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402 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:12:46 ID:UlhPGaG2O
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『またんき。この人が、新しいお父さんになるからね』
( ´ー`)『よろしく、またんき君。……息子になるんだし、またんき、でいいかな』
(・∀ ・)『うん。よろしく……』
握手をする。
物分かりは悪い方ではない、と自負している。
母を困らせたくはない。新しい「お父さん」を拒絶するつもりもない。
勿論すぐに受け入れられるかといえば、そうではないけれど。
──「お父さん」は親切にしてくれた。
初めから家族だったかのように、父としてまたんきを可愛がってくれた。
『またんき、あんたに弟か妹ができるよ』
食卓を囲みながら嬉しそうに母が報告をした日、「お父さん」は勿論、またんきも喜んだ。
その新しい命が、家族としての繋がりを強くさせてくれる気がしたから。
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403 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:13:41 ID:UlhPGaG2O
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case8:神隠し罪/後編
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404 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:14:46 ID:UlhPGaG2O
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ξ--)ξ「──というわけで、幽霊裁判ってものが誕生したわけよ。
で、何やかんやあって内藤君は私の手伝いをしてくれてる、と」
黒ずくめの女──ツンは、そんな風に話を締めた。
マグカップを持ち上げ、ホットミルクティー(インスタント)を口に含む。
ξ゚听)ξ「内藤君、ミルクティー薄いわ。お湯多くない?」
( ^ω^)「僕はこれで丁度いいですお。お好きに粉足して調節してください」
ξ゚З゚)ξ「へーい」サッサッ
(,,゚Д゚)「あんたそれは足しすぎじゃないの」
ξ*゚听)ξ ウマー
( ^ω^)「ツンさん濃いめ好きですおね」
(´<_` )「遠慮しろよ」
_
(;゚∀゚)(何でこいつら和やかなんだ……)
かれこれ20分近く正座しっぱなしのジョルジュは、足の痺れも気にならないほど困惑しきっている。
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405 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:17:10 ID:UlhPGaG2O
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──時は深夜。
場所は流石家の居間。
ジョルジュと姉者が並んで座り、
卓袱台を挟んだ向こうにツンとギコ、内藤──流石家の居候の存在は知っている──がいた。
さらに彼らを監視するかのように、少し離れた位置に姉者の弟が。
_
(;゚∀゚)(ああ、落ち着け俺、ともかく状況を整理しろ)
まず、ギコを追って旧校舎に辿り着き、姉者と共に体育館を覗いた。
体育館の中では裁判が行われていた。神隠しとか何とか。
おばけがどうのこうのという話が頻出した。角度のせいで全体は見えなかったが、
傍聴席──らしき空間──には、明らかに人間ではないものがたくさんいた。
何が何だか分からない内に裁判が終わったらしく、ツン達が体育館の扉を開けた。
そしてジョルジュ達と対面して。
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406 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:18:35 ID:UlhPGaG2O
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裁判を覗き見している間、通算21回ほど気絶と覚醒を繰り返していた姉者が
とうとう22回目の失神を果たし、ツンが傍聴席にいたギコを呼んで姉者を抱えさせ──
一旦どこかで話しましょう、ということで姉者の家へ連れてこられたのだ。
姉者が目覚めるのを待ち、騒ぎを聞きつけた弟者も2階から下りてきて、
そうしてようやく、ツンとギコから「おばけ法」「幽霊裁判」についての説明を受けた。
以上。整理終わり。
ξ゚听)ξ「信じてくれます?」
_
(;゚∀゚)「あれで信じないほど往生際悪くねえよ……」
話だけ聞かされたのなら、そりゃあ信じなかっただろう。
しかしジョルジュ達は見てしまった。
裁判や神様、おばけを目の当たりにしてしまったのだ。
それは結構です、とツンが微笑む。
美人だ。胸元が寂しいのでジョルジュの好みではないが。
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408 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:20:38 ID:UlhPGaG2O
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(´<_`#)「……まったく、姉者にだけは知られちゃいけないことだったのに」
( ^ω^)「ごめんお、僕とツンさんが尾行に気付かなかったばっかりに」
弟者は先程から苛々しっぱなしである。
彼が姉者に甘いというのは、妹者から度々聞いていた。
ゆえに姉者を脅かすものを嫌うのだろう。
自己紹介してからというもの、こちらに向ける目が非常に冷たいのが気になるけども。
_
( ゚∀゚)「弟者君も、幽霊裁判を知ってるんだね」
(´<_`#)「あんたに弟者君と呼ばれる筋合いはない!!」
_
(;゚∀゚)「ええ〜じゃあ何て呼べと」
( ^ω^)「義弟者?」
(´<_` )「やめろ」
( ^ω^)「はい」
ξ゚听)ξ「そういやギコ、しぃ検事放っといて良かったの?」
(,,゚Д゚)「先に帰るよう言っといたから大丈夫」
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409 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:22:41 ID:UlhPGaG2O
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∬;´_ゝ`)「つ、つまり……ギコ君も、おばけ見えるのよね? ブーン君も……」
じっと黙っていた姉者がやっと発した言葉は、そんなものだった。
内藤とギコが顔を見合わせ、姉者に向き直る。
(,,゚Д゚)「ええ」
( ^ω^)「黙っててすみませんお」
∬;´_ゝ`)「いえ、いいの、そりゃ言えないわよね。それはいいんだけど。
──うちの中で、ゆ、幽霊とか見たことあるの?」
( ^ω^)「聞きたいですかお?」
∬;´_ゝ`)「……ううん」
ξ゚听)ξ「姉者」
∬;´_ゝ`)「わひゃああっ!!」
(´<_`#)「おい!」
ξ゚听)ξ「ちょっと何それ名前呼んだだけじゃないどうして私にだけそういう態度なわけ信じらんない」
∬;´_ゝ`)「ご、ごめんなさいいい」
(,,゚Д゚)「幼少期に刷り込まれた恐怖ね」
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410 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:23:31 ID:UlhPGaG2O
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ξ゚听)ξ「チックショウもういいわ。
姉者、長岡さん、このことは他言無用でお願いね」
_
(;゚∀゚)「他言無用って、でも普通に証人とか呼んでたじゃねえか」
ξ゚听)ξ「別に、必要があれば一般人でも法廷に呼びますよ。
何が何でも秘密に内密にってものでもないですもの。
いずれ──何年も経って環境が整えば、公表されることになるでしょうし」
(,,゚Д゚)「でも今はまだそのときじゃないのよー、だから出来れば黙っていてくださいな」
ジョルジュは頷いた。
正直、今すぐ家族友人に触れ回りたいほど衝撃的な事実なのだが
何せ幽霊や神様が関わっている事態なので、下手をすると祟られそうで恐い。
気持ちが落ち着いてくると、今度は純粋な好奇心が湧いてくる。
非現実的な出来事に興味を持つなという方が無理だ。
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411 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:27:12 ID:UlhPGaG2O
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_
( ゚∀゚)「……あれって正月の失踪事件?」
ξ゚听)ξ「そうですけど──」
ジョルジュの顔に、好奇が宿っていたらしい。
ツンが呆れたような表情で口を閉じた。
ξ--)ξ「詳しく知りたかったら、次回の公判の傍聴にでも来てください」
_
(;゚∀゚)「むう」
ξ゚听)ξ「それじゃあ私とギコは帰るわ。ミルクティーごちそうさま。おやすみなさい。
内藤君、明日学校休みなんでしょ? 来れたら、正午に事務所に来て」
( ^ω^)「はい。おやすみなさいお」
(´<_` )「あんまりブーンをこき使うなよ」
カップを空にして、ツンは鞄とコートを抱えて立ち上がった。
ギコがそれに倣い、1人残るわけにもいかないのでジョルジュも続く。
ツンが居間の引き戸を開け──
∬;´_ゝ`)「っあ、あの、ツンちゃん……ツンさんっ!!」
ξ;゚听)ξ「ふぉびあっ!!?」
姉者がツンの足に飛び掛かった。
そんなことをされれば当然、鞄もコートも手放し派手に転倒するというもので。
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412 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:28:51 ID:UlhPGaG2O
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顔面をしたたか打ちつけたツンは、半身を捻り、押し倒すような姿勢で乗っかる姉者へ振り向いた。
ξ;"")ξ「私の美顔があっ! 何すんのよ!!」
∬;´_ゝ`)「あああああごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ! そんなつもりじゃなかったの!」
(;,゚Д゚)「鞄の中身が飛び散ってるわよー、ツン」
(´<_`;)「何してるんだ姉者……」
( ^ω^)「ついに殺意が」
∬;´_ゝ`)「違うの違うの、あの、あのね、ツンさん、あのね……」
ξ;゚听)ξ「何よ」
∬;´_ゝ`)「あの……えっと……えっと……」
ξ;゚听)ξ「……」
∬;´_ゝ`)「……」
ξ;゚听)ξ「だから何よ!」
∬;´_ゝ`)「あううう」
ツンが姉者を押しやる。
姉者は胸の前で両手をつかね、えっと、とか、あのね、とか繰り返すばかりで、
いきなりタックルをかました理由をなかなか喋ろうとしない。
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413 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:31:13 ID:UlhPGaG2O
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可愛いな、などと鼻の下を伸ばしつつ、ジョルジュはギコと共に
ツンの鞄から飛び出し散らばったファイルや書類を拾い集めた。
ふと、その内の一つ──新聞記事のコピーだった──が目に入る。
『女児行方不明 沢近ヘリカルちゃん(6)の行方が──』
_
( ゚∀゚)(裁判で話題に挙がったやつだ)
13年前の記事。
渡辺という保育士が証言していたのと同じ事件が報じられている。
しゃがみ込んだ姿勢のまま、何気なく目を通す。
『5月13日、ヘリカルちゃんはヴィップ自然公園で友達と──』
_
( ゚∀゚)(ん?)
ヴィップ自然公園。
検事や証人は「公園」としか言っていなかったので、
てっきり住宅地などにある小さな公園だと思っていた。
同時に、「なるほど」と1人納得する。
あのカンオケ神社の神様が疑われるのも無理は無いな、と。
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414 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:33:55 ID:UlhPGaG2O
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ξ゚听)ξ「長岡さん、返してもらえます?」
姉者との会話を諦めたのか、ツンが近寄ってきてジョルジュに手を伸ばした。
見れば既に周りは片付いており、ジョルジュの持つ資料のみが鞄に収まり損ねていた。
一言謝罪し、ファイルとコピーを渡す。
_
( ゚∀゚)「13年前のって、『オサム様の森』のところで起きたんだな」
ξ゚听)ξ「……何です、それ」
おや、とジョルジュは意外そうな呟きを胸中で漏らす。
これは知らないらしい。
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( ゚∀゚)「カンオケ神社の裏の森あるだろ? 森っていうか、林っていうか。
あれって反対側に自然公園があって──
まあ神社と公園で森林を挟む形になってるんだな」
ξ゚听)ξ「ええ、それは分かります。──オサム様の森っていうのは?」
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415 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:35:03 ID:UlhPGaG2O
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( ゚∀゚)「俺の実家が……元々は祖父ちゃん祖母ちゃんの家だが、公園の近所にあるんだ。
そんで、『あそこはオサム様の森なんだ』ってよく祖母ちゃんから言われてて……
その森っていうのが、」
(,,゚Д゚)「神社と公園の間の?」
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( ゚∀゚)「そうそう。だから勝手に入っちゃいけないって言われた」
思えば、言い伝えなどを大切にする祖母だった。
「オサム様の森」のこともそうだし、以前姉者を怯えさせてしまった神隠しの話も
祖母からしょっちゅう言い聞かせられていたのだ。
その祖母も数年前に天寿を全うし、間もなく祖父も亡くなったので、
もう聞かされることはないけれど。
(´<_`;)「……去年、花見に行ったときちょっと入っちゃったよな」
( ^ω^)「兄者さんが変なテンションになって樹に登ってたおね」
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416 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:36:09 ID:UlhPGaG2O
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ξ゚听)ξ「……あそこは別にオサム様が管理してるわけじゃない筈よ。
神社の裏にあるから、そう思ってしまう人が多かったんじゃないかしら」
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( ゚∀゚)「あ、そうなの? 何だ」
ツンは新聞のコピーを見下ろし、何か考え込んだ。
何秒そうしていただろう。
思いついたことでもあったようで、ジョルジュへ顔を向けてくる。
ξ゚听)ξ「長岡さん。少し、お手伝いしてほしいことがあるんですけど」
*****
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417 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:40:22 ID:UlhPGaG2O
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ヴィップ自然公園は広大な敷地を誇る公園だ。
運動場や広場、サイクリングコース、ランニングコースなんかを内包しており、子供向けの遊具もある。
春ともなれば広場を中心に桜が咲き乱れ、花見客で溢れ返るような場所。
ξ゚听)ξ「13年前、ヘリカルちゃんが行方不明になったのは
5月13日──桜もとっくに散って利用者が減った頃。
桜が咲いてる時期だったなら、目撃者もいたでしょうに……」
( ^ω^)「去年、ゴールデンウィーク中に弟者達と遊びに来たんですけど
花見客が散らかしてったゴミが多くて嫌でしたお。
夏は夏で花火とか落ちてるし」
ξ゚听)ξ「人が多く来る時期は、どうしてもね。普段は綺麗なもんよ」
ヴィップ町があるA県は寒い地域なので、東京などに比べると桜の開花時期は遅い。
大体4月下旬頃。
ここへ越してくる前に内藤が住んでいたのはどちらかというと暖かい土地だったので、驚いたものだ。
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418 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:42:25 ID:UlhPGaG2O
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ξ゚听)ξ「……この広場の隅で友達とかくれんぼをして、ヘリカルちゃんはいなくなった」
( ^ω^)「神社の近くで事件が起きた上、女の子本人は『オサム様のところに行く』と言ってたわけで」
ξ゚听)ξ「そりゃ怪しまれるわね……」
──さて、今は裁判から夜が明けて1月31日、木曜日。
真っ昼間、内藤はツンと共にヴィップ自然公園へ来ていた。
広場の奥、遊具などが置かれた区画の裏手、林の前に立つ。
( ^ω^)「──ここに子供を捨ててたんですおね……昔は」
ξ゚听)ξ「……そうらしいわね」
この林がカンオケ神社に繋がっているというのなら、そういうことになる。
「口減らし」。
ニュッとデレの話を思い出すと、ぶるり、体が震えた。
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419 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:45:19 ID:UlhPGaG2O
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木々の間に、ひっそりと幽霊や妖怪がいる。
内藤達を──というかツンを物珍しげに見てはいるが、これといって干渉してはこない。
ξ゚听)ξ「自我の薄い、ただそこにいるだけの人ばかりみたいだから、害もなさそうね」
内藤がそれらを気にしているのを察したらしく、彼女が言った。
そのせいで事件に関する聞き込みも出来なさそうだけど、と付け足しつつ。
ξ゚听)ξ「……で」
腰に手を当て、溜め息をつき。
ツンはゆっくり顔を動かした。
一番近いところにあるベンチへ。
ξ゚听)ξ「何で居るのかしら」
( ^ν^)「こっちの台詞だな」
そこに、ニュッが座っていた。
ハンバーガーを食べながら。
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420 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:46:33 ID:UlhPGaG2O
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ζ(゚ー゚*ζ「こんにちはー。
今まさに出連先生が仰ってた『13年前の事件』について確認するために来てたんですよ。
で、お昼時なのでご飯食べてたとこです」
ニュッの隣でデレが答えた。
彼に身を寄せ、首筋から血液──彼女にとっての昼食──を吸っている。
ξ゚听)ξ「端から見ると、時と場所を弁えないバカップルよ……。
せめて物陰でやりなさいよ」
ζ(゚、゚#ζ「物陰でこそこそやったら、それこそ何だか不健全じゃありませんか」プンスカ
ξ゚听)ξ「ええええ何それ基準が分かんない」
ニュッは諸々より自身の食事を優先させたらしく、以降は黙ってハンバーガーに集中していた。
ジャンクフードなんか食べるから血が不味くなるのだというデレの小言にも無視を決め込んでいる。
先に食事を終えたデレが、ニュッから離れた。
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421 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:48:15 ID:UlhPGaG2O
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ζ(゚、゚*ζ「ところで内藤君、学校は?」
( ^ω^)「開校記念日で休みですお」
ξ゚听)ξ「ごめんね、せっかくの休日に付き合わせて」
( ^ω^)「いえ。家にいると、弟者の小言がいつまで経っても終わらないので」
ξ゚听)ξ「ああ……うん」
最後の一口を収め、咀嚼しながらニュッは包み紙を丸めた。
お馴染みの豆乳のパックと一緒に、傍らのゴミ箱に放り込む。
嚥下し、自由になった口で彼は出し抜けに質問を落とした。
( ^ν^)「証人の渡辺アヤカと過去に何があった」
ξ゚ -゚)ξ「……何のことかしら」
( ^ν^)「明らかに証人を避けてただろう。向こうもお前を気にしてた。
お前が証人に訊くべきことはもっと色々あった筈だ。
なのに、不自然に短い尋問で切り上げたな。とんだ肩透かしだったぞ」
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422 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:49:55 ID:UlhPGaG2O
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ξ゚ -゚)ξ「彼女が『他は何も覚えてない』って言うんだから、訊いたって無駄でしょう」
( ^ν^)「だとしても粘るのがお前の仕事じゃねえのか」
2人は黙して睨み合った。
負けたのはツン。先に目を逸らしてしまう。
ξ゚听)ξ「……個人的な話よ、本当に。
自分でも、法廷での振る舞いは馬鹿らしかった……大人げなかったと思ってるわ」
それ以上は続かなかった。
その「個人的な話」こそをニュッは聞きたいのだろうけれど、
審理でのねちっこさはどこへやら、「そうか」とだけ言って追求はしない。
( ^ν^)「何にせよ渡辺が法廷にいりゃ、多少なりとも動揺してくれるわけだな」
かと思えばこれである。
ツンが無言でニュッの左足を何度も踏みつけた。
ニュッも負けじと右足でツンの脛を蹴る。
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423 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:52:00 ID:UlhPGaG2O
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( ^ω^)「小学生みたいな喧嘩やめてくださいお」
ξ#゚д゚)ξ「んあああああムカつくうううう!!
陰湿! 何なの、そんなに私を苛めたいの!?」
( ^ν^)「そりゃ、お前の泣き顔が見たくて来たとこもあるからな。
今この場で泣きながらこれまでの非礼を詫びれば手加減してやらんこともない」
ξ;;)ξ「えーんえーん、ごめんなちゃいごめんなちゃい。
去年の裁判で無駄にプライドだけ高いニュッ様を公衆の面前で正当に打ち負かして
自業自得な大恥かかせてしまって反省してます
私の方が優秀だから仕方ないこととはいえもうちょっと手を抜いてあげるべきでした」
ニュッは雪を掬い上げると、ツンの襟元に突っ込んだ。
ツンが奇声をあげて飛び上がる。
ξ#゚听)ξ「何すんの!! ご所望通り泣いて謝ってやったじゃないのよ!」
(#^ν^)「完全に煽りにかかってたじゃねえか!」
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424 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:55:07 ID:UlhPGaG2O
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ξ#゚听)ξ「ええい、もう怒った!
望むところよ渡辺先生の1人でも2人でも3人でも好きなだけ呼べばいいわ!!」
ζ(゚、゚*ζ「渡辺先生は1人しかいませんよ」
ξ#゚听)ξ「尋問やり直すから証人として呼びなさいよね!!」
(#^ν^)「てめえ明日も自分の都合で適当に流しやがったら次こそ俺が一瞬で勝つからな!!」
ξ#゚听)ξ「こればっかりはあなたが正しいわ分かってるわよ私が勝手だったわよ!!
でも次からはあんな風にならないから覚悟してなさいよ!!」
(#^ν^)「全力で来いよ!! 全力で潰すからな!!」
ξ#゚听)ξ「その台詞そっくりそのまま返すわ!!
法廷のド真ん中で全裸に剥かれてケツ穴広げられた方がマシってくらい恥かかせてやるから!!」
( ^ω^)「ツンさん汚い」
(#^ν^)「俺が勝ったら這いつくばってこの公園内の雪全部食って綺麗にして町民様がたのお役に立てよ金糸玉子!!」
ξ;゚听)ξ「金糸玉子って何もしかして髪のこと!?」
いい大人が2人、雪を投げつけながら言い合う姿は非常に見苦しかった。
おばけ法の弁護士検事というものは、大人げなければいけないのだろうか。
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425 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:56:37 ID:UlhPGaG2O
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最後にツンの顔面に雪玉を叩きつけ、ニュッは鼻息荒く踵を返すと、
その場を足早に立ち去っていった。
デレが慌てて内藤達に会釈し、彼を追い掛ける。
2人の背が見えなくなるまで憤怒の形相で睨みつけていたツンは、
彼らがいなくなって、ようやく落ち着きを取り戻した。
ξ゚听)ξ「……ほんと、しっかりしなきゃ」
先程まで彼らが座っていたベンチに腰を下ろす。
何だかんだ、ニュッのおかげで立て直したようだ。
彼のことなので狙ったわけではないだろうけど。
内藤は湿った雪を踏み締め、ツンの隣に座った。
しばらく黙って広場を眺める。
内藤が身じろぎしたのを合図に、ツンの唇が動いた。
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426 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:58:00 ID:UlhPGaG2O
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ξ゚听)ξ「──私が渡辺先生を苦手になった場所も、『おばけ法』を知った場所も、この公園だったわ」
彼女は渡辺に「嘘つき」と言われた過去を手短に説明した。
奇しくも、この広場でのことだったという。
内藤に聞かせたい、というわけでもなかったのだろう。
声は淡く、ただ記憶の確認をするためだけに語っているようだった。
ξ゚听)ξ「それで、私は思わず広場を出て──」
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427 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 19:59:01 ID:UlhPGaG2O
-
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ξ;;)ξ グスッグスッ
自然公園のランニングコースだったろうか、
舗装された道の隅に蹲り、ツンは泣いていた。
渡辺先生の笑顔が脳裏に甦り、その都度先程の発言を伴って、困ったような表情に変わる。
「どうしていつもそんな嘘つくの」。
ξ; -;)ξ『……』
『──ツンちゃん?』
男の人の声がした。
顔を持ち上げ、涙で霞む視界を擦る。
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428 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 20:00:52 ID:UlhPGaG2O
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(*゚∀゚)『どうした? 迷子?』
ξ;;)ξ『あ……』
ギコの家──正確には、猫田家はギコの親戚の家だろうけど──で会ったことのある人だった。
猫田つー。
ギコの叔母さんの夫。
(*゚∀゚)『そっか、今日、保育園のみんなでここに来る日だったっけ』
スーツ姿のつーは、ツンをひょいと抱え上げた。
つーの隣にスーツ姿の男の人がいた。
その人が、「どなたですか」とツンを指して訊ねる。
(*゚∀゚)『甥っ子の友達です。この子も幽霊が見えるんですよ。
──よしよし、泣かない泣かない。
どうした、おばけに意地悪されたか?』
泣いていることの直接的な原因ではないが、おばけが関わっていないわけでもなかったので、
答えあぐねたツンは口を閉ざした。
(*゚∀゚)『悪いおばけがいたら、おじさんに教えてな』
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429 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 20:03:49 ID:UlhPGaG2O
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『おばけが嫌いかい?』
スーツの人が問い掛けてくる。
ツンは、これにも返答が浮かばなかった。
しばらく考え、答える。
ξ;;)ξ『……怖い』
嫌いというよりは、怖かった。
どう対応すればいいか分からないから。
(*゚∀゚)『おばけだって、みんながみんな意地悪なわけじゃないぞ。
優しいのもたくさんいるんだから。
……でも、意地悪なおばけはやっぱり怖いよなあ』
『おばけ法を知れば、おばけなんか怖くなくなるさ』
ツンの頭を撫でて、スーツの人は言った。
にやにやしていたように思うが──今となっては、顔も声も明確に覚えていない。
ともかく、当時のツンには、その男が笑っていたように思えた。
おばけほう、が何なのかツンには分からない。
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430 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 20:04:48 ID:UlhPGaG2O
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『それで検事にでもなれば、おばけ達を苛めてやれるぞ』
(;*゚∀゚)『苛めるのが仕事なわけじゃありませんって。人聞き悪いなあ』
『この町で弁護士になったって、つーさんには勝てっこないでしょう』
(*゚∀゚)『でも、弁護士がいないと僕だって成り立ちませんよ。
もし僕が何か間違ってたとして、それを指摘してくれる人がいなくちゃ……』
『真面目だねえ』
(*゚∀゚)『面白味がないとよく言われます。
──ごめんな、ツンちゃんにはつまんない話だな』
ツンは首を振った。
話の内容はよく分からないが、つーの声は穏やかで、
気持ちを落ち着かせてくれた。
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431 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 20:05:31 ID:UlhPGaG2O
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(*゚∀゚)『さ、泣き止んだね。みんなのとこに戻ろう。
どこに行けばいい?』
ξ゚听)ξ『……あっち……』
(*゚∀゚)『分かった。あとはギコ君に任せればいいね。行こう』
ツンを抱えたまま、つーは運動場の方角へ歩き出した。
仕事の途中でしょう、とスーツの人が呆れたように言ったが、つーは笑って「少しだけだから」と返していた。
#####
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432 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 20:07:16 ID:UlhPGaG2O
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( ^ω^)「しぃさんのお父さんですかお」
ξ゚听)ξ「ええ。……いい人だったわ、本当に」
( ^ω^)「すごい人だったんですおね。
それでこの町、『弁護士殺し』の町って呼ばれたとか」
ξ゚听)ξ「あら、よく知ってるわね」
( ^ω^)「前に鵜束検事から聞いたんですお。
で──僕、そんな町でツンさんはよく弁護士やってるなあって思って」
ツンが、虚をつかれたような顔をした。
唇を指先で押さえ、考え込むように黙りこくる。
しばらく間が出来た。
言ってはいけないことを言ってしまっただろうか。
話題を変えよう。あまり突拍子のないものではなく。弁護士。検事。しぃ。
しぃ、からギコを連想した。
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433 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/17(土) 20:08:14 ID:UlhPGaG2O
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( ^ω^)「ツンさん達って、そんなに小さい頃から仲良かったんですね」
ξ゚听)ξ「……達って、まあ、姉者はともかくとしてギコとはね。
おままごとするとき、ギコに無理矢理お母さん役とかやらせたもんだわ」
( ^ω^)「……今のギコさんがああなったのって、そのせいでは」
ξ゚听)ξ「責任は感じている」
だいぶ大きな責任ではないのか。
ツンは足元の雪を踏み固め、腰を持ち上げた。
何故だか晴れやかな顔色に見えた。
ξ゚听)ξ「行きましょう」
( ^ω^)「どこに?」
ξ゚听)ξ「またんき君のお祖父さんの家」
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