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165 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/11/30(月) 23:05:48 ID:mBvYQh/U0
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9.グール
(;'A`)
凄腕ハンターウツタ・ドクオは、対応に困っていた。
それは何故か。
本日の目標はグール。
何故か大量発生しているので、巣ごと殲滅して欲しいとのことだった。
しかし、思っていた以上に数が多い。
さらに言うと、その場所は貴重な草木の茂る森であった為、範囲魔法の使用は躊躇われた。
一匹一匹倒しても時間がかかる。
彼は、最近会得した召喚魔法を使うことにしたのだった。
味方が増えれば、時間は半分で済む。
そう思ってのことだった。
結果。
(´・_ゝ・`)「あっ、どうも…あ痛、いたた…」
グールの群れの目の前に、スーツ姿の頭髪の薄い男性が現れたためだ。
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166 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/30(月) 23:06:41 ID:mBvYQh/U0
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(;'A`)「…どうも…」
なにを隠そう、彼には早く帰らねばならない理由があった。
荷物が届くのだ。
それも、ただの荷物ではない。
まさに待ち望んでいたものが届くのだ。
『魔物っ娘フィギュアver.2・火竜モデル』。
一種類ずつリリースされていたこのシリーズにも、ついに火竜に順番が回ってきたのだ。
以前の火竜っ娘と同じと侮るなかれ。
これまでの面影もしっかりと残しつつ、より可愛く、より美しく、より溌剌と。
精密に、鮮やかに、活き活きとしたそれは、今にも元気に動き出しそうだ。
少しだけ見えるパンツはご愛嬌。
今回は、服装面に大きな変化が加えられた。
火竜の持つ、燃え上がるような独特な赤。
以前までは、服装にもその赤がふんだんにあしらわれていた。
民族衣装的な方向性こそ変わらないものの、それを今回は大幅に抑え、あえて地味ともいえる彩色の服装となっている。
しかし、それによって髪色の鮮やかな赤が、そしてその活動的な外見が、とてもよく映えるのだ。
服装単体でもよく見れば、石のアクセサリーなどが追加されており、ただ地味にした訳ではないことが分かる。
手に持つ武器は牙を模した槍から、正統派とも言える大剣へと変わった。
これはアンケートにより決まったことだが、次いで多かった槍派の要望にも答え、槍に装備を変更させることも可能となっている。
ちなみにドクオは大剣に一票を投じた。
やはり正統派、火属性パワー型が好みであることはもちろん、槍はむしろヘルウルフっ娘に持たせるべきだと思っていた。
そちらがアンケートによりクロー装備となってしまったことだけは、残念至極の極みであった。
ともかく、ファンの間では賛否両論あるこれらの変化を、ドクオはいたく気に入っていた。
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167 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/30(月) 23:08:05 ID:mBvYQh/U0
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届くはずのこれを、ヒートに見られる訳にはいかなかった。
未だヒートは、彼のフィギュア趣味を知らない。
彼の言いつけを守り、部屋に入っていなければ、だが。
包装はされているだろうが、万が一ということもあった。
(;'A`)「えっと…し、召喚…」
(´^_ゝ^`)「えーと、初めての呼び出しでして、不備があったらすみませんね。いたたた」
グールに噛み付かれながら男性が答える。
予想と違いすぎて戸惑う。
(;'A`)「えっと、お名前は」
(´^_ゝ^`)「あ、真名はちょっと…悪魔デミタスとでも呼んで頂けたら…」
(;'A`)「あ、はい」
(´^_ゝ^`)「いやあ、若い人がとっつきやすいかなってね。タスあたりが、ほら」
(;'A`)
(´^_ゝ^`)「デミたそ〜、みたいな」
(;'A`)
(´^_ゝ^`)「デミたそ〜」
(;'A`)
(´^_ゝ^`)
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168 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/30(月) 23:08:50 ID:mBvYQh/U0
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(;'A`)「悪魔って、あの、もっとイメージ的に…」
(´・_ゝ・`)「ああ、召喚斡旋所では黒の服装が規定されてますよ」
(;'A`)「あ、スーツ…はい…」
(;'A`)「いやいや、あの、戦ったり、とか」
(´^_ゝ^`)「いや〜〜〜…初めてですけど、やってみましょうか。えいっ」
言うなり悪魔デミタスは、裾に噛み付いていたグールを殴りつける。
鈍い音がした。
グールに変化はない。
元気に噛み付いている。
(´^_ゝ^`)「あ〜…ダメですねぇ…」
(;'A`)「こう…腕を振るだけで何故か敵が吹っ飛んだり、とか…悪魔ですよね?」
(´^_ゝ^`)「いやあ…ちょっと…」
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169 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/30(月) 23:10:16 ID:mBvYQh/U0
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(;´^_ゝ^`)「戦闘に関してはちょっと…娘の方ができるぐらいですから」
(;'A`)「娘さん呼べないんですか」
(;´^_ゝ^`)ゞ「いやあ〜〜〜…最近ちょっと…反抗期で…」
(;'A`)「あ、はい…すんません…じゃあ、魔法とかも…」
(´^_ゝ^`)「苦手ですねぇ…」
(;'A`)「はあ…」
(;'A`)「……?」
ハズレを引いたかもしれない、と半ば落胆しているドクオは何かに気づいた。
先ほどから、グールがドクオの方に来ていない。
デミタス相手に唸ったり噛み付いたりしているだけだ。
(;'A`)「…?」
(´・_ゝ・`)「どうしました?」
(;'A`)「あ、ちょっと…そこにいてもらえますか」
ドクオは魔法の準備をする。
試したいことがあった。
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171 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/30(月) 23:11:13 ID:mBvYQh/U0
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(;'A`)「『デコイドール』」
敵の気を引く分身を作り出す。
見向きもしない。
(;'A`)「『プロボーク』」
敵を挑発し、怒りを自分に向けさせる呪文。
効果がない。
(;'A`)「とうっ」
グールに軽く斬りつける。
一瞬怯むが、なぜかまたデミタスを襲い始めた。
(;'A`)「…」
(;´・_ゝ・`)「あいたたた」
(;'A`)「…おぉ…」
ほぼ確実であった。
この悪魔デミタス、やたらめったら『ヘイトが高い』。
魔物が、デミタスしか襲わないのだ。
ドクオは、この悪魔が少しだけ哀れになった。
しかし、それなら話は早い。
無抵抗の敵を切り刻むだけで終わるのだ。
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172 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/30(月) 23:12:53 ID:mBvYQh/U0
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―――二時間後。
全ての魔物を掃討し終えた。
本当に、ドクオには見向きもしなかった。
(;'A`)「お疲れ様です…」
(´・_ゝ・`)「あ、お疲れ様です」
デミタスには、何故か怪我一つない。
そこは悪魔と言うべきか。
(;'A`)「あ、じゃあもう結構ですんで…」
(´・_ゝ・`)「ああ、分かりました。それと、言い忘れてたんですけど」
(;'A`)「はい」
(´・_ゝ・`)「悪魔の契約上、これからは召喚時は必ず私が出ますので」
(;'A`)
(;'A`)「えっ」
(´・_ゝ・`)「あ、給料とかはこっちの魔界で出ますんで大丈夫ですよ」
(;'A`)「あ、はい」
(;'A`)「え、じゃあ、攻撃とかは」
(´・_ゝ・`)「いや〜…」
(;'A`)「あ、そっすか…」
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174 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/30(月) 23:14:52 ID:mBvYQh/U0
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(´・_・`)「ちゃーす、ハンコかサインお願いしゃ…大丈夫ですか」
(; A )「ゼェ…ハァ…だ、ゴホッ…大丈夫です……ハァ……グフッ…」
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