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481 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:15:50 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「ところで弁護人、質問はもうよろしいですか」
ξ゚听)ξ「ええ。ひとまずは」
(*゚ー゚)「では話を戻します。
……以上のことから、被告人が設楽氏を殺したのは紛れもない事実。
ならば、動機は何か?」
(*゚ー゚)「生前、設楽氏はヴィップ総合病院の小児科に勤めていた。
今さっきギコが話していた病院と同じですね」
ぺらりと、しぃの手元で書類がめくれる音がする。
しぃは、ヒートと書類を見比べた。
(*゚ー゚)「そして──被告人は昨年の夏まで、看護師として勤務していましたね」
ノパ听)" コク
ヒートは頭を小さく縦に振った。
医者と看護師のカップルだったわけか。
ドラマなどではよく見るが、実際に見るのは初めてだ。
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482 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:17:37 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「彼らは3年ほど前から交際を開始した。
公にはしていなかったものの、仲のいい同僚にだけは話していた。
同僚いわく、非常に仲が良く、上手くいっていたとのこと」
ノパ听)「……本当は、職場内の恋愛は禁止されてたから。
信用出来る人にしか話さなかった」
【+ 】ゞ゚)「それはあれか、ろまんすってやつか」
(,,゚Д゚)「やだオサムちゃん、覚えたての言葉使いたがる小学生みたい」
川*゚ 々゚) ホー
オサムを無視して、しぃは話を続けた。
内藤はたまにオサムが神様であることを忘れそうになる。
(*゚ー゚)「しかし交際から一年──今から2年前ですね。
2人の前に、障害が立ちはだかる」
Σ川 ゚ 々゚)
(*゚ー゚)「設楽氏の父は別の病院で医者をやっていて、
ヴィップ総合病院の院長とは旧知の仲だった」
-
483 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:18:42 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「設楽さん。
あなたは父から、ある女性を紹介されましたね。
……ヴィップ総合病院の院長の娘さん」
('(゚∀゚∩「……はい」
なおるよの声は、だいぶ抑えられていた。
一方でヒートは、眉一つ動かさずに正面を見据えている。
(*゚ー゚)「設楽氏の両親は、その女性との交際を勧めた。
結婚にまで至れば、やがて設楽氏が院長の座につくことが充分に有り得たからだ」
('(゚∀゚;∩「で、でも、僕は断ったんだよ!」
(*-ー-)「ええ。あなたは被告人を両親に紹介して、
娘さんとの縁談は受けられないとはっきり断りました。
……そのせいで、両親は激怒しましたね」
川;゚ 々゚) ドキドキ
ξ゚听)ξ「……昼ドラっぽいわあ」
( ^ω^)「同感ですお」
-
484 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:19:27 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「設楽氏と両親は、何度も衝突を繰り返した。
もともと院長の娘が設楽氏に気があったこともあり、
設楽氏と被告人は常に不利な立場にいた」
(゚々 ゚;≡;゚ 々゚) ハラハラ
(*゚ー゚)「そして去年。
総合病院の中で、ある噂が流れ始めた。
──設楽なおるよと砂緒ヒートは恋仲であると」
Σ川;゚ 々゚) !
(*-ー-)「先程被告人自身が言った通り、職員同士の恋愛は禁止されている。
さらに噂には『砂緒ヒートの方が執拗につきまとい、無理に付き合っていた』
『設楽なおるよは迷惑していた』という尾ひれまで付いていた」
川;゚ 々゚) ア…ア…
(*゚ー゚)「……こうなれば、後の流れは決まったようなもの。
砂緒ヒート1人だけが責任を問われ、解雇処分となった。
誰が噂を流した張本人かは、大体察しがつきますね」
川 ; 々;)
-
485 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:20:43 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「なお、このとき設楽氏は被告人を庇うことはしなかった──と同僚が証言している」
Σ川 ; 々;) !?
('(-∀-;∩「……」
(*゚ー゚)「それから間もなく、被告人は行方不明になり……
2ヶ月後、隣町の山奥で白骨死体となって見付かった。
歯形等で身元の確認が出来たので、その骨が被告人本人であることは間違いない」
(*゚ー゚)「死体の近くから、汚れた刃物や遺書も発見されている。
遺書には『何が起こったか』という詳細は伏せられていたものの、
設楽氏に対する怒りと悲しみが記されていた」
::川 ; 々;)::
(*゚ー゚)「自殺の件は院長の娘の耳にも入り、
責任を感じた彼女は、自ら縁談を破棄した……」
しぃはそこで黙った。
ギコが机の下の鞄からペットボトルを取り出し、しぃに手渡す。
CMでよく見かける緑茶のパッケージ。
その中身を一口飲み、しぃは朗読を再開させた。
-
486 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:23:16 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「その後しばらくして、霊となった被告人は設楽氏のもとに現れるようになる。
愛しい男に会うためではなく、殺す機会を窺うために」
('(゚∀゚;∩「こっ……」
(*-ー-)「……そうして今年7月8日、設楽氏の体を操り、飛び降りることで、
殺害へと至った」
(*゚ー゚)「──設楽氏が被告人を守らなかったことが怨恨に繋がったのは明確である。
また、件の噂が設楽氏の両親や院長によって作られたものだと被告人は信じており、
それさえも設楽氏への恨みに転換させたと証言している」
しぃがまたお茶を口にする。
一気に半分ほど飲むと、ペットボトルを叩きつけるかのような勢いで机に置いた。
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487 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:24:28 ID:qgnrL7UgO
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(*゚ー゚)「罪名及び罰条!
復讐罪、おばけ法第68条!」
(*-ー-)「……以上の事実について、審理を願います」
復讐罪。
復讐目的で、他者に危害を加えることを禁ずる──というものらしい。大雑把に言えば。
復讐に至った経緯によって、量刑が変わるとツンは言っていた。
( ^ω^)(この場合だと、重いのか軽いのか……)
川 ; 々;)「無罪! 無罪! 可哀想だよお、許してあげようよお」
【+ 】ゞ゚)「くるうは優しいな。いい子だ」
川*´々`)
(*゚ー゚)「たしかに被告人は辛い思いをしました。
しかし──人殺しが許されるほどのものだったかは、甚だ疑問です。
職や信頼を失ったとはいえ、彼女にはまだ、何事もやり直す余地があった筈だ」
-
488 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:26:29 ID:qgnrL7UgO
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( ^ω^)「でもやっぱ、恋人に庇ってもらえなかったのはキツかったんじゃないですかお」
(*゚ー゚)「恋人だからこそ、設楽氏の立場を理解するべきだったと思うね。
設楽氏は院内でも評判の医師で、彼が噂を否定して院長を糾弾するようなことがあれば、
院内はますます混乱しただろう」
(,,゚Д゚)「ま、そのせいで業務に支障が出るのも困るしねえ、患者からすれば。
それ考えると、なかなか行動出来ないかもね」
('(゚∀゚;∩「……検事さんの言う通りだよ。
でも今は、馬鹿なことをしたと思ってるよ。
あのとき、僕がちゃんと説明すれば良かった……」
(*゚ー゚)「ほら、このように設楽氏は反省しています。
それに被告人が幽霊となって現れた以降も、
彼は生前と変わらぬ態度で愛情を注いでいたそうじゃないですか。
果たして彼に、命まで奪われる謂れはあったでしょうか?」
('(゚∀゚;∩「──でっ、でも! だから! そもそも!
ヒートは復讐なんかで人を殺すような人じゃないんだよ!!」
突然食って掛かってきたなおるよに、しぃは目を丸くさせた。
まだ言うか、とうんざりしたような呟きがしぃの唇から零れる。
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489 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:28:57 ID:qgnrL7UgO
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('(゚∀゚;∩「ヒートは優しくて、すごく真っ直ぐで、心の熱い人で……。
何があっても受け止められる強さを持った人なんだよ!
どんなに理不尽な目に遭っても、それを乗り越えて生きてた!」
('(゚∀゚;∩「贔屓目でも何でもなく、僕は、ヒートのそういうところが好きだったんだよ……。
だから、ヒートが復讐のために……自分だけのために人を殺すなんて有り得ない!!」
ギコが頬を押さえ、何やら、きゃっきゃと盛り上がっている。
この中で一番の乙女心を持つ彼には、なおるよの主張は琴線に触れるものだったのだろう。
('(゚∀゚;∩「きっと、別の理由があった!
彼女なりの考えがあって、その理由を話さないだけだよ!!」
ノパ -゚)
ヒートがなおるよを見つめる。
きゅっと唇を噛み締め、何も言わずに顔を逸らした。
顎が僅かに震えている。言葉か──あるいは涙を堪えるような仕草だった。
しかし、何だろうか。
内藤は、得も言われぬ引っ掛かりを覚えていた。
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490 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:31:38 ID:qgnrL7UgO
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かこん。
オサムの木槌が、ひどく軽い音を立てた。
【+ 】ゞ゚)「設楽なおるよ。その調子で……いや、調子は少し落として、
事件当日のことを話してくれ」
一呼吸おいて、なおるよが、はい、と返事をする。
興奮してすみません、とも付け加えて。
('(゚∀゚∩「……あの日は、SSビルの中にある雑貨屋に、ぬいぐるみを買いに行ってたよ。
小児科の診察室や病室には、子供達を安心させるためにぬいぐるみを置くようにしてたから……」
('(゚∀゚∩「その後、展望台に上ったよ。ヒートのお気に入りの場所だった。
窓の鍵が壊れてるって注意書きがあって、気になったから見に行ったよ。
そしたら──隣にいたヒートが急に近付いてきて、体に入る感じがして、そのまま……」
オサムがしぃを一瞥する。
しぃはオサムの求める答えを察したようで、資料を確認しながら言った。
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491 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:32:16 ID:qgnrL7UgO
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(*゚ー゚)「被告人の証言との食い違いはありませんね。
それと、取り調べの際、被告人は『今なら殺せると思ってやった』と言っていました。
計画的な犯行ではなかったようです」
川 ゚ 々゚)「今んとこ、しぃは一回も嘘ついてないよー」
【+ 】ゞ゚)「分かった、ありがとう。
で……普段から被告人と行動していたそうだが、
いつもどういうところに行ってたんだ」
('(゚∀゚∩「色々……思い出の場所とか、近くの公園とか。
なるべく人の少ないところや広いところにしてたよ」
【+ 】ゞ゚)「被告人はどういう反応だった?」
('(゚∀゚∩「会話出来ないし触ることも出来なかったけど、
話し掛けると、首を振って返事してくれたよ。
僕は、彼女も楽しんでくれてるように感じてた」
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492 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:33:16 ID:qgnrL7UgO
-
そこで内藤は、いつもより静かなことに気付いた。
原因を探るまでもない。
ツンが、途中からずっと黙りこくっているのだ。
ξ;゚听)ξ「……」
机に手をつき、深呼吸をするツン。
時おり呼吸のリズムが乱れる。
青白い顔の額に、うっすらと汗が滲んでいる。
見るからに危険な状態だった。
( ^ω^)「ツンさん」
(*゚ー゚)「……何ですか、やっぱり具合悪いじゃないですか。
だから延期しろって言ったんですよ」
ξ; )ξ「ぐ……」
(;*゚ー゚)「──って、あっ、ツンさん!?」
ずるずると、ツンが床にへたり込んだ。
右手で机の縁を掴んでいるから何とか支えられているが、
もう少しで前のめりに倒れてしまいそうだ。
-
493 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:34:35 ID:qgnrL7UgO
-
(;,゚Д゚)「あーもー、何なのあんた。生理?」
ξ; )ξ「セクハラで訴えるぞオカマ……」
内藤はツンの横にしゃがみ、背中に手を当てた。
効果があるかは分からないのだけれど、とりあえず背中を摩る。
('(゚∀゚;∩「どこか痛むところとかある?
この顔色はちょっと、裁判どころじゃないよ……」
【+ 】ゞ゚)「医者が言うなら、無理させるわけにはいかないな」
はっとしたように、ツンが急いで立ち上がろうとする。
しかし、すぐに足から力が抜けた。
今度は体が後ろに傾く。
内藤が背中に手をやっていたおかげで、倒れることはなかった。
【+ 】ゞ゚)「弁護人。その体たらくじゃ、弁護どころじゃないだろう。
今回は閉廷して──」
ξ; 听)ξ「やります……!」
絞り出すような声。
脂汗を浮かべながらも、ツンの眼光は鋭い。
-
494 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:35:54 ID:qgnrL7UgO
-
ξ;゚听)ξ「……まだ、やります」
(;,゚Д゚)「んなこと言ったってあんた……」
その瞬間、大声が響いた。
ノハ;゚听)「──もういいよ!!」
声の主はヒート。
オサムへ向けて、彼女は怒鳴るように言葉をぶつけた。
-
495 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:36:59 ID:qgnrL7UgO
-
ノハ;゚听)「もう判決出してくれよ!
私が勝手になおるよを恨んで、勝手に殺したんだ!
悪いのは私だけだ! だから早く、こんなの終わらせろ!!」
('(゚∀゚;∩「だっ……駄目だよヒート!!
どうして嘘をつくの!? このまま判決が出たら──ろくな結果にならないよ!!」
川;゚ 々゚) オロオロ
ξ; )ξ「……なおるよさん、正論ね……」
ツンが、囁くように言った。
内藤以外には聞こえなかったようだ。
ξ; )ξ「このままじゃ、まともな結果にならないわ……」
-
496 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:38:20 ID:qgnrL7UgO
-
( ^ω^)「……」
ツンの背中へ回した内藤の腕に、震えが伝わってくる。
こんなの、まともな状態ではない。
とてもじゃないが、他人を気にしている場合だとは思えなかった。
ここまでして──どうして。
ツンは裁判の日取りの延期を望まない。
ヒートは、そもそも裁判自体がこれ以上続くのを望まない。
何をそんなに急ぐことがある?
さっさと有罪判決が出て、刑が執行されて──ヒートに何の得がある?
答えとなる発言はなかっただろうか。
覚えている限りのヒートの言葉を思い出す。
しかし考えてみれば、彼女はそもそも大して喋っていない。
彼女が元になった情報など、ろくに──
( ^ω^)(……あ)
──はたと気付く。
そうだ。
ヒートから得た情報が、極端に少ない。
ほとんどが、しぃとなおるよの口から出た話である。
-
497 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:39:07 ID:qgnrL7UgO
-
内藤は頭を振った。
ヒート以外の人間の発言を隅に追いやり、
ぽつんと残ったヒートの言葉だけに注目する。
そうして一つだけ、引っ掛かるものがあった。
.
-
498 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:40:16 ID:qgnrL7UgO
-
ξ; )ξ「……内藤君、ごめん、……君の出番来ちゃったみたい……」
ツンが内藤の左手を握った。
指先が、ひどく冷たい。
ξ;゚听)ξ「何でもいいから……ちょっとだけ、助けて……」
至近距離で覗く彼女の瞳は、不安に揺れていた。
助けてと言われても──どうするべきか、内藤には分からない。
分からないから、出来ることをするしかない。
内藤は体勢をそのままに、頭に浮かんだ言葉を口にした。
( ^ω^)「──質問がありますお」
.
-
499 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:41:50 ID:qgnrL7UgO
-
(;*゚ー゚)「……今?」
( ^ω^)「あの、ヒートさん。
裁判長に死因を訊かれたときに『覚えてない』って言ったけど、
本当にそうなんですかお?」
ノハ;゚听)「は? な、何だよ、急に。……覚えてないよ」
( ^ω^)「自分が自殺したこと、丸ごとですかお?」
ノハ;゚听)「……、……そうだよ」
( ^ω^)「でも──他のことは、ちゃんと覚えてたじゃないですかお」
( ^ω^)「生年月日も、職場のことも……死んだ日付まではっきり覚えてるのに。
死因だけ覚えてないのって、変な感じがしますお」
机が壁になり、しゃがみ込んでいる内藤にはヒートの顔は見えない。
それでも動揺は伝わった。
-
500 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:43:28 ID:qgnrL7UgO
-
ノハ;゚听)「そ、れは、……」
( ^ω^)「第一、たとえ覚えてなくても、取り調べのときにしぃさん達から聞かされたと思うんですけど。
なのに裁判長に訊かれたときは『忘れた』って答えるの、納得いきませんお」
今の反応からして、本気で忘れていたということはないだろう。
彼女は隠している。
何をかは分からないが、まだ、明かしていないものがある。
(,,゚Д゚)「……そうね、たしかに不自然なくらい、そこだけ抜け落ちてる……」
訝しげに、ギコが呟いた。
ツンの、ほっと息をつく声が微かに聞こえた。
(,,゚Д゚)「ブーンちゃんの言う通りだわ。
これ、おかしいわよ。特に今回は自殺なんだから」
川 ゚ 々゚)「? なんで?」
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501 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:45:16 ID:qgnrL7UgO
-
(,,゚Д゚)「たとえば死因が事故死だったとしたら……しかも即死なら、
死の瞬間を覚えてない=死因が分からない──ってのも有り得るけど」
(,,゚Д゚)「わざわざ隣町の山の奥に入ってって、遺書まで用意して……
覚悟決めてそこまでやっておきながら、全然覚えてないって変よねえ。
他のことは覚えてるのに」
(*゚ー゚)「……かといって、さっき言ったような事故死は有り得ない、か。
遺書があったわけだから」
(,,゚Д゚)「そう。こうなると、残る可能性は大まかに言って3つよね……。
1・自殺したことは覚えているけど、隠したかった。
2・極めて確率は低いけど、本当に覚えてない。
3・死因は別物で、遺書は偽造されたものだった」
川;゚ 々゚) ?????
【+ 】ゞ゚)「くるう、無理に理解しようとしなくていいよ」
内藤とツンを置いて、どんどん話が進んでいく。
もしかしてもしかすると、内藤の質問は「当たり」だったのではなかろうか。
ツンが、震える手をこっそり上げて、親指を立てている。
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502 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:47:40 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚−゚)「1は無いね。既に隠せてないし、遺書も刃物も見付かってるから誤魔化しも効かない」
(,,゚Д゚)「2は有り得ないとは言い切れないけど、やっぱ変よね。理由はさっきの通り。
……そうなると残るのは、」
(*゚−゚)「3……。でも遺書を偽造するってことは、何者かが関与しているわけだよな」
(,,゚Д゚)「他殺の線が濃厚になってくるわよねえ……。
いきなり刺されて死んだ、とかなら、死因が分からないのも有り得る……かしら」
ツンが、内藤の肩に手を置いた。
それを支えに体勢を変え、今度は机に手を乗せる。
内藤が手伝ってやると、机に凭れながらではあるが、ツンが何とか立ち上がった。
それに合わせて内藤も起き上がる。
ばさばさと、しぃが慌ただしくファイルを引っくり返した。
(*゚ー゚)「この遺書の文面で得するのは誰だ?」
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503 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:49:11 ID:qgnrL7UgO
-
(,,゚Д゚)「んー……内容は、設楽さんを非難するものよね」
(*゚ー゚)「なら、彼の評判を落としたい人間の仕業か?」
(,,゚Д゚)「あるいは──」
ギコとしぃの瞳が、同時になおるよへ向けられた。
なおるよはぎょっとした様子で開口した。
('(゚∀゚;∩「何なんだよ」
(*゚ー゚)「すみませんね。あくまでも可能性の話です。
ただ、もし──あなたが、本心では院長の娘さんとの結婚を望んでたのだとしたら……。
被告人は邪魔者になっただろうと思いまして」
('(゚∀゚#∩「っ……!!」
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504 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:50:12 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「それに、遺書に自分の非を敢えて記すことで、
彼女の『自殺』に一層の現実味を与えたという考え方も出来ますし。
これなら──」
('(゚∀゚#∩「ふざけるな!!」
川;゚ 々゚) ビクッ
ノハ;゚听)「っ、」
腹の底から出したような大声。
しぃの「お喋り」が途切れ、くるうはオサムにしがみつく。
俯いていたヒートの肩が、びくりと揺れた。
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505 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:51:28 ID:qgnrL7UgO
-
('(゚∀゚#∩「僕はヒートしかいらない!!
ヒートと一緒にいられるならそれでいいって、それしか思ってなかった!!
なのに何でヒート以外の女のためにそんなことしなくちゃいけないんだ!?」
(;,゚Д゚)「やーもうごめんなさいね本当……そんなに怒っちゃ嫌よう。
しぃ、あんたもほいほい喋るんじゃないの、そんなこと」
オサムが木槌を3度ほど鳴らした。
なおるよは、検察席を睨みながらも沈黙する。
激怒と言える表情だ。よほど腹が立ったのだろう。
( ^ω^)(この人、結構恐いもんだお)
何だか、審理が思わぬ方向に進んできた。
ここにきてヒートの死そのものが問題になってくるとは。
しぃがなおるよからヒートの方へと向き直り、色々と質問を浴びせていく。
だが、ヒートの口はますます堅くなったようだった。
もはや、誰の目にも明らかだ。
ヒートは「そこ」に触れようとしない。
しかし「そこ」には、何か重要なものが潜んでいる。
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506 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:54:13 ID:qgnrL7UgO
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(*゚ー゚)「……裁判長。
このままではどうにも、話が進みません」
【+ 】ゞ゚)「そうだなあ」
(*゚ー゚)「改めて調べなければいけない問題も出てきましたし──
やはり今日のところは、閉廷ということにしませんか」
ノハ;゚听)「!」
ヒートの顔に、はっきりと焦りが浮かんだ。
首を横に振っているが、言葉までは出てこない。
そこへ──随分と久し振りに聞いたような気さえする声が落とされた。
ξ゚听)ξ「……異議」
ようやく参戦し直したツンの一言目は、たったの二文字だった。
しぃの提案に頷きかけたオサムの動きが止まる。
ツンの顔色は、先程よりはマシになっていた。
それでもまだまだ「悪い」部類に入るが。
-
507 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:56:07 ID:qgnrL7UgO
-
(,,゚Д゚)「ちょっとは回復した?
良かったわね。ブーンちゃんがいなかったら、とっくに終わってたかもしれないわよ」
ξ゚听)ξ「もう超元気よ。まだまだやれるわ。
あと内藤君のあれは、私がああいう内容で質問しろと事細かに指示したものよ」
( ^ω^)「え、何で手柄横取りしたの今」
(*゚ー゚)「……で、異議って何ですか? 今日はもう、何しても無駄だと思いますけど」
(,,゚Д゚)「独り身で家に帰るのが寂しいからって、他人との交流求めて審理長引かせるのやめてよね」
ξ#゚听)ξ「寂しくないわボケ!!」
川 ゚ 々゚)(嘘の臭い)
ツンはギコに向かって中指を立ててから、横にいるなおるよに視線をやった。
なおるよの顔には、まだ怒りの名残が居座っている。
-
508 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:58:15 ID:qgnrL7UgO
-
ξ゚听)ξ「なおるよさん、質問いいですか?」
('(゚∀゚∩「……弁護士さんまで、僕を馬鹿にするの」
ξ゚听)ξ「いえ、本当、ちょっとした疑問なんです。
先程の発言なんですけど。
──ヒートさん以外の女性のために、ヒートさんを殺すわけない……というような」
('(゚∀゚∩「嘘なんかついてないよ」
ξ゚听)ξ「ええ、嘘かどうかはいいんです、別に。
ただ、ちょっと変だなあって」
('(゚∀゚∩「……変?」
ツンが腕を組む。
首を捻ると、それに合わせて金髪が揺れた。
ξ゚ -゚)ξ「そもそも普通は、人を殺すこと自体避けるべきものじゃありません?
でもなおるよさんの言い方だと、何だか、『特定の誰かのためなら
殺すのも有り得る』って意味がある気がして」
-
509 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:59:43 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚−゚)「……? どういうことです?」
ξ゚听)ξ「特定の誰か、っていうか。
……ヒートさんのためならやりかねないって、そう感じたんです。
これ、私の勘違いでしょうか?」
しぃが眉を顰めた。隣のギコは、「たしかに」と頷いている。
彼らの反応を一通り眺め、内藤はなおるよの表情を確認した。
また怒るのではないかと危惧しつつ。
しかし。
そこにあったのは、内藤の脳裏に浮かんだどの予想とも違うものだった。
('(゚∀゚∩「……それ、何かおかしいの?」
きょとんとした表情。
心底不思議そうに、なおるよは首を傾げた。