ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

case8:神隠し罪/中編

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330 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:08:21 ID:mE8wFGdkO

ξ--)ξ「……次に、過去の神隠し事件について。
      未だ帰ってきていない子達の事件はオサム様には関係ありません」

ξ゚听)ξ「ただ、帰ってきた子達に関しては──
      たしかに自分の仕業であると、オサム様が認めています」

爪'ー`)「……ふむ?
     8年前や13年前その他の事件には関与していないが、
     40年前、62年前のものは被告人が神隠しを起こしたと?」

ξ゚听)ξ「そうなりますね。40年前のに関しては、相手から同意も得ています」

( ^ω^)「……本当ですかお?」

【+  】ゞ゚)「ああ」

( ^ω^)「……」

【+  】ゞ゚)「事実なんだから仕方ないだろう」

川#゚ 々゚)「ブーンまでオサムのこと疑うの……」

( ^ω^)「いや、ただ……」

 内藤の胸に湧いた思いを、裁判官はもちろん、傍聴人達も同様に抱いたらしかった。
 空気が変な生温さを孕む。

331 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:10:04 ID:mE8wFGdkO

爪'ー`)「……無事に帰ってきた話のみ認める、か。しかも同意の上?」

▼・ェ・▼「随分とまあ都合がいいもんだ」

 そう。
 都合が良すぎるのだ。
 合意、かつ相手が無事である分には、オサムには何の罪もない。

(゚A゚* )「ビーグルもフォックスも、あかんよ。まだ決め付けたら」

ξ゚听)ξ「神隠し、と言うと語弊がありますね。『保護』です」

( ^ν^)「保護」

 鸚鵡返しにしたニュッの声は、あと少しで吹き出してしまいそうに震えていた。
 それに釣られたか、傍聴席からも失笑を買ってしまった。

ξ゚听)ξ「40年前に行方不明になった中学生の女の子は、当時、両親と仲が悪かったんです。
      母親が暴力的といいますか……とにかく家に帰るのが嫌だというので、
      ある日カンオケ神社に立ち寄って、お賽銭を投げ、
      悩みを吐露し、助けてくださいとお願いしました」


 それを聞いたくるうが、可哀想だ、何とかしてあげてくれとオサムに頼んだ。

 仕方なくオサムは少女の前に姿を見せ、言った。
 しばらく身を隠すか、と。
 少女は驚きつつも頷いた。

 そうして、ひとまず、彼女を異界に隠したのだという。

332 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:10:58 ID:mE8wFGdkO

ξ゚听)ξ「『あっち』と『こっち』は時間の感覚が違います。
      ほんの少しのつもりでも、『こっち』では5年も経っていました」

 とにかくオサムが無理矢理さらったわけではないし、
 彼女が帰りたがった時点ですぐに帰している。
 オサムの方から何かを強いてはいないのだ。

ξ゚听)ξ「これは、『こっち』へ帰ってきた彼女本人が語ったことです。
      当時の新聞にも、彼女の証言として載っていますし」

 本当ならば、本人を証人に呼びたいところだが、数年前に病死してしまっている。
 そう付け足してから、ツンは次の書類へ移った。

ξ゚听)ξ「62年前に起きた5歳児の事件にしても、そうです。
      夕方、刃物を振り回した男に追われて子供が神社に逃げ込んできたため
      咄嗟に子供を隠しました──それもやはり、すぐ出したつもりでも一ヶ月近く経ってましたけれど」

 その男は通行人にも怪我を負わせていたので、まあ当然のように逮捕されたわけだが
 取り調べの際に『子供が神社で消えた』と話したそうだ。
 このことも新聞に載っている。

333 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:11:35 ID:mE8wFGdkO

ξ゚听)ξ「これら2つの事件以外、オサム様は神隠しを行っていません。
      オサム様は私利私欲のために人を拐ったことはないし──
      人を食べたことも勿論、一切ありません」

( ^ν^)「私利私欲で連れ帰った恋人のことは?」

ξ゚ -゚)ξ「……事情が違うでしょう。
      拐ったわけじゃないし、一方的に気持ちを押しつけたわけでもないわ。両想いだったんだから」

 「そうですね」。
 神妙な顔で納得の意を見せたデレの口を押さえ、ニュッはツンを睨む。

( ^ν^)「確認するが、実際に神隠しをしたって事実は認めるんだよな?」

ξ゚ -゚)ξ「……帰ってきてる件のみはね」

( ^ν^)「つまり悪意の有無はともかくとして、
       子供を隠すことは可能だし、何度か実行してるわけだ。なあ?」

 嫌な訊き方をする。
 オサムが神隠しを行った、その事実のみを印象付けようとしているのだ。

 ツンは口をひん曲げて黙っていたが、ニュッがいつまでも返答を待つので、渋面を浮かべて頷いた。

 そんなやり取りを経て、ツンが腰を下ろす。
 手応えは無い。内藤にも分かる。

334 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:13:12 ID:mE8wFGdkO

爪'ー`)「では、検察側から証拠の提出をしてもらおう」

 ゆっくり腰を持ち上げるニュッに対し、デレは勢いをつけて起立すると
 何やら機具をいじり始めた。

 検察席と弁護人席の背後には、それぞれ高い位置にバスケットゴールが付いている。
 そのボードから、モニターが下げられていた。

 ぱち、とデレの手元で音がすると同時に、モニターに映像が現れた。

川;*゚ 々゚) ホワー

 こればかりは、苛立っていたくるうも釘付けである。
 彼女やオサムはどうも機械類に慣れていないのか、こういったものに示す興味も強い。

 最初に映し出されたのは、カンオケ神社の簡単な見取り図。

ζ(゚ー゚*ζ「参道を通って真っ直ぐ行くと拝殿があり、拝殿の後ろに本殿があります。
      社務所は参道の左手に。
      ランドセルが見付かったのは拝殿の右奥、赤い印の付いた場所です」

(゚A゚* )「うちのんに比べると、何やせせこましい感じやねえ」

▼・ェ・▼「お前のとこのが無駄に広すぎんだよ」

335 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:13:50 ID:mE8wFGdkO

( ^ν^)「次。被害者のランドセル」

 映像が変わる。ランドセルの写真だ。
 黒い革製で反射鋲が付いている、至って普通の造り。

 ただ──やけに真新しく見える。
 被害者、斉藤またんきは小学4年生だと聞いたけれど。

( ^ω^)「冬休み中なのに、何で祖父母の家にランドセルなんか持っていったんでしょうかお」

ζ(゚ー゚*ζ「すごく気に入ってたんですって。
      昨年ランドセルを壊してしまって、新しく買ってもらってからは
      ずっと離さずに大切にしてたらしいです」

(゚A゚* )「可愛らしなあ」

( ^ν^)「これがランドセルの中身。菓子類と宿題、ペンケース」

 写真は3枚目に移る。

 一口サイズのカップゼリーが数個と、ビスケットの個包装もいくつか。
 ビスケットの方は一つ、封が開いている。

 それから後は、過去の事件を報じる新聞など細々した証拠が提出されたが、あまり真新しいものはない。
 「古株」から聞いた証言に関して、しぃの母親が保証する旨の書面もあった。

336 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:14:18 ID:mE8wFGdkO

 ついでに、弁護側の証拠提出もこれといって取り上げるべきものもなかったため、割愛する。
 新聞の記事とかカンオケ神社職員の証言書とか、そんなもの。

( ^ω^)(大丈夫なんだろうか……)

 内藤が心配してしまうくらい、重要そうな証拠がなかった。
 心持ちツンも青ざめている。くるうの方を見られないのか、あからさまに顔を逸らして。

 こつん。
 フォックスが緩く揺らした木槌は、動作に似合いの小さな音を出した。

爪'ー`)「──さて。いつも通りなら、本日の審理はこれで終了するところだが
     今回は検察たっての希望により、ひとり証人を呼んでいる。
     そちらの証人尋問をしてから閉廷としよう」

▼・ェ・▼「疲れてきたんだがな……」

(゚A゚* )「検察側は、次回の審理でも別の証人呼ぶんやろ?
     なら、今日の内に一人でも片しといた方が、次が楽やね」

( ^ν^)「すぐ済むんで、少しばかりお付き合いを」

爪'ー`)「うん、それでは証人、証言台へ」

 デレの隣に座っていた女性が、戸惑い気味に返事をした。
 今までずっと黙っていたので、初めて彼女の声を聞いた。

 女性は検察席を出て、裁判官の正面、机の前に立つ。

337 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:15:01 ID:mE8wFGdkO

爪'ー`)「人間だな。名前と年齢から頼む」


从'ー'从「わ、渡辺アヤカです。44歳です」


 優しげな人だった。
 よく通る声で、現状に戸惑いつつも、口調ははきはきしていた。

爪'ー`)「生年月日と職業と、住所」

从'ー'从「昭和43年の、4月19日……。
     ヴィップ保育園で保育士をしています。住所は──」

( ^ω^)「ツンさん」

ξ゚听)ξ「……何?」

( ^ω^)「や、全然証人のこと見ないんで……」

ξ゚听)ξ「何でもないわ」

 緊張と言えばいいだろうか、ツンは身を固くしていた。
 ぴりぴりした空気も感じる。

 起立したニュッは書類を軽く叩いた。

338 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:15:24 ID:mE8wFGdkO

( ^ν^)「それじゃあ始めよう。
       ──証人の保育士歴は?」

从'ー'从「短大を卒業してからだから、24年……
     あ、でも、子供を産んでからしばらく休んでいた時期があるので、実際は18年です」

(゚A゚* )「長いのー」

( ^ν^)「その18年、ヴィップ保育園で?」

从'ー'从「ええ」

( ^ν^)「13年前、2000年の5月に起きた事件は覚えてるな」

 渡辺の顔が曇った。
 痛ましげに目を伏せ、頷く。

从'−'从「ヘリカルちゃん……保育園で、私が受け持った年長組の女の子でした。
     その子が公園でかくれんぼをして──そのまま……」

( ^ν^)「行方不明に」

从'−'从「はい……」

 13年前というと、子供が帰ってきていない──オサムは関わっていないと弁護側が主張している事件だ。

339 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:16:00 ID:mE8wFGdkO

( ^ν^)「休日に子供だけで遊んでる間に起きたからな。
       あんたには何の責任もないが、それでも胸は痛むだろう」

从'−'从「はい、もちろん……。
     ……あのとき、私がもっと、ちゃんと話を聞いていればって」

▼・ェ・▼「『あのとき』?」

 ビーグルが疑問符を飛ばす。
 答えたのは渡辺ではなく、ニュッの方。

( ^ν^)「女児は事件の前日、家族や証人に、あることを話していた」

爪;ー;)「あること、とは何だ?」

( ^ν^)「証人」

从'ー'从「えっと……公園に行くと、おばけが──自分のことを呼ぶんだ、って」

( ^ν^)「その『おばけ』について、女児は何て?」

从'ー'从「あの、私、そのとき忙しくて……あまり話を聞いてあげられなかったんです。
     だから細かくは覚えてないんですけれど」

( ^ν^)「構わねえ。知ってることだけを」

 渡辺は口元に手を当て、躊躇うように沈黙した。
 ほんの数秒。すぐに手を下ろし、答える。

340 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:16:38 ID:mE8wFGdkO


从'ー'从「……『オサム様のところに行く』って──文脈は覚えてないけど、
     そう言ったのはたしかに記憶してます」


 くるうが瞠目した。
 声は出ないままに唇が動く。「どうして」。

 そのことに、内藤だけでなくニュッも気付いていた。

( ^ν^)「なあ、『監視官』」

川;゚ 々゚)「、」

 立て、と命令する声は冷たく、表情は場違いに明るい。
 くるうはニュッを睨み、恐々と立ち上がった。
 ツンが訝しげな顔をする。ニュッの意図をはかりかねて。

( ^ν^)「人間の嘘のにおいが分かるんだよな。
       だから監視官やってんだよな」

川;゚ 々゚)「……」

341 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:18:20 ID:mE8wFGdkO

( ^ν^)「今回は被告人が被告人だから、あんたを監視官としては採用しなかったが……
       実際、どうなんだ。
       証人から嘘のにおいはしたか?」

川;゚ 々゚)「……ぁ……」

 くるうの額に汗が滲む。
 そこでようやく察しがついたようで、ツンが眉を顰めた。

 ニュッは敢えて口を閉ざす。瞳でくるうを貫いたまま。
 彼女にとってプレッシャーになるのは分かっているけれど、内藤も目を外せなかった。

 沈黙は長い。
 すっかり存在感の薄れていた雨音が、この場にいる全員の耳に染み渡る。

 フォックスが木槌を持つ手を動かした。

 同時に、くるうの目から涙が零れた。

川 ; 々;)「……やだ……」

342 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:19:02 ID:mE8wFGdkO

( ^ν^)「監視官」

川 ; 々;)「やだ、やだよお……何で……何で……」

 ツンが机を叩いて立ち上がった。
 その音で、くるうの涙は勢いを増す。

ξ;゚听)ξ「今まで黙ってたくせに、どうして今更こんな確認を……!」

( ^ν^)「弁護人にしたって、ここで訊いときたいとこだろ?
       『くさい』って一言がありゃ、
       弁護側の『被告人は無関係』って証明が出来る……かもしれねえんだから」


 ──この反応を見れば、聞くまでもないではないか。


 くるうが泣いてしまった時点で、ニュッにはもう、答えなどどちらでも良くなったのだ。

 「臭わない」と言えば、もちろん検察側に有利だ。
 逆に「臭う」と言えば──誰も信用しない上、
 監視官が嘘をついたということで、くるうの信用は無くなる。

▼-ェ-▼「……趣味が悪い」

 ビーグルが、気分を害したように呟いて顔を逸らした。

343 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:19:33 ID:mE8wFGdkO

ξ;゚听)ξ「くるうさん、答えなくていいわ!」

川 ; 々;)「う、ううっ、ううっ、ああ、あう……」

 制止を期待し、内藤はのーを見た。
 あの神様はこれまで、フォックス達を宥めるなど、気を遣った振る舞いを見せている。
 ニュッを止めてくれないだろうか。

 のーは頬に手を当てると、首を小さく傾けた。

(゚A゚* )「まあ、うちも気になるさかい……くるうちゃん、ちゃちゃっと答えてくれるかな。
     だいじょぶだいじょぶ、何も恐いことあらへんよ」

 内藤の顔が引き攣る。

 彼女は微笑んでいた。微笑んでいたが。
 目は笑っていなかった。

344 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:20:45 ID:mE8wFGdkO

(゚A゚* )「これ裁判やから……なるたけ判断材料欲しいんよ、な? 分かるやろ?」

ξ;゚听)ξ「ちょっと……! さ、裁判長!」

爪;ー;)「私も一度は確認しておきたいんだがな。……まあ無理にとは言わん」

(゚A゚* )「何やのんフォックス。結構大事なことよ?」

▼-ェ-▼「そんなに泣かせんのが楽しいかババア」

(゚A゚* )「ちゃいます。うちが確認したいんは、そういうのやなくて……って今ババア言いよったな貴様」

 裁判官が仲間割れし始めた。
 ツンがおろおろと裁判官やくるうのどちらへ声をかけるべきか迷っている。

 乱れた場を収束へ導いたのは──やはり「彼」だった。

【+  】ゞ゚)「くるう。いいよ」

 座ったままオサムが言う。
 くるうは、しゃくり上げながらオサムへ顔を向けた。

345 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:21:36 ID:mE8wFGdkO

【+  】ゞ゚)「お前は嘘をつけないし、つかなくていいんだ。
        本当のことを言えばいいよ、くるう」

 2人の視線が絡み合う。
 くるうの涙は止まらない。

 震えを止めるように唇を強く噛んだ彼女は、それから、ゆっくり開いた。


川 ; 々;)「……嘘のにおい、しなかった……」


 言い終えると共に、くるうは崩れるように座った。オサムに縋りつく。
 ごめんなさい、許して、と何度も繰り返す彼女の頭を、オサムの手が撫でた。

 ニュッは満足げに手を叩く。
 一人分の乾いた拍手が体育館に虚しく響き、余韻を残して消えた。

( ^ν^)「恋人より監視官としての誇りを守ったな。監視官の鑑だ」

ζ(゚ー゚*ζ「ニュッさんのこういうとこ嫌い」

( ^ν^)「知ってる」

 辛かったなあ、堪忍なあ──のーが、慰めの言葉を吐く。

 彼女のハンカチは、フォックスの涙によって既に使い物にならないほど
 水を吸い込んでしまっている。

346 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:22:03 ID:mE8wFGdkO

爪;ー;)「弁護側から、証人への反対尋問はあるか?」

ξ゚ -゚)ξ「……少しだけ」

( ^ω^)(……?)

 内藤は首を傾げた。
 ツンの返答に、今度は渡辺が緊張するのを感じたのだ。

ξ゚听)ξ「証人。女の子は、『おばけが呼んでる』って言ったんですよね」

从'ー'从「ええ」

ξ゚听)ξ「あなたはそれを聞いたとき、すぐに信じましたか?
      本当に──おばけが、女の子の前に現れたんだと」

从'ー'从「……もちろん。子供のことを信じてあげないで、どうするんです」

 保育士としては理想的な答えだろう。
 が、即座に、くるうが頭を振った。

川 ; 々;)「い、今、くさかった……」

ξ゚听)ξ「……証人」

从;'ー'从「あ──えっと──
      ……ごめんなさい、何かの勘違いだろうと思って……。
      子供って、よく見間違えたり、自分の想像したものを現実のことのように話すから……」

347 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:22:27 ID:mE8wFGdkO

ξ゚听)ξ「今回もそんなものだろうと思って、女の子のことを信じなかった?」

从;'ー'从「……ええ」

( ^ν^)「子供なんて、みんながみんな純粋無垢で素直なもんじゃねえだろ。
       嘘だってつくし、いたずらもする。
       子供の言うこと全部信じろってのも無茶な注文だ」

 ツンの顔色が僅かに暗くなった。
 その反応は予想外だったのか、ニュッが不可解そうに眉根を寄せる。

ξ゚ -゚)ξ「……そうね。……検事の言う通りよね」

从;'ー'从「あっ、で、でも、今は信じます!
      おばけが本当にいるんだって、今回の裁判でよく分かりましたから──」

从;'ー'从「──あの、……つ、ツンちゃん……ごめんなさいね……私……」

ξ゚听)ξ「『あまり話は聞いていない』『文脈を覚えてない』と言っていましたが、
      本当に、他のことは覚えていませんか?」

 明らかに渡辺は何かを言いかけていた。
 けれど、ツンが質問を続けたために打ち切られてしまう。

 渡辺は目を伏せ、「はい」と小さく答えた。
 くるうの指摘は入らない。

348 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:22:52 ID:mE8wFGdkO

ξ--)ξ「なら、尋問は以上です」

爪'ー`)「いいのか? 証人が何か言いたげだったが……。知り合いか?」

( ^ν^)「弁護人も昔ヴィップ保育園に通ってたんだとは聞いてるが」

ξ゚听)ξ「それだけです。特に訊きたいこともないので、もう終了して結構です」

从;'ー'从「ツンちゃん……」

爪'ー`)「証人、まだ言うことはあるか?」

从;'ー'从「……いいえ」

 ツンが着席し、渡辺はデレの隣に戻った。
 くるうは泣き止んだが、どこか呆然として黙り込んでいる。

 空気は重い。
 フォックスが弁護人席と検察席を見渡し、木槌を振り上げた。

349 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:23:26 ID:mE8wFGdkO


爪'ー`)「それでは──今日は、これにて閉廷とする。
     次回の公判は2日後、2月1日の夜9時から、またここで」


 叩きつける音が、高く響く。

 数秒の間を経て、館内の緊張感が途切れた。
 傍聴人達が動き出す。

 フォックスは宙に胡座をかくと、木槌を回した。
 一回転すると木槌は煙管へ変わり、紫煙を燻らせるフォックスをビーグルが睨む。

 内藤がそれらを眺めている間に、検察席を出たデレがこちらへ歩いてきた。

ζ(゚ー゚*ζ「オサム様、くるうさん、行きましょう。お送りします」

【+  】ゞ゚)「ああ。──弁護人、世話をかけた。ゆっくり休んでくれ」

ξ゚听)ξ「オサム様とくるうさんも」

川 ゚ 々゚)「ん……」

350 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:23:54 ID:mE8wFGdkO

(#'A`)「あ゙ーっ! 相変わらず……っつうか、ますます憎たらしくなってねえか、あの検事!!」

ζ(゚ー゚*ζ「鬱田さん、お久しぶりです。ニュッさんはいつもあんなもんですよ」

(-@∀@)「センセイ、大丈夫デス? 証人尋問の辺りカラ具合が良くなさそうデスが……」

( ^ω^)「──ツンさん、もう行くんですかお?」

 傍聴席からドクオとアサピーも近寄ってきて、弁護席は俄に賑々しくなった。

 だが、ツンは手早く荷物をまとめると、コートも手に持つだけにして
 さっさと体育館の入口へ向かって歩き出してしまう。

ξ゚听)ξ「次回の準備をしないと」

 内藤はツンの後を追った。大した荷物もないのでコートを羽織るだけで身支度は整う。

 入口は検察席の後ろだ。

351 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:24:23 ID:mE8wFGdkO

(*゚ー゚)

(,,゚Д゚)ノシ

 傍聴席に目をやると、しぃとギコがいた。
 小さく手を振るギコに、内藤も同じようにして返す。
 しぃの隣で見知らぬ少年が彼女の服の裾を掴んでいたが、誰だろう。

( ^ν^)「次はもっと粘ってこいよ。ワンサイドゲームって退屈なんだ」

ξ゚听)ξ「あんまり調子乗ってると後で恥ずかしいわよ」

 ニュッがパイプ椅子に座ったまま、にやにやしながら嫌味をぶつけてくる。

 ツンは検察席の横を一旦通り過ぎ、すぐに後ろ歩きで戻ると、
 ニュッのループタイの両端を引っ掴んで彼の鼻にぶち込んだ。

352 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:24:47 ID:mE8wFGdkO

(#^ν^)「てめえコラァアア!!」

ξ#゚听)ξ「ばーかばーかお前の根性ツイストマカロニ! 逃げるわよ内藤君!」

( ^ω^)「はい」

ζ(゚ー゚;ζ「ニュッさんそのまま! 写真撮るから動かないで!」

从;'ー'从「あ……ねえ、ツンちゃん──」

ξ゚听)ξ「どうも」

 呼び止める渡辺に、ツンは素っ気なく会釈だけを返した。
 過去に渡辺との間に何かあったらしい。
 そういえば先週、拝殿の中で彼女の名を聞いたときも様子がおかしかった。


 待てと怒鳴るニュッに構わず、ツンは入口の扉に手を当てた。
 そのまま押し開き──

.

353 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:25:15 ID:mE8wFGdkO


 _
(;゚∀゚)∬;´_ゝ`)



 そこにいた男女を見て、ツンと内藤は硬直した。

 男の方は知らない。
 女の方はよく知っている。


ξ;゚听)ξ

( ^ω^)

∬;´_ゝ`)


 女は──姉者は、腰が抜けているのか、情けない体勢で座り込んでいた。
 顔に血の気はなく。目も涙が張っている。
 全身が小刻みに震え、床を掻く指先は白い。

354 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 10:25:54 ID:mE8wFGdkO


ξ;゚听)ξ「……いつから……」

∬;´_ゝ`)「……最初から……」


 内藤はひとまず手のひらで目を覆い、しばし、思考を別の方向へ旅立たせた。
 傘を持ってきていないな、失敗したな、と。

 一度は止みかけた雨が、また激しく降り出していた。



case8:続く

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