(//‰ ゚)夢見る星間飛行マシンのようです

第六章 心ある人形の物語

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506 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 03:29:31 ID:krjoqu6s0


 「すなわち、シナプスによる相互伝達と、アポトーシスによるランダム性こそが」



ζ(゚、゚*ζ (………)

ζ(゚ー゚*ζ (あ)



 「ヒトとロボット、今や境界のあやふやとなった二つの事象を隔てる因子となりうるのである。
  さて、今日はこの辺で。次回は自律アーキテクチャに入るから、予習はしておくように。以上」



ζ(゚ー゚*ζ (今日は来てるんだ…)

( ^Д^) よう。メシ食いに行こうぜ

ζ(゚ー゚*ζ あ……うん

从'ー'从 お腹ぺこぺこ〜〜〜

507 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 03:33:03 ID:krjoqu6s0

( ><) 今日はH定食にするんです!

ζ(゚ー゚*ζ Hって何だっけ?

( ><) 塩鯖風クラッカーとアロナミンジェルドリンクです!

ζ(゚ー゚;ζ 好きねえ。あれって本来は非常食じゃなかったっけ?

( ^Д^) こいつ食が細いから、たくさんは食えないんだよ

从'ー'从 私はラーメンにしよ〜

ζ(゚ー゚*ζ ………





( ・∀・)




从'ー'从 デレちゃん、行くよ〜〜?

ζ(゚−゚*ζ あ、うん!待ってー!

508 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 03:45:57 ID:krjoqu6s0





 アクアデミック星はDEM社がスポンサーとなっている、いわゆる学園星雲の一つである。
 この星には173の大学が存在し、うち65%はDEM社が出資している。




 破産寸前だったDEM社を立て直し、なおかつ科学者としても高名な同社の社長、ショボーン氏は、
 「工学こそが人類を発展させ、宇宙の可能性を拡げるメソッドである」と意味不明な名言を残している。


 要は事業拡大し、学園法人にも手を出したという訳だ。



  動機は極めて不純であるものの、アクアデミック星にある大学、とりわけ、

ζ(゚ー゚*ζ 午後は授業ないから、いったん帰ろうかなー

  彼女たちが通っている私立ルネ・デカルト学園は、高い偏差値と、整った設備、学習環境から、
   何人もの優秀な科学者を輩出していることで有名だ。

509 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 03:50:52 ID:krjoqu6s0

 といっても、学園に通う者で、本当に科学者を目指している者は割合的には少ない。

 ルネに入ればどの企業にも就職できるから、という理由で入ってくる者が大多数なのだ。
 大学院にまで進む者が少ないのは、そういった理由があるからである。



( ^Д^) え、帰るの?

ζ(゚ー゚*ζ うん…

( ^Д^) ふーん、じゃあさ、俺とプラネタリウムバー行こうよ

ζ(゚、゚*ζ えー昼間からお酒?

( ^Д^) いいじゃん!大学生らしくさあ


( ><) だ、大学生なら、勉強するべきなんです!

从'ー'从 わ〜いいこと言う〜

( ^Д^) 別に俺は科学者とか目指してねえし。DEM社の子会社にでも入れれば一生安泰なんだし
     デレだって、大学院とか目指してないんだろ?


ζ(゚ー゚*ζ うーん…

( ;^Д^) え、マジ?

510 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 03:54:55 ID:krjoqu6s0

ζ(゚ー゚;ζ あ、いや、そんなに真面目には考えてないけど


ζ(゚ー゚*ζ でも、研究者とかもさ、有りカナーって、最近考えてるの

( ^Д^) えー?あんなのメンドイだけじゃん

从'ー'从 そうかな〜格好いいと思うけど〜

( ^Д^) 研究よりも、製造とか販売部門の方がうまみあると思うんだけどなぁ

( ><) でも、どうして急に研究者なんです?

ζ(゚ー゚;ζ え…うーん…


从'ー'从 思いつき〜?ノリ〜?

( ^Д^) お前は絶対研究者向きじゃないねーケラケラケラ

ζ(゚ー゚;ζ うーるさーい!

511 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 04:08:49 ID:krjoqu6s0



 授業         ζ(゚−゚*ζ
  ↓
 お昼休み      ζ(゚ー゚*ζ
  ↓
 学食         ζ(゚〜゚*ζ
  ↓
 学内を徒歩移動中ζ(゚ー゚;ζ← いまここ


 ルネ大は学内の何処に行くときでも、オートウォークがあるため、ほとんど歩く必要がない。

 (※オートウォークとはバランサーが歩く方向を関知し、歩く向きに対して地面が勝手に動くDEM社の製品。
   この上を歩けば時速30キロ程度の速度で歩くことが可能。また、体を前傾するだけでも動くので、歩かずとも移動可能)


 また、職員、教授、学生は無人タクシーが使えるため、急ぎの場合はそちらを利用する場合が多い。


 しかし、デレは無人タクシーも、オートウォークも使わない。


ζ(゚ー゚;ζ はぁ…はぁ…

ζ(゚−゚*ζ (運動不足だなあ)

514 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 14:06:17 ID:krjoqu6s0

 デレは田舎の星出身だった。


 緑が多く、循環器の必要がないほど美しい海のある、自然の多い星だった。
 人口は少ないし、科学技術も遅れていたが、不自由はなかった。

 人同士の繋がりがあり、生活には創意工夫があり、昔ながらの文化も残る、故郷の星が好きだった。



 また、母親はいなかったが、エリカがいた。

 エリカは後期型のロキアシリーズで、デレの母親代わりであった。




ζ(゚ー゚*ζ (寮に戻っても仕方ないし……図書館行こうかな)


 いまや、書籍は電子書籍が当たり前であるが、ルネ大の総合図書館には蔵書が多く陳列されている。
 ほとんどインテリアと化しているものではあるが、デレは時折、棚の本を手にとって眺めている。

 PDAにダウンロードした電子書籍では味がないからと、以前友達から、
 どうしてわざわざ紙ベースの本を使うのか尋ねられたとき、そう答えた。

515 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 14:08:00 ID:krjoqu6s0




ζ(゚ー゚*ζ




ζ(゚ー゚*ζ あ…







( ・∀・)




 図書館の中を散策している途中、楕円形のテーブルに向かう彼の姿を見つけた。

 頬杖を突きながら、本をめくっている様子を、この図書館で何度も見たことがある。
 彼も"紙派"であることは、以前から知っていた。

516 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 14:10:33 ID:krjoqu6s0


( ・∀・)                  ζ(゚ー゚*ζ



( ・∀・)                  ζ(゚ー゚*ζ



( ・∀・)                  ζ(゚ー゚*ζ



( ・∀・)                  ζ(^ー^*ζ



( ・∀・)                  ζ(゚ー゚*ζ



( ・∀・)                  ζ(´ー`*ζ



 彼とは時々、人工知能の講義で一緒になる。

 名前は知っている。モララーという、この近辺の星では珍しい名前だった。

 以前、教授たちが彼のことを話しているのを聞いた。
 ずば抜けた知性と、学生にしてはあり得ない知識量を持っているらしい。

517 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 14:16:36 ID:krjoqu6s0

 ただ、彼はいつも一人でいた。

 それは孤独とか、孤高とか、そういったもので形容できるような雰囲気ではなく、
 極めて自然に、一人でいることが当たり前のようなたたずまいである。

 少なくとも、デレはそう感じていた。



 しばらく彼から離れ、脳科学の本を手に取り、再び彼の近くまで戻ってきた。
 隣のテーブルに本を広げて、腰を下ろす。


( ・∀・)                  ζ(゚ー゚*ζ



( ・∀・)                  ζ(´ー`*ζ


 時々、彼の方へ視線を送る。
 ページをめくる瞬間、あくびが出た瞬間、ふとした思考の狭間で、彼の顔を覗く。

 いつもと変わらない姿勢で、静かに本を読み続ける彼を見ていると、
 心が安らかな気持ちになると同時に、一種の昂ぶりも覚えた。

 デレにはそれが何なのか、はっきりとはわからないが、心地よい感覚であることは理解していた。
 気の合う友人たちと一緒にいるときは異なる、もっと別次元の愉楽があった。

518 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/26(日) 14:25:23 ID:krjoqu6s0

 女性のように長いまつげが、本の文字を追う目の動きに合わせて揺れるのを、いつまでも見ていられた。

 それから彼は、時々鼻をスンスンとすするのだ。
 鼻の頭をポリポリと掻く仕草も併せて行う。

 また、普段はずっと涼しい顔をしているが、ごく希に眉を寄せて、口をすぼめる表情をするときがある。
 一体どういう場合にその表情になるのか、デレには想像しかできないが、
 どうやら本の内容に対して顔をしかめているようだと、最近気がついた。


 内容が難しいのか、それとも論旨に対して異議を唱えたい心理からか、
 いずれにしても、いつもの仏頂面とは違う、少し子供っぽいその表情に、いつも胸がときめいた。




( ・∀・)                  ζ(´ー`*ζ




 話しかけようとは思わなかった。

 本当は友達になりたかったし、話したいこともたくさんあるが、彼には人を寄せ付けない雰囲気があった。
 何よりも、彼の作る聖域に、自分が入ってはいけないのだと感じていた。


 だから今日も、視界の中の彼は、一枚の絵画みたいに静かだった。

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