-
755 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:35:11 ID:3qHNWQEQ0
-
――崩壊の刻がきた。
彼らの前に、
地響きの末路は様々に、明確な姿を現す。
「チキショウがぁ…っ!」
))
( ;'A)
意図せず大海へと向かって放り出され、
満足に四肢をばたつかせることも出来ない鬱田が短く叫ぶ。
彼は眠り、しかし夢を見る前に病室から投げ出されて空にいる。
三日後の滅亡どころではなかった。
二日後に来るはずの壁の役目すら、満足に与えられる以前に――。
「どうして…
なんで俺がこんな!」
((
('A`#;)
強風に煽られ、彼は頭から墜落していく。
下は魔導力によって腐った海…、
上は大きな影に覆われてはいるが、倒壊する人類の象徴グランドスタッフが見える。
翼があれば、この窮地を脱出できたのだろうか。
もはや手本となる生物はおらず、
嵐によって気流を乱した空はそもそも慈悲など持ち合わせることなく、
彼の骨肉をバチバチと殴りつける。
…それはまるで、早く死ねと言われているようでムカついた。
…雨に濡れて重みを増した服が無駄にまとわりついて苛ついた。
-
756 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:35:55 ID:3qHNWQEQ0
-
((
(A`#)
「ふざけんな、
俺は俺の意思で最後を…――」
下半身は既にない。
千切れた肉からは、神経繊維が簾のように揺れる感触。
それを振りほどけない不自由な状況と…なによりも。
((
(# A`)
「そもそも――
なんなんだよ、テメーは…」
))
(# A
「こんな、こんな死を俺は――」
-
757 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:36:39 ID:3qHNWQEQ0
-
『望んじゃあいねぇぞぉ…!』
-
758 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:37:38 ID:3qHNWQEQ0
-
…そう、彼は終わりの否定を願った。
命の死を、魂の消滅を。
己の脆さと世の不条理に怒りを抑えられない青年。
安穏とした日々に求めたはずの永久を、
どうしてこの期に及んで振りほどこうというのか。
…だが悲しきかな、
力なき抵抗は薄儚く粉砕される運命にある。
どのみち鬱田という存在は、死を目前に控えた弱者だった。
分断された肉は体機能を停止させ、
薄弱な意識もろとも黒き濁流へと飲み込まれていく…。
「せめて死ぬんなら、A`)
..,,:;;:
テメーを('殺してかぁ…――ッ
そんな断末魔も風と牙に消え。
闇に喰われ、血飛沫すらも遺さぬまま、
彼という存在は漆黒の渦に捲き込まれていった。
-
759 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:38:19 ID:3qHNWQEQ0
-
----------
))
川#゚ -゚) 「ドクオーーーっ!!」
倒壊するグランドスタッフよりも高きもの…
自身が落下する速度よりも速きもの…
分離していく鬱田の下半身よりも歪なるもの…
嵐よりも荒々しい、衝撃的なワンシーンが大部分の意識を占めた。
灰空の吐き落とす水滴は彼女の長髪を縛り付け、
現実の直視から逃れようとする。
文字通り、空に後ろ髪を引かれながらも、
しかし彼女のその切れ長な瞳を釘付けにした。
((
川# -゚)
友と別れ、眠る鬱田の背中を見送りながら自室に戻るところだった。
明日には[かがみ]に突入し、果たさねばならない使命感を胸に床につく。
…そんな今日という日を無事に過ごすはずの彼女の時間を――
-
760 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:39:45 ID:3qHNWQEQ0
-
))
( - ゚#川 「この…化け物が…!」
…破壊した。
それがアーカイブに記される、
星の外に住まう巨獣であることを彼女が知る術はない。
赤と黒で彩られた顋の向こう側を目前に…。
同じ時を過ごした友が、
評議会員に手渡されていた法衣の色を思い出す。
-
761 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:41:30 ID:3qHNWQEQ0
-
小さな頃、三人でよくやった遊戯がある。
伊出も高岡も、そして素直も、
いわゆる "ごっこ遊び" が好きな子供だった。
集まると誰かが床に線を引き、
ここではないどこかの間取りを創ったものだ。
ξ´凵M)ξ 『ママやるー』
从∀` 从 『えー、じゃあアタシは娘ね♪』
川 ´ -`) 『…わたしは?』
ξ´凵M)ξ 『パパやってよー』
無遠慮な返答に洩れる溜め息…。
しかし、それもいつものことだ。
男の役目を負わされることに抵抗などなかったが、
たまには可愛い役を回してほしいと考えたことも当然ある。
だがそれを口にしたことはない。
素直が役割を果たすことで、
二人の友は愉しげに笑い、そうして素直も笑えたのだから。
川 ´ -`) ξ´凵M)ξ 从∀` 从
川 ´ -`)
川´ー`)
-
762 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:43:06 ID:3qHNWQEQ0
-
役割は重要だ。
人は生活の過程で自然と立場を得て、
在るべき場所で生きるのではないかと素直は思う。
そして心安らかにしていられるならば、どんな苦境にも耐えられる。
だからこそ高ぶり、吼える感情。
川# Д
…せめて気持ちの整理をつけたかった。
例えば[かがみ]に飛び込んで、
【魔導力】によって望みを叶える…。
その代償として命を失うならば、等価と納得できなくもない。
だが現実はどうだ?
こんな訳のわからない化け物に齧られる最後など、
予想もしなければ望みもしていない。
まだなんら対価を支払っていないつもりだ。
-
763 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:44:28 ID:3qHNWQEQ0
-
それとも何かを願うこと…
それ自体が代償とでも、
この世界は言い張るつもりか?
-
764 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:45:26 ID:3qHNWQEQ0
-
))
川# Д 「そんな人生は――」
非道、不条理、裏切り…。
歴史は誰彼構わずそれらを繰り返して、繰り返して、
そして、終わるのか?
バ
「認め 」
ク
ンッ
-
765 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:47:14 ID:3qHNWQEQ0
-
----------
唸る雷雲。
ブラウンの巻き髪を絡めとる、
雨、雨、雨……。
空気に代わり、水分を多分に含んだ毛髪が、
背中から墜ちていく彼女の視界を
さながら朽ちた炎のように揺らめき埋め尽くす。
))
ξ )ξ
手足に力が入らない。
…いや、呆然として、感じられないというほうが正しいのかもしれない。
))
ξ )ξ
遠目に見やれば、伊出の片手が少し長く影を作っていることに気が付くだろう。
それは腕から生える腕…。
比べれば、握る指先から先は一回り以上もがっしりとしている。
-
766 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:48:47 ID:3qHNWQEQ0
-
数秒前の伊出は内藤と共に、
ゆるやかな時を…
ささやかな語らいを…
十数年間変わらぬ、時の共有感を愉しんでいた。
前触れなく出現した太陽に、
グランドスタッフの頭部を食むられるまで…。
二人は肩を寄せあい、蜜を交換し合っていた。
見つめあい、瞳の奥に吸い込まれるほど暖かな幻想を抱き合っていた。
))
ξ )ξ
――そんな二輪の向日葵を、誘われた太陽が焼き尽くした。
失われし神話…
イカロスの翼に激怒した神の如く。
牙によって片割れを奪った災厄がそこには在る。
-
767 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:49:38 ID:3qHNWQEQ0
-
))
ξ )ξ 「……ブー…ン?」
不思議と涙は流れていなかった。
ひたすらに放心し、取り残された胸中には後悔の念が押し寄せている。
揺れを感じたあのとき、僅かでも自分から離れれば良かった。
自身の甘えがもし彼を殺したとすれば――こんな風に考えてしまうと内藤は怒るだろうが、
……しかし正直な気持ちだ。
((
ξ )ξ⊃⊂
ほんの一部分のみになった恋人を見つめる間だけは時間が止まる。
ずっと一緒に居て、
それが恋だと後で知って、
寝ても覚めても共に在った。
空に落ちる時、護るよう腰にあててくれた掌。
闇に満ちる時、庇うよう突き放してくれた腕。
それが今もまだ…伊出から離れようとはしない。
ξ )ξ⊃⊂
ξ )ξ⊃⊂(^ω^
ξ )ξ⊃⊂
-
768 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:50:27 ID:3qHNWQEQ0
-
絡めた五指に繋がるべき青年に想いを馳せる。
とめどなく込み上げる熱に反して、どうしても湧かない泪。
それでも…太陽は朧ぎ、いくつも見えた気がした。
髪の隙間の向こうで空をぐるりと輪転し、舞っている。
ξ゚ )ξ 「…?」
-
769 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:51:10 ID:3qHNWQEQ0
-
"それ" からすれば伊出など塵に充たない矮小な存在だろう。
…にも拘わらず、
明らかにこちら目掛けて折り返してくるのが解る。
嵐の元に晒される太陽ではあるが、よく見れば違和感を覚えるフォルムだった。
雷光に照らされる伸びた黒い塊が節足動物を思わせる。
――それも二体。
螺旋を描いて渦巻きあう。
巨大さゆえの緩慢さと不規則な動きが、
却ってそれぞれ意志をもつ生物であることを直感に告げた。
ξ゚ )ξ
ξ゚听)ξ
ξ#゚听)ξ
そう考えるが瞬刻、伊出の心が奮い起った。
頬が紅潮するのを強く自覚する。
-
770 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:51:52 ID:3qHNWQEQ0
-
天寿、天災…
病い、事故…
天命に従い魂が召されるならば、
湧いた悲哀を閉じ込め、己を納得させる時間も作ることができるかもしれない。
そして、感情によって言い訳を生み出す。
ξ#゚听)ξ 「…返して」
――だが、違いすぎる。
いま目の前に広がる太陽は、
近くで見れば見るほど一個体の生物であると認識できた。
闇に紛れてはいるが、触手がある。
太いのは触腕か。
先端に生えているのは触角なのだろう。
ξ#゚听)ξ 「ブーンを、返してよ…」
生き物が意志をもち、
意思によって生き物を殺すのならば…
弱者と認識してなお、喰らうならば…
『弱肉強食って言葉が、昔あった』
-
771 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:52:42 ID:3qHNWQEQ0
-
走馬灯のように。
…いつかの、生きていた頃の彼の言葉が浮かぶ。
『ぁあん?』 ('A`)
(`・ω・) 『食物連鎖ともいうらしい。
弱いものは強いものの供物になる、という意味だが』
川 ゚ -゚) 『シャキン…お前またアーカイブを勝手に覗いたのか?』
(・ω・´ ) 『調べ始めればキリは無くとも面白いものだよ、あれは』
(`・ω・) 『強いものはイタズラに弱いものを食べるわけじゃないんだってね。
手加減をして、自分が飽きたり飢えないように…
そして半永久的にその関係性を保つケースが多かった』
( ^ω^) 『それがどうしたんだお?』
(`・ω・´) 『いまの僕たちの話だ。
人類以外の生き物が居ない世界……
これはそんな関係性を保つことに失敗したということじゃないか?』
『…』 从∀゚ 从
彼は皆と共に行動することが少なかった。
代わりに博識ぶって、
考えることそのものが愉快であるかのように、
たまに口を開けば皆を困惑させていた。
-
772 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:53:57 ID:3qHNWQEQ0
-
『くだらねぇ…
いちいち深い理由なんてあんのかよ』 ('A`)
(`・ω・) 『君も先日晴れて教師になったろう、まんざら興味のない話ではないと思うけどね』
( ^ω^)『マジかお?! いつのまにおめでとうだお!』
『おめー…、うるせぇよ』 ('A`)
(` ω ) 『それはおそらく、 "感情" のせいさ』
彼の表情は、伊出が横から見ていてもはつらつと…だが同時に陰りを見せた気がした。
(`・ω・) 『かつての人間には類を見ない知恵と向上心があった。
弱点を補い、欠点を隠し、道具や環境すらも操って生き延びるといった…ね』
ξ゚听)ξ 『道具を操る… そうね、言われてみれば』
从∀゚ 从
彼女たちは玩具すら与えられない時代を過ごした体現者だ。
物に溢れ、者に溢れる時代もたしかに存在するのだろう。
だがそれも "霊長類の頂点" を自ら謳った時点で終わりに向かっていた。
-
773 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:54:53 ID:3qHNWQEQ0
-
川 ゚ -゚) 『だが頂点の何が悪い?
成ってこそ得られるものも、きっとあっただろうに』
(・ω・´ ) 『まだ見ぬ "得られるもの" の存在を認めるなら、
いつか来る "失うもの" もまた共に認められるべきじゃないか?』
『表裏、相反…いや、突き詰めれば相剋か』
――彼はそう言葉を続ける。
川 ゚ -゚) 『理解はできるがな…』
(・ω・´ ) 『きっと君の言う通りだ。
はじめこそ希望のために、人は何かを求めるんだろうし』
それなのに驕り、怠み…
そのくせ同種である他者を妬んでは怒りを露にする。
それがアーカイブに記された
人間という生物。
先天的性差や後天的ハンデであろうと臆面なく利用して、
周囲を蹴落とすことのみに時間を費やし、
"我こそ頂点" たる矜持を維持しようとする。
それがアーカイブに記された
人間という歴史。
-
774 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 20:56:45 ID:3qHNWQEQ0
-
(`・ω・) 『ヒトという種を蔑ろに、
個の優劣をこうまで醜く気にする生物は他に居ないんだよ』
( ^ω^)『どうしてそんな……仲良くしてほしいお』
(`・ω・´) 『ブーンやクーの発言も、いつかは僕のような歪みとなる日が来るのかな?』
『とどのつまり、
てめーも責任転嫁じゃねぇか』 ('A`)、
苛立たしげに鬱田は唾を吐き、タバコに手をかける。
隣にいた高岡が無表情のまま大きく離れたのは、煙を嫌がったのかもしれない。
(`・ω・) 『天敵のいない存在になってしまった挙げ句、操るものを消費しきって…
磨耗し、ついにほとんどの感情をなくしたヒトの残り屑が僕らなら――』
ξ゚听)ξ 『ねえ、考えすぎじゃない?
卑下したって良いことなんてなにも…』
(` ω ) 『……しかしもう、そうとしか思えなくなってしまった』
_
ξ゚听)ξ 『…』
良くない思考のどつぼにはまっているのだと、しかして伊出は言葉を飲み込んだ。
-
775 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:00:13 ID:3qHNWQEQ0
-
真実は違うかもしれない…が、残念ながら史実は如実に物語った。
兄弟喧嘩も、宗教戦争も、
個の概念から魂の救済を追い求めた末路でしかない。
心から相手を尊重出来たなら、たとえ相容れない存在であろうと赦せるはずだ。
…とはいえ彼の個人的考察も、
過去の何者かが視た未来の一部でしかない。
解っていても、人は辿る。
(`・ω・) 『ただ生きて、ただ無意味に死ぬだけの人生ならいっそ…』
ξ゚听)ξ 『……もぅ!』
川 ゚ -゚) 『いい加減にしろ、お前の言っていることは結果論じゃないか』
(・ω・´ ) 『そうだ、しかし紛れもなく僕たちに降りかかっている現実だ。
"もしも" なんて材料が、もうこの世界には無いんだから』
世のすべては天秤にかけられる。
どちらかを得ればどちらかを失う。
表があれば裏があり、光によって影が創られるように。
-
777 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:01:43 ID:3qHNWQEQ0
-
万物に宿るべき【魔導力】。
それを[かがみ]が際限なく吸い込んだおかげで、
ほとんどの人間から感情が磨り減ってしまった現実のように。
【魔導力】の増長に反比例して、【重力】が失われていったように。
(`・ω・) 『例えばそう、まったく別次元のイレギュラーでも起きない限りは…――』
――世界は変わらない。
( ^ω^)『…』
(`・ω・) 「……なにか言いたそうだね?」
――生まれ変わらなければ。
( ^ω^)『シャキンのいう通り、"感情" が原因で世界がこうなってしまったなら…』
『……』 从∀゚ 从
( ^ω^ )『それを正すのも、"感情" じゃあダメなのかお?』
-
778 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:02:59 ID:3qHNWQEQ0
-
ξ゚听)ξ 『――!』
(`・ω・´) 『万が一それが出来たとして、
結局は同じことを繰り返すだけじゃないか…それを無意味だと言うんだ』
川 ゚ -゚) 『…シャキン』
( ^ω^ )『無意味じゃないお!
いまシャキンが自分で言ったじゃないかお』
('A`)y-~
( ^ω^ )『得るも失くすも、どっちも認めるって…』
(`・ω・´)
( ^ω^ )『だからまた、得たらいいと思うんだお』
(` ω ´)
( ^ω^ )『あまり考えすぎないで、まずは僕たち六人がずっと一緒に楽しく過ごそうお』
ξ゚听)ξ
( ^ω^ )『みんながおじいちゃんおばあちゃんになって、死ぬときになったら…』
( ^ω^ )『その時に決めたらいいお。
意味があったか、なかったか、なんて』
(` ω ´) 『…………それでもやはり無意味だったら?』
从∀゚ 从
( ^ω^)『生まれ変わって、また一緒に生きてみればいいお』
ξ゚听)ξ
ξ゚听)ξ
-
779 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:03:40 ID:3qHNWQEQ0
-
ξ^ー^)ξ
-
780 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:05:41 ID:3qHNWQEQ0
-
自分の死の間際、死んだ人間を思い出す皮肉。
記憶のフェードアウトした視界で、生物の口がバックリと開かれたのが目に入った。
『気が狂う前に――』
当時こそ彼のあの言葉は、ネガティブな思考の果てに尽くされたものだと思われた。
ξ#゚听)ξ 「……もしも、これがシャキンの言ってたイレギュラーなら」
『合図は三度目の嵐――』
そう記された遺言。
今日まで続いていたこの天候は、誰も知らない三度目の嵐だ。
ξ#゚听)ξ 「ブーンが一緒に楽しみたかった未来を…、ブーンを……!」
死ぬのが怖い、 だからこじつける。
無意識に、
反射的に、
『また一緒に生きてみればいいお』
振り上げる…その腕を。
ξ#゚Д;)ξ 「返してよ!!!」
願いを込めた…内藤の腕を。
-
781 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:06:47 ID:3qHNWQEQ0
-
三三三三三三三三三三三三三三三三三三
\\
\\
\\
\\
三三三三三三三三三三三三三三三三三三
-
782 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:07:39 ID:3qHNWQEQ0
-
-
783 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:08:26 ID:3qHNWQEQ0
-
こうして伊出も、汚らわしい口内に消えた。
それが、この世の現実だった。
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784 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:10:56 ID:3qHNWQEQ0
-
----------
叩く壁、騒ぐ天井。
――滑り落ちるぬいぐるみ。
鳴りはためく鼓膜――。
墜ちゆくグランドスタッフと共鳴し、名瀬の部屋も強く傾く。
残りわずかな重力が作用して高岡の身は右へ、左へ…。
名瀬の声が聴こえたのもいつの頃か、もはや忘れてしまうほどに混乱している。
そのうちに流れ閉められたカーテンの元へと、細く柔らかな肢体が無様に投げ出された。
「いっ――てぇ〜…!」
::从∀<;从
先から天地が何度、逆さになった?
立ち上がることすらままならず翻弄される。
何が起きているのか…高岡には正しく把握できていなかった。
从;゚∀从::「くっ…センセー、どこ?!」::
-
785 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:12:42 ID:3qHNWQEQ0
-
ここに彼がいるならば、
『どうしたのかな』
『なにが起きたのかな』
などと言葉を交わし、心の拠り所として少なからず安堵したことだろう。
それとも…裸で名を呼ぶその妖艷さに、眩暈を覚えるか。
ここには彼女以外の肉声が無く、
地鳴りだけが静かに、大きく返事するのみ。
从;゚∀从::「センセぇ…居ないのか??」::
泣き出しそうな声も震え震えに、
::《ガ コ ンッ》::
何度目になるか分からない衝撃が襲いかかる。
((
从; ∀从
未だ慣性に従い、しなり転がっていく。
高岡には自重を支える体力が残っていない。
【重力】が最後の力を振り絞る。
それほどに激しい…天空から崩れ去る塔内部の様相は。
-
786 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:13:36 ID:3qHNWQEQ0
-
ひび割れた壁にたどれば肩を強打。
時に天井へと背中を預け、ベッドの角に腹部を潰されそうになる。
遅れて頭に落ちるぬいぐるみが見当違いに微笑ましくて、
まだある現実感を薄めてしまう。
《ガツ ―― ンッ》
「――っが ぁ…」
::从 ∀从::
どこかでぶつけた後頭部が、視界を揺らがせた。
近くて遠く…なにかが砕ける音は鳴り止まない。
::从∀゚;从::
::从;゚∀从::
……襲う激痛に身を仰け反らせてなお、少し潤んだ瞳は愛しき人を探した。
-
787 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:14:32 ID:3qHNWQEQ0
-
…しかし見当たらない。
高岡に服を着るよう警告した彼はその直後、
激震をものともせず部屋を駆け出ていったのだから当然だ。
从 ∀从
……頼りたい時、隣に居ない。
…寄り添いたいのに、あるのは孤独。
从 ;∀从
寂しいという感情が走り、衝動に任せて危うく責めそうになる自分を留める。
i:.
iii从; ∀从iii
そして脱力した――。
なのに、柔らかな膝が床に触れることはない。
( ……あれっ? )
覚えたのは強烈な浮遊感だった。
次の瞬間、
視界へと飛び込んできたのは
-
788 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:15:18 ID:3qHNWQEQ0
-
蒼と灰に染まる景色。
-
789 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:16:04 ID:3qHNWQEQ0
-
う
っ
そ
ii,, i;i
iiii从;゚∀从ii,i ( …だろォ?! )
-
790 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:16:46 ID:3qHNWQEQ0
-
人が空を游ぐという奇跡がここにある。
特定次元の概念さえ取っ払えば……
いつの時代も現実可能な奇跡の一つではあるが、
命の保証は得てして、無い。
箱庭が予定よりも早く、
世界から弾かれてしまったことを高岡はこの時やっと知った。
『餌場に降りてくる人間がいるぞ!』
…この世に海王類が現存したならば、海面の裏でそう叫んでいたかもしれない。
((
从;゚∀从 「!!」
・・・ ・・・・・
だがこの時、叫んだものは――
-
791 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:17:33 ID:3qHNWQEQ0
-
ガァ
グ ガ
( センセー、助けて…!! ) ッ!
ガ
ガ
-
792 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/10/06(火) 21:18:49 ID:3qHNWQEQ0
-
突風と膨大な雨粒がその身を助け包もうとして…
しかしすり抜けるように霞めていく痛み。
目の前で繰り広げられる闇と光の衝突。
不思議と落下している感覚は得られなかった。
それはまるで現実とは裏腹に、
育児院で読んだ童話の、綿飴雲にでも自分がなったかのように高岡は思えた。
代わる代わる行き交う景色も。
吸い込まれるような向かい風も。
身体の中心から爆発するほどの外音も。
脳の認識が追い付かなければ別世界なのだと…
彼女はこの時、不意に知れたのだろうか。
从 ∀ 从
…自分自身が天地を見失っていても、そこに存在があれば自己は確立できる。
…自分自身が見地を見失っていても、別の存在が他にあるなら自己は確執に至る。
( …なんだよ、これ )
彼女の視界を最後に埋め尽くす、
この星にとって…
そして彼女にとっても最大のイレギュラー。
( センセーは… )
黄色の双眸。
( みんな、は―― )