ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

case4:呪詛罪

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628 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 19:55:32 ID:VvLJ6h4.O


(-@∀@)「アサピーと申します」

 開廷の宣言は手早く済まされ。

 オサムが被告人に行ういつもの質問に、
 アサピーは眼鏡をずり上げつつ答えた。

(-@∀@)「50年ぐらい前にひょいと生まれた、しがないおばけでございます。
      多分、町に渦巻く人間様の恨み辛みや妬み嫉みが『種』になって生まれたんでございましょうねえ」

(-@∀@)「そんな出生なんで、とりあえず──」

 アサピーが両手を白衣のポケットに突っ込んだ。
 ごそごそと怪しく蠢くポケット。
 間もなく引き出された手には、藁人形やお札や正体不明の金属片が、ずらりと。

(-@∀@)「──呪術なんかの研究して、日々を過ごしてるンですよう」

629 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 19:56:57 ID:VvLJ6h4.O

( ^ω^)「研究って何ですかお?」

(-@∀@)「んふ」

 答えはなく、不気味な笑いだけが返された。
 呪具がポケットに戻る。

(*゚ー゚)「彼は人間のふりをして書店で専門書を買ったり、
     時には実行して、呪術の知識と技能を蓄えていったんだ」

(´<_`;)「じ、実行?」

(,,゚Д゚)「人を呪って、怪我させたり事故を起こしたり……。
     それらの件で、一昨年起訴されて有罪喰らってるわね」

(-@∀@)「ちゃんと刑は受けて、一月ほど前に霊界から出てきましたよ?」

( ^ω^)「……それって」

【+  】ゞ゚)「有り体に言えば、『前科者』だな。
        犯行は多かったが被害自体が小さかったから刑は軽かった」

ξ;--)ξ ハァ

 ツンが溜め息をついている。
 前科があるというのは、人間の裁判においても被告人にとって不利な条件だ。
 そこにアサピーのこの態度が加わるのだから、心証は初めから良くないだろう。

630 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 19:58:56 ID:VvLJ6h4.O

【+  】ゞ゚)「というわけで、検事。起訴状」

(*゚ー゚)「かしこまりました」

 しぃが書類を持ち上げる。

 間近で見るのは初めてだ。
 ワープロで打たれた細かい字が並んでいる。

(*゚ー゚)「公訴事実」

 しぃの唇から、力強い声が零れていく。

 紡がれる言葉を聞きながら、内藤は、2週間前の記憶を巡らせた。


(*゚ー゚)「被告人アサピーは、2週間前の7月17日から24日に至るまで、
     ある人物に対し『呪い』を仕掛け続けた──」


.

631 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 19:59:53 ID:VvLJ6h4.O


#####


 最初の被害者は、姉者だった。


∬´_ゝ`)『おかえりなさい』

 7月17日、午後4時前。
 珍しく、姉者が内藤よりも先に帰宅していた。

 小学校の教員をやっている姉者。
 帰宅する時間はまちまちだが、平日のこんな時間に家にいるのは初めて見た気がする。
 どうしたのかと訊ねると、

∬´_ゝ`)『ちょっと怪我しちゃって』

 照れ臭そうに答え、右足を指した。
 包帯が巻かれた足首に、氷水の入った袋を当てている。

( ^ω^)『大丈夫ですかお』

∬´_ゝ`)『うん。捻挫だって』

 どうして捻挫なんか。
 そう問い掛けた瞬間、台所から明るい声がした。

632 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:00:45 ID:VvLJ6h4.O

l从・∀・*ノ!リ人『姉者、麦茶冷えたのじゃ!』

 妹者が、麦茶のポットとグラスを持って居間に飛び込んできた。
 帰ってきたばかりだったのだろう、胸元に学校の名札が付いたままだ。

 グラスを受け取り、姉者が妹者の頭を撫でる。

∬´_ゝ`)『ありがと』

l从・∀・*ノ!リ人『むふふー。あ、ブーンおかえり! 麦茶飲むのじゃ?』

( ^ω^)『ただいま。僕にも一杯くれお』

 ぱたぱたと台所に行き、氷を入れたグラスを持って妹者が戻ってきた。
 うっすらとオレンジがかったガラス製のポットを傾け、グラスに麦茶が注がれる。

l从・∀・ノ!リ人『そうじゃ、ブーン。聞いてほしいのじゃ』

( ^ω^)『何だお?』

633 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:01:45 ID:VvLJ6h4.O

l从・∀・ノ!リ人『あのね、今日の3時間目ね、姉者のクラスがプールの授業やってたのじゃ。
       でね、妹者のクラスは算数だったけど、先生が「外に出よう」って言ったから、
       グラウンドでバドミントンとかサッカーとかやったのじゃ』

 妹者は3年生。
 姉者が担当しているのは、たしか2年生だ。

∬*´_ゝ`)『妹者のところの先生、スポーツマンだものねえ』

l从・∀・ノ!リ人『……グラウンドはプールの隣にあるから、
       ほぼ確実に姉者の水着姿が目的だったんだと思うんじゃが、
       このことはちっちゃい兄者には内密に頼むのじゃ』

( ^ω^)『そりゃ弟者には言えんお』

∬*´_ゝ`)『?』

 内藤と妹者の視線が姉者の胸に向かい、すぐに逸らされた。
 話の続きを促す。
 恐らく、ここから姉者の右足に関わる展開になるのだろう。

634 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:02:58 ID:VvLJ6h4.O

l从・∀・ノ!リ人『それで、先生と男子がサッカーやってて、女子の半分くらいはバドミントンやってたのじゃ。
       妹者もバドミントンに参加したが、なかなか難しいのう……』

( ^ω^)『女子のもう半分は?』

l从・∀・ノ!リ人『サッカーの応援してたのじゃ。
       どの男子が格好いいとか何とか言ってたけど、
       まあ、名前が挙がったほとんどの男子は妹者の虜じゃったな』

 ふん、と妹者が鼻で笑う。
 たまに、彼女が小学生に見えなくなるときがある。末恐ろしい。

l从・∀・ノ!リ人『それはともかく。……そしたらのう、
       先生が蹴ったサッカーボールがな、プールの方に飛んでったんじゃ!』

 広げた左手をプール、右手の拳をボールに見立て、妹者が身ぶり手振りで説明する。
 右手の勢いからして、結構なスピードで飛んだらしい。

635 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:03:49 ID:VvLJ6h4.O

( ^ω^)『それが姉者さんにぶつかったのかお?』

∬´_ゝ`)『ううん。プールの入口の前に転がったの。
      でも私、ちょうど生徒に声かけられてて、ボールが飛んだ瞬間は見てなかったのね』

∬´_ゝ`)『で、その直後、倉庫に道具を取りに行くためにプールを出て……』

( ^ω^)『……ボールに躓きましたかお』

∬;*´_ゝ`)『うん……。でも転んではないのよ。
       転びそうになって、踏ん張った拍子に変な曲がり方しただけで』

l从・∀・ノ!リ人『うちの先生が姉者のこと保健室に運んでったのじゃ』

∬´_ゝ`)『そしたら思ったより腫れちゃって、病院行った方がいいかもって言われて』

( ^ω^)『そのまま早引け、と』

636 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:04:54 ID:VvLJ6h4.O

∬´_ゝ`)『結局、大したことなかったし……ちょっと早く帰れて、得したかしら。
      妹者より先に帰ってきたの、初めてだわ』

 くすくす。
 楽しそうに、そして少しだけ申し訳なさそうに姉者が笑う。

 特別美人というわけではないが、彼女の雰囲気と振る舞いには、時々どきりとさせられる。
 恋人がいないのが不思議なくらいだ。

( ^ω^)(……あ、弟者が邪魔するのか)

 姉者の怪我を知ったら、ほとんどの家事を引き受けるであろう友人の顔を思い浮かべ、
 内藤は麦茶に口をつけた。


.

637 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:06:31 ID:VvLJ6h4.O

 7月18日。
 姉者が足を痛めた翌日のこと。

(´<_`;)『熱っ……!』

(;-_-)『あっ!』

(;・∀・)『うわあっ! ごめん弟者! 大丈夫か!?』

 ヴィップ中学校、給食の時間。
 当番の1人だった浦等モララーが、スープの器を差し出した際に、
 弟者の上半身へスープをぶちまけてしまった。

 慌てて、担任が弟者を保健室へ連れていく。
 それを見送るモララーは、すっかり青ざめていた。

(;・∀・)『な、鍋にぶつかっちゃって、咄嗟にそれ支えたら器引っくり返しちゃって……
      どっ、どうしよう、やばいかな……』

(;^ω^)『大丈夫だお、煮えたぎったお湯じゃないんだし……』

(;-_-)『そうだよ。わざとでもないんだから』

638 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:07:55 ID:VvLJ6h4.O

 しょげ返るモララーを慰め、内藤は1人、保健室へ様子を見に行った。

 幸い、弟者は胸元に軽い火傷を負うだけで済んだようだった。

(*^ω^)『大したことなくて良かったお』

 ほっと息をつき、にこにこしながら告げる。
 本音ではあるのだが、教師がいる手前、演技をせずにはいられない。

 手当てを受ける弟者を眺めながらモララーのことを話すと、
 弟者は小さく吹き出した。

(´<_` )『モララーの奴、人に迷惑かけるの好きなくせに、こういうのは気に病むタイプだよな』

( ^ω^)『だおね。あ、着替えいるかと思ってジャージの上着持ってきたお』

(´<_` )『おお、サンキュー』

 処置も済み、先に教室に戻っていろと指示を受けた弟者は
 ジャージを羽織って、保健教諭と担任に礼を言って保健室を出た。

639 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:09:56 ID:VvLJ6h4.O

(´<_` )『姉者が怪我したかと思えば、今度は俺か』

( ^ω^)『次は兄者さんかお』

(´<_` )『はは、かもな』

 内藤の言葉は、あながち冗談でもなかった。

 ──先程、モララーは「鍋を支えたせいで器を落とした」と言っていた。
 それは内藤も見ているし、真実である。

 しかし。

( ^ω^)(……あれは)

 内藤はもう一つ、別のものも目撃していた。


 半透明の、黒い手のようなものが鍋を押したのだ。


 先日の──オワタくん人形が発していた黒い靄に似た禍々しさがあった。
 ただの浮遊霊とは違う。
 弟者がスープをかぶった直後、まるで目的を果たしたかのように、すぐに消えていた。

( ^ω^)(弟者を狙ったみたいな……。……姉者さんの怪我も、別に原因があった……?)


.

640 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:11:01 ID:VvLJ6h4.O

 その日の夕方。流石家の居間にて。

(;´_ゝ`)『あれ……?』

 大学から帰ってくるなり、財布を開いた兄者の顔が青ざめた。

 胸や腹をぱたぱたと叩く。
 背負っていた紺色のリュックサックを下ろし、金具を外して中身をぶちまけた。
 出てきたのはノートとペンケース、それと漫画。

 今度はズボンを脱ぐと、それを逆さにしてばさばさ揺らした。
 携帯電話と鍵が落ちる。

 兄者はそのまま床に倒れ込んだ。頭を抱えて唸る。

l从・∀・ノ!リ人『おっきい兄者、妹者の目が汚れるのじゃ』

( ^ω^)『何事ですかお』

(;´_ゝ`)『……金盗られた……』

 内藤と妹者が顔を見合わせる。
 いつもの奇行かと思いきや、なかなか深刻な事態だった。

641 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:12:36 ID:VvLJ6h4.O

l从・∀・ノ!リ人『どこで?』

(;´_ゝ`)『学食で昼飯食った後、財布をテーブルに忘れたまま講義に出て……
       帰りに思い出して取りに戻ったから──その間か』

( ^ω^)『いくら盗られたんですかお?』

(;´_ゝ`)『5000円』

( ^ω^)『……はあ。ごせんえん』

 それはまた。
 決して安くはないが、かといって、高額かと言われると何とも言えない。

( ;_ゝ;)『俺の全財産だったんだぞ!!
        あんまりだ! カード類までは盗られなかったけどさあ、でもさあ!』

l从・∀・ノ!リ人『可哀想じゃがおっきい兄者の自業自得ではあるのじゃ』

( ^ω^)『まあ財布出しっぱなしで忘れてったのは兄者さんだし』

( ;_ゝ;)『わあああん妹者ー』

l从・∀・ノ!リ人『よしよし、泣かない泣かない。あとズボン穿くのじゃ』

 正座する妹者の膝に頭を乗せ、兄者が妹者を抱き締める。
 いつもの妹者であれば華麗に躱していただろうが、さすがに今は慰めてやることにしたようだ。

642 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:13:31 ID:VvLJ6h4.O

( ^ω^)(……まさか……)

 内藤は床に放り出された兄者の財布を拾い上げた。
 不審なところは見当たらない。

 ──姉者と弟者の怪我。兄者の財布。
 不幸が続いている。

 考えすぎだろうか。
 しかし昼間の、あの黒い手は?


.

643 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:14:58 ID:VvLJ6h4.O

 さらに次の日。
 内藤達が夕飯を食べ終えた頃、姉者が帰宅した。

 顎の辺りや肘に絆創膏を貼った彼女に、
 ぎょっとした弟者が、何があったのかと問う。

∬;´_ゝ`)『学校の階段で落ちちゃって……』

 放課後、階段を下りている途中で躓いたらしい。
 そのときに顎と肘を擦りむき、腰を打ったのだという。

 たまたま目の前に別の教師がいて、奇しくもクッションの役割を担ってくれたそうだ。

∬;´_ゝ`)『もう、血の気引いたわ……。相手の先生は背中ちょっと打っただけで済んだみたい』

( ^ω^)『……良かったですお』

 ──良くはない。

 やはり、不自然なほど災難が起こっている。

644 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:16:41 ID:VvLJ6h4.O

(;´_ゝ`)『俺ら祟られてんのか?』

 ぽつりと、兄者の口から漏れた一言。

 それは内藤の頭の中にあった考えと、ほとんど同じだった。

l从・∀・ノ!リ人『たたりなのじゃ?』

(;´_ゝ`)『ここ3日で色々ありすぎじゃないか。なあ姉者──』

::∬; _ゝ )::

(;´_ゝ`)『あ』

::∬; _ゝ )::『た、たた……り……?』

(;´_ゝ`)『あ。あ。あ。いや。すまん。違う。待て。待って』

::∬; _ゝ )::『たた、たたたたた、』

(;´_ゝ`)『何でもない! ただの偶然だ! な!』

 兄者の手が、姉者の肩に触れる。
 触れてしまった。

645 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:18:05 ID:VvLJ6h4.O


∬;_ゝ;)『ひゃあああああああああああ!!』


 絶叫し、姉者は内藤にタックルしてきた。
 しがみついてきたつもりだろうが、タックルにしか感じられなかった。
 その勢いで2人揃って倒れ込み、内藤は床に頭を打ちつける。

∬;_ゝ;)『私なんにもしてませんんん!! 悪いことしてませんいい子にしてましたぁああ!!』

( ^ω^)『サンタに来てほしい子供ですかお』

(;´_ゝ`)『うーん、どっちかと言うと、なまはげに来られた子供じゃないか』

(´<_`#)『分析してる場合か! 兄者のせいだぞ!? 何が祟りだ馬鹿らしい!!』

(;´_ゝ`)『あっやだごめんなさい! 本当ただ口が滑っただけなんです!』

 怒鳴る弟者の手が僅かに震えていたが、指摘してやらない程度の優しさは内藤も持っている。
 それより姉者をどかしてほしい。
 ひときわ柔らかい一部分を押しつけられると、何だか、色々と困る。

647 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:20:07 ID:VvLJ6h4.O

( ^ω^)『姉者さん、心当たりがないんなら、それでいいじゃないですかお。
       悪いことしてないなら祟られるわけないし』

 ──実際は、悪いことをしたつもりなどなくても祟られるときは祟られる。
 が、そこまで言う必要は、今は無い。

l从・∀・ノ!リ人『姉者、美味しい飴あげるから泣かないのじゃ。
       今日ぼるじょあ君がくれた飴でのう』

(;´_ゝ`)『ぼるじょあ!? 前に言ってた金持ちの息子か!? ついに貢いできたのか!』

l从・∀・ノ!リ人『間接的にねだったらくれたのじゃ。ちょろい』

(;´_ゝ`)『俺の妹がこんなに悪女なわけがないけど可愛い』

 いざ祟られたり呪われたりするとすれば、姉者達より妹者の方が確率は高いと思う。

 姉者の腕の力が弱まった隙に、内藤は彼女の下から抜け出た。
 代わりに妹者が姉者の横に座り、頭を撫でてやっていた。

648 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:21:20 ID:VvLJ6h4.O

l从・∀・ノ!リ人『よーしよし。おばけなんてなーいさ、おばけなんてうーそさ。たたりもないのじゃ』

∬;_ゝ;)『あううう』

( ´_ゝ`)『いいなー姉者いいなー』

(´<_` )『……ブーン』

( ^ω^)『お』

 居間の出入り口に立った弟者が、内藤を手招きした。

 2人で廊下に出る。
 腕組みをして、弟者は苦虫を噛み潰したような顔を内藤に向けた。

(´<_` )『あの女、変なことやってないだろうな』

( ^ω^)『あの女?』

(´<_` )『……出連ツン』

( ^ω^)『ああ』

 言われて気付いた。
 ツンなら、特定の人物を呪うような──そんな知識も持っていそうだ。
 内藤だって一度呪われたし(あれはツンに、と言うよりオワタくんに、と言った方が正しいだろうが)。

649 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:22:21 ID:VvLJ6h4.O

( ^ω^)『さすがに、ろくに会わないような人間に、いきなりそんなことしないんじゃないかお』

(´<_` )『頻繁に会う人間には何かやらかす、って言い方だな』

( ^ω^)『それは否定出来ないお』

 内藤は顎に手をやった。
 ツンの顔と共に、様々な言動が脳裏に浮かぶ。
 それから芋づる式に、オサムやくるう、しぃの顔が浮かび──

( ^ω^)『──……弟者』

(´<_` )『何だ?』

( ^ω^)『ギコさんの連絡先、分かるかお?』



 これがたとえば、大して親しくもない人間の周囲で起きていることだったなら、
 内藤は無視していたかもしれない。

 しかし、それが弟者達となると、放置するわけにもいかなかった。

650 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:23:29 ID:VvLJ6h4.O

 内藤はギコに電話をかけ、姉者達の身に起きたことと、黒い手について相談した。
 調べてみる、との答えを頂く。
 以前もらったツンの名刺が手元にあるものの、そちらに連絡するのは癪だった。


 それから数日間。
 姉者や弟者は軽い怪我を負うような事故に遭い続け、兄者は失せ物などの不幸に見舞われた。
 酷いときには、同じ日に3人とも災難に巻き込まれたことも。

 全てが収まったのは、初めに姉者が負傷した日から1週間ほど経過した頃であった。


#####

651 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:26:52 ID:VvLJ6h4.O


(*゚ー゚)「──そして先週火曜日、7月24日。
     ギコがヴィップ小学校付近を調査していたところ……
     終業式を終えて下校する1人の女児の後ろを、ぴったりついていく被告人を発見した」

(*゚ー゚)「以前幽霊裁判にかけられた男であることに気付いたギコが、
     被告人と、その女児に取り調べを行ったことで
     今回の件が発覚したものである」

 起訴状には、姉者の事故の状況等が細かく記されていた。
 内藤と弟者に出廷を頼みに来た日、あのとき既に、姉者達から詳しく話を聞き出していたのだろう。

(*゚ー゚)「罪名及び罰条!
     呪詛の罪、おばけ法第75条」

(*゚ー゚)「以上の事実について、審理を願います」

 お馴染みの締めくくり。オサムが頷く。

 アサピーは合間合間に笑い声や唸り声を挟んでいた。
 彼の心情が読めない。

652 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:28:16 ID:VvLJ6h4.O

【+  】ゞ゚)「被告人は……一応、罪を認めていないんだっけか」

(,,゚Д゚)「たしかに認めてないわよ。認めてないけど……」

(-@∀@)「皆様が僕を犯人だと言うならそうなの、カモ、ねえ。
      そうじゃないのカモ?」

川 ゚ 々゚)「ちんぷんかんぷん」

(;,゚Д゚)「この調子で」

ξ;--)ξ「……弁護側は、一応、無罪の方向で進めるつもりです……」

(*゚ー゚)「彼は常に、我々を翻弄して楽しもうとしています。
     そういった性格と言動は好ましくありませんね」

【+  】ゞ゚)「前の裁判のときと変わらんな」

 オサムが口元に手をやり、親指で左の頬を擦る。
 僅かだが、声に不快そうな響きが滲んだ。

653 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:31:24 ID:VvLJ6h4.O

(´<_`;)「あの……。……じゅその罪、って?」

 弟者が消え入りそうな声でギコに訊ねた。

 実のところ、内藤も弟者も細かいところを知らされないまま、ここに来ている。
 アサピーがヴィップ小学校──妹者の通う学校──で発見されたことすら初耳だし、
 罪状も明確には教わっていなかった。

 何か考えがあってのことだろうが、その考えにまで予想が至らない。

(,,゚Д゚)「呪詛罪は読んで字のごとく、誰かを呪うことを禁止する法律。
     呪いって言っても様々だから、程度や物によっては別の罪になることもあるけど、
     今回は呪詛罪ってことで起訴したのよ」

 なるほど、と弟者と内藤が頷いた直後、しぃが口を開いた。

654 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:34:00 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「先程、起訴状で出た『女児』について、話をさせてもらいます」

【+  】ゞ゚)「ああ。頼む」

(*゚ー゚)「女児は、ヴィップ小学校の3年3組に所属する凛々島リリという生徒です」

(´<_`;)「3年3組?」

 思わずといった様子で、弟者が声をあげた。
 内藤以外の全員の目を向けられ、弟者の体が揺れる。

(*゚ー゚)「何かご存じのようで」

(´<_`;)「……妹者のクラスだ」

(*゚ー゚)「そう! 凛々島リリは、この流石弟者君の妹のクラスメートなんです」

 やや大きな写真が掲げられた。
 そこには1人の少女が写っている。

   【⌒*リ´・-・リ】

 正面を向いているが、視線は下方へと逸らされていた。
 快活な印象はない。
 固く結ばれた口元は、拗ねているようにも見えた。

655 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:35:27 ID:VvLJ6h4.O

 まじまじと見つめるオサムの腕にくるうが縋ったところで、しぃは写真を下ろした。
 子供にまで嫉妬しなくていいだろうに。

川#゚ 々゚) フーッ

(*゚ー゚)「今回の事件において、この少女は重要な鍵であります」

ξ゚听)ξ「……」

 ツンが口を開き、少し固まって、閉じた。
 割り込むほどの言葉が思いつかなかったのだろうか。

656 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:36:48 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「彼女への取り調べは僕とギコが行いましたが、幽霊裁判については説明しておりません。
     僕達はカンオケ神社の関係者であるいうことにして、
     『悪い霊を祓ってやる』と言って話を詳しく聞きました。
     方便とはいえ嘘をついたこと、それと勝手に名前を借りたこと、今お詫びします」

【+  】ゞ゚)「それは構わん」

(*゚ー゚)「ありがとうございます。
     ──聞くところによると。
     凛々島リリは、流石妹者のことを良く思っていなかったようです。敵意すらあった」

(´<_`;)「て、敵意……」

( ^ω^)「好きな男の子を妹者ちゃんに取られでもしましたかお」

(*゚ー゚)「そういうわけではないけれど──
     男女、特に男子生徒から人気のある流石妹者を妬んでいたみたいだね」

(,,゚Д゚)「小学生とはいえ、女としてそういう嫉妬はするものなのね……」

657 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:38:37 ID:VvLJ6h4.O

(*゚ー゚)「が、直接危害を加えるようなことはなかったそうだ。
     というより、そんなことをする勇気を持っていなかった」

(-@∀@)「……気が弱いオジョーサンでございましたからねえ」

(*゚ー゚)「だから手助けしたんでしょう?」

(-@∀@)「ええ、まあ」

 しぃが仕掛けてきた一言に、アサピーはあっけらかんと答える。
 彼は肩を竦め、頭を揺らして笑った。

ξ゚听)ξ「……異議」

(*-ー-)「申し訳ございませんね。核心に触れすぎましたか?」

 毎度のことだが、何とも底意地の悪い言い方をするものだ。
 ツンがしぃを睨み、しぃはツンに嘲笑を送った。
 額に青筋を立て、ツンが口の両端を吊り上げる。

658 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/09(土) 20:39:56 ID:VvLJ6h4.O

ξ#゚∀゚)ξ「しぃ検事……ここ3件ほど私に負け続けてるくせに、
      まーだ自信が有り余っておられるのねえ……?」

(;*゚ー゚)「まっ、負けって──この前のは有罪判決だったんだから僕の勝ちだろう!?」

ξ#゚听)ξ「情状酌量に持ち込めたんだから私の勝ちでしょうよ!」

(#゚ー゚)「あれはほとんど被害者の自爆と被告人の告白によるものだ!
     あなたは具合を悪くしてふらふらしてただけじゃないか!!」

ξ#゚听)ξ「またふらふらして心配かけさせてやろうか!!」

(#゚ー゚)「誰が心配なんぞするか!!」

川;゚ 々゚)「うー……」

【+  】ゞ゚)「静粛に静粛に。今それは関係ないだろう」

 木槌の音に、ツンとしぃは同時に顔を背けて舌打ちした。
 アサピーはくすくすと可笑しそうにしている。

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