( ・−・ )シーンの見た情景は他人より少し多いようです
Scene,1



1 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:00:38 ID:bMzvSyGw0

灰色の空が覆う駅前のビル街の一角。


( ・−・ )


僕は信号が青に変わるのを待っていた。
その日は別に用事もなかったので、この待ち時間にも不満はなかった。

ただ、隣のご婦人のケータイを通じての大袈裟な会話だけは少しだけ耳に障ったので、
出来るだけ其方には目を向けないようにして、道路を行き交う車の色を数えていた。


それにしても今日は街に人が多い。
休日だからだろうか。そういえば近く開店する大きなデパートがあるとテレビで聞いた。
コンビニで殆どの用事が済む自分にとっては特に覚えておいて意味のある話でもなかったのだが。


「ニャー」


ふと猫の鳴き声が耳に入る。
足元に目をやると、灰色の猫が信号待ちをしていた。

いや、信号待ちではなかった。猫は今にも飛び出さんとする構えで向こう側を睨みつけていた。


( ・−・ )「やめとけよ」

「構うな。猫には由緒正しき猫の交通るぅるってのがあるんだ」

小声で忠告するも、猫はその毛並みの良い顔をツンとあちらに向けて聞かなかった。

2 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:01:32 ID:bMzvSyGw0

「じゃあな」

そう言って猫が道路に飛び込む。

隣のご婦人はそのことに気が付いたようで、先程よりも耳に障る金切り声を披露してくれた。
信号を待つ多くの人々の視線が猫に注がれる。


「ニャー」

猫の方は上機嫌で、鳴きながら横断歩道の上を行ったり来たりしている。
これでは“交通るぅる”もあったもんじゃない。


「なぁおい、やべーって。あの猫、トラック来んのに気付いてねえよ!」

突然一人の若者が叫ぶ。
確かに、大きなトラックがこちらに向かって走ってきているが、その前にやばいのはあの馬鹿猫じゃないだろうか。



「ちょっとどいて!!」



不意に後ろから少女に声を掛けられ横に退けられる。
あまりに急なことだったので、よろけて隣のご婦人の足を踏んでしまい、耳元で怒鳴られた。

そしてその元凶は履いているローラーシューズを道路に滑らせ、猫の元へ向かい、流れるような動作で猫を抱きかかえた。
向かってくるトラックは依然スピードを緩めない。

3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:02:46 ID:bMzvSyGw0





「だからトラックが―――――」


さっきの若者の言葉が言い終わらないうちに、トラックと少女と猫は運命の出会いを果たした。



( ・−・ )



ようは衝突である。
彼女は猫を抱きかかえたまま、背中からトラックにぶつかると、道路に血をまき散らし、僕らの前から姿を消した。



( ・−・ )









―――――その0,1秒前。

4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:03:47 ID:bMzvSyGw0








( ・−・ )「お人好し」

「ニャー」

ミセ*゚д゚)リ「うっせ!」

とりあえずその少女には嫌味を言っておいた。











,

5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:04:31 ID:bMzvSyGw0








( ・−・ )シーンの見た情景は他人より少し多いようです

     Scene,1 僕の見た少女は他人より少し打たれ強い







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6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:05:50 ID:bMzvSyGw0

食べ物を美味しそうに食べる女性は魅力的だという。
現に、今頭に軽く包帯を巻きながらも苺パフェを頬張る彼女、ミセリは可愛らしいと言える。


( ・−・ )「わざわざその猫の放浪自殺癖に付き合ってやる義務はないだろうに」

「そうだぞ。そうやって首を突っ込むから怪我ばかりするんだ」

( ・−・ )「その猫が喋るな。一般常識的にも」

「一般常識?猫には無いね、そんなもの」

ミセ*゚ー゚)リ「まぁ私は大丈夫だよ、この通り」

駅前の喫茶店。今日は日も当たらないためそれほど有難くもないテラス席。
先程トラックに撥ねられ吹っ飛んだ彼女は、今は僕の前で生クリームを鼻の頭に付けている。

( ・−・ )「それは知ってる。でも全く痛くないわけじゃないだろう」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、今も頭がガンガンするよ」

彼女はこちらには目もくれず、尚もスプーンで容器に残ったクリームを集めている。

「……なあシーン、この娘は馬鹿なのか?」

下から猫が小声で聞いてくる。
僕からするとこの猫も十二分に馬鹿なのだが、ここでは黙っておく。

( ・−・ )「いや、どこかで頭でも打ったんだろう」

( ・−・ )「……馬鹿な妖怪踊り化け猫をトラックから守るときだとかに」

ミセ*゚ー゚)リ「馬鹿猫でも死ぬと悲しむお爺ちゃんがいるからねー」

「うーむ、なるほど、それは大変だな」

やはりこの猫は馬鹿だ。
軽く蹴ってやろうかと思ったが、彼女が言う、悲しむお爺さんの為に止めておいた。

7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:06:33 ID:bMzvSyGw0

(´・_ゝ・`)「あれ、何やってんの。こんなとこで」

( ・−・ )「見ての通り」

ミセ*゚ー゚)リ「パフェ食べてる」

湧いたように現れたのは、友人の盛岡だった。

(´・_ゝ・`)「いやそうじゃなくて……おっ、苺残ってる、もーらい」

盛岡はミセリが容器の底に残していた苺を触れることなく取り出し自分の掌の上に移動させると、
そのまま口の中に放り込み苺の酸味と甘味に顔を顰めた。

ミセ;゚д゚)リ「あーっ!楽しみにしてたのにーっ!」

(´・_ゝ・`)「おきのどくですがイチゴは消えてしまいました」

ミセ#゚д゚)リ「返せ!私の苺返せ!」

(´・_ゝ・`)「えっ、僕の口に含まれて入念に咀嚼された苺でよければどうぞ」


ミセ*゚−゚)リ

ミセ*;−;)リ ポロ

( ・−・ )「あ、店員さん、イチゴパフェもう一つ」

パー゚*フェ「かしこまりましたーっ!」

(´・_ゝ・`)「ねぇ泣かないでよ、ごめん。謝るから」

結局、ミセリを宥めて盛岡が話を始めるまでに、僕はコーヒーをもう一度追加注文することになった。

8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:07:16 ID:bMzvSyGw0

【流石兄者のパソコンのフォルダ・「重要」】



三瀬崎 ミセリ

怪我しても死なないらしい。
多分体を作ってる細胞の一個一個が多分能力の範疇だと思われる。
常連患者。だけど包帯の無駄。でも金は払ってくれるからとりあえず診てる。


静岡 シーン

時間止めれるんだと思う。
でもぶっちゃけコイツくだらないことでしか時間止めないらしいから色々不明。
常連患者。てか↑の保護者。金払うのはコイツ。


盛岡 デミタス

空間を操ってるっぽい。
「合法秘術・遠距離セクハラ」とか平気でやる探偵。
常連患者(ブラックリスト)。看護婦にセクハラする。金は↑が払う。


イジョウは全部弟者の話。俺は全然覚えてない。


愛洲 パフェ

駅前の喫茶店「カコローグ」のウエイトレス。可愛い。
俺が常連。
これは覚えてる。でも重要。


【「重要2」は二次元の幼女の如何わしい画像ばかりで特に情報なし】

9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:08:22 ID:bMzvSyGw0

( ´_ゝ`)「……弟者」

(´<_` )「何だ?」

( ´_ゝ`)「あの娘、今までこの診療所に何回診せに来た?」

白衣の襟を正しながら不意に兄者が聞いてきた。
あの娘、とは先程の患者「三瀬崎 ミセリ」のことである。

それにしても急に診療所のドアが開き、少女が頭から血を流しながら、

「すいません、足を擦り剥いたのでバンソーコー下さい」

と言い放ったとき、新人の看護婦は卒倒しそうになったという。
今みたいな患者の少ない昼間に来ていなければ、軽いパニック映画モドキになっていただろう。

とはいえ、彼女がここに来るのは初めてじゃない為、俺は特に驚きもしなかったが。

(´<_` )「37だな。正確な内訳としては普通の診察が32回、誰かの付き添いが4回」

( ´_ゝ`)「……あとの1回は?」

(´<_` )「緊急搬送」

(;´_ゝ`)「ん?……すまん。記憶にない」

兄者は額に手を当てて少し考え込んだが、眉を顰めたまま溜息の後に口を開いた。

(´<_` )「いや無理もないことだ」

(´<_` )「……アレは“異常”だからな」


( ´_ゝ`)「……弟者。取り消せ」

“異常”という言葉に反応した兄者が冷ややかな声を静かに上げる。
こういうときの兄者の声には妙な力が籠ってるようで、昔から少し苦手だ。

(´<_`;)「ああ、すまん。こちらの言葉の綾だ。取り消すことに異論は無い」

(;´_ゝ`)「……いや、すまん、俺も悪かった」

少しバツが悪くなったので、俺は白衣の皺を伸ばす仕草をしながら兄者に背を向けた。

10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:10:01 ID:bMzvSyGw0

( ´_ゝ`)「……」

( ´_ゝ`)「……時に弟者、昨日の晩飯は何だった?」

(´<_` )「デミグラスソースのハンバーグ、コーンスープ、トマトとキャベツのサラダだが」

二度目の不意な質問。
癖でつい咄嗟に口から出たが、質問の意図が俺には汲み取れなかった。


( ´_ゝ`)「なら一昨日の昼飯は何だっけか」

(´<_` )「二人で牛丼屋に行っただろう。俺は牛丼の並で、兄者は爆裂カルビ丼だ。兄者は半分も食えてないがな」

( ´_ゝ`)「……そうか、そうだったな」

兄者は今度は顎に手を当てて宙に視線をやっている。
その様子は何か考えているようにも、何も考えてないようにも見えた。


俺の兄、流石兄者は昔から忘れ物が多い。
一昨日の牛丼屋のときも、自分が奢ると言っておきながら財布を忘れていた。

仕事、診察や治療に関しては全くの無問題なので放っておいている。
俺は逆に記憶力が良い方なので、基本的に一緒にいる以上フォローに回ることが出来るからだ。


「なあ、昨日のエツ子の部屋のゲスト誰だっけ」


などという下らない質問を患者の診察中にすること以外は、意外に優秀な兄だ。
頭の回転も多分俺よりずっと速い。

11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:10:58 ID:bMzvSyGw0

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「どうした」

( ´_ゝ`)「なぁ、一か月と28日前の晩飯は何だった?」

(´<_` )「……」

ここに来て、俺は兄者が本当に聞きたいことが何かようやく分かった。
いつもなら2回。意図があるときは3回。兄者はよくどうでもいいことで俺の記憶力を試してくる。

俺はゆっくりと答え始める。

(´<_` )「……二つ答えるぞ。まず、その日の晩飯だが、明太子スパゲッティに前日の残り物のキャベツサラダだ」

( ´_ゝ`)

(´<_` )「そしてもう一つ」

( ´_ゝ`)

再び兄者に背を向ける。

俺の、話を始める前のこの仕草はこの診療所を建ててから303回目だ。
兄者は静かに俺の言葉を待っている。この話をした回数が20回を超えてからはずっとだ。

前にこの話をしたときも、彼女がこの診療所に来た時だ。
その時は待合室のカーテンは白じゃなくて緑だったし、看護婦は一人だった。
その日の診察したのは彼女を含めて三人。苗字は来た順番にサクラガワ、コオリ、ミセサキだ。
朝飯は時間がなかったから簡単に済ませた――――――俺は全部覚えている。


(´<_` )「お前の弟、流石弟者は……“さっきの娘”と同じ種類の人間だよ」

それこそ、“異常”な程に。



( ´_ゝ`)「……やっぱりかぁ」

振り返らず言った俺の言葉に、兄者はこのやり取りが20回を超えてから一度も変わらないセリフを呟いた。

12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:11:59 ID:bMzvSyGw0










( ´_ゝ`)「あ、そうだ弟者。俺の虎の子二次ロリコレクションはどのフォルダだ?」



(´<_` )「…………重要2、それと資料22だ」

俺は振り返って、もう何度目になるだろう偽装フォルダの名前を口にした。

( ´_ゝ`)b「おっ、流石だな弟者!」

兄者は満足そうに親指を立て、俺達が物心ついてから一度も変わらないセリフを呟いてパソコンに向かった。







,

13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:13:48 ID:bMzvSyGw0

【広藤の手帳】


氷ちゃんの掛かりつけ…「さすが診療所」

・内科と外傷の応急処置をしてくれる
・お医者さんはイケメンらしい
・氷ちゃんの妹が働いてるらしい


「例のアレ」

目撃者多数のハズが記憶にないという人が多い。
→忘れている?
本当に覚えている人がいないかどうか自主的に捜査を続ける。
先輩は何か最近やる気がないのか協力してくれない。



駅前のラーメン屋がリニューアルしたので行く。
絶対行く。今度は年齢を聞かれないように大人っぽい服装で絶対行く!
ホントに絶対行く!!

そういやアレも駅の近くなのでついでに話も聞くべき?


【ここから後はこの辺りのラーメン屋のメモが大半を占めている】

14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:14:28 ID:bMzvSyGw0

( ^Д^)「変だとは思わねえか?」

( ><)「何がです?」

書類の整理をしていると、吹屋先輩が話しかけてきた。
先輩が肩に置いてくる手を避けて、書類を封筒に片付ける。

( ^Д^)「アイツ、ここ来てすぐ秘密裏に迷宮入り寸前の連続殺人事件を解決したそうだ」


( <●><●>)

先輩が顎で指す方向には、最近この課に配属されてきた新人の刑事がいた。
自己紹介のとき以来、ロクに話もしていないのだが、苗字が珍しいのと、大きく黒い瞳が印象的だった。

( ><)「良いじゃないですか、大手柄です」

( ><)「というか、秘密裏なら、何で先輩が知ってるんですか」

(;^Д^)「それは……アレだよアレ、俺情報通だから」

( ><)「はぁ」

彼、撫森(なでもり)には特に悪い印象を持っていなかった。
落とした書類を拾ってもらったこともあるし、彼の机にお茶を零したときも何も咎めず許してくれた。
思い返してみれば彼が移動してきてから、彼には迷惑でしか関わり合いになっていないような気がする。

彼は非常に勤勉な性格だと課長からも評価が高かったので、先輩の話の意図が掴めなかった。

( ^Д^)「10」

先輩が両手を開いて目の前に持ってくる。

( ><)「は?」

( ^Д^)「この三日でアイツが秘密裏に解決した事件の数だ」

(;><)「え?」

(;^Д^)「ああ、これは俺が同じ期間内に落とした女より多いぞ」

( ><)「先輩のは毎回ゼロじゃないですか……」

うるせえ、と軽く小突いてくる先輩の肘を軽く払った。

15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:15:18 ID:bMzvSyGw0


( ^Д^)「それで、アイツには一つ噂が立ってるんだが……」

先輩は一段と声を低くして言った。

( ><)「というと?」

先輩はこういう与太話が好きで、話を聞かないと後で拗ねて面倒なので、とりあえず調子と声のトーンを合わせた。

( ^Д^)「……アイツが一連の事件の黒幕なんじゃないかって」

( ><)

( ><)「何ですかそれ、随分な冗談ですね」

本当に、思っていた以上に下らなかったので、溜息すら出なかった。
先輩のこういう冗談の質というか内容は日に日に下らなくなってきているような気がする。

( ^Д^)「そういうなよ、そう思う根拠がちゃんとあるんだぜ?」

そういって先輩はポケットからメモを取り出した。
メモには汚い字で、数名の名前が書いてある。


( ><)「何です?これ」

( ^Д^)「馬鹿、アイツが捕まえた犯人の名前の頭文字だよ」

頭文字。
確かによく見ると、ルビがふってある苗字の頭文字に小さく丸が付いている。

( ><)「それは知ってますけど……名前がどうかしたんですか?」

( ^Д^)「お前鈍いなぁ、そんなんだからいつまで経っても童顔なんだよ」

( ><)「……今は童顔関係ないでしょう、セクハラで訴えますよ」

睨みつける私をよそに、先輩は猶も興奮した様子で話を始めた。

16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:15:59 ID:bMzvSyGw0






( ^Д^)「ほら……前四人の苗字を名畑、出川、本八幡、林田……と捕まった順番に並べると“ナデモリ”になる!」

( ><)

( ><)「……残りの六人はどうするんですか」

(;^Д^)「それは………あれだろ、数合わせ?」

( ><)「あと、四人目はリンダじゃなくてハヤシダですよ」

(;^Д^)「……えっ、マジ?うわっ、マジだ!」

何やら一人でがっかりしている先輩を横目に、私は今まで我慢していた分の溜息を吐いた。







,

17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:17:06 ID:bMzvSyGw0

【はなまる弁当・注文メモ】


対策2課 ナデモリ 様


幕の内弁当 4つ

シャケ弁当 3つ

大御殿・松 1つ

+ 海苔弁当 1つ


担当・宇津田


【「これ、一つ多くないですか」「私が二つ食べるんです」「はぁ」】

18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:17:46 ID:bMzvSyGw0

J( 'ー`)し「伊藤さん、伊藤さん」

('、`*川「……何ですか」

私のバイト先の宇津田さんは休憩中、よく私に声を掛ける。
彼女の息子さんが私と同じ年だかららしいが、正直に言って面倒くさい。

一応さん付けではあるが、私に向けられる目は親が子を見る目そのものだからだ。

J( 'ー`)し「伊藤さんには将来の夢、ある?」

('、`*川「将来の夢、ですか」

こういった風に、抽象的かつ親のような質問を投げかけてくる。
私はとりあえず同じ言葉を反復して、当たり障りのない答えを考えるまでの時間を稼いだ。


J( 'ー`)し「実はうちの息子がねぇ、バンドをやりたいって言い出したのよ」

('、`*川「はぁ……」

バンド。
私にはよくわからないが、それは男子高校生の憧れの象徴なのだろう。


J( 'ー`)し「音楽で世界を変えてやるって、意気込んじゃって」

('、`*川「そうですか……」

おそらく変えられるのは精々自分と巻き込んだ人間の貯金の額くらいだろうが、そういうのもきっと悪くないんだと思う。
私は絶対にやろうとは思わないが。

J( 'ー`)し「それで、エレキギターが欲しいって言うんだけど、家にはそんなもの無くてねぇ」

('、`*川「まぁ、普通はそうですよね」

J( 'ー`)し「それで、とりあえず家にあった三味線を渡したんだけど」

それは違うだろ。
喉まで出かかった言葉を飲み込んで、私は苦笑いを返した。

19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:18:31 ID:bMzvSyGw0

J( 'ー`)し「それで怒られちゃったのよ……こんなのエレキじゃないって」

('、`*川「ギターでも……ないと思いますけど……」

J( 'ー`)し「息子の話では何でも、ああ、息子には幼馴染の女の子がいるんだけどね、そいつと組む約束したんだーっ、て」

('、`*川「……メンバーは用意してたんですね」

突っ込みどころは色々あったが途中で遮るわけにもいかず、適当に相槌を打った。
というか女と二人でバンド結成かよ。カラオケにでも行ってろ。


J( 'ー`)し「伊藤さんはどう思う?」

('、`;川「はい?」

突然宇津田さんがこちらに向き直って聞いてくるので、私は思わず聞き返してしまった。

「どう思う」とは、どういったことについてだろうか。
彼のバンドについてだろうか。エレキ三味線の実在についてだろうか。
それとも可愛らしい幼馴染の存在はライトノベルの中だけだという私の持論についてだろうか。

あとそういえば将来の夢の話はどこに消えたのだろうか。


('、`;川「……いいんじゃないですか?」

そう答えはしたものの、何が良いのかわからない。どうでもいいし、何でもいい。

J( 'ー`)し「……そうよね。母親は応援するべきよね」

宇津田さんは、私の心中を知ることなく、何か一人で納得していた。


「イトーッ、弁当運んでー、これすぐ近くだからー」

('、`*川「あ、はーい」

私は軽く会釈をして休憩室を出た。
同じく会釈を返した宇津田さんの顔は何故か最初よりも少しスッキリしていた。

20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:21:47 ID:bMzvSyGw0











('、`*川「夢………バンド、ねぇ……」

('、`*川「あーあ、そういや最近CD買わなくなったなー」

夢。

ヘルメットを被った直後、私は昨日の夢を思い出した。

今日中にはあの人に伝えないと。





,

21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:22:41 ID:bMzvSyGw0

【着信】



『ねぇ、盛岡センセ。いきなりだけど私が昨日見た夢の話するよ』



『―――――』




『何とかなる?ならない?』



『あー。私は別にどっちでもいいんだけど、ね』



『ん、じゃあね』


【通話終了】

22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:24:00 ID:bMzvSyGw0


(´・_ゝ・`)「まぁ、そんな大層な話でもないけど。シーン、ちょっと時間止めろ」


二度目に頼んだパフェのほとんどがミセリの口に運び込まれた頃、盛岡は妙に真剣な顔つきで言った。

僕は頷いて時を止める。
ミセリはきょとんとして瞬きを繰り返している。



(´・_ゝ・`)「今日、伊藤から電話があった」



(´・_ゝ・`)「―――――。」



( ・−・ )

ミセ*゚д゚)リ「え」



ミセリがスプーンから苺を落とす。
盛岡はそれが地面に触れる前に拾い上げてミセリの口に放り込んだ。
僕は黙って二杯目のコーヒーをゆっくり飲み干してから、時を動かした。

さっきまで止まっていた猫が何だ何だ、と足元で騒いでいる。

24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:25:19 ID:bMzvSyGw0







('、`*川『来週の金曜日、隕石落ちて地球は終わるんだってさ』








 Scene,1 僕の見た少女は他人より少し打たれ強い

25 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/12(水) 00:26:43 ID:bMzvSyGw0


【今回の投下はここまで】




( ・−・ )←主人公です

ミセ*゚ー゚)リ←好きなものは最後に食べるタイプです

(´・_ゝ・`)←コーヒー以外は苦いの嫌いです





【それでは次回の投下で】



Scene,2>>>

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