ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

Last case:憑依罪/前編

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52 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:06:20 ID:1ORWN4EIO


 神社から持ち帰った荷物を一旦事務所に置き、それからバスに乗って住宅街へ。

 とあるアパートの前でツンが立ち止まった。

( ^ω^)「ここは?」

ξ゚听)ξ「アサピーから教えてもらったホストさんが住むアパート。
      ここって……──まあいいわ」

( ^ω^)「?」

 階段を上り、一番奥の部屋の前に立つ。
 「全手」という表札が掛かっている。

ξ゚听)ξ「この部屋に住む人がいるとはねえ……」

 独り言を漏らしながら、ツンはインターホンを押した。
 しばし待つ。応答なし。
 再度押すと、室内から足音が近付いてきた。ドアが開かれる。

53 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:08:02 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「はい?」

ξ゚听)ξ「おうっ」

( ^ω^)(おうっ)

 美形だ。
 全体のパーツが整っていて、派手さはないが、こざっぱりした美形である。
 思っていたより若い。

 インターホンの音で起こされたのか、眠そうな目をしている。

ξ゚听)ξ「内藤君……やばいわ……好みだわ……4番目兼7番目の脳内彼氏タダシ君に匹敵するわ……」

( ^ω^)「知りませんけども」

 別れてから間に2人挟んでヨリを戻したのかタダシ君。

( <●><●>)「……」

ξ*゚听)ξ「や、やだわ、じっと見て。
      ごめんね内藤君、私はみんなのアイドルだったけど、ついに1人の男性に独占されてしまうかも」

( <●><●>)「ハローさん?」

 怪訝な顔をしていた男──これがホストの全手ワカッテマスだろう──は、ツンの金髪と面差しを見つめて言った。
 視線が徐々に下りていき、

54 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:08:46 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「……じゃ、ありませんね……」

 胸元に到達した辺りで前言撤回した。
 そしてどうやらツンも前言撤回したらしい。

ξ#゚听)ξ「はいはいどうもごめんなさいねグラマラスボディじゃなくてね!! やっぱ三次元クソだわ!!
      ──弁護士の出連ツンといいます、アs……ハローに紹介されて来ました!」

( <●><●>)「弁護士? ハロー? 紹介……」

 ぼやけた声で反芻し、ワカッテマスは唸る。
 「ハローさんが言ってた『センセイ』ですか」と、もごもご呟いた。

55 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:12:48 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「何で僕のとこに?」

ξ゚听)ξ「ここに警察が来ませんでした? でなければ、女口調のガチムチと傲岸不遜な学ラン少女とか」

( <●><●>)「女口調のガチムチ警察官なら、昨日……
       最近ここらで野良猫が増えてて、色々問題が起きてるってんで。諸注意とか、そういう」

ξ゚听)ξ「ロマネスクさんのことは訊かれました?」

( ^ω^)(うわ直球)

 眠そうな瞳が清かになった。
 はっきり開かれると、黒目がちで、少し威圧的な目であることに気付く。
 人によっては怯えさせてしまいそうだ。

 ハローさんから聞いたんですか、との問いを肯定する。

ξ゚听)ξ「私、ロマネスクさんのことを聞きに来ました」

( <●><●>)「……長くなります?」

ξ゚听)ξ「内容次第かと。割と根掘り葉掘り詳しく聞きたいんですが」

 きょろきょろと辺りを見渡したワカッテマスは、一歩引いた。
 室内を手で示す。

( <●><●>)「上がってください」


.

56 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:14:18 ID:1ORWN4EIO


 そう広くはないが、1人2人で住むには充分な部屋。
 若々しい、という印象を受けた。
 スポーツチームや歌手のポスター。小振りな家具のデザインも、野暮ったくはない。

( <●><●>)「弟と2人で住んでるんです。これが弟」

( ><)「どうも、えっと、ビロードです」

 ビロードと名乗った少年が頭を下げる。
 彼と2人暮らしだと言うが──窓辺に、もう1人いた。

(*‘ω‘ *)

 和装の女性。
 内藤と目が合うと、女性はビロードに倣って一礼した。内藤も会釈する。

57 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:15:20 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「……あの、もしかして見えます?」

ξ゚听)ξ「着物の女性が」

 ローテーブルにマグカップを置きつつ、ワカッテマスは恐る恐る問うてきた。
 彼女をじっと見つめたまま、ツンが答える。内藤も頷いた。
 どうやら彼女、生きた人間ではないらしい。

ξ゚听)ξ「ここ、曰く付きの部屋でしょう。おばけが溜まってたとかで……。
      去年ある程度は追い払ったって聞いてたけど、この人は追い払えなかったのかしら」

( <●><●>)「僕らがここに越してきたのは去年の夏で、そのときには既に彼女がいました」

ξ゚听)ξ「地縛霊かしらね。まあ放っておかれたってことは悪い霊じゃないのかも」

58 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:16:53 ID:1ORWN4EIO

( ^ω^)「ワカッテマスさんも見える人なんですかお?」

( <●><●>)「この部屋の中限定ですけどね。
       それにはっきり見えるのは夜だけで、明るい内はほとんど……。
       今も見えてません」

ξ゚听)ξ「幽霊が集まってた部屋だから、そういう影響が出ちゃったんでしょうね。
      ビロード君も彼女が見えるの?」

( <●><●>)「ビロードも部屋の中でしか。ああ、でも僕と違って、朝でも見えているようです」

( ><)「あ、あの、すいません。……ぽぽちゃんの、じょ、除霊、とかしに来たんですか?」

 黙って様子を窺っていたビロードが、自身の名が出たのを契機にして、先の兄のように恐々と訊ねた。
 ぽぽちゃん、と名前らしきものを口にする際に彼女を一瞥したので、彼女が「ぽぽちゃん」なのだろう。

ξ゚听)ξ「いえ、そちらに用があって来たんじゃないの。ワカッテマスさんに訊きたいことがあって。
      あなた達に迷惑かけてないなら、彼女がどうこうされることはないわ。
      死後100年経ってる場合は、また話が別だけれど」

( ><)「あ、良かったあ……」

(*‘ω‘ *)"

 「ぽぽちゃん」というのは本人が名乗ったわけではなく、
 普段から全く口をきかないので、ビロードが便宜上そう呼んでいるのだそうだ。
 彼女は唇を尖らせ、ぽっ、と空気を弾き出した。

59 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:18:33 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「あ、これ、どうぞ食べてください。
       お客さんから頂いたんですが、僕はお菓子があまり好きではないので」

 いかにも高そうでお洒落な箱に並んだ、いかにも高そうでお洒落な個包装。
 印された英字で、それがチョコレートであるのが分かった。
 お客──ホストクラブの客からバレンタインデーにもらったということか。

 そういえば彼はホストだった。
 あまりそれらしくなかったので忘れていた。

( <●><●>)「君は、ええと……」

( ^ω^)「内藤ですお」

( <●><●>)「内藤君ですね、チョコレートは好きですか?
       他にも色々ありますから持っていってください。手作りのものはないので安心していいです」

( ^ω^)「あ、──はい、どうも」

 一昨日もらった分がまだ家に残っているのだが、兄者が昨夜から
 内藤のもらったチョコレートを「自分がもらったもの」と仮定して食すという悲しい遊びにハマっているので、
 その遊びに追加してやるとしよう。

60 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:20:14 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「コーヒー飲めます? コーヒー牛乳にしましょうか」

( ^ω^)「お願いしますお」

( <●><●>)「……何だか僕のこと警戒してませんか。寧ろ僕の方が警戒する立場なんですが」

( ^ω^)「すみませんお……経験上、誰に対しても敬語で話す大人に碌なのがいなくて……」

ξ゚听)ξ「トソンさんはマトモでしょうよ」

 そういえば、トソンに今回の件はもう伝わっているのだろうか。
 遅かれ早かれツンの事務所には来るだろうから、そのときに話してみよう。

 彼女に会ったら改めて礼をしなければならない。
 数年前、あのゴミ山で内藤は危うく死んでしまうところだったのだと、前回の裁判で思い知ったから。
 それを救ってくれた彼女にちゃんと礼を言わないと。

 神妙な感情に浸っていた内藤を、意地汚くチョコレートに飛びつくツンの姿が一気に冷まさせた。

ξ゚听)ξ「うめえうめえ」ムシャムシャ

( ^ω^)「あさましい」

 冷静になって考えてみると、敬語云々関係なく身の回りに碌な大人が少なかった。
 ワカッテマスは貴重な常識人かもしれない。大事にしなければ。

61 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:21:56 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「クッキーもありますよ。ビロードとぽぽちゃんもどうぞ」

(*><)「わーい」

 チョコレートよりは焼き菓子の方が好きだ。
 内藤もクッキーの包みを開ける。

ξ゚听)ξ「……」

 さっさと本題に入ればいいものを、ツンは沈黙し(アーモンドチョコに口を封じられている)、
 マグカップにコーヒーを注ぐワカッテマスを凝視した。
 舐めるような視線、とはよく言ったもの。

( <●><●>)「何です?」

ξ゚听)ξ「イケメンだなあと」

( <●><●>)「知ってます」

 クッキーをさくさく噛んでいた内藤の口が止まった。
 いや、そんなまさか。それしきの返答、ジョークの範疇だ。

 真顔で賛辞を肯定したワカッテマスは、コーヒーを注ぎ終えると
 ツンに大して視線を送らずに世辞を返した。

62 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:23:29 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「出連さんこそお綺麗で」

ξ゚听)ξ「知ってるわ。──何か、ホストって感じじゃないわね」

( <●><●>)「プライベートなので。仕事のときは違いますよ」

(*<●><●>)「やーべえ、こんな綺麗なひと初めて見ましたよ僕!
       弁護士さん? 頭いいんだ! 才色兼備ってやつでしょ。うわーモテる絶対モテる。
       あ、コーヒーどうぞーツンさんのために美味しーく淹れましたよ!」

( <●><●>)「みたいな」

ξ゚听)ξ「はあ……大変ね。
      私みたいなのは褒めるところがたくさんあるから困らないだろうけど、
      全てのお客さんにもそうやって振る舞わないといけないんでしょ」

( <●><●>)「最初の頃は本当に大変でした。まあ僕なのですぐに慣れましたけど」

( ^ω^)(何か嫌な予感がしてきた)

(*><)「兄さんすごいんですよ! 女の人にすごくモテるんです!」

(*‘ω‘ *)"

 へーそうなんだすごいね、あ、用事があるので僕帰ります。
 そう言って出ていきたい。
 やっぱり兄者達とドライブに行ってきた方が良かったかもしれない。

63 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:25:12 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「前に住んでたアパートにストーカーが来るのでやむを得ず引っ越して、
       前にやってた飲食店のバイトは店長のお気に入りの女の子に告白されたってだけでクビになって、
       生活費と学費のために見付けた新しいバイトが今の所なんです」

ξ゚听)ξ「生活費もビロード君の学費もってなったら大変でしょう」

( <●><●>)「あ、ビロードの分は親戚が払ってくれてます。僕の学費です」

 弟と2人暮らしということから薄々感付いてはいたが、少々わけありのようだ。
 だが今の内藤には、そんなことどうでもいい。
 彼の人格を見定めたい。

 多分内藤の思い過ごしだろうが、ちょくちょく引っ掛かる発言があるので油断ならない。

ξ;゚听)ξ「あら、学生なの?」

( <●><●>)「大学2年生です。
       正直、成人したてじゃ断られるかなーと思いつつ遊び半分で面接受けてみたら合格しちゃって。
       まあ、この美貌なので仕方ないことなのですが」

 あ。駄目だこれ。

65 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:28:22 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「女性に好かれるのが仕事ですから、それが理由でクビになることはないでしょう。
       だから天職かなあと思ったんですけど、やっぱり、好かれすぎるのも困りものですね。
       バレンタインデーのプレゼントの処理に悩んでて」

ξ;゚听)ξ「分かるわー、美しさって時として自分自身に牙を剥くのよね」

( ^ω^)(もうやだこの町)

 最悪だ。

 こいつ、男版ツンだ。

 違いを挙げるとするならば、ツンは素材の良さを無に帰す残念さのために全く男っ気がないが、
 ワカッテマスは上手く隠しているのか周りが節穴だらけなのか、大層モテていらっしゃるという点だ。

 すこぶる下らない自画自賛大会がしばらく続いたので割愛する。

67 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:29:55 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「……ところで、いつ本題に入るんです?」

ξ゚听)ξ「あ、入ってもよろしい?」

 その一言でようやく場の空気が締まった。
 生チョコを飲み下し、ツンが視線を斜め下に落とす。

ξ゚听)ξ「ロマネスクさんと初めて会ったのはいつ?」

( <●><●>)「……1月……20日ですね。
       バイトから帰って、そこの──曲がり角の向こう。
       電柱のとこで会いました」

 ワカッテマスは、すんなり答えた。
 何故ロマネスクのことを訊くのか──などという疑問をおくびにも出さず。
 出会ったときの様子や、そのときの行動を思い出せる限りで語ってくれた。

.

68 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:30:44 ID:1ORWN4EIO


#####


(;<●><●>)『ぶぇっ、うえ、えべべべ』

 その日は飲みすぎてしまった。
 何とか自宅近くまで来たものの、とうとう限界に達し、側溝に胃の中身をぶちまけた。
 どぶの臭いが鼻について、更に出た。

(;<●><●>)『あ゙あ、あ゙ー、ああ……』

 すぐ傍の電柱にしがみつく体勢のまま固まった。楽だったので。
 自分の客にこんな姿を見られたら大層まずいなと思いつつ。

 最後のもう一波を側溝にぶちまけてから、ようやく立ち上がった。

69 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:31:59 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)『……うん……?』

 電柱を挟んだ向こう側に何かが見えた。
 丸い。暗くてよく分からない。
 ハンカチで口元を拭い、携帯電話の画面を明かり代わりにしてそちらへ向ける。

(;<●><●>)『うわっ』

 動物。
 猫。
 猫だ。猫が横たわっている。

 ここらは野良猫が多い。
 たまに子猫が他の動物や車によって死んでいるという話を聞く。

 まさか死んでいるのか。子猫ではなさそうだが。
 ワカッテマスが様子を窺っていると、猫は目をうっすらと開けた。
 視線がかち合う。

 途端、猫は身を起こした。
 警戒するようにワカッテマスを睨みつけ、じりじりと後退している。
 何者か見定めようとしているようだった。

70 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:33:26 ID:1ORWN4EIO

 ∧ ∧
( ФωФ)『……』

 全体的にやや丸くて、毛並みも良さそうなので、あまり野良っぽくはない。
 けれど首輪はしていないし。

 ちっちっ、と舌を鳴らしてワカッテマスは手を伸ばした。
 猫は近付いてこない。

 手を引っ込め、ふと思い至り、肩に引っ掛けていた鞄の中から袋を一つ取り出した。
 おやつに持ち歩いている煮干し。これも、自分の客にはあまり見せられない。

 友人の飼い猫が煮干し好きだと聞いたことがある。この猫はどうだろうか。

( <●><●>)『食べます?』

 猫の前に煮干しを2匹ほど置く。猫は未だ警戒している。
 ワカッテマスは顔を逸らし、しばらくしてから横目で猫を見遣った。

 猫は煮干しの匂いを嗅いでいた。
 食うか。食わないか。
 わくわくしながら猫の様子を窺っていると、ついに齧りついた。

71 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:35:01 ID:1ORWN4EIO

 ∧ ∧
( ФωФ) カリッ、カリカリ

( <●><●>)

 ∧ ∧
( ФωФ) ポリポリ

( <●><●>)『美味しいですか?』

 ∧ ∧
( ФωФ)そ ビクッ

 猫が後退りをする。
 煮干しをさらにもう2匹置き、ワカッテマスは立ち上がった。
 野良猫に餌付けしてはならない、と理屈は理解していても、どうにも放っておけない。

( <●><●>)『普段この時間にいるんですか? それなら明後日、もっといいもの持ってきますよ』

 ∧ ∧
( ФωФ) …ニィ

 返事なのかは分からないが、猫は短く鳴いた。声だけは愛想がいい。

 もう一鳴きすると煮干しをくわえ、ワカッテマスに尻尾を向けて去っていった。

72 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:35:45 ID:1ORWN4EIO


 ──かと思えば。
 3歩先で振り返り、一旦煮干しを置き、口を開いて。

 先の鳴き声とは打って変わって、低い声を発する。


 ∧ ∧
( ФωФ)『……馳走になった。借りはいずれ何かしらの形で返す』

(;<●><●>)『──へ?』


 喋った?

 ワカッテマスが後退り、躓き、尻餅をつく。
 その間に、猫は去っていった。


#####

73 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:37:09 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「それ以来、ちょくちょく会いました。
       ロマネスクって名前は、二度目に会ったときに聞きましたね」


 ロマネスクと会うのは仕事帰りのみ。
 週に3、4回。
 餌を与え、食い終わればさっさと別れる、ほんの数分間。

 何度か会話をしたという。
 寡黙な猫なのか、全く喋らない日もあったし、口を開いても二言三言が精々といったところだったらしいが。


( ><)「僕も会ってみたいのに、僕が行っても全然出てきてくれないんです」

( <●><●>)「警戒心が強いですからね」

ξ゚听)ξ「あなたは、自分が酔ってるから会話してる気分になってるだけだ、とハローに話したそうだけど」

( <●><●>)「さすがに、本気で猫と会話してるんだとは言えないでしょう。
       実際は酔ってない日でも会話したことあります。
       ぽぽちゃんのような存在もありますし、おばけというか、喋る猫が存在してもおかしくはないだろうと考えてました」


 会話の内容は他愛ない。
 名前、美味いもの、不味いもの、撫でられたい場所、撫でられたくない場所。

74 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:38:00 ID:1ORWN4EIO

ξ゚听)ξ「毎回欠かさず会ってた?」

( <●><●>)「2月の──1日、いや、午前1時回ってたから2日か。
       その日はいませんでした。
       しばらく待ってみたけど、全然来なくて」

ξ゚听)ξ「……2日」

 神隠し罪の裁判の直後だ。
 何か思うところがあるらしく、ツンが唸った。

( ^ω^)「その後は、また来るようになりましたかお?」

( <●><●>)「ええ、特に変わった様子もなく。
       『何で来なかったんですか』と問えば、『貴様に関係ない』と一刀両断」

ξ゚ -゚)ξ「……そう」

75 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:39:52 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「それでまた餌をあげてちょっと話して、って日々で、
       13日にハローさんが来て彼女にロマネスクのことを話して──」

( <●><●>)「それから2日連続で、彼に会ってません」

 ──どこに行ったんです、と。
 ツンを真っ直ぐ見つめ、彼は問うた。

ξ゚听)ξ「……彼は逮捕されたわ」

( <●><●>)「……裁判にかけられるんですね」

ξ゚听)ξ「ご存知?」

( <●><●>)「おばけにも裁判があるのだとロマネスクから聞きました。詳しくは教えてもらえませんでしたが」

( <●><●>)「──幽霊の見えるあなたが、幽霊の見える少年を連れて、
       『弁護士』としてロマネスクの話を聞きに来たということは──そういうことでしょう」

 本当に、ツンに似ている。
 理解が早い。今まさに交わしている会話より、既に数歩先まで思考は及んでいるのだろう。

76 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:41:48 ID:1ORWN4EIO

( <●><●>)「僕は証人として呼ばれるんでしょうか?
       それとも知らず知らずの内に犯罪に加担していたとか」

(;><)「え!? 兄さんは悪いことしないんです!」

"(;‘ω‘ *)" ポッ…

ξ゚听)ξ「大丈夫、話を聞きたかっただけだから。法廷に呼ばなきゃいけないものでもなさそうだし。
      ──ありがとう、お邪魔しました。何か気付いたことあったら、ここに連絡して。
      もし裁判の傍聴を希望するなら、訊いてくれれば日時と場所を教えるわ」

 名刺を手渡し、ツンは立ち上がった。ポケットにチョコレートを目一杯詰め込んで。

( <●><●>)「そうやって僕の電話番号をゲットしようって腹積もりですね」

ξ゚听)ξ「私とお話ししたいからって用もないのに5分おきに電話かけちゃ駄目よ」

( ^ω^)「生き別れた姉弟か何かですか」


.

77 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:42:55 ID:1ORWN4EIO



ξ゚听)ξ「──それじゃ、何かあれば、また」

( <●><●>)「はい。お仕事頑張ってください」

 玄関先。

 ツンはほくほく顔で、見送りに出たワカッテマスに手を振った。
 有名ブランドのチョコレートを2箱もらえたのがよほど嬉しいらしい。

( ^ω^)「おっ?」

 通路に立っていた内藤は、アパート前の道を子連れの三毛猫が通っていくのを見付けた。
 にゃあ、という声に顔を上げれば、ハチワレが向かいの家の塀で寛いでいるのが目に入る。

78 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:44:16 ID:1ORWN4EIO

ξ゚听)ξ「ここら辺、ほんとに猫多いのね」

( <●><●>)「ええ」

ξ*゚听)ξ「あら綺麗な白猫」

 ツンの示す先を見ると、白い毛並みの猫が丸まって眠っていた。朱色の首輪。飼い猫か。
 その猫へ、塀から下りたハチワレが近付いていく。

 にゃあにゃあ鳴くハチワレの声に、白猫はうるさそうに起き上がると、
 すたすたとその場を去っていった。
 ──ハチワレの体を、すうっと摺り抜けて。

 さらに、民家の屋根から黒猫が飛び降りる。こちらは青い首輪。
 黒猫は内藤達を見ると、にやりと「笑って」、毛繕いを始めた。

ξ;゚听)ξ「……おばけの猫もいっぱいいるみたいね」

( <●><●>)「え、マジすか」

( ^ω^)「ロマネスクさんもここに来てたし、そういうのが集まりやすい地域なんでしょうかお」

 悪さしなけりゃ可愛いんだけどね、とツン。
 ロマネスクは──「悪さ」をしたんだろうか。
 ワカッテマスには何の危害も加えていないようだったが。

.

79 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:44:53 ID:1ORWN4EIO


 アパートを後にし、内藤はツンに問う。

( ^ω^)「何か良さげな手掛かり見付かりました?」

ξ゚听)ξ「いまいち!」

( ^ω^)「ですおね」

 次だ次──ツンが拳を振り上げる。
 まだ行くところがあるらしい。

 猫の鳴き声を背にして、2人はまだ溶ける気配のない雪を踏み越えていった。



*****

81 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:46:34 ID:1ORWN4EIO


o川*゚ー゚)o「へー、おばけに裁判とかあるんだ」

( ><)「そうらしいんです」

(*‘ω‘ *)"

 ツンと内藤が帰り、兄が奥の部屋で二度寝を始めてから少し経った頃。

 いつものように遊びに来た少女の霊にツン達のことを話してみると、
 少女は興味いっぱいといった顔で聞き入ってくれた。

 ──ビロードは、この部屋に越してくるまで幽霊というものを見たことがなかった。
 それまで霊の存在すら信じていなかったワカッテマスとは違い、存在そのものは信じていた。
 無論、「怖いもの」として、だ。

 しかし、いざ会ってみると──ぽぽちゃんにしろ、この少女にしろ、
 存外に普通で親しみやすい。

 たまに部屋に迷い込んでくる浮遊霊達も、話が通じないようなのは滅多にいない。
 危なげな輩はぽぽちゃんが追い払ってくれるし。

82 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:47:21 ID:1ORWN4EIO

o川*゚ー゚)o「すごいねえ。見てみたいな、裁判」

( ><)「もしかしたら兄さんが見に行くかもしれないから、頼めば連れていってくれるかもです」

(*‘ω‘ *)" ポッ

 ──数年前に両親を亡くしてからというもの、ワカッテマスと関わる時間が減った。
 彼は毎日バイトや学業に追われている。家にいても課題をやるか眠るかの二択といった様子。

 自分ももう高校生だし、寂しいだなんて甘ったれたことを簡単に言えやしないが、
 中学生の頃は毎日寂しくて堪らなかった。

 ワカッテマスは高校生の時分からバイトに勉強に忙しかったので、
 唯一の肉親である彼と満足に交流できなかったのだ。

 だが、この部屋にいると、ぽぽちゃんや他の霊が相手をしてくれる。

 1人になることはない。

 ぽぽちゃんと目が合う。
 ビロードがへらりと笑うと、彼女も微笑を返してきた。



*****

83 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:49:18 ID:1ORWN4EIO


( ・∀・)「──でさあ、ブーンの奴、10個以上もチョコもらってんの!
      まあ全部義理らしいんだけどー」

 駅前、ぞろぞろとゲームセンターへ向かう男女の集団。
 プギャーへの「町案内」という名目だが、結局は大勢で遊びたいだけの集まりだ。

 その中央で、モララーはプギャーへ内藤との様々なエピソードを語って聞かせていた。
 特に深い意味はない。手っ取り早い共通の話題が内藤だっただけで。
 プギャーも興味深そうに聞いているので、まあ間違った選択ではないだろう。

 友達自慢──もあったかもしれない。
 モララーも友達は多い方だが、特に内藤と弟者、ヒッキーの3人とつるんでいるときが一番楽しい。

84 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:50:56 ID:1ORWN4EIO

( ・∀・)「ブーンって小学生のときから人気あったの?」

( ^Д^)「んー? いや……」

 初めてプギャーが歯切れ悪く答えた。
 違うのか、と別のクラスメートが意外そうに問う。

( ^Д^)「あー、そうだなあ」

 にやついている。
 何となくだけれど、嫌な笑顔だなとモララーは思った。

 しばらく勿体ぶってみせたプギャーだったが、ゲームセンターに到着したところで
 ようやく、ちゃんとした返答を発した。

( ^Д^)「人気があったかはしらねえけどさ」

 そうして、笑みを深める。

85 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/19(火) 22:51:35 ID:1ORWN4EIO



( ^Д^)「あいつ、幽霊が見えるってよく言ってたなあ」



Last case:続く

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