('A`)ドクオは凄腕ハンターのようです

1.火竜

1 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/11/22(日) 17:30:33 ID:z4hc9iRU0

('A`)

ウツタ・ドクオは、間違いなく最強のハンターであった。


数々の大魔法を使いこなし、剣捌きも並のものでは目で追うすらかなわないだろう。


頭脳も明晰で、体術も国一番と言われる。最近は錬金術に手を出し始めた。


所属する王国からは何度も表彰され、確か先月も国の危機を救った。


それでも尚、国の依頼のみを受ける正式な騎士ではなく、誰からの依頼も分け隔てなく受ける一般ハンターとして生きることを決めた謙虚さもあった。


彼は、今日も魔物と戦う。

2 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 17:31:48 ID:z4hc9iRU0

1.火竜


(;'A`)「まずい…まずいぞ…」

ウツタ・ドクオは、悩んでいた。
今日の敵は、火竜が二体。
つがいであろうこれらが、国の近くの山に巣を作ろうとしていた為の依頼であった。

しかし、悩みの種はそれではない。

(;'A`)「鍵…かけたっけ…」


彼は、家の鍵をかけ忘れていたかもしれなかった。


水と氷の魔法を巧みに使い、火炎の息を消し去りながら考える。
今この場で確認に帰ることはできるのか。

否、できない。
ここで王国に帰れば、怒り狂った火竜を二体も連れ帰ることになる。

一人でなら何ともないが、流石に建物や市民の完全な安全までは保証できない。

3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 17:33:19 ID:z4hc9iRU0

自慢ではないが、彼は金持ちだった。
というか、ハンター稼業を極めるにつれ、自然と金は貯まっていた。

それでいて、彼は召使いやメイドなどは雇っていない。
彼は一人が好きだった。

決して人との会話が苦手だからではない。
彼は、一人の時間が好きなのだった。
そう言い張っている。

そんなドクオの家が空いていれば、空き巣が入るのは最早必定。
そして、調べに来た警察に家の中を見られるのも必定。

(;'A`)「金は…金はどうでもいいんだ!」

雄の火竜にひときわ大きな斬撃を見舞う。
咆哮が上がる。

主な心配は別にあった。

(;'A`)「俺の嫁たちさえバレなければ!」

家には、たくさんのフィギュアがある。
名高い職人たちが精魂込めて作った、フィギュア。
しかも、「魔物っ娘」という割と特殊なジャンルの、ちょっとだけえっちな、フィギュア。
これらを見られる訳にはいかなかった。

ちなみに一番のお気に入りは、まさに目の前にいる、火竜を模した子である。
何というか、強気な感じがよいのであった。
さらにこう、赤い髪とかも、割と好みであった。

6 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 17:35:32 ID:z4hc9iRU0

彼はモンスターハンターである。
たくさんの魔物を倒してきた。
そんな彼が、そんなフィギュアを持っていると知れたらどうなるか。

あいつやべーぞ、とか。
まー怖いわ、とか。
倒錯している、とか。
これだからオタクは、とか。
そう思われる危険性は十分にあった。
警察にマークされることすらあり得た。

彼がハンターだというだけで!
女の子が、ほんのちょっと、ちょっとだけえっちなポーズをしているというだけで!
パンツが見えている、ただそれだけで、である!!

(;'A`)「こんな世の中…間違ってる!!」

魔法で氷の大槍を撃ち込みながら世の中を呪うが、問題解決を優先させるべきだと思い出し、冷静になる。
作戦は、一つだけあった。

(;'A`)「『デコイドール』!!『ディフェンド』ッ!!」

敵の気をひく分身を作り出し、それを限界まで強化して丈夫にする。

(;'A`)「『スピード』!!」

さらに、彼の脚力を強化する。
準備は整った。
迷う暇はない。

(;'A`)「急げっ!!!」

竜巻のような速さで、彼は戦場から逃げ出した。

7 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 17:37:22 ID:z4hc9iRU0

疾風の速度で山を降り、森を抜け、街へと走る。
門番には忘れ物をしたと言い、およそ五分で自宅へとたどり着いた。
奇跡的なタイムだ。

(;'A`)「……!!!」

肩で息をする彼が見たものは、絶望だった。
家の前の人だかり。
国の警察が誰かと話をしている。

やはり、泥棒が入ったのだ…。

そのうちの一人が、ドクオに気付いて近づいてきた。

(;`・ω・´)「あ、ウツタさん、ご苦労様です。あのですね、どうやらお宅に泥棒が入ったようでして…中の確認をしてほしいのです。
      私も入らせて頂きますが、よろしいですか」

(;'A`)「あ、は、はい」

よろしくない。
入ってほしくはない。
自室だけは見られたくない。


しかし、時間がない。
魔力で伝わる分身の体力は、どんどん減ってきている。
勇気を出して家に踏み込み、中を改める。

予想通り、金庫はない。
金など盗まれようが構わない。もっと大事なものがある。

荒らされたリビングを踏みこえ、自室に入る。

8 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 17:39:19 ID:z4hc9iRU0

(;`・ω・´)「あー…ここもひどく荒らされてますね」


('A`)


なかった。


('A`)


部屋の棚は、かつて黄金など足下にも及ばぬ価値の者たちが並んでいた棚は、今や空っぽだった。


(;`・ω・´)「ウツタさん…?やっぱり、大事な研究書とかもあったのでしょうが、どうか、お気を確かに…」

これなら、この人に見られて広まった方がどんなに良かったか。
彼女らの安全に代えられるものなど、なかった筈なのに。

('A`)

(;`・ω・´)「ウツタさん?大丈夫ですか!?ウツタさーん!?」


空虚だけが頭を支配している。
何も、考えられなかった。

9 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 17:40:22 ID:z4hc9iRU0
.


('A`)




そこから先は、よく憶えていない。



気付いたら火竜の目の前にいて、気付いたらそれを倒していて、気付いたら被害に関する書類を書いていた、気がする。



('A`)



書類に、彼女らのことは書かなかった。

他の男(かどうかは知らないが)の手を知った上で帰ってきても、それを愛することはできないだろう。

ただ、哀しかった。

10 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 17:41:08 ID:z4hc9iRU0

書類を提出し、魔物退治の報酬を受け取り、荒れた家に帰ってくる。

('A`)「…?」

ポストにチラシが入っていた。
ただのチラシなら見もしないが、その時の彼の目に何かが見えた。



『隠れた人気を誇る、魔物っ娘フィギュア!ついにver.2(30種)発売決定!!ご予約は…』



('A`)




('A`)




('∀`)



心に一筋、光が射した。

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