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435 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:33:36 ID:jIsGywL2O
-
(´・ω・`)「捕まった『おばけ』は、ここの拝殿にて拘束されます。
弁護士さん達は主に、拝殿の中で彼らの話を聞くんですよ」
歩きながら、ショボンは優しい声で説明してくれた。
幽霊裁判については彼も把握しているようだ。
('A`)「俺も、先月はそこにぶち込まれてたなあ」
( ^ω^)「ずっと入ってれば良かったのに」ボソッ
('A`)「あ、なーんか聞こえた。なーんか腹立つこと聞こえた今」
賽銭箱の向こう、3段程度の階段を上がる。
ショボンが格子戸を開け、中を見て──
(;*´゚ω゚`)「ほあぁああっ!!」
叫び、後ろに仰け反った。
-
436 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:35:59 ID:jIsGywL2O
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顔を真っ赤にし、目を覆うショボン。
そんなショボンをドクオが呆れた表情で眺めている。
何事だ。
内藤は、そっと拝殿を覗き込んだ。
拝殿の中は、思ったより広かった。
床は板敷きで、祭壇らしきものや神具が置かれている。
何となく薄暗い室内を想像していたのだが、実際は随分と明るい。
【+ 】ゞ゚)「お。来たな」
祭壇の前にオサムが胡座をかいて座っていた。
その足の上に、くるうがちょこんと乗っかっている。
-
437 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:37:29 ID:jIsGywL2O
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川 ゚ 々゚)「ブーンだー」
( ^ω^)「あ、どうも」
(;*´・ω・`)「おさ、おさっ、オサム様! ここは神聖な場所ですよ!
そんな、は、破廉恥な、あなた、そんなっ!!」
( ^ω^)「え?」
【+ 】ゞ゚)「ううむ……くるう、下りるか」
川#゚ 々゚)「やだ!」
くるうがオサムにしがみつく。
ショボンは、またも奇声を上げた。
-
438 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:39:26 ID:jIsGywL2O
-
(;*´゚ω゚`)「うわあっ、いやらしいいやらしい! 何て恥ずかしい神様なんだ!」
( ^ω^)「……」
('A`)「青ネギ、いいから少年を上げてやれ」
(*´・ω・`)「あっ、そっ、そうですね、どうぞ内藤君、靴を脱いで上がって……」
オサムから目を逸らして草履を脱いで、ショボンが拝殿に上がった。
内藤も靴を脱いで中に入り、ドクオはわざわざ格子戸を摺り抜けていく。
左手の奥に、黒いブラウスの女が横たわっていた。
扇風機の風が金髪を揺らしている。
ショボンと内藤は彼女のもとへ行き、その横に膝をついた。
ξ- -)ξ
(´・ω・`)「ツンさん、ツンさん」
出連ツン。
ほんのり、いびきが混じった寝息を立てている。
よだれまで垂らして、一向に目を覚まさない。寝汚い。
-
439 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:41:41 ID:jIsGywL2O
-
(´・ω・`)「内藤君来ましたよー」
ξ- -)ξ
(;*´゚ω゚`)「ツ、──ぎゃあああああっ!!」
また叫んだ。
ショボンの視線は、ツンの胸元に向いている。
リボンタイが解かれ、ボタンが2つほど外されていた。
(;*´゚ω゚`)「ひええええ……! ひええええ……!!」
('A`)「耐性なさすぎだろ」
( ^ω^)「ええと……。……ユニークな人ですね」
(;*´゚ω゚`)「違っ、僕は別に! 別に興奮はしてません!
寝ている女性をはだけさせて、ぎりぎり起こさないラインを見極めつつ色々まさぐりたいとか、
そんな願望は決して!!」
( ^ω^)(あ、ただのドスケベで気持ち悪い人だ)
【+ 】ゞ゚)「お前はいつか裁判沙汰になるんじゃないか。人間の方の裁判の」
川 ゚ 々゚) ?
くるうの耳を塞ぎつつ、オサムが呟く。
そうこうしている内にショボンが鼻血まで吹き出し始めた。
駄目だ。駄目な人だ。
-
440 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:43:05 ID:jIsGywL2O
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('A`)「こいつの貧乳にまでむらむらするような男、滅多にいねえよなあ……」
ξ゚听)ξ カッ
突然ツンの目が見開かれた。
むくりと上半身を起こし、ぎろぎろ、あちこちに視線を飛ばす。
ξ゚听)ξ「いま誰かクソ失礼なこと言わなかった?」
( ^ω^)「ドクオさんが、ツンさんは色気がなさすぎるからいっそ性転換した方がいいって」
(;'A`)「そこまで言ってねえだろうがよ!!?」
ξ゚听)ξ「……あら、内藤君」
内藤に気付いたツンが、へらりと笑った。
顔が青白い。
本当に具合が悪そうだ。
(;*´"ω"`)「あの、あの、僕は仕事に戻ります、何かあったら呼んでください」
目を白黒させたショボンが、鼻を押さえながら退散する。
出来れば、何かあっても呼びたくないタイプの人種だと思う。
内藤は格子戸が閉められるのを確認し、ツンに顔を向け直した。
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441 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:45:00 ID:jIsGywL2O
-
( ^ω^)「……これ」
挨拶もなしに右手を差し出す。
拝殿に入ってからは弱まったが、それでも依然としてオワタくんの靄が絡みついている。
ξ゚听)ξ「ん……うん……」
胸元のボタンを止め、リボンタイを結び、ツンは頷いた。
元気がない。
のろのろと内藤の右腕を持ち上げたツンは、オワタくんを彼女の目の高さに固定した。
そうして、オワタくんに顔を寄せる。
彼女は人形に向かって何か囁いた。内藤にも聞こえないほどの小声で。
途端、靄が消えた。
内藤の気分もすっきりして、生気が戻ってくるのを感じる。
ξ゚听)ξ「はい、もう大丈夫よ」
(*^ω^)「ありがとうございますおツンさん。大好き」
満面の笑顔を作って、内藤は全力で人形を叩きつけた。勿論ツンに。
それだけでは足りないので、さらに何か投げてやろうかと鞄を探る。
しかしツンが大人しくしているのを見て、やめた。
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442 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:46:36 ID:jIsGywL2O
-
ξ゚听)ξ「……このオワタくん人形は、不吉な人形ってことで有名になったのよ」
人形を見下ろし、ツンは言う。
たしかに縁起が良さそうには見えない。
そもそも、「世を儚んで絶望したキャラクター」なのだから、
元からネガティブな存在だろう。
ξ゚听)ξ「そのキャラクター故か、
持ち主を不幸にするっていう噂が流れてね。
まあ噂は噂だったんだけど……」
ξ゚听)ξ「噂が広まれば、それだけ人の念も大きくなるわけで。
その念をたっぷり吸い込んだおかげで、このオワタくんは噂通りの代物になっちゃったのよ。
色々あって、今はここの神社に預けられてるけど」
内藤はオサムを見た。どちらかといえば睨んだ。
オサムは表情を変えずに首を傾げる。
-
443 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:49:11 ID:jIsGywL2O
-
( ^ω^)「つまり裁判長の持ち物ってことですかお」
【+ 】ゞ゚)「正確には、元の持ち主が『お祓いしてくれ』って宮司に押し付けたから、
仕方なく俺がじっくり浄化してただけなんだが……」
( ^ω^)「じゃあ人形に関する責任は裁判長にあるわけですおね。
裁判長は人形が危険なのを知ってて、ドクオさんが持ち出すのを許したわけですおね」
【+ 】ゞ゚)「……内藤ホライゾンを呼ぶために貸してほしいって言われたから」
( ^ω^)「だからって素直に貸したら駄目でしょうがお。
おかげで僕、下手したら首でも吊って死んでたんですお。
分かりますおね?」
ξ;゚听)ξ「内藤君やめて、大人が子供に叱られてるとこ見たくない。切ない」
川#゚ 々゚)「オサム悪くないもん!!」
くるうがオサムを抱き締める。
オサムの方はといえば、分かっているんだか分かっていないんだか、相変わらず無表情である。
('A`)「あ、俺はただ伝言と配達と案内頼まれただけだしー。無関係ですからー」
ξ;゚听)ξ「もう私が悪いから。お願いした私が悪いから。謝るから」
ぺこりと頭を下げるツン。
その拍子に目眩でもしたのか、床に手をつき、辛そうに息を吐き出した。
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444 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:50:23 ID:jIsGywL2O
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( ^ω^)「……どうしたんですかお、ツンさん。夏バテですかお」
ξ;--)ξ「……ん、ちょっと、仕事がねえ」
過労ということだろうか。
内藤は、先程から見て見ぬふりをしていた一角に視線をやった。
('(゚∀゚;∩「──どうして事実を話してくれないの!?
そんな……そんな態度でいたら、君は凶悪犯にされちゃうんだよ!」
ノパ -゚)「……」
拝殿の隅で向かい合う男女。
男は30代、女は20代ほどか。
男の方が必死で話し掛けているにも関わらず、
女は唇を噛み締めるようにして、答えようとしない。
男が振り回した手が神具を摺り抜けたところを見るに、幽霊なのは間違いなさそうだ。
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446 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:51:41 ID:jIsGywL2O
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('A`)「あれが今回の事件の被害者と加害者だとさ。
男が被害者で、女が加害者」
オサムへの捧げ物らしい饅頭を食べながら、ドクオが言った。
物理的に減りはしないのだが、ドクオが食べる動作をする度に
饅頭のふっくらとした色艶が失せていく。
内藤は「へえ」と返し、改めて男女を観察した。
ノパ -゚)
犯人だという女は、手錠などの類をつけていない。
その上、オサムやツンからは少し離れた場所にいる。
( ^ω^)「あれって、その気になれば逃げられるんじゃないですかお」
('A`)「あ、無理無理。ああやって姿こそ現しちゃいるが、
実際は何かしらの『物』に魂が固定されてっから。
あと結界も張られてるし」
体験者はかく語りき。
何でも、札だったり人形だったり、とにかく物体に被告人を閉じ込めて、ここで管理するのだそうだ。
弁護士や検事が彼らから話を聞きたいときには、
物体から一時的に外に出さなければならない。
-
448 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:53:46 ID:jIsGywL2O
-
壁沿いの棚に並べられた札や人形を眺め、内藤はなるほどと頷いた。
これらが全て、何らかの事件の被告人だとするなら、
ツンが過労で倒れてもおかしくない。
ξ゚听)ξ「……なおるよさん、大きな声を出してたら、ヒートさんが萎縮してしまいますよ」
('(゚∀゚;∩「でも!」
ξ゚听)ξ「ヒートさん、休んでいいですよ」
ノパ -゚)" コクン
女が煙のように消える。
そこには、一枚の紙──お札だけが残された。
オサムがどこからか取り出した木槌で宙を打つと、札はオサムのもとへ飛んでいった。
棚の中、他の札達の隣に並べられる。
('(゚∀゚;∩「あ……」
-
449 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:56:59 ID:jIsGywL2O
-
【+ 】ゞ゚)「弁護士。体はもういいのか」
ξ゚听)ξ「はい。……今から事件の話をしますので、申し訳ありませんが
席を外していただけますか?」
【+ 】ゞ゚)「分かった。なら、俺とくるうは本殿に戻る。
……お前はどうするんだ? もっと酒飲むか」
後半はドクオに向けられた言葉だった。
ドクオがオサムと内藤、ツンを順番に見て、肩を竦める。
('A`)「帰りますわ。ごちそうさんでした」
ξ゚听)ξ「パシリご苦労様でした」
(#'A`) イラッ
【+ 】ゞ゚)「またな。悪さするなよ。行くぞくるう」
川*゚ 々゚)「はーい」
オサムとくるうが拝殿を出ていき、次いでドクオが格子戸を摺り抜けていった。
残ったのは、ツンと内藤、1人の男。
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450 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 21:58:23 ID:jIsGywL2O
-
('(゚∀゚;∩「……ヒート……」
ξ゚听)ξ「……なおるよさん。お待たせしてすみませんでした。
改めて、詳しく話を聞かせてもらえますか」
──もう、何が何だか。
いきなり呼び出されて、来てみれば来てみたで、放置されて。
内藤は眉根を寄せた。
なおるよ、とかいう男も、先程の札を眺めたまま困惑しきりの様子だし。
( ^ω^)「ツンさん」
ξ゚听)ξ「……なあに?」
( ^ω^)「どうして僕を呼んだんですかお」
少し非難の色を込めて訊ねた。
あんな方法で来させたくせに置いておかれるのは、いい気はしない。
ツンは折れていた襟を直して、小さく溜め息をついた。
-
451 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 22:01:43 ID:jIsGywL2O
-
ξ゚听)ξ「ヒートさん──あ、さっきの女の人ね。
彼女の裁判、今夜に迫ってるのよ」
ξ゚ -゚)ξ「……私の体調、ご覧の通り、万全とは言えないでしょ。
だから君にも手伝ってほしいの」
( ^ω^)「手伝うって何を?」
ξ^竸)ξ「まあ、それはそのときに」
絶望的に厄介な話である。
もしかして、また追い詰められたときに「時間稼ぎをしろ」とでも言う気ではなかろうか。
( ^ω^)「そんなに辛いなら、裁判延期してもらえばいいじゃないですかお。
裁判長だってツンさんが倒れるとこ見てるんだし」
ξ;゚听)ξ「それは駄目!」
唐突に、ツンは怒鳴った。
内藤が肩を跳ねさせ、なおるよは札からツンへ視線を移す。
一瞬、間があった。
ツンは目を伏せて、ごめんなさいと呟く。
-
452 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 22:03:54 ID:jIsGywL2O
-
ξ;--)ξ「……この裁判は、延期させない方がいいと思うの。
そもそも大して延ばせないだろうし」
( ^ω^)「何でですかお?」
ξ;゚听)ξ「現行犯逮捕なのよ。ヒートさん。
犯行現場に、ギコの奴がたまたま居合わせててね……」
ξ;゚听)ξ「最悪の場合、開廷から10分で実刑判決の可能性すらあるわ。
しかも私が反証する隙すらなく、ね」
( ^ω^)「……そんなん、あるんですかお」
ξ;゚听)ξ「あるわ」
その理由を、ツンは手短に説明した。
それは内藤にも納得出来る話で──
同時に、「ならば何故ツンは裁判をしたがっているのだろう」と首を傾げたくなる話でもあった。
( ^ω^)「それはまた妙な……」
('(゚∀゚∩「……僕は、何かの間違いだと思う……」
-
453 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 22:05:37 ID:jIsGywL2O
-
なおるよが囁く。内藤とツンは、そちらへ顔を向けた。
彼は膝に乗せた手を握り締め、項垂れている。
('(゚∀゚∩「ヒートは僕の、生前からの恋人なんだよ。
……とても優しくて、──素敵な人で」
愛おしげな声。
口を閉じ、黙り込む。
数秒後、なおるよは顔を上げた。
('(゚∀゚;∩「弁護士さん。ヒートが僕を殺したことは事実でも……
理由はある筈なんだよ。
彼女が主張するのとは、もっと別の……」
-
454 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/05(火) 22:06:42 ID:jIsGywL2O
-
──だって、彼女が復讐なんてするわけがないんだ。
なおるよの最後の一言に、ツンは再び目を伏せた。
*****
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468 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 18:54:12 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「──君も暇な子だね。どちらかといえば賢い方かと思ってたけど、そうでもないのかな」
( ^ω^)「……ほんと、馬鹿だと思いますお」
まだ外が薄明るい午後6時。
今回の法廷は、ドクオのときと同じビルだった。
検察席に立つ猫田しぃに、呆れ果てた様子で声をかけられる。
いやはや、否定も出来ない。
だが仕方ない。
過労で倒れた人間に「助けて」と言われて無下にするというのも、僅かな良心が痛む。
さらに言えば、オワタくん人形以上に凶悪なブツで脅されかねないし。
自分自身に溜め息をつきつつ、内藤は携帯電話を閉じた。
今し方、弟者に「ちょっと帰るの遅れる」とメールを送っておいた。
早退したくせにどこをほっつき歩いているのかと叱られるだろうが、これも仕方ない。
(,,゚Д゚)「ツン。あんた大丈夫なの? 倒れたって聞いたけど」
しぃの隣には例によって埴谷ギコの姿。
今日の衣装はレースまみれのワンピース。目に痛い。痛すぎる。
ツンは動じることなく腕を組み、ギコの問いに答えた。
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469 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 18:55:39 ID:qgnrL7UgO
-
ξ゚听)ξ「こうして法廷に立てるくらいには大丈夫だわ」
(*゚ー゚)「一日くらいは延期を認めてあげようと思ったんですがねえ」
ξ*゚听)ξ「えー何ー? しぃたん心配してくれたのー?」
(#゚ー゚)「あなたのせいで審理に支障が生じるのが嫌なだけです」
(,,゚Д゚)「またまた。ツンの容態をオサムちゃんに訊きまくってたくせにィ。
病院に行かなくていいのかなとか言ってたくせにィ」
(;*゚д゚)「馬鹿ギコ!!」
ξ^竸)ξ
(;*゚ー゚)「何だその顔! ……そっ、そもそもあなたは体調管理がなっていない!
前にも風邪だの何だの言って──」
ξ^竸)ξ アリガトウ
(;*゚ー゚)「裏声で礼を言うな!」
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470 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 18:57:38 ID:qgnrL7UgO
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【+ 】ゞ゚)「静粛にー」
川 ゚ 々゚)「に!」
ゆるく木槌が鳴った。
今回もまた、のっけから騒がしい。
メンバーは揃っている。
裁判長オサムと監視官くるう、検察席のしぃとギコ、弁護人席のツンと内藤。
ノパ听)
被告人の砂尾ヒートに──
('(゚∀゚∩「……」
被害者の設楽なおるよ。
なおるよが立っているのは弁護人席。
内藤となおるよでツンを挟むような形だ。
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471 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 18:58:54 ID:qgnrL7UgO
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【+ 】ゞ゚)「弁護人の体調もあるし、手早く始めようか。
はい開廷」
( ^ω^)(適当すぎる)
内藤はヒートの横顔を見遣った。
昼にツンから聞いた、「裁判を長引かせるのが難しい理由」を思い出す。
理由は主に2つ。
うち一つは、現行犯逮捕であったこと。
もう一つは、
ノパ听)「……だから、私が復讐したくてなおるよを殺したんだってば。
もう満足した。さっさと判決出してくれよ」
──彼女自身が、こう主張していること。
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472 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:00:56 ID:qgnrL7UgO
-
【+ 】ゞ゚)「……と言っているが」
ξ;--)ξ「却下してください。
まだ明らかになっていない事実があります」
ツンの表情には、既に疲労の色が浮かんでいる。
一応、ツンが弁護人である以上ヒートが依頼人ということになるのだが、
そもそもヒートは弁護などいらないと言い張っているという。
ツンが体調不良を押してまで裁判を強行する必要性が、よく分からない。
(*゚ー゚)「でも本人が認めてるんですから。
彼女も正しい判決と実刑を望んでるんですよ? 弁護人は依頼人の意思を尊重すべきでは……」
('(゚∀゚#∩「ヒートは復讐なんかで人を殺すような、自分勝手な人間じゃない!!
もっと何か──深い理由があった筈だ!!」
まあ、たとえツンにやる気がなかったとしても、このなおるよが許さなかっただろうが。
(*-ー-)「呆れた。恋人とはいえ自分を殺した人間を、よくもまあ庇えますね」
(,,゚Д゚)「よっぽど信頼してたのねえ」
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473 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:02:19 ID:qgnrL7UgO
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ξ゚听)ξ「……とにかく、弁護側も殺人の事実は認めるわ。
今回の争点は、その動機よ。
このままじゃ被害者であるなおるよさんが納得出来ないでしょ」
しぃは、やれやれと首を振った。
机の上から書類を取り、ヒートに会釈する。
(*゚ー゚)「ということですので、少々お付き合い願います。
被害者も来ている以上、彼の意思は尊重しなければなりません」
ノパ -゚)「……うん」
ヒートの瞳がなおるよへ向けられた。
一瞬のことで、すぐに逸らされてしまう。
その目からは、彼女の感情は読み取れなかった。
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474 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:04:34 ID:qgnrL7UgO
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【+ 】ゞ゚)「それじゃあ……被告人、まずは名前と生年月日」
ノパ听)「砂尾ヒート。昭和62年の7月26日だ」
【+ 】ゞ゚)「死亡した年月日と享年、それと、あー……死因は?」
ノパ听)「……去年、平成23年の9月3日。24歳だった。
死因は覚えてない」
何だか、わざとぶっきらぼうに答えているように聞こえる。
よっぽど早く終わらせたいのだろうか。
オサムはお面に覆われていない方の頬を掻き、しぃに目配せした。
しぃが書類をめくる。
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475 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:06:09 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「それでは、公訴事実。
──5日前の7月8日、午後2時過ぎ。被害者である設楽なおるよ氏は
駅前の高層ビル『SSビル』の最上階、無料展望台を訪れた」
内藤も、事件の概要は事前に聞いた。
昼休みにヒッキー達と話した飛び降りの件と全く同じ内容で、驚いたものだ。
まさか飛び降りた男がなおるよだったとは。
「一年前に自殺した恋人」はヒートであろう。
事実を知ってみると、見方が随分と変わる。
たとえばモララーの予想では「なおるよがヒートの後を追った」ことになるが、
実際は「追わされた」と言えることとか。
(*゚ー゚)「当日は、一部の窓の鍵が壊れており、誰でも開けることが可能であった。
安全面を考慮し、その窓の周囲は立ち入り禁止のテープが張られていたが……」
──彼は、いきなりそのテープを跨ぐと、窓を開けたのだという。
そこからはもう、他の客が止める間もなかった。
なおるよは宙へと身を躍らせ、地面へ真っ逆さま。
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476 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:07:26 ID:qgnrL7UgO
-
(*゚ー゚)「……救急車が到着したときには、亡くなっていたとのことです。
端から見れば突発的な自殺でしょうが、実際は違った」
(*゚ー゚)「同時刻、このギコが展望台にいました。
そこで彼は見たのです」
(,,゚Д゚)「彼女」
(*゚ー゚)「……彼女は見たのです!
被告人が、設楽氏に取り憑くところを!」
しぃがギコの肩に手を添える。
ギコはどことなく哀愁を感じる目付きで、なおるよを見つめた。
舌打ちしたくなる眼差しだと内藤は思った。もちろん口にはしない。舌打ちもしない。
(,,゚Д゚)「いやあ、珍しい人もいるもんだと思って、気になって見てたのよう。
そしたら、そこの幽霊さんが設楽さんに憑依するなり窓を開けて……。
……ごめんなさいね、止めようとしたんだけど、間に合わなかったわ。本当に不甲斐ない……」
【+ 】ゞ゚)「急なことだったんだ。刑事は悪くない」
川*゚ 々゚)「オサムかっこいい……」
対して、くるうがオサムへ向ける眼差しの、何と眩しいことか。
それはそれで鬱陶しい。やはりこれも口にはしない。
ツンが咳払いをする。
右手を挙げ、彼女は口を開いた。
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477 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:09:49 ID:qgnrL7UgO
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ξ゚听)ξ「ちょっと、2つほど質問していい?」
(*゚ー゚)「起訴状はまだ途中なんですがね」
ξ゚З゚)ξ「いいでしょうよー。少しくらいー」
(*゚ー゚)「……手短にお願いします」
ありがとう大好き! と可愛こぶった声でツンが礼を言う。
くるうが鼻をひくひくさせたので、たぶん嘘だろう。
というか、オワタくんの呪いが解かれたときの内藤に似た返答で、無意味に癪に障った。
ξ゚听)ξ「まず一つね。えー……と、ギコ。あんたはどうして展望台にいたのよ」
(,,゚Д゚)「ヴィップ総合病院に行った帰りだったのよう。
気分が晴れなくて、ちょっと寄りたくなっただけよ」
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478 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:11:41 ID:qgnrL7UgO
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( ^ω^)「病院ですかお?」
(,,゚Д゚)「ええ。……先週、都村トソンの裁判があったでしょう。
あれの、被害者の様子を見に行ってきたの。
真犯人の手掛かりが欲しくて。……何も見付けられなかったけどね」
トソンの事件の被害者といえば──今は植物状態になっているのだったか。
事件そのものは7年前だ。手掛かりが残っているか、甚だ怪しい。
ツンがくるうを見て、ギコを指差す。
川 ゚ 々゚)「嘘じゃないよ」
(,,゚Д゚)「やあねえ、こんなことで嘘つかないっての」
ξ゚З゚)ξ「念のためですうー。……じゃあ2つ目。
『珍しい人もいるもんだと思って』、なおるよさんを見てたのよね?
そう思った理由は何なの?」
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479 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:12:46 ID:qgnrL7UgO
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(,,゚Д゚)「そりゃ簡単よ。
設楽さんがねえ、被告人に小声で話し掛けてたの。楽しそうにね」
( ^ω^)「──え」
間抜けな声が漏れた。
展望台にいた時点では、なおるよはまだ生きていた筈だ。
そしてヒートは既に幽霊だった。
ということは──
( ^ω^)「……なおるよさん、幽霊見える人だったんですかお」
('(゚∀゚∩「うん、そうだよ」
あっさり答えられた。
ここ最近になって、やたら霊感持ちの人間と関わりを持つようになったものだ。
内藤が思っているより、案外そこら中に居るのかもしれない。
ツンは知っていたのか、特に驚きもせず、
先程のギコの返答に納得していた。
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480 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/06(水) 19:14:16 ID:qgnrL7UgO
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('(゚∀゚∩「でも、いつも見えるわけじゃなかったよ。
見えたとしても少しぼんやりしてたし。
声も聞こえないし触れもしなかったなあ」
今は僕も幽霊だから、はっきり見えるし声も聞こえるけど。
なおるよが微笑みを深めてそう言った。
( ^ω^)「じゃあ展望台でヒートさんに話し掛けてたって……
それもしかしてデートじゃありませんかお」
('(゚∀゚*∩「ま、まあ、そうなるよ」
たしかに、それは珍しい。
ギコが気になったというのも頷ける。
('(゚∀゚*∩「ヒートが、幽霊になっても僕の傍にいてくれるのが嬉しくて……
時間があるときには、2人で色んなところに行ったよ。
他の人からは、僕が1人でうろうろしてるように見えただろうけど……」
(*-ー-)「傍にいてくれた、ですか。
殺す隙を窺っていたという見方もありますが」
('(゚∀゚#∩「なっ……!」
(;,゚Д゚)「あんたねえ、もっとロマンスに生きなさいよ」
【+ 】ゞ゚)川 ゚ 々゚)(ろまんすって何だろう)