ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

case8:神隠し罪/後編

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671 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:01:27 ID:MrK7fFB.O


 雨は止んでいた。

 傍聴人が消え、証人も、検察官も、刑事も裁判官も被告人もいなくなり、
 いやに広く感じる体育館の中。
 内藤とツンだけが、弁護人席に残っていた。

ξ゚З゚)ξ「早く帰りたいわ」

( ^ω^)「帰ったらいいじゃないですかお。
       僕は姉者さん達の服が乾くまで待ってるだけですし」

 姉者やジョルジュ、戻ってきたギコとデレは、しぃのように別室で暖まり服を乾かしている。
 どうやらフォックスのためにタオルを用意していた職員が何人かいたらしいので
 それを使わせてもらっているとか。

 裁判官達とオサム、くるうも同様の部屋で後処理中。
 ニュッは分からない。ふらふらと法廷を出ていったけれど。

673 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:03:46 ID:MrK7fFB.O

( ^ω^)「……姉者さんに、またんき君を連れてくるように言ったんですかお?」

ξ゚听)ξ「ん? ……うん。だって何かしたいって言うから」

( ^ω^)「またんき君があそこにいるって分かってたんですかお」

ξ゚听)ξ「確信してたわけじゃないけど。いるとしたら、あそこが一番隠しやすいだろうなって」

 ブームと話しながら「追体験」で情報を探っていたとき。
 こわいやつ、の話題で、ブームが奴らに喰われたときの記憶が見えたのだという。

ξ゚听)ξ「あいつらは、いっぺんに全部喰うわけじゃない。
      まずは肉体を少しずつ時間をかけて食べていって、
      それから更にゆっくり、魂も堪能する……」

ξ゚听)ξ「ブーム君は魂を食べきる前に逃げ出せたみたいだけどね」

( ^ω^)「そりゃあ運が……良かった、わけでもないか」

ξ゚听)ξ「そうね。……あの子、何十年も町をうろうろしてる間、服も何度か変えてたみたい。
      あいつらに見付かりにくくするために……。
      ……やっぱり、どちらかと言えば頭の回る子なんだわ」

 今後、奴らの裁判をするときに、また証人としてブームが呼ばれるだろうか。
 あんなに怯えていたのだ。きっと思い出すのも辛いだろうに。

 それが全て終わったときこそ、彼が安寧に身を委ねられるように祈るばかりだ。

674 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:05:30 ID:MrK7fFB.O

ξ゚听)ξ「で、ほら、内藤君が襲われたときって、あいつら以外のおばけもいたんでしょう?」

( ^ω^)「ああ、そういやそうでしたお」

ξ゚听)ξ「もしかしたらそのとき限りだったのかもしれないけど、まあ、
      今でも共犯者がいる可能性はあるわけでしょ」

( ^ω^)「ですね」

ξ゚听)ξ「だから──ギコが主犯の方を逮捕したとして、
      すぐにこっちが手を打たないと……」

( ^ω^)「共犯者がいた場合、ギコさん達が主犯に気をとられている隙に
       共犯者がまたんき君を完全に消してしまう恐れがあったと」

ξ゚ -゚)ξ「そう。だから、姉者には
      ギコ達の帰りが遅かったり、ゴミ山を離れる状況になったりしたら
      すぐにゴミ山に行ってまたんき君を探してちょうだいって頼んだの」

 なるほど。
 納得しかけ、あれ、と首を捻る。

676 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:07:11 ID:MrK7fFB.O

( ^ω^)「もし現場に共犯者がいたら、姉者さん危なかったのでは」

ξ゚听)ξ「私がそこまで考え回らないとでも? ──もちろん保険もかけたわ」

( ^ω^)「どんな?」

ξ゚听)ξ「姉者に、こうも言っておいたの。
      校舎を出たら、大きめの声でこう言いなさい、って」


 ──「アサピーさん、あなたにツンちゃんから依頼があります。
 今から私がまたんき君を探しに行くので、それを手伝うように」。

.

677 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:08:32 ID:MrK7fFB.O

ξ゚听)ξ「あいつが付いてりゃ、まあ最悪な事態にゃならないでしょ」

( ^ω^)「……アサピーさんが校舎の外にいる確証は」

ξ゚听)ξ「いないわけないわ。あいつのことだから、私が裁判に勝ったか負けたか
      すぐに確認したがる筈だもの」

( ^ω^)「じゃあ、アサピーさんが素直に言うこと聞く確証は」

ξ゚ー゚)ξ「私の依頼なら聞くわ」

 まあ聞くだろう。
 彼はツンのことを大層お気に召しているので。

678 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:11:04 ID:MrK7fFB.O

ξ゚∀゚)ξ「しかも結果的に善行をしたわけだからねえ。
      これからしばらくは、あいつ恥ずかしくて私の前に現れないわ。
      はあ快適快適!」

( ^ω^)「そうなんですかお?」

ξ゚∀゚)ξ「去年の呪詛罪裁判後の数日間は、私を見る度に顔真っ赤にして逃げてたもの。
      N県裁判後もね」

( ^ω^)「か、顔を真っ赤に」

 まったく想像がつかない。
 とにかく「いい人」であるのを嫌う彼にとって、
 「いいこと」はプライドを傷付けられる行いらしい。

 いかにも可笑しそうに笑って、それから欠伸をすると、ツンは机に伏せた。

 ──きい、と軋む音が耳に入った。
 内藤とツンが顔を上げる。

∬´_ゝ`)「ごめんねブーン君、待たせちゃって。帰りましょうか」

( ^ω^)「姉者さん」

680 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:12:25 ID:MrK7fFB.O
  _
( ゚∀゚)「家の前まで送りますよ姉者先生」

∬´_ゝ`)「ジョルジュ先生、遠回りになっちゃうでしょう」
  _
( ゚∀゚)「いいんですいいんです、女性と子供を2人で歩かせるわけにもいきません」

 すっかり頭も服も乾いた様子の姉者とジョルジュが入ってくる。姉者の手には包帯。
 内藤が腰を上げ、それに合わせて立ち上がったツンは──

 続けて入ってきた女性を見て、固まった。

从;'ー'从「……ツンちゃん」

 おずおずと、渡辺が歩み寄ってくる。
 ツンは黙っている。

 距離をあけた位置に立ち止まった渡辺は、気まずそうにツンを見、目を逸らし、それから。

 真っ直ぐ視線を合わせたかと思うと、頭を下げた。

681 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:13:33 ID:MrK7fFB.O

从;'ー'从「ごめんなさい!」

ξ゚ -゚)ξ

从;'ー'从「私──ここであなたを見て、ずっと謝りたくて……
      でも、今さら謝ったって許してもらえないだろうって恐くて、
      どうしていいか分からなかったの」

从;'ー'从「ただ、別室で待ってる間、この裁判が終わったら二度と会うこともないかと思うと
      絶対、謝らなきゃいけないって気持ちに……」

 ごめんなさい──再度、渡辺は言う。

 当時のツンがどんなに辛かっただろうかと。
 自分はとても酷いことを言ってしまったのだと。
 そう考えると苦しくて堪らない、と。

 姉者とジョルジュは困惑している。
 内藤は口を挟まず見守っている。
 ツンは。

ξ゚ー゚)ξ

 一瞬、ほんの一瞬だけ、晴れやかに笑った。

 昨日の昼、公園のベンチで見た顔に似ていた。
 すぐに真剣な──とはいっても瞳は優しい──表情を浮かべたが。

682 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:15:36 ID:MrK7fFB.O

ξ゚听)ξ「……たしかにあのときはすごく辛くて、
      正直、今でも完全に許せるかと訊かれたら自信はないです。
      だから──許すとも許せないとも言えないけど」

ξ゚听)ξ「昨日、内藤君に言われて、私どうして弁護士になったんだっけって考えて……。
      思い出したから、いいんです」

从;'ー'从「え……」

ξ゚听)ξ「本当のことを言ってるのに信じてもらえない人の味方になりたかったんです、私。
      だから……今こうしてるのは、渡辺先生のおかげだとも思うんです」

 渡辺は反応に悩んでいる。
 はっとして、ツンが、「遠回しに責めてるわけじゃないんですよ」と弁解した。

ξ;゚听)ξ「私、今の自分が一番いいんです。これで良かったって本当に思うんです!
      だから──えっと──結果的に言えば──渡辺先生がああいう風に──」

 ふ、と渡辺が吹き出す。
 彼女の瞳にはまだ罪悪感が色濃く残っているけれど、蟠りは薄れたようだった。

683 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:17:16 ID:MrK7fFB.O

从'ー'从「……ツンちゃんが、今、充実してるなら良かった。
     ずっと気になってたの。真っ黒な格好して町中うろうろしてるって噂聞いてたから。
     ……色んな人を助けてるのね。本当に良かった」

ξ;゚听)ξ「ふぐうっ……!」

 軽快な音楽が鳴り響いた。
 渡辺が携帯電話を開く。
 メールだろうか、画面をしばらく眺め、そのまま閉じた。

从'ー'从「夫が迎えに来たから……私、帰るわね。
     ツンちゃん、これからも頑張って」

ξ゚听)ξ「──はい。渡辺先生も」

 互いに深く礼をし、渡辺は体育館を後にした。
 姉者が状況を探りながらツンに声をかける。

∬;´_ゝ`)「えっと……よく分からないけど、良かったわね」
  _
( ゚∀゚)「仲直りはいいことだ。──仲直りってのとも違うだろうけど」

ξ゚听)ξ「まあ、もやもやは解消されたかな」

 内藤の方は少々照れ臭い。
 公判中の「内藤君のおかげ」の意味が分かったため。

 自分が何気なく発した一言が、相手には大きく影響していたなんて。
 どうも恥ずかしい。そんなつもりで言ったのではないのに。

684 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:18:37 ID:MrK7fFB.O

ξ゚听)ξ「……ていうか、疑問が一個あるんだけど。姉者に」

∬´_ゝ`)「? なあに?」

ξ゚听)ξ「結局あんた、どうして裁判に来たの?」

∬´_ゝ`)「どうしてって……」

 既にツンに慣れてきたのだろうか。
 先程までのおどおどする感じは薄れている。

 姉者は小首を傾げ、当然のように答えた。

∬´_ゝ`)「言ったじゃない。
      ツンちゃん、困った顔してたでしょう」

ξ゚听)ξ

∬´_ゝ`)「一昨日も困った顔してたから……ずっと気になってたの。
      だから私、ここに来たのよ。
      何か出来ないかと思って……」

ξ゚听)ξ

 そういえば流石家にて、ツンにタックルしていた。
 あれも──彼女を気にかけて呼び止めたものだったのだろう。

 姉者の答えに、ツンは固まっている。

685 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:20:04 ID:MrK7fFB.O

( ^ω^)「ツンさん、割といつも通りだったと思いますけど」

∬´_ゝ`)「そうかしら……」

( ^ω^)「そうですお」

∬´_ゝ`)「私の考えすぎだったのかな」
 _
(;゚∀゚)「うおっ!? 何だその顔!?」

 ジョルジュがびくりと肩を跳ねさせ、叫んだ。
 内藤と姉者が彼を見れば、彼の視線はツンへ向いていたので、それを辿ってツンを見る。

::ξ;*゚H゚)ξ::

 本当に何だろうこの顔。

 照れているんだか怒っているんだか。
 とにかく真っ赤な顔で姉者を睨んでいる。

 姉者が声をかけようとした瞬間、ツンの口が大きく開かれた。

686 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:22:55 ID:MrK7fFB.O

ξ;*゚听)ξ「……あんたの! そういうところが昔から嫌いだったわ!!」

∬;´_ゝ`)「えっ」

ξ;*゚д゚)ξ「そうよ、いっつも、いっつもあんたなのよ!!
       あんたが一番初めに気付くのよ!!」

ξ;*゚д゚)ξ「保育園のときも! 小学校も! 中学校も高校も!!
       あんたが最初に私の異変に気付くんだわ!!」

ξ;*゚д゚)ξ「気付いたところで、あんたから声かけてくりゃ話にならないどころか騒ぎ大きくするし
       ギコを呼んでくるくらいしか出来ないくせに!!
       いっつもいっつもいっつも!!」

∬;´_ゝ`)「だ──だから、今回こそは……私ももう大人だし、
      ギコ君に頼らずに何とかしようって思ったんだけど」

∬;´_ゝ`)「だって初対面のジョルジュ先生にだって頼ってたでしょ、調べてほしいことあるとか言って……
      それが何だか悔しかったから、ますます、こう……なんていうか……」

 ツンは唸りながらしゃがみ込んだ。
 両腕で自分の顔を隠している。

 姉者もしゃがみ、びくびくしながら問うた。

687 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:24:10 ID:MrK7fFB.O

∬;´_ゝ`)「迷惑だった……?」

ξ;* )ξ「……」

ξ;* )ξ「……ありがとうってずっと言いたかった……」

 ──多分。
 姉者は怯えながらも、ずっとツンを気にかけていたのだろう。
 もしかしたら誰よりも。

 姉者がふにゃふにゃ笑う。
 ツンはその頬を思いきり引っ張った。



*****

688 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:26:10 ID:MrK7fFB.O


【+  】ゞ゚)「──ありがとう、助かった」

川*゚ 々゚)「ありがとうツン! ありがとう!」

ξ;゚听)ξ「わ」

 体育館を出ると、ちょうど別室から出てきたオサムとくるうがツンに礼を言った。

 特にくるうの喜びようは激しく、ツンに抱き着いて何度も何度もありがとうと繰り返している。

【+  】ゞ゚)

( ^ω^)(くるうさんが早く離れないとツンさんが嫉妬で殺される)

 そろそろ限界かというところで、くるうが離れた。
 早速オサムがくるうを背後から抱き締める。
 この神様は本当に、こういうところだけでも何とかなればいいのだが。まあ何ともならないだろう。

689 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:27:02 ID:MrK7fFB.O

川*゚ 々゚)「ありがとう……うれしい、本当にうれしい」

ξ゚ー゚)ξ「……こっちこそ。くるうさんがいて助かったわ」

∬;´_ゝ`)「?」
 _
(;゚∀゚)「?」

( ^ω^)「あ、ここにオサム様とくるうさんがいるんです」

 法廷の結界から外れてしまったので、姉者とジョルジュには見えないようだ。

 そういえば姉者は何故、外にいたのにまたんきの姿が見えたのだろう。
 考えかけて、疑問に感じる必要すらなかったなと思い直す。
 アサピーが見付けやすいようにしてくれたのだろう。根性悪く振る舞うくせに、よく気の回る。

690 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:28:36 ID:MrK7fFB.O

ξ゚听)ξ「……またんき君やブーム君たちはどうなります?」

【+  】ゞ゚)「斉藤またんきは、証言を取ったから間もなく『上』に送る。
        ブームの方は、次の裁判で証人として出ることに同意してくれたので
        それが済んでから、斉藤またんきと同じようにするつもりだ」

【+  】ゞ゚)「斉藤シラネーヨは人間の法で処理することになるかな。
        あとは──大前ガナーは、斉藤またんきのおかげでいくらか持ち直している」

 ひとまずは、大体収まったわけだ。
 内藤とツンは安堵し、姉者達にもその旨を伝えた。彼らの反応も同じようなもの。
 全てが丸く、とはいかない。それでも一段落はついた。

 別室の方から、神社の職員であろう声がオサムを呼んだ。帰りますよ、と。
 それに返事をし、オサムは改めてツンに向き直った。

【+  】ゞ゚)「今度、何か礼をする」

ξ゚ー゚)ξ「いいですよ、そんな」

 オサムとくるうがその場を後にする。
 それを見送った内藤達は、昇降口へ向かい、外へ出た。

692 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:29:50 ID:MrK7fFB.O

ζ(゚ー゚*ζ「あ」

( ^ν^)

 ニュッとデレがいた。
 目礼だけして去ろうとしたが、デレがツンを呼び止めた。
 何だろう。気になるので内藤も残る。

 姉者とジョルジュには、門のところで待つように頼んだ。

  |@∀@)

( ^ω^)「お」

  |≡ サッ

 物陰から眼鏡をかけた白衣の男が覗いていて、内藤と目が合うなり逃げてしまった気がするが、
 錯覚ということにしてやろう。

694 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:34:27 ID:MrK7fFB.O

ξ゚听)ξ「鵜束検事は今後どうなっちゃうかしら」

( ^ν^)「……またしばらくは、ちまちま小せえ事件の処理ばっか押しつけられるな」

ξ゚听)ξ「あーら可哀想。私に負けたばかりに。私に、また、負けたばかりに。
      んで、何で引き留めたの?」

ζ(゚ー゚*ζ「ニュッさんが、出連先生にご用事」

ξ゚听)ξ「ふうん? どんなご用?
      負け惜しみでも言いに来た? それとも私に土下座でも?」

ζ(゚、゚*ζ「あんまり、そう言ってあげないでください。
      ニュッさんさっきまでちょっと泣いちゃってたんですから」

ξ゚听)ξ「ワンモア」

ζ(゚、゚*ζ「あんまり、そう言ってあげないでください。
      ニュッさんさっきまでちょっと泣いちゃってたんですから」

ξ゚听)ξ「後半ワンモア」

ζ(゚、゚*ζ「ニュッさんさっきまでちょっと泣いちゃってたんですから」

701 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:36:36 ID:MrK7fFB.O

 ツンはニュッに顔を近付けた。
 ニュッは顔を逸らす。ツンの顔もそれを追う。ニュッが上を向く。デレの手がむりやり下へ向けさせた。
 泣いたの、とツンが問う。泣きました、とデレの答え。

 ツンの肩が震え──かと思えば急に背を反らせた。


ξ^竸)ξ「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
      wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
      wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
      wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
      wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


( ∩ν∩)

 ニュッは両手で顔を覆ってしゃがんだ。
 先のツンに似ていたが、状況が全く違った。

705 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:37:41 ID:MrK7fFB.O

ξ^竸)ξ「ぶほっほwwwwwwwwwwおまwwwww
      泣いwwwwwたwwwwwwwwww
      マwwwwジwwwでwwwwwwww
      待てやwwwwwwwwwwお前wwwww
      昨日わたしに何つったwwwwwwwwww」

( ∩ν∩)

709 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:39:11 ID:MrK7fFB.O

ξ^ν^)ξ「『そりゃ、お前の泣き顔が見たくて来たとこもあるからな』」

ξ゚∀゚)ξ「おwまwえwがw泣いてんじゃねーーーかwwwwwwwwwwwwwww
      気のwwwwwwwwww毒wwwwwwwwwwwww
      プライドが無駄に高い三十路一歩手前の涙wwwwwwwww
      ふひひwwwwwうひいwwwwwwwwww
      悔しいのうww悔しいのうwwwww私に負けて悔しいのうwwwwwwwwwwww」

( ∩ν∩)

ζ(゚ー゚*ζ(なに今の物真似すごく似てた)

( ^ω^)(顔めっちゃ似てた今)

710 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:39:58 ID:MrK7fFB.O

ξ;∀;)ξ「あwww駄目wwwwwwww腹痛いwwwwwwwwwwwwwww
      らめえwwwwひぎいいwwwww腹筋16分割しちゃうwwwwwwwwww
      ねえwwww今どんな気持ちひひひひぃひぃひひひぃいいひひいひwwwww
      やだwwwww私いま泣いてるwwwwほらほらwwwww泣いたよwww
      やったねニュッちゃん!」

( ∩ν∩)

711 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:40:48 ID:MrK7fFB.O

ξ;∀;)ξ「あっふwwwwwwwあっふwwwwwwwwwwwwwww
      壮大な前ふりwwwwwwwwとんだドMじゃねえかwwwww
      しぃ検事すら私に負けたくらいで泣いたことないわwwwwwwwww
      あかんwwwwあかんわwwwwwwww
      照屋刑事に慰めてもらったんかwwwwwwwwwwおう?wwwwwwww」

( ^ν^)「しつけえんだよいい加減にしろ」

ξ;∀;)ξ「あひんっ」

 早々に立ち直ったニュッが、ツンの横っ面を引っ叩いた。
 衝撃で右側へ向けられた顔を、すかさず左手で掴んで正面へ戻す。
 強引な動きに、ツンの首がごきりと鳴った。

714 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:42:47 ID:MrK7fFB.O

( ^ν^)「そもそも泣いたっつったって悔しくて泣いたんじゃねえよ己の不甲斐なさにだよ
       てめえが関わる余地なんざ1ミリたりともねえよ愉快な頭で不愉快な勘違いすんな糞が
       金糸玉子が調子乗んなよ乗っていいのは冷やし中華の上だけだボケカス死ね」

::ξ;∀;)ξ::

(#^ν^)「声殺して笑うな!!」

( ^ω^)「ていうかどれくらい泣いたんですかお?」

ζ(゚、゚*ζ「ほんと、ちょっとですよ。
      まあ『ちょっと』の定義はお任せしますが」

 そんなことはどうでもいいんだよ! と怒鳴るニュッの顔は怒りと羞恥が混ざっていて
 それはもう大変愉快だった。

 こうして彼がツンに翻弄される様は、見ていてなかなか気分がいいので嫌いではない。

715 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:44:42 ID:MrK7fFB.O

ξ゚听)ξ「ああ……私に用があったんですっけ。何?」

( ^ν^)「……今回もお前に負けたら、景品でもやろうと思ってたんだよ」

ξ゚听)ξ「景品?
      ところで今更あなたが真面目なツラで話しても私の笑いのツボをがんがん突いてくるだけよ。
      ふざけてくれた方がまだマシだわ」

( ^ν^)「はいはい分かりましたふざけながら話しますようんこうんこ」

ζ(゚、゚;ζ「ニュッさん自棄っぱちにも程が」

( ^ω^)(ツンさん……さっきまでの『いい話』風な雰囲気を保てばいいものを……)

718 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:48:03 ID:MrK7fFB.O

 ニュッはツンのコートの胸ぐらを掴んだ。
 ぐいと引き寄せ、彼女の耳元で何かを告げる。
 ツンは目を丸くさせ、離れたニュッをまじまじ見つめた。

ξ゚听)ξ「何でそんなもの」

( ^ν^)「面白そうなもんがあったからだ。
       ──後でお前の事務所に送っておく」

ξ゚听)ξ「住所知ってる?」

( ^ν^)「調べりゃ分かんだろ。
       照屋、来い」

ζ(゚ー゚*ζ「はあい。──皆さんお疲れ様でした。それでは失礼します」

 ニュッとデレは、諸々の事後処理のためか、旧校舎へ戻った。
 それを見つめ続けていたツンが、ついと背を向ける

ξ゚听)ξ「……帰りましょうか」

( ^ω^)「そうしましょう」

 ニュッの「景品」とやらが気になったが、訊いていいものか悩んで、
 結局そのまま帰途へついた。



*****

719 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:48:49 ID:MrK7fFB.O



( 、 ;トソン ハァッ、ハァッ

 手を伸ばす。何の感触も得られない。

( 、 ;トソン「ツン……さ……」

 ツン。ツンのところに行かないと。

( 、 ;トソン「ツ……」

 舌が縺れる。

 自分の体勢が分からない。
 うつ伏せになっている筈だ。
 けれど、腹にも背中にも何も感じないので、どちらが下で上か判断がつかなかった。

720 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:50:33 ID:MrK7fFB.O

( 、 ;トソン「……」

 霞む視界。自分の右手。欠けっぱなしの小指。

 小指どころか。

 今となっては、体のどの部分が残っていて、どの部分が無くなっているのかすら。

( 、 ;トソン「……ぁ……」


 懐かしい感覚だった。
 身体中の力が抜けて、徐々に頭も働かなくなっていく。

 命が消え行く感覚。

723 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:51:16 ID:MrK7fFB.O

 トソンは何とか右手を動かした。
 この手はもう、前へ向けても意味がない。
 なら、せめて。せめて。

 くしゃり。ポケットの中のそれを握り締める。
 ほんの僅か安堵し、それ故に、脱力感が加速した。

( 、 トソン



 一度目の死の間際、頭にあったのは想い人だった。

 けれど、もう既に彼への気持ちは整理をつけている。

724 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:52:39 ID:MrK7fFB.O

( 、 トソン「……ミセリ、の……」

 目尻から熱いものが流れた。
 もう指先の感触すら朧気なのに、それだけは、いやに鮮明だった。



(;、;トソン「ミセリの目覚めるところ……見たかったなあ……」


.

725 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:53:13 ID:MrK7fFB.O





 そうして。

 二度目の死は、大事な友達の記憶と共に訪れた。




.

730 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:56:19 ID:MrK7fFB.O



 その場所に、一枚の紙が残された。
 メモ用紙には丸い文字が並んでいる。


《本日午前11時50分から午後12時10分まで都村トソンに体を貸します。 H17/08/20 三森ミセリ》


ミセ*- -)リ


 その字の主は、すぐ傍のベッドで眠り続けている。
 呼吸はひどく弱々しい。

.

731 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 23:57:13 ID:MrK7fFB.O





 「猫」が逮捕されたのは、それから2週間ほど後のことだ。





case8:終わり

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