( ^ω^)ポケットモンスター学園のようです

Part1

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24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:49:23 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 というのも、あの後調子に乗った僕は、「五回勝負して一回でも僕が負けたら
 またごはんをおごってやろう」と無茶なことを約束してしまったのだ。 以下一勝四敗。
 さすがに気まずく思ったのか、クールがなにやら慰めの言葉をかけてくれるが、耳に入らない。
 それよりも、このお調子者な性格はなんとしてでも直しておきたい。 そう思っていた。
 
 
川 ゚ -゚)「でも、だな。 実技もだめ、頭もだめなのに学園に生き残ってるなんて、強運の持ち主だぞ」
 
( ; ω )「……的確に僕の急所を衝いてきますおね。 あんたは特性、『きょううん』かお」
 
川 ゚ -゚)「お。 『きょううん』持ちのポケモンを三匹答えてみよ」
 
( ;^ω^)「は!? ……えっと、マタドガス!?」
 
川 ゚ -゚)「……顔で決めてやるなよ」
 
( ; ω )「はぁ………」
 
 
.

25 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:50:07 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 これで七度目くらいかな。 いや、まだ六度目だ。
 わるい♀エじのポケモンといえばマタドガスが真っ先に浮かんだのだ。
 マタドガスとは、ヤクザのような目でドクロマークを胸に刻み、紫色で、ドスの利いた鳴き声で、加齢臭のような臭いが――
 
 
川 ゚ -゚)「マタドガスに……恨みでもあるのか?」
 
( ^ω^)「前レンタルポケモンとして使ったんだけど、なんだおアイツ。 臭ぇお」
 
川 ゚ -゚)「……あー」
 
( ^ω^)「しかもしばらく臭いがとれなかったから、午後の授業で周りから凄いヤな目で見られるし。 ヤなカンジぃー、だお」
 
川 ゚ -゚)「一応言うと、あの臭いが香水になるのだぞ」
 
( ^ω^)「へー……」
 
( ;゚ω゚)「はァ!?」
 
 
.

26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:51:00 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 「一般教養として有名なのだよ」と吐き捨てて、クールはすたすたと歩いていった。
 衝撃に駆られた僕ははッとして、遅れないように着いていく。
 ――うちのカーチャン、ドクロマークの香水を使ってると思ってたら、アイツだったのか。 あとで割ってやる。
 
 
川 ゚ -゚)「――そうそう」
 
( ;^ω^)「は! ……はい?」
 
 
 突然、クールが振り返った。
 太陽を背にしているので、逆光の効果もあって、絵になる場面である。
 風に長い髪を預け、思い出したかのように歩み寄ってきた。
 
 
川 ゚ -゚)「明日、早朝特訓をしよう」
 
( ^ω^)
 
 
 なにをいきなり。
 
 
.

27 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:51:42 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
川 ゚ -゚)「運がいい――とさっきは言ったが、常識的に考えて本当に強運なわけがない」
 
川 ゚ -゚)「だから私が稽古をつけてやろうとだな」
 
( ^ω^)「お断りぃ……したいんですけどぉ……?」
 
 
 わざと裏声を使って、クールのご機嫌を窺う。
 直後、胸ぐら――ではなく、首を直接捉えられた。
 喉仏に手が食い込む。痛い。
 
 
川 ゚ -゚)「ごめん、聞こえなかった」
 
( ;゚ω゚)「   、  ッ  」
 
川 ゚ -゚)「もう一度言ってくれないか? 沈黙は肯定と見る」
 
( ;゚ω゚)「 ―――  ゃ … ぉ !」
 
 
 残念、喉が動かない。
 当然だろう、息を出せないんだもの。
 
 
.

28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:52:28 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
川 ゚ -゚)「三、二、一……。 そうか、喜んでお受けしたいか。 そうかそうか」
 
( ;゚ω゚)「――ッ!」
 
 そう言って満足そうな笑みを浮かべて、クールは手を離した。
 倒れ込むように地面に突っ伏して、生の確認をする。
 さすがに彼女でも人を殺めたりはしないだろうと思うが、今のはアブナかった。
 ――さすがに強引すぎやしないか?
 
 息を充分に整え、立ち上がる。
 まだぜえぜえと肩で呼吸をしてしまうが、構わない。
 クールの肩をぽんぽんと叩き、その旨を訊いてみた。
 
 
川 ゚ -゚)「どうした」
 
( ;^ω^)「――えっと、早朝特訓とやらは別にいいんだけど……その、強引じゃないかお?」
 
川 ゚ -゚)「そうか?」
 
( ;^ω^)「本当は僕のことが好きで、一緒にいたいから――なんてお」
 
 
 自分で頭を叩いて、おどけてみせる。
 しかし対照的に、クールは真顔で顎に手を当てた。
 
 ―――まさか!
 
 
.

29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:53:11 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
川 ゚ -゚)「案外、そうかもな」
 
( *゚ω゚)「お!?」
 
川 ゚ -゚)「君ほどいじめ甲斐のない者はいない」
 
( ^ω^)「許してくださいお……お願いだから……」
 
 
 真顔で返すと、彼女は鼻で笑った。
 
 
川 ゚ -゚)「ふん、冗談だ。 とにかく、明日の六時に、でも」
 
( ^ω^)「結局特訓は既定事項ですかお……別にいいけど……」
 
川 ゚ -゚)「そうか。 じゃあ」
 
( ^ω^)「へ」
 
 
 クールに掌を地面と垂直に見せられたので、周囲を見渡すと、いつも僕とクールが別れるところにまで来ていた。
 知らぬ間にここまで来ていたのか――。
 
 
.

30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:54:04 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
川 ゚ -゚)「安心しろ。 私のポケモンの、新しい技を試したいだけだ」
 
( ^ω^)「ああ……さっきのは大義名分で、本命は実験台ですかお……だろうな、と思いましたけどお……」
 
川 ゚ -゚)「男がねちねちするな、マタドガスみたいになるぞ」
 
( ^ω^)「ねちねちはむしろベトベトンだお。 なんだおアイツ、臭いがマタドガスとはまた違うベクト」
 
川 ゚ -゚)「君が毒タイプと縁がないことはわかった」
 
( ; ω )「はぁ………」
 
 
 そろそろ七度目の溜息か?
 肩を落とすと、クールは鼻で笑い、口角を吊り上げて僕の肩を叩いた。
 
 
川 ゚ -゚)「まあ、肩を落とすな。 それに、君のそんなところ、結構好きだぞ」
 
( ^ω^)「へ?」
 
川 ゚ -゚)「じゃあ、明日」
 
( ;^ω^)「あ、聞き取れなかったお! もう一回お!」
 
 
.

31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:54:44 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 クールが帰ろうとするので、逃がさないように僕は声を張り上げた。
 しかし、「はっはっはっはー」と、無表情で高らかに無機質な声で
 笑いあげただけで、彼女はそのまま僕の視界の奥の方へと進んでいった。
 
 
 一人取り残された僕を、風が浚おうとする。
 なぜか、虚無感に襲われ、僕は八度目になるであろう溜息を吐いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:55:27 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 

 
 
 
( ><)「………」
 
 
 カツ、カツ、と、音をたてて館内を巡回する。
 外は明るく、しかし早朝練習をするどこぞの部員がやってくるには早すぎる時間。
 それでも、僕はこうして警らをかかさない。
 
 ポケモンなんていう情報研究価値が国家レベルの存在を前にしているのに、
 それを覆うセキュリティーが薄ければどこぞの悪党にそれらを悪用されかねない。
 だからこそ、こうして僕のような教師はシフト制で校内を巡回し、不審者の存在を警戒するのだ。
 
 教師そのものが少ないのも、やはり取り扱うものがポケモンだから、だろう。
 僕がこうして教壇に立つ身になっているのは、正直言ってただ運がよかったとしか言えない。
 同僚にもよくそのことで笑われるのだ。
 
 
.

33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:56:37 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
( ><)「B棟も問題なし……ですか」
 
( ∵)
 
( ><)「不審者はいなかったですか?」
 
( ∵) フルフル
 
( ><)「ですよねー…」
 
 
 種族名、ダグトリオ――
 ニックネーム、ビコーズに問いかけるも、結果は同じだった。
 寡黙ゆえ耳がよく、また『ありじごく』というセキュリティーには
 ふさわしい特性を持っている彼なら何らかの異変を感じていてもおかしくはなかったのだけど――
 
 ポケモンを取り扱う世界で唯一の学園なのだから、
 こんな言い方をしては悪いが、不審者がぞろぞろやってきてもおかしくはないのに。
 
 確かに最新のセキュリティーシステムが常時稼働しており、
 加えて無断侵入だけで重罪が課せられるのだから、
 よほど頭が悪くない限り侵入しようとすら思えない気持ちも汲めなくはないが。
 
 
( ><)「C棟、D棟は――まあ、一応見ておくんです」
 
 あそこは主に生徒が使う練習部屋や実技試験に使うバーチャルステージくらいしかなく、別段侵入されていてもなんともない棟だ。
 セキュリティーシステムもあることだし、いざというときの被害を考えても後回しにしても良いのだが、念のため。
 
 全個室にも監視カメラが常備されており、使用中かどうかは詰め所に行けばわかる。
 たまに早朝特訓と称してトレーニングを行う生徒もいるため、不審者の確認だけして引き返すとしよう。
 そう思って、足を向ける。
 
 
.

34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:57:22 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
( ><)「えっと、利用者は――」
 
 コンピューターを操作し、クリックする。
 ちいさなウィンドウが現れるので、それを拡大する。
 
( ><)「一応一人は来てるみたいなんです。 ……まあ、生徒だし問題なし、と」
 
 
 実技自習室は学園関係者しか所持できないカードを通さないと、利用できない。
 そのカードのデータも正式なもののようだ。
 
 確認も済んだし、さて、引き返そう――
 そう思って、僕がC棟から出たとき。
 僕は違和感を覚えた。
 
 
( ><)「……どうしたんです、ビコーズ?」
 
( ∵) ソワソワ
 
 C棟の前で待機させておいたビコーズが、僕を見るやいなや躯を震わせてみせたのだ。
 平生のビコーズではない。
 そう思った途端、僕はいやな予感がした。
 
 
( ;><)「不審者!?」
 
 
.

35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:58:13 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 はッとして、上を見上げる。
 見上げた理由は、いくつかあった。
 なんとなくというのもあるし、セキュリティーシステムが薄いのは上だから、というのもある。
 
 しかし、そんな「なんとなく」よりも先行して脳裏を駆けていったものがあったのだ。
 ―――なにかの音が、聞こえる。
 
 
 空、太陽の方角から、その姿を逆光に包んだ何かが学園にやってくるのが見えた。
 かなり遠くのようで、大きさは点ほどしか見えない。
 
 しかし――否、そのことそのものがおかしいのだ。
 点にしか見えなくなる距離なのに、その何かは「音をたてている」。
 推定――三十メートルはゆうに超える、そんな大きさの何かが――
 
 
 
( ;><)「は、はァァァ!?」
 
 
 
 ―――数え切れないほど、やっていた。
 だんだん大きくなっていく。 学園に近づいているという証拠だ。
 それにしたがって奏でている音も大きくなってゆく。
 
 
.

36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:58:55 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 徐々に姿も鮮明になってきた。
 そして、その何かの正体がわかった。
 
 
 
( ;><)「い、岩!?」
 
 
 
 更に、轟音をたててやってきつつあるその巨大な岩が狙っているのが、ここ、C棟であることに気がついた。
 少し――いや、かなり驚いたもののしかし、迫り来る恐怖を野放しにするようでは警らの意味はなく、また教師失格だ。
 腰を抜かしていたのが一転、僕は本能的に「コイツ」を繰り出した。
 
 
( ><)「行くんです、ソーナンデス!」
 
( >w<)『そぉぉーなんです!』
 
 
 
 分類名、がまんポケモン。
 種族名、ソーナンス。
 ニックネーム――ソーナンデス。
 
 僕の、相棒だ。
 
 
.

38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 22:59:55 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 
( ><)「目標、謎の岩! 高度不明、威力不明、着地点――ここ!」
 
( ><)「迎え撃つんです―――『カウンター』ッ!!」
 
( >w<)ゞ『そぉぉぉーーーなんですッ!』
 
 
 ソーナンデスの躯を中心に、赤い膜のようなものがC棟をも覆う。
 おそらく、この岩はどこぞのテロ組織が撃たせた、ポケモンの技だ。
 そして、これはどうみても「岩」。
 巨大な岩が幾つも落ちてくる、岩の技――
 
 岩ポケモンが好んで使う、「いわなだれ」だろう。
 これほどの規模は見たことがないが、おそらくゴローニャやハガネールといった重戦車型の岩ポケモンが放ったと見ていい。
 
 ポケモンは未知数。 紙面上にあることだけが事実ではない。
 どんな相手だろうと、僕は一人のポケモントレーナーとして、迎え撃つのみだ。
 僕のソーナンデスが跳ね返せなかった攻撃は、ない。
 
 
( ><)「テロ組織め、後悔するんです!」
 
 徐々に岩が近づいてくる。
 岩のしわまで鮮明に見える。
 その岩々が、ソーナンデスの張った「カウンター」の結界に――触れた。
 
 
.

39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:00:43 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ――直後、僕は驚愕に襲われた。
 
 「カウンター」の結界が、あっさり砕かれたのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
.

40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:01:34 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 
( ;><)「な―――な―――」
 
( ;>w<)『なんですとぉぉぉぉぉ!?』
 
 
 耳を貫き躯を壊すような轟音が、目の前にまでやってきていた。
 岩の数々が、C棟にぶつかってはC棟を壊し自らを砕いてゆく。
 C棟の瓦礫に岩の砕けた破片と、細々とした岩が雨のように降ってくる。
 
 砕かれた、といっても、それでも大きさはふつうの岩と比べるとしゃれにもならない大きさだ。
 もろに受けるだけで骨折や脊髄損傷は免れないだろう。
 だから、僕は咄嗟に
 
 
( ;><)「ビコーズ、穴を掘るんです!」
 
(`∵) コクコク
 
 
 ビコーズを使って、ソーナンデスと一緒にその場から逃げた。
 
 次々と、岩がC棟をはじめ周囲の情景を打ち崩してゆく。
 そんな悲惨な光景を、残して。
 
 
 
 
 
.

41 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:02:15 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 

 
 
 
( ^ω^)
 
 おはようございます、ブーンです。
 僕は今、目覚まし時計を手にとっては固まっている。
 ビリリダマを象った目覚まし時計で、スヌーズ機能作動中に
 起きないととてつもない爆音を鳴らしてくるというご近所迷惑な時計だ。
 
 そして僕は今、その爆音を聞いて起きた。
 五時半にアラームを設定して、五分に一度スヌーズ機能が作動し、それが五回続く。
 爆音はその延長上に鳴らされる。つまり――
 
 
( ^ω^)「六時」
 
( ^ω^)
 
( ^ω^)「クーとの待ち合わせが、六時」
 
( ^ω^)
 
 
 朝ごはん、まだ。
 トイレ、まだ。
 歯磨き、時間割、やる夫の朝ごはん、その他全部、まだ。
 
 
( ^ω^)
 
(  ゚ω゚)「うわあああああああああああああああああああああああああ」
 
 
.

42 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:03:02 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 何かに背中を蹴られたかのように、飛び起きた。
 急いで寝間着を脱いで、ぼさぼさの髪はそのままで着替えをはじめる。
 しかしどう考えても遅刻確定なわけで。
 だが、ほんの二分や三分や三十分くらい、クールなら――
 
 間違いなく、尻に爆竹を埋められる。
 貞操の喪失以上の危機感を感じ、僕は傍らでまだ眠っているであろうやる夫を蹴り上げた。
 しかしふつうのビーダルより十キロ以上も重いこいつを、僕の蹴りで起こせるはずもなかった。
 
 
(  ゚ω゚)「やる夫、手伝えお!」
 
( ‐ω‐)「サナたんかわいいお……やる夫の嫁になるお……」
 
(  ゚ω゚)「なァーーに不定形ポケモンに欲情してんだお! 起きやがれ!」
 
 お腹の辺りを蹴る。
 無防備に仰向け、大の字で寝るビーダルなんて前代未聞だが。
 強めに蹴る。反応した。
 
 
.

43 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:03:55 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
( ;‐ω^)「――ちょ、痛いお! なんだお!」
 
(  ゚ω゚)「ブーンの朝ごはんと歯ブラシとおまる持ってこいお!」
 
( ^ω^)「対価はなんだお?」
 
(  ゚ω゚)「ブーンのあっつ〜いキッスをやるお! 嫌ならガリガリ君の梨はなし!」
 
( ^ω^)「ちょwwwwwふざけんなおwww」
 
(  ゚ω゚)「れっつらごーだお!」
 
( ‐ω‐)「れっつらごー」
 
( ^ω^)「だっておwwwwwww」 バンバン
 
 
 
 今度はやる夫の急所を蹴った。
 やる夫は涙目になり、二足歩行でどすどす跫音をいわせながら駆けていった。
 
 
 
.

44 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:04:38 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 
 
( ^ω^)「ほご……ほご……」 シャコシャコ
 
( ^ω^)「このサンマ、骨が多いお……」
 
 
 やる夫が持ってきた朝ごはんだが、カーチャンの何のいじわるか
 卓上には納豆のパックと白米、サンマの開き、味噌汁、だし巻き玉子、漬け物と云った
 朝食のフルコースが載せられていたらしく、やる夫にそれらをシュールな顔で手渡された。
 
 今ごろカーチャンはパートに出てるだろう。
 いつもはもう少し――いや、適当が過ぎる内容だというのに、
 なぜ今日のように時間がない日に限ってここまで凝っているというのか。
 
 当然、律儀に食べていればいつもの登校時間になってしまう。
 だから漬け物だけ食べて、残りは全部やる夫にあげた。
 最初は喜んで食らいついていたが、量が半分をきる辺りから徐々にやる夫は真顔になってきた。
 箸を両手に一本ずつ握って、ドラムの真似事すらはじめる始末である。
 母よ、あなたの残した功罪は大きかったのではないか。
 
 冷静になりつつ、歯を磨き終える。
 口内のそれをやる夫が持ってきたおまるに吐く。
 
 
.

45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:05:19 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
( ^ω^)「がっららら……」 ペッ
 
( ^ω^)「おまるってそう使うのかお。 てっきり――」
 
( ^ω^)「朝ごはん中にそんな言葉を言うものではありませんお」
 
 確かに大きい方をしたいと思う気持ちはあるが。
 やる夫に言葉を吐き捨て、乱れた服を整えつつ玄関に向かった。
 六時七分――まだ間に合う。
 
( ;^ω^)「お、置いてくなお!」
 
 頭としっぽだけが残されたサンマの残骸を丸呑みし、やる夫も着いてきた。
 こいつの場合、朝食セットごとモンスターボールに入れればのんびり朝食の続きを楽しめそうなものなのだけど。
 なんてことを提案する間もなく、ボールの開閉スイッチを押し、赤い光をやる夫に当てた。
 
 
( ^ω^)「走れば十分……いや、七分でなんとか……」
 
( ;^ω^)「……移動用のポケモンが欲しいお!」
 
 そう嘆くが、ビーダルの歩行速度と比べれば僕の走りの方が速いのはいうまでもない。
 やる夫の場合、その差はより顕著だ。
 家の戸締まりを確認し、そのまま僕は学園に向かって走り出した。
 
 
.

46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:06:11 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 

 
 
 
( ;^ω^)「あとはこの信号さえ抜ければ……」
 
 六時十一分。
 この信号を抜ければ、学園には着いたも同然なのだ。
 ただ、その信号の間隔が非常に長く、「開かずの間」と呼ばれているだけで。
 
 脳内で念じて、信号に問いかける。
 いつもいつも、こいつには迷惑をかけられる。
 今回だけは便宜をはかってくれお!
 ――なんて訴えても無駄なわけで。
 
 結局、一分超の時間をロスしてしまった。
 クールよ、恨むなら信号――いや、やる夫――いっそ、ビリリダマ目覚まし時計だ。
 僕は悪くない。
 
 そもそも、こんな時間に呼び出す方がおかしいのだ。
 朝練をする生徒もおそらくまだいないだろう。
 ジムリーダー志望のきまじめな生徒が、自主練習にくるくらいで。
 その証拠に、学園はまだ平穏と静寂に包まれているはずだ。
 ここから前方、ちょうど学園のB棟とC棟が見えるのだが、やはりこんな時間には誰もいな―――
 
 
.

47 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:06:54 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
( ;^ω^)「ッ!」
 
 瞬間、僕は立ち止まってしまった。
 迫り来る恐怖を前に、仁王立ちして往生してしまったかのように。
 実際、僕の胸中を一瞬にして黒い靄が包んだ。
 
 C棟が、ここから見えるだけでも、半壊しているのだ。
 煙をあげ、ぱらぱらと瓦礫が落ちたり未だに崩壊を続けている音が断続的に聞こえる。
 耳を澄ましてみると、人集りができていることにも気がついた。
 近隣の住人や学園の関係者が集っているのだ。
 足の痛みとクールの存在を忘れ、僕はその人集りに加わった。
 
 
   「なんの騒ぎだ!」
   「何が起こったの!?」
   「校長をだせ!」
   「原因不明のテロなんです! いま警察にも通報してるんです!」
 
 
 校内に早朝から見回りをしていたのであろう教師や事務員たちが、一般人を宥めにかかっている。
 飛び交う罵詈雑言は、ただ野次馬魂がかきたてただけであろう存在をも彷彿とさせる。
 
 つまり、それほどの事態だ、ということだ。
 実際に、校舎が半壊するなど、信じられない事態だ。
 僕自身、野次馬の一員になって真実を追究したい気持ちはある。
 
 
.

48 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:07:34 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 門の前からでも、奥の方に見えるC棟の半壊の様子は窺える。
 建物を、ここから見て右上から殴りつけられたかのような崩壊のしようだった。
 その周囲は大小問わず大量の瓦礫が転がっている。
 近くにあるD棟の聳える敷地にまで、それらは飛び散っているようだ。
 
 C棟を、学園であらかじめ待機していた事務員や警備員が囲う。
 瓦礫を除ける作業で手一杯なようだ。
 警ら用のポケモンとして学園で所持しているコイル、レアコイルも
 その作業に加わっているのを見ると、先を急ぐ事態のようだ。
 
 ―――と、ここまで見て気づいたことがある。
 警備員たちが、必死に声をかけているということだ。
 声までは聞こえてこないが、その身振りでわかる。
 
 
 ―――生き埋め?
 
 
 ぞッとした感情が芽生え、背中を冷たい何かでなぞられたような心地に見舞われる。
 まさか、この学園で死傷者が――?
 
 眼が見開かれるのを実感していると、同時に視界の端に人影が突如として現れた。
 僕もはッとしてそちらの方を見る。
 そして、その人を見て、再び僕は眼を見開いた。
 
 躯全身が砂埃のようなもので覆われている。
 服の所々が裂けていて、顔に赤く滲んだ打撲痕すら見える。
 ふらふらで、僕を見つけたのか、こちらにのそりのそりと歩み寄ってくる。
 容姿はだいぶひどいことになっていたが、僕は彼女が誰かすぐにわかった。
 
 
.

49 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/08(木) 23:08:40 ID:f3nl7ZIU0
 
 
 
 
( ;゚ω゚)「………ど、どうしたんだお……?」
 
 
( ;゚ω゚)「……クーっ!!」
 
 
 
 
 
 
 
川;:゙, - )「………。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

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