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153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 20:41:27.44 ID:REyuzfcd0
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およそ考えられない──考えたくない事実であった。
しかし、ここにいる誰もが、それを理解していた。
(;゚д゚ )「俺の……名前……」
ξ;--)ξ「……っ!」
ツンはミルナから顔を逸らした。
ああ──彼女は知っていたのだ。
今、誰よりも傷付いたような顔をして。彼女は、避けられなかった展開に悔いている。
('、`;川「あ……わ、私、私……さっきからずっと、ずっと……
ひ、ひこくにんと、……ミルナ、顔、似てるって、……思って……
でもまさかそんな──こんなの、全然考えてなかった……」
ペニサスが青ざめ、呟く。
貞子の顔を見たときのペニサスの挙動が思い起こされ、内藤は得心した。
彼女はあのとき、貞子とミルナを見比べて、ひとり合点がいっていたのだ。
たしかに言われてみれば、2人の目や口元は似ている。
記憶を掘り起こせば、ミルナの祖母だという女性にも面影はあった。
──河内ミルナと山村貞子は、親子なのだ。
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154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 20:44:22.18 ID:REyuzfcd0
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川д川「どっちかといえば私似だもの。──ねえ、ミルナ」
言って──貞子は、こらえきれないとばかりに吹き出した。
それを皮切りに、徐々に笑い声が大きくなる。
わざとらしく腹を押さえ、声を引き攣らせて貞子は笑う。
川*∀川「あんた、あんた本当に顔以外は父親そっくりね!!
女に慣れてなくて不器用で! やってる最中の、何か堪えるみたいな表情するとこまで似てて可笑しいったら!
父親より顔整ってる分、そこは良かったけどねえ?」
川*∀川「髪の綺麗な女が好みなとこまで似ちゃって、もう、馬っ鹿みたい!
それで父親のこと嫌ってるなんてねえ、惜しいったらないわ、仲良く出来そうなのに!!」
オサムの右手が木槌を振り下ろす。
がん、と、つんざくような音が響いた。
それによって声は抑えられたが、依然、貞子の口は笑みに歪んでいた。
おろおろしていたショボンが、はっとしてミルナの傍へ移動した。
ミルナの顔色は一層悪い。
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156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 20:46:51.71 ID:REyuzfcd0
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(;´・ω・`)「ミルナ君、大丈夫ですか?」
(;゚д゚ )「……母さんは……こんな……こんな女じゃない……」
ミルナはショボンの声掛けを無視し、ぶるぶると唇を震わせながら悲痛な声を絞り出した。
頭を振る。一度俯き、机に拳を叩きつけて叫んだ。
(;゚д゚ )「いつも泣いてた!! ……親父に泣かされて──い、いつも、」
(*゚−゚)「反吐が出る」
先程から口を押さえて黙っていたしぃが、吐き捨てるように言った。
ミルナが絶句する。
しぃの瞳にたっぷりと詰め込まれた怒りが──真っ直ぐミルナへ向けられていた。
(*゚−゚)「河内さん。あなたの記憶は都合よく書き換えられていたようだ」
(;゚д゚ )「な、なに、が」
(*゚−゚)「よく考えろ。──思い出せる筈だ」
ギコがしぃの肩に手を乗せる。
すぐにそれを振り払われ、ギコは諦めたように息をついた。
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157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 20:48:25.29 ID:REyuzfcd0
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(*゚−゚)「あなたの父は、妻に対して何を怒っていた?
あなたの母は、幼いあなたに何をしてくれた?」
ξ;゚听)ξ「! 検事!」
ツンの声は、明らかに制止を目的としていた。
にも関わらず、しぃの口は止まらない。
オサムは木槌を胸元まで持ち上げていたが、鳴らすかどうか決めかねているようだった。
(*゚−゚)「熱を出したあなたに寄り添っていたのは祖母だ。
そのとき母親は何をしていた?」
(*゚−゚)「あなたがいつも隣の部屋で聞いていたという母の泣き声は──」
ξ;゚听)ξ「しぃ検事! もうやめなさい!!」
(*゚−゚)「──喘ぎ声ではなかったか」
ミルナの体が、がくりと揺れた。
彼は椅子に座ることなく、床へ膝をつく。
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158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 20:50:35.65 ID:REyuzfcd0
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(;゚д゚ )「……嘘だ……だって俺……あの人と、あんなこと、──母親と、」
ミルナの顔に脂汗が滲んだ。
彼は頭を押さえ、歯を食い縛り、上半身を前へと倒した。
聞こえない悲鳴が聞こえる。
川д川「あんたが懐いてた『お祖母ちゃん』だって、ろくなもんじゃなかったわよ」
──皆が黙りこくる中、貞子の声が響いた。
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162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 20:53:56.51 ID:REyuzfcd0
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川д川「自分の娘の浮気癖や育児放棄を咎めもしないで、ただ黙ーって孫の世話して。
一回目の火事のときだって、私には何も言わなかった。慰謝料も勝手に払ってた。
私に向き合うのを恐がって、可愛い孫の相手だけしていたかったのよ」
ξ;゚听)ξ「──っいい加減に、」
川д川「今回だって、面と向かって私を叱る度胸がないもんだから、
あんたの名前呼ぶことしかしなかったでしょう?
本気で助けたけりゃ、もっと他にやりようがあっただろうにねえ?」
ξ#゚听)ξ「黙れ!!」
これで止まらなければ、きっとツンは掴み掛かっていただろう。
幸い──と言えるかどうか──貞子は口を閉じた。
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163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 20:55:59.60 ID:REyuzfcd0
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ショボンがミルナを抱え起こし、オサムを見る。
(;´・ω・`)「退廷を」
【+ 】ゞ゚)「そうした方がいいな」
(;,゚Д゚)「あたしも運ぶわ。──ショボンさん、外でミルナ君に付いててあげて」
ミルナを支えるようにして、ギコとショボンは扉へ歩いていく。
川д川「お母さんの体、気持ち良かった?」
彼らが退出する間際、貞子は、にやつく声でミルナの背中へ言葉を落とした。
ツンの飛び出そうとしている気配を察し、内藤は咄嗟にツンのブラウスの襟を引っ張った。
ぐえ、と唸ったツンが、咳き込みながら首を摩る。
内藤を睨みはしたが、もう貞子の方へ向かう素振りは見せなかった。
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164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 20:58:14.16 ID:REyuzfcd0
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沈黙と、生温い空気が室内に立ち込める。
少しして、ギコが戻ってきた。
(;,゚Д゚)「……かなりショックだったみたいね。何言っても答えてくれないの」
ξ#゚听)ξ「……検事! 何故わざわざあんなことを言ったの!
真実を知ることが必ずしも正しいわけじゃないでしょう!?」
(*゚−゚)「僕の行いが正しいか正しくないかなんて知ったこっちゃない。
あなたに決められることでもない」
ξ;゚听)ξ「っ、それは──そうだけど、──でも、──あんな風に言う必要はなかった!!」
(*゚−゚)「彼は父親を悪とし、母親を善としていた。実際は逆だということにも関わらずだ。
それを正すことは間違っているでしょうか?」
ξ;゚听)ξ「……ミルナ君がどれだけ苦しむか!」
(*゚−゚)「この10年間、勘違いで憎まれ続けた父親の気持ちはどうなります?
こんな人でなしの母親から息子を引き離してあげたのは、紛れもなく父親だ」
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167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:00:21.26 ID:REyuzfcd0
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(*゚−゚)「父親が伊藤さんを河内さんに近付けたがらなかったのも、
言ってしまえば被告人のせいじゃありませんか。
その長くて綺麗な髪を見る度、被告人の姿と行いを重ねてしまっていたんだろう」
('、`;川「あ……」
──3日前、ペニサスは、中学生の頃から髪を伸ばすようになったと言っていた。
それ以前は、ミルナの父もペニサスに冷たくすることはなかったそうだから、
しぃの推測は恐らく正しいのだろう。
(*゚−゚)「父親だって多大な傷を負わされていた筈。
そういう方面に厳しくなってもおかしくはないでしょう」
(*゚−゚)「そんなことを知らないで、彼は……河内さんは、父親の愛を無下にしすぎている」
(;,゚Д゚)「……あたしも、何も知らないままの方が良かったとは言えないわ。
──ああして理解させた方がいいとも、思えないけれど」
内藤にも、ツンにも、しぃにも。
ミルナがどんな精神の人間か、分かりやしない。
彼がこれから事実を受け入れられるか、そうでないのかも分からない。
どちらが「ミルナのため」になるのかなど、今は誰にも決められなかった。
ともかく、もう、彼は全てを知ってしまった。
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168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:02:35.59 ID:REyuzfcd0
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('、`;川「……ミルナ……!」
ペニサスが駆け出した。
揺れる黒髪を見て、内藤は制止のため口を開いた。
貞子に似ているあの髪が、今のミルナにどんな思いを抱かせるか──
けれど、ペニサスは彼の「幼馴染み」だ。
彼女が傍にいることで、彼を安心させることも出来るかもしれない。
それらの迷いが、結局、内藤の声を発させなかった。
ペニサスが部屋を出ていき、法廷には貞子を含めて7人のみが残る。
(*゚−゚)「僕だって言いっぱなしで終わるわけじゃない。
苦手な分野だが、出来る限りのフォローはします。
……彼の母親は、僕の母によく似ている」
終わりの呟きは、とても小さかった。
憎悪を煮詰めたようなうすら寒さがあった。
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170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:04:33.31 ID:REyuzfcd0
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【+ 】ゞ゚)「……なぜ、実の息子に手を出した。何か理由はあるのか」
川д川「別に? 男漁りしてたら、懐かしいガキんちょが私好みに成長してたから、つまみ食いしただけ。
ああ、でも──あいつの父親にはちょっと腹立ってたから、
嫌がらせもあった、かなあ?」
5月、ミルナの父の前に一度姿を見せたのは、わざとだったという。
そうすることで彼がどんな行動に出るかを楽しんでいたのだと、貞子は話す。
──家の中で彼女の霊を見て、その後のミルナを見て。父は、どんな気持ちだったのだろう。
彼女は、河内親子を玩具か何かとしか考えていなかった。
貞子の生前も死後も、あの父子は彼女に振り回されたのだ。
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171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:06:47.81 ID:REyuzfcd0
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川д川「もう好きにしてちょうだいな。
最後にあの絶望した顔見て、何か満足しちゃった。
あいつこれからどうなるかしらね? 女の裸見る度に私のこと思い出すようになりゃ面白いけど」
(#゚ー゚)「……糞みたいな母親だな」
川д川「そうね。母親なんかより、女のままでいたかったのよ、私」
──そもそも欲しくて子供を産んだんじゃなかったもの。
どこまでも冷嘲的な貞子の最後の一言は、オサムが打った木槌の音で締めくくられた。
*****
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173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:09:31.91 ID:REyuzfcd0
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ξ゚听)ξ「初めは、事実が明らかになるように何とか誘導して──有罪判決を出してもらうつもりだったの」
法廷を後にして。
廃ビルの1階、奥。
すっかり荒れ果てたトイレの入り口の前で、ツンはぽつぽつと語った。
彼女の「筋書き」はどんなものだったのか、という内藤の質問への答えだった。
( ^ω^)「ツンさんはやっぱり分かってたんですかお」
ξ゚听)ξ「犯人だってことも、ミルナ君の母親ってこともね。
貞子さんと初めて会ったときに、全部見えちゃった」
しかし、ペニサスの証言が想像と全く違うものだったため、
ツンの計画は崩れてしまったのだそうだ。
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174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:12:09.39 ID:REyuzfcd0
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ξ゚听)ξ「ペニサスさんが見た『女の霊』って、てっきり貞子さんのことだと思ってたから。
……違うって言い出したとき、本当に驚いたわ」
( ^ω^)「それで裁判が延びたんですおね。どうして、貞子さんを無罪にする方向に切り替えたんですかお?」
ξ゚听)ξ「ミルナ君が来るって聞いたから。彼のために、事実は伏せたままにした方がいいと思った」
貞子が下手に実刑判決を喰らったら、自棄になり、全てを明らかにしてしまう恐れがあった。
そのために、「飛縁魔」に関する入れ知恵をしたのである。
ξ゚听)ξ「結局、こんな結果になってしまったけれど」
( ^ω^)「しぃさんが一枚上手だったんですお。……僕は、ツンさんの気持ちも分かりますお」
ツンは弱々しく笑って礼を言った。
しかしすぐに顔を曇らせ、首を振る。
ξ゚听)ξ「私は間違ってる。しぃ検事は、検事として立派に仕事をしてるけれど
私は駄目なの。やってはいけないことをしてる」
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175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:14:15.50 ID:REyuzfcd0
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ξ゚ -゚)ξ「……弁護士は依頼人を守るものでしょう。
なのに私は──依頼人が犯人だと分かると、味方のふりして攻撃するような真似をしてる。
今回だって、ミルナ君が来なければそうしてた」
ξ゚ -゚)ξ「弁護士として、本当に無能だわ」
もし今夜、ツンの計画通り、無罪の方向で事が進んでいたら。彼女が「弁護士」の職務を全うしていたら。
罪を犯した者を、また世に放つことになっていた。
そうすればきっといつか、同じことが起きる。
そのことを考えれば、罪が確定している被告人をそれとなく有罪に導くのは、
決して間違いではない──と内藤は思うのだが。
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177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:16:07.74 ID:REyuzfcd0
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( ^ω^)「ツンさん、有罪の人を自ら無罪にするように動いたのは今日が初めてですかお」
ξ゚ -゚)ξ「……ん、そうね……そうだわ」
そのせいで、自分自身に困惑しているのだろう。
信念を貫いたしぃ、信念を曲げ、失敗したツン。
今のツンの思いは、どんなものか。
励ましの言葉も浮かばない。
こういうところが子供なのだ。
己に苛立ちながら、内藤はツンに「お疲れ様でしたお」とだけ言った。
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178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:18:56.65 ID:REyuzfcd0
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('、`*川「──終わった?」
ビルを出ると、ペニサスが走り寄ってきた。
待っていたのだろうか。
ξ゚听)ξ「貞子さんは有罪判決。
霊界で刑を受けて、刑期を終えたら強制浄霊の対象になるわ」
('、`*川「んっと……」
( ^ω^)「きちんと罰せられましたお」
('、`*川「……そっか。良かった。許せなかったんだ、ミルナに酷いことして」
ほっと息をつくペニサス。
きょろきょろ、辺りを見渡して「けんじさん達は?」と首を傾げている。
ξ゚听)ξ「裁判長達と後始末。──ミルナ君とショボンさんはどこに?」
('、`*川「眉毛の人が、ミルナのこと車で家まで送ってってくれた。
ミルナ、具合悪そうで……私ともあんまり話したくないみたいで」
髪の毛の先を見つめ、ペニサスが沈んだ声で言う。
やはりあのとき、止めておくべきだったろうか。
ξ゚听)ξ「そう……ペニサスさんは一緒に行かなかったの?」
('、`*川「眉毛の人、私が近付くと顔赤くして色々喋るから何か恐くて」
( ^ω^)(青ネギさん……)
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180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:22:22.17 ID:REyuzfcd0
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('、`*川「あ、それでな、ミルナがね、……お礼ゆっといて、って」
( ^ω^)「お礼?」
('、`*川「うん。べんごしさんは、ミルナに気を遣ってけんじさんやひこくにんを止めようとしてくれたし……。
……ほんとはちょっとけんじさんの発言で嫌な思いもしたけど、
でも、みんなのおかげで事件解決したんだから、お礼しなきゃ駄目だって」
('、`*川「……ミルナは大丈夫だよ。頭いいから考えすぎるとこあるけど、しっかりしてるから。
ちゃんと分かってるよ。
親父さんのことも、きっと──絶対大丈夫。私もついてるしさ!」
「だから」。
一秒の間の後、ペニサスは、嬉しそうに笑った。
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181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:23:30.32 ID:REyuzfcd0
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('ヮ`*川「ありがとな! おばさん!」
ξ゚听)ξ
何故このタイミングでそれを。
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182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:25:24.85 ID:REyuzfcd0
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('、`*川「内藤もありがとうな、色々教えてくれて……」
( ^ω^)「はあ……あの、ペニサスさんは本気でツンさんにお礼言ってるんですかお」
('、`*川「当たり前だろー」
ξ#゚听)ξ「じゃあ『おばさん』撤回しろや!!!!!」
('、`;川「おわっ、な、わあっ、髪ぐしゃぐしゃすんなよおっ」
(*゚ー゚)「……何してるんです、騒がしい」
ツンとペニサスがきゃあきゃあ騒いでいると、冷ややかな声が割り込んできた。
しぃとギコがビルから出てくるところだった。
(,,゚Д゚)「ミルナ君達は帰ったの?」
( ^ω^)「青ネギ……や、ショボンさんが送ってくれたそうですお」
('、`*川「あ──けんじさん、けいじさん、えっと、お世話になりました!
ミルナが、ありがとうございましたってゆってた」
(*゚ー゚)「ありがとう? 僕に?」
ペニサスが先程話したミルナの伝言を繰り返すと、しぃは心なしかぽかんとした表情で、「そうか」と返した。
そのまま考え込み、やがて、ふ、と微笑む。
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183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:27:18.85 ID:REyuzfcd0
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機嫌がいくらか良くなったようなので、内藤はしぃに近寄り、小声で話しかけた。
( ^ω^)「……しぃさん。すみませんでしたお」
(*゚ー゚)「何がだい」
( ^ω^)「しぃさんはしぃさんのやりたいようにやってくださいお」
(*゚ー゚)「元よりそのつもりだよ」
2日前のように、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。
ギコが加わってきて逃げたくなったが、おとなしくされるがままにしておく。
気が済んだのか、内藤から離れたしぃが、腰に手を当てツンに振り返った。
(*゚ー゚)「今回は疑いようもなく僕の勝ちだ!」
ξ゚听)ξ「そうね、おめでとう」
(*゚ー゚)「これからもこの調子で勝たせてもらいます。
くれぐれも、僕に負けて噎び泣くためのハンカチをお忘れなきよう」
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184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:29:44.22 ID:REyuzfcd0
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得意気なしぃ、和やかなギコ、苦笑するツン。
ツンの肩を叩くペニサス──
('、`*川「べんごしさん、べんごしさんは凄かったけど、でも、
ひこくにんにああいう嘘つかせるのはもう駄目だぞ! 私頭悪いけど、良くないことなのは分かるよ」
だから。何故このタイミングで。
ツンが言葉を詰まらせる。
どうフォローしたものかと内藤が静かに狼狽えていると、腕を組んだしぃが一歩前に出た。
(*゚ー゚)「罪悪感を覚えるような感性は持ってるんですね、安心しました。
──僕は元からあなたを敵だと思っていますし、弁護士ってものも馬鹿にしています。
寧ろああいうやり口が当たり前なのだとも考えている」
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186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:32:11.25 ID:REyuzfcd0
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(*゚ー゚)「ですから、どうぞ好きなようにやってください。
あなたがどんな戦法で来ようと──僕が納得出来ないものは全力で潰すだけですので」
言い終えると、しぃは立ち尽くすツンの横を通り、帰路へとついた。
ツンはといえば、目を丸くしている。
('、`*川「……かっこいー。プロってやつだ」
(,,゚Д゚)「でしょー。……あたしも、ツンのやり方に文句も何もないわ。
それじゃあね、おやすみ」
ギコが投げキッスという視覚的暴力をぶちかまし、内藤の冷たい目を受けながらしぃの後を追う。
振り向き、彼らの背中を見送るツン。
その横顔が緩んで──内藤は、安堵した。
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188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:36:50.71 ID:REyuzfcd0
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数分前のやり取りを思い出す。
( ^ω^)『そういえば、何で僕を2度目の審理に呼んだんですかお。必要なかった筈なのに』
ξ゚听)ξ『最初に呼んだのは、やっぱり、ミルナ君が来るなんて思ってなかったからよ』
( ^ω^)『来ると分かった時点で、僕を追い返せば良かったんですお。
僕がいなけりゃ──少なくとも祖母の件で時間を稼げましたお』
ξ゚听)ξ『……恐かったの。
真実が明らかになっても、ならなくても、結果は全部私のせいだから。
せめて、内藤君に傍にいてほしかった』
頼られるのが嬉しいなどと、思いたくはないが。
悪い気はしない。
噎び泣くためのハンカチなど、必要ないだろう。
しぃやギコや──内藤がいれば、ツンは、最後には笑える筈だ。
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189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:39:00.07 ID:REyuzfcd0
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( ФωФ)「……」
ビルから離れ、近くの建物に跳び移る。
さらにその隣のビルへ、そしてまた隣へ──
着地し、しゃがみ込む。
両手も地面へついたその体勢は、犬猫が座る姿に似ていた。
( ФωФ)(あの女……)
男は思考する。
──今夜も幽霊裁判とやらを覗かせてもらった。
気配は極力殺した筈だが、やはり裁判長にはバレていたようだ。開廷の直前、天井越しに視線を寄越された。
何も言われなかったということは、ただの傍聴人だと解釈されたのだろう。
しかし、それにしても。金髪の女。あれは何だ。
裁判が終わった後に、にやけ顔の少年と妙な話をしていた。
全てが見えていた、と。
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191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:40:50.93 ID:REyuzfcd0
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( ФωФ)(……)
仮に、彼女が事件の全貌を裁判が始まる前から知っていたというのなら──
そういったことが可能な何かを持っているのなら。
厄介だ。
あの女に近付くのは避けたい。
この町をあまりうろついていれば、接触する確率が上がってしまう。
( ФωФ)(警戒すべきは、おばけ法よりあの女か)
で、あるならば。
さっさと事を済ませた方がいい。
──男は病院の方向を確かめ、また、猫のような動きで移動を始めた。
*****
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192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:42:23.14 ID:REyuzfcd0
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ミセ*- -)リ
よく眠っている。
眠り続けている。
病室の前にいた警官は、先ほど席を外したばかり。
今がチャンスだ。
早く、とどめを刺してしまおう。
目覚める前に。
今まで上手く逃げていたというのに、この女のせいで捕まるような事態になっては堪らない。
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194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:44:10.22 ID:REyuzfcd0
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男は手を伸ばした。
首を絞めるのでも、繋がっている器具を壊すのでも、何でもいい。
殺さなければ──
('A`)「──そこで何してんだ?」
( ФωФ)「!!」
振り返る。
初めて顔を見る男が、病室の入口付近に立っていた。
誰だ。ミセリの知り合いか。通りすがりの霊か。
とにかく相手が距離を詰めてきたので、男は踵を返し、窓をすり抜けた。
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196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 21:46:03.21 ID:REyuzfcd0
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(;ФωФ)「……くっ!」
(;'A`)「おい、何なんだお前!」
参った、追ってくる。
目についた家屋に飛び込み、適当な場所から外へ出る。
しばらく同じことを繰り返すと、向こうも何とか付いてきてはいたが、間もなく距離があき始め、
ついには諦めたのか立ち止まったようだった。
その隙に再び建物に入り、隣り合うビルや店を通り、屋根へと抜けた。
どうやら撒けたようだ。
男は溜め息をついて、次にミセリの息の根を止めるべき機会について思案し、
やがて疲れたのか猫のように丸まって体を休めた。
case5:終わり