■( ^ω^)は取り憑くようです
└Scene 3
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124 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:29:40 ID:F2t219ls0
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新入生歓迎のパーティに行く気なんて、彼女には無かった。
どうせ大抵の人とは短い関係で終わってしまう。気遣うのは疲れるだけ。
余計な人付き合いはしない方がいい、というのが彼女の主義だった。
それを姉であるしぃに話すと、彼女は露骨に驚いてみせた。
(*゚ー゚)「行きなよ!」
話を聞いた意味はあったのかと疑いたくなるくらい、彼女はひたすらそう主張した。
ξ゚听)ξ「なんでよ。いいじゃん別に」
(*゚ー゚)「良くないよ! ひょっとしたらすごくいい人と出会うかもしれないじゃない」
ξ--)ξ「あたしそんなに周りに期待してないからなあ」
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125 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:30:43 ID:F2t219ls0
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聞き手であるしぃの顔が、一瞬曇る。
ツンは「あっ」と焦り、急いで首を横に振った。
ξ;゚听)ξ「違うの、別に姉さんのことはそんなに関係なくて」
彼女は必死に言い繕った。
嘘をつくのは苦手だったから、しぃにもすぐにバレただろう。
しぃのことを知っていたから、周りが嫌いになった。
人間は知らない人のことを平気で傷つけられるのだと、思い知らされた。
その暗澹な期待がこのときツンの言葉となってつい漏れてしまったのである。
(*゚ー゚)「…………行ってきなよ」
力を落としながらも、彼女はまたそのセリフを続けていた。
ツンにはもう、何かを言い返す気が起きなかった。
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126 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:31:39 ID:F2t219ls0
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パーティにしっかり顔を出したものの、一時間で飽きてしまった。
頭のなかに姉のことがずっと浮かんでいて、ツンの気持ちを散らす。
元々陽気になることが苦手なツンは、さらにさらにぎこちなくその場を過ごしていた。
同学年の人たちが、なんだかすごく遠い星の人たちのようにツンには感じられた。
どこかの星の、苦労や悩みを知らない人々。
ξ;^凵O)ξ「ごめんね、お酒に酔っちゃったみたい。外に出ているね」
絡みついてこようとする、できたばかりの知り合いたちを適当にあしらう。
酔ってなどはいなかったが、この嘘は姉に対してのときみたいにバレることはなかった。
外へ出て、とにかく歩く。
やがてソーサック川が見えてきて、その河川敷へ降りた。
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127 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:32:41 ID:F2t219ls0
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ξ--)ξ「はあ……」
独りになると、落ち着いた。
溜息が冷たい夜風と混じり、流れ去っていく。
川の煌きをぼんやり眺めていると、ポケットに振動を感じた。
携帯端末に通知がきていて、見てみると不在着信が1件入っていた。
パーティ会場にいたままだと、今よりも気づくのが遅れただろう。
運が良かった。少しだけいい気になり、相手の電話番号を確認する。
しぃだった。
なぜか、ツンの胸がざわつく。
急いでリダイヤルを押し、反応を待った。
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128 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:33:42 ID:F2t219ls0
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『……もしもし』
通話に出た彼女の声は、思わず心配したくなるくらいにか細かった。
ξ;゚听)ξ「どうしたの? お姉ちゃん」
すぐには返事が来ない。
いくらかすすり泣く音が聞こえてくる。
しぃが泣いている。
それだけで、嫌な予感はさらなる膨らみをみせた。
ξ;゚听)ξ「ねえ! 用があるから電話したんでしょ?」
やや大きめに確認すると、しぃの吐息がわずかに乱れた。
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129 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:34:43 ID:F2t219ls0
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数秒間、ツンはじっと待っていた。
『…………さっき、警察から連絡があって』
『あの人が、認めたって』
ξ;゚听)ξ「え?」
その言葉をすぐには飲み込めなかった。
そんなことはありえない、と彼女は信じていたからだ。
ξ;゚听)ξ「なんでよ! どうしてそんなことをあの人が言うの!?」
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130 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:35:51 ID:F2t219ls0
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しぃはいくつか言葉を続けたものの、要領は得なかった。
彼女自体が混乱しているらしい。
ξ;゚听)ξ「じゃあ、何? 世間で言っているような悪い噂が本当で
お姉ちゃんの彼氏さんは本当の本当に悪い人だったってことなの!?」
『そんなんじゃない!』
しぃの悲痛な叫び声が耳に届く。
ツンの身がすくんだ。姉の叫びなど、何年ぶりに聞いたことだろう。
これを言うことが、姉を傷つけることだと重々承知していた。
それでも、信じていたのだ。裏切りのようなその言葉に、何も感じないわけがないじゃないか。
ツンは苛立ちながら、しぃの言葉を待った。
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131 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:37:06 ID:F2t219ls0
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『……そんなんじゃない』
繰り返された姉の声は先ほどとは対照的に弱々しかった。
ξ゚听)ξ「でも……あの人はそう証言までして」
『ううん、そうじゃないの』
彼女が首を横に振る姿が、ツンの頭のなかで容易に想像できた。
ツンは言葉を継ぐのをやめる。
『あの人、ね……もう連絡しないでくれって』
ようやく聞こえた、彼女が訂正した理由。
彼氏であるあの人との縁を絶たれた。
それはつまり、しぃがすでにあの人の恋人ではないということ。
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132 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:38:27 ID:F2t219ls0
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ξ;゚听)ξ「…………」
かけてやれる言葉が見つからなかった。
何を言ってもしぃを傷つけてしまう。
何もしなくても、彼女は終わらない内省を繰り返し、じわじわと傷ついていくだろう。
どうしたらいいのか、わからない。
『……それじゃ』
最後にそう言うと、しぃから電話が切られた。
ツンに返答する隙は、全くなかった。
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133 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:39:27 ID:F2t219ls0
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ξ;゚听)ξ「…………そんな」
切れた電話を持ちながら、そうつぶやき、ツンは目を閉じた。
ツンは眉間を頭でつねり、思考を整理しようとする。
しかし、いくら頑張っても、考えはまとまらなかった。
心中に様々な情景が思い浮かんで、ツンの邪魔をしてくる。
パーティの喧騒なんて比較にならない、心をひっくり返し続ける煩わしさ。
目から涙が溢れそうになり、屈んで顔を覆い隠す。
ぐちゃぐちゃな思いをどうにかしたい。
誰かがその手助けをしてくれたら、どれだけ楽なことか。
ひたすらに辛い、とめどなく苦しい、そんな感情ばかりが溢れてくる。
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134 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:40:25 ID:F2t219ls0
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「大丈夫ですかお?」
声をかけられ、ツンが顔をあげる。
目の前に、見知らぬ青年が立っていた。
戸惑いを浮かべつつも、とにかく心配だという顔をツンに向けている。
そんな、若い青年の顔。
これがツンの、初めて彼と出会ったときの記憶だった。
.
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135 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:41:24 ID:F2t219ls0
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∇∇∇ ∇∇∇
∇∇ ∇∇
∇ ∇
( ^ω^)は取り憑くようです
Scene 3. それから彼らは協力しました
∇ ∇
∇∇ ∇∇
∇∇∇ ∇∇∇
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136 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:42:28 ID:F2t219ls0
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「お、おいどうした!」
ドアの向こうから、男の大声が聞こえてきた。
ξ;゚听)ξ「あ、いえ……」
息を潜めるうちに、足音がドアに近づいてくる。男のものだろう
それからガチャガチャという音。鍵を開けているようだ。
ドアが半開きになり、男の顔が飛び出して部屋をキョロキョロ見回した。
やや間を置いてから、地べたに転がるツンと目が合う。
<_フ;゚−゚)フ「あ、そっか。縛ってあったんだった」
頭を軽く叩いた後、青年風の男はツンに指をさす。
<_プ−゚)フ「おいお前! ようやく起きたようだけど、静かにしていろよ!
ここで妙な騒ぎでも起きたら責任が全部俺に来るんだからな。
余計な誤解でも招いたら先輩たちすぐに怒るから、怖いから――」
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137 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:43:46 ID:F2t219ls0
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そう言うと、男の顔が青くなる。
怒ると怖いその先輩たちとやらを想像しているようだ。
ひとつ身震いしたのちに、男は「わかったな?」と念を押して、ドアをバタンと閉めた。
鍵をかける音。部屋は再び静寂に包まれる。
ξ;゚听)ξ「…………」
ツンの身体の中には、ブーンの霊魂が宿っている。
今、ブーンはそこで自分の状況について考えた。
自分は監禁されている。
あの青年の仲間たちがツンを縛り上げ、この無骨な部屋に押し込めた。
窓も何もない暗い部屋。なんの目的かはわからない。
ξ゚听)ξ“ショボンさん、あいつらの正体はわからないんですかお?”
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138 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:45:28 ID:F2t219ls0
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(´・ω・`)“それはわからないな。あくまでこっちからは外観しかわからない”
【狭間の世界】にいるショボンからメッセージが届く。
脳内だけに伝わるそれは、この状況ではとてもありがたい助けだった。
ξ゚听)ξ“それじゃ、この部屋の外はどうですかお”
(´・ω・`)“残念ながら大したことはわからないな……
廊下で椅子に座っている青年が見えることと、部屋の外が明るいことくらいだよ”
ξ;゚听)ξ“うーん”
ツンの状況は、楽観できるものではない。
青年の口調から察するに、怪しげな集団に拘束されているようだ。
このまま彼女を残していては何をされるかわからない。
ξ゚听)ξ“ショボンさん、僕はこのまま成仏するわけにはいかないお”
(´・ω・`)“脱出する気かい?”
ξ#゚听)ξ“こんなわけのわからない状態でツンを放っておくわけにいかないですお!”
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139 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:46:28 ID:F2t219ls0
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(´・ω・`)“……同感だ”
ショボンの一言が妙な重みを有していた。
(´・ω・`)“取り憑くことの基本は頭に入っているな?”
ξ゚听)ξ“はいですお”
霊魂の入った身体で、相手に触れたら取り憑くことができる。
それが基本。
(´・ω・`)“僕は【俯瞰】で君にアドバイスをする。
そこは造りからして廃ビルの一室だ。同型のものを見たことがある。
慎重に行動すれば抜け出せるはず。15分の制限に気をつけろよ”
よくビルの部屋の構造なんて知識が入っているものだ。
理由を聞きたくなったが、時間も惜しいので、ブーンは問うのをやめた。
(´・ω・`)“作戦はこうだ”
ショボンは簡単にこれからなすべきことを説明する。
ブーンは真剣に内容を頭に叩き込んだ。
∇∇∇
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140 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:47:27 ID:F2t219ls0
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<_プ−゚)フ「あーあ、眠いよう」
廊下で、青年はぼやいていた。
青年の名はエクスト。
今、彼は今日までのことを想起している。
幼い頃からニューソーク市で育ち、自由な精神に感化されて、遊びつくす毎日を送っていた。
彼が市内の青年チームに所属したのはつい最近のことだ。仲間に誘われ、流されるままに参加した。
仲間内でワイワイやる、最初のうちはそれしか目に入らなくて、だからこそ楽しかった。
しかし、所属して数日が経過したのち、ある噂を知った。
このチームのボスが、きな臭い連中と関係しているらしいと言う情報だ。
きな臭い連中の全容はわからない。
ちんけな青年チームか、海外マフィア、果てはテロリストまで、噂は広がりを見せている。
共通しているのは、あまり世間体がよくない人たちということだ。
この噂を聞いて、エクストは震え上がった。
自分は楽しく過ごしたいだけだ、本気で悪事をする気など毛頭ない。
脱退を考えることもあったが、そんな噂が立つチームならばそれは楽ではないだろう。
このことはチームの先輩たちにはとても言えないエクストの内心だった。
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141 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:48:25 ID:F2t219ls0
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噂をきいてしばらくはぎこちない日々が続いた。
遊んでも本気では楽しめないからだ。
それでも、しばらくしたらその緊張に慣れはじめた。
チームが犯罪に手を染める素振りを、少なくともエクスト自身は目にしなかったからだ。
もしかしたらあれは本当に噂なのかもしれない。
このチームは本当にただの遊び人の集団で、悪い人たちなんていうのは嘘なんだ。
そう考えると気分が良くなった。
徐々に、エクストは悩みを忘れた。
悩むくらいなら遊んだほうがいい。遊んで、楽しんだほうがいい。
その考えを信条に、彼は今日まで生き続けていた。
今日までは。
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142 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:49:25 ID:F2t219ls0
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<_フ;゚−゚)フ「……」
今日の14時半頃、彼の小さな信条は脆くも崩れ去った。
( ^Д^)「それじゃ、お前はそいつを見張っておけ。鍵はこれな」
にやにやした先輩が、鍵を放り投げてくる。
エクストは状況が飲み込めてなくて、盛大に顔面にそれをぶつけ、「ぎゃっ」と呻いた。
( ^Д^)「それくらいも取れないのか」
<_フ;−;)フ「い、いやちが!」
涙目になりながら、落ちた鍵を拾おうとする。
先輩はものすごく蔑んだ目でエクストを見下ろすと、すたすたと歩き去ってしまった。
<_フ;−;)フ「うええ、まじかよお」
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143 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:50:25 ID:F2t219ls0
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ドアを閉める時、中で眠っている少女が見えた。
全く知らない金髪の少女。両手両足を縛られている。
先輩が言葉少なく説明したところによると、少しの間預かるように言われた丁重なものらしい。
いったい誰が人間をものとして扱うのか。
深く考えるわけにもいかない。
疑問なんてもっちゃいけない。
ドアを閉め、用意したパイプ椅子に座って監視する。
何かあったらドアを開け、少女を確認する。
それが今日、彼の託された役割。
初めてエクストが犯罪に手を染めた経緯だった。
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144 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:51:25 ID:F2t219ls0
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「うわああああああああああ」
<_フ;゚−゚)フ ビクゥ!!
部屋から大声が聞こえ、エクストの眠気が吹き飛んだ。
<_フ;゚−゚)フ「なんだなんだ!」
慌てて鍵を携え、ドアの方に接近する。
声は明らかにあの女の子のものだった。
起きたのは確認したが、どうして叫んだというのだろう。
<_フ;゚−゚)フ「おい!」
ドアを開けると同時に問う。
しかし目線の先に彼女はいなかった。
<_フ;゚−゚)フ「あ、あれ?」
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145 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:52:25 ID:F2t219ls0
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消えた? そんなはずは――
視線が右へ左へ、部屋の奥へと動きまわる。
<_フ;゚−゚)フ「ど、どこへ……」
そうつぶやいたとき、足元に感触があった。
何かが当たる感触。
顔を下に向けると、金色の髪が見えた。
女の子のものだ。ドアの傍に転がっていただけらしい。
<_フ;゚−゚)フ ホッ
なんのことはない。移動していただけだ。
叫んだ理由はわからないが、とりあえず問題が会ったわけでもない。
ほっとして、手をのばそうとする。
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146 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:53:29 ID:F2t219ls0
-
しかしその前に、女の子の方がごろんと部屋の中央へ移動する。
きょとんとするエクストの目の前に、彼女の顔が露わとなった。
ξ^ー^)ξ ニイィ
<_プ−゚)フ ?
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ,,人,/
) (
━━━━━━━━━ <_プ−゚)フ ━━━━━━━━━
) (
/^⌒`Y´^Y`^"\
彼女の笑顔の真意を知らないまま、エクストの意識はぷつりと途絶えた。
∇∇∇
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147 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:54:30 ID:F2t219ls0
-
...フッ
Σξ゚听)ξ「あ、あれ?」
突然目が覚めた気がした。
いつの間に眠ってしまったのだろうか、そう彼女はまず思った。
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148 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:55:25 ID:F2t219ls0
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目の前のドアが開いていて、さらにそこから見知らぬ男が覗いている。
<_フ − )フ
ξ;゚听)ξ「ひい!」
彼女はこの部屋の記憶を有していなかったし、エクストについても何も知らなかった。
慌てて立ち上がろうとしても、身体が動かない。縛られていると気付き、さらに背筋の凍る思いがする。
エクストの身体がゆらりと動く。
こいつが自分を縛り上げたのだろうか。だとしたら、逃げなくては。
じたばたともがく彼女をよそに、エクストの身体は一歩、彼女に近づく。
ツンが恐怖で目を閉じたとき、青年が口を開いた。
<_プー゚)フ ニイィ「うまくいったお!」
ξ;゚听)ξ「!?」
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149 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:56:26 ID:F2t219ls0
-
<_プ−゚)フ「お?」
青年が何かに気づいた様子で、自らのポケットに手を伸ばす。
取り出したのは、小型のナイフだった。
<_プー゚)フ「おっお、いいものあったお」
動揺する彼女の元へ、エクストの手が伸びる。
ツンはナイフを凝視して息をつまらせ、身を強ばらせる。
その緊張した腕に、エクストの腕が触れたかと思うと、ぶちっという振動がした。
ξ;゚听)ξ「え?」
まさかという思いで、彼女は確かめた。
ツンの両手が動く。縄が千切れていた。
<_プー゚)フ「待っててくれお。今足も外すお!」
陽気にそう言うと、青年はそそくさと作業を進めた。
何が何だかわからないまま、ツンはその様子を見守り続けていた。
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150 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:57:21 ID:F2t219ls0
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<_プー゚)フ「よし、立てるおね?」
ξ゚听)ξ「え、ええ」
苦笑いしながら、ツンが答える。
<_プー゚)フ「これ、渡すお」
そう言うと、彼は銀色の鍵をツンに差し出した。
<_プー゚)フ「こいつはこの部屋の鍵だお。僕が中にいるから閉めてくれお」
ξ;゚听)ξ「えええ? いいの?」
<_プー゚)フ「いいんだお。早く早く」
促されるまま、ツンが部屋の外へ行く。
踵を返すと青年が部屋の中から彼女を見つめていた。
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151 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:58:46 ID:F2t219ls0
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ξ゚听)ξ「あ、あの……ありがとう」
他にいう言葉が見つからず、とりあえずツンは感謝を述べる。
青年は満足そうに頷き、それからうつむき気味になった。
ドアを閉める直前、ツンは彼の表情に気づいた。
<_フ− )フ「…………」
何かを言いたそうで、でも口を噤んでいる、そんな顔。
こんな顔を知らない自分相手にするだろうか、とツンは首を傾げる。
数秒待ったが、彼は何も言わない。
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152 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 21:59:55 ID:F2t219ls0
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<_フー )フ
柔らかい表情を浮かべ、彼が手を振る。
ツンは戸惑いながらもそれに従い、扉を閉め、鍵を回した。
その視線に込められた意味には気づかないままに。
...フッ
∇∇∇
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153 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:00:54 ID:F2t219ls0
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<_プ−゚)フ「あ、あれ」
意識が戻ったとき、足音が聞こえた。
誰の足音だろうとのんびり考えつつ、周りを見る。
あの部屋の中だ。
どうして自分はここにいるんだろう。
<_プ−゚)フ「…………」
少女がいない。
隠れているわけでもなく、第一部屋には他に誰もいない。
この状況と、さきほどの足音。
ふたつの意味がつながる。
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154 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:01:43 ID:F2t219ls0
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<_プ−゚)フ「な、な、な」
正体不明の恐怖が彼を包み込む。
<_フ;−;)フ「なんだこれええええええええええええええ」
ドアに駆け寄り叩くも、全く誰の反応もなく、むなしく拳が痛むばかりであった。
∇∇∇
-
155 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:02:46 ID:F2t219ls0
-
(; ω )「ああ……あ……」
嗚咽が喉の奥から搾り出されてくる。
熱がこみ上げてきて、瞳が次第に潤った。
(; ω )「ツンが、いたお……あそこに、あんなに近くに」
そしてまた別れなければならなかった。
生きているツンと死んでいるブーン。その間のとてつもない壁。
それが今、再び彼の前に聳えていると感じられた。
(´・ω・`)「……よく言わなかったな」
椅子の横で、ショボンが小さく賞賛してくれた。
-
156 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:03:57 ID:F2t219ls0
-
(´・ω・`)「よく我慢して、別れられたものだ。
あれだけ別れを惜しんでいた君ならば、なおのこと」」
( ω )「……言ってしまっても、何も変わらないですお」
別れ際、逡巡があった。
自分が取り憑いていることを言おうかどうか。
迷い、それから言わない方を選択した。
( ω )「言っても、別れなければならないことに変わりはないんですお。
彼女は僕が死んでしまったことを知らないんですお。
言ってしまって、傷つけるくらいだったら、僕は――」
-
157 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:04:54 ID:F2t219ls0
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( ω ) フッ
短く鋭い吐息。
泣き顔している場合じゃない。そう自分を奮いたたせる。
( ^ω^)「何も言わないまま、彼女に悟られないまま、ツンを救ってみせますお!」
上り詰めた情感は押し戻され、涙が引いていった。
ショボンを振り向くと、またも大きく頷いてくれている。
(´・ω・`)「よし、それじゃ彼女を【俯瞰】しようか。出口まで誘導するんだ」
( ^ω^)「もちろんだお!」
∇∇∇
-
158 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:05:55 ID:F2t219ls0
-
あれから、時間が経過した。
ξ;゚听)ξ「なんだか頭がくらくらするわ」
頭を抑えながら、彼女は薄暗い廊下を進んでいく。
使われてない古いビルの廃墟なのだろう。
窓の外からは、若干傾き始めた昼下がりの太陽に照らされる街が見えた。
ξ;゚听)ξ「あっ」
廊下の向こう側、曲がり角のところから人の声がする。
誰か来たのだろうか。
そう思った途端に、
...ヒュン
と意識が消えてしまう。
しばらくしてから
Σξ--)ξ「?」
と目が覚めると、違う場所にいる。
-
159 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:06:59 ID:F2t219ls0
-
ξ;゚听)ξ「まただ……」
話し声はすでに聞こえない。
彼女は安堵しつつ、足を進めた。
部屋を出てから10分近く歩いている。
その間に何度も同じことが起きていた。
話し声や気配を感じるたび、意識が飛ぶ、不可解な現象だ。
最初は気のせいかと思っていたが、
あまりにも頻発するので特異さに彼女も気付き始めた。
ξ;゚听)ξ「疲れているのかしら」
早いところここから抜けだして休んだほうがいいかもしれない。
そうして自分の身に何が起こったのか把握しよう。
目的が決まり、ツンの足取りは自然と速まる。
3階、2階……ひとつずつビルの階段を下っていく。
-
160 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:08:05 ID:F2t219ls0
-
2階から1階へ続く階段を降りた。
マンションのエントランス。幸いにも人が見当たらない。
このまま入り口から出てしまおうした。
ξ;゚听)ξそ
外から入ってくる気配を察して、階段の裏方に回りこむ。
顔をわずかに出して様子を伺う。
入り口に、人影が見えた。
∇∇∇
-
161 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:09:08 ID:F2t219ls0
-
(;^ω^)「ツン、どうして動かないんだお!?」
(´・ω・`)「入り口から入ってくる陽光を見てみろ。影があるだろう。
どうやら誰かがそこにいて出れないみたいだな」
( ^ω^)「じゃあ、その人がどこかへいくのを待つしかないってことかお」
(´・ω・`)「そういうことに――ん?」
(;´・ω・`)「おい、彼女何か慌ててないか?」
ショボンに言われて、ブーンがディスプレイに目を向ける。
ツンが目を見開いて上を見上げていた。
階段の上、上階だろうか。
-
162 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:10:27 ID:F2t219ls0
-
(´・ω・`)「【俯瞰】を操れ。上方も3メートルまで見えるはずだ」
(;^ω^)「そんなこと急に言われても」
(´・ω・`)「イメージだ、イメージ。彼女から上へ遠ざかるように念じるんだ」
言われるがまま、ブーンは目を凝らして集中する。
彼女のことを見つめつつ、彼女から遠ざかる。
上へ上へ。
不安だったものの、【俯瞰】は思ったとおりに動いてくれた。
-
163 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:12:08 ID:F2t219ls0
-
彼女の身体が何かで遮られ、真っ暗になり、更に進めると床が見えた。
2階の様子だろう。
そこには数人の若い人々が集まっていた。
(=゚ω゚)ノ“まったく、女を逃しちまうなんてよう”
( ^Д^)“おまけに自分で部屋に閉じ込められるとか、何してんだか”
<_フ;−;)フ“ううう、なんでだか俺も覚えてないんですよお”
(=゚ω゚)ノ“とっとと降りてボスを迎えて、そこで頭下げるんだよう”
( ^Д^)“へへ、どんな罰を下してくれるのかみものだぜ”
<_フ;−;)フ“わああああ”
-
164 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:13:12 ID:F2t219ls0
-
(;^ω^)「あわわわ、まずいお! はやくいかなくちゃだお!」
入り口にいるのは、きっと彼らの言うボスだ。
このまま青年たちがその人物を迎えたら、ツンが外へ出る機会は更に減る。
それどころか見つかってしまうかもしれない。
<_フ;−;)フ“やめてくれえ、連れて行かないでくれええ”
青年がじたばたし、周りの青年たちが慌てて取り押さえている。
すんなり降りるつもりはないようだが、力ずくで連れて行かれるのは時間の問題だろう。
(´・ω・`)「よし、こいつを使おう」
青年の惨めな姿を、ショボンがびしっと指さした。
ブーンもこくりと応対する。
∇∇∇
-
165 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:14:11 ID:F2t219ls0
-
<_フ;−;)フ「うええええ」
(;^Д^)「このやろう暴れやがって、おい足押さえろ足!」
(;=゚ω゚)ノ「わかっているんだよう、でもうまくいかな」
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ,,人,/
) (
━━━━━━━━━ <_フ;−;)フ ━━━━━━━━━
) (
/^⌒`Y´^Y`^"\
<_フ^−^)フ「おっ!」
(;^Д^)(;=゚ω゚)ノ「!?」
-
166 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:15:28 ID:F2t219ls0
-
========<_フ^−^)フ「ボスうううううう!!」
(;^Д^)「こ、こいつ自分から!」
エクストの身体が階段を駆け下りていく。
階下に潜むツンには目もくれず、一直線に入り口に向かって。
( ゚∀゚)「ん?」
線の細い、さっぱりした男が一人見えた。
( ゚∀゚)ノ「おお、エクスト! 出迎えご苦労さ――」
ズダダダダ
「はいどーーーん!!」<_フ#^−^)フ)∀゚)「!!?」
-
167 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:16:33 ID:F2t219ls0
-
(;^Д^)「おいあのバカボスになんてことを!」
(;=゚ω゚)ノ「大変だよう、とっちめないと」
...ヒュン
\ ,_人、ノヽ/
) (
━━━━━━━━━ ( ^Д^) ━━━━━━━━━
) (
/^⌒Y´^Y\
( ^Д^)「おっおっお」
(;=゚ω゚)ノ「おいなんで笑って」
========⊂二二二( ^Д^)二⊃「ブーーーーーーーン!」
(;=゚ω゚)ノ「!?」
-
168 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:18:09 ID:F2t219ls0
-
...フッ
Σ<_プ−゚)フ「あ、あれ」
(#) ∀ )「…………」
<_プ−゚)フ「ボス! どうしてそんな地べたに寝っ転がって」
(#) ∀ )「エクスト、お前みたいな新入りがどうs――」
========⊂二二二( ^Д^)二⊃「おおおおおお!!」
<_プ−゚)フ「あ、プギャー先輩が走ってくる!」
(#) ∀ )「おお、ちょうど良かったぞプギャー。はやくエクストを捕まえて」
ズダダダダダダ
「はいどーーーーーーん!!!」ヽ( ^Д^)ノ┌┛)`∀゚)・;'「あっれえ!?」
-
169 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:19:23 ID:F2t219ls0
-
(;=゚ω゚)ノ「ああ、外でプギャーが暴れているよう、なんなんだよう!」
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ/
) (
━━━━━━━━━ (;=゚ω゚)ノ ━━━━━━━━━
) (
/^⌒Y´^Y\
(=゚ω゚)ノ「おっおっ」
========⊂二二二(=゚ω゚)二⊃「こいつも連れて行くおーーーーーん!!」
ドガシャーン
ムッギャー
∇∇∇
-
170 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:20:41 ID:F2t219ls0
-
ξ;゚听)ξ「な、何が起きたというの……!?」
ボスと呼ばれていたから、少年たちのリーダーだったのだろう。
その人物が、配下である少年たちに襲われ外を転がりまわっている。
取っ組み合いの姿はすでに入り口から遠く離れてしまっていた。
もうツンの周りには誰も居ない。
ξ゚听)ξ「……行っていいのね」
一言つぶやくと、足早に入口へ向かう。
日光に思いっきり照らされる。眩しくて、ツンは手のひらで目を覆った。
ずいぶん久しぶりに浴びた気がし、力がみなぎってくる。
これからまた一走りしなければ。
ξ゚听)ξ「よし!」
気合を入れて、彼女は外へ駆け出していった。
疲れは感じていたものの、意識でそれを誤魔化しながら。
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171 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:21:39 ID:F2t219ls0
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少年たちを避けるため、なるべく路地裏を選んだ。
場所はまだ判然としないが、大通りに出ればすっきりするはずだ。
十数分走り続けた頃。
人混みの音が耳に届いてきた。
一瞬立ち止まり、ツンは息を呑む。
進むたびに、徐々に大きく聞こえてくる。
それほど大きい音ではないが、大通りに続いていることは間違いない。
ξ*゚听)ξ「この道でいいんだわ!」
つぶやくと一層自信がつく。
そのまま道を突き進む。
路地裏の先の明るい光が、派手な景色が、だんだん臨めるようになる。
「お嬢さん」
不意に声をかけられた。
-
172 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:22:29 ID:F2t219ls0
-
ξ゚听)ξそ
声がしたのは、隣だ。
川д川
髪の長い女性が佇んでいた。
声をきくまでツンはその女性に全然気づいていなかった。
ものすごく影が薄い人だとツンは思った。
女性の前にはこぢんまりとした台座がある。
その上には真っ赤な小さい座布団と、水晶玉。
それだけで、あまり関わり合いになりたくない人物だとツンは直感した。
川д川「あなた、ちょっと私の話を聞いていかない?」
ξ;゚听)ξ「いや、今はちょっと……」
-
173 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:23:29 ID:F2t219ls0
-
ちらりと、来た道の方を見やる。
音は聞こえないものの、先ほどの少年たちが追いつかないとも限らない。
ここは急いで立ち退かないと。
そう思ったとき、女性の言葉が飛び込んできた。
川д川「あなた、取り憑かれているわよ」
ξ゚听)ξ「……え?」
-
174 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:24:30 ID:F2t219ls0
-
目を瞬かせるツン。
その腕に、女性の手が伸びてきて、軽く握ってきた。
川д川「私は東洋からきた霊媒師なの。
もしあなたが望むなら、あなたに取り憑くその霊魂、調べてあげてもいいわよ」
突然の申し出を、ツンは呆然としながら聞いていた。
∇∇∇
-
175 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:25:53 ID:F2t219ls0
-
(#^ω^)「何言ってんだおこいつ」
ディスプレイを見ながら、ブーンがぼやく。
∩(#^ω^)∩「僕は今ここにいるお! なにデタラメ言ってんだお」
(´・ω・`)「うん、詐欺師だろうな」
ショボンもまた呆れた調子で画面を眺めていた。
ツンは腕を掴まれて動揺しているものの、女性の言葉に耳を傾けている。
川д川“さあさあ、この台座の向かいに座って。
今から水晶玉に霊魂の影を映し出すわ。それがいいのか悪いのか、占ってあげる”
(#^ω^)「離してくるお!」
苛立ちながら、ブーンはまた現世へ赴いた。
∇∇∇
-
176 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:27:21 ID:F2t219ls0
-
川д川「むう〜〜〜〜〜」
ξ;゚听)ξ「あの、唸ってばっかりですけど」
川д川「静かにして! もうすぐ姿を現すわよ!」
ξ゚听)ξ「はあ」
川д川「むむむ、こ、これは〜〜〜〜〜〜」
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ/
) (
━━━━━━━━━ 川д川 ━━━━━━━━━
) (
/^⌒Y´^Y`\
川д川「こんなことしている場合じゃないお!」
ξ゚听)ξ「え?」
-
177 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:28:28 ID:F2t219ls0
-
川д川「君は追われているんだお」
ξ゚听)ξそ「な、なぜそれを!」
ツンは驚愕する。
誰かに追われているなんて話、とっさに出てくるものでもあるまい。
ましてやそれを的中させるなんて。
怪しげな霊媒師だとばかり思っていたが、実は相当な実力者なのかもしれない。
ツンの霊媒師に対する興味は一層膨らんだ。
ところが当の霊媒師は、まるで人が変わったかのように大声を出している。
川д川「そんなことどうでもいいお! はやく走って逃げるんだお!」
-
178 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:29:22 ID:F2t219ls0
-
ξ;゚听)ξ「で、でもどうして急に。
それに、占ってみるって言ったのはそっちじゃ」
川д川「占ってみてわかったとかそんなところだお」
なるほど理にかなっている。
ツンは納得し、改めて彼女の実力を思い知らされた。
川д川「さあ」
ξ;゚听)ξ「わかったわよ」
あまりにも急かされて狼狽しつつ、ツンは席をたつ。
お礼でも述べようかと思ったが、霊媒師がものすごい剣幕で睨んでくるので
結局何も言わずにそそくさと走り去ってしまった。
∇∇∇
-
179 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:30:19 ID:F2t219ls0
-
...フッ
Σ川д川「はう!」
去りゆくその背中を眺めていた、霊媒師が、がっくりと首を下げる。
意識を取り戻した霊媒師は、きょろきょろと当たりを見回した。
先ほどまで目の前に座っていたはずの女性がいない。
そのことに、彼女は息を呑んだ。
川д川「もしかして私、霊媒成功しちゃった……!?」
彼女の手がわなわなと震え始める。
-
180 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:31:29 ID:F2t219ls0
-
彼女の出身である東洋の島国には、
霊魂をその身に宿らせて思いを語らせるという霊媒作法があった。
この国に渡ってきてから見た目で怪しまれることは多かったが、
彼女としてはいつでも真剣に、その作法を実践し続けていたのである。
それが今、ようやく実現したのではないか。
彼女は驚きを禁じ得なかった。
川д川「ふ、ふふふ……やったわ。やったわよ私」
慣れない熱い興奮が、腹の底から湧いてくる。
長い黒髪の奥で目を見開いて、霊媒師はにたりと盛大な笑みを浮かべていた。
∇∇∇
-
181 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:33:16 ID:F2t219ls0
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ξ;゚听)ξハア、ハア
霊媒師と別れて後、街道に出た。
走ってきたことの疲れが、荒い息遣いに乗り移っている。
汗を拭いながらも、ツン頭のなかでは先ほど霊媒師に言われた言葉が残っていた。
『取り憑かれている』
普段なら気にもかけないものだが、それがどうしてか頭のなかで反芻されている。
意識が消えて、気がついたらトラブルが解決している。
そんな不思議な出来事が部屋を出たときから繰り返されていたからだ。
心霊現象めいた作用が働いているなんて、ありえるだろうか。
でも自分は確かにそれを体験して――
-
182 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:34:21 ID:F2t219ls0
-
空想が始まろうとしたところで、ツンは強引に首を振って現実に思考を戻した。
そんな言葉に構っていたから余計な時間を使ってしまったんだと反省する。
ξ;゚听)ξ「とにかくまずは警察を探さないと」
道端の看板を見て、自分の位置を確認する。
アスキー通りを含めた繁華街からみて北西に位置する『マリントン』という地域だ。
かつてはニューソーク市で最も治安の悪い地域とも言われていた。
そのイメージを払拭するべく、数年前に活躍した政治家の名前が地域の名前として付された。
しかし、今ではその政治家自身が失職してしまっており、地域のイメージ向上にはほとんど効果を成していない。
ξ;゚听)ξ「おっかないところに来ちゃったなあ」
看板の傍に地図があったので、警察署を確認しようとする。
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183 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:35:33 ID:F2t219ls0
-
しかし、なかなか集中できない。
疲れのせいだ。滴る汗を拭って、なんとか目を細める。
( ^ω^)“ツンは相当疲れているみたいだけど、なんでだお? 制限時間は守っていたはずじゃ”
(´・ω・`)“ビルで最初に引っ切り無しに交代していたから、魂のほうが疲れちゃったのかもね”
(;^ω^)“そんな、もしここで倒れたりしたら……”
(´・ω・`)“いや、ここは見守っていよう。残り時間ももったいないからね。
外には出ているんだから状況は良くなっている。あとは彼女を信じよう”
数分して後、ツンは歩き始めた。
警察署は遠くにあったものの、交番が近くにあった。
ひとまずそこを目指して進んでいく。
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184 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:36:19 ID:F2t219ls0
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道行く人々が、ふらつく彼女を時折見つめていた。
単に気になっただけか、何事かの企みがあるのか。
地域の特性上、いろんな良くない可能性が考えられた。
ツンは身を強ばらせながらも、その視線を無視して進んでいく。
またあの霊媒師のような人に捕まってしまっては困る。
今度はさらに逃げ出せないかもしれない。
地図で覚えた道の先。
白地に青の文字で『NSPD』と書かれた看板が見えてきた。
ニューソーク市警の警察のマークだ。
認識すると同時に、ツンの胸に安堵が広がる。
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185 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:37:36 ID:F2t219ls0
-
ξ; )ξ「ああ、やっと……」
呻くような小言の後、数歩近づき、扉の前に立つ。
こつこつと弱々しく扉が叩かれる音。
中にいた警官が顔を上げた。
音に気づいてくれたのだろう。
ξ; 凵@)ξ「よかった」
それを確認したツンの意識が、遠のいていく。
足が身体を支えられなくなって、その場に膝をついたころには
彼女はすっかり目を閉じ、眠ってしまっていた。
∇∇∇
-
186 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:39:01 ID:F2t219ls0
-
ディスプレイの中で、交番の扉が開く。
(;・∀・)“おい、どうした君!? そんなところで”
飛び出してきたこの男が警官なのだろう。
動揺しながら、彼はツンを担ぎ上げる。
(;・∀・)“眠ってるなあ。休んでなんとかなるか? 病院に連れて行ったほうがいいかなあ”
頭をかき、警官が扉を閉める。
これでもう怪しい少年たちがツンの元に現れることはないはずだ。
( ^ω^)「一段落ついたお……」
ぽつりと言って、目をこする。
集中しきっていた神経を、肩を回したりしてほぐしていった。
-
187 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:40:17 ID:F2t219ls0
-
椅子に乗ったまま、ショボンの方を向く。
(´・ω・`)b
ずいぶん若々しい仕草に、ブーンは思わず笑みを漏らす。
(´・ω・`)「お疲れ様だ。ひとまず安心だな」
( ^ω^)「ありがとうございますお。いろいろ手助けしてもらって」
取り憑くことを教えてもらったのはもちろん、
彼女に取り憑いている間に様々なナビゲーションをしてくれたのも大いに助かった。
だからこそ彼女を取り巻くトラブルを回避することができたのだ。
感謝の気持から、ブーンはショボンに片手を伸ばす。
ショボンは眉を引き上げ、肩をすくめる。
彼もまた同様に片手を差し出し、ブーンと握手する。
いっときの仕事の達成感を、ふたりで分かち合った。
-
188 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:41:45 ID:F2t219ls0
-
( ^ω^)「しかしあの若者たちはなんだったんですかお?」
手を離してから、思いついた疑問をショボンに投げかける。
( ^ω^)「どうしてツンを監禁なんか……ツンに狙われる理由があるなんて思えないんだお」
(´・ω・`)「ふむ、確かに【俯瞰】していて気になる点はあった」
ショボンの目が細く鋭く変化する。
(´・ω・`)「監禁っていうのはね、準備がいるんだ。
その人を捕まえ移動する方法、閉じ込める場所、見張る人――とにかく手間がかかる犯罪だ」
(´・ω・`)「今回の若者たちは何らかのチームに所属していたみたいだから
それなりの下地はあったのだろうけど手間がかかることに変わりはない」
(´・ω・`)「それでも実行したのだから、監禁することによるメリットが何かあったはずだ」
-
189 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:42:54 ID:F2t219ls0
-
(´・ω・`)「監禁の多くは性犯罪に付随するものだけど、
見たところツンさんはそんなものに巻き込まれたわけでもなさそうだったね」
(´・ω・`)「それ以外の可能性としては誘拐犯罪だ。
誘拐の目的は得てして金銭だ。誘拐して、残っている家族を脅したりする。
まあ、ときたま純粋に怨恨目的で人を閉じ込める人もいるから、この線も考えるとして」
(´・ω・`)「どうだろうか。ツンさんが特別お金持ちだったり、誰かに恨まれていた節は無かったかな」
突然の考察の後に声をかけられ、ブーンは僅かばかり反応が遅れる。
(;^ω^)「いや……彼女はごく普通の一般人ですお。
それに恨みも、少なくとも僕には全く心当たりがありませんお」
だからこそ、彼女が監禁される理由が見つからない。
-
190 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:44:05 ID:F2t219ls0
-
(´・ω・`)「ふむ……それじゃどうしてツンさんは監禁されたのだろう」
ショボンの考察がまた始まる。
(´・ω・`)「彼女自身も状況が把握できていないようだったな。
逃げ出すときも、機転を利かせて撃退はできたが、本気で逃したくないならばもっと厳しい警備がありえたはずだ」
(´・ω・`)「それが無かったということは……ツンさんを逃がすことをすぐ諦めてしまったからか、あるいは」
ショボンは一旦間を置いてから、言葉を続ける。
(´・ω・`)「――ツンさんを一旦閉じ込めておくことそのものに意味があったか、だ」
( ^ω^)「閉じ込めておくことそのものに意味? どういうことですかお?」
(´・ω・`)「……可能性の話として一つ思いついたから、いいかな」
-
191 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:45:42 ID:F2t219ls0
-
(´・ω・`)「あの若者たちが何か計画しているとするね。
何かとても大事なことをするんだ。どこかの場所で。
そこに部外者が入ってこようとする。すると彼らはどうするだろう」
(´・ω・`)「どうにかしてその部外者を遠ざけようとするはずだ。
話して説得できればいいけど、話して自分らに良くないことが振りかかる内容なら、穏便にはいかないね
そのような場合は、あまり社会的に望ましくない強行手段に出る可能性もある」
ショボンの言いたいことが、ブーンにもようやくわかった。
(;^ω^)「とても大事で、人に話すわけにいかない内容……それってやっぱり、犯罪かお。
どこかの場所にツンが近づいていて、そこで犯罪をしようとしている奴らが、彼女を遠ざけるために監禁した、と」
(´・ω・`)「僕ならばそう考えるね」
( ^ω^)「そんなの……」
何も知らないで歩いているツンに、突然見知らぬ男が現れて、眠らせて連れて行く。
あまりにも理不尽な想像が膨らんで、ブーンの胸中はにわかに沸き立った。
-
192 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:47:19 ID:F2t219ls0
-
(#^ω^)「そんなの、身勝手すぎるお! ツンは巻き込まれただけじゃないかお!」
(´-ω-`)「僕に怒られても困る。それにこれは想像に過ぎない」
ショボンは肩を竦めて、ブーンの前のディスプレイに目を向けた。
ブーンが表示できるディスプレイ。今は交番の中のツンの姿が映し出されている。
(´・ω・`)「さっき、君は取り憑いた状態で少年たちのボスを殴っただろう。
条件は満たしているはずだ。奴らのボスに取り憑いて、探ってやろうじゃないか。
やつらの目的ってやつをな」
ブーンもその言葉に同意する。
この件が終わるまで、未練は断てそうにない。
黒い空に目を向けて、あのとき殴った線の細い男の姿を思い浮かべた。
∇∇∇
-
193 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:48:22 ID:F2t219ls0
-
<_フ;−;)フ「ボス〜、許してください〜」
(;^Д^)「ジョルジュさん、俺達何も覚えていないんですよー!」
(;=゚ω゚)ノ「全員同じ部屋に閉じ込めるなんて、暑苦しくてしかたないんですよう!」
(;;)∀゚)「うるせえ」
どよめきを無視して、ボスこと、ジョルジュは外の廊下で、パイプ椅子に腰掛けていた。
自分を殴った三人の部下の部屋にはしっかり鍵をかけてある。
なぜ殴られたのかはさっぱりわからなかったが、後で制裁を加えてやろうと今から考えを巡らせていた。
-
194 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:49:21 ID:F2t219ls0
-
(;;)∀゚)「お前らが俺のことを嫌いなことはよくわかった」
ジョルジュは冷たく言い放つ。
「そんなことないっすよ!」と聞こえてくるも、それもまた耳に入れない。
(;;)゚∀゚)「そうだな、もし本気で謝るんだっていうんだったら、夜中のソーサック川の横断遊泳でも」
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ/
) (
━━━━━━━━━ (;;)゚∀゚) ━━━━━━━━━
) (
/^⌒Y´^Y`\
.
-
195 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:50:20 ID:F2t219ls0
-
(;;) ∀ )
突然言葉が途切れたことに、部下たちも気づいた。
(;^Д^)「ジョルジュさん?」
(;=゚ω゚)ノ「どうしたんですよう、そんなに怒っているんですかよう」
...フッ
Σ(;;)゚∀゚)
(;;)゚∀゚)「あれ、なんか一瞬気を失っていたような」
何事も無かったように、ジョルジュは目を瞬いた。
実際彼自身は、自分が取り憑かれ、そしてすぐに離されたことにまるで気づいていなかった。
-
196 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:51:06 ID:F2t219ls0
-
<_プ−゚)フ「あ、あ! やっぱりそういうことありますよね! だから僕らも」
(;;)#゚∀゚)「お前らとはちげえよ!!」
<_フ;−;)フ「ひいいいいいい」
怒鳴った直後、かすかな振動音がした。携帯端末のヴァイブレーションだ。
ジョルジュは急いでポケットからそれを取り出す。
(;;)゚∀゚)「ああ、取引先から連絡だよ。まずお前らのこと通報しておいてやるから覚悟しておけよな」
喚く声をこれまた無視して、通話に応答する。
(;;)゚∀゚)「もしもし、ジョルジュです」
先方からの声は、ジョルジュにだけ届く。
-
197 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:52:00 ID:F2t219ls0
-
( ^ω^)“電話を聞くことはできないんですかお?”
(´・ω・`)“残念ながら無理だ。ボスの話に集中しよう”
(;;);゚∀゚)「いやあ、その、実は私の部下がとちってツンってやつを逃してしまいまして」
(;;)゚∀゚)そ「え、もういい? そうですかそりゃ良か――いえ、なんでもないです」
ツンが逃げたことが、もういいこと。
ショボンの考えた経緯と符合する。
(*^ω^)“ショボンさんすごいお!”
(´・ω・`)“静かに、まだ話は続いているみたいだ”
(;;)゚∀゚)「で、ええと、何でしょう。もう一つの計画?」
ジョルジュはきょとんとした様子になる。
-
198 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:53:08 ID:F2t219ls0
-
(;;);゚∀゚)「ええ、もちろん。断るわけにはいかないですよ!
事情は何でも、うちのものがやらかしてしまったわけですし」
(;;)゚∀゚)「それでその計画というのはどのような? え?」
(;;)|!゚∀゚)「いやあその、人を傷つけたりとかそんな物騒なことはちょっと……
私達はあんまり本格的というか、基本集まって遊ぶことがメインのチームなんで」
(;;)゚∀゚) ホッ「あ、見張り……ええ、それくらいならなんとか」
(;;);゚∀゚)「ターゲットの画像、ですか。もらっても仕方ないような……
いえいえ! そんなつもりは! もう大切にもらっておきます!」
-
199 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:54:06 ID:F2t219ls0
-
通話が終了したところで、ジョルジュががっくりと肩を落とした。
相当に疲労したことが見た目にもよくわかる。
(;;)゚∀゚)「……面倒くさそう」
そう呟いたのは、ブーンとショボンにも、部屋の中の三人の部下にもはっきりと聞き取れた。
( ^ω^)“つまり、こいつらはさらに大きな犯罪者に使われているのかお?”
(´・ω・`)“そのようだ。これはいよいよ大きな犯罪の臭いがしてきたな。
どうやら今度は誰かを傷つけようとしているらしい。殺人かもしれないな”
(|!^ω^)“……ショボンさん、さっきから思っていたんですけど
そんな言葉をほいほい使うなんて、あなたいったい生前はどんな生活を”
(´・ω・`)“あ、おいジョルジュが画像を見ているぞ! フォーカスを合わせろ”
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200 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:55:43 ID:F2t219ls0
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嫌そうな顔をしながらも、ジョルジュは画像を見据える。
(;;)゚∀゚)「こいつが、あいつらの狙っている人か……」
『あいつら』が何を企んでいるのか、全容はジョルジュも知らない。
深入りしたら碌でもないことになるのは明白だった。
こうして手助けするだけで結構な金が入ってくる。
それだけのために彼は『あいつら』とつるんでいた。
画像に映っていたのは、ひとりの女性。
(;;)゚∀゚)「いったいこの人は何をしたんだかね」
嘲笑混じりにそうぼやいて、ジョルジュはその画面を閉じた。
∇∇∇
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201 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:56:47 ID:F2t219ls0
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(;^ω^)「ううむ、結局手がかりはほとんど無かったですお」
ジョルジュが使われている身である以上、詮索したところで得られる情報もたかが知れている。
いくら取り憑いて調べても、ツンが攫われた理由は把握できそうになかった。
ツンはもう安全なのだろうか。
それが気がかりで、気になる点はいくつもある。
( ^ω^)「これからどうしたらいいと思いますかお、ショボンさん」
すっかりショボンに質問することが癖になっていた。
アドバイスを受けることに慣れてしまっていたのかもしれない。
出会ってまだ一時間も立っていないが、聞くとすぐに、的確な言葉をかけてくれたから。
そのショボンが、このときは返事をしなかった。
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202 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:58:02 ID:F2t219ls0
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「あれ?」と思い、ブーンが彼を振り向く。
(;´ ω `)
俯いた彼が、そこにいた。
(;^ω^)「ショボンさん!?」
ただならぬ気配を感じて、ブーンが叫ぶ。
ショボンはそれを聞いているのか、いないのか判然としなかった。
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203 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:58:55 ID:F2t219ls0
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(;´ ω `)「なぜだ……」
よろめきながら、ショボンが歩く。
ゆっくりディスプレイに近づいていく。
今、その画面にはジョルジュの姿が映っていた。
部屋の鍵を開け、部下たちを出している。
先ほど言われた計画に手伝わせるためだろう。
(;´ ω `)「なんで彼女が、巻き込まれているんだ?」
画面の目の前に立つショボン。
その腕が持ち上げられ、握られた拳が重々しく画面を叩く。
揺れこそしたものの、消えたりはしない。
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204 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 22:59:45 ID:F2t219ls0
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( ^ω^)「ショボンさん、あの女の人知っているんですかお?」
知り合いだから、これほど動揺しているのだろうか。
それはそれで理屈が通っているようにも思える。
(´ ω `)「知っているとも」
ショボンの顔が持ち上がる。
狼狽し切った顔の、目に涙が浮かんでいた。
( ^ω^)「あの……」
かけようとした言葉が、消えてしまう。
何を言ってもショボンには届かない気がした。
数秒後、ショボンは口を開き、述懐する。
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205 名前: ◆MgfCBKfMmo[sage] 投稿日:2014/01/13(月) 23:00:59 ID:F2t219ls0
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「僕の死因を、言ってなかったね」
「僕は」
「彼女を庇って死んだんだ」
残り時間 78分54秒
∇To be continued...∇
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