■もう何も考えられないようです
└3、ぼやけた隙間に一瞬だけ浮かぶ明かり
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40 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:09:52 ID:O27IaOYs0
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3、ぼやけた隙間に一瞬だけ浮かぶ明かり
全身全霊で考えても、どこかに選択の余地は残る。
流れる時間、決断を迫られる瞬間、その先の行方。
たとえばそれは、秤動する岩の部屋やトイレの中。
あとから思い出して感傷に浸るのは、いつも一人の時だった。
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41 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:10:48 ID:O27IaOYs0
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( ^ω^)「不規則な生活をしていると」
( ^ω^)「朝起きてトイレに入っても、何も出ないことがあるお」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「だけど今は夜中だし、最近は時計のような生活だったお」
( ^ω^)「なぜ出ない……」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「思えば僕の一日は、トイレに始まりトイレに終わるお……」
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42 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:11:30 ID:O27IaOYs0
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( ^ω^)「朝起きて、シリアルを食べ」
( ^ω^)「まだ眠い頭を引きずって、トイレに入るお」
( ^ω^)「出たらすぐに着替えて、自転車に乗って」
( ^ω^)「駅前の駐輪場のおじさんに、行ってきます」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「喫茶店の看板娘の猫を横目に駅に向かって」
( ^ω^)「会社に着いて仕事をして」
( ^ω^)「帰宅して夕飯を食べたら、もう明日が迫っていて」
( ^ω^)「トイレに入るお」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「人生とは、トイレなのかお……」
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43 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:12:49 ID:O27IaOYs0
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(# ^ω^) ムムムンンン!
(; ^ω^)「ぬぬぬ……」
(; ^ω^)「……出ないお」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「トイレに入って、もう20分は経ったかお」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「一日の三分の一は眠っているから」
( ^ω^)「眠っているときの思考も尊重するべき」
( ^ω^)「なんて新書を昔に読んだお」
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44 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:14:12 ID:O27IaOYs0
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( ^ω^)「……」
( ^ω^)「僕は、朝と夜に30分以上トイレに入っているから」
( ^ω^)「一日の二十四分の一はここにいるお」
( ^ω^)「二十四日で、まる一日トイレで過ごしたことになるお……」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「そう考えると、トイレ環境をもっと快適にするべきなのかもしれないお」
( ^ω^)「何だろう……、観葉植物とか置くかお?」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「いや、まずはお高めの芳香剤とか……」
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45 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:15:04 ID:O27IaOYs0
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( ^ω^)「ああ、紙質のいいトイレットペーパー」
( ^ω^)「重要すぎて、すっかり失念してたお」
( ^ω^)「僕ほど執拗に尻を拭く人はいないんじゃないかと思うお」
( ^ω^)「ダブルのトイレットペーパーを四重にして」
( ^ω^)「紙をのせた指を、第一関節までお尻に押し入れて」
( ^ω^)「そうしてキレイに拭かないと、どうもしっくりこないお」
( ´ω`)「おかげで僕は毎日切れ痔だお……」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「だけど、そのへんの男より括約筋を意識してる」
( ^ω^)「そんな妙な優越感もあるお……」
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46 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:16:07 ID:O27IaOYs0
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( ^ω^)「……」
( ^ω^)「何も出ないままトイレに座っていると」
( ^ω^)「いつになっても、あの頃を思い出すお」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「バンドを始めたばかりの友達が」
( ^ω^)「ギターが必要だと言って、僕を誘ってくれたお」
( ^ω^)「音楽に憧れてた僕は、二つ返事で快諾して」
( ^ω^)「すぐさまギターを買って、バンドに加わったお」
( ^ω^)「……」
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47 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:17:01 ID:O27IaOYs0
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( ^ω^)「市が高校生に無料でスタジオを貸し出していて」
( ^ω^)「彼らはそこでいつも練習していたお」
( ^ω^)「途中から入った僕は」
( ^ω^)「次にバンドがやる曲を、一人で先に練習することになったお」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「どこかで聞いた曲をメンバーが練習するなか」
( ^ω^)「僕は譜面台に教本を置いて、コードから」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「必死さも根性も足りなかったことを」
( ^ω^)「今の僕ははっきりと」
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48 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:17:41 ID:O27IaOYs0
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( ^ω^)「そうだお」
( ^ω^)「つまらなくなったのは、自分のせいだったんだおね」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「やがて高揚感は消え、残ったのは冷めた練習だけ」
( ^ω^)「ある時僕は、スタジオを抜けトイレの個室に」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「ただじっと座っていたお、何も出ないのに……」
( ^ω^)「そのうち友達が声を掛けにきてくれたなあ」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「もうあの頃には戻れないけど」
( ^ω^)「腐らずにやっていたら、あるいは……」
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49 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:19:09 ID:O27IaOYs0
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( ^ω^)「……」
( ^ω^)「もう、だいぶ経った気がするお」
( ^ω^)「……ああ、そうだお。トイレに置くための時計がいるお」
( ^ω^)「……」
(* ^ω^)「おっ」
( ^ω^)「ぬぬぬぬ」
(# ^ω^)「ふぬぬ、ぬにににゃああんん!!」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)+ スッキリ
( ^ω^)「よし」
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50 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:20:45 ID:O27IaOYs0
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( ^ω^)「だけど、やけにアンニュイな気分になってしまったお」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「二十四分の一くらいなら」
( ^ω^)「そういうのもいいか、お」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「よいしょっと。明日は帰りに時計を買うの」
( ^ω^)「忘れないようにしないと……」
( ^ω^)「あ、あれ? 足が沈むような……」
(; ^ω^)「……」
(; ^ω^)「ちょ、床が無くなっ、落ち……」
(; ゚ω゚)「おわああああああ!!!」
アアア……
おわり
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51 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/11/24(日) 02:22:11 ID:O27IaOYs0
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<次回予告>
('A`)「本物の星が、そこらじゅうで燃えている……」
o川*゚ー゚)o「私はキュート、これでも一応シューの姉です」
lw´‐ _‐ノv「よく分からないけど、地球の外だよね」
( ^ω^)「そうだった、まだ手を洗ってないお……」
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