ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

case4:呪詛罪

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659 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:41:22 ID:VvLJ6h4.O

【+  】ゞ゚)「検事。続き」

(*゚ー゚)「……はい。
     凛々島リリいわく。ある日──正確に覚えていないようでしたが、7月17日の前頃でしょう。
     被告人が突然、目の前に現れたそうです」

(*゚ー゚)「そして言われた。『嫌いな人でもいるのか』と。
     ……明らかに人間ではない被告人に対して恐怖を覚えたものの、
     妙な話し方のため、すぐに怖くなくなったようですね」

【+  】ゞ゚)「凛々島リリは霊感があるのか?」

(*゚ー゚)「いいえ。
     恐らく、被告人が彼女にだけ姿を見せたのでしょう」

(*゚ー゚)「被告人は凛々島リリに対し、誰が嫌いなのか、どんな風に憎いのかを執拗に訊ねました。
     初めは相手にしませんでしたが──」

 しぃがファイルを開く。
 日付と数行の短文が書かれた表が見えた。

660 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:42:42 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「7月17日。グラウンドにてサッカーに興じる男子生徒達を応援していたところ、
     1人の生徒がゴールを決めました。
     歓声があがる中、その生徒は、バドミントンをする流石妹者の方を頻りに気にしていた」

(*,゚Д゚)「見ててほしかったんでしょうねえ。妹者ちゃんたら罪な子なんだから」

(*゚ー゚)「ええ、微笑ましいことです。
     しかし凛々島リリには、妬ましい光景だったのでしょう」

(*゚ー゚)「いつの間にか傍にいた被告人が『どんな気分だ』と質問してきて、彼女は、
     『妹者ちゃんなんか大怪我すればいい』と答えてしまったそうです」

( ^ω^)「──『妹者ちゃんなんか』?」

(*゚ー゚)「そう。
     それを聞いた被告人が何やら手を動かした途端、男性教諭の蹴ったサッカーボールが、
     プールの方へと飛んでいってしまった」

(,,゚Д゚)「そのボールのせいで姉者が──大怪我ではないけど、捻挫しちゃったわけ」

(´<_`;)「その子は妹者のこと言ったのに、何で姉者が……」

 内藤は後ろの弟者に振り返り、首を傾げた。
 弟者も不思議そうにしている。

661 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:45:20 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「続いて翌日の7月18日。
     給食の時間、男子生徒が余っていたデザートのゼリーを流石妹者に譲りました。
     他に欲しがる人がいただろうに、なぜ無条件で……と凛々島リリは不服に感じた」

(*-ー-)「そしてまたもや傍にいた被告人に、
     『鍋を倒して妹者ちゃんが火傷しちゃえばいいのに』と囁きました」

(´<_`;)「ゼリーもらったから、って……そんな理由で……?」

 弟者の声が低くなる。
 内藤の肩に置かれた手に、熱が篭った。

(*゚ー゚)「被告人は前日のように手を動かします。
     しかし何も起こらなかった。
     そのときの被告人の言葉は『失敗しちゃいましたね』、だったとか」

( ^ω^)「実際は、弟者の方が火傷してたわけですが」

(,,゚Д゚)「そうねえ。ブーンちゃんが見たっていう黒い手、被告人のだったのかしらね」

ξ゚听)ξ「まあギコちゃんったら勝手なこと言ってくれるわね。証明してくれるの?」

(*-ー-)「証明するまでもありませんよ」

 しぃが、資料の表面を指先でなぞった。
 表の上から3つ目の欄で指を止める。

662 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:48:43 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「同日、午後。授業の一環として『自分の宝物』の発表会が行われた際、
     兄や姉から買ってもらったという文房具、小物、おもちゃを自慢する流石妹者に苛立ちを覚え、
     『そんなもの全部壊れてしまえ』と言い──その頃、流石兄者が現金を盗まれました」

( ^ω^)(ん?)

 違和感。

 怪我をしろ、と言って姉者が捻挫し、火傷しろ、と言って弟者が負傷した。
 なのに兄者の被害は物の破損ではなく盗難である。
 金額だけで言えば、妹者の宝物の価値には全く届かないし。

 規則性がよく分からない。
 首を捻る内藤に気付いたのか、しぃではなくアサピーが答えた。

(-@∀@)「ドロボーされたのも、間違いなく呪いが原因ですよお」

ξ゚听)ξ「……いちいち言わなくていいの」

(*-ー-)「お墨付きを頂けたようで。
     ──7月19日。男子生徒からプレゼントをもらった流石妹者を見て
     『転べばいい』と呟いたところ、流石姉者が階段で躓き転倒……」

 そのまましぃは、24日までの凛々島リリの発言と、流石家の3人に起きた不幸をつらつらと述べた。
 リリの身勝手な呟きが出てくる度、背後の弟者から苛立ちが伝わってくる。

663 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:50:53 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「──と、このように、凛々島リリが恨み言を口にし、
     被告人が不可解な仕草をする度に呪いが行われていたことが分かります」

【+  】ゞ゚)「話を聞く限りだと、そうなるな」

川 ゚ 々゚)" コクコク

ξ;゚听)ξ「あっ、ちょっ、異議!」

 ツンが右手を挙げた。
 右手はそのままに、左手でファイルを開いて「ええと」と声を漏らす。

ξ;゚听)ξ「流石姉者の件についてなんですが──」

(-@∀@)「センセイ、またそんな無意味なもの見て!!」

 ツンの反論は、アサピーによって阻まれた。
 思わぬ大声に、ツンが一瞬硬直する。

(-@∀@)「それ、あれでござンしょ? 僕にも事件にも無関係な証拠でしょう?
      出すだけ無駄ですよ、無駄!
      そんなもんより、もっと意味のあるものを出してくださいな」

 ツンの眉間に皺が寄る。
 睨み合い。それから間もなくして、ツンはファイルを閉じた。

664 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:52:34 ID:VvLJ6h4.O

【+  】ゞ゚)「いいのか?」

ξ゚听)ξ「本人が無駄だと仰るのなら」

(*-ー-)「審理中に依頼人から命令される弁護士とはね」

ξ;゚听)ξ「う、うるさいわね!」

(*゚ー゚)「それで、もう言いたいことは無しですか?」

ξ;゚听)ξ「んなわけないでしょうが。……えっと、……。
      ……そうだ、まだアサピー……さんの仕業とは決まってないのに、
      確定したかのような言い方するのはやめてくれる?」

(´<_`;)「さっきから、本人が認めるようなこと言ってると思うんだが」

(-@∀@)「そうですようセンセイ」

ξ;゚听)ξ「『僕は無実です』って私に言ってきたのあんたでしょう!?
      検事、いい? こいつは適当なことばっか言う奴なのよ、こいつの証言に信憑性は無いわ!」

(*゚ー゚)「苦し紛れにそう仰ると思ってました。
     では、さらにいいことを教えてあげましょう」

 資料のページが捲られる。
 ずらりと並ぶ文字。リリの名前が散見された。

665 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:54:11 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「凛々島リリは以前から流石妹者を気に入っていませんでしたが、憎むほどではなかった。
     それなのに被告人と会ってから、急速に嫉妬心が膨れ上がっていったとのことです」

(*゚ー゚)「自分の発言によって他人が怪我をするのも、被告人が現れるようになってから。
     逆に被告人が逮捕されてからは、
     流石妹者の家族の周りで、ぱったりと不幸が起こらなくなりましたよね」

ξ;゚听)ξ「……それは、だって──」

(-@∀@)「僕がいないと、あのオジョーサン、何も出来ませんからネ」

(*゚ー゚)「凛々島リリは利用されていたのです!
     彼女の中のささやかな感情を無理矢理に増幅させられ、呪いのエネルギーに換えられていた!」

(-@∀@)「いよっ、その通り!」

ξ;゚听)ξ「……。なら、呪いの矛先が流石妹者ではなくその家族に向けられるのはおかしいでしょう?
      アサピーさんは呪術のプロなんだから……」

(*゚ー゚)「彼は、ついこの前まで霊界に行っていたんですよ。
     いくらプロといえど、ブランクがあれば腕も鈍りましょう。
     狙いが定まらず、血縁者の方へ引き寄せられてしまったのではありませんか?」

(-@∀@)「鋭いですねえー、検事サンは。
      センセイと大違い」

 ツンが押し黙る。
 アサピーの振る舞いは、ほぼ自白に等しい。
 それでもツンは食い下がろうとしている。

666 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:55:00 ID:VvLJ6h4.O

 彼女の目的は何だろう。
 「追体験」をしたのかどうかで、彼女の行為の意味は大きく違ってくる。

 たとえば真実を知っているとして──
 現状は、ドクオのときのように、ツンの作戦の内なのだろうか?
 はたまた、都村トソンのときのように、全てを暴くための準備が整っていないのか?

 それともアサピーがツンに心を許していないのだろうか。
 だとすれば彼女には真偽を確かめる術がないわけだから、
 ごくごく普通にしぃに追い込まれていることになる。

( ^ω^)(……僕には分からんお)

 何となく、ツンに任せていればどうにかなるような気がしていたが、そうもいかないようだ。

 そもそも彼女自信が言っていたことである。
 しぃの方が一枚上手であれば、そしてツンに不手際があれば、真実とは違った結果になり得る。

 内藤が端から見ていて判断出来るものではない。

ξ;゚听)ξ「……あ……」

 ツンが声を発した。
 目が泳ぎまくっている。

667 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:56:00 ID:VvLJ6h4.O

ξ;゚听)ξ「アサピーさんは、そんな、人を利用するような酷い奴じゃないし……」

川 ゚ 々゚)「くさい」

ξ;゚听)ξ「とっても優しいし!」

川 ゚ 々゚)「くさい」

ξ;゚听)ξ「根は真面目で誠実で!」

川 ゚ 々゚)「くさい」

(,,゚Д゚)「ツン……あんたって女は……」

(*゚ー゚)「ならば、なぜ被告人は凛々島リリの周囲をうろちょろしていたんでしょうか」

ξ;゚听)ξ「ロリコンだからよ!!」

川 ゚ 々゚)「くさくない」

(-@∀@)「センセイ、僕をそんな風に思ってたんですか」

【+  】ゞ゚)(ろりこん……?)

668 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:58:02 ID:VvLJ6h4.O

ξ;゚听)ξ「私だって小学生の頃、こいつに絡まれることが多々あったわ!
      でも下らないことでからかわれてただけで、呪われたり手伝わされたりしたことはありません!」

川 ゚ 々゚)「ちょっとくさい」

ξ;゚听)ξ「……ちょっとだけ、しょぼい呪いかけられて遊ばれたことはあります……」

 ツンと彼に、以前から面識があったであろうことは察していたが、
 てっきり、アサピーの「前科」に関わる裁判が2人の出会いなのだと思っていた。

 しかしどうやら、ツンが幼い頃からの知り合いらしい。

(-@∀@)「僕は女の子が好きなんじゃなくッて、センセイみたいに面白い子が好きなだけですよう。
      心外だナァ」

(*゚ー゚)「凛々島リリは面白い子だったんですか?」

(-@∀@)「いいえー。そこら辺によくいる感じの子でした」

(*゚ー゚)「では、幼少のツンさんに構っていたときとは事情が違うわけですね。
     よって、弁護側の主張は無意味であることが判明しました」

ξ;゚ -゚)ξ「……この眼鏡白衣野郎……」

( ^ω^)(何だか、被告人すらツンさんの敵みたいに思えるお)

670 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:12:05 ID:VvLJ6h4.O

(´<_` )「──……なあ」

 不意に、後ろから弟者の声。
 その声から恐怖は失せている。
 代わりに、怒りのようなものが感じられた。

【+  】ゞ゚)「どうした、流石弟者」

(´<_` )「その──凛々島リリって子は、来てないのか?」

(,,゚Д゚)「来てないわよー」

(*゚ー゚)「9歳の子を幽霊裁判に連れてくるわけにもいかないだろう?」

 内藤は首を捩り、弟者の顔を見上げた。
 実に不機嫌そうだ。

(´<_` )「その子が妹者に下らない嫉妬してたのが原因ってことだろ?
       被告人がそれを利用したとはいえ──
       妹者の不幸を望んで、実際に言葉にしてたのは事実なんだろ?」

(,,゚Д゚)「まあ……ねえ」

671 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:14:30 ID:VvLJ6h4.O

(´<_`#)「じゃあ、ここに連れてきて、一言でも謝らせるべきじゃないのか!?
       姉者も兄者も俺も、そいつのせいで被害を受けたんだぞ!」

 くるうが泣きそうな表情を浮かべてオサムの後ろに隠れた。
 どうも彼女は、人の大声というか、怒鳴り声が苦手なようだ。
 得意な者などいないだろうけども。

 オサムが顔を顰めて木槌を握り直す。
 注意される前に、と、内藤は未だ肩に乗っている弟者の右手を叩いた。

( ^ω^)「弟者、ちょっと抑えた方がいいお」

(*゚ー゚)「……いいや! 弟者君、きみは今こそ主張すべきだ!」

 しかし、内藤の制止は、すぐさましぃに遮られる。

 しぃは目を細めて両手を広げた。
 舞台役者のような、大仰な動き。

672 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:15:37 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「裁判長、監視官! これは被害者である彼の、真っ当な『証言』です!
     我々が法廷で最も尊重し、耳を傾けるべきは、哀れな被害者の意思だ!」

( ^ω^)(……ああ、そういう……)

 しぃが弟者を法廷に呼んだ理由がやっと分かった。

 彼女が何より欲しかったのは、「被害者の怒り」なのだ。
 だから、この場に来るまで、内藤にも弟者にも事件の詳細を話さなかった。
 新鮮で──最も大きな怒りを引き出すために。

(*゚ー゚)「しかし……弟者君。きみが真に憎むべきは凛々島リリではないよ。
     嫉妬なんて、誰しも持ち得る感情だ。
     それを彼女は被告人によって無理矢理、増幅させられていた」

 「無理矢理」で力を込め、殊更ゆっくりと語りかける。
 そして弟者の腕を引っ張り、内藤の隣に並ばせた。

 真っ直ぐ伸ばされたしぃの手が、アサピーを示す。
 それを目で追って、弟者は眼光を鋭くさせた。

673 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:18:15 ID:VvLJ6h4.O

(-@∀@)「……そんな恐い顔しないでくださあいよう」

(*゚ー゚)「君の大切な妹さんを呪ったのは彼だ。
     とばっちりとはいえ、お姉さんやお兄さん、そして君を襲った不幸の原因は彼にあるんだよ」

ξ#゚听)ξ「異議!!」

(*゚ー゚)「さあ、君の気持ちを、今ここで吐き出すといい」

ξ#゚听)ξ「裁判長! 異議っつってんでしょうが!!」

 オサムは、左手の平をツンへ向けた。
 ツンが歯噛みし、唇を震わせる。

(´<_`#)「……妹者は……」

 初めの一言は、小さかった。
 机の上に乗せられた両手が拳を作る。
 大きな声で、としぃが言った。

 言葉を選んでいるのか、少しの間をあけつつ、弟者は自身の考えをまとめていった。

(´<_`#)「妹者はたしかに、要領が良くて、人から好かれるのが得意で……性格も、いい方じゃない。
       そういうのを嫌う人間からは、白い目で見られるかもしれない」

(´<_`#)「でも、だからって、それが呪われていい理由にはならないと思う」

 しぃが首を縦に振っている。
 その向かいのツンは、弟者ではなくアサピーを見ていた。

674 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:20:19 ID:VvLJ6h4.O

(´<_`#)「姉者が怪我したとき、心配で堪らなかった。
       今だって、また転んだりして足を痛めてやしないか気になってる。
       ……その、姉者まで巻き込まれたってことが、一番嫌だ」

(*゚ー゚)「現在、彼らの両親は、仕事と親類の手伝いのため別の土地に行っています。
     それ故、今の流石家を守っているのは流石姉者なんです。
     もし彼女の被害が捻挫や擦り傷で済んでいなかったら──……恐ろしい話です」

(,,゚Д゚)「姉者じゃなくて弟者君が足を痛めてたら、それこそ大変だったでしょうねえ。
     陸上部は足が命よ。8月は大会もあるんでしょ?」

川 ゚ 々゚)「りくじょうぶ」

【+  】ゞ゚)「知ってるぞ、走ったり投げたり跳んだりして競うやつだな」

川*゚ 々゚)(飛ぶ……鳥さん……)

( ^ω^)(あんまり伝わってないだろうなあ)

675 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:23:52 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「弟者君。今きみは、被告人に対しどんな感情を抱いている?」

(´<_`#)「……腹が立つ」

(*゚ー゚)「被告人にどう償ってほしい?」

(´<_`#)「刑とか……そういうのはよく分かんないけど。
       心の底から反省してほしい」

 しぃが笑みを深め、首を傾ける。

 もしもこのまま有罪だと言われれば。
 アサピーはどんな刑を科せられるだろう。
 一度は刑を執行されたわけだから、今度はさらに重くなる筈だ。

 なのに、

(-@∀@)

 アサピーは、へらへら笑っている。

 内藤には、それが余裕から来るものには思えなかった。
 そうやってにやつくことが、きっと、彼にとっては「素」の状態なのではないか。

(*゚ー゚)「彼らの受けた身体的・精神的な被害は、決して軽くありません。
     そもそも彼らには、呪われて然るべき理由などなかった」

 そんなアサピーを、しぃは軽蔑を孕んだ目で睨む。
 彼女からすれば、彼の笑みは不謹慎極まりないのであろう。

676 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:26:24 ID:VvLJ6h4.O

(#゚ー゚)「いたいけな少女を利用し、また別の少女を呪い、
     その周囲までをも巻き込んだ被告人の所業は冷酷と言わざるを得ません」

(#゚ー゚)「注目すべきは、この事件は被告人が霊界を出て間もなく引き起こされたものである点。
     さらに本法廷において、彼は我々──どころか自身の弁護人さえ揶揄し、馬鹿にする発言を繰り返している。
     一切、反省の色を見せていないのです!」

 ヒートアップしてきたのか、はたまた演出か、しぃが机を叩いた。
 いくつかの資料が床に落ちる。
 オサムの肩越しに顔を覗かせていたくるうが、また引っ込んだ。

678 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:29:19 ID:VvLJ6h4.O

(#゚ー゚)「弟者君は『反省してほしい』と言ったが、この被告人にそれは期待出来ない!
     検察側は、強制浄霊──否!
     被告人の『消滅処分』を要求する!!」


 突然。
 アサピーの表情が崩れた。


 ずれてもいない眼鏡を押し上げ、その奥の目が見開かれる。
 元から良くない血色が、一層失せた。

【+  】ゞ゚)「……うむ、検事に概ね同意だな」

(;-@∀@)「ちょっと──お待ちくださいよ!
      消滅処分って、それ、それって、僕が消えちゃうってことじゃァないですか!!」

【+  】ゞ゚)「お前は人間の魂ではないし、浄霊は少し難しい。
        再犯の可能性を考えると、ただの懲罰では意味がない。
        消滅処分が妥当だろう」

679 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:33:30 ID:VvLJ6h4.O

(;-@∀@)「罰ならいくらでも受けますけどね、消えるのは嫌だ!!
      人間が勝手に僕を生み出しといて、その人間の安全のために僕を殺すっつうんですか!?
      僕は──僕は無実だ!!」

(,,゚Д゚)「あんた、さっきから自分が犯人みたいな振る舞いしてたじゃないの」

(;-@∀@)「だって僕は、僕、は、……僕は。
      ……センセイ……」

 縋る声。
 しかしツンは口を閉ざしたままだ。

 すっかり置いていかれた弟者と内藤は、顔を見合わせた。

(*゚ー゚)「浄霊は、死者の魂を浄化して『上』へ送ること。
     消滅処分ってのは、存在そのものを完全に消すことだ。強い苦痛を伴う。
     だから被告人は消滅処分を嫌がっている」

(´<_`;)「そりゃ、……こわいな」

 しぃが、小声で解説してくれた。
 弟者が若干引いている。

 つまり消滅処分は幽霊やおばけにとって、完全な「死」で──
 アサピーの叫びは、崖っぷちでの命乞い。
 彼の恐怖が、内藤にも伝わってきそうだった。

680 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:35:05 ID:VvLJ6h4.O

 木槌が鳴った。
 アサピーの顔に絶望が塗り込められる。

【+  】ゞ゚)「弁護人、何か反論は」

ξ゚ -゚)ξ「……」

(,,゚Д゚)「返事くらいしなさいよう」

 ツンが俯く。
 それからしばしオサムが待っていたが、彼女は沈黙を通した。

 やがて、オサムの口から溜め息。

【+  】ゞ゚)「……反論もないということで。
        そろそろ、判決を言い渡そうか」

 しぃが、ほっと息をつくのが聞こえた。
 傍にいた内藤達しか気付けないほど、ささやかな。

 ちらりと顔を覗いてみると、安堵が見て取れた。
 ここ最近──といっても、内藤は3件の裁判しか知らないが──ツンに足をすくわれっぱなしだったので、
 不安を抱いていたのかもしれない。

 内藤の視線に気付いたしぃは咳払いをして取り繕うと、
 いつもの自信たっぷりな表情を浮かべて、腕組みをした。

681 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:38:01 ID:VvLJ6h4.O

ξ )ξ


 そうして、木槌を振り上げたオサムの手は──


ξ )ξ「ほんと……昔っからクソ面倒臭い眼鏡ブーツ白衣野郎だわ……」


 独り言により、止められた。

682 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:40:07 ID:VvLJ6h4.O

 次いで、笑い声。

ξ ∀ )ξ「……ふふふ……うっふっふ……うふふふふ!!」

 ツンだ。
 ついに頭がおかしくなったか──と内藤が突っ込みかけて、
 元からマトモな頭ではないことを思い出した。

ξ#゚∀゚)ξ「こぉおおおおおんの大馬鹿!!!!!
      あんたが望むなら、って思って黙っててやったのに!
      いざ判決出されるときになって泣きつくぐらいなら、初めっから邪魔とかしないでよね呪詛マニア!!」

(;*゚ー゚)「……な」

(;-@∀@)「センセイ」

 唖然とするしぃとアサピーに高笑いを送り、ふんぞり返る。
 笑いながら怒る人だわ、とギコが呟いた。

 そして、ツンは高々と右手を挙げた。

683 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:42:49 ID:VvLJ6h4.O

ξ#゚∀゚)ξ「はい! はいはいはい! 異議! 異議あーり!!
      反証とか色々やりまーす!!!!!」

(;*゚ー゚)「なっ、……にを、言ってるんだあんたは!! また負け惜しみか!?」

川 ゚ 々゚)「……嘘じゃないよ。くさくないもん」

 ツンの表情が、大口あけた笑顔から、不敵な微笑みへ変わる。
 その変化にしぃがたじろいだ。
 きっと彼女の中で、嫌な予感というものが溢れ返っていることだろう。

 弟者とオサムは、ぽかんとしている。
 中途半端な位置に留まっていた木槌が、ゆっくりと下ろされた。

ξ゚ー゚)ξ「裁判長。弁護側、証人の準備が出来ております。
      入廷の許可を」

(;*゚ー゚)「しょ──証人!?」

【+  】ゞ゚)「……ああ。許可する」

ξ゚ー゚)ξ「ありがとうございます。
      ……さあ! おいで、2人とも!」

 言って──ツンは、教室の入口を振り返った。

684 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 21:45:56 ID:VvLJ6h4.O

 沈黙。
 張り詰めた空気の中、ついに、引き戸がゆっくりと開かれた。


l从・∀・ノ!リ人「失礼します、なのじゃ」

⌒*リ;´・-・リ


 現れたのは、2人の少女。

 その見知った顔に、弟者が驚愕した。
 内藤も驚いたが、驚きのあまり、口をひくつかせるだけに終わった。

(´<_`;)「妹者!?」

(;,゚Д゚)「凛々島リリちゃんまで……」

(;-@∀@)「……センセイったら。ホント、やらかしちゃうンだから」

 妹者は物珍しげに室内を見渡し、凛々島リリの手を引いて、ツンの隣に立った。

 弟者が妹者に駆け寄ろうとしたが、
 内藤が手を引っ張って止めた。
 いま弟者が向こうに行くと、ますます面倒なことになりかねない。

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