( ^ω^)千年の夢のようです

从 ゚∀从:いつか帰る場所で

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793 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:19:36 ID:3qHNWQEQ0


(推奨BGM:Fire Above the Battle)
https://www.youtube.com/watch?v=GmR3AALCPzo

794 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:20:18 ID:3qHNWQEQ0
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(# ∵) 《これ以上やらせるか…!》


崩れ落ちゆく人類の象徴を尻目に、
狼狽した様子を声色に乗せて彼は吠えた。


嵐を跳ね返すほど激しく、触れては弾く雨粒の蒸発。
青天井にも似た体熱の上昇を感じずにはいられない。

そんな名瀬がいま対面する巨獣。


《20光年前に女王ハ死ンダ》

( ∵) 《――!!》

《新タな王と巣が必要ダろウ。
我ラニハ羽根があり、顋がある、ダかラ――》


彼らもまた落下している。
ただし、消滅寸前の【重力】など問題にせずとも
己が宿す体機能のみで。


音なき音で語られる相手の言葉を、
《だから私のいるこの星に来たのか?》
と、名瀬は遮った。

795 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:21:08 ID:3qHNWQEQ0
(# ∵) 《知っていて…我の縄張りに、きたのだな?》


怒気をはらみ、――名瀬の口調が変わる。
振り回した腕に衝撃。
嵐すら驚き、叩きつけていた雨を弱まらせた。

怒りと共に膨脹する名瀬の躰が助走なく宙を駆ける。


《此処に貴様の居場所はない》 三三 (#∵)

・・・・・・
その黒き外殻が大きく風に流れると、
灰色の空と相まって斑模様を映し出した。

高度を落とし、近くなった海には陰りが差す。
さながら竜――いや、歪で、でこぼことしたフォルムは "蟻" を呈した。


胸には二つの太陽をかざし、翼さながらに広げるは黒々と光る触腕。

796 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:21:51 ID:3qHNWQEQ0
――稲光。
轟きわたる硬殻の摩擦音。

…相手も負けじと腹をよじり、互いに巻き付き合うが。


   ギチギチ…ギチギチギチギチ!
(# ∵) 《喰ったものを吐き出せ、今ならまだ間に合うかもしれんぞ》


名瀬のほうがひとまわり大きい。
体躯はそのまま優劣の材料となる。

耳を刺す、まるで鋼を引き裂くような音響すらダメージソース。


《グ、ガグギギギギ……》


二体の蟻が絡み合うも、その力量には明らかな差があった。
一方は膨らみ、もう一方はみるみる縮小していく。

 バスッ
(# ∵) 《早くしろ、魂ごと喰らうのは許してやる》
        バスバスッ――

言いながら名瀬の触腕から生える無数の黒棘。
捻り巻いては相手の外殻を割り、その隙間を縫い刺していく。

鳴り続ける、人間には耐え難い音…。
しかしその鼓膜へのダメージは、いまの名瀬になんら影響を及ぼさない。


《ガ…ぐぐっ…

      ――ゴ ア   ア  !
           アッ ッ!  》::

:(# ∵)::: 《?!》
ビリビリビリッ

797 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:22:45 ID:3qHNWQEQ0
緊縛に堪えきれない、星を襲った黒蟻がひときわ強く吼えた。


名瀬が力を抜いたわけではない。
にも拘わらず、
零れるようにズルリと白い剥き身が新たに生まれ出る。

支えを失い脱皮した殻が空々しく躯のなかで砕け散り…
引き換え、束縛を断ち切った本体が懐を抜けていく。

そのような機能もあるのか、と思いながら…しかし彼は見逃さない。


(# ∵) 《逃げるな、貴様それでも "アサウルス" の名を冠る端くれか!》


うねりを上げ、すぐさま追いつき噛み千切る。
――が、惜しくも尾のみに留まった。
僅かな速度減退を生じさせて、再び海面が近付く。

分裂してもなお蠢く、不快な舌触り。
ぶちぶちと音をたてるその口内部は砂利の感触を得る。


《…コれほどの差がアルのか》


"アサウルス" が、呟くと共に奥牙を噛み締めたのを
背後に追う名瀬が知ることはない。

滲む感情を窺わせる。


《道理で甘露な味がシタ》


――だとしても
   悔しさではないらしいが。

798 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:23:33 ID:3qHNWQEQ0
《さぞカし良質な餌デ、貴様ハ永く腹ヲ満たし続けタのだろうな》

(# ∵) 《…》

《単体では敵わぬトハいえ、まだ喰イ足りぬ》

(# ∵) 《その言い草、より喰えば我に勝てるとでも?》


逃げるものと追うもの。
捕食者と被食者。


《それヲいまから試すのダ》


――言うが早いか、"アサウルス" の動きが垂直に曲がる。
嵐により海面が荒立てた波を、通過する衝撃波が噴き上げた。


その先に見るのは、砕け落ちるグランドスタッフ。
『食い足りぬ――それを試す』
…狙いは塔の中に閉じ込められた人の群れ。


(# ∵) 《やめろ!》

《奪わレる憤怒か? そレトも失う嫉妬か?》

《先の戦力といイ、どちらにしテも貴様は稀有な好例として同胞に語られるだろう》

(# ∵) 《不可能だ、貴様はここで滅する》

《クハハ、やはり。
"感情" は育めば育むほどにウマく、そして糧になるとな》



 

799 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:24:24 ID:3qHNWQEQ0


"アサウルス" ――。
( ASA - URUS )

 

800 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:25:15 ID:3qHNWQEQ0


それは元来、星外生命体として宇宙を漂う存在。


故郷たる棲み処を持たず、
個体ごとに一定完成された躯と独立した精神を所持する。

しかし同時に特定属性を崇めるといった、
一個体ながら集団的――いや、
複合的意志の決定と統率を行う特殊性も併せ持つ。


    その餌は "願望" と "感情" 。


彼らは各惑星に点在する形状なき想いを察知しては、
舞い降り、
  吸い込み、
    喰らって、
満足すればまた星々をわたり、
永遠にも似た時の流れを生き続けている。



 

801 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:25:58 ID:3qHNWQEQ0

《感じる…感じるぞ……。
小粒ながら、先のどれよりも極上の匂いを》


空気に乗って届く、かつての同胞の声の抑揚。
徐々に豊かさを増している。


敵はすでに捕食を重ねている。
名瀬が止めきれず視覚した時点で既に4人…。

よりによってそれは評議会で選ばれた、感情をもつ子供たち。


(# ∵) ( これ以上、摂取させるわけには… )


そのとき突如、"アサウルス" がゲラゲラと下品に嘲笑った。
雷雨をかき消す波動。
逆風が互いの距離を更に空ける。


 ビリビリ
(#;∵):: 《――!!!》

《見 つ 
    け た  ぁァ ア ア
       あ        あ》


 

802 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:26:51 ID:3qHNWQEQ0








       ii;    i.
       iii从 ∀从,ii

 

803 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:28:23 ID:3qHNWQEQ0

(; ゚.゚) 《高岡…っ!!》


表れはせずとも心情にて噴き出す汗。
五人目の餌がついにぶら下がった。


――"当初こそ高岡の感情を吸い込んでいた" 者として、
極上…その言葉に同意と殺意を誘われてしまう。

    長くは続けなかったものの、
    アサウルスの指摘は図星だった。
    確かに名瀬は、高岡の感情という
    餌を食し続けた。


《シャアああッ――!!》


気の昂りに速度を上げたアサウルス。
情の揺さぶりに速度を上げた名瀬と、一時的にも激しく差が生まれる。


(; ∵) 《くそっ!》


    餌であるはずの弱者に欲情し、
    高岡という存在を知った。


離れゆく距離…間に合わない。
瞬時にそう判断付け、名瀬は頭部を軸に、躯を鞭のようにしならせた。

研ぎ澄まされた槍の如き尾部をアサウルスに射つ。

804 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:29:08 ID:3qHNWQEQ0
《見えるようになっテきた》


アサウルスが体躯を渦巻き躱したと思えば、背に生やした触角を拡散させた。
白い太陽から放射線状に放たれる闇。
槍の尖端が届くよりも速く、闇は鞘を象り名瀬を包みこむ。


(; ∵) 《!!》


寒気を感じて深追いを避けた。
素早く尾を分離する。
一足先に掌握され、潰されるのとほぼ同時に。

そうして躯の一部を失うも、一瞬の時を稼ぐことでアサウルスに追い付く。


    アサウルスの向こう側で、
    高岡の姿が少しだけよく見える。
    落水までまだ距離があった。


《ゴエエアッ!!》゚ )



再び密着し、ホールドせんと囲う名瀬の触腕。
それに対する咆哮を合図にアサウルスの触手、触角、触腕が乱れる。

双方が体節から手足を駆使し、大小問わず絡み合った。

805 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:29:49 ID:3qHNWQEQ0


 ゙     ヂ      ゙
  ギチ (# ∵)   ギ  キ
    ギ   ゙(゚∈゚  チ   ゙!
              チ


 

806 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:30:58 ID:3qHNWQEQ0
不可視たる音の波が空間そのものを引き千切る錯覚。
躯の芯で鳴り響くたび、向かい合う太陽が空を覆う灰闇の表面を吹き飛ばす。


    …いつのまにか
    嵐は過ぎ去り小雨となった。


(# ∵) 《…っ》

        《…》 (゚∈゚ )


――拮抗。

感情の塊を喰らったアサウルス。
時間経過と共に肥大し、
今や外殻を脱ぎ捨てたにもかかわらず成虫の風格すら漂う。

隙間を縫い繰り出した名瀬のヘッドアタックまでも受け止めたその表情も、
感情を持ち、強い意志を発していた。


ギチギチギ
(゚∈゚ ) 《腹のなかに飼うだけでも…
予想以上に力がみなぎるものだな、感情とは》
     チギチギチギ
(# ∵)
           チギチギチ…
(゚∈゚ ) 《消化まで時間がかかっている。
だが完全に喰らい終われば、貴様も越えられるか?》

807 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:31:39 ID:3qHNWQEQ0
(# ∵) ( はじめに闘争心が育ったか )


胃袋へと直に贄を納めたアサウルスに比べれば、
名瀬は永きに渡り細々と、
霞に等しい【魔導力】を吸い込んでいたに過ぎない。


( ∵) ( …丸飲みにされた素直と伊出なら、まだ間に合うか…? )


大気や海を支配する魔導力はいわば源泉。
生物の感情を通すことで濾過し、その純度を高める。

何百年と生き、姿を変えながら人間社会に紛れ込んだ名瀬はそれを学んだ。


( ∵) ( なんとか助けてやれるならば…―― )


    ……学びすぎて、
    人に近づきすぎた。


(゚∈゚ ) 《ここで隙を出すとは。
そんなに殺してほしいか、同胞》


 

808 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:32:29 ID:3qHNWQEQ0
名瀬の意識の端、アサウルスが身を退いた。
あまりにも静かで穏やかな離脱だった。


高岡やその友
――自身の生徒――
    を "心配する気持ちが走らされた" ことで反応が出遅れる。


 三 ( ゚∋゚)

           ii;    i.
           iii从∀ 从,ii



後方反転したアサウルスの先で――



(; ゚.゚) 《 高 岡 ぁ ァ…ッ ッ!! 》



たったいま…まさにこの時、
腮の奥に消えていく彼女の姿があった。

809 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:33:21 ID:3qHNWQEQ0


   姿形は違えど、名瀬は
   皆と同等に感情を持つ
   最後の仲間なのかもしれない。




   姿形が異なるだけで、
   名瀬は人と共に生きられることを
   証明したのかもしれない。


 

810 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:34:04 ID:3qHNWQEQ0


              ガァ
   グ ガ
    ( センセー、助けて…!! ) ッ!
       ガ
          ガ


 

811 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:35:18 ID:3qHNWQEQ0


         最後の悲鳴。



       ( ∵)


聴こえた。
助けたい。
せめて高岡だけでも。


       ( . )


…意識を自分に向けてはいなかった。
それでも、彼は胸元にある太陽の片側を開放する。


   ――内部に脈打つ、心の臓。

醜悪に開かれたそれはペンタグラムを描く唇のように、
赤黒く蠢いたかと思えば突如、吸飲を開始した。


嵐なく大海原全体が揺れ、
大地なき水面に津波を引き起こす。


::(;゚∋゚)):: 《?!》

 

812 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:36:10 ID:3qHNWQEQ0
彼らという生命体がもつ太陽にはそれぞれ共通した役割があった。


感情を食事として摂取する一方、
蓄積した感情の残滓を放出する。


溜め込み、爆発させる…。
その様はなにかに似ている。


       ( . ) 《それは我のモノだ》


強欲からなる激情。
傲慢を重ねた絶望。
色欲の招いた破壊。
怠惰な生涯の結末。
妬みにも似た展望。


       ( . ) 《貴様などに喰われるくらいなら…自ら喰ってやる》


彼の行く末は、
暴食の果ての喪失。


…突き詰めてそれが【過去の織り成す未来の姿】であると、
いつかどこかで語る哲学者が現れるだろうか。
 

813 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:37:41 ID:3qHNWQEQ0

::;゚∋゚ ))):: 《う、動か――》


( . ) 《どうして我らに二つも心臓があると思う?》


( . ) 《口があれば喰らえるのに…なぜかを考えたこともあるまい》


アサウルスは自身に水飛沫が届く感触を得た。
…見下せば、もはや目前に海がある。



::;゚∋゚ ))):: 《いつの間に落ちて…いや違う、我はここから動いていないはずだ》


::;゚∋゚ ))):: 《まさか、むしろ、海面のほうこそが――》


近付いている。


( . ) 《王が…我々アサウルスの巣が、どのようにして発現するのか教えてやろう》

814 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:38:42 ID:3qHNWQEQ0







( ↑.↑) 《王が必要なのだろう? こうするのだ…自分の生命でな》


::;゚∋゚ ))):: 《やっやめ――――


 

815 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:39:32 ID:3qHNWQEQ0



         《【ドレイン】…!》

 

816 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:40:24 ID:3qHNWQEQ0
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〜now roading〜


( ゚∋゚)

HP / B
strength / B
vitality / D
agility / G
MP / H
magic power / H
magic speed / D
magic registence / F


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