- 605 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:17:04 ID:yxd5hMoA0
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BGM: http://www.youtube.com/watch?v=EHUOkQz-2DU
('A`)
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- 606 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:18:22 ID:yxd5hMoA0
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┌───┐
19.│ 大 情│
│ 陸 熱│
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┃ ('A`). .┃
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ヽ __ -┼─ .ヽ、_丶丶 ./ ┼
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┃無職 ┃
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┃Dokuo Ututa _Vol.1_2014 .┃
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- 607 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:19:36 ID:yxd5hMoA0
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この番組はご覧のスポンサーでお送りいたします
クオリティ&チャレンジ
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(-@∀@)アサピービール
すべてはお客様のうまい!の為に
<ヽ`∀´> N I D A D A
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- 608 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:22:17 ID:yxd5hMoA0
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Not in Education,Employment or Training. NEET. 若年無業者。
それは、現代社会の闇。人々は口をそろえて、そういう。
「おはようございます」
('A`)「あ。チス。上がってください」
少しはにかみ、出迎えてくれた。
無職。鬱田 ドクオ。28才。
「お家、誰もいらっしゃらないんですか?」
('A`)「あ。親、仕事なんすよ」
当の本人は働いていない。
('A`)「あ。こっちです。部屋」
招き入れてくれた部屋は、足の踏み場もない状況だ。
もう何年も掃除をしていないという。
- 609 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:23:24 ID:yxd5hMoA0
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鬱田 ドクオと言う、男。
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- 611 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:26:02 ID:yxd5hMoA0
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【鬱田 ドクオと言う、男。】
TOSHIBA PD714T7LBXB(プレシャスブラック) REGZA PC D714/T7LB 。
彼の愛用のパソコンだ。
タッチパネルとハンドジェスチャで、操作も快適なdynabook REGZA PCという触れ込みで、人気も高い。
('A`)「あ。最近買い換えたんですよ」
「え、でも仕事してないんじゃ……」
('A`)「親が出すんで。ちょっと怒鳴ればちょろいっすよ」
世間的には、我が門で吠える犬なし、とも評されるだろう彼の発言。
猛々しい程の口調からは、野獣が見える。
('A`)「さて……、と」
パソコンに向かう。
これは、彼の日課だ。
- 612 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:27:30 ID:yxd5hMoA0
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('A`)「最近、始めたんスけどね」
ハマっているネットゲームがあると言う。
('A`)「なかなか、面白くて……。最近、ギルドマスターになったんす」
ギルドマスター。
同じゲームをする仲間を集め、グループにする。それを取り仕切るのがギルドマスターだ。
('A`)「大変ですよ。休む暇も無いっていうか……」
最前線で戦い続けるためには、日々努力が必要だ。彼は、そういう。
('A`)「ライバルも多いんで。負けてらんないですよね」
世界的にも人気なこのゲーム。
仲間を率いて、真っ向から戦いに挑み続ける彼は、日本の枠には収まりきらない。
戦いの舞台は、もう既に世界のフィールドだ。
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- 613 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:28:24 ID:yxd5hMoA0
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( ^ω^)「ドクオは……、なんていうか。走り続けてるんですよね」
中学校の友人 内藤ホライゾン
( ^ω^)「中学校の頃から、そうでした。何にも負けたくないって言うか……」
( ^ω^)「ほら。いたじゃないですか。クラスの大将というか、人気者というか……」
( ^ω^)「そういう人に対しても、決して臆さないんですよね。文句を言うんですよ」
( ^ω^)「ま、直接言わないで陰口になっちゃうところが彼らしいんですけどね(笑)」
川 ゚ -゚)「鬱田ドクオ……?」
中学校の友人 素直クール
川 ゚ -゚)「知らない……、ですね……」
川 ゚ -゚)「え? 同じクラス……? 中学で……?」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「知らない……、ですね……」
- 614 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:30:13 ID:yxd5hMoA0
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世界に挑み続ける勇気を持ち合わせ、実際に戦っておきながら
何故、彼は仕事をしないのか。
('A`)「あ。仕事って……、やること決まってるじゃないですか。つまんないんですよね」
('A`)「なんていうか、そういうのに収まりたくないって言うか……」
「ちなみに、仕事ってしたことあったり……」
('A`)「……ッス」
「はい?」
('A`)「無いっす」
「あ、無いんですか……」
('A`)「……ス」
疲れきり、くぼんだ目。
そして、その言葉からは、並々ならぬプライドが伝わる。
しかし、どこかそのプライドは恥ずかしげだ。
現代社会の闇。少なくとも、彼は小さな闇を持つ。
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- 615 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:32:33 ID:yxd5hMoA0
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鬱田 ドクオ。1986年に東京都立川市に生まれる。
('A`)<オギャーオギャー
父親は彼が幼い頃に死去。
それ以来、母親が女手ひとつで彼を育て上げた。
今では、彼も世界のフィールドで戦う一人。
____
|屋上遊園|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ('A`)
ヘI ノ( ノ )
('ω` ) < )〜
U U U U
子供の頃から動物に乗るのが大好きだった。
そして、何よりも好きなのが、ピーナッツバターだ。給食の時間では、内緒で2つほどくすねた事もあった。
そんな彼の幼少の時代が、今の美意識を支えているといっても過言ではない。
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- 616 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:33:58 ID:yxd5hMoA0
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就職氷河期と呼ばれる近年。彼もその時代の犠牲者の一人だった。
大学卒業間近、彼は急遽ライトノベル作家になる決意を固める。
( 'A`)「俺、ライトノベル書くんだ」
しかし、一度も公募に出すこともなく、今現在は無職をやっている。
('∀`)
彼は、今の生活に満足していると言う。
テレビのニュースを見ながら、スタッフにこう言った。
”外に出なければ、僕は傍観者でいられる。
悲しい悲鳴を聞いて、聞こえないフリをするくらいなら
僕は、傍観者で良い”
そして、彼は再び電脳の世界に足を踏み込んだ。
ブルーライトに照らされる、その目。
眼差しは、光の中へ。
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- 617 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:36:03 ID:yxd5hMoA0
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1月 某日 池袋
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- 618 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:37:30 ID:yxd5hMoA0
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その日、彼は珍しく外出した。
数カ月ぶりの外出だと言う。
( 'A`)「あ。こっちス。こっち……、多分」
お気に入りのチェックのシャツをズボンに入れて、颯爽と歩く。
流行に従わないその姿勢は、一つのプライド。
( 'A`)「……ジャマナンダヨナ」
彼は街の若者に厳しい。
前方にたむろする若者に文句を言う。
もちろん、若者本人に言うわけではない。彼いわく、職業・無職には優しさが必要不可欠なのだと言う。
陰口になるところも、愛嬌か。
('A` )「あ。ジュンク堂。こっちか」
ジュンク堂。
都内でも有数の大型書籍店だ。
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- 619 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:40:55 ID:yxd5hMoA0
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('A` )「今日、あるラノベの発売日なんですよ。特別な新刊はそこで買うって決めてるんです」
並々ならぬ、こだわり。
('A` )「一つひとつにこだわりって持ってないと、人間腐ってくような気がするんですよね」
「無職もこだわりですか?」
('A` )「あ。なんていうか、そういうのとは違うんですけどね、それは」
('A` )「最善を選んでるっていうか。そんな感じス」
「ははは……」
('∀` )「マジメな話ですよ」
取材期間、初めての笑顔だ。
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- 620 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:42:59 ID:yxd5hMoA0
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( ^ω^)「結構、言ってること正しかったりするんですよ」
中学校の友人 内藤ホライゾン
( ^ω^)「観察眼がある……、っていうんですかね……」
( ^ω^)「俺は人とは違うんだって。言動からにじみ出てますよ。実際違うんで、文句は言えないですね」
( ^ω^)「違う…、やっぱ、違うって言うのもおかしいですね……」
( ^ω^)「……ドクオは、ドクオなんですよ。それ以外に説明出来ないなぁ」
川 ゚ -゚)「鬱田ドクオ……?ええ、ですから知らないと……」
中学校の友人 素直クール
川 ゚ -゚)「えっと……ですから、知らないんです」
川 ゚ -゚)「え? 私の事が好きだった……?」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「えっと……ですから、知らないんです」
- 621 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:44:50 ID:yxd5hMoA0
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部屋に入って、さっそくパソコンに向かう。
もはや体の一部と言ってもおかしくはない。パソコンが彼を求めれば、彼がパソコンを求める。
そういった信頼関係が成り立っているのだ。
( 'A`)「あ。アイツ、全然クエストやってねぇじゃん」
「クエスト?」
( 'A`)「仕事みたいなもんスよ。信じらんねぇ」
世界に戦いを挑む男は、やはりミスには厳しい。
これも、一つのこだわり。
( 'A`)m” かたかた
( 'A`)m「俺がいないと、なんにも出来ないんですよね」
( 'A`)m「なんていうか……。頼りない訳じゃないんですよ。ただ、求められてるんです」
( 'A`)m
( 'A`)m「遊びだと思う人は多いですよ。実際そうなのかもしれません。でも、自分は本気で向き合ってるんですよね」
( 'A`)m「そう言う人って、あんまり本気で向き合ったりとかってしてないんだと思うんだよなぁ……、人生で」
( 'A`)「ふぅー。なんとかなった……」
- 622 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:45:55 ID:yxd5hMoA0
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人生の転機は?
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- 623 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:47:35 ID:yxd5hMoA0
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【人生の転機は?】
( 'A`)「やっぱ……。大学ですかね」
( 'A`)「すごい孤独な時期があったんです。その御蔭で、本当の自分と向き合えたっていうか……」
( 'A`)
( 'A`)「もちろん、高校の頃も孤独だったんですけど」
「中学の頃は?」
( 'A`)「中学の頃は結構充実してたと思います」
( 'A`)「結構仲の良い人がいて……。女の子とも話せてました」
( 'A`)「素直クールって言って……」
( '∀`)「今思えば、リア充してましたよ」
( '∀`)「そんで、今になってリア充に憧れる自分もいるんですよね」
- 624 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:48:31 ID:yxd5hMoA0
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リア充に憧れる自分
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- 625 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:49:59 ID:yxd5hMoA0
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【リア充に憧れる自分】
( 'A`)「やっぱ……、リア充っていいじゃないですか」
( 'A`)
( 'A`)「今の自分には満足してるんですけど……。仲間も沢山いるし」
( 'A`)「なんて言うんでしょうね、満たされてる何かが欲しいっていうか……」
「満たされてる何か?」
( 'A`)「あ。はい。満たされてないと、人って動けないじゃないですか」
「なるほど……」
( 'A`)「ちょっとは憧れますよね、リア充。追い続けていきたいものの一つって言うか……」
( 'A`)
( 'A`)「でも、満足してますよ、ホントに。今の生活が誇りといえば、誇りですからね」
- 626 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:50:57 ID:yxd5hMoA0
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夢は?
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- 627 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:51:59 ID:yxd5hMoA0
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【夢は?】
( 'A`)「夢……ですか」
( 'A`)「やっぱ、ギルドを誰よりも負けないものにすることですかね」
( 'A`)
( 'A`)「みんな、人生投げ打って頑張ってるじゃないですか。自分はまだ人生捨ててないんですけど」
( '∀`)「ゲームで人生捨てるってのもおかしいじゃないですか。そういう奴らをぶちのめしてやりたいってのもあるんですよね」
「鬱田さんは違う?」
( '∀`)「僕は違いますよ。まだまだ可能性があるから」
「なるほど……」
( '∀`)「可能性がなくなったら人間終わりじゃないですか」
「鬱田さんはまだまだ、可能性がある?」
( '∀`)「そろそろ本気を出そうかなって思いますけどね」
- 628 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:53:02 ID:yxd5hMoA0
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( ^ω^)「本気出す。そういえば、それが彼の口癖だったかもしれませんね」
中学校の友人 内藤ホライゾン
( ^ω^)「一緒にゲームやってる時も、今から本気出すってよく言ってましたよ」
( ^ω^)「結局、彼負けちゃうんですけどね。指がつったとかで」
( ^ω^)「彼、早く本気出したいんじゃないかなぁ。今までにも、本気を出してるところって見たことないんですよ」
( ^ω^)「まあ、中学校1年の頃の彼しか知らないんですけどね(笑)」
川 ゚ -゚)「また、その人ですか? 鬱田って人……」
中学校の友人 素直クール
川 ゚ -゚)「だから、名前を聞いてもピンと来ないし……」
川 ゚ -゚)「え? 卒業アルバムがある?」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「わかんない……、ですね……」
- 629 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:54:44 ID:yxd5hMoA0
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突然、ガチャという物音。
( 'A`)「あ。帰ってきた」
ドクオ、イルノー?>
その呼びかけに答える様子は、ない。
J( 'ー`)し「ドクオ。いるのね」
っ
無職・鬱田 ドクオを支える母。カーチャンだ。
( 'A`)「まんがタイムキララ買ってきたのかよ」
J( 'ー`)し「買ってきたよ。はい」
(#'A`)「……おい、これまんがタイムじゃねぇか!!!! 全然違うじゃねぇかよ!!!!」
怒鳴り声をあげる。
漫画雑誌一つで、この、こだわり。
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- 630 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:55:59 ID:yxd5hMoA0
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J( 'ー`)し「ごめんね、カーチャン馬鹿だからね、ごめんね」
(#'A`)「早く買ってこいよ!! のろまだな!!」
J( 'ー`)し バタン…
っ
( 'A`)「……ホント、アレだから困るんですよ」
「養ってもらってる人に、あんまりでは?」
( 'A`)「……ッス」
「はい?」
( 'A`)「……ソウイウセッキョウミタイナノイイッス」
母より、強い。
母は、自分を養わなければならない。
それを崩されると、自分が崩壊してしまう。
鬱田 ドクオは、誰よりも強く、誰よりも脆い。
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- 631 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:56:45 ID:yxd5hMoA0
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http://www.youtube.com/watch?v=JYCwwxhVCRo
アーーー♪ アーーー♪ アーーー♪ アーーー♪
2月某日。晴れ渡る青空の中、彼はスタッフに笑顔をみせた。
もちろん、チェックのシャツをズボンに入れて。行き先は、ジュンク堂。
( '∀`)「今日は晴れでよかったスね」
鬱田 ドクオは晴れが好きだ。
「ジュンク堂で買うと、なにか違うんですか?」
( '∀`)「違いますよ。なんか、これから楽しみにしていたものが始まるんだなぁって思うんです」
これから、始まる。
思えば、始まり続ける人生だったという。
孤独に始まり、最善を行き、そして、また、新たな可能性が始まる。
- 633 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/24(月) 23:57:52 ID:yxd5hMoA0
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( '∀`)「今日は、漫画も買おうと思うんです。完全版を」
「お金、あるんですね」
( '∀`)「親が働いてるんで」
( '∀`)「……今、出来るうちになんでもやっとかなきゃな、って思うんですよ。時は金なりじゃないですか」
( '∀`)「突然、何も出来ない状況になったら、悔いが残るじゃないですか」
( '∀`)「だから、日々頑張ろうと思うんです」
最後に、素朴な疑問をぶつけてみた。
「今日は、何を頑張るんですか?」
( '∀`)「え? こうして、外に出てきたじゃないですか……、ははは」
現代社会の闇。人は彼らをそう言う。
そして、見下ろし、時代の犠牲者とも言う。憐れむフリをする。
だが、彼らの事を曇った目でしか見れない、社会こそ、時代の犠牲者なのではないだろうか。
去りゆく彼の背中が、そう語っているように見える。
時代の哲学者、鬱田 ドクオ。歩みを止めない、その誇りを、いつまでも。
19.情熱大陸 おわり
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