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35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/10/29(土) 00:24:47 ID:pmEts9ps0
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第4話 キッシュとカフェ後編
昼食をとり、展示館を2人でフラフラと見た後も日はまだ明るい
川д川「行ってみたいカフェがあるんだけどいいかな?」
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( ゚∀゚)「いいよー」
ブゥゥゥン…
川д川「駅から10分くらいらしいんだけど…」ブウウ…
道路は綺麗に舗装された二車線だが、少し色あせた看板達がどことなく昭和感。
川;д川「やたら車の中古屋が多いなあ…」ブゥゥゥン…
川д川つ「おっと右折か」カッチカッチ
ポツポツと一軒家が建つ林道をクネクネと進むと、目印にしていた漆喰の長屋門が見えた
横にある駐車場に車を止める
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( ゚∀゚)「運転おつかれさま。」
川д川「どういたしましてー」
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36 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/10/29(土) 00:26:50 ID:pmEts9ps0
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川д川「この先を進みまーす」テクテク
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( ゚∀゚)「う、うん」
長屋門の先に広がる植木と芝生の間を進み、人気のない平屋に突き当たったら左に進む
カフェに来ているというよりやたら整備された民家の庭に忍び込んでいるみたいだ。
私は一度ネットで調べているので気にならないが、彼は少し戸惑っているようだった
更にカフェの看板が立てかけられた木製の棟門を過ぎる。
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37 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/10/29(土) 00:29:41 ID:pmEts9ps0
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カナカナ…
サワサワ…
カナカナカナ…
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( ゚∀゚)「お…」
現れたのは入り口にのれんが掛けられた瓦屋根付きのウッドデッキ
細い柱の先には緑の庭に小さな池と林が見える
デッキには華奢な黒鉄の椅子と赤紫のテーブルクロスがかかった丸テーブル。
夕方なため、風で木が揺れる音とひぐらしのBGM付きだ
その奥にある木造家屋の引き戸を開き、店内へ。
レジの先を見渡せばガラス戸の窓際に二人席が並び、小上がりには座布団が敷かれた4人席。
川д川(時かけで真琴の自宅のモデルになった家に、モダンさと大正ロマンを足した感じだわ…)
川д川「あ、2階は2人席だって。行ってみようか」
トントントン…
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38 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/10/29(土) 00:35:04 ID:pmEts9ps0
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(* ゚∀゚)「あーすごくいいね。」
階段を登れば太い梁がむき出しの漆喰壁の部屋
天井が尖っているのでまるで屋根裏部屋のよう。
壁の2面を大きな窓がL字に囲い、外の木々を眺めることができる
川д川(どこに座ろうかなぁ…)
6畳のフローリングと8畳の畳の部屋は襖無しで繋がっており様々な2人席が設けてある。
フローリングには向かい合わせのレザー調チェアとシンプルな木製のチェア
窓際の背もたれ無しのカウンター席には先客がいた。
畳の間は座布団の敷かれたカウンター2組分にソファ席が2組。
川д川(庭が見れるように座布団の席かなあ…)
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( ゚∀゚)「ソファにしよう」
川;д川「あ、うん」
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39 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/10/29(土) 00:38:05 ID:pmEts9ps0
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店員さんがメニューを持ってきてくれた
(‘_L’)「メニューはこちらになります」
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( ゚∀゚)「ありがとうございます」
川д川「どれどれ…」
このお店はコーヒーが売り。
メニューにはメジャーな豆からオリジナルブレンドまで3ページに渡り紹介されている
それにお茶や柑橘系ジュースが数種類の他に、コーヒーゼリーやアイス・和菓子。
本日のケーキもあったが数が少ないのか売り切れていた。
川д川「私はさんぴん茶とコーヒーゼリーで」
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( ゚∀゚)「僕はグアテマラと和菓子で。」
(‘_L’)「かしこまりました」
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40 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/10/29(土) 00:41:21 ID:pmEts9ps0
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注文を済ませ、一息つく。
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(* ゚∀゚)「グラス綺麗!」
川*д川「さんぴん茶も置いてあるし琉球グラスかな?」
メニューと共に渡された水の入った真っ青なミニグラスはとても涼しげ
他にも話をしている人はいたけれど、隣のソファの人は本を読んでいたのでやや小声で話す。
川д川「あとさ、このソファが置いてあるの、押入れだよねw」
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( ゚∀゚)「そうだねぇ」
押入れの仕切りを取り払って置かれたソファはちょっと暗いかなと思ったけどそんなことはなかった
畳側は前方に客もおらず景色がよく見える。
先ほどまで座布団の席に惹かれていたが、足が痺れないで済むしソファで大正解だ
10分も待つと階段を上る音が聞こえてきた
(‘_L’)「おまたせいたしました」コトッコトッ
(^_L^)「ごゆっくりお過ごしくださいませ。」
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41 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/10/29(土) 00:46:16 ID:pmEts9ps0
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川*д川「ほーw」
さんぴん茶はお尻の丸いグラスに並々と。
足付きグラスに詰まったサイコロ状のコーヒーゼリーの上には、アイスが乗っている
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(* ゚∀゚) 「このカップいいなぁ」
彼は深い苔色のコーヒーカップとソーサーを見つめている
細かいウェーブに白いラインが入っており蓮の葉のようだ。
横には「さざ波」と名付けられた白と水色の生菓子が真っ黒な小皿の上で凛としている
うーん、かっこいい。
川д川「いただきまーす」ススス
まずはさんぴん茶から。
さんぴん茶は風味が控えめなジャスミン茶なので飲みやすい。
快晴な中、今日はずっと運転をしていたため一度に半分近く飲んだら身体がひんやりと涼しくなった。
川*д川(お次はゼリーっと)パクッ
川*〜川 モグモグ
酸味の少ない香ばしいコーヒーゼリーに、ほどほどな濃厚さのミルクアイスが絡む
川*〜川(甘さって少し物足りないぐらいが丁度いいんだなあ…)
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42 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/10/29(土) 00:54:03 ID:pmEts9ps0
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( ゚∀゚) フーフー
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( ゚∀゚) コクリ
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(* ゚∀゚)「ん、美味しいグアテマラだ。」
川д川(グアテマラって酸味も苦味もあるけど飲みやすいコーヒーだよね…)ムシャムシャ
イメージ図
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(* ゚∀゚)「和菓子が合いますね」ハム
川д川「・・・」
彼が黒文字で切った和菓子の断面を観察する
これは巷で話題のラムネ餡というものだろうか?
水色の餡にプルンとした乳白色の餅が巻かれ、先端が折り返されている。
餅の上では粒々としたブルーの透明な寒天がキラキラと光っている。
川*д川「ひ…ひとくちっ」
川*〜川 ハムッ
川*ー川「おいしい〜」
もちっとした生地の中にすっと消える甘さの餡。
粒々の寒天が口の中をシャラシャラと動く様子はまさに「さざ波」だ。
川*ー川「生菓子ってスーパーのを1回食べた事あるくらいだけど、全然違うね」
このカフェの和菓子は毎日近くの和菓子屋から仕入れているそうだ
川*д川「シンプルな甘さなのは保存料が入ってないからかな?」
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(* ゚∀゚)「どうだろねぇ」コクリコクリ
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43 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/10/29(土) 01:00:02 ID:pmEts9ps0
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川;д川「それにしても、店員さん大変だねえ」
メニュー表を持ってきて、注文を聞いて、届けて、片付けて。
効率良く回したとしても、物腰柔らかいエプロン姿の彼は1組の客に対して2〜3回は階段を上らなくてはいけない。
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( ゚∀゚)「筋トレになるね…」
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( ゚∀゚)「そろそろ帰ろうか。」
川д川 トントン
川*д川「わぁ…!」
夜になり1階はオレンジの明かりに包まれていた
暖かく輝く店内と外の青暗さが相まって、一言で例えるならやはり大正ロマン。
(^_L^)「ありがとうございました。」
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川*д川(* ゚∀゚) ゴチソウサマデシター
カラカラ…
川*д川「外も綺麗だねえ…」
デッキのテーブルに置かれた蝋燭の火がユラユラと誘惑してくるので、思わずずっとここに居たい気持ちになる。
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( ゚∀゚)「…」
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(* ゚∀゚)「こんないいカフェ、初めて来たよ。」
古風な性格の彼はこのロケーションとメニューをかなり気に入ってくれたようだ。
川*д川「車が無いと来れない場所なだけあって静かで良かったねー」ブロロ…
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(* ゚∀゚)「また来ようね。」
川*д川「そうしよー」
キッシュとカフェ後編 おわり