかった。
ただ、とにかく──「ここ」にいたくない、という思いが足を動かしたのだ。
ここ、というのが、流石家を指すのか町を指すのか、別の何かなのかは判然としない。
ひとまず歩いて、歩いて、ひたすらに考え続ければ、感情の落ち着きどころを見付けられるのではないかと期待していた。
しかし思考を巡らせるほどに深みに嵌まっていく。
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280 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:43:50 ID:W0iIunUcO
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分かっている。
自分がどこまでも半端でいるから招いた事態なのだと。
霊感のことは、ドクオが言うように、持って生まれた以上は仕方のないこと。
だから、この町に来てからは全て無かったことにしてやり直そうと決めた。
──この生活をずっと続けたいのなら、誰に何を言われようと、
幽霊も幽霊裁判も、何もかも無視し続ければ良かったのだ。
「普通の中学生」を演じ続ければ良かったのだ。
なのにそうしなかった。
幽霊裁判に関わり続けた。
欲張って、どっち付かずのまま日常を過ごした。
だからこうなった。
分かっている。
分かっているからこそ、後悔してもし足りない。
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282 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:45:06 ID:W0iIunUcO
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( ω )
コートの袖を握り締める。
手の甲に額を押しつける。
色んな人の顔が、脳裏に浮かんでいく。
(;-_-)
(#・∀・)
(´<_`#)
大事な友人達の顔が浮かんで、胸に重石が一層詰め込まれた。
たくさん笑い合ってきた筈なのに、不安と怒りの顔しか思い出せない。
彼らが離れていってしまうのではないかと考えるのが、一番辛い。
( ^Д^)
次に、プギャーの笑み。
きっと彼が期待した以上に、2年1組は拗れた。
彼は最低限のことしかしていない。水面に小さな石を2、3投げ込んだだけ。
その波紋で、まんまと内藤の足場は揺らいで崩れた。
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283 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:47:19 ID:W0iIunUcO
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──喉が、ひくひく震えた。
手に力を込める。ああ。嫌だ。嫌だ。
この感覚は。嫌だ。ああ。
泣くな。
泣いてはいけない。
泣いたら負けだ。
こんなの、泣くようなことじゃない。
平気だ。
既に経験したこと。いや、寧ろ前より楽ではないか。殴られやしない。蹴られやしない。
だから泣くな。
泣けば──もう駄目になってしまう。
強がることすら出来なくなる。
惨めで、苦しくて、堪らなくなってしまう。
耐えられれば、きっと大丈夫。
また立てる。今度こそ1人で。
泣くな。泣くな。泣くな。泣くな。
泣くな。
( ;ω;)
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284 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:48:14 ID:W0iIunUcO
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叫ぶ。
感情を全て吐き出して、空っぽにしたくて声を張り上げる。
なのに涙はますます溢れてくる。
泣けば泣くほど辛くなる。
苦しい。苦しい。
寂しい。
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