( ^ω^)千年の夢のようです

( <●><●>):人形達のパレード

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673 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:38:56 ID:KNwPg9/o0


ぐるりぐるりと空を舞い、つがいと見間違う二匹の鳥を見上げながら…こうして広大な湖を前に立ち尽くすのにも飽きてきた。

そう思いながら、よくよく考え直す。
自分の人生に飽いていない時がどれほどあったのかを。


('A`)y-~  :……こねえじゃん:


足元の砂浜にはタバコの吸い殻が散乱している。
"ポイズン" がここに辿り着いてから丸一日経過した。


ワカッテマスの情報に誘われてやっては来たが、言った当人が姿を現さない。
女王の影すら見当たらない。

連れ添って歩くのはゴメンだが、待たされるのも性に合わない。


『……女王は無駄を好まない方と聞きます。
ならば、その湖には何かあるのかもしれませんね』

('A`)y-~  :女王様の隙ねえ〜…見つかるかあ?:


"ポイズン" はまだ半分ほど残るタバコを
足元に ーー は落とさず、湖に投げ捨てる。
空気抵抗が存在しないかのように大きく弧を描いた。


…女子供が関わる事はどうも頭が働かない。
どーせなんもねえ、戻ってワカッテマスの実験場でも荒らしてまたどこかに行こう…


そう思いながら、
水面に触れたタバコが湖の底に向かって沈んでいくのを見やりつつ踵を返す。


('A`)  :んー:


.

674 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:40:02 ID:KNwPg9/o0

その場でさらに踵を返した。
視線も身体も、元の通り湖へと向く。


('A`)  :なんで沈むんだよ、タバコがよぉ?:


彼は学があるわけではないが、違和感には敏感だった。
ピピィー!と空から鳥が相づちをうつように一鳴きする。


('A`)  :うるせえ:


"ポイズン" は無造作にガンアクスを頭上に振り上げトリガーをひく。
響き渡る重い発砲音。


気まぐれの行動は、あの時ワカッテマスの背中に感じたちぐはぐさと同じように。
ーー そして、ワカッテマスの策略通り
彼の意識は湖へと注がれる。


砂浜を踏みしめるブーツが
銃弾によって墜落した鳥を踏み潰す事も気に止めず…一歩一歩、湖へと近付いていく。


空ではもう一羽の鳥が、
興奮するように翼を小さくはためかせた。

675 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:40:46 ID:KNwPg9/o0

湖を囲う塀の上から、タバコが沈んだ辺りを覗き込む。

そして胸元からタバコをもう一本取り出すと、今度は目の前で水面に落とす。


('A`)  :こりゃあ沈んだんじゃねえな:


彼の目には、タバコが熔けるように消失したように見える。

それは酸や熱によって削り消えるものではなく、文字通り水面に触れた部分からの消失。

    そしてゾワゾワと背中を走る神経の痙攣。


"ポイズン" は、しゃがみ込んでいた体勢から脚のバネを利用し大きく跳び上がった。
ーー 彼の居た場所を闇の炎が闊歩する。


('A`)  :やっと来やがったのか:

676 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:42:37 ID:KNwPg9/o0

( <●><●>) 「……どうも遅くなりました」

('A`)  :なんか…明るいうちからお前の姿を見るの初めてだな:


【シャドウ】を放たれた事は気に止めず、
空を見上げながら分厚い雲に覆われた太陽の下で砂浜に着地する。

ワカッテマスはいつも夜にならないと "ポイズン" の前には現れなかったのに。


( <●><●>) 「……そうですね。
ところで何か分かりましたか?」


膝下まで隠す長いコートを纏い、スタスタと無防備に "ポイズン" の隣へと並ぶ。


('A`)  :てめーで確認しろよ:


気に止めていない訳ではない、
彼は確実にやり返したかっただけだ。

ーー 鳥を撃ち落としたまま握りっぱなしのガンアクスを、ワカッテマスに向けて発砲する。


ビクンと震えたワカッテマスの背後に飛び散るコートの灰塵と焼けた肉片が、一足先に別れを告げる。
スローモーションのように続いて吹き飛んだワカッテマスは、

しかし笑みを浮かべてハッキリと ーー

677 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:43:27 ID:KNwPg9/o0



  「貴方も確認しまショウよお〜」


.

678 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:44:40 ID:KNwPg9/o0

(;'A`)  :あぁ!?:


何故か ーー 何故か "ポイズン" の身体が突然引っ張られる。
その勢いはガンアクスの弾丸が生み出した衝撃そのものだ。

二人の身体は地を離れ無様に宙を舞い、湖へと放られてゆく。


強制的に揺さぶられる視界の中、 "ポイズン" は見た。

先程より近くを飛んでいるのか…
大きくなった鳥と散りゆく雲、
天に広がる水面、
虚空を見つめるワカッテマスの顔、

そして…己の足に巻き付けられた闇の鎖。


(;'A`)  :ふひ…野郎、さっきの魔法はまさか ーー !:


【シャドウ】に隠されたもう一つの魔法。
ワカッテマスの腕から淡く蠢く赤黒い糸…

それに繋がれた自分の足に苛立ち、その足ごと切断しようと自身の勘を頼りにガンアクスを構えた瞬間、
ーー 凶悪を冠る突風が吹き荒れ
"ポイズン" をキリモミ状に再上昇させる。

( ((;、∀,))  :ぐおおおっ!?:

空中でこれに抵抗する術はない。
もはや目を開けていられない程の旋風が襲い掛かっている。

679 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:45:35 ID:KNwPg9/o0

まるで鉄の塊が降ってきたように

      (;'A`))・、"  :ガッはあっ:

ーー ッダン! と、
砂浜に背中全面を叩きつけられ
肺の中にある酸素から内蔵までをまとめて吐き出した…ような気がした。


ゲボゲボと下劣な音を隠さずたてる "ポイズン" の横に、空を飛んでいた鳥が寄り添うように降り立つ。


…だが大地に立つそれを鳥と呼ぶにはあまりに違いすぎた。

倒れ込んだ "ポイズン" と比べると4倍近く体躯の差があり、四本足から伸びる爪は太く逞しい。
体毛は刺さりそうなほどに鋭く毛羽立ち、
なによりその大きさを際立たせているのは巨大かつ強大な翼…


:グォォォァァアァッッ!!:

(;'A`)  :ごポォッ ーー かっ…
や…っぱりお前か、グリガン:


数百年を生きる百獣の乱入は、
ワカッテマスの闇の鎖を容易く引き千切り
"ポイズン" の落下を結果として救った。


(;'A`),"・  :くそ、いてえ… ゲフッいてえよ〜:


その代わり受けたダメージは相当なものだ…
"ポイズン" だからこそグリガンも荒々しく吹き飛ばしたのだろうが。

680 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:47:34 ID:KNwPg9/o0

自分の意思とは無関係に咳き込む身体を無理矢理起こしながら、 "ポイズン" は湖へと視線を移す。

ワカッテマスの姿はなく、水面には異物が入ったことを知らせる波紋だけが残っている。


('A`)  :アイツは…あの中か:

( <●><●>) 「……どうも遅くなりました」


不覚にも心臓が跳ねた。
あわてて振り向くと、そこにはさっきと同じ台詞で現れたワカッテマスの姿。

ーー しかも、




( <●><●( <●><●( <●><●>)
      ( <●><●>) ●><●>) ●><●>)



(;'A`)



(;'A`)  :そうか…泥人形ってことか:

681 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:49:01 ID:KNwPg9/o0

六体の土塊ワカッテマスが立ちはだかり、
グリガンもスタンスを広げ戦闘態勢にはいる。


"ポイズン" も痛みに耐えるように立ち上がった。

純粋な戦闘であればグリガンだけに暴れさせてもお釣りが来るかもしれない。
それは泥人形ではなく、本物のワカッテマスも理解しているはず…


それでもやはり、土塊ワカッテマス達は目を細めてこう言うのだ。




( <▲><▲>) 「……湖に何があるか、一緒に確認しませんか?」


.

682 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:49:57 ID:KNwPg9/o0

開幕、土塊の一人が放つ広範囲型の闇の炎。

( <●><●>) 「……【シャドラ】」

"ポイズン" を中心に集まりだす魔導力に、足元の砂がチリチリとサークル状に沸き上がる。

それを察知して空に逃れるグリガンの足を掴んで "ポイズン" も範囲外へと回避。
空いた手でガンアクスを土塊の数体にお見舞いする。

('A`)  :ふひひ! 的がでけえぞ:

( <●> ;;<ф> 「……げぃふ」

外側にいた者は離脱できた。
だが真ん中にいた土塊は回避しきれずその頭部の左半分を打ち砕く。
繋ぎ止めていた筋繊維を失い目玉がどろりと零れた。


( <●><●>) 「……【シャドウ】」
( <●><●>) 「……【ノロード】」


人間より身体の大きなグリガンが的となった【シャドウ】は魔導力の集束に時間がかかり発動が遅れる。

グリガンは体毛のスピアを降らせた後に急旋回でそれを躱し、大きく空を舞った。
…だが次の魔法は針の穴を通すように、 "ポイズン" の身に降りかかってしまう。

ダメージはない。
訝しげながら手を離しグリガンから離れ地に降りようとするも、そこで違和感に気付く。

('A`)  :ーー 身体が重い!?:

そう感じて手に力を込め直そうにも間に合わず、そのまま落下する。
【ノロード】は脳信号の伝達を遅らせ、身体機能を低下させてしまう。


グリガンからすれば "ポイズン" が自分から選んで落ちたとしか思っていないだろう。

落下しつつも、ワンテンポ遅れるようにガンアクスのトリガーに指をかける。
グリガンが放ったスピアを懸命に避ける土塊目掛けて発砲した。

683 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:51:38 ID:KNwPg9/o0

バスン!と音をたてると同時に、
土塊が土手っ腹に穴をあけ倒れるのが見えた ーー その矢先、新たに襲い来る闇の炎が "ポイズン" を包み焦がす。


(;'A`)  :がアッ…!:


彼の燃える視界の先ではグリガンが闇の炎を避けつつ高度を上げていく。
ーー 突風とスピアを重力にまみれさせて発射するグリガンの【ダウンバースト】。
詠唱中だった他の土塊をまとめて凪ぎ払っているのが見える。


(;;'A`)  (俺が撃ち殺したのが1、2…
グリガンが【ダウンバースト】でいま3体やってるから…)

【シャドウ】に燃やされながらもカウントし、己が着地する前に最後の土塊目掛けて標準をあわせ発砲する。


( <●><●>) ) 「……狙われるのはわかっています」


二度撃つも当たらない。
"ポイズン" が思っているタイミングでトリガーを引くことができないために土塊は弾丸を躱す事が出来る。

砂浜に着地するも、やはりうまく身体が反応せずによろめいた "ポイズン" に大きな隙が出来てしまった。


( <●><●>) 「……【シャドラ】」

(;;'A`)  :ふひひ…:

( <●><●>) (?)


なぜ笑うのか、土塊には分からなかった。

グリガンはこちらに背を向けて別の土塊を屠っている最中…この詠唱は止まらない。
頼るものなどないくせに。

684 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:53:12 ID:KNwPg9/o0

恐らくここに居たのがワカッテマス本体であっても、その反応は理解し難かったかもしれない。


広範囲の闇の炎が、今度こそ "ポイズン" を囲って盛大に燃え盛った。
彼を中心点として砂浜にブラックホールと見間違うような黒い炎渦がジュウジュウと猛る。


( <●><●>) 「……やりました」


命令通りに "ポイズン" を撃破した。
不死とはいえ、一度死ねばしばらくの間は活動できなくなる。
まして呪術による死はより一層、その死を長引かせるだろう。


次はグリガンを捉えるべく顔をそちらへと向ける。

百獣は容易い相手ではなく、土塊如き自分ではダメージを与えられるかも怪しいが ーー


などと思考していたのが間違いだった。

  … "ポイズン" は、相討ちを厭わない。



  :;....::;.:. :::;.. ..... (;;'A;;)o彡 ;....::;.:. :::;.. .....


( <●><●>) 「……?」


うっすらと、
炎の中で "ポイズン" が振りかぶった気がした。

…なにを?

685 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:54:42 ID:KNwPg9/o0



  ーー ザクッ ーー
( <〇/"<●>)


土塊の顔面、
ガンアクスの刃が唐竹割りに斬り刺さる。


:( <〇/"<●>) : 「……えっ?」


ーー 土塊がそれを理解する前に
グリガンが重力を無視した急降下からの翼のギロチンを振りかざす。


泥人形の意識と身体は完全に分断された。



.

686 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:55:31 ID:KNwPg9/o0

6体の土塊は全て動きを止め、死んだ順から砂浜に紛れて消えていく。


残されたのは無傷のグリガンと、


::;.. ..... (;;'A;;) ;....::;.:. :::


バチバチと、【シャドラ】の炎に焼かれる "ポイズン" 。



普通なら死ぬだろう。
ーー だが、これで終わりではない。


グリガンは体勢を整え向き直し、爪先で砂埃を舞い上がらせると
燃え盛る炎の中へ低空突進。
…嘴で "ポイズン" の腕を千切れない程度にくわえながら上昇し、闇から救いだしてみせた。



(;;'A;;;)


(;;'A;;;)  :……お前、なにやってんだ?:


グルゥ、とグリガンは喉をならす。


(;;'A;;;)  :ふひひ…:




……美しいお仲間がいて愉しそうですね。


.

687 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:56:38 ID:KNwPg9/o0

突如、水面から水柱が吹き上がり
上昇最中だったグリガンの動きが一瞬止まった。

水のカーテンから現れた、膝下まで隠れるコートを纏う呪術師 ーー
  ーー 最初に撃ち殺したはずのワカッテマス。


(; <●><●>) ⊃ 「……【シャ ーー」


瞳に紫色の光を携えながら、魔法を発動させている。


(; <●><●>) ⊃ 「……【 ド ーー」


赤黒い光が集束し始める。



だから、
グリガンの嘴から力任せに自らの腕を引き千切り
その身を宙に踊らせた不死者は ーー



  「!?」 (; <●><●>(;'A;;;)) )


ワカッテマスをその身体ごと、湖へと叩き付けた。


質量の侵入によって水の飛沫が舞う。



そして湖に叩き付けられた衝撃で、
最後の土塊の瞳に映し出されたサーチグラスの映像はここで途切れている。


.

688 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:57:55 ID:KNwPg9/o0


天板から流れる映像の光が消えていく。
……辺りは闇に包まれた。


ワカッテマスが使っていた実験場には
血にまみれたノコギリが無造作に放られている。

床に点々と、
時に湯水のように垂れ流した血液は
空気に触れてもう凝固していた。


先程まで "ポイズン" と7体の土塊との戦闘を記録したヴィジョンが煌々と映し出され、
その映像を確認していた者が一人。


その人物には右肩からバッサリと、
二の腕がない。

689 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 22:58:49 ID:KNwPg9/o0

( <▲><●>) 「……ふふ、ふふはは」


ーー ワカッテマス。


彼こそ本物。
赤い森の呪術師達が最後に生み出した呪いの人工物。


湖で "ポイズン" を襲った "7体" は、
全てこの右腕を刻んで創り出した泥人形だ。


これであの不快な音をたてる男はしばらく現れないだろう。
やもすれば、永遠に湖の中で眠っていてくれるかもしれない。

そう想像するだけで、彼が目的とする三人を屠るに匹敵しそうなくらいに心が休まる気がした。


しかも、そのうちの一人は直接【カース】を発動させる事ができた。
…不死者相手にどこまで効果を発揮するかは未知数だが、どちらにしても喜ばしい成果を挙げられたといえよう。


この腕の激痛などどうでも良いほどに。

690 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:00:04 ID:KNwPg9/o0

( <▲><▲>) 「……ははは」


賢者も三人葬り去った。
残り一人で何ができようか?


( <▲><▲>) 「……ヒュゥ、ははっ…!」


さらにあの湖の特性も大方予想が付いた。
自分の分身だったからか、映像以上に伝わる情報…

あの湖には恐らく、
沈んだ物の特性が付加されるのだ。
"吸収される" とでも言うべきか…そして


(; <▲><▲>) 「ふは、ヒュゥ ーー はは、ヒュゥ ーーあはあは」


その特性はきっと
"こちら側も恩恵を受ける" のだ。

撃ち抜かれそのままなら死んだはずの土塊が
湖に生かされて最後の伏兵と化したのはとんだ副産物だった。


ワカッテマスの策の中には、 "ポイズン" が【シャドラ】で燃やし尽くされる所までしか想定していなかったのだから。


:(; <△><▲>): 「ヒュゥ ーー ヒュゥ ーー」


…時代の流れはどうやら私に味方している。
ーー 私は世界に望まれているのだ。

691 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:00:54 ID:KNwPg9/o0
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〜now roading〜


('A`)

HP / F
strength / D
vitality / A
agility / A
MP / C
magic power / B
magic speed / C
magic registence / A


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692 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:10:17 ID:KNwPg9/o0


疼く右腕を止血しながら…
彼は数日かけて夜闇を移動し、湖までようやく辿り着く。


彼自身がここへ来るのは初めてだが、
どこか懐かしさを憶えるのは自分の泥人形が沈んでいるからだろうか?


光沢のない赤黒いコートに身を包み、
宵闇の中、ワカッテマスは浜辺に立つ。


(; <●><●>) 「……【キール】」


じっとりと汗をかいていた。
もうじき夏季がくるが、それだけが理由ではない。

呪術における毒の魔法を詠唱し、自身に発動する。
毛穴から入り込む赤黒い魔導力が身体の隅々に行き渡っていくのが分かる…
呪われたワカッテマスにとっては、
これが少しずつだが傷を癒す回復魔法なのだ。


周囲を見渡しながら、戦闘跡を探して歩く。

693 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:11:18 ID:KNwPg9/o0

右に視線を向ければ鮮血色の湖が広がり、さざ波が寄せては返すを繰り返している…
人体を巡る血液も、心臓というポンプに押し出されながらこのような動きを繰り返しているのだろう。


本来この湖は美しいと評判で、大陸戦争の頃もあえて戦地としては選ばれなかったという。


( <●><●>) 「…… ーー 笑わせてくれます」


ならば何故、赤い森はその戦さ場に選ばれたのだ。


先祖達は森の外に出ることもなく、
決して周りに危害を与えることもなく何十年、何百年と暮らしてきたはずだった。

呪術とは名ばかりの、
森で生活するための知恵として受け継がれた魔法はやがて独り歩きし、
何も知らない者達が勝手なイメージを押し付けただけではないか。


呪術を "呪術" 足らしめたのは他でもない、
思い通りいかない鬱憤を晴らすために我らをスケープゴートにした大陸の者達だ。


それだけで皆殺しにされた一族の怨み
    絶対に、赦しはしない。

694 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:12:03 ID:KNwPg9/o0

…やがてワカッテマスは、
砂浜に紛れ落ちている二つの残骸を見つける。


サーチグラスを瞳に嵌め込んでいた鳥の死骸。
そして、あの男が自ら千切り飛ばした "ポイズン" の腕。


胴体を踏み潰され腐りかけた鳥の死骸から目玉を抉り出し、サーチグラスを回収する。


(; <●><●>) 「……ふむ」


少し悩み、腕を振り上げて闇の魔導力を細く灯籠のように漂わせる。

それに惹き付けられるかのように、一羽の鳥がワカッテマスの肩へと止まった。


(; <●><●>)б" 「……よしよし」


鳥は良い。
社交的で、馴れれば従順な僕や友となる。

勝手な人間の作り上げた尺度ではなく、己と心が通う者であれば

人格破綻者だろうが、
呪われた者だろうが、
造られたモノだろうが、

…垣根なく触れ合ってくれる。

695 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:13:04 ID:KNwPg9/o0

ワカッテマスは回収したサーチグラスを鳥に呑み込ませ…さらに "ポイズン" の腕をその口にくわえさせる。


(; <●><●>) 「……頼めますか? 私の実験場まで」


ギキィ!と耳障りな鳴き声をたてて鳥は羽ばたく。

…この身体が本来の声を聞けたなら良かったのですが…
そんな風に時々は思わなくもない。


赤い空に消えていくその姿を見送って、
ワカッテマスの視界はやがて下る。

空色と同様に赤い、広大な血の湖へと。

696 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:14:10 ID:KNwPg9/o0

実際に目の当たりにすると、躊躇せずにはいられない……
推測を重ね、一番高い可能性を胸にここまで来たのが現実だ。

もし推測が外れてしまえば、下手をすればワカッテマスの人生はここで終わるかもしれない。


(; <●><●>) 「……ふぅ」


天秤にかけるのはリスク、
そしてその先に得られるものは実りある復讐の架け橋。

泥人形が示した可能性は、
ワカッテマスにとって今一番欲しいものであり、
通常ならば生涯得ることのできない特性。


夜しか活動できない彼にとって
泥人形は時間を問わず活動できる優れものだが、欠点が多すぎた。
ーー 媒体がなければ創り出せず、寿命が短すぎる。

もしも泥人形をもっと生き永らえる事が出来れば、
わざわざ媒体を何度も用意する必要はなくなり、
果たして一族の復興も夢ではない。


(; <●><●>) 「……【キール】」


もう一度、呪術を自らに重ね掛けしておく。
万が一湖に取り込まれるような事があれば即座に脱しなければならない。

彼は魔導シールドのような防御壁を使うことはできない。
ダメージによる体力の減退だけでも相殺し、態勢を整えた。



(; <●><●>) 「……いざ」


.

697 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:15:05 ID:KNwPg9/o0
----------



ーー ワカッテマスの意識が、湖に融けてゆく ーー



(推奨BGM)
http://www.youtube.com/watch?v=Tgy1wt3ZBbo&sns=em



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698 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:16:27 ID:KNwPg9/o0



予め決めておいた線に沿い、
針と糸で、布地を縫い合わせていく…


『ーー 戻ったよ、ただいま』


夫が帰ってくると作業の手を休め、
出迎える。

『お帰りなさい。 お疲れ様』


『立ち上がらなくていい、迎えてくれただけでも充分すぎるよ』


妻は『そう?』と微笑みながらまた手縫い作業に戻る。


『一日やるだけでもけっこう進むんだなあ』

『そうね… 前もって準備さえしておけばね』


妻の周りには、完成間近の縫いぐるみが積み上がっている。
口と目が縫われた人型、あとは中身を詰めて背中を縫えば良い。


…しかし、その中身に詰めるのは柔らかな綿などではない。

天の恵みである雨、水、
赤い森で採れる大地の恵みの象徴、土、
ーー それが混ざった時に出来る "泥" を詰める。

699 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:17:29 ID:KNwPg9/o0

『…それにしても今年は多かったんだな』

『8人分…産まれた子供の数だけ作ってあげないとね』


妻は最後の縫いぐるみの口を縫い終わると、
自分の長い髪の毛を一本つまんで引っ張った。

二本、三本…
抜いた髪の毛を、まだ縫っていない背中にそっと差し入れる。

全ての縫いぐるみに髪の毛を入れ終えたら、最後に泥を詰め込んだ。
細い指で、周りを汚さぬよう、
少しずつ丁寧に背中へ注いでいく。


『俺も手伝うよ』


夫が志願すると、妻は泥を詰め終えた縫いぐるみを手渡した。
中身がはみ出ない様、夫も丁寧に背中を縫い針で綴じていく…。


完成した縫いぐるみは、一見してグロテスクと擁されるかもしれない。
さわり心地も泥が詰まっているのだからグニョグニョとして落ち着かない。

それでも、
一族にとっては新生児を祝う品であり
一度だけ身代わりになり、児を護ってくれるタリスマンなのだ。


縫いぐるみを作る夫婦の表情は穏やかだった。


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700 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:18:25 ID:KNwPg9/o0



『我らはどちらにも荷担するつもりはない。
戦争行為そのものに反対なのだ』


静かだが、怒りを滲ませた声が誰かと話している。


『…この森も巻き添えを? なぜ?
貴方らは自分で未来を決めたにも関わらず、
戦う場所も選ぶ事ができないのか?』

『……ここは我らが昔から代々暮らしてきた土地なのだ。
それをどうして、金や、貴方らの都合一つで退かねばならん』


その声は怒り、そして憐れみ、


『……我らをそっとしておいてくれ…
もう一度言う、どちらの味方をするつもりもないのだ。
戦争は反対なのだ……国王にも、そう伝えてくれ』


懇願を遺して消えた…



この交渉が決め手だったのかをもはや知る者はいない。
…やがて赤い森は戦火に巻き込まれる。


軍を率いた者の名は ーー



(推奨BGMおわり)
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701 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:19:45 ID:KNwPg9/o0



(; <◯><◯>) 「……っ」


ワカッテマスが目を覚ました時、
彼の身体は浜辺に打ち上げられるように
波の毛布が全身を覆っていた。


混濁した意識を時間をかけて取り戻す。
いくら波に濡れようとも構わない…先の記憶は、ワカッテマスが観たくても観れない映像だったのだから。


この身に宿る怨念は
いつも漠然としたイメージだけを発作的に叩き付けるだけで、総てを塗り潰す赤い色しか見えて来ない。

黒い幻影しか、彼に語りかけては来ない。


(; <●><●>) 「……はあ、はあ…」


だからせめて…少しだけその余韻に浸りたかった。
指先を、寄せて返す波が往ったり来たりするのを視界に捉えながら……


( <●><●>) 「……ん」

702 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:21:04 ID:KNwPg9/o0

彼が見ているのは指先。
ーー 失ったはずの右手だった。


顔をあげ、身体を起こす。
自然に動いているが、やはり両腕で起こしている。

全身を蝕む痛みとは別に、
腕そのものからは痛みがなく、違和感もない。


( <●><●>)
  つ    「……そうですか、これは…」


動く右手から伝わるのは自分自身だった。

記憶の彼方からではなく、
"ポイズン" と共に沈んだ土塊…
その媒体となった、己の右腕の感触が戻ってきたのだろう。


Σ (; <●><●>) 「……痛っ」


喜ばしさ…その実感と共に、全身を襲う倦怠感と痛みが自覚されていく。

よく観察すれば赤黒いコートは所々が酸を吸い込んだように破け、皮膚がジリジリと痺れている事に気付いた。

そして、それは徐々に肥大化する。

【キール】のような呪術の毒ではなく
文字通りの毒を浴びたのだろう。
"ポイズン" が湖に沈んだことで
右腕と【ポイズン】を吸収してしまったか…そう推測する。


想いに更け、見上げてみれば
空を埋めていたはずの分厚い雲は消えていた。

真球の如き満月が、砂浜とワカッテマス…
そしてこの美しく偽られた湖を照らす。

703 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:21:55 ID:KNwPg9/o0

彼が無意識に "美しい" と感じていた事には気付かないまま、湖に背を向けたその時。


(; <●><●>) 「……?」


事前に誰も居ない事を確認したつもりが
明らかな人影が地平線に映り込む。


旅人か?
それとも事の発端となった女王が戻ってきたか?


いずれにしても自分の姿を見られる前にここを離れようと思った。




ーー だが、ツンが選択肢を誤ったように、
彼もまた選択肢を誤った…

それを認識する事が彼には果たして出来るだろうか?


その偶然を嘲笑うかの如く、
人影は堂々と、
そしてゆったりした動きとは裏腹に恐ろしいまでの速度で接近 ーー

704 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:22:53 ID:KNwPg9/o0

(´・ω・`) 「ーー やあ」

(; <●><●>) 「!!!」


三日月型の斬撃がワカッテマスの頬を掠める。

油断していたわけでは…あった、だが、
それを差し引いても速すぎる肉薄。


(; <▼><●>)Ξ 「……貴様はっ!」

   Ξ( ´・ω・`) 「よくもここまでやってくれたね!」


斬撃、 ーー そして斬撃、斬撃、斬撃。

突然現れ、振り止まぬ剣舞が
退くワカッテマスの身体を少しずつ斬り刻んでいく。


(; <▼><●>) 「……【シャドウ】!」


魔導力を放り出すように生み出した闇の炎 ーー
しかし迫った男の斬撃はそれすら斬り裂いてしまう。

…とはいえ、その分の距離だけでも稼ぐことが出来たのは大きい。


( <●><●>) 「……【シャドラ】!」


今度はより正確に、より強力な闇の炎を放った。   ーー はずだった。

705 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:25:45 ID:KNwPg9/o0

(´・ω・`) 「……」


理解不能。


(´・ω・`) 「なんのつもり?」


呪術が…発動しない。


(; <●><●>) 「……??」


魔導力はまだこの身体に残っている。
計り損なったわけではない…なのになぜ。


(; <●><●>) 「……【シャドウ】!」

ーー 静寂。

(; <▼><●>) 「……いったい?!」


ーー 先程使えた魔法すら不発。


茫然とするワカッテマスを前に、
その男は剣先をこちらに向けて語り始める。


(´・ω・`) 「魔法が使えないなら都合がいい…
一度でもゆっくり話したかったから」


男は言う。
…話したいと?
相手に剣を向けて行う対話がどこの世界で成立するというのか。


(; <▼><●>) 「……貴様と何を話すのですか?
一族を滅ぼした元凶が」


  ーー 軍を率いた者。

    ーー 赤い森を殲滅した張本人。

706 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:26:54 ID:KNwPg9/o0

(; <▼><●>) 「……ショボン!」

(´・ω・`) 「…それについてはもう弁明できない。
謝って赦してもらえるとも思っていない」


突き放した返答が、ワカッテマスの神経を大きく逆なでする。


(´・ω・`) 「この流行り病、君なんだね?」


ショボンは哀しげに訊ねる。


(; <▼><●>) 「……そうですね」

(´・ω・`) 「…目的は、僕?
それとも大陸の人々?」


聞いてどうするのだ、このしょぼくれめ。


(; <▼><○>) 「……グッ ーー 貴様だ、とでも答えれば満足ですか?」

息が苦しくなる。


(´・ω・`) 「そうか…」


(´-ω-`) 「……そっか…」

ショボンの哀しみが一層増す。


とはいえ、ワカッテマスにはもはやそんなことはどうでも良かった…

苦しい……


【ポイズン】のダメージではない、
もっと、根本的な……

707 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:30:49 ID:KNwPg9/o0




まるで、自身を構築している呪いに
穴が開いて漏れてしまっているような



.

708 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:33:09 ID:KNwPg9/o0

(´・ω・`) 「…僕の言葉が君に届くかは分からない…
でももう、これ以上は ーー !?」


そこでショボンの言葉が止まる…


どうしたのです?



そういえば、普段なら聞こえるはずの耳障りな音がしませんね……?




"ポイズン" の笑い声のような、




そう、
ゴボゴボと臓器が沸騰するような ーー

709 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:34:39 ID:KNwPg9/o0

ワカッテマスの身体から赤黒い光が漏れている。
本人は気に止めているのかすら読み取れないが、ショボンの目からも魔導力の流出は明らかだった。


(; <○><○>) 「ーーあ、あぁぁっ!?」

(;´・ω・`) 「な、なに…っ?!」


はじめて見る現象が目の前で起こっている。

ワカッテマスの肉体を司る呪いの魔導力が血飛沫のように噴き出して空に舞っているのだ。
ーー それどころか、それが湖へと吸引されるように赤黒い雲がドボドボ流し込まれていく。


Ξ(; ´・ω・`) 「くそっなんだこの湖は!?」


ワカッテマスに向けていた刃を一旦鞘に納め、ショボンは駆け出した。

同時に一瞥するも、ワカッテマスは明らかに意識を失いかけており、その視線は何も映さずただ虚空をさ迷っているだけ。


Ξ(; ´・ω・`) 「ーー やむを得ない!」

710 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:35:48 ID:KNwPg9/o0

ショボンは鞘に納めた剣 ーー "隕鉄" の刀を握りながら、
まるで空に浮くような動きで立ち向かいそれを見据える。


その神速の目標は魔導力を吸い込んでいる水面の一点。

その剣撃の目標は魔導力を吸い込んでいるという特性その一点。


本性を現したかのような悪魔の顋…
怯まず目掛け、ショボンは抜刀する。


【ドレインガード】!


斬撃はショボンの発する魔導力を帯びながら湖を斜めに斬り裂く。

さしずめ古代の予言者が海を渡ろうと奇跡を起こすかのように、見渡す限りの水圧の崖がその効果を物語る。

      ーー 直後。

ガボガボガボガボ!と、
まるで生き物がもがき苦しむかのように。

水面から亡者の轟き嘆く音が可視化され、周囲を埋め尽くす。

711 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:36:47 ID:KNwPg9/o0

ォォゥ…オオウ ーー ォォゥ ーー


(; ´・ω・`) 「……効いた? 仕組みは一緒か」


間も無く遠くなる怨念の耳鳴り。
ーー 吸い込まれていた魔導力が勢いを殺され宙に漂い…霧散していく。


それに伴い亡者の声は止み、
辺りは月夜が支配する静寂を取り戻していった…。


( ´・ω・`) 「…吸い取るものなら一通り効果がありそうだね」


独りごちるショボンは刀を納め、
湖に後ろ髪を引かれながらもワカッテマスへと向き直る。




  _
( -∀-) 「すピー…」


(´・ω・` ;) 「…えっ」


…ワカッテマスに……向き直ったはずだった。


.

712 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:38:18 ID:KNwPg9/o0

慌てて辺りを見回すも、
ワカッテマスのその姿、その形跡を見付けることができない。


正真正銘いまこの場には
ショボンと…眠る男、ジョルジュしか居ないのだ。


(´・ω・`) 「…」


ショボンは思案し、ジョルジュを背に担いだ。
成人男性…しかも長身のジョルジュを軽々と持ち上げる。


  _
( -∀-)
(´・ω・`) 「よいしょ…」


ジョルジュは目を覚まさない。
深く寝入っているようだった。


「こんな荷物まで持ってたら、僕が入れるのは水の都くらいだしなあ」
と、呟きながらショボンは湖を後にする。



ーー だがその水の都こそ。

ワカッテマスの策略による人同士の監視社会が出来上がってしまった事に、まだ彼が気付く事はなかった。

713 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:39:23 ID:KNwPg9/o0



.

714 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/07/30(水) 23:41:26 ID:KNwPg9/o0

人は『疑え』と言われれば信じたくなり、


『信じろ』と言われれば疑いたくなる生き物だ。



人々は善良な仮面を被りながらも、
その手に持つのは仕組まれた呪いのオーブ。




ワカッテマスは本来闇の中でしか活動できなかった。


だからこそ様々な策略に長けた。


自身が動けない間、
物事が思い通りに進んでいればこれほど楽なことはない。



大陸の中心で、
優雅な生活に潜ませたディストピアが
これから幕を開ける。



生きながら知らぬ間に操られた人形達は
無意識下に主人の帰還を待っていた。






(了)

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