( ^ω^)千年の夢のようです

川 ゚ -゚):先駆者の踏む骸

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133 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:12:06 ID:RYml97060
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川 ゚ -゚)        (^ω^ )


ブーンは無言だった。

なにも示さない。
疑問の声も…、表情も。
胸中に溜め込んでいる想いすら、今の彼からは発されない。

  _
(;゚∀゚) 「…」

( ´・ω・`) 「……なんだって?」

川 ゚ -゚) 「この世界に魔導力が広まったのがいつか、お前たちは誰も知らないだろう?」

「……」 (<▼><●> )

川 ゚ -゚) 「いいよ、指輪は持っていけばいいさ」

「…ありがとうだお、クー」 (^ω^ )

川 ゚ -゚) 「その代わり──」


クーの腕が振るわれる。
シャラン…と響く錫杖と、輝くリングが魔導力発動の合図となった。

134 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:12:52 ID:RYml97060
     《パキィ────ッッ》


【フォース】の衝突音が鳴り響く。
次いでその衝撃が、ブーンとワカッテマスから離れた建物を破壊する。


          (^ω^ )
            つΓーーーー,
               ̄ ̄ ̄´

川 ゚ -゚)つ 「その剣は置いていけ」


大剣デュランダル。
【フォース】を断ち、軌道と着弾点すら変えてしまう…彼の得物。


「それはできないお…。 (^ω^ )
 僕が、僕でいられなくなる」

川 ゚ -゚)つ 「お前にはもう、その資格が無いと言っているんだ」


クーはさらに錫杖を振るう。
二つの輝きが先端のリングから同時に放たれると同時、鎖状の黄色輪がブーンを囲み、即座に縛り付けた。


「おっ……【キュア】── (^ω^;)

           ──?!」(;^ω^)


緊縛の【パライズ】。
魔法の具現から効果の発動までのタイムラグがほとんど無いのは、クーならでは。
避けられなかったブーンもこれに同時反応し、異常を回復する。

時間にして一秒にも満たない行動不能。
…そこに追い打つ、もうひとつの魔導力が彼を襲う。


川 ゚ -゚)つ 「【フレアデス】…!!!」

135 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:14:04 ID:RYml97060
ブーンの頭上で突如膨れ上がる熱量。
グツグツと煮えたぎりながら増殖していくマグマの群体が、分裂増殖する植物ボルボックスを思わせる。


「──!!」    (^ω^;)


この時もし、共に放たれたものが【グランデス】レベルの魔法であれば、ブーンは躊躇なくその場を離脱していただろう。
囮は【パライズ】程度でなければならなかった。
対処しやすい先制攻撃が来たからこそ、彼はあしらってしまったのだ。


「させませんよ、【ドレイン】……!」 ⊂(<●><●> )

::川; ゚ -゚)つ:: 「…!!」
 ──ドク…ン


ブーンの陰からワカッテマスの援護が飛ぶ。 先の【キュア】は彼の【サイレス】解除にも効果を及ぼしていたらしい。
完成直前の【フレアデス】が一時的に停滞。
クーの体力と魔導力がゴボゴボと、目に見えて体外に吸出されていく。


          「?!」  ⊂(<●><●>;)
「君こそ、やらせない」 三 ( ´・ω・)


そこへ神速で迫るショボンが乱入を果たした。 
彼は傍観者ではいられない、──低い姿勢から振り上げられるのは、隕鉄の刀。

136 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:15:32 ID:RYml97060
《ザシュ──》



       ∩,
       ' ゙       
        ヾ 

「ぐうぅ…っ!」 ∵;二(○><●>;) 

                      ´・ω・)

        ̄ ̄;^ω^)


なす術なく斬り離された呪術師の腕が空を舞う。
【ドレイン】の効果もすぐに消え、クーの行動を止めるものはなにもない。





《  ゴ  ゥ  ン     ッ !! 》




直後、膨張を重ねた【フレアデス】の活動が再開した。
分裂した数だけ破裂を繰り返す炎熱のビックバンが、【ロータウン】の中心地に爆轟する。

肌を焦がす熱風が、辺り一面を紅く染めていく……。

137 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:16:26 ID:RYml97060
遅れて届く爆音は一度に重なり、とはいえ、聴く者の鼓膜は衝撃波に破かれ、もはや無音に等しい。

バチバチと哭く焔の涙が降り注ぎ、やがて収束を迎えた頃…。

  _
(;゚∀゚) 「すげえ…てか、ショボンがまだ居たんだぞ?!」

川 ゚ -゚)つ 「……ジョルジュ、その青年を連れて、外まで街の人たちを避難してくれないか」
  _
(;゚∀゚) 「無視かよ」


役目を終えた熱源は急速に場の温度を減退させ、天に昇りゆく火柱が残り種をかき集めていく。
魔導力によって生まれた炎にも、伝播速度なる理論が存在するのかもしれない。
破壊力という規模に見合わず、拓ける視界に映った街並みは思いの外、健在といえた。




            (^ω^::;)
             ⊃(<●><●>;::)
  _
(;゚∀゚) 「ブーン!!」

川 ゚ -゚) 「GC……、やはり魔導力を抑えて戦える相手じゃあないようだな」


瞬時の攻防が優劣を0にも100にも変える。
ブーンとワカッテマスも、ダメージはあれどまだまだ行動不能に陥ってはいない。

…他の者がどうか分からない。
だがこの時、ジョルジュは密かに胸を撫で下ろす。


「どうしても…見逃してくれないのかお」(^ω^::;)

川 ゚ -゚) 「交換条件すら飲めない奴が言う台詞ではないよ」

138 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:17:47 ID:RYml97060
その答えを聞いたブーンの手に入れられる力。
大剣デュランダルが、カチャリ…と刃を鳴らす。

そこへ錫杖を構え直すクーを遮り、ついにジョルジュが一歩前に出る。

  _
(;゚∀゚) 「なあアンタ…ツンの旦那なんだろ?
俺、話したことあるんだよ、ツンと」

       (^ω^::;)
  _
( ゚∀゚) 「頼りになるんだって誇ってたよ。 よほと信頼されてるんだろうとも思った」
  _
( ゚∀゚) 「ショボンからも聞いてるんだよ。
アイツは、アンタから戦い方を教わったようなものだって」

       (^ω^::;)


ブーンは、なにも答えない。

  _
(;゚∀゚) 「……クーとも昔からの仲間なんだろ?
たまには喧嘩もするだろうけどさ、こんな風に争うの、止めないか??」
  _
(゚∀゚;) 「なあ? こんなマジにやり合うことないっての」

「……」    (^ω^::;)

川 ゚ -゚) 「だから提案しているんじゃあないか。 私の指輪を持っていくなら、その剣を置いていけ、と」

       (^ω^::;)


ブーンは……やはり、なにも答えない。

139 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:18:29 ID:RYml97060
「まさか仲間ごと撃つとは……」 (<●><●>;::)


責められているかのようなブーンを庇うつもりは毛頭なかろうが、ワカッテマスが代わりに口を挟んできた。

負傷していた分を差し引いてもダメージが少ないのは、クーのいう通り、GC発動によるもの。
身近に土塊の居ない今、それを成したのは前衛を陣取るブーンに他ならない。


「しかし、思い切りましたね。  (<●><●>;::)
 ここからは貴方一人で我々を相手取るおつもりですか?」
  _
(;゚∀゚) 「──?!」

川 ゚ -゚) 「……そうならどれだけ楽なことか」


そして自らを無視するような発言に、場で一人冷めていたジョルジュの心は孤立を深めた。


…和香は自らの中に。
それでも、ワカッテマスという存在が、かつての片割れとは似ても似つかない…そんな現実を突き付けてくる。

対するクーは表情を崩さない。
それどころか言葉を付け加えて、対立の姿勢を深めた。


川 ゚ -゚) 「お前たちにとっては」
     「君たちにとってはね」 (´・ω・`)


    (::;^ω^)「!!」
          「!!」 (<●><●>;::)

  _
(;゚∀゚) 「ショボン、良かっ……え、無傷?」

「巻き添えを喰うほど油断しちゃあいないさ」 (・ω・` )

140 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:19:27 ID:RYml97060
ワカッテマスへの一撃、そして離脱。

思い起こせば先の【グランデス】による広範囲魔法すら、ショボンが喰らった様子はなかった。

クーの計算、そしてショボンの想定範囲。
どちらにしても彼の神速は、攻防兼ね備えたスタイルといえる。


川 ゚ -゚) 「お前の庇うその青年も、治せるものならば後で必ず私がなんとかしよう。
だからジョルジュ、ここから離れた方がいい」
  _
(;゚∀゚) 「…何言ってんだよ、俺がなんのためにここに居ると──」

「君の前でワカッテマスを殺すのは忍びないと、クーは言ってるのさ。 (・ω・` )
 行きなよ、ここは僕らが請け負うから」
  _
(;゚∀゚)

「……更に言おうか?     (・ω・` )
 過去の姿に囚われて戦えないなら、邪魔なんだよ」


ショボンは見破っている。
ジョルジュの葛藤、迷いに。


「僕はアサウルスのために、まずワカッテマスを追った。 (・ω・` )
 それはひとつ、赤い森の清算をするためでもある。
 ……それがたとえ、かつて女王だった、このクーの手伝いだとしても」
  _
(;゚∀゚) 「赤い森…」

川 ゚ -゚)

141 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:20:10 ID:RYml97060
クーの表情がわずかに曇る。
それに気が付いたのは、ショボン以外この場に居ただろうか。


かつて大陸を分かち合っていた二つの国。
[空]と[都]。
対外的には王を名乗って君臨していた[空]の女王こそ、クーその人。


とはいえ、記憶を失っていた少し前の彼女ならば異なる表情を浮かべ、否定しただろう。
『私には水の都以外、国を作った憶えなどありはしない』と。

だが────。


川 ゚ -゚) 「……そうだったな。 この世から "フゥ一族" を消すために、私は戦争を起こした」

「…………  」 (<▼><▼>;::)

川 ゚ -゚) 「それが私の見出だした、この世界での役割だった」

142 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:22:40 ID:RYml97060
ワカッテマスから余裕が消え、その身に蓄えし赤黒い魔導力が怒りと共に漏れる。


記憶を【破壊】され、その破壊すらも上書きする【破壊】。
先の意識を失うほどの頭痛こそが、解放に伴う記憶の鎖を引きちぎった衝撃によるもの。


川 ゚ -゚) 「ワカッテマス、貴様の言う通りだよ。 私は繰り返し行ってきた自分自身の所業から逃げてきた」

「…」        (<▼><▼>;::)

川 ゚ -゚) 「……そこにいる "ブーン" に頼んで、記憶を【破壊】してもらってでも、あの日々から逃げ出したかったんだ」


フゥ一族。
──それはすなわち、デルタも属した種族であり、今は滅亡に王手をかけた末裔。

【ウラミド】という原始の魔導力を受け継ぎし、赤い森の呪術師の血を指した。

143 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:23:46 ID:RYml97060
  _
(  ∀ ) 「……どいつも、こいつも」


クーはデルタの影を追い、
ショボンはアサウルスの影を追った。


ならば…ジョルジュは?


彼は約束した"後始末" のために、ワカッテマスを追っていた。
それは決して殺すためではない。
しかし、ここで仲間を信じるならば、場を離れることでワカッテマスが葬られるかもしれない。

  _
(  ∀ ) 「戦わない…のは、無理か?」

川 ゚ -゚) 「……私に、その約束はできないよ」

「同じく」 (・ω・` )


ジョルジュは縋るように、ワカッテマスとブーンを見る。


「今だけなら約束しましょう。 (<▼><▼>;::)
 ただしこの怨みは他ならぬ、もう一人の貴方から受け取ってたものであることをお忘れなく」

「…僕は、戦わずに済むならそれがいいお」(^ω^::;)
  _
(  ∀ ) 「…」


一見して、誰しも戦いは望んでいないような言葉を吐く。
四者四様の目的が集い、互いに火の粉を振り払おうとしているだけだと言わんばかりの。

なのにその反応はあまりに過敏で、他者を寄せ付けない。


     「こんなの、まるで、戦争じゃないか…」


哀しげに、ジョルジュは言った。

144 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:24:48 ID:RYml97060
この世は争いに満ちている。
生存、守護、奪取…。
いかなる理由であろうと、とどのつまりは人が生み出した、己が為の欲望を依り代にする。


ジョルジュにとって、ワカッテマスに限れば身内から出た錆でもある。
…和香を責めているのではない。
その錆ですら、黄金と錯覚するほどの生なる糧だったからこそ、和香の亡霊をこうも突き動かすのだ。


ジョルジュは絞り出すような声で各々に語りかけた。

  _
(  ∀ ) 「……なあ、ワカッテマス。
なんのために生まれてきたんだ? 目的を果たしたら、お前はそれで本当に満足できるのか?」

「生まれた意味などどうでもいい。 (<▼><▼>;::)
 私にあるのはただ、今を生きる意味です」 

「意味がなくなることもないでしょう。 (<▼><▼>;::)
 …なにせ不死である貴方たちは、殺しても殺しても、また殺すことになるのですから」


それは永劫続く皆殺しの怨念。
赤い森どころか、はるか昔の呪術師までもが彼に呪いを背負わせているかの如く。
…和香という微かな良心すら失くした、遺恨と遺産。


  _
(  ∀ ) 「…ブーンは? ツンを助けたいんだろ?
ツンがこんな状況を望むとでも思っているのか?」

「助けたいお。 その為にこの指輪も、ワカッテマスの力も、この剣も必要なんだお」(^ω^::;)


それは突き詰めれば妄執。
温もりを求めし我執の極みが、時に他者を踏み台にすることもあるだろう。
しかし…恐らくは気付かず進むのだ。 感情ゆえに。

145 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:25:31 ID:RYml97060
ジョルジュの問答は続く。

  _
(  ∀ ) 「……ショボンはさ、何をもって清算だなんて言ってるんだ?
ワカッテマスを…アサウルスを殺せば気が済むのか?」

「…僕は数えきれないほどの助けを得て、今、此処にいることを自覚してるつもりだ」 (・ω・` )

「もう僕は僕自身の幻想ではなく、誰かの未来のために戦っている」 (・ω・` )


それは変質した利他心。
見返りさえ求めなければ聖人の…、しかし保証なき未来が待ち受ける、偽りの英雄願望。


  _
(  ∀ ) 「……、じゃあクーは? どうして呪術師の一族にそこまで固執するんだよ」

川 ゚ -゚)
  _
(  ∀ ) 「…そうまでして、ワカッテマスをどうにかしたいのか?
呪術師を狙ってるなら、俺もそのうちお前に消されるのか?」

川 ゚ -゚)
  _
(  ∀ ) 「…… 答えてくれない、ってか」

川 ゚ -゚) 「いまのお前には、届く言葉が見つからないような気がするよ」
  _
(  ∀ )

川 ゚ -゚) 「深呼吸をしろ。 …でないと呑まれるぞ、【ウラミド】に」


ポン、とその肩に置かれる手のひら。
ジョルジュは跳ねるように身体を震わせたかと思うと、瞳の焦点を自分の肩、そして置かれた手を辿ってクーに合わせていく。

  _
( ゚∀゚) 「……クー?」

川 ゚ -゚) 「分かったよ。 まずは捕らえる努力をする。
お前の気が済んだ後でも、私とショボンには選択肢が残されているだろうから」

146 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:34:04 ID:RYml97060
これは心変わりではない。


クーからすれば、約束は果たされるべきものであると同時に、おいそれと交わせぬ秩序の目録になってしまう。

…だから殺さない約束はできない。

しかし、努力は自由だ。
外圧力のない精神論は自分を律するための柱となる。
そこで挫けるか、貫き通せるかは己に帰依する責任だ。


川 ゚ -゚) 「ジョルジュ、もう一度頼む。 その青年を連れて避難を」


同じ言葉でも、時が経てば今度は素直に受け入れられる。
ジョルジュはナナシを背負うと、クーとショボンに頷き、駆けていく。


街に蔓延る困惑の騒々しさに反して、その原因であるはずの四人の間には静けさが風にたゆたった。

【ドッジ】の詠唱が置き去られる頃には、ブーンの傷は癒え、ワカッテマスもまた止血を済ませ、悠然と立っていた。

148 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:35:08 ID:RYml97060
( <●><●>) 「…二対二、ですか」

(´・ω・`) 「なんだ、フェア精神に安堵してるのかい?」

( <●><●>) 「まさか。 バカバカしいとすら思いますよ」

( <●><●>) 「……少なからず私への恨みを持ってしても、なぜそうできるのかは興味がありますがね」


赤黒い、ワカッテマスの開ききった瞳孔がクーを見やる。

ぶつかる視線から判るのは、
嘘偽りのない好奇心と…それでも怨みを晴らしたがっている純粋な復讐心。


彼は賢者のことを指している。

クーのなかにある "恨み" 。
ワカッテマスの抱く "怨み" 。

道徳観においては質量と計り見なすことは出来ずとも、
たとえば無理矢理に優劣を定める罪罰法があるとするならば、後者のほうが大きく、強大と見なされるかもしれない。


川 ゚ -゚) 「……私のは、恨みなんかじゃあないさ」


クーが一歩、前に出る。
ワカッテマスがそれに応じるように、ブーンを肩で遮る。


川 ゚ -゚) 「仇討ちなどというものは本来、一時の衝動でしかない。
私はそれを持続させられるほど根気のある性格はしていなくてね」


挟撃できる位置に立つショボンも、両足を広げていつでも跳び出せる状態を作り上げる。
ブーンがワカッテマスの背中を守るように立ち塞がった。

149 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:39:19 ID:RYml97060
( <●><●>) 「ならば何故、貴方はここにいるのですか?」


この期に及んで、ワカッテマスも上っ面なことを問うつもりはない。


川 ゚ -゚) 「……知りたいか? 本当の理由」


その本質。
人を突き動かす、もっとも原始的な理由。
              ────感情。


川 ゚ -゚) 「はるか昔に置き忘れて、もう永遠に取り戻すことのできない……」

川 ゚ -゚) 「…初恋のようなものを拭い取りたいだけかもな」

( <●><●>)




 

150 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:40:09 ID:RYml97060








        「──ぶッ、クク、


                   クヒヒ…」


 

151 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:41:30 ID:RYml97060
(´・ω・`;) 「!!」


       洩れるその嗤いは、まさに嘲笑を含み。


(;^ω^)「…なっ」


       泥の泪を大瀑布の如く、
       穴という穴から垂れ流した。


川;゚ -゚) 「────ワカッテマス!!」


       「もう、そういうの止めにしませんか?」
       …何かを真似るような作りものの低い声が空から響く。


(< ><○> )


       ワカッテマスは無言でその場に倒れ込む。
       その身体に向けて更に三発、穴が開けられる。


(;^ω^)「や、やめ────」


       GCを貫通し、呪術師がビクンッビクンッと痙攣するたびに。

152 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:42:44 ID:RYml97060

       「下らない、凡て、死ねばいいんですよ」
        …その声は震えて、短い擬態の末に正体を露にした。


川;゚ -゚) 「…お前、どうして」


クーは驚きを隠せない。


ブーンのGCに護られるはずのワカッテマスを容易く倒されたこと。
ジョルジュへの申し訳なさと、接近に気付かなかった己の不注意にももちろんだが。


川;゚ -゚) 「今までどこでなにをしていたんだ! ずっと捜していたんだぞ?!」


──実を言えば、半ば諦めていた。
まさかこの世界にいるとは思えなかった。

何百年と過ごしてきたなかで、一度たりとも邂逅していない。
取り戻したはずの記憶に留まっていない、最後の友の姿。




;      「なぁ〜〜〜んちゃってえ♪」

 ( 'A`)   
◎)と



       不死者、ドク。
       彼の愛すべきガンアクスが硝煙を纏う。


( ゚ω゚)「ドクオーーーーーー!!!!」


('∀`)    「ひは、ひひひひはは!!

('A`)     ──は、……誰だよ、おめー?」




 

154 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:50:06 ID:RYml97060


『運命とは予め決められているものだ』
と、誰が言ったかはわからない。

神の意志によるものか、星の定めによるものか。


目にも見えない偶像を、人がどうして信じるならば。
それもまた運命の輪に加わりし、使徒たる資格を持っているといえるかもしれない。



予定調和。
想像の範疇内で、すべての生き物が目の前で骸となるならばどんなに楽か。


きっと、この世の悲しみは減るだろう。
来るべき日に向けて、心緩やかになるだろう。



だとすれば唐突は、当人の想像不足による過失か?


世界で唯一独りのみが意思をもっているならばそう言えるだろう。


だが決してそうはならない。
意思ある者すべてが自己の世界だけを見ているからこそ、不可逆的因果は発動する。




二度と取り戻せない、螺旋の路が創られていく。


 

155 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:51:19 ID:RYml97060

('A`) 「さーて……こいつは預かっていくぜ」


闇に紛れる彼の背中に、ぐったりとして、意識を失っているモナーが背負われている。


( ゚ω゚) 「なんてことをしてくれたんだお! ツンが…ツンを……!!」

('A`) 「ピーピーうるせえぞ、アサウルス」


茫然とする一同を尻目に、ドクはモナーを抱えて更に跳ぶ。

そこに一陣の突風が吹き荒れたかと思うと、グリガンの翼に拾われたドクたちの姿が天に消えていく。


「うおおおおぉぉぉっっ!!!」 ( ゚ω゚)


(;´・ω・) 「っ! ブーン、待て!!」

川;゚ -と 「…くぅ!」


我を見失ったブーンはがむしゃらに地を蹴ると、尋常ならざる速度でそれを追っていく。

ブーンが纏った魔導力は、グリガンに勝るとも劣らぬ風の壁を生み出した。
アスファルトの粉塵が砂嵐と化す。
二度にわたるあまりに強烈な向かい風が、ショボンとクーの追跡を許さない。


川;゚ -と 「…!」

       (< >< > )


ドサリ…と吹き飛んだワカッテマスの顔がクーを見る。
その身体には、もう力は残されていない。

156 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:53:03 ID:RYml97060

荒々しく舞う粉塵を、デルタからもらって以来、大切に手入れしてきた外套で防ぎながらクーは考える。


フゥ一族に脈々と内包されていた【ウラミド】は残り僅か。


──ワカッテマス、
    ──ジョルジュ、
そして、モナー。


【ウラミド】の具現してしまったワカッテマスは、恐らくこのまま死ぬだろう。


ジョルジュにも注意は必要だが、【ウラミド】に引き摺られさえしなければ、彼にはこれからも生きていてほしいと願う。
和香という存在が、慈夜という存在とバランスを取り合えるならば、まだ猶予は残されていると仮定する。

時間をかけて【ウラミド】を解除している最中の、モナー一族のように。


川 ゚ -゚)  「…」

( ´・ω・) 「僕が追おう。 最悪、モナーを連れて帰れば良いわけだ」

川 ゚ -゚)  「……ありがとう、頼む」

( ´・ω・) 「代わりにこの一帯の後片付けは頼むよ」


刀を収め、ショボンが跳んだ。
神速とはいえいつまでも同じ速度で走ることができるわけではない。
追い付くにはそれなりの時間がかかるはずだ。

157 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 20:59:44 ID:RYml97060
川 ゚ -゚) 「……時間、時間か」


シャラリ、と鳴る錫杖。
寂しげに響くその音色は、思い通りいくことのない人生への慰めとするには些か情緒が足りない。


川 ゚ -゚) 「不死だからといって、時間をもて余すわけじゃあないんだな」


錫杖の先端からリングを外すと共に、アタッチメント部分の手入れを思い出してそれも取り外す。
魔導力の空になったリングを腰裏のベルトにひっかけると、錫杖だったものは単なる鉄の棒となった。

     /
川 ゚ -゚)つ 「……自分で決めて永く生きていても、
        上手くいった試しがないよ、デルタ」



 

158 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 21:00:43 ID:RYml97060

「……生きるって、難しいな」。
クーの独白が【ロータウン】の夜明けに吸い込まれていく。
昇りゆく朝日が少しずつ、街を照らしていく。


クーは自分自身を聡明などと自負したことは一度たりともない。
むしろ愚か者の部類に属していることを、現実として突き付けられてばかりだ。

未知との遭遇に、幾重の経験を重ねても、正解に辿り着くことがない。


終わりのない試練に延々と挑まされる様は、さしずめ操り人形との差違を探る神の戯れのようだった。


川 ゚ -゚) 「デルタ、ブーン…」


川 - ) 「娘たち、この世界の人々……」


川 - ) 


川 - ) 「…………、ツン、ハイン」


それでも歩みを止めることは、もうしないと決めた。
外套の裏、背中にしまいこんでいた最後のリングをそっと握り締める。


輝くリング。 発動する魔導力。
瓦礫に埋もれた【ロータウン】に、朝日の射す光と交差する橙色の灯りが浮かび上がった。

クーを中心として、透明な境界線が辺り一面に拡がっていく。

159 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 21:01:46 ID:RYml97060



       『見つけて欲しくて手をおぉおきくかざすのは、人も自然もおんなじよお』


いつかのデルタの声がする。
それは誰かが助けを求める手でもあり、
誰かに差し伸べられる救いの手にもなりうることを指している気がした。


       『なあ、クーは何をやってる人なんだあ?』


かつてのデルタの声がする。
クーにとっては幾度となく繰り返した自問自答。

詠唱を完了した【パーティクル】の輝きが、壊された街並みを元の姿に復元していく。


【パーティクル】は時間を操るわけではない。
クーの記憶に眠る土地の景色を再現する、いわばこれまで彼女が見てきた人生の軌跡を試す、自分以外へと向けた関心、感情の集大成。


クーの心がなにも捉え見ていない場合には、一切の効力を発揮しない。



 

160 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 21:05:09 ID:RYml97060

  _,
川 ´ -゚) ( …眩しい )


反射して瞳に入り込む灯りは魔導力の光だけでなく、朝の始まりを告げる刻が重なり、そうさせているだけに過ぎない。


       『俺は眩しいのが苦手なだけさあ』


……ある日のデルタの声がする。
苦手なことでも、やらなくては前に進めない時は必ず訪れる。


川 ゚ -゚)  「…ジョルジュには、謝らないとな」


ワカッテマスを抱えようとして、その軽さにクーの身体がひっくり返りそうになった。
大きく揺れたものの、ワカッテマスという人形は動かない。

それでも…大陸への怨みを蓄積した【ウラミド】の魔導力だけが、触れる肌を伝わってひしひしと流れ込んでくる。

161 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2016/07/20(水) 21:06:20 ID:RYml97060

      (( 川 ゚ -゚)



クーは歩きだす。
歩かねばならない。


              ((  川 ゚ -゚)


いつの間にか【ロータウン】内に放たれた、闘技場のモンスターが彼女に向かって押し寄せていた。

先頭に立つ闇の衣… "正体不明" の群れを爆殺しながら、もて余した魔導力を存分に発揮して、彼女は歩く。
その後ろでは辛うじて人型を留める、どろどろに溶けたスライムがにじり寄ってくる。

スライムが腕のように細めた身体の一部を振るった。
その指示に従うモンスターの群れが分散し、左右に別れた路地を埋めつくし逃げ出そうとする。


クーの魔法はそれを意に介さず、スライムを燃やし、群れを背面から切り刻んでいく。

扇動していたらしきスライムからは敵意を感じなかった。
むしろ…この結末を望んでいたように思う。

液状化したモンスターにあるはずのない瞳がクーとかち合った時、そう感じたのだ。
だからそうした。


万が一、街の人間に被害がでないように。
一匹足りとも、討ちこぼさぬように。




どれほど許されぬ罪を背負っていようとも。
彼女が踏みしめてきた骸は、彼女の記憶からの解放を求め、訴え続ける。



どうか、新しい人生を。





(了)

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