( ^ω^)千年の夢のようです

(´・ω・`):夢うつつのかがみ

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559 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:16:31 ID:GBXca2Xg0
(推奨BGM:)
https://www.youtube.com/watch?v=GmR3AALCPzo


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( 熱が…ない? )


その身へと、徐々に五感が戻る感触を得た。 狭い痛みを確かめながら目を開く。

視界の端…いや、近すぎてぼやけているのだろう、
白く優しい光に包まれたショボンの身体に降り注ぐ【ヒーラ】の魔法。


背後にいるであろうツンに感謝し、まずは状況の把握に努めんとした。
眼球を右へ、左へ…上にも巡らせる。
灰色の夕暮れが、鉄色となった大地に抗っている。


(´・ω::) 「なるほど」


脳への情報は少ない方が整理しやすい。
ショボンを渦巻いていた炎は一切の動きを止めている。


ξ;゚听)ξつ 「……消えた、けど――」

(´・ω:: ) 「…?」


獄炎を演出していたはずの広場は音を無くし、元凶すらも姿を失っている。
見渡せば月明かりも届かぬ冥い大地…。
人と蟻――と化した騎士――の屍床。

炎壁が遮っていた向こう側も、たった一点を除いて同じ光景があった。

560 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:18:02 ID:GBXca2Xg0

       「…あなたたち、何者?」


まだ人であることを証明するかのように、明確な発音が届く。
その女性の長髪、そして長袖の紅い礼服に身を包んでいるおかげで呪術師を推測させたが、
距離が離れているため、ショボンにはその表情まで読み取れない。


ツンから見るに母親なのだろう…頭部だけになった血塗れの子を大切そうに抱えていた。

            :::д/:川


       「いえ、それよりも…――

ξ;゚听)ξ 「…」

      その子から…離れて…っ!」


女呪術師が指をさす。
その方角には――


「……ナナシ?」 (;´・ω::)


 

561 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:19:55 ID:GBXca2Xg0


       ミ,,●皿●彡


(;´・ω::) 「ナナシ…!」



彼が無造作にぶら下げる騎兵槍は蒸気を噴き、煮えたぎるよう赤く染まっている。
…碧色の死者をその尖端に深々と突き刺して。

自らの意志で人を刺したことのなかったナナシの腕から洩れ放たれる、明確な殺意。


(;´・ω::) 「ツン、何が起きたんだ?」

ξ;゚听)ξ 「彼が薙いだ瞬間、その槍が "吸い込んだ" のよ、辺りの炎を全部」

         「…感染したんだわ、
         この兵士たちのように」


ナナシのとる姿勢は、人間たる骨格を差し置きまるで四つ足獣を体現する。
赤熱の騎兵槍と相まって、見る者の恐怖心を煽った。

関節の可動限度を超えた首がグルンと逆さに捻れ、二人の不死者をその瞳で貫く。
――眼はまるで呪術師の瞳孔。
   ――覗かせる牙は蟻を連想させる。


       ミ●皿●,,彡


怪するナナシを挟んだ反対側、女は抱いた娘の額に軽くくちづけた。
別れも惜しまず、礼服の胸元へと小さなそれをしまう。


「……あなたたち二人は "まだ人間" なのね?!
逃げて! どうせもう私たち一族は助からない」

「空の王、そして軍師ショボン!
その二人が滅ぼしたわ、怪物を使って!
それを伝えて欲しいの!」

562 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:21:01 ID:GBXca2Xg0
森の民らはショボンの姿を知らない。
目の前に偽られし仇がいるとは思わず、呪いを託す。


(;´・ω・) 「…」

ξ;゚听)ξ 「諦めちゃダメよ!
私がそっちに行くから、待――」

           「逃げてーーー!」


             ̄ ̄ミ,,●皿●彡


遺言代わりの懇願が木霊する。
ナナシの身体…いや、 "騎兵槍が女の元へと低く滑る" 。
煙を噴き上げ、淡い軌跡を直線に伸ばさんと触手の残像をなびかせながら。


…恐らく、過去争いなく過ごしてきた平和な森の民に、それはどう映っただろう。

祈り捧ぐ天国への閃光か。
無慈悲な地獄の終着点か。


       ――《グしゅリ》…。
再び人間を貫く騎兵槍の醜い音は、身体に穴を開けた者の耳にだけ届いたに違いない。
 

563 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:22:53 ID:GBXca2Xg0

「あ…あ…」


わなわなと、ふるえる唇。


「あなた…――」


ミ,,●皿●彡 「……」



苦虫を噛み潰す表情のショボン。
ツンは詠唱していた回復魔法を放たず、手中に保留している。

そして女は小さく口を開け、背中から生えたその赤い翼をただただ見つめていた。




(;´-ω・`) 「――……」


騎兵槍が喰い破ったのはショボンのわき腹。
女に辿り着く前、神速を以てその身を庇っていた。

564 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:23:41 ID:GBXca2Xg0
ミ,,●皿●彡

(;´-ω・`) 「…ナナシ、目を覚ますん――

::(;´ ω ):: ――グ…おぉお お お ッ!!」


発火量を増幅させる騎兵槍。
ショボンを内部から焼き付くさんと、更なる魔導力を放出する。


ξ;゚听)ξつ 「【ヒーラス】!」


【ヒール】、そして【ヒーラ】を超える最上位回復魔法【ヒーラス】を発動させるツン。
素早く、そして大きな光がショボンに染み込みはじめた。

…しかしこのままでは盛り続ける騎兵槍からのダメージによって、
癒しの魔導力もすぐに相殺されてしまう。

――それでもショボンは。


「…三日月島の時から、」


(;;`・ω メ 三  ( ズリュ…ッ )   ミ●皿●,,彡


その僅かな無痛の瞬間を利用し、騎兵槍ごとナナシを突き飛ばす。
槍という外装で不死の血を舌なめずりし、名残惜しそうに騎兵槍がケタケタと嗤った。


(;;`・ωメ) 「思っていたけれど、よくぞここまで気が利くものだねツンは。
…でもまたこうして助かった、礼を言う」

ξ゚听)ξ 「ショ――…うがないでしょう。
でも、どうしてナナシは……」

565 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:25:25 ID:GBXca2Xg0
思わずショボンの名を呼びかけそうになるツンだったが
呪術師の手前、寸で止めた。
ヘタな誤魔化ししかできなかったのは、言い換えて彼女の誠実さにも繋がっている。


(;;`・ωメ) 「…」


ショボンの脳裏には、時を遡り集束していくひとつの答えが導かれつつあった。


炎の壁に挑むナナシの姿…騎兵槍…。
形状は異なるはずが、
石突きとなる柄頭に刻印された金糸を確かに視た。


それは三日月島で末者がしたためた槍とまったく同じ印。


「…貴様、あのときの小僧か」 ミ●皿●,,彡

Σ (;`・ωメ) 「――!?!!」

「久しいが…
     忌まわしき不死め」 ミ●皿●,,彡

566 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:26:06 ID:GBXca2Xg0

――赤い森の惨劇よりも、


ξ;゚听)ξ 「…」


――呪術師たちの怨みの矛先になるよりも、


「あの日以来、永く意識を失いはしたが
時を経ても貴様に逢えたということは…
これが相剋というものか」  ミ●皿●,,彡


――ショボンの心を蝕む邂逅。


(;`・ωメ) 「…人語を、理解しているのか」

「魔導力さえ喰えれば、
他は貴様らとなんら違いない」 ミ●皿●,,彡

567 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:27:09 ID:GBXca2Xg0

…かつて末者が黒い棒として加工した隕鉄は、いわばアサウルスの卵だった。
しかも、魔導力の空っぽな生きた屍。

それが別個体のアサウルスの太陽と接触した際、
ごく僅かな魔導力を得たことにより、生物としての反射行動を起こした。


「あの日、邪魔さえ入らなければ
貴様を媒体に降りたものを…」 ミ●皿●,,彡


結果、アサウルスの本能は最も身近にあった物体を餌に喰らおうとする。
…それが単なる騎兵槍であったことが、このアサウルスの不幸。


(;#`・ωメ) 「邪魔……だって?」


ショボンは悟る。
目の前にいるのが幼き自分に飛来した、あの黒い槍であることを。

…兄者の仇は、この固体こそなのだと。


「可能性をいくら持てども、人間のままでは駄目なのだ。
蟻を生む排泄物にしかならぬ」 ミ●皿●,,彡

ξ゚听)ξ 「……」

(;#`・ωメ) 「…兄者さんのことか?
兄者さんは僕の恩人だ、お前の餌なんかじゃ――」


だが飢えはアサウルスを殺さない、殺せない。
意識なき100年余りの刻は天災に幸をももたらす。


「我は、貴様だ」       ミ●皿●,,彡
 

568 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:28:06 ID:GBXca2Xg0
ξ-听)ξ 「…」

「あなたたち、なんの話をしているの?」


女呪術師はただならぬ雰囲気を感じつつも想像には至らない。
先とは異なり、今度はツンが黙しつつも密かに【ヒール】を放出した。

呪術師の傷が柔らかく癒えていく。


(;#`・ωメ) 「……なんだって?」

「貴様が産まれ、我も産まれた。
我々は純粋にエネルギーを欲し、不死たる
貴様らに惹かれているだけ…」 ミ●皿●,,彡

(;#`・ωメ) 「…」

「長く生を得れば知識も増える。
永く命を保てば理も身に付く」 ミ●皿●,,彡

(;#`・ωメ) 「不死者の数だけお前たちが生まれるのか?
だったら…ナナシから離れろ」

「この人間なぞ媒介に過ぎない。
我が身は未だ封じられている」 ミ●皿●,,彡


ナナシの口で語るアサウルス。
かざし示す騎兵槍は尚も炎熱し、蒸気を炊いた。
内包する忌々しさを代弁するかのように。

569 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:29:46 ID:GBXca2Xg0
「…が、我を一介の獲物扱いなど癪にさわる。
このまま生きるも一興か」   ミ●皿●,,彡

(;`・ωメ) 「恐らくナナシはなにも知らず、その騎兵槍を使っている」

(;`・ωメ) 「…お前にも理があると言ったな?
彼には彼の人生がある。
用があるなら代わりに僕の身体を直接使えばいい」

ξ;゚听)ξ 「ちょっと…!」

「……そうして内に秘めた我を殺すか?
あの日、この身を利用してまで我が
同胞を葬ったように」     ミ●皿●,,彡


「ならばこの者もしかり葬る」 ミ●皿●,,彡


(;#`・ωメ) 「彼を巻き込む必要はない!
お前達の目的は僕だろうっ!」


「その通り。
我らアサウルスにとって、人間は路傍の石にも足りえぬ。
欲するは不死の生命のみ」   ミ●皿●,,彡


「我らは各々、不死と同一…相剋の存在。
――だがしかし」       ミ●皿●,,彡


ナナシの躯の構えが変わる。
腕を引き、腰を落とした半身の態勢…。

570 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:31:21 ID:GBXca2Xg0
「貴様はひとつ、運命を反故した。
故に我も禁を犯そう」     ミ●皿●,,彡

(::`・ωメ) 「…運命の反故、だって?」

「すなわち相剋の黙殺。
我々アサウルスは定められし天敵のみと争うべきなのだ。
弱肉強食…
魔導の理を貴様が失した」   ミ●皿●,,彡


騎兵槍からたぎる炎が更に強大に膨れ上がった。
   …一変する空気。
静まったばかりの広場も再び赤く染まると、
既に刀に手をかけていたショボンの姿も照らされる。

その時既に、両者の射程圏内。


   ̄ ̄`・ωメ) ( …ナナシ、頼む! )


「貴様に関わるものすべて我らの大敵と知れ」


       ミ●皿●,, ̄ ̄ ̄

 

571 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:32:03 ID:GBXca2Xg0
アサウルスが操るナナシのランスチャージ。
纏うは咆哮の業火球…
それも見上げんばかりに強大な灼熱のメルト模様がナナシの姿を覆い隠す。


対する【切断】。
蟻の炎の壁すら届かなかったこの技術では相性が悪いことをショボンも自覚している。

…ブーンの【破壊】であれば、この火球を打ち崩せたかもしれない。
しかし居ない者にすがることは出来ない。

なにより、これはショボンの闘いなのだ。



    ̄ ̄`・ωメ)   ミ●皿●,, ̄ ̄


ショボンは立ち向かう。

自らの落とし前をつけるべく。
天敵を滅ぼすべく。
仇をとるべく。

衝突間際。


【切断】を、相手の精神に作用させた。


 

572 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:33:26 ID:GBXca2Xg0



       ミ●皿●

 

573 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:34:20 ID:GBXca2Xg0

        ●Д゚,,彡 「――!!」

 

574 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:35:34 ID:GBXca2Xg0
魂を乗っ取っていた共有意識が【切断】された時間は瞬きの間にも満たない。

しかしその一瞬がナナシ本体の抵抗を生んだ。
ランスチャージはガクンと勢いを失うと、身体をわずかに宙へと浮かせる。


        Д゚,,彡 ( ショボンを… )


ナナシの目的はしぃのため。
幼馴染みの願いを叶えるためだけに、ショボンにすら斬られる覚悟も厭わない。
アサウルスはまさしく路傍の石につまづいたのだ。


そして――


       ̄ ̄ ̄ ̄`・ωメ)


未だ業火球は健在。
これこそツンの【アクアデス】に加えてショボンの【切断】にも耐えた、
あの分厚い炎の壁を【リフレクト】している。


ξ#゚听)ξ
 つ∴o キュゥゥ


ならば同じことを繰り返したところで往々にして無駄となる。
それでも、ツンは詠唱を止めていなかった。

575 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:36:23 ID:GBXca2Xg0
ξ#゚听)ξつ サッ


…ツンもそれは重々承知している。
自身の魔導力では足りないのだ、最大級の魔法をもってしても。
不死であろうと至らぬものは認めなくてはならない。


         ・・・
だから、唱えるのはこっちだ。


ξ#゚听)ξつ 「【ライブラ】!」
 

576 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:38:06 ID:GBXca2Xg0
攻撃力をもたぬ補助魔法…。

掌から生命感知の波動が放たれると、元は一つだった光の塊が枝分かれに分離した。


緩くも速く着弾し、同時に発光。


呪術師の女、
ツン、
ショボン、
ナナシ、

――騎兵槍。



( そこか…ッ! )   ̄ ̄ ̄ ̄`・ωメ)



業火球と槍の中に身を隠すアサウルスの生命が、その在りかを輝き示した。
…それだけでいい、総てを斬る必要はないのだから。

・・・・・・・・・・・・・
アサウルスだけを斬ればいいのだから。


いまのショボンに事足りる、どんな攻撃魔法より強力で頼もしい最大のサポート。

577 名前: ◆3sLRFBYImM[炎の中――] 投稿日:2015/07/12(日) 22:39:25 ID:GBXca2Xg0


       ,゜..
     "`\\ 
       \\
        \\

578 名前: ◆3sLRFBYImM[アサウルスが――] 投稿日:2015/07/12(日) 22:40:46 ID:GBXca2Xg0

            \\
             \\
              \\


               (`・ω:メ)
                  ∪
                  |

 

579 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:41:36 ID:GBXca2Xg0

ξ;゚听)ξ





ミ●皿●,,彡





        「…手応えは、」 (・`ωメ´::)
 

580 名前: ◆3sLRFBYImM[――グッグッと、嗤う。] 投稿日:2015/07/12(日) 22:42:31 ID:GBXca2Xg0


           ゴフッ ;`, (゚ωメ´::)


ξ;゚听)ξ 「!!」


ショボンにも手応えはあった。
――それでも。
喉を迸るのは、抗えない五臓の悲鳴。
色を失くした呪術師の森に赤い色を返り咲かせる。


ミ,,●皿●彡 「狙いは良かったのだろう。
だが伝えたはずだ…
"我々は天敵のみと争う" べきだ、と。」


ミ,,●皿●彡 「我は貴様にとっての相剋だ」


ナナシを包んでいた、散り散りに火の粉舞う魔導力…。
再び意識を共有化したアサウルスが騎兵槍を肩に担ぎ、ショボンへと向き直った。

581 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:43:58 ID:GBXca2Xg0
「…な、何が起こったの? 彼はどうして…」

ξ;゚听)ξ ( ……【切断】は風の魔導力、でも―― )


魔導力には属性が帯びられる。
火は水に、水は土に、土は風に、風は火に…それぞれ相剋の関係によって喰われてしまう。

照らし合わせるならば、
そもそも炎の壁が【アクアデス】に耐えた違和感に、ツンも気が付いた。


ξ;゚听)ξ ( 【リフレクト】にしても理に適っていない。
アサウルスがキズを負った形跡も、反射ののタイムラグもない )


ショボンへのダメージは更に不可解だった。

アサウルスはショボンに対して攻撃をヒットさせたように見えなかった。
先の接触は【切断】の一方的なアタックではなかったか…?


ショボンの手から隕鉄の刀が滑り落ちると、同時にその肘から先も共に沈む。
千切れた片腕からドロ
          ッ…
            と、血溜まりが大地に円を描いた。


               ::(-ωメ´:;;)::
              ハア ハア

ミ,,●皿●彡 「利き腕がなければ、もはや得意気に剣技も繰り出せまい。
…最も、あろうとなかろうと同じ愚行を繰り返すだけだが」

            「…」 ::(゚ωメ´::)::

ミ,,●皿●彡 「不死とて死は一時訪れる。
だから我は死を与え続けよう……
貴様に、命脈刻む暇すら与えぬ矛盾の命を」

582 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:44:39 ID:GBXca2Xg0

アサウルスの意思の元、ナナシの身体が一歩前に出る。


       ( これは違う…。
【切断】のダメージじゃあない ) ::(゚ωメ´::)::


騎兵槍の尖端が届くとき、
ショボンの心臓なり脳天は貫かれるだろう。




( ダメージだけ切り取って具現したような…
反射ならこの感触は有り得ない ) ::(゚ωメ´::)::


波動感知に長けるショボンにとって、自身の魔導力と特性を見誤ることは考えにくい。
かといって、アサウルスだけが無傷のカラクリも判らない。


,●皿●彡


現実は容赦なく迫ってくる。
もはや避ける体力など残っていない。
近づく死に抵抗すべく、視界は緩慢な時の流れを映し出した。


    ( 相剋…… 天敵…… ) ::(゚ωメ´::)::

583 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:45:54 ID:GBXca2Xg0
ショボンは思考を走らせ続けた。
違和感をヒントに、目の前の危機にギリギリまで抗う。

…アサウルスの歩調が変わる。


  ミ,,●皿●彡

( 存在… 不死と、アサウルス ) ::(゚ωメ´::)::

ξ;゚听)ξつ 「【ウィンダラー】!」


逃げられないショボンを救うべく動くのはツン。

【ウィンダラー】…広範囲に巻き起こる魔突風とカマイタチ。
アサウルスを中心に添え、溶け残る鎧の隙間、肉を切り刻んでゆく。


     ::ミ,,●皿●彡::

ξ;゚听)ξつ 「くっ…」


…しかしその歩みを阻害するには至らない。
ギチギチ軋む音をたてつつも、発生した慣性に逆らい前進するアサウルス。
顔を歪ませ、握り直した騎兵槍を――


         ミ,,●皿●彡 「!」


――正面に突き出して…虚空に触れた。
そこにあったはずのショボンの姿が無い。


(;´-ωメ:) 「……ぅ…」


静かに首を振った先、
【ウィンダラー】の余波に吹き飛ばされた不死の青年を改めて捉える。

584 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:46:57 ID:GBXca2Xg0

アサウルスはゆったりとした動作で振り向いた…。
焦る様子はない。
背負う月と濁った星光…
そして宵雲に潜む二つの太陽がなおも健在している。


「……娘…小賢しい真似をするな」 ミ●皿●,,彡

ξ゚听)ξ 「…」

「貴様も我の因果に含まれたいか?
余計な手を出さず、望みさえすれば
まだ長生きさせてやるが…」 ミ●皿●,,彡

ξ゚听)ξ 「…?」

ξ゚听)ξ 「そうね、お願いしたいわ」


交わす言葉とは裏腹にぶつかる視線、退かぬ不死。
蚊帳の外にいる女呪術師だけが後ずさりした。


【ウィンダラー】の狙いはアサウルスへの攻撃でなく、ショボンの緊急回避。
ダメージを伴いはしても、まだ死にはしないと踏んでのこと。

…そしてそれは思わぬ副産物をツンに与えたらしい。
表情から焦りが消える。
睫毛をはじかせ、勝ち気な眉をますますつり上がらせた。


ξ゚听)ξ 「他にも試してみる?」

⊂ξ゚听)ξ 「…【リジェネ】」


挑発する仕草でそのしなやかな腕をユラユラと揺らしたかと思えば、
流れる動作で魔法を発動する。


(;´-ωメ:)

585 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:48:17 ID:GBXca2Xg0
光の魔導力がショボンを包む。
――反応はそれだけだった。


          「……」 ミ●皿●,,彡

「ククッ、知恵は回れど実力が追い付かぬか。
弱々しき癒しの波動よ」    ミ●皿●,,彡

ξ゚听)ξ 「逃げて。
森や皆は残念だけど…貴女だけでも生きるのよ」

586 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:49:19 ID:GBXca2Xg0

「……えっ」


認識には一呼吸分の時間がかかった。
女呪術師が、場にそぐわぬ声をあげる。


ξ゚听)ξ 「大丈夫。
せっかくアサウルス様が長生きさせてくれるっていうんですもの」

ξ゚听)ξ 「ねえ?」

         「……」 ミ●皿●,,彡

ξ゚听)ξ 「ほーら、認めてるわよ」

「……」


そのやり取りに、
心中を困惑させながらも女呪術師は、一歩…また一歩と下がっていく。
視線はそれぞれに泳ぎ、やがて無防備な背中を晒しながらこの場を離れる。

自身の娘に向けていた別れの口づけとは対照的に、名残惜しそうに振り返っていた。

ツンに向けては申し訳なさそうに…。
アサウルスに向けては怒りの矛先として…。


              ミ●皿●,,彡


アサウルスは静かにそれを見送るだけだった。

騎士道精神では決してないだろう…。
とはいえ、意識を朧気とさせるショボンの薄目に入るアサウルスがとても人間臭く映った。
 

587 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:50:07 ID:GBXca2Xg0

ξ゚听)ξ 「…    さて、と」


女呪術師が居なくなるのを見届けると、
ツンは逆手に指を絡ませ、リラックスするかのように伸びをする。
   《カチャリ…》。
騎兵槍から突撃準備の鐘鳴。


「不死すら敵わぬ我に、人間が
随分と余裕を見せるものだな」 ミ●皿●,,彡

ξ゚听)ξ" 「あら、アサウルス様?
ご存じ無いのね……」


ξ゚听)ξ 「【コンフュ】!」


伸びをしたまま――指先から放たれるは、神経回路の混濁魔法。


        「?!」 ::ミ●皿●,,彡::
            ドクンッ

色彩なき横倒しの刃が騎兵槍を貫通する。
直後、アサウルスがよろけ始めた。


ξ゚听)ξ
 つ∴o   「貴方はショボンのことしか眼中にないのかしら?」

588 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:50:50 ID:GBXca2Xg0
続けて詠唱したのは【フォース】。
ひたすらに物理的でしかない衝撃がアサウルス本体に襲いかかる。

吹き飛ぶ騎兵槍…
だが、ナナシの手がグリップを離さない。
重量に引きずられた身体が僅かに浮いた。


 「グゥっ…小癪――


  三ξ゚听)ξ !!」 ミ●皿●,,彡


その眼前に距離を詰めていたツン。
【コンフュ】から解放されたアサウルスの元へと駆け出し、


      ξ`゚听)ξ 「っハァ!」
        ⊂彡

・・・・・・・・・
ショボンの隕鉄の刀を振り降ろす。

589 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:51:30 ID:GBXca2Xg0

           《ギチィ  ―ィン!》


 

590 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:52:17 ID:GBXca2Xg0

     灰色の空に木霊する金属音…。


ξ゚听)ξ 「…」

ミ,,●皿●彡 「…」


       重なりあう、刀と槍。


ミ,,●皿●彡 「…なんのつもりだ」

ξ゚听)ξ 「今度は反射しないのね。
意図して? それとも…アタシにはできないのかしら」

ミ,,●皿●彡 「なるほどやはり小賢しい」


鍔迫り合いする互いの武器。
…ツンはナナシの胴をすり抜け、騎兵槍を直接叩いた。
疑念を払拭するためだけに。

グッグッ…と、また嗤い声がした。


ミ,,●皿●彡 「だがこうも近付いたのは、やはり貴様の力不足というものだったな」




(;´-ωメ:) 「    ぅ…」


(;´・ωメ:) 「……はあ、はあ…」


(;´゚ωメ:) 「!!」

591 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:52:58 ID:GBXca2Xg0

   ド
::ξ;゚听)ξ:: 「――…ッッ!」
     ス

       ッ



         …ツンの身体が跳ねた。 何度も、ガタガタと。
極短の縄で繋がれた家畜のように、決められた空間だけで痙攣を赦される。


ξ;;゚-)ξ,゚、 「が――ふっ…」


徐々に上がっていく高度。
足が大地を離れ、小さなブーツを伝ってボタボタボタボタと血を垂れ流す。


…騎兵槍がツンを貫いていた。
何が起こったか、当人は把握することもままならず。


ミ,,●皿●彡 「この躯はとても良い。
身の丈を越える得物をここまで自在に操れるか」

::ξ;; )ξ:: ビクッビクンッ

(;´゚ωメ) 「――くそ…、ツンーーー!!」

592 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:53:53 ID:GBXca2Xg0

ショボンの身体は少しずつ動くようになっていた。

不死者といえど、自然に回復するわけではない。
これは【リジェネ】の段階的治癒の発動によるものだ。

即効性のある【ヒール】と違い、
本来ならば毒のような継続ダメージを受け続ける環境下で本領を発揮する。
消費魔導力の少なさから、非戦争地帯での治療にも役立てられる。

ツンはアサウルスの注意を引き付けるため…
そしてあえてショボンがすぐに動かないよう活用した。


やがて…ツンの痙攣が止む。


ミ,,●皿●彡 「ふむ…」


刀の扱い方を盗めなかったツン…。
瞬時に繰り出された旋風槍に対処できず、その刃を弾かれ、返り討ちにあってしまった。


ミ,,●皿●彡 「どこかでこんな死体を見たな」


結末は――百舌鳥のはやにえの如く。
槍に貫かれたその姿は、ショボンの記憶からかつての兄者をフラッシュバックさせる。


(;#´゚ω゚) 「アサウルス!!」

ミ●皿●,,彡 「邂逅…そうか。
これはいつかのお前でもあった」
 

593 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:54:34 ID:GBXca2Xg0

       グッグッ、グッグッ、
       …嗤いが止まらない。

       そうだ、このまま
       女を投げつけてやろう。


…アサウルスはそんな風に考えていたのかもしれない。
ショボンから顔をそらさず、
騎兵槍を振りかぶろうとして……その意識は完全に余所見をしていた。



    「…やっぱりね、
       ショボンのことしか
            見えてない」
Σ ミ●皿●,,彡

594 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:55:22 ID:GBXca2Xg0
 「アタシも不死者なの。听)ξ 
…貴方は知らなかったみたいだけどね」

ミ;,,●皿●彡 「!!!」

(;´・ω・) 「ツン!!」

   「【リベンジ】!!」听#)ξ


アサウルスの狼狽――同時、爆散する闇色の太陽光。




  ::《ゴ ア ァ ア ァ ァ ッ ッ》::




            獣の断末が
              哭き響く。

 

595 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:56:12 ID:GBXca2Xg0



       ( 推奨BGM:Distorted Space )
       https://www.youtube.com/watch?v=2wOonO74Y2M
 

596 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:57:00 ID:GBXca2Xg0

    シュゥウゥ……




: ::  ,
ミ,,○皿○彡


(;´・ω・) 「…や、ったの……か?」

       ξ )ξ 

(;´・ω・) 「ツン?」


膝をつくアサウルス…地に伏すツン。
どちらも立ち上がる気配は無い。


【リベンジ】…その身に受けた傷をそっくりそのまま放つ。
ダメージではなく概念であるため、
被爆した対象は痛みそのものや瀕死といった、発動者の状態をトレースする。


…かろうじて息があるのだろう。
ツンの身体は極々わずかだが、呼吸による上下運動が見られた。
貫かれた箇所は長く綺麗な後ろ髪に隠れて目視できない。

どのみち彼女も不死の者…。
生きてさえいるならば、その怪我の度合いよりも確認しなくてはならないことがある。


(´・ω・`) 「…アサウルスは」


: ::  ,
ミ,,○皿○彡

597 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:58:14 ID:GBXca2Xg0
ショボンは警戒しつつもアサウルスへと近よった。
しかし何も起こらない。


(´・ω・`) 「アサウルス、死んでいるのか?
いやしかし……」


空を見上げる。
夜空の彼方……雲の切れ間に、太陽は無い。


三日月島に出現したアサウルスは二つの太陽を破壊しても石化したまま、
島の海にその身を晒している。
いつの間にか現れた謎の物体として、
世間的認知が広がっているのをのちのち小耳に挟んだことがある。
生きているとは考えにくいが、消滅していないのも確かだ。

598 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 22:59:12 ID:GBXca2Xg0


             《 ( A ) 》


ならば東方のアサウルスはどうだろうか。
あの日あの空間でブーンが助けた男。
ハインの言葉を訊くに、彼がどうにかしたという。

599 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 23:00:12 ID:GBXca2Xg0
だが、東方のアサウルスらしき発見談などこれまでに聞いたことがなかった…。

人の多くはひとつの場所に定住するが、遊牧する民もいる。
訳あって大陸から東方に旅立つものもいるだろう。

よって東方の生き残りがいようがいまいが。
何かしら形跡が残っているならば、人々は伝え、いずれはショボンの元に情報が入る。

アサウルスと蟻の痕跡を追い続けた彼に。


(;´-ω・`) 「――ぃづッ!」


ツンから取り戻した隕鉄の刀で騎兵槍をつつくと、
感触が痛みとなってショボンに跳ね返った。

そこで今度は素手で優しくさわってみる。
…やはり、さわさわと身体をまさぐられる感触。


(´・ω・`) 「相剋…か」


ツンがショボンを残して【リベンジ】…自爆したのは、
このアサウルスが彼女でしか有効なダメージを与えられないことを悟ってのことだろう。
倒せる確信があったのかは彼女にしか判らないが。


ならばショボンが期待されているのはトドメではなく、


(´・ω・`) 「恐らくは――」

 

600 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 23:01:08 ID:GBXca2Xg0

ショボンはアサウルス本体である騎兵槍へと意識を向け、集中する。
やがて不可視の腕…その輪郭が伸び、宙を漂い始めた。

自身の腕ではない。
彼は両足のスタンスを自然にとり、両肩は下がったままだ。
魔法の使えない彼だが、代わりに独自の概念を編みだし応用していた。

ふわり、ふわりと。
ショボンによく似た形の腕が魔導力によって具現されている。


(`-ω-´) 「…」


騎兵槍――そこから魔導力の波動は感じられない。

生きとし生けるものには総じて魔導力が備わっている。
アンデッド、無機物の魔導生命体…
アサウルスも例外ではなく、灰蟻にすら纏われているもの。
それが魔導力。

601 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 23:03:06 ID:GBXca2Xg0
【ライブラ】が死んでいるものを生命感知出来ないように、
この不可視の腕もまた、魔導力のないものは感知出来ない。

これまでの経験と法則に則るならばアサウルスは死んでいるといえる。


――なのに、ショボンに対する相剋の特性は消えていなかった。


(`-ω-´) 「…」


もともと魔法を使えない人間からはパルス状の波動が流れているため、
ショボンの感知範疇にはもうひとつの存在が同様に捉えられる…ナナシもまだ無事のようだ。


アサウルスとの共有意識から完全に【切断】すべく、
自らの掌をナナシの顔に触れた。
直接魔導力を送り込めば、より強く意識を切り離すことが出来るだろう。


ミ,, Д ⊂(・ω・´ ) 「いま助けるぞ、ナナシ…」


騎兵槍たるアサウルスの処分はそれからだ。
そう思い、ショボンが【切断】を発した――

602 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 23:03:49 ID:GBXca2Xg0
ミ,, Д⊂(;`・ω・) 「!!」  ――その時。


感知内にもうひとつの魔導力。

かつて感じたことのない、破裂寸前の膨脹波動。
背後へと振り向く。


       ξ )ξ


ツンではない。


(・ω・´;)



(;`・ω・)

         他に、居る。



(推奨BGMおわり)
 

603 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/07/12(日) 23:04:37 ID:GBXca2Xg0
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〜now roading〜


ミ,,●皿●彡

HP / B
strength / B
vitality / B
agility / C
MP / C
magic power / B
magic speed / D
magic registence / H


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