-
226 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:08:02 ID:lSl8DXgg0
-
Place: 草咲市 十日町 1‐103 マンション『シャンデリゼTOKA'S』屋上
○
Cast: 志納ドクオ 本田蕪太郎 鈴木バーディ 長岡ジョルジュ
──────────────────────────────────
-
227 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:10:16 ID:lSl8DXgg0
-
('A`) 「……明るいな」
路地裏から眺めるよりも空が近い。
近辺で最も高いマンションを選んだのは正解だった
満月に近い月から眩いほどの光が屋上に降り注いでいる。
('A`) 「……来てもらって早速で悪いんだけどよ。地雷女の居場所を知っているか?」
対面する二人の杭持ちは、表情一つ変えなかった。
油断も、驕りも無い。むしろ、ドクオに対し緊張しているようですらあった。
大天福を下した結果は、思っていたよりも大きいらしい。
目撃情報から杭持ちの派遣までの速度を見るに、「脅威度」もかなり高めに設定されているのだろう。
(=゚@゚)
〈+^@^〉
加えて、毒に備えてのガスマスク。
この装備が、全ての杭持ちに配られているとは考えにくい。
恐らく、一定数の対ドクオ要員が配備されているとみていいだろう。
('A`) 「……ダメか、やっぱ、ちゃんと止めを刺せなかったのはまずかったな」
血刑を見せた上で逃がしてしまったために、かなり動きにくい状況になってしまった。
これまでのように、気軽に人探しをすることはできないだろう。
-
228 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:12:35 ID:lSl8DXgg0
-
(=゚@゚) 「……神の御名の元に」
〈+^@^〉 「裁きを!」
一人が前へ。杭を構え、身を低くする。
もう一人が持っているのは、散弾銃だ。
相変わらず十字架がついている。あれを見ると胸やけがする。
('A`) 「…………」
人間から吸血鬼への変貌は、多くのエネルギーが必要となる。
大半の者はその消費が生み出す極度の「渇き」に抗えず、人を食らってしまうのだ。
だが、ドクオは鉄の意志でその衝動を抑えた。
代償に体はやせ細り、力を失い、およそ吸血鬼とは思えないほど貧弱な体となっていたのだ。
それはあくまで、大天福と戦うまでの話。
ドクオは賤之女デレと出会い、血を喰らい、体は完全に吸血鬼となってしまっている。
('A`) 「……気に食わねえ」
(=゚@゚) 「なに?!」
生み出される膂力は、以前の比にならない。
-
229 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:16:51 ID:lSl8DXgg0
-
身軽な、素早い動きで肉薄した杭持ちを飛び越える。
戸惑う二人の杭持ち。
事前に情報を掴まれているというのは、悪いことばかりでは無いらしい。
恐らく、血刑以外は畏れるに足らないと判断されていたのだろう。
〈+^@^〉 「だからって!!」
銃を構えなおす杭持ち。
躱すも守るも厄介な散弾だ。
だが、少し反応が遅かった
('A`)σ 「……」
親指の爪で、人差し指を切る。
血が零れ、瞬く間に針の形に変化。
形が定まるのも待たず、その針を放つ。
ドクオはこの一連の動作を、跳躍から着地、杭持ちの銃口が自分を向くまでに済ませていた。
〈+^@^〉 「!」
小さく細い血の針が、杭持ちの首筋に刺さった。
ドクオの毒は、何も揮発吸引させるだけでは無い。
マスクをしていようが、傷を与えることさえできれば十分だ。
-
230 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:18:17 ID:lSl8DXgg0
-
〈+;^@^〉 「あっぐ……」
杭持ちがふらつく。
銃口がぶれ、膝が下がる。
即効性は中々。ただし、致死性はいまいち。
まだ毒の生成には改良の余地がある。
('A`) 「……」
指先に、長い爪程度の血の刃を作り、毒にあえぐ杭持ちへ。
もう一人の方は、無視する。
〈+;^@^〉 「くそっ!」
震える銃口がドクオを向いた。
まだ撃たない。この期に及んで、否、狙いを定められない今だからこそ、ギリギリまでひきつけようとしている。
〈+;^@^〉 「!!」
銃声。
跳ねる銃身と、眩い火炎。
吐き出された複数の弾丸が、肉を貫き骨を砕く。
(= @ )、´ ∴ 「ぐぶっ」
〈+;^@^〉 「あ」
ただし、当たったのはもう一方の杭持ちに、であるが。
-
231 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:20:43 ID:lSl8DXgg0
-
引金にかかった指の動きを見切り、ドクオは素早く身をかわした。
反射的に杭持ちはその動きを、追い、発砲。
それでもドクオの速さには間に合わず、弾丸はドクオを外れ。
銃の射線を避け、曲線を描きながら迫っていたもう一人の杭持ちに命中したのだ。
距離が開いたため弾がちり、胸から足にかけて数か所、血を吹き出している。
戦闘不能は明らか。
狙い通りだ。思いのほか上手くいった。
あとは、味方を撃って動揺する残りの一人を。
('A`) 「……」
〈+; @ 〉 「かっっ」
殺して終りだ。
喉に深々と突き刺さる血の爪。
毒でなくとも、ほぼ即死だろう。
('A`) 「……今日も、収穫は無し」
死んだ二人の杭持ちを見て、ドクオは独り言ちた。
杭持ちを殺すことは目的で無い。
彼らが持つかもしれない地雷女の情報、それが欲しいのだ。
-
232 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:23:11 ID:lSl8DXgg0
-
('A`) 「……このやり方、そろそろ辞めるか」
ドクオは、吸血鬼になる前、ごく一般的な家庭にあった。
吸血鬼たちの情報を仕入れる幅広い情報網も無ければ、調査して人を見つけ出すようなノウハウも無い。
杭持ち相手になれない捜査をしているが、争いになるばかりで一向に進展しないままだ。
おかげで悪名ばかりが広まり、窮屈さが増すばかり。
('A`) 「……できれば、避けたかったが……あいつらに頼るしかねえか」
ドクオの脳裏に浮かぶ、二人の吸血鬼。
男と女の、この界隈で吸血鬼を滑る自治組織のリーダーだ。
杭持ちとは別の方面で、情報には鋭い。
だが、気がかりもある。
二人は争いを好まぬ、平和主義者。
目的が報復であるドクオに協力してくれるかどうかがそもそも怪しい。
('A`) 「……ん?」
来ているパーカーのポケットが震えている。
携帯電話に着信があったようだ。
取りだして画面を見ると、発信元の名前は『賤之女デレ』。
数秒迷い、ため息を吐いてから通話のボタンを押す。
-
233 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:25:45 ID:lSl8DXgg0
-
('A`) 「……なんだ」
『……ごめんなさい、お父様。本当は、電話なんてしたら嫌かと思ったのだけど』
('A`) 「別にいい。なんだ」
『いえ、特に何かあったわけでは無いの。ただ、お帰りが遅いから、ちょっと心配で』
('A`) 「……」
『ほら、最近は怖い人たちがたくさんいるでしょう?もし、何かあったら大変と思って……』
('A`) 「……用事が長引いただけだ。もうしばらくで帰る」
『……わかりました。お風呂沸かしておきましょう』
('A`) 「要らない気を使うな」
『私がしたいんですもの。それでは、くれぐれも気を付けてくださいねお父様』
('A`) 「……ああ」
通話を終え、画面を眺める。
シンプルな構造、デザインの電話だ。
洋館に数台あったものの一つを、デレに持たされた。
これも前の『お父様』の仕込みだろう。
何とも言えない気持ちにはなるが、あれば便利だ。
ドクオが個人で所有していた物は、吸血鬼になった日に壊して捨てた。
-
234 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:28:10 ID:lSl8DXgg0
-
('A`) 「……帰るか」
件の吸血鬼に会いに行くことも考えたが、今日は一先ず帰ることにする。
デレにもうしばらくと言った手前、あまり時間を浪費することもできまい。
携帯電話を入れているのとは逆のポケットから小さな紙の箱を取りだす。
煙草だ。銘柄は「ECHO」。人間だった時分からずっと吸っていたが、金がなくなって以来やめていた。
('A`)o-~~
喉が焼けるように痛む。
煙は肺を蹂躙し。独特の辛みが、鼻の奥をツンとさせた。
不味い。銘柄のせいでは無い。
吸血鬼になり、煙草や酒が苦手になった。
感覚が鋭敏すぎるのだ。
その上含まれる毒性への依存は一切なくなるので、もはや吸う意味は一切ないのだが。
煙草を咥えたままフェンスを飛び越えた。
立ち入り禁止になっているが、関係ない。
人が来ないという意味ではむしろ便利だ。
とはいえ、今回二人殺したので、しばらくは避けた方がいいだろう。
非常階段を降り、マンションの裏手から路地へ。
ショットガンの銃声が人を呼び寄せていないかだけが気がかりだったが、どうやら杞憂のようだ。
よくよく考えれば、この街で銃声が鳴るのは珍しいことでは無い。
そして、銃声が鳴り響くところに野次馬根性で顔を出すのは愚か者のすることだ。
-
235 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:29:23 ID:lSl8DXgg0
-
路地をしばらく行くと、遠くからギターの音色が聞こえてきた。
ストリートミュージシャンの類だろうか。
時折見かけるが、繁華街から離れた場所にいるのは珍しい。
姿が見えた。男だ。
黒いジャケットに、金属製のアクセサリ。
耳だけでなく、唇にもピアスをつけている。
パンク、あるいはメタルの趣。
少なくとも抱えているアコースティックギターにはあまり似合わない。
_
( ∀ )´
男がドクオに気づいた。
が、特に何かするわけでも無く、先ほどからの曲を弾き続けている。
聞けば、小声で歌も歌っていた。
高いが男っぽさのあるしゃがれた声。
この歌は、随分昔にいくらか流行ったロックバンドのものだ。
_
( ゚∀゚) 「――― ―― ――――………♪」
ドクオが目の前に差し掛かり、曲が終わった。
男と目が合う。少し伺うような目をした後、少しの驚きを湛えたように見える。
だがすぐに、うれしげに細まった。表情の変化の激しい男だ。
_
( ゚∀゚) 「……俺の歌、どうだった、“お兄さん”」
無視しして通り過ぎようとしていたので、やや面を喰らう。
-
236 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:30:27 ID:lSl8DXgg0
-
('A`) 「……少し耳に入っただけだ。何か言えるほど聞いていない」
_
( ゚∀゚) 「なら、もう一曲どうよ」
('A`) 「そう言うのは、他の奴にやってくれ」
_
( ゚∀゚) 「ちぇー、ノリが悪いな」
('A`) 「……」
_
( ゚∀゚) 「あ、ちょっと待ってくれよ」
('A`) 「なんだ」
_
( ゚∀゚) 「……煙草、一本貰えねえか。切らしちまってよ」
('A`) 「……」
_
( ゚∀゚) 「へへへ……ありがてえ。しかし、吸血鬼もヤニを吸うんだな」
('A`) 「……ッ!」
あまりにも自然に紡がれた言葉に、ドクオの反応は遅れていた。
咄嗟に、親指の爪を人差し指の爪に突き立てる。
当たり前のように、ドクオが吸血鬼であることを見破った。
あるいは、知っていた。敵か味方か、少なくとも杭持ちではなさそうだが油断はできない。
-
237 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:33:00 ID:lSl8DXgg0
-
_
( ‐∀‐)o-~~ 「フー―……、そんなに驚くなって」
('A`) 「……」
_
( ゚∀゚) 「志納ドクオ、毒物を扱う要注意吸血鬼……」
滑らかな口調だった。
何かを暗記しているといったところか。
_
( ゚∀゚) 「駅前の掲示板に、手配書が張ってあったんだ。お前、自分で思ってるより顔が広まってるぜ」
手配書。そうか。
大天福を倒し、杭持ちに名が広まったということはつまり、そう言った対応もされているということだ。
ドクオは名前がばれている。虚しいことに名前にも特徴があるので、身元はあっさりとばれただろう。
となれば、手配書にはほぼ間違いなく本人の写真が使われている。
すれ違った人間に、吸血鬼とばれてもおかしくは無い。
_
( ゚∀゚) 「おっと、通報する気も、どうこうする気無いからさ、変な気を起こさないでくれよ」
('A`) 「……」
_
( ゚∀゚) 「……つーか、ここまで来てまだ気づかないのか?」
('A`) 「何がだ」
_
( ゚∀゚) 「あれー?それなりに仲良かったつもりなんだけどな……」
-
238 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:35:48 ID:lSl8DXgg0
-
_
( ゚∀゚) 「……覚えてない?俺なんだけど」
('A`) 「……………………………???」
_
( ゚∀゚) 「ジョルジュだよ。中学校で一緒だった長岡ジョルジュ」
('A`) 「…………?」
_
( ゚∀゚) 「ほらよ、高速道路下のトンネルで一緒にエロ本をあさって読んだ!」
('A`) 「……あ!」
思い出した。十年以上昔のことなのですっかり忘れていた。
確かに、昔そんな頭の悪いことをしていた時期があった。
一緒に誰かいたが、確かにナガオカとかそんな名前だったと思う。
('A`) 「まさか、十円禿を「組織の奴にやられた」と拙い演技で語っていたあの……?」
_
( ;゚∀゚) 「やめて!」
('A`) 「常におっぱいおっぱい騒いで女子にゴミ溜めを見る目で見られていたあの……?」
_
( ;゚∀゚) 「やめて!」
('A`) 「女子の着替えを覗いて両親が学校に呼ばれたあの……?」
_
( ;゚∀゚) 「やめて!!めっちゃ覚えてるじゃんおまえ!!」
-
239 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:36:44 ID:lSl8DXgg0
-
思いのほか懐かしい再会に、気分が少し上がる。
だが、すぐに自制した。
ドクオは、吸血鬼だ。人間では無くなった。
その上今人を殺したばかりだ。
呑気に旧友との出会いを喜べるような状況では無い。
何より、長岡が話しかけてきた理由が分からない。
_
( ゚∀゚) 「いやーしかし、思いのほか早く見つけられたぜ」
('A`) 「……あ?」
_
( ゚∀゚) 「いやさ、手配書見てさ、探してたんだよ、お前のこと」
('A`) 「……懸賞金稼ぎでもする気か?」
_
( ゚∀゚) 「おいおい、ダチ公売ったりしねえよ
長岡が頭を掻く。言葉を選んでいるようだ。
旧友とはいえ、手配されている吸血鬼を探す目的とは何だ。
懸賞金の類なら可能性はある。顔見知りであることを利用して、油断をつこうとしているとか。
_
( ゚∀゚) 「あのさぁドクオ」
('A`) 「……」
_
( ゚∀゚) 「俺のこと、吸血鬼にしてくれねえか?」
('A`) 「……………………は?」
-
240 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/22(土) 23:37:45 ID:lSl8DXgg0
-
おわり
三行
_
(*゚∀゚)∩
⊂彡