乱暴粗悪なディテクティブのようです

第六話『心臓』 前編

322 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:24:32 ID:upVYtbTIO
〜〜〜



高岡探偵事務所



リビング



(;'A`)



【+  】ゞ゚) パクパク
( っ=川 o
 ̄ ̄`ーー―′ ̄\



【+  】ゞ^)「いやぁ、なかなか良いじゃないか助手君!」



(;'A`)「は、はぁ……どうも」



(;'A`)(なんでこの人ご飯まで食べてるんだ……いや、作る僕も僕だけど)

323 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:25:48 ID:upVYtbTIO



【+  】ゞ゚)⊃「おかわり!」


('A`)「は、はい」



('A`;)(図々しい……)



【+  】ゞ゚)「この、たいしてうまくもないが、食べることに嫌悪感を抱かないまさに普通のご飯、なかなかできるものじゃないよ助手君!」



(;-A-)「そりゃどうも」



【+  】ゞ゚)⊃=「おお、これは失敗した出汁巻き卵!焦げの部分が哀愁と苦みを引き立て、単に甘すぎない人生のような──」



(;'A`)(ホントに医者かよこの人……)

325 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:26:53 ID:upVYtbTIO
【+  】ゞ゚)⊃「みたまえ、この味噌汁!ネギがつながっている!口内でその煩雑な存在を主張する姿勢!素晴らしいな!」



(;'A`)(あ、この人左利きだ……)



【+  】ゞ^)「プファー、いつも高級なお店でしか食事を取らない私からすればここはなんという穴場か!」



('A`)「……」



【+  】ゞ゚)「美味くもなければ不味くもない!すごいぞ!助手君!」



('A`)「あの……」



【+  】ゞ゚)「さ、お茶!はやくしてくれ、口直しがしたい」



('A`)「……」

326 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:27:45 ID:upVYtbTIO
【+  】ゞ゚)「どうしたのだね、助手君。早くお茶を入れたまえ」



('A`)「……あんた」





('A`)「ホントに"医者"か?」





【+  】ゞ゚)「……」

327 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:29:14 ID:upVYtbTIO
【+  】ゞ^)「なんだね、整形する気になったのかい」



('A`)「その言動や人を馬鹿にするような人が、医者なんて思えない」



【+  】ゞ^)「ハハハ、それは世間知らずというものだよ助手君。世の中にはいろんな──」



('A`)「"利き手"」



【+  】ゞ゚)「……」



(-A-)「前に聞いたことがあるけど、医療器具は右利き用に作られているはず」



('A`)「利き手でないほうで箸を使うなんて無理だ。だから──」



【+  】ゞ-)「ほう、なるほど。ハインめ、こんな助手君を囲っていたとは」



('A`)「……?」

328 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:29:59 ID:upVYtbTIO
【+  】ゞ゚)「食事を取る私の所作から利き手を推測し、職業上必須な道具との親和性を考慮することによってできたロジック」



【+  】ゞ^)「素晴らしい」



(;'∀`)「そ、そうでもないけど……」



【+  】ゞ゚)「まるで私が今食べた"食事"みたいだ」



(;'A`)「なっ」

329 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:31:24 ID:upVYtbTIO
【+  】ゞ゚)「君の理論は、左目でカメラのファインダーを覗くプロのカメラマンなどいないという風に聞こえるな」



(;-A-)「あっ……そ、それは」



【+  】ゞ゚)「なるほど、カメラのファインダーは本体の中央よりも左側にあり、
       右目で覗いている場合には左目の視界が開けているが、左目で覗くとカメラ本体が顔に被さって視界を遮られる」



(;'A`)



【+  】ゞ゚)「ふむ、オートバイで例えれば、右利きが前提の設計であり、スロットル操作が右手であるし、
       車体の左側から右手で引き上げなければメインスタンドがかけられない」



【+  】ゞ゚)「だからプロや上手な人はいないと、そう言いたいんだね?」



(;'A`)「いや、それは……」

330 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:35:58 ID:upVYtbTIO
【+  】ゞ-)「そういう人間が、プロになるためにどうするか」



=⊂【+  】ゞ゚) スッ



=⊂【+  】ゞ゚)「"矯正"するんだよ」



(;'A`)(両きき……!)



(;-A-)「……だ、だからってあんたが医者かどうかは――」





【+  】ゞ^)「うん、ま、モグリなんだけどね私。免許持ってないし」





(;'A`)「は?」



【+  】ゞ゚)「でも腕はすごいよー、整形する?」



(;-A-)「……結局、医者じゃないのかよ……」

331 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:38:00 ID:upVYtbTIO
【+  】ゞ^)「ハハハ、それにしても全く、借金も返さずに男を連れ込んでなにを考えているのやら……」



(;'A`)「借金……保釈金の?」



【+  】ゞ゚)「うん、まさか保釈金と身元引受人のお願いをされるなんて思ってもみなかったよ」



('A`)「保釈金ってそんなにかかるのか……ハインは、いくら借りたんですか?」



【+  】ゞ^)「おや、助手君は知らなかったかい?彼女、先日の件以外にも私にけっこうな額の借金があるんだよ」



(;゚A`)(ハインが……けっこうな額の借金を……!?)



('A`)(なんだろう、すごく納得できる)

332 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/22(月) 23:39:16 ID:upVYtbTIO
( A )「──いくらですか?」



【+  】ゞ゚)「ん?」



('A`)「僕は……ハインにたくさん助けられた。だから、困ってるならなんとかしてあげたいと思っている」



【+  】ゞ゚)「ほう」



(-A-)「100万でも、200万でも……!なんとかお金を作って、借金なんて返」





【+  】ゞ゚)「"10億"」





(゚A゚)「…………え」





【+  】ゞ^)「10億円、払ってくれるんだね?」





乱暴粗悪なディテクティブのようです



第六話 『心臓』 前編

333 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:06:27 ID:BBq2DyFcO
〜〜〜



(;;゚A゚)「ど、どういうことですか……!?10億なんて借金、とても個人が抱えるものじゃ……」



【+  】ゞ゚)「んー、もう10年前になるかなぁ。とっても器用な私が、なんとも不器用な男からハインのことを聞いたのは」



───
──





10年前



バー ディテクティブ



【+  】ゞ゚)「いらっしゃい、茂名山さん。新しい酒が入ったよ」



( ´д`)「……オサム、それ山崎の50年じゃないか……どうやって手に入れたんだモナ……100本も回らんだろう」



【+  】ゞ゚)「医者の仕事がうまくいってね、余興さ」



( ´∀`)「本当にお前は器用な奴だモナ……」

334 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:07:39 ID:BBq2DyFcO
【+  】ゞ^)「飲む?ワンショット8万に負けとくけど」



( ´∀`)「ニコラシカをくれモナ」



【+  】ゞ-)「ちぇ」



【+  】ゞ゚)「ニコラシカねぇ……良いことでもあったの。子供でも生まれたのかい」



( ´∀`)「バカいうな……いや、あながち否定できんモナ」



【+  】ゞ゚)「?」



( ´∀`)「どちらかというと決意って意味を込めたかったんだけど、祝い事ねぇ……」



【+  】ゞ゚)「50過ぎて独身の鬼の茂名山にも春が来たって?」



( ´∀`)「いや、ありゃ台風だ」



【+  】ゞ゚)「?」



( ´∀`)「またそのうち……連れてくるモナ」




――
―――

335 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:09:15 ID:BBq2DyFcO
〜〜〜



茂名山探偵事務所



((从 `∀从))「離せ、離せっつってんだろ!」



( ・□・)「はいはい、大人しくしてくれ」



( ´∀`)「……モナモナ、どうしたの内藤くん」



( ・□・)「すみません、茂名山さん。"依頼"です」



(´∀` )「あっそう、帰っていいよ」



( ・□・)「そういわずに。ほら」



从 ゚∀从「っつ……んだよ、白豚の奴、親使ったと思えばこんなとこに連れてきやがって……」



( ・□・)「息子のライバルには少々お転婆すぎるからね、ちょうどいいところに連れてきたんだ」

336 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:10:31 ID:BBq2DyFcO
从 ゚‐从「……まさかとは思うが、この腑抜けた顔のおっさんがヨットスクールもびっくりなスパルタ教育を施してくれるってんじゃねぇだろうな」



( ・□・)「ハハハ」



从#゚∀从「目が笑ってねぇぞ、おい──」



( ´∀`)「おい、どういうことモナ、内藤」



( ・□・)「あ、すみません。いつも息子がこの子に泣かされるっていうんで、叱ってもらおうかと」



(´∀` )「そうか、帰れ」



( ・□・)「"後見人"になってほしいんですよ」



( ´∀`)「?」

337 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:11:44 ID:BBq2DyFcO
( ・□・)「この子……高岡ハインっていうんですけどね。息子と同じ施設で暮らしているんです」



( ´∀`)「両親は?」



( ・□・)「亡くなりました」



( ´∀`)「……」



( ・□・)「信頼できる大人っていうのが、あなたくらいしか浮かばなくてね」



( ´∀`)「……うーん……」



( ・□・)「もちろん報酬は払いますよ」



( ´∀`)「いや、金の問題じゃ──」



( ‐□‐)「"M資金計画"」



( ´‐`)「!」



( ・□・)「あなたが警察を辞めた後、ようやく突き止めましてね。その情報をお渡しします」



( ´∀`)「……」

338 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:13:22 ID:BBq2DyFcO
( ・□・)「一か月後にまた来ますよ。その時に息子がいじめられていなければ依頼達成としましょう」



( ´∀`)「わかったモナ」



( ・□・)「ありがとうございます」



( ´∀`)「ただひとつ、条件があるモナ」



( ・□・)「ん?なんですか?」



( ´∀`)σ「君の──」



从 -∀从「おい、おっさんども」



( ´∀`)「?」



从 ゚∀从「さっきから聞いてりゃきな臭い話ばっかしやがって」



从 `∀从「ハインちゃんをどうするつもりだ!」



( ・□・)「……」



(; ´∀`)「"ハインちゃん"?」



从 ゚へ从 ムスッ

339 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:14:17 ID:BBq2DyFcO
( ・□・)「ハハハ」



从 ゚へ从「なんだよ」



(; ∩∀`)「モナモナ……後見人最初の仕事はその一人称を直すところからか」



从 ゚∀从「あ?ハインちゃんはハインちゃんだろうが」



( ´∀`)「あのね、君。そういうのが許されるのは小学生くらいモナ。恥ずかしいんだモナ」



从 ゚∀从「いい歳してモナモナ言ってるあんたは恥ずかしくないのか?」



(; ´∀`)(正論だ)



( ・□・)(論破された)

340 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:15:18 ID:BBq2DyFcO
(; ´∀`)「い、いいんだモナ!ほら、これくらいのナイスミドルがナウでヤングな雰囲気を醸し出すのが世間ではギャップがあっていいって」



从 ゚∀从「ふーーーーん」



( ・□・)(勝ち誇ってる)



从゚∀ 从「ま、どうでもいい。私は帰らせてもらうからな」



( ´へ`)「ダメモナ。訂正するんだモナ。俺は恥ずかしくないモナ」



⊂从-∀ 从「はいはい、そうだね。それじゃ」



( ´∀`)「おいっ」



バタン

341 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:16:39 ID:BBq2DyFcO
( ´∀`)「……施設でもこんな感じなのかモナ?」



( ・□・)「ハハハ、ええ、まぁ」



( ´∀`)「こんな時代だ、別に親がいないだの家がないだの珍しくもなんともないが」





( ´∀`)「疑問は一つだけ。お前がどうしてそこまであの娘に執着するのか」





( ‐□‐)「……」





(; ´∀`)「ロリコンだったか」



( ・□・)「怒りますよ」

342 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:17:56 ID:BBq2DyFcO
( ´∀`)「まして俺が追っていたM資金計画事件の情報をってなるとますますきな臭いモナ」



( ´∀`)「隠してること、あるモナ?」



( ・□・)「参りましたねぇ、さすが鬼の茂名山。現役時代を思い出させる疑りぶり」



( ・□・)「彼女、ちょっと特殊でしてね」



( ´∀`)「そりゃ、あんな一人称するお転婆娘は現実にいないモナ。いたらハブられる」



( ・□・)「持ってるんですよ、こう……ね。見えない力というかなんというか」



( ´∀`)



(´∀` )「オカルト話なら小説にでもしてネットで公表したらどうモナ?例えば主人公が海産物とか。きっと書籍化映像化待ったなしモナ」



( ・□・)「――ヌミノーゼっていうんですがね」



( ´∀`)「……ヌミノーゼ?」

343 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:19:25 ID:BBq2DyFcO
( ・□・)「ええ。ドイツの神学者オットーが作った、聖なるものに面した時に生ずる、畏怖と魅惑」



(´∀` )「あー、そういう。はいはい」



( ・□・)「一応、真剣ですよ私」



( ´∀`)「……」



( ・□・)「もっとも、まず発現することはないのですが。それに"あてられた"ご両親が施設にいれたと」



( ´∀`)σ「──つまり、だ。大人になるにつれてそれが表にでてきたらまずいから、しっかり人格形成してくれと」



( ・□・)「ハハハ」



(´∀` )「あー断りてぇ」

344 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 00:20:31 ID:BBq2DyFcO
( ・□・)「そう言わずに。それにもう遅いですよ」



( ´∀`)「は?」



ガチャ





从 ゚∀从⊃「……」





从*゚∀从「帰り道、わかんね」

345 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:04:52 ID:BBq2DyFcO
〜〜〜

二時間後



茂名山探偵事務所



カタカタカタカタ

  ( ´∀`)
 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
   \/___/ ̄ ̄



| ゴロゴロ
|γ⌒X⌒ヽ ∩゙⌒゙⊃
|ヽ_乂_ノ从∀。从⊃



カタカタカタカタ

  ( ´∀`)
 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
   \/___/ ̄ ̄



| ゴロゴロ
|γ⌒X⌒ヽ⊂゙⌒゙∩
|ヽ_乂_ノ ⊂从。∀从

346 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:06:01 ID:BBq2DyFcO
从 ・∀从「ひまだー死にそうだー」



( ´∀`)「……」



从 ゚∀从「あー、暇だ。退屈は人を殺せるって偉い人が言ってたけどホントだな」



从 ゚∀从「つーか、探偵事務所ってわりに客こねぇし暇だし」



( ´∀`)「モナモナ、いいからちょっとは大人しく――」



/ ゚、。 / ガチャ



从*゚∀从「おっ!!誰か来」



从 ゚ε(ムギュッ⊂( ´∀`)「ん、いらっしゃいませ」



/ ゚、。 /「あのぅ……相続放棄とかってどうすればいいか教えてもらっていいですか?」

347 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:06:54 ID:BBq2DyFcO
( ´∀`)「相続放棄……?借金でもあるモナ?」



/ ゚、。 /「ええ……父親が借金をして蒸発しまして」



从 ゚д∩スリスリ「うわ、最低だな」



( ´∀`)「こらっ」



/ ゚、。 /「……こちらの方は、助手さんですか?」



( ´∀`)「えっ」



从゚∀ 从「えっ」



/ ゚、。 /「えっ」

348 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:07:56 ID:BBq2DyFcO
(; ´∀`)「あ、ああ、この娘は──」



从 ゚∀从「そうだよ」



(´∀` ;)「は?」



从 ^∀从「ここの助手、ハインちゃんでーす」



/ ^、。 /「お若いのに大変ですね」



从 ゚∀从「えへへ」



(; ´∀`)「い、いや、この娘は」



从 ゚、从「話し合わせろよ、居候だなんていったらあんた胡散臭すぎるぞ」



(; ´∀`)「……」

349 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:09:09 ID:BBq2DyFcO
( ´∀`)「えー、っと。それで……お父さんの借金でしたか」



/ ゚、。 /「はい。2000万ほど」



从;゚∀从「うっわ、半端ねぇ」



从 -∀从(ぜってーややこしいんだろうな、これ。ましてこんなおっさんだ、何ヵ月かかるか……)



( ´∀`)「なるほど。わかりました。では一週間ほどで」



/ ゚、。 /「え、そんなに早く!?」从 ゚∀从



/ 。、゚/「……」从゚∀ 从



( ´∀`)⊃「すぐに済みます。どうぞ、契約書をお読みください。問題なければこちらに……」

350 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:10:38 ID:BBq2DyFcO
〜〜〜



車内



( ´∀`)「事務所で大人しくしてろって言ったのに……」



从 ゚∀从「暇だもん。今からいろいろ聞き込みとか捜査とかするんだろ?面白そうじゃん」



( ´∀`)「相続放棄の依頼でそんなことしないモナ……」



从 ゚ー从「へへん、騙そうたってそうはいかねぇぞ、おっちゃん」



( ´∀`)「お、おっちゃんは勘弁してくれモナ。せめてモナさんとか……」



从 ゚∀从「じゃ、モナー」



( ´∀`)「え、モナー?」



从 ゚∀从「茂名山だし、モナモナ言うからモナーでいいじゃん」



( ´∀`)「……」



(* ´∀`)

351 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:11:38 ID:BBq2DyFcO
从 ゚∀从「なぁなぁそれより相続放棄って何だ?」



( ´∀`)「ん……簡単に言えば親から受けた相続を私はしませんって公的に証明することモナ」



从 ゚―从「えー、もったいないじゃん。それって親から貰えるはずの遺産も、貰えなくなるんだろ?」



( ´∀`)「そうだモナ。でも借金だって財産に属する権利や義務だモナ。必ずしもプラスにはならないモナ」



从 ゚∀从「じゃあ遺産も借金も両方あったらどうすんだよ」



( ´∀`)「遺産の方が多ければ"単純承認"、どちらかわからなければ"限定承認"すればいいモナ」



从;゚∀从「はぁ?」

352 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:13:14 ID:BBq2DyFcO
( ´∀`)「単純承認はプラスもマイナスも全部相続するってことモナ。なんの申請もせずに放っておいたら勝手にこれになっちゃうから注意モナ」



( ´∀`)「限定承認はプラスからマイナスを弁済して、仮に債務超過の場合は相続人の固有財産で払う責任を負わないって話モナ」



( ´∀`)「遺産の方が多いのか、借金の方が多いのかわからないからリスクを減らして利を取るってことモナね」



从 ゚∀从「……」



( ´∀`)(ふふふ、ちょっと難しすぎたモナ?)





从 -∀从「なぁ、それじゃあさ」




从 ゚∀从「"全部"限定承認でいいんじゃねぇの?」





( ´‐`)(モナ……!)

353 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:14:32 ID:BBq2DyFcO
从 ゚∀从「相続放棄は全部捨てる。単純承認は全部貰う。じゃあ限定承認はいいとこだけ貰うって話なんだろ?」



从 ゚∀从「ならわざわざ他の方法よりも限定承認しとけば損はしないし得することもあるじゃん」



( ´‐`)「……」



从 ゚∀从「なぁなぁ」



( ´∀`)「ん……そうだモナね。でも残念がら簡単にはいかないモナ」





( ´∀`)「民法第923条、共同相続人の限定承認モナ」





从 ゚∀从「あ?」

354 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:18:36 ID:BBq2DyFcO
( ´∀`)「相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。そういう決まりがあるモナ」



从 ゚、从「んー……?ようするに、反対する奴がいちゃできないってことか?」



( ´∀`)「そうモナ」



从 ゚∀从「なるほどなるほど。それで、この依頼とどう関係してくるんだ?」



( ´∀`)「うん、それで──」



( ´д`)「って何を話させるんだモナ!君には関係ないモナ!」



从 ゚∀从「えー、助手だぞハインちゃん」



( ´∀`)「その一人称を止めたら考えてやるモナ」



从 ^∀从「マジ?」



( ´ヮ`)「嘘だモナァ!」



从#^∀从「殺すぞおっさん」

355 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:20:37 ID:BBq2DyFcO
( ´∀`)「さて……ついたモナ。大人しくしてるモナよ?じゃ」



从 ゚д从「あー!ま、待ちやがれ、私も捜査に──」



从 ゚‐从「ってここ」



从 ゚―从「役所じゃねぇか」

356 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:22:03 ID:BBq2DyFcO
〜〜〜



したらば市役所



窓口



(゜д゜@「こんにちは」



( ´∀`)「こんにちはモナ。この人達の戸籍謄本の写しをもらいたいモナ」



(゜д゜@「失礼ですが、委任状はお持ちで……?」



( ´∀`)「ああ、それなら──」



\从 ゚∀从/「いたー!」



(゜д゜@「?」



( ∩д`)「あのバカ……」

357 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:23:29 ID:BBq2DyFcO
从 ゚∀从「なにやってんだよ、モナー!」



( ´∀`)「それはこっちのセリフモナ。大人しくしててって言ったのに」



从 ゚ー从「やーだね。っていうか、なに?謄本?本人でもなけりゃ委任状も持ってないのに戸籍謄本の写しなんて貰えるわけないじゃん」



(; ´∀`)「おい……」



(゜д゜@「あらやだ、お持ちでない、のですか?」



(; ´∀`)「あ、いや、ですから」



(゜д゜@「……」ジーッ



从;゚∀从(うわ、めっちゃ睨んでる)

358 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:24:30 ID:BBq2DyFcO
( ´∀`)⊃□「はいはいはいはい、これ、これ」



〃ヒョコ从 ゚∀从「なんだそりゃ……職務上請求書?」



(゜д゜@「あら、行政書士の方でしたか」





( ´∀`)「ええ、申し遅れました」





( ´∀`)「"行政書士の茂名山"です」

359 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:25:43 ID:BBq2DyFcO
〜〜〜

車内



从 ゚ο从「すげぇ……依頼人から親兄弟のまで……赤の他人の戸籍謄本全部手に入れやがった……」



( ´∀`)「モナモナ、これでオッケーモナ」



从;゚∀从「やっぱ面倒なんだな、相続放棄って……」



( ´∀`)「いや、普通に放棄するだけならここまで手間はかからんモナ。」



从;-∀从「じゃあなんで……っていうかモナーって……なんなの?探偵じゃないの?」



( ´∀`)「ん、探偵の茂名山モナ」



从 ゚∀从「でも行政書士って」



( ´∀`)「ん、行書の茂名山モナ」



从 ゚д从「どっちだよ!!」

360 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:27:05 ID:BBq2DyFcO
( ´∀`)「どっちもだモナ。行政書士の業務遂行に必要な職務上請求書があれば、こうやって謄本の写しを手に入れることだってできるモナ」



从;゚∀从「……それって、あれじゃね。職権乱用じゃねぇの?」



( ´∀`)「そうモナね。探偵業としてやるなら」



从;゚∀从「はぁ?」



( ´∀`)「探偵事務所とは別に賃貸で行書の事務所を持っているモナ。行政書士の仕事としてまっとうなことをしているだけモナ」



从 ゚∀从「屁理屈だ……バレたらどうなるんだよ」



( ´∀`)「えらいことモナ。まぁ、バレないようにやってるからいいんだモナ」

361 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 01:28:30 ID:BBq2DyFcO
从 -∀从「はぁ……あれだな、あんた。まともそうに見えてずいぶんとまぁ……」





从 ゚ε从「むちゃくちゃだなぁ、おい」





( ´∀`)「モナモナ、お褒めに預かり光栄ですモナ、助手君」



从 ゚∀从「……え?」



( ´∀`)「こんな場面見られちゃ、タレこまれても困るモナ。これからしばらくはよろしくモナ」



从;゚д从「い、いやだ!こんな探偵、ハインちゃんいやだ!」



( ´д`)「こら、うちに居る以上、その一人称を止めろモナ」



从;゚∀从「やだぁーー!!」




( ´∀`)「モナモナ。さて、次はこの謄本からどういう家庭事情になっているのか調べるモナよ、ハイン」

362 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:02:20 ID:BBq2DyFcO
〜〜〜

高岡探偵事務所



【+  】ゞ゚)⊃Цズズー



【+  】ゞ゚)「っと、まぁ、あの子も小さいときは可愛かったんだよ、うん」



('A`)「あ、あの」



【+  】ゞ゚)「それがどうしてあんなじゃじゃ馬に……ああ、続きだったね。それで──」



(;'A`)「あの!」



【+  】ゞ^)「ん、整形するかい?」

363 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:03:54 ID:BBq2DyFcO
(;'A`)「そうじゃなくて!その……ヌミノーゼってなんですか?」



【+  】ゞ゚)「ヌミノーゼ、またはヌミノースか……時に助手君、君は宗教に入っているかい?」



('A`)「え……」





(-A-)





( A )「……宗教は嫌いです」



【+  】ゞ゚)「そうかい。あれほど金を稼げる──失礼、人を助ける集まりはなかなかないのだがね」



('A`)「人を助ける?逆でしょう、人を苦しませるものだ」



【+  】ゞ゚)「ふむ。なにか嫌なことでもあったのかね」



('A`)「……」

364 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:04:49 ID:BBq2DyFcO
【+  】ゞ-)「"聖なるもの"」



('A`)「は?」



【+  】ゞ゚)「概略を説明しても仕方あるまい。ヌミノーゼというものは、非合理的な概念と思いたまえ」



('A`)「意味が──」



【+  】ゞ゚)「例えば。君が体験した言葉にできない感情や、言いようのない出来事」



【+  】ゞ゚)「それがヌミノーゼ。ラテン語でいうヌーメン──神威をもじったものだよ」



(;-A-)「理解できないです」



【+  】ゞ゚)「当然だ、理解できるものならこの世の宗教は全て合理的に説明できる」



(;'A`)「……」

365 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:06:41 ID:BBq2DyFcO
【+  】ゞ゚)σ「君が作ってくれたご飯、私なら一銭も払いたくもない。絶対に嫌だ」



('A`)(悪かったな……)



【+  】ゞ゚)「でも、君がもし何らかの宗教組織の中で、二番目に偉い立場の人間ならば」



【+  】ゞ゚)「この食事には大きな金額や、貴重な価値がつく」



(;'A`)「そんな大げさな……」



【+  】ゞ゚)「そういった、説明のできない概念というものを彼女は持っているんだよ。君も心当たりはないかね?」



('A`)(そういえば……)

366 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:09:24 ID:BBq2DyFcO
───



|゚ノ ^‐^)「そうですわね……ショボンヌ、どうしましょうか?」

(´・ω・`)「できれば高岡探偵と"ケリ"をつけたいのですが」

('A`)(ケリ?)

|゚ノ ^∀^)「ああ、"ケンカ"の続きでしたわね。勝てますの?」

('A`;)(おいおい、ケンカって……ハインとショボンヌさんが?冗談だろ、体格差どころか)

(-A-;)(マンガじゃないんだから勝負になるわけが──)

(´・ω・`)「わかりかねます」

(゚A゚;)「えっ!?」


(´-ω-`)「ですが、もう一度見てみたいのです」

(´・ω・`)「"見えない魅力"というものを」

('A`;)(見えない、魅力?)



───



('A`)(どう考えても勝負にならないショボンヌさんとのケンカ)


───

367 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:11:44 ID:BBq2DyFcO
───



( <●><●>)「主文」

( <●><●>)「被告人、宇都宮ドクオは」

( <●><●>)「無罪とする」



───



(-A-)(その前の公判でもう判決文は仕上がっているはずなのに、覆った判決……待てよ……ハインが特別弁護人になれたのもまさか)



【+  】ゞ゚)「心当たりがあるようだね」



(-A-)「……はい」

368 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:12:53 ID:BBq2DyFcO
【+  】ゞ゚)「それがヌミノーゼさ。絶対他者の存在っていう、不可侵の領域」



【+  】ゞ^)「簡単に言えば"化け物"さ」



(#'A`)「ッ……ハ、ハインは化け物なんかじゃない!」



【+  】ゞ゚)「そうだね、子供の時は少なくとも薄幸の少女だったろう」



【+  】ゞ゚)「でも今は違う。ある程度、意図的に相手を屈服させる力があるといっても過言ではない」



(;'A`)「なんで……なんでそんなこと……」



【+  】ゞ゚)「ん?なんでって」





【+  】ゞ゚)「整形したから」






(;゚A`)「……は?」

369 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:14:39 ID:BBq2DyFcO
【+  】ゞ゚)「制御することができないものだったのは間違いないけどねぇ、ちょっと手術したらさ……」





        制御可能
【+  】ゞ^)「化け物になってしまったんだよね」





(;゚A゚)「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ、整形!?手術?どういう意味なんだ!?」



【+  】ゞ゚)「ああ、別に顔や体は変えてないよ。中身はいじったけど」



(;-A-)「わ、わけがわからない……!教えてくれ、ハインは、ハインはいったいどういう」



从 ゚∀从⊃ ガチャ



(゚A`;)「あっ」



【+  】ゞ゚)ノシ「おかえりー」

370 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:17:00 ID:BBq2DyFcO
从 -∀从「……ったく、どこにいるのやらと思えば……」



从 ゚∀从「人のいないところでベラベラベラベラ」



从 ゚∀从「ヤブ医者でも刑法134条第1項くらい知ってんだろ」



('A`;)「ハ、ハイン……」



【+  】ゞ^)「ハハハ、秘密漏示か。私は一般人だよ。ちょっと手先の器用なね。おしゃべりくらい構わんだろう」



('A`)「なぁハイン、どういう事だよ!手術って……整形って」





从 ‐从⊃ガッ ゞ゚)





(゚A゚) ヒッ

371 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:17:48 ID:BBq2DyFcO
从 ゚‐从⊃;ゞ゚)「え、そんなに怒る?」



从 ゚‐从「答えろ、オサム。師匠の遺品に私のドナーカードがあった」



(;'A`)



从 ゚‐从「こいつはどういうことだ」



从 ゚‐从⊃;ゞ゚)(…………)



从 ゚‐从⊃ ゞ-)「フフ、おやおや、怒りを通り越して激おこプンプン丸か」



('A`;)

372 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:19:12 ID:BBq2DyFcO





从#゚д从「オサムッ!」





⊃ゞ゚)「借金返してくれたら教えてあげよう」





从 ゚‐从⊃「……」



     「……」⊃ゞ゚)

373 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/23(火) 02:20:36 ID:BBq2DyFcO



从 -、从⊃≡「チッ……!」【+  】ゞ゚)



('A`)「そ、そうだ!借金!ハイン、借金が10億ってどういうことなんだよ!?なぁハイン!」



从 ゚、从



【+  】ゞ゚)



从 -ο从「……ハァ……お前はまたそういう……」



【+  】ゞ^)「助手君、君、空気読まないって言われない?」



('A`)「え、あ……ぼ、僕は、ただ……」



从 -∀从「──わかったわかった、話してやる」



【+  】ゞ゚)「ほう、どういうつもりだね。君が身の上話とは珍しい」



从 ゚∀从「うるせぇ、ヤブ医者が。こいつは」



从 -∀从「うちの助手なんでな」



後編へ続く

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