ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

case5:誘惑罪/後編

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63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:52:17.16 ID:2yP16kawO
 
(;*゚ー゚)(;゚д゚ )「は?」

('、`;川「ミルナの母ちゃんが何歳で死んだんだか知らないけどさ」

 ペニサスも言いづらそうだ。
 ツンを始めとした、この場の全員がペニサスを注視して続きを待つ。
 3日前の法廷でも、こんな状況になったような。


('、`;川「私が見たの、母親っていうより……おばあちゃんってくらいの年齢の人だったよ?」


ξ;゚听)ξ(;*゚ー゚)(;,゚Д゚)「──はああああああ!!?」


 ペニサスがびくりと肩を跳ねさせ、内藤にしがみついた。
 各々言いたいことがあるのだろうが、まずは、一番手近な場所にいるツンが詰め寄る。

ξ;゚听)ξ「何で最初に言わないの!!」

('、`;川「ゆわなきゃいけないなんて聞いてないし……」

 ペニサスは「女」としか言っていなかった。
 たしかに老婆でも女は女だが、しかし、何というか。

(;-д- )「……お前は言葉が足りない」

('、`;川「だって」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:54:11.27 ID:2yP16kawO
(#゚д゚ )「昔っから……! いちいち補足の質問されなきゃ、まともに説明出来ないのか!」

(;、;*川「な、何だよー! よかれと思ってしたのに! ミルナのばかー!」

(#゚д゚ )「そんなんだから学校で何かある度に先生に勘違いされて無駄に怒られるんだ!」

(;、;*川「だってミルナはいっつも私の言いたいことすぐに分かってくれてたからー!」

(#゚д゚ )「付き合い長けりゃそうなるわ馬鹿!」

(;、;*川「ばかってゆーほーがばかだ! ばかばかばか!」

(#゚д゚ )「お前の方が言ってるじゃないか!」

(;´・ω・`)「ど、どうどう」

(;,゚Д゚)「痴話喧嘩はその辺で……。
     ……いや、でもちょっとまた衝撃の事実が来たわねえ」

【+  】ゞ゚)「結果的に謎が増えたわけだが」

 しぃが額に手を当て、頭痛を堪えるような顔をしている。
 内藤にしがみついたまま口を尖らせていたペニサスだったが、ふと、気が抜けたように笑った。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:56:27.40 ID:2yP16kawO
 
('、`*川「あんなに元気に怒るミルナ久々に見た」

( ^ω^)「そりゃ良かったですお」

 彼女にとっては、裁判の行く末よりミルナの方が重要なのだ。

 ミルナからしてみれば、母の愛の表れだと信じていた声が見知らぬ老婆のものだったわけで。
 彼の心境も複雑極まりないだろうに。

(;*゚ー゚)「……その女性に心当たりは?」

(;゚д゚ )「あ、ありませんよ!」

(;*゚ー゚)「じゃあ誰だってんだ!!」

(;゚д゚ )「俺が知りたいくらいだ!」

(;,゚Д゚)「ま、待って待って。冷静に考えましょ、冷静に。
     ミルナ君のことを知ってて、気にかけてくれる年配の女性っていったら──」

(´・ω・`)「……祖母ですかね?」

(;,゚Д゚)「それよ!」

 ギコに賛同され、ショボンは照れ臭そうに頭を掻いた。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:58:15.33 ID:2yP16kawO
 
(;*゚ー゚)「あなたの祖母は亡くなってるんですか?」

(;゚д゚ )「父方の祖母は存命ですけど、母方の親類とは全然関わりがないんで、どうだか」

(´・ω・`)「祖母ではなく曾祖母、あるいはもっと上の御先祖、という可能性もありますが」

(;,゚Д゚)「もうっ! どこかに本人いないの!? ミルナ君のこと見守ってんでしょ!? 出てきてよ!」

【+  】ゞ゚)「河内ミルナに危機が迫っているときしか出てこられないのかもしれないな」

川*゚ 々゚)「あっあっ、それ、あれ、ひーろーはぴんちのときに現れるってやつ!」

 ちょっとした騒ぎだ。

 内藤は、これらを収束させ得る術を知っていた。
 知っていたというか、いま思いついたというか。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:00:10.77 ID:2yP16kawO
 
( ^ω^)「もしかしたら、僕、その人の写真持ってるかもしれませんお。
       写真っていうか動画ですけど」

(;*゚ー゚)「何だと!」

(;,゚Д゚)「出た! いざというときに役立つ証言や証拠を出す男!」

 ポケットから携帯電話を出す。
 ツンの顔を窺うと、彼女は何を言うでもなく目を逸らした。
 しまった。先にツンへお伺いをたてるべきだったか。

 しかし言ってしまった手前、引っ込みもつかない。
 内藤は動画のフォルダを開いた。

(,,゚Д゚)「あ……待って、その携帯ちょっと借りていいかしら」

( ^ω^)「構いませんけど」

(,,゚Д゚)「データどれ?」

( ^ω^)「動画は一個しかないんで、それですお」

 ギコに携帯電話を投げて渡す。
 ギコはいったん外へ出て、そしてやけに大きな荷物を抱えて戻ってきた。
 ノートパソコンやプロジェクターが机に並べられる。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:02:17.80 ID:2yP16kawO
 
(*,゚Д゚)「こんなこともあろうかと! ──いっぺん言ってみたかったわこれ。ショボンさん手伝ってくれる?」

(´・ω・`)「あっ、はい!」

 機械とスクリーンをセットしていき、最後にパソコンと携帯電話を繋いだ。
 部屋を暗くする。プロジェクターが唸った。
 検察席の斜め後方に設置されたスクリーンに、パソコンの画面が表示された。

川*゚ 々゚)「ほわあ」

【+  】ゞ゚)「くるうは本当にこの映写機が好きだな」ワクワク ソワソワ

 ギコは動画ファイルをパソコンへ移し終えると、携帯電話を返してくれた。
 次いで、かち、とファイルをクリックする音が鳴る。
 一瞬スクリーンが暗くなり、やがて映像が流れ始めた。

 初めのカットは、それがテーブルの上を映していると分かる程度のものだった。
 コップ、ハンカチと生徒手帳、それからアルバム。

 椅子に座って休んでいたミルナが、身を乗り出した。

(;゚д゚ )「う、うちのテーブルじゃないか! いつ撮った!?」

( ^ω^)「この間ミルナさんの家にお邪魔したときに」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:04:14.24 ID:2yP16kawO
 
ξ゚听)ξ「……これも私が内藤君に頼んだの。
      ミルナ君の過去が分かるような情報を持ってきてちょうだいって」

('、`;川「え、それでアルバム盗み見したの?」

( ^ω^)「いえ……。棚に何枚か写真が飾ってあったんですけど、
       自然公園かどこかを背景に、赤ん坊のミルナさんを抱えたお父さんの写真があったんですお。
       で、ミルナさんがこの町に来たのは7歳の頃だっていうペニサスさんの話を思い出して」

( ^ω^)「それならこの写真は、引っ越してくる前の写真だろう──と思って。
       一か八か、賭けに出てみましたお」

(*゚ー゚)「……あまり訊きたくもないが、どんな賭けだい」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:07:30.09 ID:2yP16kawO
 
(*^ω^)「『あれっ、この写真! 何だか背景に見覚えがありますお! どこで撮ったんですかお?』」

( ^ω^)「──と。そしたら、S県の某市だと言うので」

(*^ω^)「『わあ奇遇! 実は僕、昔そこに住んでたんですお!
        懐かしいなあ、うちは親がカメラ嫌いで、写真なんて残ってないんですお。
        ああ、あの町には楽しい思い出がいっぱいあったなあ……こういう写真、憧れてたなあ……』」

( ^ω^)「──と切なげな顔をしてみせたらば、
       それならうちの写真で良ければ少し見ていくかと提案してもらえたので、是非にと。
       あ、もちろん僕、S県なんて行ったこともありませんお」

川;д川「ど、度胸ありますね……」

川#゚ 々゚)「嘘つき嫌い」

 適当な思い出話をでっち上げつつ、内藤はアルバムを見せてもらった。
 そしてミルナの父親が席を外した隙に、携帯電話でアルバムの写真を撮影したのである。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:09:43.57 ID:2yP16kawO
 
(,,゚Д゚)「どうしてわざわざ動画で?」

( ^ω^)「それはツンさんから事前に指示が」

ξ゚听)ξ「いっぺんに複数のものを撮影するときは、動画の方がいいわよって。
      ほら、ぱしゃぱしゃ何回も音たててたら見付かる恐れがあるでしょう。
      一枚一枚撮影する場合はタイムロスもあるし」

(*゚ー゚)「……こそ泥みたいな真似を」

ξ゚听)ξ「そうね。私もそう思うわ」

 ギコは、内藤が話し始めたときに一時停止していた動画を再開させた。
 視点が移動し、アルバムにカメラが寄る。

 若い頃の父親と幼いミルナの写真。
 ミルナと、友人であろう少年少女が遊んでいる写真。
 夕焼けを背にポーズをとるミルナの写真──

【+  】ゞ゚)「ん」

 ある写真が映ったところで、オサムが声を発した。
 内藤もまた、そのシーンで「止めてください」と口を開く。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:11:54.58 ID:2yP16kawO
 
( ^ω^)「この写真ですお。たぶん、ミルナさんのお祖母さん」

 一軒家の前で、ミルナと父親、そして初老の夫婦が並んでいた。

   【 (゜д゜@ 】

 女性の方は小柄で髪が短い。
 それに最も反応してみせたのはペニサスだった。

('、`;川「この人! 見たのこの人!」

【+  】ゞ゚)「証言と一致するな。他の写真はあるか?」

(,,゚Д゚)「とりあえず停止解除するわよ」

 祖母であろうその人は、他の写真でも確認出来た。
 ミルナもよく懐いているようで、祖母とのツーショットが多い。

( ゚д゚ )「……母さんの写真は、一枚もないんだな」

(´・ω・`)「さすがに、この写真の方はお母様ではないでしょうしね」

 ぱたぱたという足音がして、動画は終わった。
 ここで父親がリビングに戻ってきたのだ。

 パソコンを閉じ、プロジェクターのスイッチが切られる。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:13:37.60 ID:2yP16kawO
 
 内藤は携帯電話をポケットにしまいながら、すみません、とツンに小声で謝った。
 ツンの返事はない。怒ってはいなさそうだが、勝手なことをしてしまったことは肌で感じていた。
 きっと、ここで出すべき証拠ではなかったのだ。

【+  】ゞ゚)「しかし、弁護人はなぜ河内ミルナの過去を知りたがったんだ?」

ξ゚听)ξ「……どんなに小さなものでも、役立てられる証拠がないだろうかと思いまして。
      結果、不利になってしまいましたが」

 くすくす、しぃがわざとらしく肩を揺らして笑う。

(*゚ー゚)「何にせよ内藤君のおかげで証明は完了です。
     河内さんの祖母が彼の傍にいた。色情霊は別にいる。
     河内さんは、被告人がその色情霊に似ていると既に証言した」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:15:58.54 ID:2yP16kawO
 
(*゚ー゚)「そもそもが、5分と経たずに終わる筈の審理でした……。
     弁護側の証人のおかげで妙な遠回りをしてしまいましたが、
     結果として、こちらの主張は依然変わりません。裁判長」

【+  】ゞ゚)「うん?」

(*゚ー゚)「被告人は有罪です、よね?」

 先程の笑いとは裏腹に、言葉尻に余裕とは正反対の色が滲んでいた。
 大抵この段階になってツンに逆転されるのがお決まりとなっているせいだろう。

 オサムは、どこを見ているんだか分からぬ目を周囲に向けて
 最後に貞子を視界に収めると、そうだなあ、と頷いた。

【+  】ゞ゚)「疑いようは無いな」

川;д川「──!」

 貞子が震える手で口元を押さえた。
 力なく首を振り、ツンに顔を向ける。ツンは目を伏せた。

 それらの動作は何らかの意味を持っていたのだろうか。
 意味などなかったのだろうか。
 どちらにせよ、貞子は出方を決めかねているようだった。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:17:43.12 ID:2yP16kawO
 
 ほんの少しの間をあけて。
 オサムが木槌を振り下ろす。

【+  】ゞ゚)「犯人と被告人に共通点は多く、
        弁護側は被告人が事件に無関係であることの証明が出来ないままだ」

 ひ、と貞子の喉からか細い声が漏れた。

 その怯えようが痛ましく、ペニサスは同情しているらしかった。
 ミルナも未だ貞子と犯人を同一人物だと確信出来ていないのか、不安げである。

【+  】ゞ゚)「……消滅処分とまでは行かないが、強制浄霊は視野に入れるべきだな」

 アサピーの裁判で聞いた言葉だ。
 「消滅処分」は霊魂を完全に消し去ることで、
 「強制浄霊」は霊魂を浄化して天へ送ること。浄霊されたおばけは、この世に戻ることはないらしい。

 刑としては恐らく消滅処分が一番重く、その次が強制浄霊、さらにその次が霊界送り──といったところだろう。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:19:34.36 ID:2yP16kawO
 
川;д川「……ま」

 貞子の囁きに、オサムがぎょろりと目を向ける。
 貞子は怯みながらも、意を決したように、大きく口を開いた。

川;д川「待ってください! あの──私、私は! ……黙っていてごめんなさい、私、」

 右手が頬を撫でる。
 いや、撫でるというより、指先で軽く圧迫するようだった。

 一度言葉を切り、呼吸を2つ。
 そして、それは落とされた。



川;д川「……私──飛縁魔なんです!」


 

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:21:09.57 ID:2yP16kawO
 
 ようやく口にされた単語は、内藤には聞き馴染みのないものだった。

('、`;川「……ひのえんま?」

(;*゚ー゚)「飛縁魔!?」

 おうむ返しという点では、2人の反応は同じだ。
 しかし声に含まれる感情は全く違う。

(;゚д゚ )「何だそれ?」

 ペニサスとミルナはぽかんとしている。
 内藤もわけが分からず首を傾げていたが、理解出来ていないのはこの3人だけだったようだ。
 例によって、ツンに説明を求める。

( ^ω^)「ツンさん」

ξ゚听)ξ「……妖怪よ。『縁障女』とも言うわね」

 えんしょうじょ。

 聞き覚えがある。
 例の掲示板で見た言葉だった筈だ。妖怪のことだったのか。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:23:55.32 ID:2yP16kawO
 
川 ゚ 々゚)「こういうのはショボンが詳しいね」

(;´・ω・`)「は、はい。飛縁魔っていうと──とても美しい女の姿をした妖怪で……
      魅了された男は心を惑わされ、全てを失い、とり殺されるっていう……。
      元々は仏教にまつわる妖怪なんですけど」

ξ゚听)ξ「女に溺れると破滅するぞ、って戒めのために生まれたんでしたっけね」

 腕を組んで俯いていたオサムが、何かに思い至ったかのように顔を上げた。
 木槌で左手を打つ。かん、ではなく、ぽん、という音が響いた。なんとも空気を読む木槌だ。

【+  】ゞ゚)「なるほど、火の玉や焦げ跡が見られたのはそのせいか」

(,,゚Д゚)「え……っと、ごめんなさい、あたしはよく分からないんだけれど。どういうこと?」

(;´・ω・`)「ひのえんまは『火の閻魔』と掛けているとも言われてるんです。
      他にも『丙午(ひのえうま)』から来てるとか……真実は分かりませんが」

(;´・ω・`)「とにかく、そういった言葉ありきで生まれた妖怪ですから。
      習性……というか性質は、それらの言葉に依るところが多くなると思います」

(,,゚Д゚)「そっか、火とも関係が深いわけね」

川 ゚ 々゚) ヘー

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:25:59.60 ID:2yP16kawO
 
川;д川「……目印として……焦げ跡をつけていました。そうすれば、次にまた行くときに迷わずに済むので……」

 火の玉の方は無意識だと思います──と加える貞子の声は消え入るようだ。
 オサムがゆっくりと頷く。

【+  】ゞ゚)「自分が犯人だと認めるんだな」

川;д川「……はい。恐くて──無実だと嘘をつきました。本当に、申し訳ありません……」

 貞子は深々と頭を下げた。
 それに合わせて、長髪がさらさらと流れるように前へと滑る。
 震える声が、今にも泣きそうに聞こえる。

(;*゚−゚)「ツンさん。……弁護人。あなたはこのことを知っていたんですか」

ξ゚ -゚)ξ「……いいえ」

 問いへの答えは、否定。
 しかし──くるうの鼻が、ひくひくと動いた。

川 ゚ 々゚)「嘘のにおい」

 空気が罅割れる音があるとしたら、きっと今この瞬間に鳴っていたに違いない。
 瞬時に、しぃの顔が紅潮する。

(#゚−゚)「また……そうやってわざと事実を隠して、僕を踊らせて、最後に全てを明かして引っくり返す!
     それで僕に恥をかかせて楽しいのか!?」

(;,゚Д゚)「しぃ」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:27:26.11 ID:2yP16kawO
 
ξ゚听)ξ「そんな無駄なことで遊ぶほど暇じゃないわ。……いつだって精一杯よ」

(#゚−゚)「……っ、……っ、白々しい……!」

 たしかに過去、彼女はツンにまんまとしてやられてきた。
 しかし、どうしてそこまで怒るのか、内藤には分からなかった。
 今は検察側が有利な状況にある筈だからだ。

('、`;川「け、結局ひこくにんが犯人なの?」

( ^ω^)「ですお。……貞子さんが罪を認めたんなら、今度こそこれで終わりですおね?」

(;´・ω・`)「それはそうなんですが……」

 ショボンが言いにくそうに口ごもり、横目でしぃを見る。
 睨み返され、慌てて目を逸らしていた。

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:29:28.96 ID:2yP16kawO
 
ξ゚听)ξ「──裁判長。弁護側の『無罪』という主張を撤回させてください。
      代わりに、酌量減軽を願います」

【+  】ゞ゚)「まあそうなるな」

('、`;川「しゃくりょーげんけー?」

ξ゚听)ξ「罪は認めるけれど、事情を酌んで、刑を軽くしてほしいってこと」

( ^ω^)「事情って。軽くなる事情が何かあるんですかお?」

【+  】ゞ゚)「うむ……。男を誘惑するのは飛縁魔の習性だし、そうしなければ逆に飛縁魔が存在できない。
        何より、先ほど弁護人が言った通り、『戒め』のために生まれた妖怪だ。
        全てが害悪なわけではないだろう」

( ^ω^)「……でも梅雨の、弟者の事件の──ハインリッヒさんでしたっけ。濡れ女子とかいう。
       あの人だって、言ってしまえば自分の習性通りに行動したわけですおね。
       なのに、ばっさり実刑食らったじゃありませんかお」

【+  】ゞ゚)「あれは、幾度に渡り故意に命を奪っていた。自らの手で、必要もないのに、だ。
        だが今回の被告人は──」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:32:19.86 ID:2yP16kawO
 
ξ゚听)ξ「……明らかになっている被害状況を見る限り、
      犯人が直接手を下して被害者にトドメを刺したものは無いわ」

 そうか、と内藤は納得し、
 そうなのか?、とミルナが小首を傾げる。

(;゚д゚ )「死んだ人もいるんだろ?」

ξ゚听)ξ「薬の過剰摂取、それによる転落事故。首吊り自殺。
      被害者自身のミスや意思によって死んでるの。
      誰も彼も正常な判断は出来る年齢よ。……自己責任ね」

ξ゚听)ξ「さらに言えば、何度も犯人を受け入れてたのも自己責任。
      飛縁魔はあくまでも、女に惑わされることを戒めるだけの妖怪だから」

【+  】ゞ゚)「しっかり拒否していれば、あのような事態は免れた筈だ」

( ^ω^)「……あ」


   (´<_` )『……急に嫌な予感がして、女の手を払いのけたところで目が覚めたって……』


 モララーは、拒否をした。
 それ以降は夢を見ていない──と思う──ので、拒絶のおかげで助かったということだろう。

 その話をオサムにも聞かせると、彼は木槌で自身の肩を叩きながら頷いた。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:34:24.83 ID:2yP16kawO
 
【+  】ゞ゚)「やはり飛縁魔か」

川;д川「一度断られれば、その人のところには行かないようにしていました」

( ^ω^)「それだと、誘惑罪はどうなるんですかお?」

【+  】ゞ゚)「おばけ法において、おばけが持つ習性ゆえに起きた事件は
        その行為の必要性によって、法律が適用されるかどうか決まってくる」

('、`;川「?」

(;゚д゚ )「……『そうする必要があった場合は許される』?」

(,,゚Д゚)「まあ、そういうこと」

 貞子の行いは、彼女自身にとって必要なことだった。
 飛縁魔としてするべきことをしただけであって、その後の結果は被害者が齎したもの。
 そういうことらしい。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:36:17.89 ID:2yP16kawO
【+  】ゞ゚)「故に、誘惑罪が適用されたとしても、ごくごく軽いものになる。
        罪を否認していたし死人も出ているから当然ある程度の指導は入るが、
        霊界で刑を執行するほどではないかもしれない」

 そうは言っても、内藤は受け入れきれない。

 貞子が飛縁魔だということは別にいい。
 しかし、手段が──「ずるい」というか。
 それはあまりに幼稚な言い方だし、どこがどうずるいのかも、自分では分からない。

 ともかく被害者の落ち度だというのは違う気がしてならなかった。
 具体的な指摘が出来ないので、ひとまず静観する。
 黙っていても、しぃが異論を唱えるだろうと分かっていた。

(;*゚−゚)「被告人に非はないと言うんですか!? 被害者の方が悪かったとでも!?」

【+  】ゞ゚)「そこまでは思わないがな。
        だが飛縁魔はそうせざるを得ない妖怪だし、
        被害者には危機意識が足りなかった」

(;*゚−゚)「危機意識? 『夢』なんですよ!?
     現実の出来事ならまだしも、被害者達にとっては夢の中の話だったんだ!
     それを頭から警戒しろと!?」

 内藤は、こっそり首肯した。
 「ずるい」と思った理由は、そこにあった。

 たとえばミルナだって──先程の反応からして──飛縁魔という存在は知らなかった。
 まして貞子が飛縁魔であることも、受け入れた際の弊害も当然知らない。
 その上で、夢の中に現れた女の誘惑に乗ってはいけない、なんて、少々無茶があるではないか。

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[さるってしまった] 投稿日:2013/09/13(金) 19:40:16.51 ID:REyuzfcd0
 
 鼻息も荒く反論するしぃを、ギコとショボンが宥める。
 オサムの返答は、厳しいものだった。

【+  】ゞ゚)「夢のせいで実生活に悪影響が出たのには気付いていた筈だ。
        そうだろう、河内ミルナ」

(;゚д゚ )「……、……は、……はい」

【+  】ゞ゚)「他に判明している被害者のほとんどは、あの──すれっどと言ったか。あれに近況を報告していたな。
        自分が見ている夢が異常なものだと分かっていて、
        それでありながら依然として夢を享受していたというのは、自業自得ではないのか」

(;*゚−゚)「しかし──」

【+  】ゞ゚)「検事。……俺も、そうそう人間の味方ばかりしていられない」

 しぃが口を噤む。
 オサムの声はいつも通りに冷静で、しぃとの間に生まれる激しい温度差が空気を引き締めていた。

【+  】ゞ゚)「これは幽霊裁判だ。人間の損得だけで判決を出すわけにはいかないだろう。
        人間だからといって無条件に贔屓し、一方的に妖怪が悪いと判ずるのは違う」

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:42:09.86 ID:REyuzfcd0
 
【+  】ゞ゚)「『おばけ』にもそれぞれ事情があって──だからこそ、
        何か事件が起きたときに、それが正しいことか間違いなのか……
        償うべきか否かをしっかり見極める必要がある。
        ここはそのための場で、おばけ法はそのための法だ」

(;*゚−゚)「……」

【+  】ゞ゚)「違法行為に及んだとしても、そこに、やむにやまれぬ事情があったならば罪に問わない。
        そういう決まりはお前たち人間の法律にもあった筈だ」

【+  】ゞ゚)「俺だって被害者に同情する。しかし、法は法だ」

(;* − )

 しぃは俯き、完全に沈黙した。
 彼女を見るオサムの目付きには、これといった温度を感じない。
 決して冷たい目ではなかった。しぃの言い分を理解出来ないわけではないのだろう。

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:44:21.33 ID:REyuzfcd0
 
川*゚ 々゚)(オサム……好き……青白い首絞めたい……)

【+  】ゞ゚)「……書物に残るような妖怪なら、大体は会ったことがある。
        大昔に、飛縁魔だという女も見た。被告人とは違う女だが。
        ともかく彼女たちは『役割を果たさなければならない』妖怪だった。それが存在意義だからな。
        こればかりは本人にどうこう出来るものではない」

【+  】ゞ゚)「ただ、気になることがあるのも事実。
        男の前に現れる頻度だ。被告人はそれが多いように思う」

 いんたーねっとで報告している者以外にも被害者はいる筈だろう──というオサムの指摘に、
 貞子は少し詰まってから、首を縦に振った。

川;д川「それは……。……はい。たしかに、そうです。すみませんでした……」

【+  】ゞ゚)「そうでなければならない理由はあったか?」

川;д川「……、いいえ……」

(;,゚Д゚)「いやー、掲示板で『えんしょうじょ』って書き込みは見てたんだけどねえ。
     男を誘惑するおばけって連想から書き込んだだけだろうし、スルーしてたわ。
     まさか核心をついてたとは……」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 19:46:23.55 ID:REyuzfcd0
 
【+  】ゞ゚)「被告人が飛縁魔である証拠は
        本件での行いと、火の玉などの件で充分だろうか、ショボン」

(´・ω・`)「そうですね……敢えて言うなら、容姿の点が気になりますが」

【+  】ゞ゚)「数日前に確認済みだ。絶世の、というほどかは分からないが整っている方だな」

 貞子が、以前と同じように、左側の前髪を持ち上げる。
 ショボンは顔を赤らめ、なるほど、と呟いていた。
 何がなるほどか。

('、`;川「……ううーん……」

( ^ω^)「ペニサスさん?」

 ふとペニサスに目をやると、彼女は前のめりになりながら貞子を注視していた。
 貞子が髪を下ろす。

('、`;川「何かなあ……気になる」

 ペニサスは視線を別の方向へ移し──あ、と声をあげた。
 何かに気付いたようだったが、訊ねようとした内藤の口は、木槌の音によって閉ざされた。

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