ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

Last case:憑依罪/中編

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220 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:19:53 ID:W0iIunUcO


 手順はいつも通り。
 まずは被告人の確認、いわゆる人定質問。

【+  】ゞ゚)「被告人。名前と……生年月日、を聞いたところで、こちらも、確認は……とれない、が」

 どうしたものかと迷っているようで、ぎこちなく言いながら、オサムはしぃを見た。
 しぃの涼しげな瞳がオサムからロマネスクの方へ滑る。

(*゚ー゚)「まあ一応」

【+  】ゞ゚)「うん。じゃあ名前と生年月日。覚えていれば」

( +ω+)

【+  】ゞ゚)「……」

(*゚ー゚)「……被告人」

 苛立ち混じりにしぃが幾度か呼ぶが、相手は目を閉じたまま動かない。
 軽く振られた木槌が小さな音を発すると、ようやく瞼を持ち上げた。

221 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:20:44 ID:W0iIunUcO

ξ゚听)ξ「ロマネスクさん、裁判始められないわ。始まらないと終わりもしないわよ」

( ФωФ)「……ロマネスクである。いつ生まれたかは知らん」

【+  】ゞ゚)「猫又──でいいな?」

 ロマネスクはまた黙る。
 完全に持て余したようで、オサムはツンへ目を向けてきた。

ξ゚听)ξ「はい。本来の姿は猫ですし、その際には尻尾が二つあります」

 猫又。歳をとった猫が妖怪となったもの。
 尻尾が二股に分かれている、というのは有名な話。

 二度目にロマネスクと会ったときに、猫の形態をとった彼の尻尾を確認させてもらった。
 ぱっと見では大振りな尻尾が一つあるだけだったが、
 よくよく観察してみれば、2本の尻尾が重なり合って一本のように見えるだけだと分かった。

川*゚ 々゚)「猫のとき可愛かった」

【+  】ゞ゚)「くるうが一番可愛いよ」

 よくもまあ、そんな歯が浮くような台詞を。
 いや、彼の場合はお世辞もなく本音100%なのだろうが。

222 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:21:43 ID:W0iIunUcO

【+  】ゞ゚)「初めから妖怪だったのではなく、元々は普通の猫だったんだな?」

( +ω+)「猫である」

【+  】ゞ゚)「猫又なら、長生きした猫がそのまま妖怪になったものだから──
        享年とかは無いな。分かった。
        今から検事が起訴状を読み上げるから、ちゃんと聞いておいてくれ」

( +ω+)

【+  】ゞ゚)「うん、まあ、聞かんこともないだろう。検事、頼む」

 開廷からものの3分でオサムは慣れたようだった。
 ギコなど苦笑いを浮かべている。
 しぃはいつもと変わらぬ所作で書類を持ち上げた。

223 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:23:02 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「──公訴事実」

 どことなく落ち着きのなかった傍聴人達が、一斉に居住まいを直したような気がした。
 ツンは何気なく彼らの顔を順繰りに眺め──

( <●><●>)

ξ゚听)ξ(あら、来たのね)

 3列目にワカッテマスの姿を認めて、僅かに目をすました。
 ビロードと「ぽぽちゃん」はいない。

(*゚ー゚)「7年……いや、8年前、平成17年8月20日。昼、12時15分頃。
     被告人は、被害者──三森ミセリに断りなく憑依した」

 しぃの声が耳に入り、意識を正面に戻した。

(*゚ー゚)「その状態で町の中を移動し続け、同女の体力を著しく消耗させた後……
     午後7時40分。道端で憑依を解き、意識の戻らない被害者を残してその場を去った」

 未だに被害者は昏睡状態にある──と言って、しぃは書類をめくる。

 トソンの裁判で何度も議論した。
 あのときとは、既に様相が違っている。

224 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:24:28 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「さらに被告人は昨年、平成24年7月13日午後10時過ぎに
     被害者が眠る病室に忍び込み、被害者の首へ手を伸ばしていたところを
     通りすがりの霊に見付かり、逃走した」

 通りすがり。トソンだ。
 トソン──
 彼女は終ぞ、事務所に顔を出さなかった。

 しぃは続いて、その件がきっかけで病室前に警備がつけられたことを説明する。
 おばけ課の警官と、協力者であるおばけの二人体制。

(*゚ー゚)「しかし同年8月10日、午後11時過ぎ。警官が席を外し、残された霊が僅かに目を離した隙に、
     またも被告人が病室に現れた。すぐに発見され、また逃走──
     警備の霊が追いかけたものの、追いつかず、取り逃した」

 「警備の霊」はドクオ。
 警察に歯向かわぬように弱い霊を使おう、という流れで雇われ、
 いざロマネスクを捕らえられなかったとなるや否や
 やはり強い霊の方が頼りになる、と外されたのだから、彼も気の毒なことだ。

 ロマネスクは、もう飽きたと言わんばかりにうんざりしたような目をしぃに向けた。

225 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:26:25 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「そして今年2月1日。その日の警備には、2体のおばけが当たっていました。
     午後11時から午前0時の間に、被告人はまたまた病室を訪れ
     警備のおばけを──殺した」

 言って、ほんの3秒、間をあける。
 しぃの瞳が書面を追い、一度ツンへ向けられ、すぐに戻った。

(*゚ー゚)「そこへ通り掛かった浮遊霊──これは昨年7月に居合わせた霊と同じです。
     被害者の旧友であった都村トソン。彼女までをも殺害したものの、
     その間際、同女がナースコールを鳴らしたために、今回も被害者に手を出すことなく逃げ去った」

 殺害。

 は、と、ツンは短く息を吐き出した。
 聞きたくなかった言葉。──うっすらと、感付いてはいたこと。

 揺らぐ思考を、むりやり真っ直ぐに保つ。
 ここで感傷に浸っていてはいけない。審理は始まったばかりなのだから。
 唇を噛み、沸き立つ感情を隅に追いやる。後で取り出せばいい。いま見るべきではない。

 逃げてばっかりだな──傍聴席から囁きが聞こえた。薄い嘲笑。
 ロマネスクが俄に怒気を孕んだ目で睨みつけ、しかしまた瞼を下ろした。

226 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:29:09 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「罪名及び罰条!
     憑依の罪、つきまといの罪並びに殺霊罪──
     おばけ法第61条の第2項、第88条、第100条!」

(*゚ー゚)「以上の事実について、審理を願います」

 憑依罪とつきまとい罪は、ミセリに対しての犯行。
 過去にも被害者は何人もいるようだが、今回はひとまずミセリに関する事件のみを扱う。
 今回の審理、判決如何によって、過去の事件も改めて吟味することになるのだろう。

 殺霊罪は文字通り、おばけを殺す──消し去る罪。
 こちらの被害者はミセリではない。

【+  】ゞ゚)「被告人から何か意見は」

( +ω+)「我輩は『ひこくにん』ではなくロマネスクである」

【+  】ゞ゚)「形式として一応な」

 それ以外の発言は無かった。
 起訴内容の否認も是認もしていない。

228 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:30:54 ID:W0iIunUcO

(;,゚Д゚)「何だかねえ」

(*゚ー゚)「弁護人に訊いた方がいいかもしれません。
     そもそも弁護人、そちらが無罪を主張したいのか、減刑を望んでいるのか、全て認めるのか
     未だに伺っていませんが」

ξ゚听)ξ「それは審理を進めていけば自ずと分かるわ」

(*゚−゚)「まさか、まだ決めてないわけじゃありませんよね」

 図星。
 何度か面会はしたが、結局ロマネスクは一つとして語らなかった。
 かといって罪を認めているようにも──ツンには思えなかったのだ。

 何にせよ手探りでいくしかない。

 しぃの冷ややかな視線に、ひとまずウインクを返す。
 可愛げに免じてくれるかと思いきや、一層厳しい表情になってしまった。おかしい。
 もはや軽蔑すら感じられる顔付きのまま、しぃは別の書類を手に取った。

(*゚ー゚)「まずは被告人の来歴から話しましょうか」

【+  】ゞ゚)「そうしてくれ」

229 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:32:58 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「被告人は25年も前、G県サロン市にある寺──ラウン寺の境内に出入りするようになり、
     以降、同寺にて飼われていました」

 証拠として、ラウン寺の古びたパンフレットを掲げるしぃ。
 ツンの手元にもある。ギコが入手してきてくれたもの。

 最終ページに、おまけのような形で猫が紹介されている。

(*゚ー゚)「ロマネスクと名付けられ、僧侶や参拝客らに可愛がられていた彼ですが──
     少しばかり『変わった』ところのある猫だったそうです」

川 ゚ 々゚)「どんな?」

(*゚ー゚)「霊障といいますか……不可解な現象に悩まされている人、
     あるいは突然不幸に見舞われるようになった人が寺を訪れると、
     この猫がまとわりつき、にゃあにゃあ鳴くというのです」

230 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:34:37 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「初めは誰もその共通点に気付きませんでしたが、
     僧侶の1人が、ふと、猫が擦り寄る客はいつも霊障の相談に来る人ばかりだなと思い、
     その後も注意して観察した結果確信するに至ったそうです」

(,,゚Д゚)「障り、祟り、呪い。そういうのに関わってる人を見分けられたってことよね、つまり」


 この事実は寺の中でのみ噂されていたという。
 だが、ラウン寺に残されている過去の日誌や、古くからいる僧侶の証言で確認できる。

 この時点で、既に猫又になっていた筈だ、としぃが言う。
 「尻尾の根元に、小さな毛の房があった」という記述が残っていたらしい。
 当時はまだ2本目の尻尾が小さかったのだろう。


【+  】ゞ゚)「猫は鳴くだけなのか?」

(*゚ー゚)「ええ。特別、何かするわけでもなく。
     ただ、寺の人達にとってはいい目安になっていたでしょう」

(,,゚Д゚)「アドバイスしたり徳の高い話聞かせたりするくらいならお寺さんの仕事の内だけど、
     除霊とかお祓いするような場所じゃないから。
     にゃんこが騒いでくれれば、もっと相応しい相談先を紹介する準備ができるってわけよ」

【+  】ゞ゚)「坊主や相談者の役には立ってたんだな」

 ロマネスクが善意で行動していたのか、はたまた別の目的があったのかは定かでない。
 何しろ彼が語らないので。
 深く考えることもなく、「なんとなく気になる」相手にまとわりついていただけ──という可能性だってある。

231 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:36:03 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「また、寺で飼われていたとは言うものの──放し飼いのような状態だったので、
     ふらりと外に出て、数日すると戻ってくる、ということがよくあったと言います」

(*゚ー゚)「彼はその間にも、憑依事件を起こしていたと思われます」

ξ゚听)ξ「根拠は?」

(*゚ー゚)「被告人が寺で飼われるようになってから8年後の春先。今から17年前ですね。
     G県のヒナン町に住む、拝み屋の男性が不審死を遂げました」

 先週しぃに渡された大量の資料の中にもあった。
 その概要を、しぃが説明する。

232 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:37:06 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「──その日、男性は自宅の一室に呼んだ客のお祓いをしていました。
     一度別室に移り休憩した後、再び客のもとへ戻ってきた男性は、
     それまでの穏やかな物腰とは打って変わって、奇妙な言動をし始めたそうです」

(*゚ー゚)「『やっと取り憑けた』『人の体ってのは変な感じだ』──などとね」

【+  】ゞ゚)「ずっと猫だった者がいきなり人間の体を使うとなると、そりゃあ感覚の違いはあるだろうな」

ξ゚听)ξ「ロマネスクさんは、こうして人間の姿にもなれていますが」

(*゚ー゚)「当時は他者に憑依する程度の力しかなかったのかもしれない」

 まあ、妥当な結論だ。
 猫又は歳を重ねるごとに出来ることが増えていく、という説もあるし。

 ツンは資料群の中から、件の拝み屋に関する書類を引っ張り出した。
 証言は、当時、その拝み屋に師事していた助手によるもの。
 残念ながら助手には霊を見るほどの力がなかったので、拝み屋に憑いた何者かの正体は誰も分からない。

(*゚ー゚)「話を戻しましょう。──そして男性は家を飛び出し、
     本人が所有していた裏山へと駆けていきました。
     それなりの大きさの山だったので、捜索してもなかなか見付からず……」

(*゚ー゚)「翌日になってようやく、山の奥で首を吊って死んでいるのが発見されました」

233 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:38:47 ID:W0iIunUcO

ξ゚听)ξ「吊るためのロープとか持ってたの?」

(,,゚Д゚)「この人、お祓いするときは相手の周囲に縄を張って簡易な結界を作る方法でやってたんですって。
     で、家を飛び出す直前に、その縄を持って……」

ξ゚ -゚)ξ「ふむ」

 首吊り。縄。ボールペンで書類に補足する。
 今回の裁判は、こちら側の持つ手掛かりが本当に少ない。アサピーやオサムのときよりも、更に。
 少しでも気になったことはきちんと留めておかなくては。

ξ゚听)ξ「この件がロマネスクさんの仕業だって言いたいのよね?
      たしかにおばけによるものではあるみたいだけど、それがロマネスクさんだと特定できる証拠は?」

(*゚ー゚)「物証はありません」

ξ゚听)ξ「じゃあ、この事件が起きたとき、ロマネスクさんがお寺にいなかったとか?」

(*゚ー゚)「分かりません。日誌にはそういったことまでは書かれていませんでしたし、
     当時ラウン寺に勤めていた僧侶も、いついつに被告人が不在だったか、はっきりとは覚えていませんので」

234 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:41:09 ID:W0iIunUcO

ξ゚ぺ)ξ「ならロマネスクさんのせいだとは言えないじゃない。
      霊能力者、しかもそれを生業にしてる人はおばけに目を付けられやすいから
      何かに憑かれて命を絶たれてしまうのは、ないことじゃないわ。容疑者はいくらでもいる」

(#ФωФ)「──」

 ロマネスクの怒気を孕んだ視線が、ツンに突き刺さった。
 ツンもまた、負けじとロマネスクを見据える。


   ( ФωФ)『貴様は黙って立っていればいい』


 彼は先週、そう言った。
 ロマネスクは己のみならず、ツンにも沈黙を要求した。
 素直に従った場合、無罪判決はおろか、酌量減軽に至る可能性はゼロに近い。

235 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:41:45 ID:W0iIunUcO

ξ゚听)ξ(この人は)

 いや、この「猫」は。
 何らかの真実を隠したまま死のうと──消えようとしている。

 それは。
 駄目だ。
 駄目なのだ。

 ツンは昨年の夏、真実を隠そうとして失敗した。
 山村貞子。河内ミルナ。あの裁判で、ツンは、やってはいけないことをやろうとしてしまった。
 二度と、ああなってはならない。

 被告人。被害者。警察。検事。裁判官。自分自身。全てを蔑ろにするような行いだったのだから。

236 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:44:08 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「根拠はあるんです。物には順番ってものがあるのでね、どうかお聞きください」

 しぃの声で我に返った。
 根拠。何の根拠だ。過去と現在が入り交じった意識を振り払う。

 ──17年前の憑依事件がロマネスクの手による犯行だった、という根拠の話だ。

(*゚ー゚)「この年と翌年、霊能力者の自殺がやけに多い。
     G県で3件、T県、F県、S県でそれぞれ2件、Y県で1件。
     どれも霊媒師や占い師など、『そういう』職業の方ばかりです」

【+  】ゞ゚)「いずれもG県の近くだな。
        限られた範囲の中で、2年間に10件……それはたしかに多い」

 方法は全て首吊りなのか、というオサムの質問に
 しぃが首を横に振った。

(*゚ー゚)「首吊り、入水、飛び降り──多岐に渡っていますね。
     被告人は、こうして霊能力者達を殺してはその魂を喰らい、力を付けていきました」

237 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:45:13 ID:W0iIunUcO

(,,゚Д゚)「これらの事件は共通点があるのよ。
     まず一つ。彼らには自殺する理由が無い。
     もう一つ。妙な言動をとる。
     最後に一つ。被害者達の霊魂が見当たらない……」

【+  】ゞ゚)「妙な言動と不自然な自殺は『憑依されたから』で説明がつくとして、
        霊魂が見付からないのは──」

川 ゚ 々゚)「食べられたから?」

(*゚ー゚)「そういうことかと」

 推測の域を出ない。
 ここまでは、神隠し罪のときに近いように思う。
 とにもかくにも物証が無いのだ。

 それはしぃも重々承知しているらしく、あまり熱が入っていない。
 「そして」と話を進めた。

238 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:46:16 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「そして更に翌年。平成10年の8月を境に、被告人は完全に寺から姿を消しました。
     充分に力を蓄えたため、もっと活動範囲を広げようと考えたのでしょう」

(,,゚Д゚)「平成10年以降は、霊能力者の変死件数も例年と大差なくなったわ。
     ただ、それは──判明してる範囲で、ってだけなんだと思う」

【+  】ゞ゚)「どういうことだ?」

(,,゚Д゚)「霊が見えるんだって周りに吹聴してた学生が
     ある日突然ビルの最上階から飛び降りたとか、
     そういった、『霊感を持つ一般人』の変死がちらほらあるのよ」

ξ゚听)ξ「それは普通の自殺と何か違うとこあるの?」

(*゚ー゚)「件の学生は極度の高所恐怖症だったことでも知られていました。
     その日、友人と街を歩いていた最中に突然押し黙ると
     高層ビルへと駆け込み、エレベーターで最上階まで上って──飛び降りたんです」

(,,゚Д゚)「その子、いい会社から内定もらえてて、恋人との仲も良好で、幸せそうだったらしいんだけど……」

ξ゚ -゚)ξ「なるほどね」

 本来なら取る筈のない行動。
 自殺するほどの精神状態なら有り得なくもないのだろうが、
 そもそも自殺する理由が見当たらない。

239 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:47:09 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「──この学生は別として、霊感持ちの一般人というものの多くは
     自身の持つ力について他言しません。言っても信じてもらえなかったりね。
     ギコだって仕事で必要なとき以外は、霊感のことを話しやしません」

(*゚ー゚)「しかし、たとえ吹聴していなくとも。無能力者だと振る舞っていても。
     おばけは、自分達の存在に気付く人間には敏感です。
     何処其処の誰々が霊感持ちらしいぞ──という情報は、おばけ達の間で噂されてしまう」

【+  】ゞ゚)「? 検事は何が言いたい?」

ξ゚听)ξ「つまりですね、至って普通の一般人の変死として処理されている事件の中には、
      実は霊能力を持つ一般人の変死事件が混ざっている可能性もあるわけです」

 人の話を盗るなとしぃが愚痴る。
 遠回りなのが悪い。

241 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:49:47 ID:W0iIunUcO

【+  】ゞ゚)「ああ……。表向き、憑依による変死件数は減ったように見えるが
        その実、憑依事件は変わらず起きていたのではないか、と」

川;゚ 々゚) ムズカシイ

(*゚ー゚)「いかにも。
     霊媒師占い師拝み屋ばかりを標的にしていては注目を集めてしまう恐れがあるため、
     なるべく一般人を狙うようにしていったのかもしれません」

(,,゚Д゚)「あと、ここら辺からは自殺よりも、極度の衰弱による死亡とかの割合が増えてるわね」

 「極度の衰弱」は、憑依した状態で長時間動き回ったり、
 徐々に生気を喰らったりしていくことで引き起こされる。
 その両方を併用すれば、一日と持たずに命は奪えるだろう。

(,,゚Д゚)「自殺ばっかりだと目立っちゃうから他の方法を試したのかもね。
     まあ健康だった人が一日で衰弱ってのも、ある意味目立つんだけど……」

( +ω+)

 喋り通しで疲れたのか、しぃが口を閉じる。
 彼女がミネラルウォーターで喉を潤している間に、
 ツンは今までの話を軽く整理した。

242 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:51:29 ID:W0iIunUcO


 25年前。昭和63年に、ロマネスクはラウン寺に住み着いた。
 霊障に悩まされる人間を識別できること、数日ほど外出すること、そういった性質があった。

 17年前。平成8年、G県の拝み屋が何者かに憑依され、山で死んだ。
 それを皮切りに、平成8年と平成9年の2年間、G県付近で霊能力者の自殺が相次ぐ。

 15年前。平成10年の夏にロマネスクは寺に帰らなくなった。
 その年以降、霊能力者の変死件数は落ち着いたという。
 ただしそれは「記録で確認できる限り」の数であって、
 事件はひっそりと起きていたかもしれないのだ。

 これらの変死事件には、被害者に死ぬような理由が無かったり、被害者が不可解な行動に出たり、
 被害者の霊魂が見付からなかったり──加害者に喰われた可能性が高い──という共通点がある。

243 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:53:50 ID:W0iIunUcO

ξ゚听)ξ(うーん……)

 ロマネスクに繋がる、と言い切れるほどの説得力があるかどうかは、まだ怪しいところだ。
 しかしロマネスクが全くの無関係か、というのもまた怪しい。
 彼にはアリバイが無い。

 少なくとも、ここまでは検察側も確たる証明は出来ていない。
 ロマネスクに否定されれば、意味を失ってしまう話だ。
 しかし。

【+  】ゞ゚)「被告人。これまでの話で、何か意見はあるか?」

( +ω+)「無い」

【+  】ゞ゚)「それは認めるということでいいのか?」

( +ω+)

【+  】ゞ゚)「……黙秘されると、こっちで勝手に判断することになるが」

ξ;゚听)ξ「ロマネスクさん」

 彼は何も言わない。
 結局のところ、否定しないのならば、ほぼ認めていると同義に扱われるのだ。

244 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:56:21 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「それでは次。
     8年前、今回起訴されている、三森ミセリの憑依事件が起きました。
     被害者は霊感を持っており、その日の昼、旧友の霊に体を貸してやっていました」

(*゚ー゚)「被告人はそのやり取りを見ていたのでしょう。
     三森ミセリに霊感があるのを知り、憑依して、彼女をも犠牲にした」

【+  】ゞ゚)「……全てが被告人の仕業だとして、なぜ霊能力者ばかりを狙うのだろうか。
        取り憑き霊魂を喰うだけならば、そこらの人間相手でも出来る筈だが」

(*゚ー゚)「霊的な力を持つ人の魂となれば、妖怪に馴染みやすいからではないでしょうか」

 単純にそういうことだろう。
 オサムも納得した様子で顎を摩る。
 それを確認してから、しぃは書面を視線でなぞった。

245 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 20:57:49 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「被告人が被害者に憑依する瞬間は誰も見ていませんが──
     どちらかといえば明朗な性格である被害者が『ぶっ殺してやる』と叫ぶ姿を目撃されていることなどから、
     他者に体を操られていた事実は間違いありません」

 その論拠は、トソンの裁判でも聞かされた。
 被告人がトソンであるかロマネスクであるか、違いはそれだけ。

(*゚ー゚)「三森ミセリは幸いにして命までは取られることなく解放されたものの、
     衰弱が激しかったために、今なお昏睡状態が続いています」

ξ゚听)ξ「……彼女が誰かに憑依されてただろうってのは私も同意見だし、犯人を許せないとも思うわ。
      手口が酷似していることから、同一犯による犯行だってのも、まあ納得する」

ξ゚听)ξ「でも、その犯人がロマネスクさんだっていう確かな証拠は?」

(#ФωФ)「──……弁護士!」

 ロマネスクが唸る。
 喋るな、弁護などいらない、黙っていろ──そんな意思が窺える。
 だから、ツンも再び彼を見遣った。そうも行かないのだという意思を込めて。

246 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:00:29 ID:W0iIunUcO

(;,゚Д゚)「どうかしたの?」

ξ゚听)ξ「お気になさらず。検事、答えて」

 正直、答えは聞かずとも分かっている。
 これは、話を整理しやすくするための問答だ。
 しぃも承知の上で、はきはきとした声で答えた。

(*゚ー゚)「6年前に、G県ラウン寺の住職が死亡しました」

(#ФωФ)「……っ」

 ロマネスクは強くツンを睨み、そっぽを向いた。
 ──もう好きにしろ、どうせ無駄だと呟いて。

(*゚ー゚)「普段の住職とは打って変わった振る舞いを繰り返して
     方丈──住職の住まいですね、そこに閉じこもり、
     数時間後に若い僧が様子を見に行くと、亡くなっていたといいます」

247 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:02:08 ID:W0iIunUcO

【+  】ゞ゚)「死因は?」

(*゚ー゚)「心臓麻痺による突然死、ということになってはいますが、はっきりしていません。
     体のどこにも異常はありませんでしたので」

 住職の体自体には異常がなかった。だからこそ異常なのだ。
 異様な振る舞い。不可思議な死。
 これまで語られてきた変死事件との類似。

 故に、これもまた、同一犯による犯行と疑える。

 そこへ、しぃは更なる情報を加えた。

(*゚ー゚)「しかし、遺体の近くに、猫の毛が落ちていたんです」

 写真を掲げる。
 太く長い、茶色の毛。

248 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:03:45 ID:W0iIunUcO

(,,゚Д゚)「この毛、G県の警察署に保管されてたのを借りて
     被告人の体毛と一緒に調べてもらったの。
     そしたらDNAが一致したわけ」

【+  】ゞ゚)「でーえぬえー」

川 ゚ 々゚)「?」

(*゚ー゚)「同一の猫の毛であると認められたんです」

【+  】ゞ゚)「ほう」

 同様のものが寺の敷地内からも採取されました──
 しぃが付け足すと、傍聴席がささやかに揺れた。
 ついに証拠を残しちまったんだな、と。

【+  】ゞ゚)「その被害者である住職は、被告人と面識があったのか?」

(*゚ー゚)「過去の記録によると、被告人がラウン寺で飼われていた頃
     特に被告人を可愛がっていた方であったようです。
     まあ被告人のほうは大して懐いていなかったそうですがね」

(*゚ー゚)「そしてこの住職は、あまり強くはありませんが、霊を見る力があったとか」

 来客を区別するロマネスクの「妙な癖」の実態に最初に気付いたのも、その僧だったという。

 皆が被告人を見る。
 彼はオサムに冷眼を向け、表情を歪ませた。

249 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:04:34 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「これ以降、霊能力を生業とした者、あるいは宗教関係者の変死件数が再び増加し始めます。
     4年前はK県の占い師、T都の宮司、3年前にC県の呪術師等々──」

(,,゚Д゚)「範囲も広くなった。
     長いこと警察に怪しまれずにいたから、気が大きくなったのかも」

(*゚ー゚)「おかげで痕跡を残しやすくなってもしまったが」

 しぃが数枚の写真を出した。
 それにもまた、猫の毛が写されている。

(*゚ー゚)「おばけ法の普及に伴い、各地のおばけ課の捜査方法や取り組む姿勢も進歩しまして……
     ここ数年の事件に関しては、現場に落ちていた被告人の体毛、さらには目撃証言などが
     ちゃんと残されています」

【+  】ゞ゚)「でーえぬえーは、全部一致したのか?」

(,,゚Д゚)「ええ」

ξ゚听)ξ「目撃証言って、たとえば?」

250 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:05:54 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「4年前のK県占い師変死事件。
     被害者はマンションの一室を仕事場にしている占い師でしてね。
     ある女性が、占ってほしいと予約を入れた」


 予約した時間に客が訪問しても、一向に応答がない。
 仕方なく帰途についた客が何気なくマンションへ振り返り、
 占い師が使っている部屋のベランダへ目をやると──

 猫が、ベランダにいたのだという。
 茶色の体毛。猫はしばらく窓を見つめた後、ベランダから去っていったらしい。

 翌日、客は、その部屋で占い師の変死体が発見されたことを知った。


(*゚ー゚)「その占い師の部屋からも、被告人の毛が見付かったんです」

【+  】ゞ゚)「それは大変怪しいな」

 占い師とロマネスクに何かしらの関係があったとは認められない。
 知り合いでもない人間のもとにロマネスクが訪れる理由も認められない。

 であれば、自ずと決まってくる。
 「殺すために」、占い師の部屋に入ったのだ。

251 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:07:08 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「先ほど弁護人が言いましたね。
     17年前から今に至るまでの霊能力者憑依事件は、手口が酷似している。
     同一犯の犯行であることは明白です」

(*゚ー゚)「そしてここ数年の事件に関して言えば、被告人を示す証拠や証言がありますので──」

 「同一犯」イコール、ロマネスクとなる。

【+  】ゞ゚)「だから昔の憑依事件も被告人の仕業と言えるわけだな」

(*゚ー゚)「ご明察です」

川 ` 々´) ウー

 ぐるぐるする、とくるうが呟く。
 ツンもぐるぐるする。

253 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/29(金) 21:08:37 ID:W0iIunUcO

(*゚ー゚)「……と、ここまでが憑依罪。
     ここからつきまとい罪に移ります」

ξ∩;゚听)ξ∩「ちょっと待ったァ!!」

 勢いよく両手を挙げた。
 しぃが、びくりと身を竦ませる。

(*゚−゚)「何です」

ξ;゚听)ξ「10分でいいから休憩ちょうだい。情報多くて疲れたし、──ロマネスクさんとも少し話がしたい」

( ФωФ)「……」

【+  】ゞ゚)「俺は構わん。くるうもまだ、ちゃんとまとめられていないようだから」

川 ゚ 々゚)「頭休める……」

 検事は一気に済ませたいところだったようだ。
 少しだけ渋ったが、オサムの発言があっては無視も出来なかったらしく。

 溜め息と共に、一言吐き出した。

(*-ー-)「然るべく」



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