-
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 17:59:27.22 ID:2yP16kawO
-
(;д;@『ごめんなさい、ごめんなさい、私が悪いの……!』
女は何度も謝っていた。
土下座すら厭わず謝り続けたが、対する男は許す素振りも見せなかった。
(#゚∋゚)『二度と──二度と俺にもミルナにも近付くな!』
(;д;@『お願いします、ミルナの世話だけはさせてください!!
あの子が心配なの! どうかあの子だけは──』
彼女を責めることに何の意味もないと、男は分かっていた。
それでも怒りばかりが湧いてくる。
再び怒声を浴びせ、男は踵を返した。
(;д;@『ミルナ、……ミルナ……』
去っていく男の背に女の弱々しい声が縋りつき、余韻も残さずに消えていった。
-
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:01:19.16 ID:2yP16kawO
-
case5:誘惑罪/後編
-
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:03:27.18 ID:2yP16kawO
-
8月10日、夜9時。
【+ 】ゞ゚)「揃ったか」
廃ビルの3階にて、幽霊裁判が開かれようとしていた。
いつものように電気は通されているが、どことなく薄暗い。
弁護人席に並ぶツンと内藤、ペニサス。
対する検察席にはしぃ、ギコ、そして、
('、`;川「……ミルナ、来たんだ」
( ゚д゚ )「……」
河内ミルナ。
入廷したとき、内藤はミルナを見て驚いてしまった。
2日前の公園では、証人として呼ぶのに失敗したとギコが言っていたのに。
どういった変化があったのだろう。
( ^ω^)「どうも」
( ゚д゚ )「ああ」
会釈を返し、ミルナはそっぽを向いた。
ちらりと被告人の貞子を見遣り、そちらからも目を逸らす。
内藤は内藤で、しぃの方を見るのが何となく居心地悪い。
-
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:05:24.21 ID:2yP16kawO
-
ξ゚∀゚)ξ「し〜ぃ〜検事〜。準備は万端かしら? お弁当とおやつは忘れてない?」
(#゚ー゚)「あなたこそ僕に負けて噎び泣くためのハンカチはお忘れでないでしょうね?」
(;,゚Д゚)「あんたたちは嫌味じゃないと会話出来ないわけ?」
川;д川 オロオロ
川 - 々-)~゚ フアァ
くるうが欠伸をするや否や、「早く終わらせよう」とオサムが木槌を振り上げた。
寄り掛かるくるうの頭をさりげなく撫でてやっている。何なのだろうこの神様は。
そこへ、検事が手を挙げた。
(*゚ー゚)「検察側の証人がまだ1人、到着しておりません」
【+ 】ゞ゚)「何だ、もう1人いたのか。誰だ?」
(*゚ー゚)「本人から聞いていませんでしたか?」
【+ 】ゞ゚)「本人?」
と、同時に、慌ただしい足音が近付いてきた。
入口の扉が開かれ、全員そちらへ注目する。
-
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:07:04.90 ID:2yP16kawO
-
息を切らせた男が1人。
背が高く、肌の白い──
(;´+ω+`)「も、申し訳ございません、時間を勘違いしていて……!」
( ^ω^)(……青ネギさん)
川 ゚ 々゚)「ショボンだー」
(;´+ω+`)「はい、ショボンです、八ノ字ショボンです……」
( ^ω^)(ああ、ショボンさんショボンさん)
カンオケ神社の禰宜だ。
八ノ字ショボン。苗字は今はじめて聞いた。
ショボンは膝に手を当て中腰の姿勢で息を整え、ぐるりと法廷内を見渡した。
(;*´・ω・`)「ああ、わあ、女の人がいっぱいだ……」
-
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:09:26.59 ID:2yP16kawO
-
【+ 】ゞ゚)「ショボン、開廷したいから検察席に立ってくれ」
(;*´・ω・`)「は、はい!」
(*゚ー゚)「河内さんはこちらに。まだ体力も万全ではないでしょうし、立ちっぱなしは辛いでしょう」
( ゚д゚ )「あ……どうも」
しぃが隣にパイプ椅子を置く。
ミルナがそこに腰掛け、ショボンはギコとしぃの間に立った。
(*´・ω・`)「ギコさんこんばんは、今日はよろしくお願いします」
(,,゚Д゚)「こちらこそ」
ショボンは頬を赤らめながらギコに挨拶し、
(´・ω・`)「裁判には不慣れなもので……不手際がありましたらごめんなさい、しぃ君」
(*゚ー゚)「大丈夫ですよ、僕がいますから」
しぃには普通に挨拶した。
ツンに会釈したときには、また頬に朱が差していたが。
-
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:11:14.07 ID:2yP16kawO
-
( ^ω^)「……何か変な……」
ξ゚听)ξ「あの人、ギコと検事を服装通りの性別だと思ってんのよ」
( ^ω^)「ははあ……愉快な人ですお」
('、`;川「お、女だと思ってたとしても、あのけーじさん見て顔赤くするかなあ……」
( ^ω^)「そりゃツンさん相手でさえ照れる人ですから」
ξ゚听)ξ「あ?」
不意に、オサムが天井を見上げた。
何かを探すような仕草をしていたが、どうかしたのかというしぃの問いに曖昧な返事をすると
顔を下ろし、首を傾げながら木槌で宙を打った。
【+ 】ゞ゚)「それでは──山村貞子の裁判。開廷する」
-
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:13:47.29 ID:2yP16kawO
-
──公訴事実の確認から始まった。
夢に現れ、男を誘惑する女の霊。夢に溺れて実生活に支障を来した被害者達、内2人は死亡。
電子掲示板に寄せられた、いくつもの報告。
それらに共通する目撃情報から、貞子に「誘惑罪」の容疑が掛けられた。
【+ 】ゞ゚)「びーびーえす……すれっど……あいぴー」
検察側から提出された紙の束をめくりながら、オサムは仮面に覆われていない方の顔を顰める。
電子掲示板の書き込みに関する諸々の資料だ。
前回も見た筈だが、オサムの反応は全く同じであった。
検察席に投げて寄越した書類を、ショボンが受け止める。
【+ 】ゞ゚)「よく分からん」
川 ゚ 々゚) チンプンカンプン
(,,゚Д゚)「報告者の中には嘘をついてる人もいたみたいだけど、まあ、ほとんどの人は実際に被害を受けてたみたいよ」
(;*´゚ω゚`)「う……うわあ……こ、この書き込み、何て臨場感だ……! 汚れてる! いやらしい!! 羨ましい!!」
(;゚д゚ )(何この人)
-
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:15:15.41 ID:2yP16kawO
-
(*゚ー゚)「この内容が示す犯人の容貌は、被告人と一致しています。
長髪、黒髪、色白、厚めの唇、スタイルの良さ、膝下までのスカート……」
【+ 】ゞ゚)「顔については? 唇以外の」
(*゚ー゚)「全ての被害者が、『顔をしっかり思い出せない』と」
【+ 】ゞ゚)「ふむ……」
貞子の顔には長い前髪が掛かっている。
覚えていないというよりは、分からないといった感じだろうか。
川;д川「あ、あの! 私やってません! そんなの知りません、本当なんです!」
貞子が焦ったように言った。
頬に当てた右手を上に滑らせ、長い前髪の下に指先が潜り込む。
3日前の裁判のときにもちょくちょく見た仕草だ。癖なのだろう。
ξ゚听)ξ「……他人の空似ということもあるし──そもそも前回、裁判長も仰いましたでしょう。
夢の中なら、姿なんて自分の意思次第です」
(*-ー-) フゥ
しぃが息を吐き出し、やれやれと首を振る。
前回と比べると、ずいぶん余裕があるようだ。
-
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:17:22.97 ID:2yP16kawO
-
(*゚ー゚)「それを言い出せば、きりがありませんのでね。
あなたが無罪を主張するというのなら、『夢の女』と被告人が別人であるという証明をするべきです」
ξ゚听)ξ「検察側は犯人と被告人が同一人物である証明をするべきでは?」
(*゚ー゚)「してるじゃないですか。被害者達の書き込みが証拠です。
それと、河内さん」
(;゚д゚ )「は。は、はい」
ミルナが椅子から立ち上がる。
しぃは、貞子を手で示した。
(*゚ー゚)「いかがです? 被告人の見た目や声に覚えは?」
(;゚д゚ )「見た目、は……顔がどうしても思い出せないけど、体つきとか服や声は……
に、似てる、と、思います」
川 ゚ 々゚)「んー……嘘じゃないね」
川;д川「そ、そんな、そんなの……なんで……」
ツンが顎に手をやった。
沈黙する彼女に、ペニサスが不安げな顔をする。
そこに助け船を出したのはオサムだった。
-
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:19:10.57 ID:2yP16kawO
-
【+ 】ゞ゚)「しかしどうしても、弁護側の──伊藤ペニサスの証言は無視出来ないだろう。
『夢に魘される河内ミルナの傍に、被告人とは違う女がいた』……。
ならばやはり、その女の方が犯人であるように思えるが」
(*゚ー゚)「さて、どうでしょう。
『たまたまそこにいた』とは考えられませんか?」
川 ゚ 々゚)「たまたま?」
【+ 】ゞ゚)「……色情霊の類は、取り憑いた対象を独占したがる傾向にある。
他の霊がいれば排除する筈だ」
(,,゚Д゚)「色情霊同士なら引き寄せ合って、対象を共有する場合はあるけどねえ」
(;*´・ω・`)「ふ、複数の色情霊に……複数の……はふう……」
【+ 】ゞ゚)「しかし河内ミルナや他の被害者は、犯人1人しか相手をしていないんだろう?」
('、`*川「……なあ、しきじょーれーって何?」
小声でペニサスが訊ねてきた。
内藤もよくは知らないので、ツンに目を向け、答えを求める。
-
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:21:11.94 ID:2yP16kawO
-
ξ゚听)ξ「何っていうかナニっていうか……。
性的な未練や遺恨に囚われた霊で──明け透けな言い方すると、エロいことしたがる霊ね」
('、`;川「へ、へえ」
厳密にはもっと違う霊も含まれるけど、とツンが付け足す。
ともかく今回のパターンではツンの説明で事足りるだろう。
(*゚ー゚)「普通は、裁判長の仰る通り、色情霊以外の霊は近寄ってきません。
まして、色情霊が河内さんに手を出している真っ最中に、無関係の霊が傍にいるというのは有り得ませんね」
川 ゚ 々゚)「じゃ、やっぱり……」
(*゚ー゚)「『普通は』、ですよ。『普通は』」
【+ 】ゞ゚)「普通じゃなかったのか?」
(*-ー-)「その通り」
しぃの左手が、ミルナの肩に乗せられた。
随分と勿体ぶるものだ。
(*゚ー゚)「──河内さんの部屋には、様々な神社や寺の護符が大量に貼られていました。
方位も何も考えず、べたべたと無造作に……。
そのせいで部屋の中は霊の溜まり場になっていたんです」
(;゚д゚ )「えっ」
-
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:23:21.25 ID:2yP16kawO
-
(;´・ω・`)「ああ、それは……ううん、良くないですね」
('、`;川「お札って、守ってくれるものじゃないの? なら、貼れるだけ貼った方がいいじゃん」
( ^ω^)「色んなお札をたくさん貼ると、神様が喧嘩するとは聞いたことありますけど……」
内藤はテレビで得た知識を口にしたが、詳しいわけではないので自信もない。
それへの返答は、やはり、その道の人間から。
(´・ω・`)「たまに、そう仰る方もいますが……。そんなことはないんですよ」
( ^ω^)「そうなんですかお?」
(´・ω・`)「神様は、それくらいのことで喧嘩なんてしない──と言われています。
全ての神様がそうであるかは分かりませんが、でも、
大抵の神様は御心が広くていらっしゃいますから」
ショボンはふんわり笑いながら説明してくれた。先程まで色情霊に興奮していた男とは思えない。
──たしかに、たとえばオサムの仕事が被ったからといって、他の神様と喧嘩する樣は想像出来なかった。
(´・ω・`)「ただ、初めから護符を信頼せず、手当たり次第に色々な神社を頼ろうとすれば
神様もいい気はしませんよね?」
(*゚ー゚)「それに加え、河内さんの場合は札の貼り方がなっていなかった」
(;゚д゚ )「は、貼り方なんてあるんですか?」
-
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:25:53.85 ID:2yP16kawO
-
(*゚ー゚)「貼るべき方位が決まっているものもあるんですよ。
僕があなたの部屋を見たとき、そんなものはまるで無視されていました。
おかげで護符の力が満足に発揮されなかったのです」
(,,゚Д゚)「お札ごとの効力や範囲がばらばらになっちゃって、しっちゃかめっちゃかになってたわけよ」
(*゚ー゚)「そのため、あの部屋の近くにあった霊道が変な風に捩じ曲がり、霊の吹き溜まりになってしまった」
('、`;川「ん……んー……?」
ξ゚听)ξ「ミルナ君の部屋は、幽霊が寄りつきやすくなってたってこと」
道理で、とミルナが呟く。
何かしら、思い当たる霊障でもあったのだろう。
札を剥がしてから部屋が明るくなったとも言っていたし。
川 ゚ 々゚)「早くお札剥がした方がいいよー」
(,,゚Д゚)「あ、2日前にあたしが行ったときは綺麗になってたわよ?」
内藤が剥がしてくれたのだと、ミルナは答えた。
怪訝な顔をするしぃに、内藤はツンの命令であったことを説明した。
(*゚ー゚)「ツンさんに?」
( ^ω^)「もしもお札があったら、一枚だけ残して剥がしてこいって。
あ、あと部屋の換気も」
-
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:27:54.50 ID:2yP16kawO
-
ξ゚听)ξ「内藤君がやるまでもなく、警察さんと検察さんが既に処理してるだろうと思ってたんだけどね。
だから彼がお札をごっそり持ってきたときは驚いたわ」
(*゚ー゚)「僕だって忠告はしていた。裁判が終わっても変わっていないようなら何とかするつもりでしたよ」
ツンが目を眇める。
反論はないと察したか、しぃはオサムに顔を向けた。
(*゚ー゚)「裁判長。このように、河内さんの部屋は普通ではなかった。
色情霊が浮遊霊を追い出すにも、それが難しい状態にあったのです」
【+ 】ゞ゚)「……河内ミルナが『夢』を見ているときに、無関係の霊が傍にいてもおかしくなかったと」
(;*´・ω・`)「衆人環視……!」
(*゚ー゚)「そういうことです。八ノ字さんはどうぞ落ち着いてください」
('、`;川「え? ん、んん? でも……んー……」
ツンは黙っている。
このまま貞子が有罪になるのを待つつもりなのか、タイミングを窺っているのか。
-
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:29:53.49 ID:2yP16kawO
-
【+ 】ゞ゚)「ところで、その札は誰が集めたんだ? 河内ミルナではなさそうだが」
(;゚д゚ )「あ、それは──」
(*゚ー゚)「そのことに関しては八ノ字さん、お願いします」
(´・ω・`)「あ、はい。かしこまりました」
しぃがミルナを椅子に座らせる。
咳払いをしてから、ショボンが語り始めた。
(´・ω・`)「5月の下旬だったと思いますが、男性がカンオケ神社を訪ねてこられました。
お名前は伺っていませんけれど、しぃ君に見せていただいた写真と同じ方です」
(*゚ー゚)「この写真ですね。河内さんのお父上です」
しぃが掲げた写真には、ミルナの父が写っていた。
ミルナが僅かに眉根を寄せる。
(´・ω・`)「その方に、魔除けのお札か何かを売っているかと訊かれまして──
ありますと答えましたら、『あるだけ売ってくれ』と」
( ^ω^)「売ったんですかお?」
(´・ω・`)「様子見として、一枚だけ。
どうも急いでいるようだから、お話を聞くことにしました。
お札より、直接お祓いをした方がいい場合もありますから」
(*゚ー゚)「どんな話をしましたか?」
-
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:31:49.60 ID:2yP16kawO
-
(*´・ω・`)「息子さんが、女の霊に憑かれている──と言っていました。
……な、何でも、その……見てしまった、と」
ショボンの顔が赤らむ。
胸の前で手をもじもじさせながら、話を続ける。
くるうが痛々しいものを見る目をしている。精神的に幼い彼女にあんな目をさせるとは。
(*´・ω・`)「夜中に、ミルナ君の部屋に女性が入っていくのを見たそうなんです。
すうっと、こう、通り抜けるように」
(*´・ω・`)「恐る恐る部屋の前に行きましたらば、少しして、ええと──呻き声と申しましょうか。
ミルナ君の苦しげな声がしたらしくて」
(*゚ー゚)「……お父上はそれからどうしました?」
(*´・ω・`)「部屋に入ったそうです。
そしたら──その──ええと、ミルナ君が──身を捩らせて、それで、ベッドが、」
川 ゚ 々゚)「ベッドが?」
-
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:33:25.70 ID:2yP16kawO
-
(;*´・ω・`)「誰かが激しく動いているかのように、ぎしぎしと……揺れていたとか……」
(*,゚Д゚)「あらー……」
(;゚д゚*)
机を睨むミルナの顔が真っ赤になり、額に汗が浮かんだ。
本人がそのような反応をとるのは、まだ分かる。
だがショボンが本人以上に恥ずかしがっているのはどうなのか。
乙女のように頬に手を当て、はふ、と息を吐き出している。
誰よりも、オサムがショボンを見る目付きが一番厳しかった。
自分に仕えていると言っても差し支えない相手に向ける目ではない。
(;*´・ω・`)「お父様が呆然としていると、ベッドが静かになって、ミルナ君もおとなしくなったそうで──」
-
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:35:31.61 ID:2yP16kawO
-
ξ゚听)ξ「ショボンさん」
(;*´・ω・`)「ぁあふ、は、はい」
ショボンから妙な調子の声が返される。
ツンを視界に収めるや、彼は顔を両手で覆った。
(;*´>ω<`)「ああっ! 僕は妙齢の女性の前で何という話を!
僕は! 女性の前で卑猥な話をすることを強要されて……!!」
ξ゚听)ξ「美しい私に欲情して興奮するのは分かるけれど、今は冷静に証言に徹してください」
( ^ω^)(何だこいつら)
ξ゚听)ξ「それで質問したいんだけど、ミルナ君のお父様は、他に見たものはなかったのかしら?
女の人と、ベッドと、ミルナ君だけ?」
(´・ω・`)「あ……いえ。火の玉のようなものも見たと。
何となく焦げ臭いにおいも感じて、でも心霊現象が収まると、においも消えたと仰っていました」
【+ 】ゞ゚)「火の玉……狐火か」
川;д川「……」
(*゚ー゚)「火の玉と共に現れるとは、なかなか古典的でいらっしゃる。
被害者達の身の回りに残された焦げ跡は、それによって付けられたのでしょうね」
「夢」の被害者には、部屋の壁や私物に焦げ跡が残されるという共通点があった。
内藤も、ミルナのベッドにそのような跡があるのを見ている。
-
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:38:45.93 ID:2yP16kawO
-
(*゚ー゚)「さて八ノ字さん。僕からも質問があります。
部屋の前で見たという女性についてですが、外見に関して何か聞いてはいませんでしょうか?」
(´・ω・`)「髪の長い女だったと。それしか聞いていません」
(*゚ー゚)「充分です」
夢の中ではなく、ミルナの父が現実に見ている姿なのだから、
それはその霊本来の姿と同義であろう。
貞子が左手で、黒々とした長い髪に触れた。
(*゚ー゚)「お父上が護符を集めるようになったのは、その件がきっかけだったわけですね?」
(´・ω・`)「はい。女性の霊を見てから日を置かずにカンオケ神社に来たようでした」
(*゚ー゚)「つまり、その時点では河内さんの部屋は普通であった。
無為に寄ってくる浮遊霊は居らず──そこにはただ河内さんと、色情霊のみがいた」
【+ 】ゞ゚)「髪の長い女、か。それが色情霊で間違いないわけだ」
('、`;川「待ってよ! だから私が見たのは別の人だってば!
髪は肩に届かないくらいで……背が低くて……」
(,,゚Д゚)「それはもうお札が集まっちゃってた頃だったんじゃない? なら別の霊かもしれない」
ξ゚听)ξ「異議」
ぴしゃり、ツンの声が空気を打った。
-
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:40:37.34 ID:2yP16kawO
-
ξ゚听)ξ「検事達は重要なことを忘れてるわ。
──ペニサスさんの証言は5月27日のこと。
ショボンさんの証言は、はっきりした日付ではないけれど5月下旬。ペニサスさんの方が先だった可能性がある」
('、`;川「そうだよ! この間ミルナの部屋に入ってびっくりしたんだ、気味悪いくらいお札が貼ってあって……。
5月に私が見たときには、あんなの無かった!」
【+ 】ゞ゚)「その当時はまだ護符を集め始めたばかりで、数が少なかったということも有り得ないか?」
ξ゚听)ξ「……それはないですね。
数が少ないのなら、霊道を捩じ曲げるほどの影響力も無かった筈。
そうなりゃ霊が集まることもないわけで」
【+ 】ゞ゚)「ああ、そうか。どのみち色情霊以外が存在し得る空間ではなかったのか」
オサムは沈黙し、思考し──得心しかねるように、首を捻った。
内藤やくるうも同様である。
【+ 】ゞ゚)「分からんな。
検察側の言う犯人は長髪、肉感的な体つきの女。
片や弁護側の主張する犯人は痩身で髪の短い女……」
どれが真実だか分からない、とオサムは言う。
内藤はツンを見た。
何かを求めたわけではない。ただ、深まる謎が齎す不安定さが嫌で、ツンを急かそうとしたのだ。
何を急かせば良いのかも分からなかったけれど。
-
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:42:15.38 ID:2yP16kawO
-
ξ゚ -゚)ξ
ツンは頼りなく瞳を揺らしている。
言いたいことでもあるのか、うっすらと口が開く。しかし声は出てこない。
今は彼女が望む流れではないのだろう。
ツンが何かを言う前に、しぃの声が落とされた。
(*゚ー゚)「なに、難しい話ではありませんよ、裁判長」
綽然たる態度で、しぃは首を振った。
──ツン達の反論を予想出来ていたのだ。
あるいは、自分の推理が否定されても、それをさらに打ち負かす証拠を持っていたか。
(*゚ー゚)「その2つを両立させることが出来ます。
ただし、弁護側が言う人物は『犯人』ではなくなりますがね」
川 ゚ 々゚)「どういうこと?」
(*゚ー゚)「弁護側証人が見たという女の霊……。
その霊が河内ミルナに対し、並々ならぬ想い──愛情を抱いていたとしたらどうでしょう?」
【+ 】ゞ゚)「あいじょう」
-
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:45:11.23 ID:2yP16kawO
-
(*゚ー゚)「河内さんを守ろうと……彼を悪霊から救いたいと心から願う者だったのなら、
色情霊が現れるタイミングで自分も姿を見せるのは、むしろ当然とも言えるのでは?」
(´・ω・`)「たしかに、有り得ないことではありませんね……」
それはそうだ──オサムが頷く。
しぃがミルナの名を呼んだ。
ミルナは一度しぃとギコの顔を窺ってから、再びパイプ椅子から腰を上げた。
(*゚ー゚)「河内さんの母親は既に亡くなっています。
彼がそれを知ったのはつい先日のことでした。
というのも、彼が7歳になった頃に両親は離婚し、彼と父親だけがこの町に越してきていたからです」
(*゚ー゚)「彼は母親の顔などは覚えていません。
それどころか、幼少期の記憶がほとんどありません」
川 ゚ 々゚)「なんで?」
(,,゚Д゚)「お父さんがお母さんのこと苛めてたっていうか……とにかく子供には辛い思い出が多かったみたいで」
-
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:47:35.95 ID:2yP16kawO
-
(*゚ー゚)「しかし彼にも、覚えているものはありました。
母親の声です」
( ゚д゚ )「……」
('、`*川「……そうなんだ……」
幼馴染みのペニサスすら、それを知らなかったようだ。
ミルナは何度も閊えながら、辛うじて覚えているという幼少時のことを語った。
──母を詰り、虐げる父の姿。
隣室で1人泣く母の声。
ある日ミルナが熱を出して寝込んだこと。
看病してくれた女性。
ミルナの名を呼ぶ優しい声。
あのお父さんがそんな酷いことを──ショボンが悲しげに独りごつ。
内藤も会っているが、普通の父親といった感じを受けていたので、意外であった。
-
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/09/13(金) 18:50:10.29 ID:2yP16kawO
-
( ゚д゚ )「……あの『夢』を見るとき……。たまに、俺の名前を呼ぶ声がしてたんだ。
何か安心するような声が聞こえて、俺のことを止めようとしてるみたいに、手を引っ張られる」
( ゚д゚ )「夢の──その、長い髪の人とは違う声で……。俺、見向きもしてなかったけど」
いま思えば、その声と、記憶にある母の声は似ていたそうだ。
(,,゚Д゚)「死んでも尚、息子のことを心配してたのね」
川*゚ 々゚)「いい話……」
(*゚ー゚)「敢えなく、救いの手に気付かれることはなかったが──
何にせよ、母親が彼の傍にいたのは間違いない」
(*゚ー゚)「つまり! 伊藤ペニサスが見た女は、河内ミルナの母親だったのです!」
しぃがペニサスを指差し、叫ぶ。
なかなか感動的な話だ、が──
('、`;川「いや、違う……と思うよ……?」
ばっさりと、それでいて控えめに否定された。