ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

case5:誘惑罪/前編

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829 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:02:51 ID:hbcbtFpAO

( ФωФ)(ゆうれいさいばん……)

 久しぶりに戻ってきた町。

 昔は「おばけ法」などというものも僅かにしか浸透していなかったのに。
 いつの間にやら、すっかり町中のおばけに知れ渡っていた。

 先日、ある裁判を覗いてみた。
 古い、恐らく学校とかいう場所で行われたもの。
 眼鏡をかけた男が、呪いがどうこうという罪に問われていたが──何が何だか、よく分からなかった。

 ただ、裁判が終わった後。
 女と少年の会話に、気になる名前があった。

830 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:03:33 ID:hbcbtFpAO

( ФωФ)(……みせり)

 あれは。あの名前は。
 自分が殺し損なった女の名前だ。

 そして彼らは、「みせり」のもとに現れた男についても話していた。
 恐らくは自分のこと。


 自身の危険な立場は承知している。
 しかし、まだ目的を果たしていない。この町は、まだ離れられない。


 ──もっと知る必要があるようだ。
 幽霊裁判と、おばけ法。



*****

831 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:04:20 ID:hbcbtFpAO


(´・ω・`)「では、こちらを……」

 禰宜は、静々と一枚の札を差し出した。

 細長い紙に、黒と朱色の墨で何やら書かれている。

(´・ω・`)「お部屋の窓と向かい合う位置にお貼りください。
      窓が複数あるならば、一番大きな窓の向かいに」

( ゚∋゚)「一枚でいいんですか?」

(´・ω・`)「まずはこちらで様子を見ましょう」

 にこりと微笑み、禰宜は首を僅かに傾けた。
 どことなく、しょぼくれた顔付き。
 頼りなさを覚えた。

832 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:05:00 ID:hbcbtFpAO

(´・ω・`)「お札と言いましても万能ではありませんから……
      また何かありましたら、どうぞお越しください。
      出来ましたら、息子さんもご一緒に」

( ゚∋゚)「……ありがとうございました。
     それでは失礼します」

 禰宜に見送られ、神社を後にした。

 角を曲がる。
 手に持った札を見下ろした。

 やはり、この程度の神社では不安だ。
 もっと名の知れた──信用のあるところへ行かなければ。



*****

833 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:06:17 ID:hbcbtFpAO


( ゚д゚ )

 電気を消し、ベッドに潜り込む。
 眠くはない。
 頭は冴えている。

 目をきつく閉じて、布団を頭まで被った。
 すると、徐々に意識が揺らぎ始めた。
 胸は高鳴っていく。それでも眠気が勝った。

 きっと今夜も、彼女がやって来る。


   〈──……ミルナ〉

 間際、どこか懐かしさを覚える声に呼ばれた気がした。
 女の声。しかし「彼女」の声ではない。
 温かな手に優しく腕を引かれるような感覚。

 その手を振り払う。
 自分は「彼女」のもとへ行きたいのだ。行かねばならない。
 手が遠ざかる。

834 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:07:14 ID:hbcbtFpAO


 また、名前を呼ばれたような。
 先程とは違う。耳を焼くような、甘ったるい、「彼女」の声だ。

 これが欲しかった。
 どろりと纏わりつく熱の発生源へ、手を伸ばす。
 早く。温めてほしい。


 そうして、すとんと、思考も何もかもが落ちていった。

835 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:08:18 ID:hbcbtFpAO



 case5:誘惑罪/前編


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836 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:09:32 ID:hbcbtFpAO

(#・∀・)「彼女欲しいィイ──────!!!!!」

 マイク越しの絶叫はなかなかに強烈だった。
 全員が耳を押さえ、のけぞる。

 余韻が消えた頃、内藤ホライゾンは、ソファの上に立つ浦等モララーの足をメニュー表で叩いた。

(;^ω^)「うるさいお! 何なんだお急に!」

(#・∀・)「彼女欲しい! 男4人でカラオケ来るより女の子と2人で来たい!
      密室でいちゃつきながらラブソング歌い合いたい! ちょっといやらしいことしたい!!!!!」

(´<_`#)「んなこと叫ぶな! 歌わないならマイク離せ馬鹿!」

(;-_-)「モララー、この間からずっとこんな調子だよ」

 流石弟者がおしぼりを投げつけ、小森ヒッキーは溜め息をつく。

837 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:12:22 ID:hbcbtFpAO

 ──とあるカラオケ店。
 その一室に、4人の姿はあった。

 むなしく流れ続ける曲を止め、モララーは横たわる。
 画面に映る「採点できません」の文字。
 内藤の足に、モララーの足が乗っかった。

( ・∀・)「飽きたー」

(;^ω^)「モララーがカラオケ来たいって言ったんじゃないかお……足どけてくれお」

(´<_` )「そいつは、ここのフライドポテトが食べたかっただけだろ」

 次の曲のイントロが流れ、弟者がマイクを手に取った。
 モララーはテーブルに手を伸ばし、大皿に残った数本のフライドポテトを鷲掴みにする。

( ・∀・)「音痴の出番だな」

(´<_` )「そう言うなら耳ふさいどけ」

( ・∀・)「最低点数叩き出せー」

 内藤の前には、ペーパーナプキンが一枚。
 4人がこれまでに歌った曲の点数が書かれている。
 平均点の一番低い者がフライドポテトの料金を払う、というルールがモララーによって設けられたのだ。

 現在の最下位候補は弟者、その次がモララー。
 弟者は初めから諦めているようだった。
 ちなみにヒッキーは高得点しか出していない。トップを独走中だ。

838 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:13:50 ID:hbcbtFpAO

( -∀-)「彼女欲しい。もう彼女じゃなくてもいい。いちゃいちゃしたい」

(;^ω^)「うるさいなあもう」

(-_-)「どうしたのさ、モララー」

 ヒッキーの呆れ気味の声に、モララーはぼんやりと天井を見つめながら、答えた。

( ・∀・)「エロい夢見た」

 ヒッキーがジュースを吹き出し、弟者の歌声が揺れた。
 何とか歌は続けられたものの、こちらに向けられる目は冷たい。

(*・∀・)「もう2週間は前なんだけどさあー、もうさあ、もう、あれは、もう」

 うふふと笑ってモララーが身悶えする。
 そこから、夢の内容が事細かに説明され始めた。
 いやに生々しい。

 いつの間にか弟者の声も止まり、呆れているんだか照れているんだか、よく分からない表情をしている。
 内藤は空のグラスを持ち、腰を上げた。

839 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:15:18 ID:hbcbtFpAO

(;*^ω^)「の、飲み物入れてくるお……。ヒッキーのも持ってくるかお?」

(;*-_-)「え? は、あ、う、うん、うん、何か適当にお願い」

 モララーが話し始めてから、ヒッキーのジュースが物凄い勢いで減っていた。
 空っぽのグラスの空気をひたすらストローで吸っていたヒッキーは、
 こくこくと頷きながら内藤にグラスを手渡した。

 部屋を出る。
 内藤は溜め息をつき、表情を平常通りに戻した。

( ^ω^)(友達の『そういう』話は想像したくもないお)

 内藤も14歳だ。猥談は嫌いではない。
 が、まだまだ純なところも当然ある。
 身近な人間が当事者である話は、何だか困る。

840 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:18:25 ID:hbcbtFpAO


 ──ドリンクバーのコーナーは、店のカウンターの斜交いにあった。

 ヒッキーのグラスを氷とオレンジジュースで満たす。
 それから自分のグラスにコーラを入れた。氷もたっぷり。

( ^ω^)(ソフトクリーム乗せようか……)


    「──ミルナの馬鹿!!」


 突然聞こえた大声に肩を跳ねさせた。

 モララーの絶叫に勝るとも劣らない。
 内藤は、声のした方を振り返った。

841 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:19:44 ID:hbcbtFpAO

('、`#川「馬鹿! 馬鹿! お前なんかもう知んない!!」

 ある個室のドアが開いていた。
 そこに──高校生くらいだろうか、少女が立ち、室内に向けて怒鳴っている。
 背中の真ん中ほどまで伸びた黒髪が印象的だ。

 少女は立ち去ろうとする素振りを見せて、数秒後、また怒鳴った。

('、`#川「止めろよ馬鹿!!」

 何なのだ、一体。

 カウンターに出てきた店員が、訝しげに少女を見遣る。

842 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:21:41 ID:hbcbtFpAO

('、`#川「ばかっ、ばかっ、ばか! 私、私はなあ、ミルナのこと心配してんのに──
     もう!! どうしてそんなことゆーんだよ!
     ミルナのそーゆーとこ嫌いだ!!」

 実際の年齢──何歳かは知らないが──より、いくぶん幼い口調に感じた。
 はっきり言うと馬鹿っぽい。

 少女が俯く。
 一度顔を上げて室内を睨むと、彼女は今度こそ、その場から走り去った。

 内藤が立つドリンクバーの横を過ぎ──かけたが、
 運悪く、ストローやガムシロップの入ったケースに腕をぶつけてしまった。

('、`;川「あっ!」

 いくつかのケースが台から落ちた。
 響き渡る破壊音。陶器製だったようで、ケースが砕け散る。

 少女がしゃがみ、破片へ手を伸ばした。

( ^ω^)「あ、──待った!」

 びくり、少女の動きが止まる。
 ほぼ無意識にあげた声。
 すぐに内藤の頭が動き出した。不安げな声を「作る」。

843 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:23:09 ID:hbcbtFpAO

(;^ω^)「さ、触ったら危ないですお」

('、`;川「そっ、そっか、うん。……あっ、怪我してないか? 大丈夫?」

(;^ω^)「僕は大丈夫ですお。お姉さんは?」

 掃除道具を抱えた店員が駆け寄ってくる。
 危ないので離れてください、という指示を受け、2人は後ろへ下がった。

('、`;川「悪い──あ、いや、すんません……じゃなくて、えっと、えっと、ご、ごめんなさい」

 少女は泣きそうな声で店員に謝った。
 頭を下げる度、さらさらと髪が揺れる。
 綺麗な髪だ。

 恐縮するあまり不安になっているのか何なのか、
 なぜか彼女は内藤の服を片手で掴んでいた。
 出来れば離してほしい。

 そこへ、新たな足音が近付いてきた。

844 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:24:17 ID:hbcbtFpAO


ξ;゚听)ξ「ペニサスさん、どうしたの? 大丈夫──」

( ^ω^)

ξ;゚听)ξ「あ」


 こんなことがあって堪るか。

 内藤は踵を返して部屋に帰りたくなった。
 が、少女に服を掴まれているため敵わない。

ξ;゚听)ξ「内藤君」

( ^ω^)「……どうも」

 仕方なしに会釈する。
 出連ツンは、相変わらず黒ずくめだった。

845 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:25:52 ID:hbcbtFpAO

('、`*川「おばさんの知り合い?」

ξ#゚∀゚)ξ「おばっ……」

 お姉さんって言ってもらえる?
 怒りを抑えた声で呟き、ツンは頬を引き攣らせる。

 あらかた片付けた店員が、「お部屋に戻って結構ですよ」と内藤達に言い、
 カウンターの向こうに引っ込んでいった。
 ようやく少女の手が内藤から離れる。

( ^ω^)「じゃあ僕は戻りますお、おばさん」

('、`*川「おばさん……私、帰るね」

ξ#゚∀゚)ξ「オラァ!! ガキどもオラァ!!」

 ぺこりと頭を下げて立ち去ろうとする少女を、
 ツンは内藤の頬を抓りながら引き止めた。

846 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:27:37 ID:hbcbtFpAO

ξ;゚听)ξ「──待ってペニサスさん!
      ミルナ君のこと、心配してくれてるんでしょう?」

('、`*川「……そりゃあ」

ξ゚听)ξ「見ての通り、ミルナ君はあの調子だし……あなたがいてくれた方がいいの」

〈 ^ω^〉(ほっぺた痛い)

('、`*川「……でもミルナ、放っといてくれってゆった……」

ξ゚听)ξ「あなたは、放っといていいと思う?」

('、`*川「……んーん」

 ツンが手を下ろす。
 その隙に、彼女の間合いから離れた。
 友人が待つ部屋に戻るため、踵を返す。

 直後、殊更ゆっくりと放たれたツンの声が、内藤の背と耳にへばりついた。


ξ゚听)ξ「……ペニサスさん。裁判に、来てくれるわよね?」



*****

847 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:29:10 ID:hbcbtFpAO


(*・∀・)「またなー」

(-_-)「ばいばい」

 カラオケ店の前。
 モララーとヒッキーの2人と別れ、内藤は弟者を見た。
 特に意味はない。弟者も内藤を見て、苦笑する。

(´<_` )「何だよ」

( ^ω^)「案の定、弟者が最下位だったおね」

 やかましい、と弟者の手に小突かれた。
 それから2人は赤みの滲んだ空を見上げ、モララー達とは違う方向へ足をやった。

 じわりと夏の気温に包まれる。
 今まで涼しい場所にいた分、まるで温度が形を持っているかのように感じられた。

848 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:30:44 ID:hbcbtFpAO

( ^ω^)「夕飯の時間に間に合わなそうだお……。今夜は何だろうかお」

(´<_` )「今日は姉者の帰りも遅いし、兄者と妹者が作ると思う。
       冷蔵庫の中身からして、多分チャーハンだな」

ξ゚听)ξ「いいわねえチャーハン。家庭によって味も具も全く違うから面白いわよね。
      お姉さんもご一緒していいかしら?」

(´<_` )「残飯で良ければ分けてやってもいい」

ξ゚З゚)ξ「弟者君の意地悪」

(´<_` )「あんたに情けをかける必要があるのか?」

ξ^竸)ξ「言うわねー。ところで私『イタ飯』のことを『炒飯』と勘違いしてた時期があるわ」

(´<_` )

ξ^竸)ξ

(´<_`;)「いつの間に!!?」

ξ゚听)ξ「反応遅すぎてお姉さんちょっと震え上がったわよ」

( ^ω^)「お約束ですおね」

 気付くと、ツンが弟者の横に並んでいた。
 内藤と目が合うなり、にんまり笑う。

849 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:32:33 ID:hbcbtFpAO

ξ^竸)ξ「こんにちは内藤君。お友達とカラオケ? 仲良くやってるようね」

( ^ω^)「ええ。ツンさんはカラオケに一緒に行くような友達はいますかお? いませんおね」

ξ゚听)ξ「うっせバーカ。内藤君って歌上手い? どういうの歌うの?」

( ^ω^)「普通じゃないですかね、全体的に」

ξ゚听)ξ「聴いてみたいわねえ。特に内藤君が歌わなそうなの。
      あれ何だっけ。あの……あれ。
      美味しいパスタ作ってマジギレするやつ」

( ^ω^)「何だその情緒不安定」

 立ち止まった弟者を置いて、内藤とツンは進んでいく。
 ようやく我に返ったのか、弟者が駆けてきて2人の間に割り込んだ。

851 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:35:15 ID:hbcbtFpAO

(´<_`;)「何であんたがいるんだ!? ブーンのストーカーか!」

( ^ω^)「えっ、ストーカーなんですかお? 引く」

ξ#゚听)ξ「こんなガキなんぞ興味ないっつうの!!」

 ツンが弟者の頬を抓る。
 こっちも願い下げだが、そうもはっきり言われると、少々傷付く。

 内藤は周囲に人がいないのを確認すると、道の端に寄って足を止めた。
 頬を引っ張り合っていた2人も内藤の傍で立ち止まる。

( ^ω^)「僕に何の御用ですお」

ξ*゚∀゚)ξ「いいわよー内藤君。物分かりいいわ」

( ^ω^)「くだらない話なら帰りますけど」

(´<_`#)「こいつが口にするのは全部くだらない話だろ」

ξ゚听)ξ「弟者君は本当に私が嫌いなのねえ」

 ツンが腰に手を当て、半身をぐいと反らした。胸を張るような姿勢だが張るほどの胸がない。
 「座りっぱなしだったから疲れたわ」。聞いてもいない独り言を零す。
 そのまま心地よさげな吐息を漏らし、体を元に戻した。

852 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:36:21 ID:hbcbtFpAO

ξ゚听)ξ「……あの子、君たちの友達よね? 格好いい子。さっきの──黄色いシャツの」

(´<_` )「モララーか?」

( ^ω^)「格好いいのは顔だけですお」

ξ゚听)ξ「あの子と、ちょっと話してみたいことがあるんだけど……」

(´<_`#)「ブーンと俺だけに飽きたらず、他の奴にまで迷惑かける気か!?」

ξ゚З゚)ξ「ま、弟者君が許さないわよね」

 顔を横向けた内藤は、頭痛を堪えるように眉間に皺を寄せた。

 「話してみたいこと」の内容はまだ分からないが、どういったものであるかは明らかだ。

( ^ω^)「モララーを幽霊裁判に呼びたいんですかお?」

ξ゚听)ξ「ご明察。半分だけね」

 弟者から怒気が消える。
 ツンとの距離をとり、内藤の後ろへ回った。

853 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:38:12 ID:hbcbtFpAO

( ^ω^)「半分って?」

ξ゚ -゚)ξ「見た感じ、あの子が幽霊裁判のこと知ったら、周りに言い触らしそうなんだもの。
      だから、裁判に呼びたいわけではないの。
      ただ──たぶん『被害者』の1人ではあるから、話は聞いておきたくて」

(´<_`;)「被害者?」

ξ゚听)ξ「ええ……」

 ツンが指先で唇に触れ、考えるような仕草を見せる。
 その体勢で宙を見つめるツンの顔は──顔だけは、やはり綺麗だ。

 恋人が欲しいと喚いていたモララーなら、ツンがにこりと微笑むだけで落ちそうな気がする。

( ^ω^)(この人は恋人っていうか変人だけど)

 使い古されたような下らぬ洒落に、こっそり溜め息。

 それと同時に、ツンは腕を組んだ。

ξ゚听)ξ「あの子から、変な夢見たっていう話、聞いてない?」



*****

855 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:40:40 ID:hbcbtFpAO


(´<_` )「──……で。その……。
       ……急に嫌な予感がして、女の手を払いのけたところで目が覚めたって……」

ξ゚听)ξ「最後までしてないのね?」

(´<_` )「……らしい」

ξ゚听)ξ「その夢を見たのは一度だけ?」

(´<_` )「『続きが見たい』って言ってたから、たぶん一回だけじゃないか」

 道端で卑猥な夢の話をさせられる中学2年生。
 真剣な顔で聞く20代の顔だけ美人。

 一部の人種には羨ましがられそうな状況だが、当の弟者は困り果てている様子だった。
 話し始めてから汗をかき出したので、恐らく恥ずかしく思っているのだろう。

( ^ω^)(モララーの話聞かずにいて良かった)

856 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:41:39 ID:hbcbtFpAO

ξ゚听)ξ「なるほどね……。……裁判で使えるほどの証言でもなさそうだわ」

(´<_` )「モララーの夢がどう関係あるんだよ」

ξ゚听)ξ「その夢に出てきた女、おばけなのよ」

 若干赤みがかっていた弟者の顔が、一気に青ざめた。

 猥談だと思っていたら怪談だったとは。
 ああ、また下らない洒落。

(´<_`;)「お、おば、おば、おばっ」

ξ゚ -゚)ξ「とはいえ、モララー君は見限られたみたいね。
      良かったというか何というか」

 弟者の手が内藤の腕を掴む。
 内藤を半ば引きずる勢いで歩き出した。

( ^ω^)「弟者」

(´<_`;)「つっ、つつつっ、付き合ってられるか!!
       何がおばけだ! 何が夢だ!!」

857 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/03(土) 17:42:52 ID:hbcbtFpAO

ξ;゚听)ξ「待ってよ弟者君! それとは別に、内藤君に話があるんだけど!」

(´<_`#)「黙れ! うちにもブーンにも二度と関わるな!!」

ξ;゚听)ξ「な、内藤君、明日! 明日の正午に、市立図書館近くのファミレスに来てね!」

 行くつもりじゃないだろうな、と弟者が呟く。
 内藤は頷きはせず、黙ったままついていく。
 行くわけがない──と、即答出来なかった。



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