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467 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:11:14 ID:.DLLpjNY0
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「ちくしょう、ひとっこ一人いやしねえ」
「広すぎるんだよ。 しかもこの炎…
こんなんじゃ当の村人らを捜すのも一苦労だ」
「状況次第では戦闘を避け、避難活動を優先するほうがいいのでは?」
「避難させるもなにも、ここはあの呪術師たちの住む森だぜ?!
俺たちがどうこうしなくたって、ただでさえこんな ――ああッくそ、熱ぃなぁ!」
森内のどこか。
周囲に気圧され悪態づく兵士たちの姿。
大陸戦争の後期ともなれば国軍の訓練も追い付かず、命令系統はやがて脆さを露呈する。
彼らは皆、前衛からも外された偵察隊の一ピースに過ぎなかった。
立ち振舞いに規律はなく、任務の遂行よりも無事この場をやり過ごすことを考えていた。
「死体の二、三でも見付かればそれを手土産にして引き揚げちまおう。
…なあに。
首を落として、顔を切り刻んじまえば陣営だの住人だのはわからねえさ」
薄汚い手の甲をボリボリとかきながら、名も知らぬだれかは言った。
群衆に指揮官らしい人物は見当たらない。
半数以上は傭兵で構成され、だからというわけではなかろうが動きは鈍重で粗悪だった。
しかし例外なく首には識別用のリングプレートをかけている。
くすんだ裏面には死亡時の墓標と化す名前の刻印。
胸元から取り出したそれを眺めていた兵士の一人が、思い出したように前方に向けて声をかける。
「…おい、あんまり列から離れるなよ。
どうせ何も見つからないさ」
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468 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:12:43 ID:.DLLpjNY0
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ミ,,゚Д゚彡 「火の元も、人の姿も、ちゃんと調べないといけないから」
堕落しかけた群れのなか、異質を放つのは金色の髪を靡かせる青年。
身の丈を大きく上回る騎兵槍が、軽々と背負われる凛々しさを感じさせた。
炎すら彼を避けているかのように、その顔には一筋の汗もかいていない。
「真面目な野郎だな。
その槍といい…たしかお前も傭兵だったか」
ミ,,゚Д゚彡 「そう」
「……」
ナナシに話しかけた兵士は、
無骨な外見に憂いを帯びた瞳を揺らしながらリングプレートをインナーの奥へとしまいこむ。
過去の怪我であろう…右目だけ、不自然に細い。
その間、ちらりとナナシが兵士を見やった。
まくられた長袖の肘から手首にかけて、長く深い、ノコギリ刃でつけられたような斬り痕が目に入る。
「……いつの間にこんな傷…?」
兜の隙間から覗く顔の皺から、彼がナナシよりもだいぶ年上であることがわかる。
ナナシの視線に気付き、そう呟くと、兵士は腕を動かした。
腕を上げるその動きはぎこちなく、傷によって阻害されていることは明らかだ。
きっと最近できた怪我なのだろう。
兵士は苦笑いしつつ、諦めたように手を降ろした。
「ははっ……もう満足に自分の身も把握できてない奴が、偉そうに言っていい台詞じゃあなかったな」
ミ,,゚Д゚彡 「きっと、いまは興奮してるだけだから。
手当てしたほうがいいから」
「…」
ナナシは腰元からヒールポットを取り出し、兵士の傷口に振り掛けた。
夜でも灯る魔導の粒子が泡立ちはじめ、みるみると皮膚は再生する。
――そう、皮膚だけが。
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469 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:14:15 ID:.DLLpjNY0
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「……なにかが骨に挟まってるような」
ミ,,゚Д゚彡 「違和感がある?」
魔導力における回復魔法【ヒール】には、
肉体の再生促進はあっても後遺症の復帰には役立たない。
どうやら彼の腕はこれまでのように動くことはないのかもしれない。
戦仕事…とりわけ傭兵家業でもよく聞く話だ。
戦闘中は興奮状態によって認識していなくとも、一段落したとたんに負傷…
時には、糸が切れたように倒れ、息を引き取る者もいる。
「いや……きっと俺みたいな奴は潮時なんだろうな。
心も体も」
肉体が資本である彼らは、使える武器がなくなれば戦から身を引くしかない。
崇高な意識をもった兵士だろうと。
報酬にしか興味のない下衆な傭兵だろうと。
仕事の役に立てない者など、雇う側からみれば何もできない無垢な子供と同じ…穀潰しだ。
ミ,,゚Д゚彡
かける言葉は思いつかなかった。
兵士はその佇まいや年齢的にも、ナナシよりよほど長い時間を戦場で過ごしている。
ナナシが言えることなど、とうに自覚しているはずだ。
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470 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:15:56 ID:.DLLpjNY0
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一人で懸命に探索を続けようとするナナシの背中で、
「……みんな、一旦止まってくれ」
と、手当てを受けた先の兵士の声がとんだ。
ナナシが再度振り向くと、他の兵士らも同様に顔をあげる。
「いま敵軍に襲われるような事態になっても、まともに戦える状態じゃない。
…森の民の捜索もそうだ。
ここは一度だけ気を引きしめて、短時間でさっさと終わらせないか?」
身の回りでパチパチと燃え盛る炎壁が彼らを照らし、じっとりと焦がしていく…。
齢を重ねた声が、緩んだ場を律した。
指揮の経験を思わせる一声。
――『早く終わらせる』という言葉に大きく同意したのかもしれない。
一部に不満げな態度は見せつつも、一同は汗を拭い、乱れた足並みを揃え始める。
声をあげた兵士はそんな反応を眺めると、ナナシに振り向き、言った。
「…道なき道は諦めろ。
ひとまず通り抜けられるところだけでも充分だろう?
全員がお前に付き合うこともできないからな」
ミ,,゚Д゚彡 「ありがとうだから」
「ふん…傭兵が真面目に仕事をこなす横で、
国軍の俺たちが堂々サボるわけにもいかないってだけだよ」
ミ,,゚Д゚彡 「……」
「[空の軍]も、この森にいるはずだからな」
そう言う兵士の背筋が伸びた。
ナナシも釣られて姿勢を直す。
「…その代わりと言ってはなんだが。
やつらと戦闘になったときは頼むぞ」
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471 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:17:15 ID:.DLLpjNY0
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[空の軍]――。
長きにわたり、優秀な王が統べるという噂だけが先行するも、
何十年とその姿を見たものはいないという。
ナナシの雇い主は、それを相手取り戦争を引き起こした[都の軍]。
…その頂上には、美しき女王が君臨する。
「早く終わらせて、女王の声でも聴きながらうまい酒を飲みたいもんだ」
「だな。 こんなところで死ぬのはおれも御免だ」
先程よりも軽くなった行進。
しかしもはやこの場から心の離れてしまった兵士たちの言葉は、傭兵のナナシには解らない。
この兵士もまた国に属する以上、女王を崇めているのだろうか?
人間の上に存在する人間。
ナナシの住む村の長とはまた違う、絶対的信仰にも似た崇拝は、
戦場に向かう兵士たちにとって心の支えになっているのだろうか?
ミ,,゚Д゚彡
崇めるもののないナナシには解らない。
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472 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:18:49 ID:.DLLpjNY0
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元来、赤い森には様々な仕掛けがあった。
一歩森に足を踏み入れれば、
色とりどりの花を咲かせた木々が無秩序に立ち並ぶ。
見上げて空の形が歪なのは、大地が隆起している証…それが虹色の起伏ともなる。
しかしそれらはすべて束の間を支配するのみで、時が経つごとにガラリと姿をまるで変えた。
二度と同じ表情を現すことのない森は、外部の人々をおおいに惑わせる。
…とはいえ確かに路は存在する。
脇を見やれば大小の岩々が常に草に寄り添う。
森の民だけに判る、呪術によってマーキングされた、極めて自然で不自然なオブジェ。
広大な自然物のなかに、呪術で反応する魔導感知機が備わったものが点在するのだ。
土を掘り起こせば、赤黒い魔導力によって動き、宙を舞う円盤も隠されている。
他に類を見ない魔導力…そしてテクノロジーが伝えられているのが、赤い森の特異性ともいえる。
それに目をつむっても。
鳥がさえずり、昆虫や、大人しい草食動物が自然の生態系を作り上げていた。
人間が空から見下ろせたなら…
この一帯は色彩鮮やかな密林として、
いつか人々の瞳を癒やす景勝地にも成り得たのだろう。
だが今やこの地は、地獄の焦土の口を開けている。
赤い森は紅く染まり
今日をもって消えるのだ。
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473 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:19:54 ID:.DLLpjNY0
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〜now roading〜
ミ,,゚Д゚彡
HP / A
strength / A
vitality / B
agility / D
MP / H
magic power / H
magic speed / E
magic registence / D
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474 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:26:12 ID:.DLLpjNY0
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異変は[都の軍]から始まった。
一人の兵士が、突如うずくまる。
「おい、大丈夫か?」
傍らにいた仲間への返事はなかった…。
兵士は自身の両肩を抱き、ガタガタと震えている。
「……おい?」
訝しげに覗きこむ顔。
邪にも思える覗かれた顔。
…まだ少し幼さを残す表情をした仲間は、たしかにそれを見た。
いまにも倒れ込むほどに膝をつく。
――口が裂け、だらしなく垂れ落ちる唾液を。
――薄く開いた瞼から射し込む、黄色の瞳を。
――肩に食い込ませた爪から滲み出る、赤いはずの黒い血液を。
《 ィ゙ ―― ォ 》
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475 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:32:14 ID:.DLLpjNY0
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そしてあがる、濁音の悲鳴。
(・ω・` ) 「…いまの音…」
ショボンの元にも微かにそれは届いた。
様子が窺えないが、常時に響くべき音ではない。
「…見てくるモナ?」
( ´・ω・) 「…」
火の手がさらに伸びる。
ショボンは少しだけ顎をあげると、眉をひそめてこう言った。
(´・ω・`) 「……進軍は終わりだ。
全員この森から退避してくれ」
「モナっ?!」
(´・ω・`) 「来た道はできるだけ使うな。
戦闘も絶対にするな。
何が起きているのかも、確認する必要はなくなった」
モナーは汗をぬぐう。
素直には頷けず他の反応を窺うも、しかし騎士の半数は忠実に命令通り、素早く行動に移りだしていた。
とはいえ走り出してから…ショボンの言葉に首をかしげた者もいる。
まだ場に残る騎士たちに、ショボンは言葉を続けた。
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476 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:33:45 ID:.DLLpjNY0
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(´・ω・`) 「残るならば、命の保証はできない。
僕の軍師としての役目は、この言葉で終わりとする」
それきり、ショボンは軍に背を向けて歩き出してしまった。
なにかが鳴いた方角へと。
「……な、なあ、どうする?」
「どうって…」
「おいおい! 自分だけさっさと逃げるのか?!」
慨嘆の声にも、ショボンは振り返らない。
「……」
「なんなんだよ、一体…」
間もなくショボンは去った。
――残された戸惑い。
人として、唐突なショボンの態度の変化に文句の一つでも言いたくなるのは当然だった。
「…モナ」
短すぎた一連のやり取りの間、モナーも動けなかった。
なぜショボンは急にそんなことを言い出したのだろうかと、その意味を探るが…
いまはただ、紅く染まる茂みの奥へと消えていった彼を見て、茫然とするしかない。
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477 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:36:23 ID:.DLLpjNY0
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ショボンにとって…それはなんら進歩のない、いつかの行動と同じだった。
彼にしてみれば、ひとたび口にすれば己の義務は果たされ、後の判断責任は相手側にあるのだと未だに思っている。
「…やっぱり納得できないモナ」
「おっおい、モナーどこに行く!」
……言葉とは本来、受けとる側にも時間と理解が必要だ。
伝え、伝えられるために、人は常に心を労する。
その努力を怠る果ては、無差別な暴力と遜色ない。
待ち構えるは、ただただ心傷付く末路。
『ショボンか…。
思えば彼の未来観は、わしらとは違ったのかもしれないな』
『ふたごじまに住んでいたままであったなら決して知ることの無い知識や経験…わしらはそれを得た』
『新天地には未知があり、それを既知とするには自ら行動を起こさねばならない』
『待つだけでは駄目なのだ。
例えば信仰を棄て、代わりに何かを求めるように……
誰かに教えられずとも、わしらは手探りで生きてきた』
『辛いことも多かったが…楽しくもあった。
そしてショボンは今もずっと生きておる…』
『もし、お前が彼に出逢ったときはこう伝えておくれ…――』
モナーはそんな祖父の言葉を思い出しながら、ショボンを追い掛ける。
「軍師っ――いや、ショボンどの!
待つモナよーー!」
次いで消えたモナーの姿。
それを見送り、[空の軍]は撤退をはじめた。
……彼らにとっては幸か不幸か。
ショボンだけが感じ取ることのできた、
前方で産声をあげた脅威の片鱗に気付く能力は備わっていない。
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478 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:37:50 ID:.DLLpjNY0
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(´-ω-`) 「小さな波動だったけど…間違いない」
(´・ω・`)「蟻は…すべて潰す――」
紅模様の空の上。
太陽に偽装した眼球が卑しく見下ろしていたのを、ショボンは見逃していなかった。
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479 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:39:26 ID:.DLLpjNY0
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「ゴルルゥゥ…ッ!」
ミ;,,゚Д゚彡 「待って!! 皆どうしちゃったから?!」
[都の軍]は、まさに混乱の渦中。
人あらざる咆哮が隊列を貫いたかと思えば、
あっという間に "それ" は感染し、
兵たちの共喰いが炎を背景として繰り広げられている。
咀嚼音が地鳴りのように響く。
喰われたものから、喰うものへと変貌しては他の獲物に身体を預ける。
食まれた肉は容易く千切れ、赤子の口許のように脂を塗った。
わずかな緑を残していたはずの土壌すら、飛び交う血涙に背景を同化させていく。
餓鬼の住まう地獄、
その切り取り絵図――。
ナナシは昔、孤児院で読み聞かされたお伽噺のなかに、こんな風景をみた気がした。
「…ガ アグルゥゥゥ……」
ミ;,,゚Д゚彡
「ナ……ナ゙シぃぃ…っ」
ミ;,,゚Д゚彡
迷い、どうすることもできないナナシの前にも "それ" は立ち塞がった。
――腕には皮膚を塞いだはずの、ノコギリ刃の斬り痕。
今では痕の闇が広がり、わさわさと黒い粒子が灰のように舞い流れている。
「ナ…na≠ィ……
逃げ っロぉ」
ミ;,,゚Д゚彡 「!!」
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480 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:40:22 ID:.DLLpjNY0
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――気が付けば、ナナシは走っていた。
恐怖からではない。
正気にも聴こえた声に反応したのとも、また違う。
元は人であったはずの兵士達…
変貌し、怪物となった彼らであっても、
騎兵槍で根こそぎ薙ぎ倒す気にはなれなかった。
それだけならまだその場に留まり、呼び掛け、
事態の収拾に努められたかもしれない。
ハァッ
ハアッ
;,,゚Д゚
ハァッ
無数の朱一色の灯籠が残像となり、視界の外側へと融けていく。
それでも時々、振り向いてナナシは探した。
呪術師……そう呼ばれる森の民も護らなくてはならない。
[都の軍]としてここに来たのはそのためだったのだから。
だが、彼を突き動かした本当の理由は。
ミ゚Д゚,,;彡
ナナシが本能的に感じ取った、
『主の元に還らせてくれ』
という無味無臭の強烈なイメージ。
あの兵士の傷痕から湧き出る黒い粒子が放っていた、
この背中の騎兵槍へと向けられていた執着心。
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482 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:42:42 ID:.DLLpjNY0
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その後も彼の心を脅かす呻き声…それとも怨嗟の声だろうか。
数分、それとも数十分…。
ミ゚Д゚,,;彡
ミ;,,゚Д゚彡 ( …?! )
時間の経過が体感できなくなった頃、森に孤立したナナシの耳に轟きが飛び込んできた。
がむしゃらに走ったせいで、完全に方角を見失っている。
ただでさえ赤い森の構造は単純ではない。
土の起伏と、たびたび遮る樹木によって道が路を成していない。
ミ,,゚Д゚彡 「…!」
――突如としてふたたび動きだしたナナシの足。
彼の耳には、幻聴ではない誰かの声が聴こえた…。
爆炎。
ナナシの目の前で、ひときわ目立っていた巨木のひとつが頭から割れていく。
咆哮に混ざる聞き慣れた金属音が、
見えない腕としてナナシを引っぱるように連れていった。
ミ;,,>Д゚彡 「くッ…!」
周囲はますます紅く染まりつつある。
熱風はナナシの身体を締め付け、視界をぼやかす。
意思とは裏腹に揺らぐ脚をふんばり上げ、彼は走る。
枯れた葉が、頬を切り。
濡れた頬が…風を切り。
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483 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:43:49 ID:.DLLpjNY0
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風が――視界を切り拓く。
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484 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:46:50 ID:.DLLpjNY0
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( ω・` ) 「…」
血塗られた抜き身の得物を携えながら、
ショボンはその鈍色光る先端を見つめている。
軽く一振り…。
血糊が弾かれ、片刃の剣が露になった。
( ω・` ) 「実戦では初めてだったね、これを使うのは」
握るのは、"隕鉄" と呼ばれる鉱石から造られた刀。
時に山奥で… 時に砂浜で…
ショボンはひとつひとつ、小さな隕鉄をかき集め、
来たるべき戦いに備えていた。
細工をした職人が『天からの贈り物』とまで称した天然物質、隕鉄。
しかしその正体は、ショボンが三日月島でアサウルスと対峙したあの日、
ブーンを助けるために海の中で霧散した "蟻" やアサウルスそのものを原料としている。
(´・ω・`) 「剣としては最高の出来だ。
あの約束は面倒でも、モナーに苦労をかけた甲斐はあった…」
呟いて、辺りを見回す。
やがてその視線はある一点に注がれた。
(´・ω・`) 「蟻…、いや違う?」
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485 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:49:56 ID:.DLLpjNY0
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アサウルスの波動は感じない。
ガサガサと仰々しく…茂みが音をたてた。
やがて立ち現れたのは、今しがた斬り伏せ終えた黄色目をした蟻の軍兵ではなく、
瞳の奥に確かな意志を持つ、金色髪の青年。
ミ,,゚Д゚彡 「!」
葉を掻き分けてナナシが見たものは――足元に転がる[都の軍]兵士の累死体。
無傷の生存者の手には、灰色を浮かべた剣。
その鋭さと色は周囲の風景からも浮き、得たいの知れない不気味さを窺わせた。
自然かつ素早く、ナナシは背中の騎兵槍に手をかける。
対峙するショボン。
しかし慌てることなく、ゆったりとした動作で正面に向き直して剣を収めた。
(´・ω・`) 「まて。 君はあっち側の兵か?」
ミ,,゚Д゚彡 「?!」
敵意を感じられず、慌ててナナシも踏みとどまる。
(´・ω・`) 「争うつもりはない。
僕はいま森の民と、この状況を作った原因を探しているところなんだ」
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486 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:57:52 ID:.DLLpjNY0
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…金色の青年はナナシと名乗り、呼応してショボンも名を告げる。
慎重に言葉を選び、
[空の軍]につい先ほどまで所属していたこと…
事態を鑑みた上で立場を捨て、単身ここにいることを話した。
ミ,,゚Д゚彡
ナナシは硬直し、聞いているのかいないのか判別しかねる反応を示す。
――だがショボンが次いで状況を伝えようとした瞬間、
ひどく興奮した様子で駆け寄ってきた。
ナナシの手には騎兵槍。
切っ先はこちらに向いていない。
敵意は感じられずとも思わず怯み、手で制し、理由を訊く。
(´・ω・`;) 「まて! どうしたっていうんだ」
ミ,,゚Д゚彡 「やっと逢えた!」
ミ,,゚Д゚彡 「しぃが、貴方を捜してるから!!」
(´・ω・`;) 「――!」
(推奨BGM:A return indeed (piano ver.)
https://youtu.be/jPT4hh9BesE
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487 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 20:58:55 ID:.DLLpjNY0
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しぃ。
……ショボンにとって、懐かしい名前だった。
当然、それほどの時間を置き去っていたわけではない。
(´・ω・`) 「……」
だが、彼女の元に戻るつもりは毛頭ない。
戻れない。
(´-ω-`) 「……」
(´・ω・`) 「…君は、しぃの何なんだい?」
ミ,,゚Д゚彡 「ナナシはしぃの幼馴染みだから!
しぃに頼まれて、ショボンを捜し回っていたから」
いまここに居るのも、ショボンを見つけるためだったと彼は言う。
しぃが無事でいること…
戦場外れの孤児院で子供を産んだこと…
その後は彼の故郷に住まいを移したこと…
嬉しそうに…ナナシの口から、伴侶のいまの姿が楽譜に並ぶ音のように流れてくる。
(´・ω・`) 「そうか…」
ショボンは思う。
子供の名前はどうしたのだろう?
これからしぃが立派に子を育て上げることが出来るならば、
不死である自分がいずれ出逢う時が来るかもしれない…。
ミ,,゚Д゚彡 「ショボン、二人で一緒に帰ろう!」
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488 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:00:23 ID:.DLLpjNY0
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………しかしショボンは答えない。
最初の言葉以外には、何も質問もしなかった。
しぃの話を聞くにつれ、
アサウルスに縛られていた人生観…その胸中に差し色渦巻く感覚。
心地好くも浮き足立ち、落ち着けなくなる感情が、何処からともなく湧くのだ。
当時もいまと同じ思いに襲われていたことに、このとき気付かされる。
(´・ω・`) 「…僕には捜し物があってね。
過去の失態を取り戻している最中なのさ」
……しぃと繋がりをもったのも、
子を産んだ不死者の話を聞いて興味をもったからに過ぎない。
彼女とどこで出逢ったのかすら、思い出せない。
(´・ω・`) 「もしかすると、この森は当たりなんだ。
だから…僕がなんとかしなきゃ」
……しぃと共に過ごした時間を忘れたのではない。
記憶に薄いのだ。
とはいえ愛ではなく情くらいはあったのだろう。
彼女を選んだのは――縁、ただそれだけ。
そう、それだけのつもりだ。
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489 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:01:46 ID:.DLLpjNY0
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(´・ω・`) 「すべてが終わったら帰ろうとは思っている。
…森を出たら、しぃにそう伝えてくれないかな?」
ミ,,゚Д゚彡 「家族を置いてまでやらなきゃいけないことが、この世にあるの?」
(´・ω・`)
それだけだと…
ひとり思い込んでいただけだった。
ミ,,゚Д゚彡
そして、ナナシは察している。
ショボンは戻らないのではないかと。
(´・ω・`)
ショボンが帰らなければ、しぃの子供は父親を得られない。
孤児であるナナシにとって――どこかに存在するはずの両親。
名も顔も知らぬ二人は、ナナシの深い深い記憶の底で、能面をかぶり眠っている。
何事もない日常… 戦場を駆ける瞬間…
それはまるで泡のように突如浮かんでは、残滓も残さず消えていくのだ。
だから、いつかはその面を外し、自分の本当の名前を呼んでくれるのではないかと…
ナナシは心のどこかで期待している。
子の傍に居られない親とは、果たしてどんな事情があるのか。
子を捨てる親とは、どんな気持ちなのか。
ミ,,゚Д゚彡 「しぃの子は、ショボンの子だよね?」
ミ,,゚Д゚彡 「なのに逢いたくない…から?」
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490 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:10:47 ID:.DLLpjNY0
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ナナシも、しぃも、孤児院にいた他の子供も、皆一度は大人に尋ねたことがある。
『どうしてぼくにはママがいないの?』
『なんでパパはわたしに会いに来てくれないの?』
決まって、大人達は誰もが微笑み、
『パパやママはね、すこし忙しいだけなの。
居ないからって泣いていたら、心配しちゃうでしょう?
……だから、皆いい子で待っていようね』
と、言った。
(´・ω・`) 「だからだよ。
巻き込みたくないんだ、僕の過失に」
ミ,,゚Д゚彡 「…」
(´・ω・`) 「納得できない、か。
…君にも、なにか理由があるのかな?」
ナナシの顔は動かない。
周囲の炎がまた動き出す。
…まるで意志をもっているかのように。
( ´・ω・) ( 親、か… )
ショボンも実の親の顔を知らない。
シャキンとの命の譲り合いを経て、物心付く以前に衰弱して母は亡くなったらしい。
父に至っては後追い自死だったと、後に知った。
とはいえ兄者や弟者、ロマネスク爺、デレとミセリ……様々な大人が、彼には付いて回っていた。
ショボンにとってはそれで充分満たされていたのだ。
(´・ω・`) 「いいだろう。
望んで成った傭兵ならば、相応の覚悟も自然とできているんだろうしね」
ミ,,゚Д゚彡 「一緒に帰ってくれる?」
(´・ω・`) 「その前に聞いてくれ…この世界にはアサウルスという怪物がいる。
人の身も心も喰い尽くす蟻を従える……――
(BGMおわり)
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491 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:11:58 ID:.DLLpjNY0
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その話は毎日の平和を享受し、
穏やかに生涯を終える者達には理解できないであろう、荒唐無稽な物語の一欠片。
だが現に、蟻による感染はナナシも先程まで目にした光景だ。
素直にショボンの言葉を信じることができる。
ミ;,,゚Д゚彡 「……いつかは大陸中にも?」
(´・ω・`) 「その可能性はすでに現実になってしまった。
この炎も強くなるにつれて、微かな波動を感じずにはいられない」
結果、どちらの陣営でも同じ状況が発生している。
ショボンとしては、森の民がもはや蟻なのか…
蟻が無差別に仕掛けたせいで、たまたまこの森が失われていくのかも確かめたい。
ミ,,゚Д゚彡 「どうすればいい?
肝心の森の民も見付かってないし…」
(´・ω・`) 「僕の通ったルートにも居なかった。
…ということは答えは単純」
(´・ω・`) 「まだ誰も通ってない場所にいる。 単純明快だ」
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492 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:12:58 ID:.DLLpjNY0
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ショボンの所属する[空の軍]は、
大陸を迂回するように北から攻め込んできている。
対してナナシの所属する[都の軍]は南側から森に入った。
進軍ルートは南北に直進。
森内部の性質によって若干のブレを計算しても、
両軍とも大きく大陸外側へは外れないように指示されていることが、ナナシの話を加えて判明した。
ミ,,゚Д゚彡 「ということは、東寄りを捜せば――」
(´・ω・`) 「違う、恐らくは西寄りだ。
君らは名目上、森の民を守るためにここへ来たんだろう?」
(´・ω・`) 「だったら西寄りの方が可能性がある。
普通なら細かな進軍ルートを、内側だの外側だので現場にいない者が決めやしない」
ショボンは何度目かの空を見上げ、方角を確認する。
……一瞬だが、しかめ面を隠しきれなかったのを、ナナシは見ただろうか。
(´・ω・`) (知っていたんだ、"二人の女王" は。
森の民がいざとなればどこに逃げ隠れるのかを…)
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493 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:14:11 ID:.DLLpjNY0
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『 !!』
――遠くに聞こえる叫びの直後、
全ての酸素をマントルの下から引っこ抜くかのような大きく短い音が轟き、
なにかを引き裂くような赤い津波が天高く地走るのを、二人は見た。
炎の壁が天を貫き、逆流する橙が森を深紅に染める。
「あっちだ!」 三 ´・ω・)
三 ,,゚Д゚彡 「うん!」
日が暮れるにしたがい、明らかに変わる森の雰囲気。
ショボンの動きは速かった。
ナナシも決して鈍足ではないが、
この短時間で何度ショボンを見失いそうになったか分からない。
《大陸に――を呼ぶ―――族め!
我―が王と、――ショボンの名において
皆殺しに―――――!!》
分厚い炎と木々の向こう。
途切れ途切れの叫びが聴こえた。
地鳴り響く、違和感を残す "割れたような音" 。
三 ;,,゚Д゚彡 「……?? なんの音だから」
三 ´・ω・) 「擬態音だ。
こうして離れて聴くとよく判るな…」
三 `・ω・) 「…しかも好き勝手なことを言ってくれる」
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494 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:15:14 ID:.DLLpjNY0
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アサウルスはもちろんのこと。
ショボンが探していた蟻も、蟻に感染し尖兵となった人間も、
本来まともに人語を喋ることは出来ない。
宿主の声帯と知識をほんの少し利用して、それらしく喋るのが関の山だ。
三 ;`・ω・) ( 擦り付ける気か?! 僕とクーに、この事件を… )
三 ;`・ω・) ( …いや、下手をすれば―― )
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495 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:16:23 ID:.DLLpjNY0
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赤い森への侵略命令は、
――対外的には "王" であり、極一部の人間のみ知る事実としては "女王"――
から下されたもの。
森の民が利用するであろう隠れ場への誘導も、女王から下されたもの。
[空の軍]……クーの軍。
[都の軍]……敵対する女王の軍
`・ω・) ( 僕がここにいるのは、アサウルスの蟻を探してのことだ。
ハインの伝言以外、クーには話していない )
`・ω・) ( ならばクーは何故、森の民を狙った?
どうして…呪術師を巻き込んだんだ? )
思考の最中。
眼前に迫っていた焔の枝を、首を捻って躱す。
《ゥガァアーーッ!》
転がった丸太を飛び越えつつ、帯熱する岩を踏み台に跳躍すると
茂みの奥から、ショボンを追うように人の形をしたものが飛び出してきた。
黒い首輪、そして黄色の瞳を一瞥するなり腰元からの一閃。
牙剥き出しの口が限界以上に裂けると、蟻と化した騎士はその身から脳と眼球を切り離される。
;,,゚Д゚彡 「ショボン!」
`・ω・) 「分別している! 人なら殺さないさ」
心配とは別の答え。
判断の良さに驚いての咄嗟の呼び掛けではあったが、
それがむしろショボンに対する信用にも繋がろうとしている。
ナナシにとって、人を殺さない戦士が自分以外にもいるのだと。
…ショボンとしては、単にモナーとの約束を果たしているに過ぎないのだが。
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496 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:24:04 ID:.DLLpjNY0
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――呪術師たちの死に場所――
二人が次に足を止めたのは、もはや人の立つ場ではなくなった惨状の跡…。
息を切らせた不死者と青年。
(;`・ω・´) 「…民すら標的か、アサウルス」
周囲を炎でぐるりと囲まれた広場には、紅と碧の和服に身を包んだ人々。
大人だけでなく、まだ幼い者もいた。
/,, ∀;;;)
翠色の礼服に身を包む父親らしき男の下敷きになった子供が、ナナシにもわずかに見えた。
血にまみれ、辛うじて原形を保ちつつも
その顔は獣に食むられ歪に欠けてしまっている。
誰も彼もが血の池に溺れ、例外なく身を千切られ…
噴血した赤水を啜る蟻だけが、ギラリとこちらを向いた。
三 ;`・ω・´) 「くそ!」
ミ#,,゚Д゚彡 「だあああっ!!」
得物を握り、地を蹴る二人。
神速を誇るショボンと、ナナシの騎兵槍の先端が同じ位置を陣取った時。
蟻が獲物から手を離し、新しくやって来たエサにその牙をカチカチ鳴らした時。
"彼女" は空から降ってきた。
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497 名前: ◆3sLRFBYImM[] 投稿日:2015/06/07(日) 21:27:19 ID:.DLLpjNY0
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〜now roading〜
( ´∀`)
HP / B
strength / C
vitality / D
agility / E
MP / G
magic power / D
magic speed / D
magic registence / E
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