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107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:18:13.88 ID:S0CF/fV7O
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(´・_ゝ・`)「──先程も申し上げました通り、検察側の言う『事実』は存在しないものと見ております」
(´・_ゝ・`)「まず、内藤ホライゾン君は、自ら犯行に協力するような人物ではありません。
級友や教師からは、『虫も殺さぬような』、温厚で心優しい少年であると言われています。
実は私も事件前に旅館で彼と会っていたのですが、同じ感想を抱きました」
言いながら、先程の紙を内藤の方に滑らせてきた。
──担任教師や、友人のモララー、ヒッキーの名前等が書かれている。
その下に、内藤の人柄について語ったのであろう言葉の羅列。
さらにその下にはA県ヴィップ警察の印。
エクストとダイオードが調達してきたというのは、これか。
ヴィップ警察に協力してもらったのなら──ギコにも、今回の件は知られたかもしれない。
しかしこの証言は、内藤の「演技」をしている姿しか知らない者の言葉だ。
デミタスも、既にそれは把握している。
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109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:20:34.22 ID:S0CF/fV7O
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爪'ー`)「被告人と弁護人は知り合いだったのか」
( ^ν^)「出来すぎてるよなあ……あんたらグルになって計画してたんじゃねえの?」
(#´・_ゝ・`)「なっ……! 検察官、その言い草は、」
ζ(゚、゚#ζ「異議!! 侮辱的発言ですよニュッさん!
盛岡先生は温泉旅行がお好きなんです! ニュッさんも知ってるでしょ! 旅館で会ってもおかしくありませんよ!
この前は熱海に行ってらっしゃいました!」
(;´・_ゝ・`)「え……あ、あなたに話した覚えないんですけど熱海……」
( ^ν^)「裁判長ーここにストーカーがいますー」
ζ(゚、゚#ζ「たまたま聞いただけですっ」
爪'ー`)「温泉が好きかあ。私も好きだな。よく行くのか?」
(;´・_ゝ・`)「は、はあ……むかし民事訴訟で旅行会社の弁護をして以来、
たまに宿泊チケットなどを頂いて……あの、話戻していいですか」
(;'A`)「……幽霊裁判ってのは逐一脱線しねえと気が済まねえのか」
ドクオの呆れ果てた声に同意する。
まともに進行していたかと思えばこれだ。
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111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:22:10.10 ID:S0CF/fV7O
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(;´・_ゝ・`)「えー……また、昔から霊感のせいで幽霊の類から迷惑をかけられてばかりいて、
常に霊を警戒し、近付かぬように心掛けていました」
(´・_ゝ・`)「幽霊裁判に関わるようになったのは、あくまで周囲に巻き込まれたからです。
巻き込まれた上で、『自分に出来ることがあるならば』と最小限の協力をしていただけで……」
( ^ν^)「その『自分に出来ることがあるならば』っつうご立派な精神で鬱田ドクオの手伝いをしたのでは?」
(´・_ゝ・`)「ええ、それは勿論。
ご立派な精神。そうですね。ホライゾン君は優しく真面目で、
いいことはいい、悪いことは悪いと判断出来るだけの良識は持っている。
そんな彼が、殺人などという犯罪行為に手を貸す筈がありません」
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115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:24:16.04 ID:S0CF/fV7O
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(´・_ゝ・`)「『母親に会いたい』──そんな気持ちに応え、手伝っただけなんです。それ以外には何もない。
そうだろう、ホライゾン君」
(;^ω^)「……は、はいお。
人を殺すなんて聞かされてたら、絶対に協力しませんでしたお……そんな、恐いこと……」
──むずむずする。
自分が大層な真人間であるかのような扱いで。
裁判とは、弁護とは、こういうものなのか。
綺麗な面を作り上げる。きっとこれが「普通」なのだろうけれど。
違和感について考え、不意に気付いた。
ヴィップ町ではくるうの存在があるから、弁護人はむやみに依頼人の人物像を書き換えられないのだ。
それは検察側からは非常に有利なことだろう。だからニュッは言った。「贅沢なもん」。
内藤も、くるうがここに居てくれれば、と今は思う。
彼女がいれば、内藤の「何も知らない」という主張が正しいのだと明らかになるのに。
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116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:26:13.77 ID:S0CF/fV7O
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(´・_ゝ・`)「そして彼は慎重であるが故、ドクオさんの様子をよく観察し、
悪さをしないかどうか見極めてから了承したんです」
はっ、とニュッが鼻で笑っている。
今度は、デミタスの言葉に全面的に同意したい。
ドクオの様子に絆されて、内藤は憑依の許可を出したのだから。
(´・_ゝ・`)「また、鬱田ドクオさん。
彼にも母親を殺害しようなどという意思はなかった。……あるわけがない」
もしも殺意があったのなら、殺しようなどいくらでも選べた、というのがデミタスの見解だった。
他人の体で殺さずとも、母親自身に憑依して自殺するとか、呪い殺すとか、安全かつ確実な方法がある。
なのに何故わざわざ無関係の内藤に憑依し、毒殺などと特殊な手に出る必要があるのか。
そこでニュッが問う。では、彼は何故、内藤の体を借りたのかと。
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118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:28:12.56 ID:S0CF/fV7O
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(´・_ゝ・`)「……母親と直に話したかったからです。
『鬱田ドクオ』としてでなく、全く別の人間として。ですよね?」
('A`)「……おう」
(´・_ゝ・`)「母の近況が知りたい。今、どんな暮らしをして、どんな楽しみを持っていて、どんな悩みがあって……。
困ったことはないか。いいことはあったか。幸せに暮らせているか。
……そういったことを、『他人として』話すことで知りたかった」
( ^ν^)「なら見に行きゃいいだけの話だろう。
自分の家に、気兼ねなく好きなだけ行けばいい」
(´・_ゝ・`)「それが出来なかった!
──彼は、自分の家にとても嫌な思い出がある。死後、A県にいたのも同様の理由によるものでした。
だから家には近寄りたくなかったんです」
爪;ー;)「嫌な思い出とは何だ?」
(;´・_ゝ・`)「それは……」
デミタスがドクオを見遣る。
ドクオは首を振り、何かを拒否した。
(;´・_ゝ・`)「……被告人が黙秘したいとのことですので、私の口からは」
そこを黙ってしまっては、説得力が薄くなるだろう。
裁判長も物足りないようだったが、深追いはせずに引っ込んだ。
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119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[さるったった] 投稿日:2013/10/31(木) 20:30:46.42 ID:68SsUsgk0
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(´‐_ゝ‐`)「──しかし残念ながら、それは叶わなかった。
別の霊か、あるいは人間か……。
何者かによって被害者は殺害され、2人はその罪を被らされた」
( ^ν^)「おいおい。異議。発想が飛躍してやしねえか」
(´・_ゝ・`)「そんなことはありません。
彼らが殺したのではないとしたら、確実に別の犯人がいることになるでしょう。
ドクオさんも、憑依した直後に意識を失った、と言っています。何者かの手が加わった可能性がある」
( ^ν^)「その『別の犯人』とやらの存在を匂わす証拠は?」
(´・_ゝ・`)「それはありませんが……そこは私が立証することではない」
(´・_ゝ・`)「先程の通り、今回の争点は『被告人が殺人を犯したか否か』であり、
それに基づいた私の主張は、被告人に殺人の意思など有り得ない、
故に被告人が被害者を殺害した事実もない──ということだけです」
それだけを立証することが、デミタスの仕事である。
ニュッがつまらなそうに腕を組み、天井を仰ぎ見た。
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121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:32:15.51 ID:68SsUsgk0
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デミタスが着席する。
それと入れ替わるように、今度はニュッとデレが。
爪;ー;)「うむ……どちらも有り得る話だ、そしてどちらも悲しい……。
次は証拠品の提出だな。まずは検察から」
ζ(゚ー゚*ζ「待ってました!」
( ^ν^)「初めに、現場の状況を示す証拠を」
法廷内には大小様々なモニターがあちこちに設置されていた。
今回使用されるのは、検察席や弁護人席の背後の壁面に取り付けられた大型ディスプレイと、
傍聴席に向けられている、これまた大きなもの、
そしてフォックスの席にある小さなモニターのみだという。
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122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:34:09.68 ID:68SsUsgk0
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ニュッの言葉を合図に、モニターに写真が映し出された。
殺害現場を撮影したもので、建物と建物に挟まれた袋小路に、人型に置かれたロープがある。
( ^ν^)「これが発見された当時の被害者の体勢と位置」
ζ(゚ー゚*ζ「うつ伏せに倒れていました。服装は宿泊している旅館『れすと』の浴衣とサンダル。
右腕に軽い打撲傷がありました。傷の状態から、死後に付いたものらしいので
絶命した後、倒れ込んだ際に打ちつけたのでしょう」
ζ(゚ー゚*ζ「それから、遺体の傍にジュースが落ちていました。祭の屋台で売られていたものです。
コップに被害者の指紋、ストローの口から被害者の唾液を検出」
続いて、ストロー付きの蓋が嵌め込まれた紙コップの写真。
それと茶色い小瓶。一昨日、デレに見せられたのと同じだ。
ζ(゚ー゚*ζ「検死によれば、被害者の体と、現場に落ちていたジュースから薬物が検出されたそうなんです。
そして被告人が持っていた小瓶の内側からも、同様の薬物反応が見られました」
( ^ν^)「これが凶器の薬品が入れられていた小瓶。
内藤ホライゾンのズボンのポケットに入っていた。本人の指紋もある」
ここで無反応というのも、うまくない。
内藤は、困惑を詰め込んだ顔をした。
瓶に見覚えも、触った覚えもない。
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124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:36:24.30 ID:68SsUsgk0
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ζ(゚ー゚*ζ「『ニチャン20』。漢方などで強心剤を作るのにも使われるんですが、
即効性のある強力なもので、用法用量に気を付けなければならない劇薬です。
この小瓶の3分の1ほどもあれば致死量となります。水溶性も高いですね」
( ^ν^)「……鬱田ドクオは生前、製薬会社に勤めていた」
(;'A`)「!」
内藤には初めて聞かされる事実だった。
製薬会社。何となく、イメージに合わない。
( ^ν^)「薬品の知識は持ち得ていたし、24日から25日夜までのアリバイは皆無に等しい。
たとえば……自身の会社から薬品を持ち出す時間なら、充分なほどあった」
ζ(゚ー゚*ζ「職員にさえ憑依しちゃえば、後はもう簡単ですよねえ。
何なら憑依せずとも、薬品を操って小瓶に移すことだって……」
(;'A`)「待てよ! 製薬会社っつったって──俺は営業の下っ端だったんだ!
薬のことなんざ大して知らねえよ!」
殺害に使われた薬品も知らない、とドクオが叫ぶ。
しかし、「知識がない」ことを確実に証明する術はない。
検察側は取り合わず、別の証拠へと進む。
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127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:38:28.48 ID:68SsUsgk0
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それから、契約書に使ったメモ用紙と内藤が愛用しているペンが憑依の証拠として提出された。
それらは被告人2人も認めているし、当然ながら内藤の指紋も残っていた。
反論の余地はないので沈黙する。
次は、旅館「れすと」の外観、廊下、客室の写真が続けざまに。
客室は様々な角度から撮られており、部屋の隅の座布団や旅行鞄などが確認出来た。
卓袱台の上に湯呑み茶碗が一つ。
茶碗が置かれている場所と向かい合う位置に、座椅子があった。
それが、何となく気になる。
( ^ν^)「これは被害者が宿泊していた旅館の部屋。
卓袱台の湯呑みには一杯分のお茶があった。
湯呑みと急須に被害者の指紋が付着していたため、自分で淹れたものと考えられる」
ζ(゚ー゚*ζ「そのまま放置されていたことから、
急きょ外出することになった、というのが分かりますね。
つまり被告人に誘われ、祭会場へ赴いた、と」
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129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:40:17.09 ID:68SsUsgk0
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(´・_ゝ・`)「──すみません。
先程から、被告人が被害者のもとを訪れた、と仰っていますが」
ようやく、デミタスが異議を申し立てた。
片手にDVDらしきディスクを持っている。
(´・_ゝ・`)「『れすと』の入口に設置されている監視カメラの映像はご覧になりましたか?」
( ^ν^)「……勿論」
(´・_ゝ・`)「私も観ました。が。
映像には、ホライゾン君の姿はありませんでした」
ならば内藤が被害者の部屋に行ける筈がない──
デミタスのその主張に、ニュッは、にやにや笑い出した。
フォックスが咎めるが、笑みは絶やさずにニュッがさらに反論する。
( ^ν^)「こっちも訊きたいな。ちゃんと映像確認したか?
『被害者が旅館を出る姿』はあったのかよ?」
(;´・_ゝ・`)「……う、」
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132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:42:08.61 ID:68SsUsgk0
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( ^ν^)「ナメんなよおっさん。その程度で騙くらかすつもりかよ。
──事件当日、午後5時半。
外出から帰ってきて入館したのを最後に、カメラには被害者の姿は映っていない」
爪'ー`)「……? それ以降、被害者は外に出ていないのか?
しかし事件が起こったのは祭の会場では……」
ζ(゚ー゚*ζ「被害者が泊まっていた部屋は、一階でした。
部屋の窓の外には、裏庭があります。裏庭には滅多に人が通りません」
写真が変わる。
部屋の入口の反対側の壁、床から1メートルほどの高さのところに窓があった。
窓は開いていて、そこから、いくつか樹が植えられた裏庭が見える。
( ^ν^)「被告人は裏庭へ回って被害者に声をかけ、
さらに、被害者を窓から外へと出させた。
霊なら下見も容易だったろう」
ζ(゚ー゚*ζ「被害者は旅館のサンダル……部屋に常備されているものを履いていました。
本人の靴は旅館玄関の下駄箱に預けられていましたからね」
また、被害者が着ていた浴衣の襟元の内側に
葉っぱが一枚くっついていたらしい。
「れすと」の裏庭に植えられている樹と同種のものだという。
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133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:44:11.23 ID:68SsUsgk0
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ζ(゚ー゚*ζ「それと、9時過ぎ頃に外を歩いている被害者を見たという証言もあります。
玄関以外の場所から外に出たのは間違いありません。
生憎、内藤君と一緒に歩いていたかどうかの確認はとれませんでしたが……」
モニターの映像が変わる。
数枚の紙。証言がどうたらこうたらと書かれている。
ζ(゚ー゚*ζ「こちらが、その目撃者である饅頭屋さんの証言に関する書類。
それからそれから、その少し前に『本当にあなたがドクオなの!』という声を聞いた女将さんの証言」
ζ(゚ー゚*ζ「最後に、旅館『ろまん』の従業員が、帳場で内藤君と話したという証言も」
ニュッの顔色を窺ってから、「以上です」とデレが告げた。
2人が殊更ゆっくりと着席する。
フォックスから促され、続いてデミタスが腰を持ち上げた。
(;´・_ゝ・`)「ええと……では、始めます」
ζ(´ー`*ζ「困ってる盛岡先生も素敵です」
(;'A`)「……大丈夫かよ」
( ^ω^)「さあ……」
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135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:46:12.22 ID:68SsUsgk0
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(´・_ゝ・`)「順に行きましょう。──ホライゾン君の人となりから。
少し前にも述べましたが、彼は心優しく、温厚な子供です」
(´・_ゝ・`)「昨年、そして今年に渡ってホライゾン君の担任を務めている教諭と、
同様に昨年から仲のいいクラスメート……ホライゾン君をよく知る方々からの証言です。
A県のヴィップ警に協力してもらい、その証言の記録も残しています」
(´・_ゝ・`)「さらに、本年度一学期終了時に送付された通知表。
担任からの通信欄にも、ホライゾン君がいかに精神面で優れた子だったかが記されています。
保護者の通信欄には、『気を遣いすぎる傾向がある』『芯は真っ直ぐ』との記述も」
保護者側の欄は、姉者が書いたものだった。
実の両親も流石家の両親も離れて暮らしている今、内藤の「保護者」は一番年長の姉者なのである。
母者に見せるために、持ってきておいた甲斐があった。
人柄についてはニュッが真っ先に反論してくるだろうと内藤もデミタスも身構えていたのだが、
やはり今も、彼は腕を組んで黙っていた。
一昨日夜のやり取り、そして取り調べのときに、内藤の演技については承知していた筈だ。
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138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:48:34.68 ID:68SsUsgk0
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(´・_ゝ・`)「……また、ドクオさんはホライゾン君と出会った頃、
ホライゾン君に『体を貸してくれ』と頼み、断られていました。
これは2ヵ月前にヴィップ町で行われた裁判の法廷記録にあります」
ドクオが裁判にかけられたものの、実際は濡れ女子の犯行だったと判明した事件のことだろう。
そういえばあのとき、内藤はドクオに付きまとわれていたと証言したのだった。
(´・_ゝ・`)「その後も何度か憑依の依頼をされましたが、
ホライゾン君は確固たる意思で断り続けました。
そのときは憑依の目的を聞かされておらず、『自分の体で悪さをするだろう』と思い込んでいたからです」
爪;ー;)「今時珍しい子供だ。霊に付きまとわれても敢然と立ち向かえるとは……。
──そういえば、鬱田ドクオは以前にも起訴されたことがあったのか」
( ^ν^)「起訴されるくらいには、挙動の怪しい奴だったわけだ」
(#´・_ゝ・`)「裁判の結果、無実であることが証明されています!
このときは不幸な偶然によって逮捕されたに過ぎません。
そしてそれは、本件においても同様です!」
怒鳴るデミタスに、デレがうっとりと見とれる。
そんな彼女の頭をファイルで引っ叩くニュッの顔には、依然として嫌らしい笑みが貼りついていた。
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141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:50:12.09 ID:68SsUsgk0
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(´・_ゝ・`)「多少強引なところはありましたが、ドクオさんは一度たりとも
無許可でホライゾン君に憑依することはありませんでした。
これはドクオさんの実直さの表れでしょう」
(´・_ゝ・`)「それに──ヴィップ町のとある事件において、ドクオさんは、
警備の仕事を任されていました。
先日など、警備の対象に近付いた不審人物を追い払ったとのことです」
これもまた初耳だった。警備のことは知っていたが、彼がそこまで仕事していたとは。
見つめる内藤に、ドクオは小声で手短に事の経緯を説明した。
いわく、三森ミセリの病室に見たことのない男の霊がいて、それを追いかけたと。猫のような身のこなしだったという。
旅行の前にドクオが言っていた『手に負えなくなった』とは、それのこと。
気になるが、今は気にする状況ではない。しかし気になる。
(´・_ゝ・`)「ドクオさんは警察からも信用してもらえる方でした。
そんな彼が、母親を殺そうなどと考えるでしょうか?」
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144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:54:12.19 ID:68SsUsgk0
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(´・_ゝ・`)「死ぬ直前の3年間、ドクオさんが被害者と共に旅行に来ていたのは事実です。
それほど良好な親子仲にあって、なぜ17年経った今、殺害しようという考えに至るのか。
有り得ない、と思うのは私だけでしょうか?」
ニュッは反論しない。
不気味だ。何を考えている?
デミタスも訝しんでいるのか、ニュッを胡乱げな目付きで見ていたが、
小首を傾げつつドクオへと手を向けた。
(´・_ゝ・`)「……ドクオさん、なぜ地元であるN県でなくA県のヴィップ町にいたのか、
そしてホライゾン君に執拗に憑依の依頼をしたのか、理由を話してください。
『嫌な思い出』は黙っていて結構です」
ドクオは緩く頷いてから、証言台へ移動した。
表情が暗く、先程までの威勢がない。
いつまでも口を開かないドクオに焦れたようで、フォックスが一度、木槌を打った。
('A`)「……どうしても地元には居たくなかった。
あそこにいると嫌な気持ちになって堪らなくて、自分には良くないと感じてた」
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147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:56:24.01 ID:68SsUsgk0
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訥々と、ドクオは語る。
('A`)「それで生前、仕事──製薬会社の営業で、ヴィップ町に行ったことがあったんで、
何となくそこに流れて……意外と居心地が良くて、それで留まってました」
('A`)「でも年月が経つにつれて……カーチャンに会わないといけないと思った。
もう死んでるかどうかも分かんなくて、
もし生きてるなら、まともに生活出来てるのかとか、色々気になって……」
カーチャンを放り出すような死に方を俺はしちまったから──と
消え入りそうな声で呟き、続けた。
('A`)「そう考え出した頃に、内藤少年と会った。
滅多に見ないほど霊感が強いんだ」
('A`)「カーチャンに会うための体が欲しかったのも確かだし、何なら内藤少年じゃなくても良かったけど、
……この体に憑依したら心地よく動けるだろうって、身勝手な理由もありました」
(´・_ゝ・`)「霊にも、合う体と合わない体があります。
どうせなら快適に憑依出来る方がいいと思うのは、当然のことです」
そこはフォックスも得心しているようで、「だろうな」と頷いていた。
もしかして、霊感が強いと体質も憑かれやすくなるのだろうか。
なんて迷惑な話だ。
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150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 20:58:34.20 ID:68SsUsgk0
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('A`)「それで、N県に行くって聞いて、これは何かの縁だろうと。
もしこれで断られたら、すっぱり諦めようと思って──」
(´・_ゝ・`)「そして最後の頼みを、ホライゾン君に聞き入れてもらえた」
ドクオが頷く。
「結構です」。デミタスが微笑み、言う。
空気が重苦しい。それはドクオから発せられている。
フォックスは袖で涙を押さえながら訊ねた。
爪ぅー;)「『嫌な思い出』とやらは、どうしても話せないのか?」
重い空気が、今度は張り詰める。
証言台に手をつき、ドクオは首を振った。
(;'A`)「……黙秘します」
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152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/10/31(木) 21:00:16.06 ID:68SsUsgk0
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そう答えた、瞬間だった。
ニュッが勢い良く立ち上がる。
( ^ν^)「弁護人が動機の面で否認するっていうなら、
こっちも動機から攻めさせてもらおうか」
ζ(゚、゚*ζ「あ、ここでやっちゃいます? ほんと性格悪いったら」
空気が断ち切られた。途端に、全員の意識が検察側へ向けられる。
わけが分からず検察席を見遣るドクオ、内藤。
デミタスだけは、頭を押さえていた。
(;´‐_ゝ‐`)「……やっぱ見逃してないよなあ……」
爪'ー`)「検察官、何か反論が?」
( ^ν^)「さっき『言い忘れていた』ことがありまして」
わざとらしい。
何を言うのかは知らないが──タイミングを図っていたのだ。
検察官に有利な、そしてこちらには不利な話の。
デレが、ニュッに紙の束を手渡した。
( ^ν^)「……『良好な親子仲』とは、よく言えたもんだな、弁護人」