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279 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:38:10 ID:mE8wFGdkO
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( ゚∀゚)(あの刑事、姉者先生とどんな関係なんだ……)
夜道を歩きながら、ジョルジュは本日30回目の疑問を頭の中に落とした。
早朝に見た、埴谷ギコとかいう男の姿が蘇る。
背が高かった。ジョルジュより逞しかった。顔もそれほど悪くなかった。
そして何より姉者と親しげだった。昔からの仲。しかも警察の人間。
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(;゚∀゚)(姉者先生の……姉者先生の『一番頼りになる男』というポジションは……俺ではなかったのか……!?)
そんな馬鹿な。一日の内で姉者との接触が多いのは自分の方である筈だ。何しろ同僚。職員室の席も隣。
だが累計で言えばギコの方が圧倒的だろう。だって昔から、なわけだから。
_
(;゚∀゚)(いやいやいやそんな筈……いや……しかし……待て……)
嫌なことを忘れるには酒が一番手っ取り早い。
というわけでコンビニに向かっているのだけれど、今のままアルコールをとれば、
寧ろますます深みに嵌まってしまいそうだ。
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280 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:38:38 ID:mE8wFGdkO
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(;゚∀゚)(帰ろうかな……)
「──やばいやばい、遅れちゃうわ!」
「お前が化粧なんかに時間かけるから」
「だっていっぱいおばけ来んのよ、気合い入れなきゃ」
「誰もお前のことは見ないよ」
_
( ゚∀゚)(ん?)
何やら聞き覚えのある声がして、ジョルジュは立ち止まった。
それと同時。
≡≡≡(;,゚Д゚)
ギコが目の前を通り過ぎていった。
けばけばしい化粧をして。
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281 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:39:13 ID:mE8wFGdkO
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( ゚∀゚)
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( ゚∀゚)(なに今の)
もしかしたらギコに似た化け物かもしれない。
(;,゚Д゚)「しぃ、急いで急いで」
(*゚ー゚)「しかしブーム君が……ええい、ブーム君、ギコに抱っこしてもらえ」
(;,゚Д゚)「どっこいしょー!」
本当にギコらしい。隣にいる少女(少年?)にギコと呼ばれていた。
どうしよう。見てはいけないものを見た気がする。
空中に向かって腕を伸ばし、何か抱えるような仕草をしている。恐い。
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(;゚∀゚)(え……え? どういうこと?)
ふらふら、ジョルジュは彼らの後を追った。
無意識である。頭はひどく混乱していて、それを鎮める手掛かりを体が勝手に求めた。
彼らの目的地は幸い近場だったようで、見失うことはなかった。
頭の中はますます乱れたけれど。
_
(;゚∀゚)(──学校?)
ギコとギコの連れは、ヴィップ小学校の敷地へ入った。
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282 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:39:55 ID:mE8wFGdkO
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携帯電話で時間を確かめる。
もう少しで午後9時。
どうして今、こんなところへ。
校門で身を隠しつつ覗き込んでみると、2人は旧校舎へ向かっていた。
体育館の窓にカーテンが引かれているようだが、僅かな隙間から明かりが漏れている。
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(;゚∀゚)(わけ分かんねえ……)
しばらく、そのまま旧校舎を凝視する。
辺りは静かなのに──何だか空気が騒がしい。
見えない誰かがたくさん居るような。ざわざわと落ち着かない。
「──ジョルジュ先生」
_
(;゚∀゚)「あ!?」
背後から掛けられた声に飛び上がり、ジョルジュは振り返った。
その様子に相手も驚いたようで、ひゃ、と短い悲鳴があがった。
∬;´_ゝ`)「あ、あの……こんばんは……」
_
(;゚∀゚)「あ──姉者先生?」
少し、ほっとした。
馴染みのある顔に出会えて安心したのだ。
姉者は防寒具を身につけず、部屋着そのままといった格好だった。
長いこと外にいたのか、鼻や耳、指先が真っ赤だ。
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283 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:40:28 ID:mE8wFGdkO
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∬;´_ゝ`)「今、ギコ君、入っていきましたよね……」
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(;゚∀゚)「え、ええ」
∬;´_ゝ`)「うちの親戚の子と、知り合いもさっき入っていったんです……。
……何があるんでしょう……」
答えようもない。ジョルジュにはさっぱり分からないのだから。
沈黙が流れた。それでもやはり、空気はざわついている。
しかも、時が進むにつれて激しくなっているような気がする。
──ぽつ、と冷たい感触が頭を打った。
ぽつ、ぽつ。連続するそれは、徐々に間隔を狭めていく。
雨だ。
すぐに本降りになった。
ひゃあ、と姉者が悲鳴をあげる。
ジョルジュは姉者の手を掴み、旧校舎を指差した。
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(;゚∀゚)「……雨宿りついでに、見に行ってみます……?」
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284 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:40:51 ID:mE8wFGdkO
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(*゚ー゚)「ここならよく見えるな、ブーム君」
| ^o^ |" コクリ
──旧校舎、体育館。
ストーブの熱はまだ全体に行き渡っておらず、肌寒い。
体育館の真ん中に縄が張られ、そこから後方が傍聴席となっていた。
一応椅子が並べられているのだが、あまり個別の席としての役割は果たしていない。
何しろおばけというのは大きさの差が激しいので、
一体で何席も占領する者もいれば、複数で一席を共有する者もいる。
しかも、よく見てやろうという気持ちからか、宙に浮いている輩も多い。
(;,゚Д゚)「予想はついてたけど、それにしたって凄い数……。こんなの初めてだわ」
(*゚ー゚)「そうだな」
何しろ体育館に傍聴人が入りきらなかったくらいだ。
あぶれたおばけ達は、それでも尚、校舎の外に留まっている。裁判の行方が気になるのだろう。
カーテンの隙間に目をやれば、窓の向こうから何とかして覗こうとしている奴もいた。
最前列、検察寄りの席に腰掛けながら、しぃはほっと息をついた。
事前に席を確保しておいて良かった。でなければ、しぃ達も体育館に入れなかっただろう。
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285 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:41:25 ID:mE8wFGdkO
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(*゚ー゚)「裁判中は、おとなしくしていておくれよ」
| ^o^ |" コクリ
しぃの隣、ブームに声をかける。
結局、今日に至るまで、彼から有益な情報を得ることはなかった。
いい加減しぃも見限ろうと思ったのだが、
一度裁判を傍聴させようじゃないかとギコが提案したので現在こうなっている。
ブームの、どこか気の抜けた顔つきはいつも通り。
けれども緊張しているように見受けられた。
(*゚ー゚)(裁判を傍聴するのは初めてかな)
そう判断し、しぃは前方へ顔を向けた。
──彼女は気付かなかった。
ブームが怯えていることに。
彼女の注意力が足りていないわけではない。ブームが、感情を表に出さぬよう我慢していたからだ。
|; ^o^ |
ブームは、ちらりと後方を一瞥する。
( ∵)( ∴)
おばけが2体。ひっそりと、他のおばけの陰に隠れるようにして座っている。
ブームは慌てて目を逸らし、そして、もう振り返ることはなかった。
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286 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:42:22 ID:mE8wFGdkO
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(*゚ー゚)「……そろそろ始まる」
(,,゚Д゚)「ええ、そうね」
縄の向こうを見遣る。
左右に、それぞれ向かい合うように長机が置かれていた。
左側は検察席。
( ^ν^)
ζ(゚ー゚*ζ
パイプ椅子に座るニュッとデレが、何か話している。
傍聴席が騒がしいのと、雨の音でしぃの耳にまでは届かない。
ニュッは腕を組み足を組みふんぞり返り。非常に自信満々といった様子。
彼らの隣に女性が座っていた。証人だ。
懐かしい、とギコが呟いている。
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287 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:42:46 ID:mE8wFGdkO
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対して右側。弁護人席。
同じくパイプ椅子に座る内藤とツン、くるうとオサム。
皆、普段通りといった風である。怒りの形相で検察席を睨むくるう以外は。
(;*゚ー゚)(監視官は神社で待たせた方が良かったのでは)
開廷の時間が迫るにつれ、傍聴席は騒がしくなっていった。
その多くが、弁護人と検察官のどちらが勝つか、という点の話し合い。
「オサム様もお気の毒に。あの弁護士、負けが多いって聞くぞ」
「だが相手の検事には勝ったことがあるって噂だ」
「じゃあ相手も大したもんじゃないな」
──それを静める音が一つ、響いた。
傍聴席の真正面。
体育館前方の壇を背にして立つ──少し浮いている──裁判官「達」の真ん中から。
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288 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:43:13 ID:mE8wFGdkO
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(*゚ー゚)(合議体か)
複数の裁判官によって取り仕切られる裁判。それが合議体だ。
今回の裁判にはそれが採用されている。
3人。3柱、と言うべきか。
幽霊裁判ではなかなか見られない。
真ん中、ひときわ背の低いのが裁判長。
傍聴席から見て左側(裁判長から見て右)が右陪席裁判官。
その反対、傍聴席から見て右側が左陪席裁判官。
真ん中の裁判長が、静まり返る法廷の中で口を開いた。
爪'ー`)「では、これより開廷する。
──私はN県ニューソク市、吉津根神社のフォックスという者だ。
今回の法廷では裁判長を務めさせてもらう。よろしく頼む」
まるで邪魔するのを嫌うように。
雨の音が、少し弱まった。
*****
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289 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:43:43 ID:mE8wFGdkO
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(゚A゚* )「──O府、能茶神社の、のーいいます。
山の神様やらせてもろてますけど、山姥なんて呼ばんといてね。
今回は右陪席やね。よろしゅう」
関西訛りの、のーという女の神様が和やかに挨拶した。
緑を基調とした和服姿。
見た目の年齢は60代あたりだろうか。表情は柔らかく、品のいい老淑女といった佇まい。
続いて左陪席の神様が自己紹介を始める。
▼・ェ・▼「……W県、大犬神社。ビーグルだ。左陪席」
──犬の頭。人間の体。
ワイシャツにセーター、ジーンズなんて格好だ。
洋装の神様など内藤は初めて見た。
声は老人のように低く嗄れている。反して、体付きは若い男のよう。
そして犬である頭部は愛嬌があるというか、可愛らしい。
( ^ω^)(神様も色々いるもんだお……)
(゚A゚* )「ビーグルはもうちょい愛想ようすればねえ。可愛いのに」
▼・ェ・▼「ふん」
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290 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:44:11 ID:mE8wFGdkO
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爪'ー`)「検察官は私と同じくニューソクから、鵜束ニュッ」
相変わらず性別年齢が曖昧な神様、フォックスがニュッを紹介する。
ニュッは姿勢を正して一礼。
爪'ー`)「そして弁護人は──傍聴席の皆はよく知っているかな。出連ツン」
ξ゚听)ξ「……よろしくお願いします」
(#'A`)「いけー! 弁護士ー! 悪徳検事をぶっ潰せー!!」
(-@∀@)「センセイ頑張れー」
弁護人席に一番近い傍聴席から、ドクオとアサピーが声援を送ってくる。
即座にフォックスから注意を受けて黙ったが。
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田さんだー」
( ^ν^)「……あの眼鏡、出連に協力してやがった奴じゃねえのか」
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291 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:44:43 ID:mE8wFGdkO
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( ^ω^)「ツンさん、勝つ自信ありますかお」
ξ゚听)ξ「余裕」
川 ゚ 々゚)「……」
内藤の隣。くるうが表情で反応を示す。
嘘のにおいがしたのだろう。
川#゚ 々゚)「ツン……」
ξ;゚听)ξ「だ、大丈夫、何とかなるわ! ……私はオサム様の無実を信じるから。何とかする」
それは本当のようで、くるうが若干落ち着く。
内藤はほっと息をついて、傍聴席に意識を向けた。
おばけまみれ。皆がこちらを注視している。
本当は、弁護人席なんて目立つ場所に座りたくなかったのだが。
「内藤君、もう結構な知名度になってるわよ」と悲しい事実をツンから聞かされたので、諦めた。
考えてみれば彼女の事務所に入り浸ったり裁判に参加したりしているのだから、当然である。
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292 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:45:49 ID:mE8wFGdkO
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フォックスは再び木槌を打って──オサムに目で合図を送った。
爪'ー`)「被告人、前へ」
【+ 】ゞ゚)「うむ」
オサムが立ち上がると法廷に緊張が走った。
彼は急ぐでもなく、かといってのんびりもせず、
至って平静のまま、裁判官達の正面へ回った。
適当な教室から持ってきたと思われる、一人用の机が置かれている。
その前にオサムが立った。
爪'ー`)「昨年、出雲で会って以来だな。いつものことだが顔を見せてすぐ帰ったろう」
【+ 】ゞ゚)「くるうを置いたまま遠出したくない。
──それにしても珍しい組み合わせだ。
狐と犬は相性が悪いんじゃなかったのか」
▼・ェ・▼「そりゃまた違う話だろ。俺らにゃ関係ねえや」
爪'ー`)「私も気にしていない」
(゚A゚* )「なあに言うとんの。待機中ぴりぴりしてたやろ。
うちの身にもなってほしいもんやわ」
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293 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:46:19 ID:mE8wFGdkO
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( ^ν^)「裁判長」
和気藹々とした雰囲気を、ニュッの声が断ち切る。
すまない、と謝罪して、フォックスは仕切り直した。
爪'ー`)「それでは、被告人。名前と所属を。生年月日は覚えてないだろうからいい」
【+ 】ゞ゚)「カンオケ神社のオサムだ」
爪'ー`)「うん……まあ、別人なわけもないな。席へ戻って」
【+ 】ゞ゚)「……いちいち、弁護人席と証言台を行き来するのは面倒だと思うんだが……」
爪'ー`)「お前のやり方と私のやり方は違うんだ」
首を傾げつつ、オサムは内藤達のもとへ戻ってきた。
ヴィップ町の幽霊裁判では、被告人は初めから最後まで裁判官の向かいに立ちっぱなしだ。
一方、ニューソク市での進行は人間のそれに若干近かったように思う。
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294 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:46:41 ID:mE8wFGdkO
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爪'ー`)「検察官、起訴状の朗読を」
( ^ν^)「はい」
ζ(゚ー゚*ζ「いつも通り行きましょう、ニュッさん」
ニュッが腰を上げる。
内藤は息を吐き出し、聞き漏らすまいと耳に意識を集中させた。
事件の概容は知っているが、細かいところまでは聞いていないのだ。
( ^ν^)「公訴事実」
傍聴席のおばけ(と少しだけ人間)達も居住まいを直す。
ニュッの目がツンを捉えて、すぐに書類へ戻された。
( ^ν^)「今年平成25年1月1日、午後8時過ぎ。
被告人は本件の被害者──斉藤またんきを喰うために、
菓子を用いて、被害者をカンオケ神社の拝殿内へ誘き寄せた」
( ^ν^)「目論見は成功し、自分の敷地内で誰にも邪魔されず
被告人は被害者を喰らったものである」
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295 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:47:02 ID:mE8wFGdkO
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( ^ν^)「罪名、及び罰条。
──神隠し罪、おばけ法第97条の第2項。
以上の事実について、審理を願います」
( ^ω^)「……短っ」
ξ゚听)ξ「事件そのものはシンプルだからね」
神隠し罪には項目が2つある。
第1項は神様が生者を誘拐したり、同意無しで現世とは違う──異界というか、そういった場所へ
迷い込ませたりするのを禁じる、という内容。
第2項は、上記に加え、対象に傷害・殺人等の害を加えることを禁じる法である。
オサムの行いは第2項の方に相当する、と検察は訴えているのだ。
──ぽたり。
水滴が床を叩くような、ささやかな音が鳴った。雨が地を打つより小さく儚い音。
原因など見なくても分かる。
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296 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:47:28 ID:mE8wFGdkO
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爪;ー;)「──ああ! なんて……なんて愚かな!
人を喰う必要などないだろうに! それも、まだ幼い子供を!」
▼・ェ・▼「序盤で泣いてんじゃねえよ涙腺ゆるゆる狐」
(゚A゚* )「よしよし、泣いたらあかんよフォックス。みんなびっくりするさかい」
案の定フォックスが泣いていた。
ビーグルが悪態をつき、のーはどこからか出したハンカチでフォックスの涙を拭ってやっている。
何だこいつ──といった空気が傍聴席から漂ってくる。
やはり、おばけから見てもフォックスは些か異様らしい。
( ^ω^)「相変わらずですお……」
ξ゚听)ξ「ちょっと安心するわ」
(゚A゚* )「まだ彼が有罪や決まったわけでもないやろ、フォックス」
爪;ー;)「うう……被告人、起訴内容に異論はあるか?」
それはオサムへの問いだったし、オサムも答えようとしていた。
けれど──いち早く答えたのは、彼と内藤の間に座っている、彼女だった。
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297 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:47:50 ID:mE8wFGdkO
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川#゚ 々゚)「──違う!! 全部違う、全然違う!
オサムは悪いことなんかしないの!
こんなの有り得ない!!」
広い体育館に、くるうの怒声が響き渡る。
傍聴人達は面食らっていた。
裁判官の方は、少々呆れ顔。
フォックスが木槌を構えたが、オサムがくるうの腕に触れるのを見て、手を下ろした。
ξ;゚听)ξ「くるうさ……」
【+ 】ゞ゚)「くるう。静かにするって約束しただろう。
約束が守れないなら、先に神社に帰っておいてくれ」
叱るような声ではなかったが、制止には充分だった。
信じられない、という顔で、くるうはオサムを見る。
ふ、ふ、と口の端から荒い息が漏れていた。
川;゚ 々゚)「なんで……く、くるうが、オサムのこと守るのに……」
【+ 】ゞ゚)「裁判の邪魔は駄目だ。
──今日、俺を守ってくれるのは弁護人だから、
くるうは協力してやってくれないか」
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298 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:48:21 ID:mE8wFGdkO
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川;゚ 々゚)「協力って、何、したらいいの」
【+ 】ゞ゚)「静かにして、ここに座ってるだけでいいよ」
くるうが俯く。
納得はいっていないだろう。それでも一応は静まった。
茶番だとでも言いたげにニュッが小声で笑っている。
▼・ェ-▼「……落ち着いたみてえだし、被告人、改めて質問に答えてもらえるか」
【+ 】ゞ゚)「ああ。……その、斉藤またんきという子供が拝殿に入ったのは事実だろう。
だが俺が招いたわけではないし、喰ってもいない。
そもそも──その子供を見てすらいない」
爪;ー;)「罪に関しては否認しているわけだな……」
( ^ν^)「『罪に関しては』」
明確な意図をもって、ニュッはフォックスの台詞の一部を繰り返した。
さっさと次に進みたいのだろう。
爪;ー;)「弁護人から意見はあるか?」
ξ゚听)ξ「オサム様と同じです」
爪;ー;)「了解した。──次だ。検察官は引き続き、冒頭陳述を頼む」
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299 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:49:06 ID:mE8wFGdkO
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ζ(゚ー゚*ζ「さあ頑張りましょうニュッさん」
冒頭陳述へ移るや、デレも立ち上がった。
過去の裁判と同じだ。ここら辺から2人がかりで責めてくる。
ニュッはまず、オサムの背景から語り始めた。
( ^ν^)「──記録によれば、被告人が神として祀られるようになったのは
この地が開拓され、人が住むようになってから」
ζ(゚ー゚*ζ「それより以前から存在はしていたそうですが、
まあ、人がいなけりゃ祀ってもらえることもないですからね。
ともかく移り住んだ人達によって、ようやく、土地を守る神様として認識されました」
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300 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:49:28 ID:mE8wFGdkO
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( ^ν^)「土地を治める神様ってことで、『治む様』──オサム様と呼ばれるようになった。
何か大層な謂れがあるわけでもない。たまたまそこにいた土地神ってだけだ」
ζ(゚ー゚*ζ「祀られてから力を得ていったタイプですね。
おかげで今やヴィップ町で一番強い神様です。
とはいえ、現代では信仰も薄れ気味ですが……」
(゚A゚* )「今はどこもそうやね。うちとこも、昔よりお客さん減っとるわ」
( ^ν^)「被告人がおばけ法の裁判官になったのは25年前。
特に揉めることもなくスムーズに決まり、現在に至るまで幾多の裁判を扱ってきた」
ζ(゚ー゚*ζ「不当な判決があった、という話は聞きません。
記録を見ても、良識に則った判決であると言えます」
裁判官としての評判はこれといって悪くない。
内藤は隣のくるうを盗み見た。
当然だ、といった表情だ。
( ^ν^)「んで……。今回の事件の話に移ろうか」
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301 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:49:49 ID:mE8wFGdkO
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ζ(゚、゚*ζ「被害者の斉藤またんき君は、隣町のビップラ市に住む小学4年生の男の子です。
事件当日、彼は、このヴィップ町に住む母方の祖父母の家へ
両親と共に訪れてました」
ツンが広げているファイルの中に、被害者──斉藤またんきという少年の写真が挟まっている。
【 (・∀ ・) 】
特に目立った箇所はない。
普通の子供だ。
( ^ν^)「その日の午後8時頃──」
祖母と母が台所で洗い物をし、祖父が風呂へ入り、父が煙草を吸いにベランダに出て。
またんき少年が、居間に一人きりになる時間が出来た。
とはいえ、父が戻ってくるまでの、たった5分程度だが。
( ^ν^)「父親が居間に戻ったときにはもう、被害者は姿を消していた。
愛用のランドセルと一緒に」
ζ(゚、゚*ζ「それ以降、誰もまたんき君を見ていません」
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302 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:50:08 ID:mE8wFGdkO
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( ^ν^)「警察がいくら捜索しても見付からなかったが……
1月1日から2週間ほど経った、1月15日。
カンオケ神社の拝殿から、被害者のランドセルが発見された」
傍聴席のそこかしこから、息を呑む気配がした。
オサムへ向けられる目の多くには、好奇が塗り込められている。
( ^ν^)「ランドセルの中には冬休みの宿題の他、
小さなゼリーとビスケット菓子が数点入っていた。
これは、1月1日の午前に参拝客からカンオケ神社へ供えられた菓子類と一致する」
( ^ν^)「──このことから、被告人は参拝客の善意により提供された菓子を利用して
斉藤またんきをかどわかし、自身のテリトリーである神社まで誘導してから、
拝殿の中で幼気な子供を手に掛けたものと考えられる」
川#゚ 々゚)「……」
くるうはそわそわと落ち着かない。
オサムが彼女の背を撫でていなければ、また先のように怒り出していただろう。
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303 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:50:33 ID:mE8wFGdkO
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( ^ν^)「さて。先ほど被告人の恋人様が『被告人はそんなことしない』と怒鳴っていたが、
それへの反論として、被告人の過去の所業について話させてもらおう」
σξ;--)ξ ポリポリ
ツンが人差し指でこめかみを掻く。
痛いところを衝かれたような顔。
ニュッは目敏くそれを見付け、彼お得意の嫌らしい笑みを浮かべてみせる。
( ^ν^)「ヴィップ町では、子供が行方不明になる事件が過去に何度も起きている。
たとえば8年前。ヴィップ小学校の男子生徒が、放課後、
友人と一緒に学校の裏山へ入り──そのまま消えてしまった事件」
ζ(゚、゚*ζ「また、13年前、ヴィップ保育園の年長さんである女の子と、そのお友達が
公園でかくれんぼをしていたんですが
女の子は隠れたまま出てこなくて……未だに見付かってません」
( ^ω^)(駄菓子屋の前で聞いた話と同じだお……)
他にもいくつか例が挙げられる。
どれも、行方不明になった子供は見付かっていないらしい。
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304 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/01(木) 09:51:03 ID:mE8wFGdkO
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( ^ν^)「逆に、一度は行方不明になったものの、
しばらくしてから帰ってきた例もある」
ζ(゚、゚*ζ「40年前に、中学2年生の女の子がいなくなりました。
女の子はその5年後に何食わぬ顔で帰ってきたといいます。
19歳になっている筈なのに、14歳の姿のままだったとか」
( ^ν^)「62年前。5歳の男児が行方不明になり、その一月後に帰ってきた」
(゚A゚* )「……ええと、それらの事件も被告人の仕業やいうこと?」
( ^ν^)「検察はそう考えてます。
……被告人も認めているし」
ξ;゚听)ξ「あっ、こら! 異議! 全部認めたわけじゃないわよ!」
( ^ν^)「失礼」
反省した素振りもない。
油断も隙もないわ、とツンが憤慨した。
過去の「神隠し」について、オサムは認めている。
だが──詳しくは追々説明するとして──それは決して「犯行の自供」ではない。
けれども向こうからすれば、立証に大きく関わる重要な話だ。利用しない手はなかろう。
▼・ェ・▼「……一部とはいえ、認めてんだよな」
事実、ビーグルの心証にはしっかり影響したようだ。
犬というものも存外、表情豊かだな、と内藤は思う。
彼がオサムを深く疑っているのは顔から見て取れる。