ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

case7:異類婚姻詐欺/前編

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732 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 22:46:33 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「まず、誓約書。……僕には、契約が交わされた瞬間のことは分かりませんので、
     原告が本当に酩酊していたか、それともしていなかったのか、その判断はつきません。
     しかし彼が酔いを醒ました後、フィレンクト氏は丁寧に確認の作業を行っている。
     『本当に約束するか』『約束します』、このやり取りだ」

ξ゚听)ξ「だからロミスさんは騙されたようなもんで……」

(*゚ー゚)「仮に、仮に、仮に。
     誓約書に署名し印をした際の原告が正気でなかったとしても!
     その後の問答で、彼は契約の内容を受け入れた。それなら契約は結ばれたと同義でしょう」

 しぃがA4サイズの紙を、身を乗り出させるツンの顔面に突きつけた。
 誓約書。先ほどツンが出したコピーではなく、原本らしい。

733 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 22:50:05 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「思いもよらずこき使われた、というのが原告の主張でしたが。
     第3項目、『素直フィレンクトの意思に従う』との文言を見て、
     自分がフィレンクト氏の都合により利用される可能性を考えなかった、彼自身の不手際と言わざるを得ない」

ξ;゚听)ξ「ぬうう……」

(*゚ー゚)「極論、『フィレンクト氏の言うことを何でも聞く』ともとれる文章だ。
     そこまで考えを回すこともせず、はい分かりましたと受け入れておきながら
     フィレンクト氏に騙されたと主張するのは、あまりに無責任で被害者意識が強すぎる」

ξ;゚听)ξ「そ、──そうかもしれないけど、限度があるでしょ!
      『死ね』と言われたとしても、その命令をロミスさんが聞く義務は無いわけだし!」

(*゚ー゚)「死ねと言われましたか? その命令を聞けと強制されましたか?」

ξ;゚听)ξ「されてないけど。……いや話はそこじゃなくて!
      ロミスさんへの扱いが不当だったって言ってんのよ!」

(*゚ー゚)「フィレンクト氏の『頼みごと』は、原告の可能な範囲でのことだったんでしょう?
     無茶を言っていたわけではない。違いますか?」

£°ゞ°)「言われれば、たしかに……『それは出来ない』『気が進まない』と答えれば、彼も引き下がってくれました」

ξ;゚ -゚)ξ「……うう」

734 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 22:51:49 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「それは不当な扱いと言えるでしょうか。
     孫の旦那に、祖父がちょっとしたお願いをするのは、どこの家庭でも見られることです」

(*-ー-)「……あなたは『使役』と大袈裟な表現をしましたが、
     こき使うというほどでもなかった」

ξ;゚听)ξ「でもロミスさんは様々な自由を──」

(*-ー゚)「──素直さんとの『夫婦関係』。これも阻まれていたとは言い難い」

 ちっちっと指を振るしぃ。
 こういうわざとらしい仕草が、なかなか似合う。

735 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 22:53:48 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「素直さんは、しょっちゅうこの部屋に来て、原告との交流を図ってきました。
     原告代理人は『1人で食事をさせられた』と言いましたが、
     たまに、素直さんが一緒に食事をする場面もあったそうです」

川*` ゥ´)「夫に顔見せない妻ってのも、何か、変だろ。
       それに、おばけと話をするのも、まあ……興味あったし」

川 ゚ 々゚)「……?」

 不意に、くるうが小首を傾げた。
 鼻をひくつかせ、さらに首を傾ける。

【+  】ゞ゚)「どうかしたか?」

川 ゚ 々゚)「んー……気のせいかも」

 何とも微妙な。

 くるうの意見は非常に重要であるため、ツンもしぃも彼女を注視したが、
 結局、くるうは首を横に振った。

 自分の「におい」のせいで彼女の鼻が鈍くなってしまったのだろうかと、
 内藤は少し申し訳なさを覚える。

 とにかく話を進めるべく、しぃは口を再度開いた。

736 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 22:57:45 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「彼女以外の家族は必要なときしかここに来ませんから、2人きりになることも多かった。
     ──……僕には理解できない話ではありますが
     2人が夫婦らしい雰囲気になり、夫婦らしい『事』に及ぼうという瞬間も、あったかもしれない」

 しぃが意味ありげな溜めを作った。
 ヒールは理解していないのか、しばしきょとんとしながらしぃを見つめ、
 少ししてから、たちまち顔を赤く染めた。

川;*` ゥ´)「ばっ──なに言っ──んなことあるわけねえだろ!!」

(*゚ー゚)「例え話ですよ。例え。とにかくそんな雰囲気になったとしても、
     あの誓約書の第2項、『本人の同意がない限りは手を出してはいけない』に則るならば
     彼女が同意さえすれば、何ら問題なく、いくらでも仲を深められたんです」

川;*` ゥ´)「誰が同意するか!! 気持ち悪いこと言うなよ! ……もうっ!!」

(*-ー-)「まあ彼女がこの調子なので進展など無かったでしょうが、
     片一方が拒否しているのに無理矢理ナニをソレしようとするのは
     おばけだろうと人間だろうと許されないことですからね。誓約とは関係ない」

(*゚ー゚)「これでは、夫婦生活の自由を奪われていたとは、とても言えません」

ξ;゚听)ξ「ぐぐう……! おのれしぃ検事ぃい……」

( ^ω^)(ギコさんがいないからしぃさんのナニソレ発言を誰も突っ込んでくれない)

 ツンがロミスを見る。
 ロミスは、落ち着いてください、と卓袱台の下でツンの手をそっと撫でた。
 恐らく内藤にしか見えなかっただろう。何だこいつは。

738 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:00:47 ID:xhuItdG2O

ξ;゚听)ξ「……、……そもそもこうやって閉じ込めてる時点で、悪意はあったでしょう!?」

(*゚ー゚)「そのことですが。彼を閉じ込めたことは先のように認めます。
     しかし、その理由を度外視して非難ばかりされるのも困る」

ξ;゚听)ξ「理由っつったって──」

(*゚ー゚)「原告からすれば、フィレンクト氏と正当な『約束』を交わした上で素直さんとの婚姻に至ったわけですが、
     フィレンクト氏の立場からしたらどうでしょう?」

 「よく考えてください」、と、しぃはオサムへ訴えかけるように言った。

(*゚ー゚)「これまで幽霊だの妖怪だのを見たこともない、至極普通の人生を歩んできた方です。
     原告に対して恐怖や不信感を抱かない筈がありません」

(*゚ー゚)「そもそも彼は『神頼み』していたわけであって、
     まさか得体の知れない妖怪に助けられるなどとは思っていませんでした。
     まして、その妖怪に自分の孫を要求されるなど、露程も」

【+  】ゞ゚)「そう──なのだろうか」

( ^ω^)「そうだと思いますお。予想外にも程があったんじゃないでしょうかお」

739 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:03:30 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「自分の大切な孫を妖怪にくれてやるなんて、一般人からすればおぞましくて堪らないでしょう。
     だからその妖怪に好き勝手されないよう、部屋に閉じ込め、行動の制限を強いた」

(*゚ー゚)「……たしかにそれ自体は好ましくありませんが、
     しかし、彼がそうせざるを得なかった気持ちもお分かりいただけるでしょう?」

【+  】ゞ゚)「ううむ……自分の落ち度とはいえ、自分の大切な者が巻き込まれたとなれば……
        たしかに、無条件では受け入れられない、か」

 オサムが揺らぐ。
 すかさず、異議、とツンが怒鳴った。

 「至極普通の人生を歩んできた方」というしぃの言葉に言及する。

ξ;゚听)ξ「おばけに触れてこなかった一般人?
      そんな人が、こんな結界張る方法をどこから調達してくんのよ!」

(*゚ー゚)「さてね。素直さん、フィレンクト氏から、オカルトに関わる話は聞いていましたか?」

川;` ゥ´)「さあ……そういう話を聞いた覚えはないよ。
       ホラー特番とか一緒に見たことあるし、人並み程度の興味はあっただろうけど」

740 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:07:36 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「原告は」

£°ゞ°)「四六時中この家を見ていたわけでもないので断定は出来ませんが、
      恐らく無かったかと……」

(*゚ー゚)「なるほど。僕もこの裁判に備え、フィレンクト氏の書斎や遺品を見せていただきました。
     そういったものに関係するものは見当たりませんでしたね」

ξ;゚听)ξ「……じゃあ何で……」

(*゚ー゚)「誰かからの入れ知恵でしょう。誰なのか、までは特定出来ませんでしたが。
     重要な要素だとは思いますけれど、手掛かりが見付からないので、いかんともしがたい。
     ──もしかしたらフィレンクト氏は、ここまで徹底的に閉じ込めるつもりはなかったのかもしれない」

ξ;゚听)ξ「んなもん分かんないでしょうよ!」

(*゚ー゚)「ええ分かりません、僕にもあなたにも、誰にも。
     こればかりは何の証拠もありませんからね」

 ツンは口をぱくぱくと動かしながら、さらなる反論の余地を探り、
 徐々に口を閉じていった。
 しぃが満足げに頷く。

741 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:09:46 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「……今度は『結果』の方を見ていただきましょう。
     フィレンクト氏が原告をここに閉じ込めていなければ、果たしてどうなっていたと思います?」

ξ;゚听)ξ「は……?」

(*゚ー゚)「原告。あなた、ヴィップ町での生活は長くていらっしゃる」

£°ゞ°)「はあ。何年になりますか……100……までは流石に行かないでしょうが、それに近いくらいは」

( ^ω^)(マジかお)

£°ゞ°)「行動範囲は狭いですよ。生まれてからずっとこの地にいました。
      たまに出掛けることはありましたが」

 100年近くも生きているのか。
 なら、もしかしたらフィレンクトより年上なのではなかろうか。
 そうなると、ますます複雑だろう。フィレンクトの心境。

742 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:12:05 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「ところで原告代理人……アサピーという方、よくご存知ですよね。あなたのオトモダチです」

 しぃが続けて口にした名に、ツンが虚をつかれた。

 アサピー。
 この町に住む、おばけでありながら呪術師をやっている男だ。
 ツンとは旧知の仲のようで、前回、内藤がN県で裁判にかけられた際も、彼の手助けがあったおかげで助かった。

ξ゚听)ξ「……そいつの名前が、何でいま出てくるのよ」

(*゚ー゚)「彼もヴィップ町で数十年暮らしてきてますからねえ、ここらのおばけに関する噂も多く知っている。
     そんな彼から聞いた話ですが──」


(*゚ー゚)「原告、ロミス。あなた随分と好色なことで有名でいらっしゃいますね」


 ツンが固まった。
 初耳です、といった顔で。

743 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:17:08 ID:xhuItdG2O

ξ;゚听)ξ「……え……? た、たしかに、女の子は好きみたいだけど……。
      ……有名、なレベルなの……?」

(*゚ー゚)「最近はいくらかおとなしくなったものだが、十数年前までは……」

(*-ー-)「おばけ人間問わず、女と見れば口説いて手を出して。
     昔、隣町の神社の宮司の娘に言い寄って、祓われかけたこともあるとか」

【+  】ゞ゚)「あ、何かその話聞いたことあるぞ。あれお前か」

(*-ー-)「色情霊が原告に恐れをなして逃げ出したとか」

ξ;゚听)ξ「ど、ドスケベじゃねえか!!」

(*゚ー゚)「僕も、そこのツンさんでさえも馴れ馴れしく触られ容姿を褒められましたしね」

( ^ω^)「さっきテーブルの下でツンさんの手触ってましたお」

川*` ゥ´)「エロミス」

£°ゞ°)「いやあ……」

 参りましたね、とロミスがはにかんで頭を掻く。
 多分そのリアクションは今ここで出るべきものではないと思うのだが。

744 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:20:09 ID:xhuItdG2O

ξ;゚听)ξ「何てこった……手出さないだけショボンさんの方がマシじゃないの……」

(*゚ー゚)「そんな男に自分の孫との『夫婦』という免罪符を渡して、
     自由にさせていたら……どうなっていたことか」

 ああ恐ろしい──しぃが首を振る。
 ツンは苦虫を噛み潰したような顔で天井を仰いだ。
 気持ちは分かる。非常によろしくない新事実だ。

(*゚ー゚)「誓約書によって、それを牽制することが出来た。
     もう一度言いますが、我々は『結果』を見ていただきたい。
     フィレンクト氏の考えや行いは、そこまで間違っていたでしょうか?」

(*-ー-)「閉じ込めた事実への謝罪はします。この部屋の結界を解くのも認めます。
     しかし素直さんとの婚姻の解消には応じませんし、
     『詐欺』の事実は存在しないものと考えています。以上」

ξ;゚听)ξ「っく……ぎぎぎ……。
      ……し、質問! 質問!」

【+  】ゞ゚)「どうした」

745 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:21:48 ID:xhuItdG2O

ξ;゚听)ξ「ピャー子さん、ロミスさんはあなたに──こう、何かいやらしい目的で触れることはあった?」

川;*` ゥ´)「あって堪るか! ……話の流れで、ちょっと肩に触るとか……その程度はあったけど、
       それ以外は特には……」

ξ;゚听)ξ「ほら検事! たしかにロミスさんは少し前までは手の早い女好きだったかもしれないけど
      ピャー子さんには、誠実に接していたわ!
      そんな彼に対して、フィレンクトさんは過剰な抑えつけを──」

 ナメきった顔で頬杖をつき、しぃは、空いた手でくるうを示した。
 ツンの表情が凍る。「やばい」という言葉が、まるで彼女の背後に見えるよう。

746 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:24:06 ID:xhuItdG2O

(*゚ー゚)「誠実ねえ……。原告、この監視官のことはどう思います?」

£°ゞ°)「見た目もそうですが仕草などもとても可愛らしくて是非とも仲良くなりたいなと考えています」

【+  】ゞ゚)

川*゚ 々゚) キャー

ξ;゚д゚)ξ「うおおおおおロミスさんそれ一番駄目え!」

 オサムの中の天秤が、一気に逆転するのを見てしまった。気がする。

 オサムはくるうの腰に腕を回し、心持ちロミスとの距離をとるかのように力を込めた。
 この神様はこういうところで心が狭い。

川*` ゥ´)「お前ほんとさあ……」

(*゚ー゚)「これが誠実ですか? 裁判中とはいえ妻がいる前でこのようなことを言う男が?
     弱みに付け込むように婚姻を結び、
     挙げ句、妻の姉と結婚したいから離婚してくれと要求してきた男が?」

川*´々`)(可愛いって言われた)

【+  】ゞ゚)「くるう。おい。くるう。何で嬉しそうなんだ。くるう」

747 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:26:44 ID:xhuItdG2O

ξ;゚听)ξ「んだぁああっ! もう!
      ピャー子さん! あなたロミスさんに対する当たりが強いわよね!
      あなたは彼と結婚したくてしたの!?」

川;` ゥ´)「んなわけないだろうが!
       こいつのことなんか知りもしなかったし、私が結婚するなんて考えたこともなかったし。
       ……ただ、姉ちゃんが犠牲になるよりマシだったから」

 ぽうっと頬を染めていたくるうが、ふと、表情を消した。
 次に浮かんだのは、怪訝な色。

ξ;゚听)ξ「じゃあ嫌々?」

川*` ゥ´)「そうだよ」

ξ;゚听)ξ「今でも?」

川*` ゥ´)「もちろん」

ξ;゚听)ξ「なら離婚に応じてくれてもいいじゃないの」

川#` ゥ´)「んなことしたら、こいつ姉ちゃんに手つけようとするだろ!」

748 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:30:50 ID:xhuItdG2O

ξ;゚听)ξ「そりゃ──これからもうちょっと話し合いましょうよ。
      何にせよ、このまま嫌々夫婦で居続けるのはあなたたち2人のためにならないわ。
      私、あなたの心配もしてるのよ。本当に。異類婚って大変なんだから」

川#` ゥ´)「余計なお世話だ! こいつ野放しにしたら、誰に何するか分かったもんじゃない!」

ξ;゚听)ξ「……? それだけ警戒しといて、ロミスさんの部屋の結界を解くのには賛成なの?」

川#` ゥ´)「私が見張る」

ξ;゚听)ξ「夫婦なのは嫌なのよね? なのに、どうしてそこまでしてあなたが頑張るのよ」

川#` ゥ´)「嫌に決まってんだろこんな奴!
       いっつもにやにやして女のことばっか考えてスケベで!
       気持ち悪くて嫌いだよ、でもしょうがな──」


川 ゚ 々゚)「くさい」


 先程とは違って。

 きっぱりと、くるうは言い切った。

749 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:32:08 ID:xhuItdG2O

 何度か確認するように鼻をひくつかせ、ぎゅっと顔を顰める。
  _,
川 ゚ 々゚)「すごくくさい……」

川;` ゥ´)「は? 何?」

 くるうの視線は、はっきりヒールに注がれている。

 恐らく今、ヒール以外の全ての者の脳裏で、彼女の発言が反芻されていることだろう。
 内藤もご多分に漏れず。
 そうして浮かぶ仮定は、実に──むず痒い。

(*゚ー゚)「……素直さん、あなた、原告のことがそんなにお嫌いですか」

川*` ゥ´)「だから嫌いだってば」

川;゚ 々゚)「くさい! わあ、今、今すっごくくさかった!」

 ヒールは肩を跳ねさせると、困惑顔で何度も視線を彷徨わせた。

 ツンも、しぃも、内藤も、生暖かくヒールを見つめている。

750 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:34:58 ID:xhuItdG2O

川;゚ 々゚)「ずーっと、うっすらニオイはしてたの!
      ブーンのニオイかと思ってたけど、今わかった、この子からも臭ってる!
      この子ブーンに似てる!」

川;` ゥ´)「な、何だよ! ちゃ、ちゃんと風呂には入ってんぞ……?」

 ヒールは身につけていたセーターの襟を鼻の前まで引っ張り、匂いを嗅いだ。
 内藤にも「私臭う?」と確認してきたので、首を横に振った。
 くるうの言うニオイはそういうことではない。

ξ゚听)ξ「……検事、説明してないわけ?
      私が弟者君を法廷に呼んだときは、事前に説明しておけと言ってくれたくせに」

(;*-ー-)「いつの話を……。……素直さん、このまえ言ったじゃないか。
     監視官は、人間の『嘘の臭い』が分かるんだってば」

川;` ゥ´)「臭いって──……え? あの、比喩、とかじゃないの?」

(;*゚ー゚)「人間が嘘をつくと、彼女にしか分からない悪臭が生じるんだ。
     本当に臭いがするんだよ」

 ヒールは先のツンのように、硬直した。
 5秒。10秒。
 何となくこちらが居た堪れなくなってくる。

751 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:37:09 ID:xhuItdG2O

ξ゚听)ξ「……ピャー子さん、ロミスさんのこと好き?」

川*` ゥ´)「嫌い」

 もはや反射というか。
 硬直したまま、口だけを動かしてツンの問いを否定する。

 するとまた、くるうが顔を顰めて。
  _,
川 ゚ 々゚)「くさい」

 ──その言葉が発されたと同時に、ヒールの思考も追いついたらしい。

 ぼっと音が聞こえそうな勢いで、ヒールの頬が一気に染まった。

752 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:38:13 ID:xhuItdG2O

川;*` ゥ´)「は、あ、あああああ!?
       何だよ! 何だよ!!」

£°ゞ°)「……ピャー子さん」

 ロミスが名を呼ぶ。
 彼はどこか呆気にとられた表情をしていた。
 今まではずっとにこにこしていたので、何だか新鮮だ。

 ヒールがクッションを自身の顔に押しつけ、壁際へ逃げる。
 髪の間から覗く耳まで赤い。

川;*  ゥ )「やめろよ! こっち見んなよお前ら! 違う、違うんだよ、何かの間違いだろ!!」

ξ;゚听)ξ「ぴゃ、ピャー子さん……」

( ^ω^)「そういうことだったんですかお」

£°ゞ°)「……すみませんピャー子さん、あなたの気持ちも知らずに」

川;*` ゥ´)「だから違うっつってんだろうがぁああああ!!」

 ロミスにクッションを投げつけ、絶叫。

 必死にロミスや内藤達を睨んでいるが、顔は赤いし涙目だし、なんというか、恐くなかった。

754 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:40:42 ID:xhuItdG2O

川 ゚ 々゚)「だって『嫌い』って言うと臭うし……」

川;*` ゥ´)「私が何でこんなスケベに惚れなきゃなんないの!!
       嫌いだ、嫌いだ!!」

川 ゚ 々゚)「くさい」

川;*` ゥ´)「あっ……あれだ、嫌いじゃなくて! 無関心! 無関心だ!
       心底どうでもいいよこんな奴!!」

川 ゚ 々゚)「くさい」

ξ;゚听)ξ「ピャー子さんショベルカーでがんがん墓穴掘ってるわよ」

川;*` ゥ´)「あんた鼻の調子悪いんじゃないのか!?
       何言ったって臭がるんだろ!?」

【+  】ゞ゚)「なら試しに『好きだ』と言ってみればいいじゃないか」

川;*` ゥ´)「すっ、……す……す……、……何……す、──すす、す」

 ぶるぶる震えている。ぶるっぶる震えている。

 ついぞ、ヒールは「好き」とは言わなかった。
 代わりに足元の布団の上から毛布を引っ張ると、
 それを頭から被り、隅で丸まってしまった。

755 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:42:21 ID:xhuItdG2O

     「もうやだ……もうやだあ……」

 饅頭のようになった毛布の中から、くぐもった声が発せられる。
 弱々しくて泣きそうで、大層恥ずかしかったのだろうなと思わされた。

(;*゚ー゚)「……素直さん」

     「猫田助けてぇえ……」

(;*゚ー゚)「……」

ξ;゚听)ξ「……」

( ^ω^)「……」

£°ゞ°)「……」

【+  】ゞ゚)「……」

川 ゚ 々゚)「……どうするの?」

 ヒールを除く面々は、目を見交わした。

756 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/09(日) 23:43:09 ID:xhuItdG2O


 どうすると言われても。
 どうもこうも、今夜はこれ以上の審理は望めそうにない。



case7:続く

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