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279 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:04:14 ID:upfhhKc.0
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敵から振り下ろされた己の武器が、己の頭上を掠めていく煩わしさ。
(;/;`"ハ´) 「ぐうっ!」
反撃にまっすぐ突き出した峨嵋刺は、大きく屈んだポイズンの髪を僅かに引きちぎるのみ。
次の瞬間、空いた脇腹に響く衝撃。
思わずシナーはたたらを踏むも、転ぶ。
そして濃い影がシナーを覆い尽くした。
('A`)「アサピーだのなんだの…殺すのに誰かなんて関係ねえ」
(;/;`"ハ´) 「…」
見下ろしたその顔はつまらなそうで…しかしどこか嘲笑っている気がする。
もしかしたら怒りを孕んでいるのかもしれない。
(;/;`"ハ´) 「…」
── わからない。
人が誰しも持つはずの "氣" が無いのだ、ポイズンには。
だから老師にはその男の動きも、思考も、感情も、何一つ読みきれない。
('A`)「てめーに命令される筋合いもねー」
唯一ポイズンの声から、それが本気であることだけは感じ取れる。
…見た目は20代の若造から、自身より遥かに長く生を明かしたかの如き超然感に気圧される。
"('Д`#)「餓鬼がでしゃばるな! 失せろ!」
::(;/;`"ハ´ii):: ビクッ
── ポイズンの恫喝に、80年近く戦士を自負していたシナーが人生ではじめて慄いた。
尻餅をつき、無意識ながら腕の力でじたばたと退く姿は滑稽で…
まるでカラクリ人形が音に反応するかのようにカタカタと。
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280 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:04:56 ID:upfhhKc.0
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ハアッ、ハアッ、ハアッ…ハアッ……
自身の息遣いが、耳元で爆竹でも鳴らしているのかと錯覚するほど大きく痺れる。
久しくなかった己の命の危機。
有言実行の気概、無感情に人を死せる殺意が目の前にそそり立つ。
怪我をしているだけで、こんなにも身体は言うことを聞いてくれないのかと魂が縮み上がった。
いつの間にか安全圏で生きていたことを嫌でも思い知る瞬間が、ついにシナーにもやってきてしまったのだ…。
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281 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:05:50 ID:upfhhKc.0
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('A`#)
('A` )「…なんてな」
「ひひひ!」と、書物の頁をめくる気軽さでガラリと雰囲気を変えたポイズンは踵を返し、シナー達に背を向け悠然と壁際に歩いてゆく。
( )「ジジイの今の姿をみても」
( 'A)「…御師様ぁ〜ってか?」
(;/;`"ハ´) 「?」
ひととき、シナーにはそれが何のことか分からなかった。
…だがポイズンが壁に身を預けて座り込むと、弾かれたように真横を向いて…その意味に気が付いた。
<ヽ`∀´> ('A`)
(;/;`"ハ´)
ポイズンを見上げた時よりも高い位置にその顔があった。
<ヽ`∀´> 「それ以上はウリが相手ニダ」
…不出来な自慢の弟子。
甘えを捨てるべく、いつの日か父と呼ぶことを禁じた最後の息子。
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282 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:06:43 ID:upfhhKc.0
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('A`人) - ☆「いいねぇ〜、カッコイー」
=⊂('A` ) 「ほっ」
(;/;`"ハ´ii) 「!」
ぱちぱちと小馬鹿に手のひらを叩く様子から一転、ポイズンの不意打ち。
音よりも速い峨嵋刺の光線が。
《カラン…ッ》
/'∩
<ヽ`∀´> ⊂('A` )
∪,/
果たしてシナーを貫くことはない。
その眼前で方向を変え、力なく宙を舞う。
…ニダーの炭素鋼がそれを阻んだのだ。
('A` )「…やるじゃん」
点の攻撃を線で防ぐのは易くない。
むしろ非効率的でもあるその手段は、しかしそれ以外の得物を携帯しないニダーにとって唯一ともなる。
<ヽ`∀´>「あくまで御師を狙うニダか?」
('A`)「あー、んじゃこっちでいいわ」
( Γ ∀"↑ii)「!」
次にポイズンは逆腕を振るった。
間近で横たわるアサピーの鼻先三寸で
《ギャリン──ッ》
…不快な金属音が木霊する。
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283 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:07:28 ID:upfhhKc.0
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<ヽ`∀´>つ 「させないニダ」
今度は峨嵋刺同士の衝突。
ポイズンの意図を読み切り、守りに徹する風水師。
(;/;`"ハ´) 「ニダー……」
( Г ∀↑ ) 「……」
"б('A`)「ん〜??」
ポイズンの心は煮え切らない。
ニダーは構えるもののそこから動く気配が無い。
純粋な意味での戦闘を行っていないとはいえ、ポイズンにはそれが納得いかない。
なにをまどろっこしいことをしているのか?
これほどの腕があるならば、果敢に攻めてきても良さそうなものを。
まるで時間稼ぎだ。
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284 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:08:11 ID:upfhhKc.0
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『アサピーを殺すんだろう?
それは構わん…だが少し待て』
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285 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:08:57 ID:upfhhKc.0
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('A`)
あぁ…と、
誰にも聴こえない吐息が漏れた。
('A`)「…面白くねぇ」
ポイズンは勘が良い。
だから想像する経過は違えど、予想した結果は同じだろう。
これは自己満足。 理解されない美徳。
そう考えながら、胸元のタバコを取り出そうとして…湖に漬かると消失したいつかの過去の現象を思い出し、吸うのを諦めた。
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286 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:10:00 ID:upfhhKc.0
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('A`)「おい」
<ヽ`∀´> 「…?」
('A`)「シナーが死ぬのは嫌か?」
<ヽ`∀´> 「嫌ニダ」
答えははっきりしている。
誰しも目の前で親が死ぬことを望みはしない。
('A`)「アサピーが死ぬのは?」
<ヽ`∀´> 「嫌ニダ…けど」
('A`)「この姿じゃ仕方ねえから迷ってる、か?」
<ヽ`∀´> 「…元に戻れるならきっと大丈夫ニダ。
だからそれまでは……」
('A`)「俺が元に戻す方法を知ってるなら?」
Σ <ヽ;`∀´> 「ほ── 本当ニダか?!」
('A`)「さっきみた通り、ダメージを与えることもできるんだから元に戻せたって不思議じゃねえだろ?」
「不死の仕組みがわかってりゃどーってことねえ」と、ポイズンは痰を吐き捨てた。
今このときでなければ、
『掃除するのはウリなのに…』というニダーの声が聴こえなくもない。
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287 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:10:43 ID:upfhhKc.0
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('A`)「俺が死ぬのは?」
<ヽ`∀´> 「…」
<ヽ`∀´> 「二人にこれ以上危害を加えないなら、ドクも嫌いになれないニダ」
懸命に本音を語る人間は、観察力が落ちる。
真摯であればあるほど。
その時ポイズンの目付きが鋭くなったことを…ニダーは気付かなかった。
<ヽ`∀´> 「ウリがドクを救ったせいで、こんなところに来させてしまったのが気になっていたニダよ…
考えてみれば、君はただ巻き込まれただけニダ」
<ヽ`∀´> 「それに…ドクの眼は。
どこかウリに似ることがあったニダ」
('A`)「…」
お人好しの言葉は止まらない。
<ヽ`∀´> 「そうでなくとも、一度知り合った仲なら良くしたいと思うニダ。
アサピー殿も、御師も、根は悪く ──
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288 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:11:33 ID:upfhhKc.0
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('A`)「あーそーかい」
耳が腐りそうになり、思わず遮る。
ポイズンからの問いはそれっきり…。
そのまま静かにうつむき、目を閉じたまま動かなくなった。
親子二人はしばらく様子を窺うが、時間がただ流れるだけ。
<ヽ;`∀´> 「……??」
(;/;`"ハ´) 「……。
ニダー、奴にはもう敵意はないようだ」
震えの止まった身体を立たせながら、広間のある一点を目指して足を引きずり歩きだす。
(;/;`"ハ´) 「それよりも、そろそろきつねから荷物が届く。
迎えにいってくれ」
<ヽ`∀´> 「し、しかし…」
(;/;`"ハ´) 「こちらは気にするな。 往け」
そう背中で語るシナーの姿が、なんだか小さく見えた…そんな気がした。
不安げにポイズンを一瞥してから
── 彼は置き物のように動かないが ──
ニダーは広間を後にする。
何度も、何度も…振り向きながら。
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289 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:12:16 ID:upfhhKc.0
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('A`)
(;/;`"ハ´) 「…」
(↑∀"↑ii) 「…ハア…ハア」
…しばし沈黙が流れる。
ポイズンは目を瞑り、アサピーの視点は先程よりも定まっていない。
やがてシナーは目的地に屈み、その手にかつての友の面影を拾い上げた。
(;/;`"ハ´)つ-@@ 「かけておけ」
(↑∀"↑ii) 「…いらないよ、まだ眼は見えてる」
(;/;`"ハ´)つ-@@ 「これは頼みだ。
どうであれ、来たるべき末路のために」
(↑∀"↑ii)
@@-⊂(↑∀"↑ii)スッ
横たわりながら…アサピーは眼鏡を掛け直す。
するとどういうわけか、その心に平静が訪れた。
(ii@∀"@-) 「…」
(;/;`"ハ´) 「好」
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290 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:13:14 ID:upfhhKc.0
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シナーは緊張の意図が切れたのか、その場にがっくりと座り込んで話し始めた。
並んで向かうはポイズンの方角ではあるものの、声を掛けるのはあくまで友に向けて…
小弱々しく…静かな…しゃがれた会話。
(;/;`"ハ´) 「お前は本当に、一度たりとも隠居は考えなかったアルか?」
(ii-@"∀@) 「……そりゃあ任せられる者がいるなら任せたいと常に思っていたさ」
(;/;`"ハ´) 「お前の息子にやらせれば良かっただろう。
若い奴には未来がある。
行動力も可能性も、俺達より遥かに ──」
(ii-@"∀@) 「まだまだ経験が浅い…
それに、近年の仕事ぶりではダメだ。
だからこそ村に派遣していたのに…グッ」
(ii-@"∀@) 「ま、だだよ…私がやれる内は ──げほっげほっ!
……私が、やるさ」
(;/;`"ハ´) 「その身体でか?」
(ii-@"∀@) 「そのために君といた」
「俺はいらないんじゃなかったか?」
そう鼻で笑うと、喉の奥から鉄の味がした。
口内からは出さず、それを舌で押し返す。
そもそも何年前から同じことを言っているのかと、少し歳上の風水師は重く息を吐いた。
二人がバルケンを討ったのはアサピーの息子よりも若い年の頃…
サクラのみならず、色とりどりの花々が咲き乱れる季節だったはずだ。
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291 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:14:46 ID:upfhhKc.0
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(ii-@"∀@) 「だが、何十年も共にいて、どうやら信用しきれなかったんだなあ……」
人は死に近付くにつれ猜疑心が増長する。
鈍くなった脳神経の伝達を補うための防衛本能の一種であるとすれば、やはり死は孤独への一歩を着実に踏み出させるのだろう。
アサピーの場合はここ数年で特にそれが顕著になったものだと、屋形の誰もが感じている。
実の息子ですら彼の傀儡でしかない。
(;/;`"ハ´) 「この期に及んでまだ諦められないのか?」
…にも拘わらず。
それまでの功績と、まったく破綻したわけではない人格などから彼に強く進言できる者はいなかった。
したところで、シナーの言葉にも頭越しに否定的な場面がよくみられたのだから、それも当然と言える。
(ii-@"∀@) 「なら君は…諦めたからニダーを生かしたのか?」
(;/; "ハ ) 「………」
アサピーがシナーを信用しきれなかったのは、こさえた子を悉く死に追いやっていたからに他ならない。
厳しさを履き違えた戦士は加減を知らず、また愛の与えかたもわからないまま子に接していただけ。
それは人としてどこか欠落していたのではないかと、アサピーはシナーを評価していた。
彼もまた、真意を隠す人々と同じだった。
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292 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:15:39 ID:upfhhKc.0
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これ以上言えば余計に自分が意固地になることが分かって、シナーも口をつぐむ。
もっと早く、お互い提言しておけば良かったのかもしれない。
……もはやその年月は経ち過ぎた。
麒麟も老いれば駄馬に劣るる ──。
自然の摂理に逆らったがために、アサピーも、シナーも、どこかで引き際を誤ってしまった気がしてならない。
時計は朽ちる準備を始めている。
次に取り付けるための新しい時計が、同じように動いてくれる保障はないのだ。
(ii-@"∀@) 「ウォール高原を治める領主が世代交代したのは…いつか君に言ったか?」
こんな風に、アサピーとの会話は常に政り事を軸としていた気がする。
もっと人として、子をもつ親として、彼と語り合えることがあったのではないだろうか。
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293 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:16:35 ID:upfhhKc.0
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(;/;`"ハ´) 「…数年前、一度顔合わせにきたことがあったな」
(ii-@"∀@) 「そう。
見た目以上に血気盛んな若者だ。
あれ以来、視察の名目で少しずつこちらの領地を削りに来ている」
(ii-@"∀@) 「…息子の役目ではないのだ……矢面に立つのは私でなければならない」
(;/;`"ハ´) 「だからといって、ワカッテマスを利用したつもりだったか?」
対する返事はない…だが、そうなのだろう。
いつからかアサピーの中では手段と目的が刷り変わってしまうほど、欲望を越えた渇望に抗えなくなっていた。
(ii-@"∀@) 「シナー、私は」
(ii-@"∀@) 「…まだ生きたいんだ。 どんな手を使ってもね」
(;/;`"ハ´) 「…」
(ii-@"д@) 「── げほっげほっ」
(;/;`"ハ´) 「…己の身体を労われない奴が言って良いセリフではないな。
……もう、俺も同じだろうが」
('A`) 「あーだめだ待てねえ」
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294 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:17:40 ID:upfhhKc.0
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シナーとアサピーが意識したとき、
いつしかポイズンは立ち上がっていた。
老いぼれ二人の時世の句…
それを求めたのはシナーであり、アサピーも薄々は気が付いていたのかもしれない。
生きたくとも、生きられない者がいる。
どれだけ求めても手に入らない物が、この世には絶対的に存在することも。
(ii-@"∀@) 「ワカッテマスを引き入れた時点で、お前が此処に来ることも運命として決まっていたのだろうか?」
('A`)「どーだろうなあ〜」
(;/;`"ハ´) 「まったく……最後の最後で余計なことをしたものだ。
アサピー、奴の次はお前アルよ」
彼らも立ち上がり、そして対峙する。
誰一人として思想や目的は一致していない。
だが…生きるために。
('A`)「せいぜい育んだ友情にすがりな」
それでも……生きるために ──
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295 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:18:31 ID:upfhhKc.0
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なんてな、ふひひ。
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296 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:19:18 ID:upfhhKc.0
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(推奨BGM:A Return, Indeed... (Vocal Version)
http://www.youtube.com/watch?v=p77DfHa2Ndo&sns=em
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297 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:22:29 ID:upfhhKc.0
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ドタドタと…長い廊下のどこにいても響くほどの足音が3つ、広間へと近付いてくた。
広間を隔てる布の幕が盛大にめくられる。
<ヽ;`∀´> 「御しっ ──
<ヽ;゚∀゚> ──!!」
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298 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:23:20 ID:upfhhKc.0
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その肩に、めくられた幕の一部がパサリと降りかけられた。
ニダーの身体はそこで一切の活動を停止する。
足も、手も、胸の鼓動も、開いた口も…
視線すら硬直し、その身を伝う涙だけが一筋こぼれ落ちるのを見たものは居ない。
ハハ ロ -ロ)ハ 「ニダーさ…ッ」
ホークアイ破壊と荷物輸送を任された女も息を呑む。
ニダーの後ろから声をかけた彼女の鼻孔をくすぐったのは…腐臭。
それは彼女が生業上で嗅ぎ馴れた血の臭いよりも更によく知る、内臓や消化気管を傷付けた際に発される臭気と同じだった。
⊂ハハ ;ロ -ロ)ハ 「……そこデお待ちクダサイ」
ハローが "背後" に制止の声をかけ、歩を進めた。
努めて冷静に状況を把握しようとするも、その惨劇が覆らないことは明白に過ぎる。
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299 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:24:07 ID:upfhhKc.0
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<ヽ;∀;> 「……ぁ…ぉ、あ……」
がっくりと膝をつく若人…。
横たわる二体の首なし死体。
ハハ ;ロ -ロ)ハ 「…」
むせ返る血生臭さよりも、その場を支配するニダーの嗚咽だけがハローの頭のなかを延々と巡りめぐった。
一通り死体をまさぐってみたものの、やはりシナーとアサピーの身体的特徴に相違ない。
忍である彼女の今の雇い主はシナーであったため、こうなってしまっては任務終了の旨を報告すべく忍の里まで戻らねばならない。
「きつね、もう入っていいかい?」
広間の前…荷物から声が上がった。
── その声は若き日の
アサピーによく似ている ──
少しだけ悩みながらニダーを見るも、現実に打ちのめされた者から返事を得られないため、ハローは独断で肯定しておいた。
……隠し様など無いのだから、そうするしかなかっただけなのだが。
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300 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:25:18 ID:upfhhKc.0
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( ・∀・) 「…」
ハハ ロ -ロ)ハ 「モララー様、オ気を確かに」
入室した三人目…ハローが輸送してきた荷物とはアサピーの息子を指した。
彼はもはや肉塊と化した父の姿をただ呆然と眺める。
( ・∀・) 「いや、僕は平気だよ」
シナーの指示通りホークアイの破壊に向かったハロー…それは領地内に張り巡らされたものも含まれていた。
父からは屋形を与えられず、言われた通りに周辺地域の村々を転々とするだけの傀儡。
それがアサピーからの、息子への評価…。
( - ∀ - )
( ・∀・) 「…公務の引き継ぎを行う。
すまないけれど、里に帰る前に一仕事頼まれてくれないかな?」
ハハ ロ -ロ)ハ 「わかりマシタ」
だがそれはホークアイの "誤った映像" により植え付けられた、不当な評価を多分に含めたものだ。
本来、モララーは父に似た才覚をもつことを…アサピーの胸には届くことがないままだった。
<ヽ;∀;> 「うぅぅぅ〜………」
( ・∀・) 「ニダー」
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301 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:26:31 ID:upfhhKc.0
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少しだけ歳上のモララーの手のひらが、がっしりとした風水師の肩に乗せられる。
( ・∀・) 「これが父と、シナーさんの末路であるならば、まずは甘んじて受け止めよう」
<ヽ;∀;> 「…ぅ……」
( ・∀・) 「これから忙しくなる。
領地内の統括も、ウォール高原の領主との駆け引きも、きっと僕だけじゃ無理だ」
バルケンの背中をみて育ったアサピーは
父のように決してなるまいと誓い、
自らの手を汚してまで名君を目指した。
( ・∀・) 「だから……君の力を貸してくれないか?」
( ・∀・) 「シナーさんが、僕の父に尽力してくれたように」
アサピーの背中をみて育ったモララーは
父のように名君たれと憧れ、
自らの手をこれから汚していくのだろうか。
<ヽ;∀;> 「……」
<ヽう∀;> グイッ
( ・∀・) 「そして、いつか二人でこの仇を討とう。
たとえ父の最後が誉められたものではなかったとしても、僕の誇りは父であり、君の誇りはシナーさんだった」
<ヽう∀´> 「…そう、ニダね」
ハハ ロ -ロ)ハ 「…」
<ヽ゚∀゚> 「ドク……赦さないニダ」
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302 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:27:49 ID:upfhhKc.0
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── 刻は一週間後。
街道のない路をひたすら歩き続け、
彼はいま高原の丘を登っていく。
('A`)「〜♪」
上機嫌な様子で振り回すその手には、
何重にも巻く布に納められた首が二つ。
('A`)「…ひひ!」
月明かりの下、 ──彼は独り。
('A`)「………」
── 草木茂る丘の上で、独り。
('A`)「… 〜〜♪」
── 鼻唄の音だけが、哀しそうに。
('∀`)「〜♪」
── ポイズンだけが、嬉しそうに笑う。
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303 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:28:43 ID:upfhhKc.0
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《…寄せては返す波》
('A`)「…〜♪」
《…必ず訪れる朝と夜》
('A`)「……あんだっけか…?」
('A`)「〜…♪」
《…貴方の優しさで
頬がぬくもりに満たされても》
('A`)「…ぷっ」
('A`)「〜〜…〜〜♪」
《…幸せな時の中で震えている》
('A`)「…」
《それでもいつかはきっと… ──》
('A`)「… ──ひひ、」
('∀`)「 ふひ、ひひひひひ…!」
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304 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:30:15 ID:upfhhKc.0
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「…いつか、なんて
来やしねえよ」
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305 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:31:01 ID:upfhhKc.0
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306 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:32:00 ID:upfhhKc.0
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夜が明けて…。
ウォール高原を治める領主の元には
二つの御首級が届けられた。
差出人は名乗らず、
特に領主への面会も求めなかった。
ただ一言、
『ここに瞳孔の大きな男が来ただろう?』
と質問をして、その姿を消したという。
問われた兵士は述懐する。
守秘義務により回答は差し控えたものの、
その男の眼光の前では
表情まで偽ることは出来なかった、と。
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307 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:32:58 ID:upfhhKc.0
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かつて山人と呼ばれた男は孤独を探す。
孤独でなければ戦えない男。
誰かを誰を 誰のため誰が 誰に向け
護る、庇う、救う、 赦す、求める?
莫迦莫迦しい。 ──五月蝿い。
そんなものは家畜の餌にも成りはしない。
《山人、どこや?》
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308 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:34:10 ID:upfhhKc.0
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('A`)y-~
「逃がさねえよ……ふっひひ」
A`)y-~
「ワカッテマスの野郎が目をつけるなら、恐らくは」
)σ ⌒ 、 ピンッ
不死者の行く先、争いの跡在りて──
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309 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/10/20(月) 19:35:06 ID:upfhhKc.0
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《なあ山人》
それでもいつかはきっと
闇に光が生まれ
《うたうとぅてくれ》
悲しみのなかにきっと
微笑みが生まれるはず
《そう、それや》
それでもどこかできっと
闇に心が生まれ
悲しみのなかに必ず
《くすす、下手やなぁ》
本当が生まれるはず
あなたはいつか帰ってくるから…
《山人、たのむ》
あなたはいつか
帰ってくるから…
《山人とまた…遊びたいなあ》
(了)