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116 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/01(土) 23:47:14 ID:jHk0pOPc0
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Place: 草咲市 南梨町 字 節穴前 15-9 メゾンフシアナ 205号室
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Cast:都村トソン 都村ミセリ
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117 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/01(土) 23:51:07 ID:jHk0pOPc0
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(‐、‐トソン 「……」
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ミセ*゚ ,゚)リ 「……
(‐、‐トソン 「……」
l⌒l⌒l
ミセ*゚ ,゚)リ 「……トソンチャーン。トソンチャーン」
(゚、‐トソン 「……なんですか」
ミセ*゚ ,゚)リ 「ミセリさんとってもお暇なお姉さん」
(゚、゚トソン 「散歩でも行って来たらどうです」
ミセ*゚Д゚)リ 「もぉー。杭持ちに見つかるから出るなって言ったのトソンじゃん!」
(゚、゚トソン 「無精しないでちゃんと変装すればいいんです」
ミセ*゚ ,゚)リ 「サングラスじゃだめ?」
(゚、゚トソン 「この前それでばれたでしょう」
ミセ*゚ ,゚)リ 「むー」
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118 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/01(土) 23:53:17 ID:jHk0pOPc0
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(゚、゚トソン 「ってゆうか、吸血鬼らしく昼間は棺桶にでも入って眠っていてくださいよ」
ミセ*゚ ,゚)リ 「トソンに合わせて夜寝てるから眠くないんだよ〜」
(゚、゚トソン 「……そもそも日光の下に出て大丈夫なんですか。今日日差し強いですよ」
ミセ*゚ ,゚)リ 「日焼け止め塗って厚着して帽子かぶってサングラスすれば大丈夫」
(゚、゚トソン 「100%目立つからやめてください」
ミセ*´Д`)リ 「ひぃーまぁー!遊んでよー!」
ミセリに抱き着かれ、ため息を一つ。
私は読んでいた文庫をテーブルに置いて、彼女の頭を撫でた。
犬か猫の感覚に近い。しかもちょっと馬鹿な類の。
(゚、゚トソン 「遊ぶって、何するんです」
ミセ*゚ー゚)リ 「せっかくトソン早く帰ってきたんだからさ、どっか行こうよ」
(゚、゚トソン 「一分前の話を忘れたんですか」
ミセ*゚ ,゚)リ 「杭持ちに見つかったってちゃんと処分すれば大丈夫だって」
(゚、゚トソン 「それがいけないといってるんです」
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119 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/01(土) 23:54:28 ID:jHk0pOPc0
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最近、杭持ちの活動が活発だ。
理由はとても単純で、ミセリを見つけ出して殺すため。
杭持ちは、何も吸血鬼であればすぐに探して殺すというわけでは無いらしい。
彼ら独自の「脅威度」を設定し、把握している吸血鬼に優先順をつけているのだそうだ。
人間にとって危険な存在を予め排除し、それを見せしめとして吸血鬼たちの動向を抑制する。
狙いは刑法と同じだ。罰を与えることで、罪そのものを犯させないないようにする。
ミセリは、この優先度の中で、かなりの上位に入っている。
私は彼女の過去を知らない。だからなぜ彼女が執拗に狙われるのか分からない。
知りたいと思う反面、ミセリが隠そうとしている仄暗い部分に踏み込むようで、今まで聞くことが出来ずにいる。
ただ、私と出会ってからも何度か杭持ちを返り討ちにしているため、濡れ衣でないことは確かなのだろう。
(゚、゚トソン 「あちらも躍起なんですから、もう少し慎重になってください」
ミセ*゚ ,゚)リ 「……」
(゚、゚トソン 「本当に追い込まれたら、この街、出ていかなきゃいけなくなっちゃうんでしょう」
ミセ*゚ ,゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ 「え?トソンちゃん今めちゃくちゃかわいいこと言った?私と離れたくない的なニュアンスを込めた?」
(゚、゚トソン 「言ってませんし込めてません」
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120 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/01(土) 23:55:41 ID:jHk0pOPc0
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ミセ*゚ー゚)リ 「でもさ、実際私がこの街出るって言ったら、トソンどうするー?」
(゚、゚トソン
ミセ*゚ー゚)リ 「私は別に、別にこだわりは無いんだけどさ、トソンとも離れたくないんだよね」
(゚、゚トソン 「私は、大学、ありますし」
ミセ*゚ー゚)リ 「……へへ」
(゚、゚トソン 「なんですか」
ミセ*゚ー゚)リ 「そんな本気で拗ねるなよ。仮の話なんだから」
(゚、゚トソン 「別に。ミセリが居なくなったら実家に戻らなきゃならないから、それが嫌なだけです」
ミセ*゚ー゚)リ 「へぇー〜」
ミセリの意地の悪いにやけ面に腹が立ったので、無視して本を手に取る。
久々に趣味で買ったものだ。古本だけれど状態が良く、今のところは内容も気に入っている。
座布団に座り直し、ベッドに背を凭れて、しおりを挟んだページをめくる。
ミセ*゚ ,゚)リ 「トソン、膝かして」
(゚、゚トソン 「なんですか」
ミセ*゚ ,゚)リ 「トソンが連れないから、寝る」
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121 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/01(土) 23:58:12 ID:jHk0pOPc0
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(゚、゚トソン 「ベッドに行けばいいじゃないですか」
ミセ*゚ ,゚)リ 「嫌がらせだし」
強引に頭をねじ込まれ、仕方なく懐を開けた。
伸ばした太腿に頭を乗せ、お腹に腹を埋めて眠る。
冷たい。カーテンを閉め切った部屋は、さほど暑くは無いのだけれど、それでも心地いい。
文庫を片手で持ち、ミセリの頭を撫でる。
少し癖のかかった、柔らかな髪。長毛の猫のようだ。
するすると指を抜けて行く感触が心地よい。
(゚、゚トソン 「……」
ミセリがこの街に来た理由は、ぼんやりとではあるが聞いたことがある。
そして私と出会ったのはその目的を果たした後であることも知っている。
だけれど、この街に未だ残る理由を聞いてはいない。
それが、私なのだろうか。
正直なところ、私はミセリにとって都合のいい人間でしかないのだろう。
食糧であり、玩具であり。
あれば便利だが、命を賭して守るほどの存在では無いとそう自分では思っている。
だから時々、狂おしいほど不安になる。
あっさりと壊れるこの日常を、ふと思い浮かべてしまったりする。
ミセリの冗談めいた言葉は、私に安心を与えるものには足りえないから。
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122 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/02(日) 00:00:21 ID:bl7l.k5Q0
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私とミセリは友人だ。
だけれど、それ以前に人間と吸血鬼。
食物と捕食者だ。
この関係は絶対に覆らない。
血と住処の交換でギブ&テイクの対等な関係に見せかけているけれど本質は変わらず。
あくまでミセリの、捕食者側の厚意で成り立っているだけの張りぼてだ。
奥の方に隠すことはできても、真実というのは必ず居座り続ける。
この街にミセリが残る理由が本当に私だとして。
あの十字架を掲げる集団の、鋭く光る杭が、彼女の命に届きそうになった時。
ミセリはこの街を出てゆくのだろうか。
私は彼女について行くのだろうか。
(゚、゚トソン
ミセ* , )リ
私たちの間には、それほど強い絆があるのだろうか。
敏感で弱く、それ故に心地よい場所に触れた彼女の指に、私は確かに甘えているのだけれど。
それは絡ませあった舌が引いた唾液の糸のように、瞬く間に堕落する、脆弱な関係なのでないのだろうか。
考えても分からない。望む答えに繋がる道が見つからない。
だから、慎重にしなければいけない。
答え合わせの時間が来ないように気をつければ、私たちは正誤不明の優しい答えを、ただただ大切にしていられる。
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123 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/02(日) 00:03:06 ID:bl7l.k5Q0
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ミセ*゚ ,゚)リ 「なあ、トソン」
(゚、゚トソン 「なんですか」
ミセ*゚ ,゚)リ 「車でさ、美布まで行けば大丈夫だよね?」
(゚、゚トソン 「まあ、この街よりは警戒はされて無いかもしれませんが」
ミセ*゚ ,゚)リ 「それなら、良い?」
(゚、゚トソン 「……だって、ミセリ車苦手じゃないですか」
ミセ*゚ー゚)リ 「ちょっとくらいなら平気だし」
(゚、゚トソン 「もう夕方だし、着くのも遅くなりますよ」
ミセ*゚ー゚)リ 「明日日曜日じゃん?ついでに向こうでホテルにでも泊まってさ」
(゚、゚トソン 「……」
ミセ*゚ー゚)リ 「いつもとは少し違う場所で!」
(゚、゚トソン 「結局そこに回帰するんですね」
ミセ*゚ー゚)リ 「吸血鬼っつーのは単純なんだよ、結構ね」
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124 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/02(日) 00:04:40 ID:bl7l.k5Q0
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(゚、゚トソン 「変装します?」
ミセ*゚ー゚)リ 「するする!」
(゚、゚トソン 「まあ、車なら、杭持ちの警戒もそれほどひどくは無いでしょうし」
ミセ*゚ー゚)リ 「うんうん」
(゚、゚トソン 「その代り、車がばれたらアウトなんですからね」
ミセ*゚ー゚)リ 「うん。気を付ける」
(゚、゚トソン 「そこまで行きたいんですね」
ミセ*゚Д゚)リ 「行きたいっすよ!このままじゃ私キノコ生えちゃう!」
(゚、゚トソン 「わかりました。私も、そろそろ帽子の替えを買いたかったので」
ミセ*゚ー゚)リ 「やった!すぐいこ!」
(゚、゚トソン 「せめて着替えくらいは準備しましょう。あと、酔い止め」
ミセ*゚ー゚)リ 「おっけー」
ミセリが勢いよく起き上がる。
さっきまでの湿気たやる気の無さは既に無く、今は遊ぶことを心底楽しみにしているようだ。
確かに、単純。
こうなると、吸血鬼が羨ましくもある。
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125 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/02(日) 00:05:36 ID:bl7l.k5Q0
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(゚、゚トソン 「言っておきますけど、騒がないでくださいね」
ミセ*゚ー゚)リ 「ダイジョブだって心配性」
(゚、゚トソン 「あなたが雑すぎるんですよ」
私が実家からかっさらってきた軽自動車に小さくまとめた荷物を積んだ。
ミセリは助手席。吸血鬼に効くのかは分からないが、少し多めに酔い止めを飲ませておく。
上機嫌にステレオを弄っているが、走り出せばすぐ気分を悪くするだろう。
(゚、゚トソン 「吐くときは外にしてくださいね」
ミセ*゚ー゚)リ 「今日は一滴も飲ませてもらってないので平気ですけど?」
(゚、゚トソン 「ホテルに入る前に、ドライアイス買いましょうか」
ミセ*゚ー゚)リ 「いいの?」
(゚、゚トソン 「まあ、お預けしてましたし。せっかくの遠出ですから特別です」
ミセ*゚ー゚)リ 「なんだよトソン、気前良すぎて気持ち悪いぜ」
目一杯上機嫌にさせたミセリを乗せて、美布を目指して発進する。
ミセリが一発目の嘔吐をダッシュボードに解放したのは、その6分後のことだった。
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126 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/02(日) 00:06:22 ID:bl7l.k5Q0
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終り
三行
みせり
きのこ
はえそう