('A`)ドクオは凄腕ハンターのようです

6.お仕事

102 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/11/25(水) 19:56:26 ID:jFCv16tI0

6.お仕事


ノパ听)「ふんふふーん」

新入りメイドのヒートは、歩いていた。
今日も今日とて、楽しく仕事である。

主人であるドクオにも言っていないが、彼女の家は貧乏であった。
何でも、祖父だか曽祖父だかの借金が返しきれていないとか。
ヒートの上に三人の姉がいるが、それが理由か全員働きに出ている。
ついに私も家計の役に立つことができる、と意気込んでいた。

労働時間は7時から20時。
時間としては長いが、ドクオ家でのんびりする時間も長いので激務という訳ではない。


ノパ听)「おはようございます!!」

渡されていた合鍵を使い家に入る。
ノックなどは、特に要らないと言われていた。
そもそもこの時間、主人はまだ寝ている。
だから挨拶も必要ないのだが、そこは一応。

103 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 19:57:32 ID:YIj08ZrU0

ノパ听)「よし」

朝ご飯は、大抵がサンドイッチ。
具は毎日変えているが、たまに彼女の気まぐれで納豆ごはんにメニューが変わる。
納豆が苦手な主人ドクオはその気まぐれの発動を心底恐れているが、そんなこと彼女は知る由もない。

ちなみに、今日は納豆ご飯にしようと思った。

それだけではさすがに職務放棄なので、他に一、二品作る。
目玉焼きと焼きウインナーに決めた。
朝ご飯は、まだそれしか作れない。
フレンチトーストは、まだ練習中であった。

ノハ;゚听) ジュゥゥ…

ノハ;゚听)

ノハ;゚听) パッ!

…焦げていない。
黄身も割れていない。

ノハ*゚听)「おっしゃ!!」ガシャァン!!

皿は割れた。

104 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 19:58:15 ID:YIj08ZrU0

('A`)「お早う…」

ノパ听)「おはようございます!」

大抵、朝ご飯を作っている途中に主人は起きてくる。
やはりハンターたるもの、眠りは浅くなくてはならないのだろう。
たぶん、有事か何かに備えて。

実際は家に入るときの「おはようございます!!」で強制的に眠りから引きずり出され、
料理を作る物音や歓声で完全覚醒を余儀なくされているのだが、それも彼女は知る由もない。

('A`)「今日は…納豆ご飯?」

ノパ听)「と、目玉焼きとウインナーです!」

('A`)「…そう…」

ノパ听)「? 何か?」

('A`)「…いや、何も…」

ノパ听)「そうですか?」

('A`)「いただきます…」

主人の繊細な心情に、メイドが気づくのはいつになることか。
粗野なメイドに、主人がはっきりものを言えるのはいつになることか。

105 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 19:58:57 ID:YIj08ZrU0

ノパ听)「今日は仕事でしたよね?」

('A`)「うん。バジリスクだって。遠いから夜まで帰らないかも」

ノパ听)「バジリスクってアレですか。目ぇ見ちゃ駄目なやつ」

('A`)「そう。即石化、とかはないけど見続けると危ないんだ」

ノパ听)「へー…毒とか吐くんですか」

('A`)「吐きはしないけど、牙にあるから飛ばしてくる。なんかピュッて」

ノハ;゚听)「うへー」

('A`)「正面にいなきゃいいんだよ」

主人と食事のときに、魔物の話を聞くことが多かった。
まだ来て一週間程だが、「対策が分からない」と言われたことはない。
凄腕と呼ばれる訳である。

106 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 20:00:02 ID:YIj08ZrU0

('A`)「じゃあ、行ってくる」

ノパ听)「行ってらっしゃいませー」

借りた馬で発つ主人を見送り、家事に取り掛かる。

ノパ听)「おしっ!!」

彼女の信条は、日々成長、である。

どれだけ何ができなかろうが、三日前よりも今日、今日よりも三日後の方が少しでも上手くできるようにする。
そうやって生きようと思っていた。

それが反映されているのであろう、最近は皿洗いであまり皿を割らなくなったし、掃除で物を倒さなくなった。
はじめは日に6枚割っていた皿は、今や日に2枚にまで留めておけるようになった。
初日に蹴倒した観葉植物も、今や華麗に避けて箒がかけられる。

だから、主人の研究を止めない姿勢は好きだった。
人は皆、何かが一定までできるようになると、成長をそこで止めてしまう。
しかし主人は、仕事がなくても部屋に閉じこもって研究をすることが多い。
そんな主人の見えない姿は、他の人とは違って感ぜられた。


実際は人と会いたくないが為に、部屋で暇潰しに研究するなりフィギュアを眺めるなりしているだけなのだが、やはり知る由もないことである。

107 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 20:00:43 ID:YIj08ZrU0

ノパ听)「おわったー」

掃除が終われば、もう昼時だ。
今日は主人がいないので、散歩と買い物がてら、外に食べに出ることにした。
申し訳ないことに、その為の小遣いも給料とは別に貰っている。
しっかり仕事をしよう、と思った。

メイド服から外行きの服に着替え、しっかりと施錠して外に出る。
流石にメイド服では出られない。

ノパ听)「!!」

チーズの焼ける、香ばしい匂いが漂ってくる。
もとを辿ると、一軒のパン屋。
綺麗な店員さんが迎えてくれた。

ξ゚听)ξ「あら、いらっしゃい。ちょうど焼きたてよ」

ノハ*゚听)「焼きたて!」

昼ご飯は、とろけたチーズの載ったパンにした。
安いし、大きいし、何より美味しい。
できたてということもあり、すぐに食べ終わってしまった。
勢いでもう一つ食べてしまい、店を後にする。
ぜひともまた来ようと思った。

108 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 20:01:47 ID:YIj08ZrU0

またぶらぶらと歩き始める。
夕飯はどうしよう、とか考えながら。

ノパ听)「あ!」

大通りの掲示板で、よく知った顔を見つけた。
自分の仕事を斡旋してくれた、アサピーだ。
何かの紙束を持っている。

(-@∀@)「やあ、ヒート。久しぶりだね」

ノパ听)「お久しぶりですアサピーさん!」

(-@∀@)「元気だったかい?…と聞くまでもなく、元気だね。結構結構」

ノパ听)「はい!ここで何してたんですか?」

(-@∀@)「いやー、ビラ貼りだね。これがそう。メイドと執事しませんか、って。あと、スカウト」

掲示板を見ると、確かに広告が貼ってある。

『メイド・執事求む。経歴・年齢不問、まずは相談から。でも個人的にメイドは若い方がいい』

ノパ听)「…最後の一文が個性的ですね!」

(-@∀@)「正直に生きようと決めてるんだ」

109 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 20:02:35 ID:YIj08ZrU0

ノパ听)「スカウト、って?」

(-@∀@)「知らないっけ。君はお姉さんの紹介で入ったんだもんね。そうそう、クールさんはいいメイドだよ、相変わらずね」

ノパ听)「クー姉、あまり帰ってきませんから寂しいです」

(-@∀@)「ほぼ住み込みの形式だもんね。心中お察しするよ。…スカウトの話だったね、実践してみせよう」

言うなりアサピーは周りを見渡す。
手慣れているような口ぶりだ。

(-@∀@)「なんとなく、暇そうな人を探すんだ。このお昼時だからね」

やがて、カフェの方へ近づいていく。
外に備え付けられているテーブルでコーヒーを飲んでいる若い女性に目をつけたようだ。

ζ(゚ー゚*ζ

ノパ听)「あの人ですか?」

(-@∀@)「好みのタイプだから」

ノパ听)「正直っすね」

110 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 20:03:38 ID:YIj08ZrU0

(-@∀@)「こんにちは。今、お時間よろしいですか?」

ζ(゚ー゚*ζ「え? はい、大丈夫です」

(-@∀@)「単刀直入に聞くんですけども、今、決まったお仕事とかってやってらっしゃいますか?」

ζ(゚ー゚*;ζ「いや、たまに家の仕事のお手伝いをしてるだけですけど」

(-@∀@)「あぁすみません、いきなり不躾に…。いやね、メイドに興味はありませんか、と聞きにきたんです。要はスカウトです、スカウト」

ζ(゚ー゚*;ζ「スカウト…」

(-@∀@)「いやー、見たところお綺麗ですし、引く手数多ですよー、きっと。いかがです?あ、これチラシなんですけどね、良ければ」

ζ(゚ー゚*ζ「………あ、なんか聞いたことあります、この事務所の名前」

(-@∀@)「この辺だとウチぐらいですから、こういうことやってるの」

ζ(゚ー゚*;ζ「いやでも、忙しいので毎日はちょっと…」

(-@∀@)「ああ、メイドっていうと毎日ってイメージですけどね、実際は週三か週二ぐらいで欲しいって方が割と………」

111 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 20:04:48 ID:YIj08ZrU0

ノパ听)「…どうでした?」

(-@∀@)「家の仕事がひと段落したら来るかも、って」

ノハ*゚听)「おー!スカウト成功!」

(-@∀@)「いやいや、来てくれるのはほんの一握りだよ。そんな世の中甘くないのさ」

ノパ听)「へー…でもアレですね、アサピーさんって喋るの上手いですよねー」

(-@∀@)「いやー…そうでもないよ。仕事のときはできるけど、これがプライベートになるとどうも、ね……ははっ……」

アサピーが暗くなってきたので、適当に切り上げて別れた。
仕事に戻らなくては。


ノパ听)「ふむ」

夕飯を考えながら買い物をする。

ノパ听)「今日は」

ノパ听)「オムライスにしてみよう!」

オムライスを作ったことは、まだないが。
なんとなく、出来る気がした。

112 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 20:05:30 ID:YIj08ZrU0

ノハ;゚听)「……」

そして、失敗した。

アサピーの言う通りだった。
世の中は甘くない。

(;'A`)「これ…何?」

ノハ;゚听)「あ、オムライスです」

主人が一口。
ヒートはじっと見守っている。

(;'A`)「卵、なくていいかも…その、チキンライスっていうか…」

ノハ;゚听)「…それは、チキンライスって扱いならいけるってことですか」

(;'A`)「…」

(;'A`)「ギリギリ滑り込みで…」

ノパ听)

(;'A`)「……アウトかな」

ノハ;゚听)「精進します…」

チキンライスも初めてだった。
頑張ろう。

113 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/25(水) 20:06:21 ID:YIj08ZrU0

ノパ听)「ごちそうさまでした!」

('A`)「ごちそうさまでした」

夕飯を食べ終わって、皿を洗って片付けてしまえば、その日の仕事は全部終わり。
あとは帰って、自分の家の家事をして、眠る。

毎日こんな感じだが、今のところは楽しい。

まだまともに役に立てているかは分からないが、少しずつ役に立つようになれればいいと思う。
一歩ずつでいい。

('A`)「あ、ヒート?」

ノパ听)「はい!」

(;'A`)「これから仕事の時にさ、昼ご飯の弁当、作って欲しいんだけど…できる? 本当に簡単なやつでいいからさ」

ノパ听)

ノハ*゚听)

ノハ*^竸)「はい!!!!」

そう、こんな風に一歩ずつ。

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