-
1 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 22:49:08 ID:eMRTl80o0
-
ξ゚听)ξ「あの……この携帯は?」
古くなり動作もノロくなってきた携帯をいいかげん買い替えようと、
私は携帯ショップを訪ねた。
しばらく様々なモック品に触れた末、一台の機種を選んだ私に、
店員はもう一台、別の機種を渡してきた。
ストレートタイプの本体に小さな画面があり、
その下にはボタンの列が並んでいる、いわゆるガラケーだ。
( ・∀・)「サービスですよ、お客様」
ξ゚听)ξ「サービス?」
( ・∀・)「現在機種変更していただいたお客様には、
サービスとしてもう一台機種をプレゼントするキャンペーンを行っております」
ξ゚听)ξ「はぁ……」
-
2 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/27(土) 22:51:11 ID:eMRTl80o0
-
( ・∀・)「今回購入された機種をメインで使っていただく一方で、
こちらをもしものときのサブ携帯として利用していただくと良いかと思われます」
私の手を握り、その店員はぎゅっと携帯を押し付ける。
( ・∀・)「代金の方は一切頂きませんので、是非よろしければご利用ください」
いくらなんでも太っ腹すぎやしないだろうかと思いつつも、
まあ貰えるものは貰っといて損ないか、と私はそれを受け取った。
ξ゚听)ξ「じゃあ、頂きます。ありがとうございます」
( ・∀・)「いえいえ」
と、言うわけで、別に使うアテは無いものの、
私は2台の携帯電話を手にしてその店を後にしたのだった。
-
3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/27(土) 22:52:12 ID:eMRTl80o0
-
ジリリリリリリリ……
ベッドで眠っていた私を起こしたのは、けたたましいベルの音だった。
時計を見ると朝6時、まだ起きるには1時間半ほど早い、
何から響いているのか寝ぼけた頭で探してみると、
机の上に置かれた携帯電話からだった、機種変更の時に貰ったあの携帯だ。
ξ゚-)ξ「なんなのよぉ、もう……」
貰ったばかりのこの携帯の番号を知る人もほぼ居ないはずだ、
一体誰からだろうとディスプレイを見ると非通知。
こんな時間に掛けてくるなんて非常識なことは明らかだ、
切っちゃっても罪はないだろうと切断ボタンを押そうとしたんだけど……。
ξ゚听)ξ「あっ」
まだ完全に覚めていなかった私の脳はボタンの位置を間違えてしまい、
切断するつもりがうっかり着信ボタンをプッシュしてしまった。
-
4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 22:54:51 ID:eMRTl80o0
-
ξ;゚听)ξ(あっちゃー、面倒ねぇ)
いたずら電話だろうと、あの携帯ショップからだろうと、
こんな朝っぱらから、歯も磨いてないうちから言葉を発するのは
どうにもやりたくない。
しかし、出てしまったものは仕方ない、とため息を抑えつつ携帯を耳に寄せる。
ξ゚听)ξ「はい、もしもし……どなた?」
相手の声が、私の耳に届くことはなかった。
と、いうのも。
その瞬間、私の意識を目映く鋭い光が貫いたのだ。
ξ;゚听)ξ「! ! !!!!!!!!!!」
――――
―――
――
-
5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 22:56:19 ID:eMRTl80o0
-
【テーブルは広すぎたようです】
「…て!……して!」
誰かが呼ぶ声がする、起きなきゃ。
ものを詰め込みすぎたリュックのように重たい意識を引っ張り上げて、
私はゆっくりと瞼を開いた。
ξ-听)ξ「んん……」
o川*゚ー゚)o「目ぇ覚まして!ほらっ」
女の子が目の前に立っていた、長い髪にピンクの髪留め。
どうにもお尻がごつごつする、ベッドで寝てたんじゃないみたいだ、
女の子の向こうには黒板が見えたので、ここが自室ではなく
教室の中であることを次第に認識する。
-
6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 22:57:30 ID:eMRTl80o0
-
o川*゚ー゚)o「あっ、起きた?」
ξ゚听)ξ「……」
ξ゚听)ξ(誰だろうかこの子……)
知ってるはずなんだけど、思いだそうとしても意識にもやがかかったようで、
なかなか名前が浮かばない、クラスメートだとは思うけど。
o川*゚ー゚)o「もう授業始まっちゃうよ、しかも今日小テストあるし」
ξ゚听)ξ「小テスト?」
o川*゚ー゚)o「うん、ツンはもう"テーブル"見た?
ギコが範囲置いてくれてたけど」
ξ゚听)ξ「テーブル……?」
教壇のことだろうかとそちらに目を向けるも、特に何も置かれてない。
疑問に思い、目の前の女の子に尋ねてみる。
-
7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 22:59:33 ID:eMRTl80o0
-
ξ゚听)ξ「テーブル?どのテーブル?」
すると彼女は、心から呆れたような声を出した。
o川;゚ー゚)o「頭のテーブルに決まってるじゃない!
もしかして、忘れちゃったの?」
"頭のテーブル"、その言葉を聞いて、私は脳内にテーブルを思い浮かべた。
そう、私は何も置かれていない、ただのテーブルを思い浮かべたはずだった。
木製の、晩餐会に使うような広く大きいテーブルを。
しかし、驚くことに……。
ξ;゚听)ξ(ええッ!?)
そのテーブルの上は、メモ用紙や写真、ノートなどで既に所狭しと埋まっているではないか。
ξ;゚听)ξ(な、なにこれ……!?)
-
8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:03:18 ID:eMRTl80o0
-
私はそのテーブルの上にあるモノを一つずつ確認する、
野球のトレーニングメニューやら、誰が誰と付き合っているなんて噂話が書かれた紙、
今話題のアイドルのライブ写真などがある。
どれも、私の記憶には元々ないものばかりだ。
ξ;゚听)ξ(私の頭のなかに、私の知らない情報があるって……)
ξ;゚听)ξ(変な感じ)
その中の一つのプリントをめくると、なにやら教科書のページ範囲が記入されており、
最後に「ギコより」と書かれていた。
o川*゚ー゚)o「どう?見た?テスト範囲」
そこで、先ほどの女の子の声が聞こえ、私の意識は引き戻された。
ξ;゚听)ξ「う、うん……」
o川*゚ー゚)o「でも、もう間に合わないだろうな」
そういって彼女は教室の壁に掛けられた時計を見た。
o川*゚ー゚)o「今から授業始まるから」
-
9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:07:01 ID:eMRTl80o0
-
数秒後、ドアが開き髭もじゃの大きな男が教室の中へ入ってきた。
ミ,,゚Д゚彡「うっし、授業始めるぞー。今日は小テストだからな」
教師のその言葉に、教室のあちこちから声が湧く。
「あぶねー、テーブル確認しておいてよかったー」
「サンキューな、ギコ!」
「テーブルあって良かったわー」
o川*゚ー゚)o「だからもっと早く確認しなきゃね」
ξ;゚听)ξ「う、うん……」
そして、私はその小テストの問題にちっとも答えられないまま、
終了時間を迎えたのだった。
-
10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:08:30 ID:eMRTl80o0
-
授業が終わり、お昼休み。
私は先ほどのテーブルをもう一度よく確認することにした。
しばらく探っているうちに、私は何となくシステムを理解できた。
どうやらこの脳内のテーブルは、
私が籍を置く1年B組のクラスメート全員の意識と繋がっているらしく、
テーブルに各々の記憶を"置く"ことで、情報の共有が出来るみたいだ。
テーブルの情報はクラスメート誰もが閲覧可能で、
私もその中の一つのクラス名簿で先ほどの女の子が
"素直キュート"という名であることを思い出せた。
ξ゚听)ξ(こんなテーブルがあることなんて、知らなかったわ……)
いつ皆はこのテーブルの存在に気づいたんだろう?と考えてみたが、
不思議なことに今日以前の学校の記憶が、私には曖昧だ。
まるで紹介もなくこのクラスに転校してきたような気分。
-
11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:09:31 ID:eMRTl80o0
-
ξ゚听)ξ(そうよ、あの朝の電話に出てから変なのよね)
あの電話に出た瞬間私は意識を失い、
目が覚めたらこの"テーブル"が存在する世界へ飛ばされていた、
そう解釈するしかない。
何かヒントになるような物はないかともう一度テーブルを探る。
ξ゚听)ξ(あら?なにかしらアレ……?)
広いテーブルの一角に、何も置かれていない箇所を発見した。
他は他人の記憶で埋まっているにも関わらず、
その場所だけぽつんと空いているのは明らかに不自然だ。
近づいて(といっても歩いて近づく訳じゃない、意識をそこへズームさせていく感じ)
よくよく確認してみると、テーブルの表面に11桁の数字がナイフのようなもので掘られていた。
-
12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:13:18 ID:eMRTl80o0
-
"0X0-XX32-X26X"
ξ゚听)ξ(これは、携帯のナンバー……っぽいわね)
その番号に掛けてみようか、とも一瞬思ったが
人と話すのが苦手な私だ、もし知らない人が出てしまうことを思うと
どうにも物怖じするので、そこではやめておいた。
ξ゚听)ξ(そういえば、携帯)
制服のポケットに手を入れて探ってみると、
プラスティックのひんやりとした感触が伝わってきた。
取り出すと、あの、キャンペーンで貰ったガラケーだった。
ξ゚听)ξ(ふーむ……)
それをしばらく眺めた後、また制服のポケットに仕舞っておく。
-
13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:16:08 ID:eMRTl80o0
-
そして事件は、放課後に起こった。
(#'A`)「ふざけんじゃねえぞ、ブーンてめえ!」
(#^ω^)「だから僕じゃないって言ってるお!!」
帰りのホームルームが終わった後、
二人の男子生徒が急に激しい言い争いを始めたのだ。
彼らは、ブーンとドクオ。
性格は正反対なもののどうにも波長が合うらしく、
いつも一緒に行動する仲(らしい)。
まあ、テーブルの情報を閲覧したわけだけど。
周りの生徒も珍しさになんだなんだと注目し、彼らの周りに集う。
(#'A`)「しらばっくれんじゃねえよ!」
(#^ω^)「僕なわけないじゃないかお!そんなことしないお!」
-
14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:17:36 ID:eMRTl80o0
-
(#'A`)「どう考えてもお前しかいないじゃねえか!
俺がクーのこと好きだってことを知ってんのは!」
クラスメートたちの間に、衝撃が走る。
「えっ、ドクオ、クーのこと好きだったの?」
「知らんかった……」
(;'A`)「あ……」
うっかり秘密を暴露してしまったドクオは、
周りのひそひそ話す声を聞いて急にばつが悪くなったようで、
ブーンの胸を軽く押すと咳払いをした。
(;^ω^)「目を覚ませお、ドクオ……
僕がお前の大事なことをテーブルに書いて置くわけないじゃないかお……」
ブーンは悲しい声でドクオを諫めるも、当の彼はまだ怒りが収まる様子ではない。
-
15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:19:10 ID:eMRTl80o0
-
(#'A`)「俺だって信じられねえよ、
でも俺はおまえにしか話してねえ、お前しか知らないはずだろ」
(;^ω^)「でも、僕は本当に……」
(#'A`)「もういい」
ドクオはブーンに背を向ける。
(#'A`)「おかげで目が覚めたよ、お前がどんなに薄情な卑怯者かって知れて良かったぜ」
(#'A`)「もう絶交だ!」
肩を怒らせて、ドクオは真っ直ぐドアから教室の外へ出ると、勢いよくドアを閉めた。
バン!という窓ガラスの揺れる音が教室内に響く。
後には、寂しそうに佇むブーンの姿と
クラスメートたちのざわめきだけが残された。
-
16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:21:19 ID:eMRTl80o0
-
ξ゚听)ξ(テーブルに置いた、ってドクオ言ってたわね)
出歯亀根性ながらも、私は興味本位でテーブルを覗いてみる。
しかし、その騒動の原因になったであろう情報は
広いテーブルのどこを探しても見つかることはなかった。
ξ゚听)ξ(そうね)
私は気づく。
ξ゚听)ξ(情報を置くことが出来るなら、取り除くことも出来るわよね)
ξ゚听)ξ(そうじゃないとテーブルも埋まる一方だし)
あの様子だと、ブーンが本当にドクオの秘密をテーブルに置いたとは思えない。
きっとこの騒動を目の当たりにした真犯人が、
慌ててその情報をテーブルから降ろしたのだろう。
ξ゚听)ξ(便利なテーブルだけど、トラブルの原因にもなっちゃうわよね、そりゃ)
-
17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:22:44 ID:eMRTl80o0
-
次の日。
教室に入ると、ある一画に女子生徒たちが集まっていた。
ξ゚听)ξ(なにかしら……?)
その中心では一人の女の子が机に突っ伏して小刻みに身体を震わせていた、
泣いているようだ。
女子生徒たちの中にキュートの姿もあったので、
私は彼女に事情を尋ねてみることにした。
ξ゚听)ξ「どうしたの?これ」
o川*゚ー゚)o「あ、ツン。あのね、なんか、
ナベさんの悪口がテーブルに書かれてて……それでナベさん泣いちゃって」
ナベさん、それはあだ名で、本名は渡辺エリカだったか。
未だ泣き続ける女の子の方をみると、
ナベさんの特徴であるふわふわとした茶髪の巻き髪が、
何かの生き物のように机の上で震えていた。
从;ー;从「ひっぐ、ぐすっ」
-
18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:24:01 ID:eMRTl80o0
-
ξ゚听)ξ(またテーブルか……)
テーブルに覗こうとする私を、キュートの声が遮った。
o川*゚ー゚)o「あ、その悪口、もうテーブルにないみたいよ」
その声に私は意識を戻した。
ξ゚听)ξ「……ないの?」
o川*゚ー゚)o「うん、ていうか……」
キュートは困ったように肩をすくめる。
o川*゚ー゚)o「その悪口自体、ナベさんしか見てないんだよね」
ξ゚听)ξ「えぇ……」
-
19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:27:06 ID:eMRTl80o0
-
証拠がないんじゃ、誰を責めるべきかも分からない。
一体どんな内容の悪口だったのかとナベさんに聞いてみても、
肝心の彼女はただ泣くばかりで、はっきりとした情報は得られなかったらしい。
それで、とにかく女子たちも慰めるより他無いみたいだ。
o川*゚ー゚)o「か弱い女の子って大変ね」
ξ゚听)ξ「そうね、あんたと違ってね」
o川*゚ー゚)o「あっ、ひっどーい!私だって泣くことぐらいあるよ!」
ξ゚听)ξ「逮捕された時とかね」
o川*゚ー゚)o「うん、……って!おい!」
そのとき、教室のドアが勢い良く開いた。
-
20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:28:15 ID:eMRTl80o0
-
( ^ω^)「おっはよー!」
昨日の悲しげな姿とは打って変わって、
底抜けに明るい声でブーンが教室へ入ってきた。
続いてその後ろからドクオの姿も。
('A`)「おはよう……」
o川*゚ー゚)o「あっれ?絶交したんじゃ?」
あんまりな尋ね方だがキュートの疑問も尤もだ。
あれだけの言い争いをしておきながら、次の朝には一緒に登校するなんて
一体どういう風の吹き回しだろう。
( ^ω^)「みなさまお騒がせしました、僕たち仲直りしましたお!」
('A`)「……まあな」
-
22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:29:25 ID:eMRTl80o0
-
ξ゚听)ξ「仲直り?」
('A`)「うん」
ぽりぽりと人差し指で頭を掻きつつドクオは説明した。
('A`)「よく考えたらさ、テーブルに書かれてたやつ、
別に俺やクーのことを名指しして書いてなかったんだよな」
o川*゚ー゚)o「え?そうなの」
('A`)「俺、クーのことをブーンに打ち明けて、それでなんか敏感になっちゃって」
('A`)「それでテーブルのを見た瞬間にすぐブーンのこと疑っちゃって……
ひどい奴だよな、ブーンはそんなことするやつじゃないって
分かってたはずなのにさ」
('A`)「昨日帰ってから、おれ、ブーンに酷いことしちゃったって気づいて
すぐブーンの家に行って謝ったんだ」
-
23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:30:55 ID:eMRTl80o0
-
('A`)「本当にごめん、ブーン……
大事な俺の友だちに、俺、あんな暴言吐いて……」
( ^ω^)「気にしないお、大事な恋だから、
ドクオがつい敏感になっちゃうのも分かるお!」
(つA`)「ありがとうなブーン……」
涙ぐみながらドクオはブーンの手を取り、何度も謝った。
o川*゚ー゚)o「本当にお騒がせだよねまったく……」
ξ゚听)ξ「まあ、なんにせよ仲直りしてよかったわ」
( ^ω^)「ところで、なんかあったのかお?」
女子たちが集まっているのに気づいたブーンは、首を傾げて尋ねた。
-
24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:32:10 ID:eMRTl80o0
-
o川*゚ー゚)o「ナベさんが自分の悪口をテーブルに書かれた、って泣いてるの」
(#^ω^)「ひどいことをするやつもいたもんだお、
皆が見れるテーブルにそんなことを載せるなんて……」
( ^ω^)「犯人は分かってるのかお?」
ξ゚听)ξ「それが、その悪口ナベさんしか見てないから分かんないのよ」
('A`)「えっ!?」
ドクオはそれを聞き、突然大きな声を出した。
o川*゚ー゚)o「うわ、びっくりした!なに!?」
キュートの声を無視して、女子たちの壁を押しのけて、
ドクオは泣き続けるナベさんの元へ駆け寄ると、頭を勢いよく下げた。
(;'A`)「すまん!ナベさん!!」
-
25 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:33:24 ID:eMRTl80o0
-
从;ー;从「ど、ドクオくん……?」
ナベさんはしゃくりあげながらも顔を上げる。
(;'A`)「その悪口、俺が書いたやつかもしれない!」
(;^ω^)o川;゚ー゚)oξ;゚听)ξ「「「な、なんだってー!!!??」」」
o川;゚ー゚)o「ドクオ……あんたなんてヒドいことを……」
(;^ω^)「繊細なナベさんに悪口なんて……いくらなんでも許せんお……」
(;'A`)「ち、ちがう!いや、ちがわないんだけど、聞いてくれ!」
首をブンブン振りつつも、ドクオは弁明する。
(;'A`)「その悪口、別にナベさんに向けて書いたんじゃないんだよ、
ブーンと絶交した後、まだムシャクシャしててさ、
ついブーンの名は出さずに悪口書いて、テーブルに載せたんだよ」
-
26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:35:12 ID:eMRTl80o0
-
从つー;从「じゃ、じゃあ私に対しての悪口じゃないってこと……?」
(;'A`)「そうだ、んで、すぐにマズいって気づいてテーブルから消したんだ!」
(;'A`)「載せてから消すまでほんの5分ぐらいだから誰も見てないって思ってたが
まさかナベさんが見てたとは……」
从'ー'从「そう、だったんだ……」
ナベさんの涙はすっかり乾いていた。
彼女の口には、かすかに笑みさえ浮かんでいる。
(;'A`)「本当にすまん!」
o川*゚ー゚)o「そういうことだったのか、それでナベさんしか見てなかったのね」
( ^ω^)「テーブルも便利だけど、こういうことがあるんじゃ大変だお」
ξ゚听)ξ「ほんと、そうね」
-
28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:37:49 ID:eMRTl80o0
-
ドクオが必死に謝る様子を見てナベさんもそれを許し、
これについては一件落着。
ブーンたちも仲直りしたし、ナベさんも泣きやんだし、
これでテーブル関連の懸念事項はすべて解決……、
といきたいところだが、私にはまだ引っかかっていることがあった。
――ドクオとブーンの絶交の原因となったテーブルの情報は、
一体どんな内容で、誰が置いたものだったのか?
ξ゚听)ξ(名指しで書かれてなかったとしたら、
ドクオとクーじゃなく、いったい誰の秘密を……?)
別にそれが何であろうと私には関係ないはずだけれど、無性に気になる。
確かめずにはいられないというか、むしろ、確かめることが義務のようにさえ思えてくる。
-
29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:40:47 ID:eMRTl80o0
-
思い立ったが吉日、私はドクオが座っている席に向かった。
ξ゚听)ξ「あのさ、ドクオ……」
('A`)「うお、なんだ……ツン?」
ラノベ文庫をちょうど開こうとしていたドクオは、
驚いた様子で顔を上げた。
ξ゚听)ξ「あんたが、ブーンが置いたって勘違いした
テーブルの情報って、いったいどんなのだったの?」
言った後で、突然こんなことを尋ねてしまうのは不躾だったかと後悔する、
案の定、ドクオは訝しがった。
('A`)「……それ聞いてどうすんだ?」
ξ゚听)ξ「いやさあ……わたしも、その、好きな人が居て、
それでもしかしたら私のこと書いてたのかもしれない、って……」
我ながら、とっさに上手い嘘がつけたもんだと感心する。
-
30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:43:20 ID:eMRTl80o0
-
('A`)「ああ、そうなのか……、そりゃあ心配だよな。
でも、多分ツンのことじゃあ無いと思うよ」
ξ゚听)ξ「なんで?」
('A`)「その、テーブルに書かれてた内容は、たしか、
"あの根暗が、とても釣り合わない相手に惚れてるらしい"とか、
そんな内容だったからさ、どう考えてもツンには当てはまらねえだろ」
ξ;゚听)ξ「根暗が、釣り合わない相手に……」
それを聞いて、ズキ、と頭の一部が鋭く痛み始めた。
まるで、錠前を合わない鍵で無理矢理こじ開けられた、みたいな……。
-
31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:44:43 ID:eMRTl80o0
-
('A`)「根暗で釣り合わないってまさに俺とクーのことじゃんか、
俺はこのクラスで一番っていっていいほどの根暗野郎だし、
クーはクラスでもトップクラスの美人で人望あるし頭もいいしさ……」
('A`)「でもやっぱりブーンがそんなこと書くわけ無いしな、
俺が勘違いしただけだろうな、ウン」
ξ;゚听)ξ
ドクオの言葉も、もはや耳には届かなかった。
頭痛は秒毎に、耐えられないほど酷くなり、
もはや頭全体をハンマーでブン殴られているようだった。
ξ;゚听)ξ(く……ど、どうにかなんないの?これ……)
痛む頭を抱えながら、私はあることに気づいてしまった。
-
32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:45:45 ID:eMRTl80o0
-
ξ;゚听)ξ(待てよ……)
ξ;゚听)ξ(ドクオがブーンと絶交した後に書いた悪口は、
ナベさんが"自分に向けて書かれた"と勘違いするような内容だったのよね)
そのとき、ドクオに頭を下げられて泣きやんだときの
ナベさんの表情がフラッシュバックした。
あの、唇に浮かんでいた笑みは……。
ξ;゚听)ξ「あ、ありがとうね、ドクオ……」
('A`)「おい、なんか顔色悪いぞ?大丈夫か?」
ξ;゚听)ξ「大丈夫よ、すこし頭が痛いだけ……」
よろよろとふらついた足取りで、私はドクオの席から離れた。
次に向かうは、ナベさんの席。
-
33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:48:11 ID:eMRTl80o0
-
ξ;゚听)ξ「ナベさん……」
从'ー'从「ん?どうしたのツンちゃん」
ξ;゚听)ξ「あの、さ……」
痛い、痛い、頭が、が。
ξ;゚听)ξ「ドクオが書いた悪口って、どんな内容か覚えてる?」
別に、ドクオに聞いてもよかったのだが、
ここはナベさんに尋ねて、その反応を見たかった。
ナベさんはしばらく考えた様子で、そして。
从'ー'从「うーん……」
ξ;゚听)ξ
从'ー'从「ごめん、もう忘れちゃった」
-
34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:50:31 ID:eMRTl80o0
-
ξ゚听)ξ(忘れるわけ……)
もうダメだ、頭痛はいよいよその痛みを増し、全身を貫く。
ξ゚听)ξ(ねえだろ……)
とうとう私はその場に倒れ込んでしまった。
从;'ー'从「ツンちゃん!?どうしたの!?目を覚まして!」
ナベさんは倒れた私を見て高い声を上げ、慌てて立ち上がり私の体を支えた。
私はというと……無意識にテーブルにアクセスし、とある情報を閲覧していた、
脳内に浮かぶのは、あのナンバー……。
"0X0-XX32-X26X"
ξ;゚-)ξ「う、ナベさん、私のポケットに……
携帯あるよね、ガラケーの……」
-
35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:51:58 ID:eMRTl80o0
-
从;'ー'从「携帯?」
ナベさんは私の制服のポケットを探り、そしてあの携帯を取り出した。
从;'ー'从「あるけど……」
ξ;゚听)ξ「貸して……」
渡された携帯を震える手で受け取ると、
私は吐き気を堪えつつ、ボタンをプッシュする。
0、X、0……、
X、X、3、2、……、
X、2、6、X……、
そして、通話ボタン……。
-
36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:53:15 ID:eMRTl80o0
-
プルルルル……、プルルルル……、
ξ;-听)ξ(出て……)
プルルルル……、プルルルル……、
ξ;-听)ξ(はやく……)
プルルルル……、プルルルル……、
ξ#-听)ξ「早く!」
――ガチャリ。
回線は繋がり、次にスピーカーから声が響いた。
「はい、もしもし……どなた?」
その瞬間、私の意識を目映く鋭い光が貫いた。
-
37 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:54:41 ID:eMRTl80o0
-
【現実(1)】
あの携帯電話を手にしたままで、私は自室のベッドの上で目を覚ます。
教室じゃない、ナベさんも、キュートもいない。
――夢を、見ていたのだろうか。
ξ;゚听)ξ「夢だとしたら、悪趣味な夢だこと……」
夢?で感じたあの頭の痛みはもはやすっかり消えていた、
むしろすっきりと冴えているようで、それがむしろ気味が悪かった。
ふと気になった私は、携帯の通話履歴を閲覧するも、
そこには何の記録も残されてはいなかった。
ξ゚听)ξ「この携帯のせい、では、ないのかしら?多分……」
両腕をまっすぐ上に伸ばして、私は深呼吸した。
夢にクラスメートが出てくるというのはなかなか気まずいもんだ、
学校に行きたくないなあ。
-
38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:56:57 ID:eMRTl80o0
-
それでも登校した私。
重たく感じる腕で、教室のドアを開ける。
ξ゚听)ξ「おはよう……」
そこには、夢に出てきたあのクラスメートたちが既に登校済で、
各々机に向かって予習をしたり、談笑したりして過ごしている。
o川*゚ー゚)o
―キュート。
( ^ω^) ('A`)
――ブーン、ドクオ。そして、
从'ー'从
ナベさんも。
その誰もが、私の挨拶に返してくれることはなかった。
その態度で私は思い出す。
そう、私はクラスで浮いた存在の、いわゆる根暗だったってことに。
-
39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:58:15 ID:eMRTl80o0
-
ξ゚听)ξ(やっぱり、夢ってのは願望が現れるものなのかしら)
ξ゚听)ξ「ふぅ」
ξ゚听)ξ(落差感じちゃうよなあ、やりきれないなあ)
もはや慣れていたことであったにもかかわらず、
やはり夢であれだけクラスメートと関わった体験と
今現在の寂しさの高低差に思わずため息をつきながら、
私は自席に腰掛け、鞄をかけた。
ξ゚听)ξ("あの根暗が、とても釣り合わない相手に惚れてるらしい"、か……)
夢の世界では、私は決して根暗ではなかった。
しかし現実では、クラス一の根暗は明らかに私だろう。
だとしたら……。
あの、とっさに思いついた嘘は、実は本当のことなのかしら。
-
40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/27(土) 23:59:56 ID:eMRTl80o0
-
突如、クラスメートたちが慌てた様子で一斉に着席しだす。
そして、ドアが開き髭もじゃの大きな男が教室の中へ入ってきた。
ミ,,゚Д゚彡「うっし、授業始めるぞー。今日は小テストだからな」
「小テスト!?やばい!範囲どこ?」
「うわぁ、ぜんぜん勉強してなかった!」
混乱の声を上げるクラスメートたち、
そうか、現実にはあんなテーブル、ないんだよね。
ふと、気になった私はこっそりと教室を見回す。
端の方の席が、ひとつだけ空いていることに気がついた。
ξ゚听)ξ「……」
ξ゚听)ξ(なにか、忘れてる気がするのよね……)
前から回されてくる小テストの問題用紙を受け取りながら、
私は、次のモーニングコールを心より待ち望むことにした。
〜つづく〜