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3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:39:56 ID:.NwHTlaQ0
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ボクは。
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4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:40:55 ID:.NwHTlaQ0
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ボクは 誰かに必要だったのだろうか。
ボクなんかを必要としてくれる誰かが、これまでもこれからも
傍にいてくれたことなんてあっただろうか。これまでも、この先もずっと。
自分が好きなことや、やりたいことなんて言われてもよく分からない。
だって大抵の場合、ボクには何が起こっているのか分からなくて
みんなはいつもよく分からないことをしていて、ボクはいつだって置いてけぼりだった。
人の目を見ればいつも否定されているような気がして、どこにも居場所なんてなくて。
どうしてボクはこんなにも、生きるのが下手なんだろう。
他の人はそんな風に見えないのにな。それともそう見えないだけなのだろうか。
普通の人のフリをしているだけ?普通の人に見せるのが、ボクよりうんと上手いだけ??
わからない。もうなにもわからない。
人に親切に、みんなに優しく、誰を傷つけるようなことも自分ではしないように
しないように気を使って、誰かを悲しませるようなことも、自分ではしないように
しないように身を潜めて、息を殺して、言いたいことをなにもかもをも飲み込んで
優しい言葉を吐いてみんなの味方でいるよう振る舞って、大人しく真面目に、生きてきたのに。
どうしてこんなに、生きるのが下手なんだろう。心なんてなんの役にも立たなかった。
こんなの死んでるのと同じかそれ以下じゃないか。
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5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:41:50 ID:.NwHTlaQ0
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ねぇ誰か。
いっそ ボクを。
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6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:42:57 ID:.NwHTlaQ0
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見る者に清潔なイメージを抱かせる、白を基調とした明るく長い廊下。
全て同じカラーリングで、デザインも統一されているいくつかの扉の前を通り過ぎ
ある部屋の前に来た時、その扉横に記された番号を確認して彼は足を止めた。
305号室。ブーンから教えて貰った部屋番号をもう一度見る。
( ´_ゝ`)
5日前、羽生しぃが搬送された病院に兄者は今訪れていた。
―――”あの日”の放課後、意識を失い倒れたまま
今もなお眠り続けているというクラスメイトに会う為だ。
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7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:43:52 ID:.NwHTlaQ0
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原因不明の昏睡状態。
ブーンから聞かされた説明によれば
今のところ命に別状は無いようだが、言わば植物状態に近く
あれからもう5日経つにも関わらず、未だに彼女の意識は回復していない。
この扉の先では、あの日最後に見た姿のまま
自分の目の前から、教室からいなくなってしまったつーがいる。
兄者はその扉を見つめ、一瞬迷うような表情を顔に浮かべたが
控えめなノックを2回した後、そっと手すり状のノブに手をかけた。
スライド式の扉は特に力を込めることもなく開き、彼を部屋へと迎え入れる。
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8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:46:02 ID:.NwHTlaQ0
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小さめの簡素な病室に1つしか無いベッドを認識するよりも先に
兄者はその部屋に既に先客がいることに気がついた。
|゚ノ ^∀^)「あら!」
一瞬、しぃの身内の誰かかと思ったが違った。
来客用のパイプ椅子に腰かけていた短髪の男性は、こちらを振り返ると
兄者の姿を認識すると同時、その見た目から想像するよりもやや高めの声をあげた。
( ´_ゝ`)「あっ」
(*´_ゝ`)「レモナさん!」
去年まで同じクラスで共に過ごした、親しい先輩の顔を見て
兄者も思わず驚きと喜びの混じった声をあげる。
が、すぐに、病室で大きな声を出してしまったことに慌てて口を閉じた。
|゚ノ ^∀^)「久しぶりね兄者君。元気してた?」
( ´_ゝ`)「うん。まぁ……」
柔らかく笑いかけるレモナに歯切れの悪い返事を返しながら、兄者は改めて
白くたっぷりとした布団をかけられ、そこに眠っているよく知った少女の姿を見た。
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9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:47:28 ID:.NwHTlaQ0
-
(*- -)
羽生しぃはその細い腕に点滴を繋がれて眠っていた。
安らかな寝顔をしているが、その顔色はあまり良くないように見える。
……しぃの両親や、学校の級友達、渡辺が見たならば
淡いピンクのパジャマを着て静かに目を瞑るその姿は、疑いなく羽生しぃに見えるのだろう。
だが兄者にはその少女が確かにつーに見えたし、どうしてもつーにしか見えなかった。
外の世界の人達からは、誰からもそうは見えなくとも、ただ同じに見えるのだとしても
鏡に映る弟者の顔と自分の顔を、ごく自然に見分けることが出来るのと同じように
そこに確かに彼女を見つけることができたことに、思いがけず安堵のような気持ちを覚える。
しぃちゃんには悪いけど、俺はお前に会いに来たんだぞ。
そう声をかけてやりたい衝動に駆られたが、言葉は出てこなかった。
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10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:49:07 ID:.NwHTlaQ0
-
( ´_ゝ`)「……」
|゚ノ ^∀^)「……まぁ、座ったら。兄者君」
レモナに促され、もう1つの椅子へと腰かける。
ぼんやりとつーの顔を覗きこんで、部屋をちらりと見渡し
再び視線をレモナの方へ向けた兄者が尋ねるよりも先に、彼女は口を開いた。
|゚ノ ^∀^)「ガナーちゃんからつーちゃんのこと聞いてね。
アタシ、びっくりしちゃって。ブーン先生に連絡とって病院の場所教えてもらったの」
( ´_ゝ`)「……あっ、そっか。ガナーちゃん、うちの高校の1年生だっけ」
ガナーとはレモナの主人格であるモナーの妹のことだ。今年VIP高に入学した。
しぃのことは1年生の間で密かに噂されていたから、それで知ったのだろう。
|゚ノ ^∀^)「そ。それで、モナー君が良いって言ってくれたから、こうして会いに来たのよ」
そう言って、レモナは顔をほころばせた。
-
11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:52:00 ID:.NwHTlaQ0
-
|゚ノ ^∀^)「弟者君や、クラスのみんなは元気?」
自分の目元にかかった髪を、女性らしい仕草で横に撫でつけながら尋ねる。
( ´_ゝ`)「うん。シャキ兄とデレちゃんは、今日はちょっと来れなかったんだけど。
でもみんな、つーのこと心配してるよ」
|゚ノ ^∀^)「そう」
( ´_ゝ`)「ブーン先生は……色々大変みたいだ。
こんなことがあったから、校長からも怒られて」
ブーンが校長から厳しい叱責を受けることとなった相次ぐ問題の中には
しぃのことに加え、先日ツンが何者かに閉じ込められた事件のことも含まれていたのだが
レモナが心配するのでその件については黙っておくことにした。
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12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:53:17 ID:.NwHTlaQ0
-
( ´_ゝ`)「……」
( ´_ゝ`)「なんでこんなことになったのかなぁ」
傍らで眠るつーの寝顔を眺めながら、兄者はぽつりと呟いた。
( ´_ゝ`)「つー、元気だったのに。
あの日だって……一緒に笑って、馬鹿やって、いつもと同じだったのに」
( ´_ゝ`)「……元気に、見せてただけだったのかなぁ……。ずっと」
|゚ノ ^∀^)「……」
(*- -)
( ´_ゝ`)「……」
( ´_ゝ`)「いや」
( ´_ゝ`)「……本当は俺、ずっと前から分かってた。
つーが無理してること、傷ついてることも全部」
( ´_ゝ`)「いつか……大変な事になるかもしれないってことも
心のどこかで、気づいてた気がする」
-
13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:54:24 ID:.NwHTlaQ0
-
弱音を吐く気など無かった。
だが実際に、こうして眠り続けるつーを前にしたのと
レモナとの久しぶりの再会、懐かしい顔につい気が緩んでしまって
誰に聞かせるつもりも無かった己の胸の内が、兄者の口から零れ出る。
( ´_ゝ)「……なのに、俺……気づかないフリしてたんだ。ずっと」
一度言葉にしてしまうと、ここ数日抱えていたそのわだかまりは
自身が思っていた以上に手に負えないもので、兄者はその重みに耐えかね項垂れた。
その姿はまるで、自分の口をついて出るその言葉にますます打ちのめされていくようだった。
|゚ノ ^∀^)「……」
|゚ノ ^∀^)「……なんだか兄者君、こうなったのは自分のせいだと思ってるみたい」
しょげかえったような目で自分を見る後輩の顔をまっすぐに見つめ、レモナは言った。
-
14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:55:15 ID:.NwHTlaQ0
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|゚ノ ^∀^)「ブーン先生から5日前のこと聞いたわ。少しだけだけどね」
|゚ノ ^∀^)「兄者君、ずっとつーちゃんの傍にいてあげたんだってね。
ちゃんと、つーちゃんのこと守ろうと頑張ったんじゃない」
( ´_ゝ`)、「……でも結局、なにも……」
|゚ノ ^∀^)「それでもきっと、つーちゃんは嬉しかったと思うわよ」
|゚ノ ^∀^)「悲しくて、何もかも投げ出したくなったとしても、それを止めてくれる人がちゃんといて。
あなたは1人じゃないって気づかせてあげたじゃない」
自信を持って彼女はそう言い、兄者に向けて優しく微笑んでみせた。
|゚ノ ^∀^)「……ブーン先生も言ってたわ。
こんなことになる前に、もっと自分にできることがあったんじゃないか
教師として、カウンセラーとして重大な誤ちを犯してしまったんじゃないかって」
|゚ノ ^∀^)「でもね。こうなってしまった原因は
今はお医者様にも、誰にもわからないんだから」
|゚ノ ^∀^)「……つーちゃんとしぃちゃんは、元々難しい問題を抱えていた。
もし今のこの状態が、その問題に起因しているものだとしても、そうじゃなくても
兄者君が自分を責める必要は無いわ。誰のせいでもないわよ」
( ´_ゝ`)「……」
-
15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:56:18 ID:.NwHTlaQ0
-
一度言葉を区切ると、レモナは短く息を吐くように笑った。
|゚ノ ^∀^)「それにね。
大体兄者君、見て見ぬフリなんてできる程器用じゃないでしょ」
( ´_ゝ`)「え」
|゚ノ ^∀^)「いつだってそうだったじゃないの。
アタシがよく、オカマだとか気持ち悪いって言われて
同じクラスの男の子達にいじめられてた時だって」
|゚ノ ^∀^)「見かけたらすぐ駆けつけて、アタシのこと助けてくれた。
自分より体の大きい、年上の3年生にだって殴りかかっていったじゃない」
かっこよかったわよ、と付け加え、大人っぽいウィンクをしてみせる。
|゚ノ ^∀^)「今だってそうよ。ちゃんと現実をまっすぐに見て、どうしたらいいか悩んで
逃げ道よりも先に自分にできることを探してる。つーちゃんのことを想ってる」
( ´_ゝ`)「……」
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16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:57:16 ID:.NwHTlaQ0
-
|゚ノ ^∀^)「貴方は、到底敵わないと思える相手にだって立ち向かう勇気を持っている。
本当に逃げ出してしまわない限り、きっとなにか自分にできることが見つかる筈よ」
|゚ノ ^ー^)「君なら大丈夫」
その声には、嘘や疑いの色など何処にも無く
彼女の心の真に温かい部分が溶け出して、自然と勇気を与えてくれるような響きがあった。
( ´_ゝ`)「……レモナさん」
|゚ノ ^∀^)「ね!だからほら、そんな泣きそうな顔しないの。
お見舞いに来たのに、そんなんじゃ逆につーちゃんに心配されちゃうわよ」
そう言って、レモナはそっと兄者の肩を叩いた。
|゚ノ ^∀^)ノ「わかった?」ポン
( ´_ゝ`)、「……」
( ´∀`)ノシ「モヌァ!!」バシィ‼
Σ(;´_ゝ`)「どわぁ!?」
次いで彼の肩を襲った、先程の肩ポンとは比べものにならない衝撃に
突き飛ばされる形となった兄者は椅子から転げ落ちた。
-
17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 21:58:56 ID:.NwHTlaQ0
-
( ´∀`)「モナモナ。先輩からの愛ある一喝モナ〜」
涙目で痛む肩を抑え振り向くと、そこにはレモナと人格交代し
明朗にモナモナ笑うモナーがいた。
(;´_ゝ`)「モナーせんぱ……」
|゚ノ;^∀^)「やだちょっとモナー君たら!
今の流れじゃアタシが怪力ゴリラ女みたいに思われちゃうじゃなぁい!」
|゚ノ ^∀^)
|゚ノ*^∀^)「もぉ!ちょっとそれどういう意味〜!盗み聴きはよくないゾッ☆」
(;´_ゝ`)「……」
頬を染め1人体をくねらせて、心の中での会話に忙しいらしい彼女を前に
椅子から転がり落ちた体勢のまま、兄者はその光景をなんとも言えない表情で眺めていた。
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18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:00:47 ID:.NwHTlaQ0
-
(;゚Д゚)「おい、どういうことだよ!」
本校一階、職員室からは見えない曲がり角の先に位置しているとある教室。
教育実習生であるモララーにあてがわれ、実質大規模な1人部屋となっているこの場所で
ギコは切羽詰まった声で目の前の相手に詰め寄っていた。
( ・∀・)「……」
対して、何か考えこむように此処ではないどこかを見つめ
机に寄りかかりながらじっと押し黙っているのはモララーだ。
生徒が一人入院する事態になったことが問題となり
一時は彼の教育実習を中止する案も出た。
だが、こんな時だからこそクラスの力になりたいというモララー自身の申し出により
引き続き教育実習生としてVIP校に留まることになったのだった。
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19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:02:46 ID:.NwHTlaQ0
-
(;゚Д゚)「話が違うぞゴルァ!
こんなことになるなんて、あんた、言わなかったじゃないか!」
( ・∀・)「……静かにしなよ。先生方に聞こえたらどうする?」
(;゚Д゚)「……っ!」
( ・∀・)「もう少し慎重になるんだね。ギコ君」
唇に当てた人差し指を離し、モララーは視線だけでギコを見た。
( ・∀・)「僕がここを追い出されたりしたら、君の望みを叶えてやることもできなくなる。
わかってるだろ?」
(;゚Д゚)「……で、でもっ……」
ギコは言葉を詰まらせた。
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20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:03:54 ID:.NwHTlaQ0
-
(;゚Д゚)「でもこんなの、話が違う!
……あんた俺に……」
(;゚Д゚)「―――羽生しぃは消えて、マインドBの、“つー”だけが
“ほんものの人間”になるって言ったじゃねぇか!」
(;゚Д゚)「だから俺はあんたに協力したんだぞ!
主人格を消して、マインドBだけを残すことができるって言うから!」
(;゚Д゚)「なのに……あいつはもう5日も眠ったままだって言うじゃねーか。
一体どうなってんだよ!?」
( -∀-)「……うーん」
落ち着きない様子で、声を裏返すギコとは対照的に
モララーはまるで緊迫感を感じさせない様子で
目を瞑り、顎に軽く手を添えて何事か思案しているようだった。
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22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:04:39 ID:.NwHTlaQ0
-
( ・∀・)「ちょっとした手違いだよ」
(;゚Д゚)「はぁ?」
ギコは思わず間の抜けた声をあげてしまった。
(;゚Д゚)「な、手違いって……」
( ・∀・)「あの子……”つー”は
主人格を制して1人の人間になれる心の強さと、力を持っていると思っていた。
マインドBが主人格より優れていることを示すに相応しい、それだけの力をね」
( ・∀・)「だから僕は彼女に強い意志を与え、さらに
主人格との関係に決定的な亀裂を生じさせた」
( ・∀・)「2人の相反する人間の感情は激しくぶつかりあい
衝突の後には”つー”だけが残る筈だったんだ」
だけど、とモララーは続ける。
( -∀-)「どうやら、彼女は僕の見込んだ器を持ち合わせてはいなかったらしい。
残念だよ、とても」
(;゚Д゚)「……?」
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23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:06:42 ID:.NwHTlaQ0
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ギコにはモララーの言っていることがどういうことなのか、半分も理解できなかった。
思いついたように急に喋り出したかと思えば、それ以上の説明をする気は無いようで
ぱたりと言葉を切り軽く目を閉じたままのモララーに不安げに尋ねる。
(;゚Д゚)「……羽生しぃは、目を覚ますのか?つーは?どうなるんだ?」
( ・∀・)「どうだろうね。それは僕にも分からないな」
( ・∀・)「もう少し時間が経てば、元の状態のまま起きるかもしれないし。
しぃかつーか、どちらか1人になって起きる可能性もある」
( ・∀・)「それから……このまま目覚めない可能性もね」
(;゚Д゚)「そんな!」
ギコは信じられない思いでモララーを見た。
自分がこの男に手を貸したせいで、人が一人、一生目を覚まさないかもしれない?
こんな事態になってしまっているというのに、本人は呆れるほど冷静な物言いで
まるで自分がしたことにも、その結果生じた間違いに対しても何も感じていないようだった。
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24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:09:02 ID:.NwHTlaQ0
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(,,゚Д゚)「……おい……まさか」
不信感を露わにし、目の前の男を睨みつける。
(,,゚Д゚)「あの、津田ツンが体育館に閉じ込められたとかいう騒ぎ。
あれも、あんたが仕組んだんじゃねーだろうな!?」
( ・∀・)「まさか」
ギコの怒りを躱すように、モララーはひらひらと手を振った。
( ・∀・)「あれは僕にも予期せぬ出来事だったよ。
何処の誰の悪戯かは知らないけどね、僕は関係無い」
(,,゚Д゚)「本当か……?」
( ・∀・)「だって、あの子は幼すぎるもの。
最初から計画には入れていなかったんだ」
(,,゚Д゚)「なに?」
( ・∀・)「津田デレ。あの子は頭の良い子だけれど、あどけない少女にすぎない。
あの子には主人格を制する力も、それを上回る強い意志も持てはしないだろう」
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25 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:13:41 ID:.NwHTlaQ0
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( ・∀・)「弱い者は新人類にはなれない。
残念だけど、”つー”もまた、その資格を得るに至る人材では無かった」
( ・∀・)「それだけのことだよ」
(;゚Д゚)「……!」
―――期待に叶わなければ切り捨てるだけ。
この男は、人を手駒か何かのようにしか見ていない。
まるで盤上のゲームを進めているかのような人間味を感じさせない言葉に
自分が手を貸した男の得体知れなさを垣間見た気がして、ギコは思わず一歩下がった。
彼の中で眠っていた危機感が、この男は危険だと再び警報を鳴らす。
まるで、半分微睡んでいた浅い夢からたった今醒めたかのような感覚だった。
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26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:14:51 ID:.NwHTlaQ0
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(#゚Д゚)「と……とにかく!俺はこんな、酷いことをする為に
あんたに力を貸したわけじゃねーからな!」
( ・∀・)「……酷いこと?」
自分を批難するギコをさもつまらなそうに見やり、声を落としてモララーは言った。
( ・∀・)「なぁんだ。君まで今更、そんなキレイゴトを言うのかい?」
その瞳の奥から覗く、ゾッとするような冷やかさと視線がかち合って
瞬時にギコの背筋を嫌な感覚が走った。
嫌悪感や侮蔑の感情とはまた違う、それらを越えた黒い恐怖が喉元にせりあがってくる。
( ・∀・)「羽生しぃを僕の元へと導いたのは君なんだよ」
(;゚Д゚)「……」
ギコは目を逸らすことができなかった。
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27 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:17:52 ID:.NwHTlaQ0
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( ・∀・)「しぃ君を僕に差し出すことは
実質、彼女の存在を消すことだと君は知っていた……。
そして、そう願ってもいた筈だ。君がタカラ君を厭わしく思っていたように」
( ・∀・)「主人格を消滅させ、マインドBだけが生き残ればいいと、利己欲に走ったように」
( ・∀・)「それでも君は、さも自分が被害者であるかのような顔をして
僕にそんな台詞を吐くことができるのかい?」
(;゚Д゚)「……ッ」
苦痛に堪えかねてギコは顔を歪めた。
(;゚Д゚)「……俺は」
言い返すことも出来ず、力無くかぶりを振る。
(; Д)「俺は、ただ……!
……認めて、もらいたかっただけ、なんだ……」
(; Д)「お……俺も、人間、だって……!!」
( ・∀・)
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28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:20:48 ID:.NwHTlaQ0
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食い縛った歯から零れ落ちる、少年の叫び。
誰にも気づかれない一瞬、ほんの一瞬
モララーは打ちひしがれたその姿を見ながら
意外なことに、感傷ともとれる不可解な表情を浮かべたように見えた。
( ・∀・)「―――まぁいいや」
が、次の瞬間には再びあの笑顔を貼りつけその表情を掻き消した。
尚も俯き、小さな声で呟くギコから興味を失った様子で視線を逸らす。
( ・∀・)「君は優しいから、元々こういうことには向いていなかったんだろう」
(; Д)「……」
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29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:21:51 ID:.NwHTlaQ0
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( ・∀・)「本当は、残りの生徒も潰してもらおうと思っていたんだけどね」
その言葉とは裏腹に、落胆や失望の色を滲ませず
何気ない声でそう言ってモララーは目を細めた。
(;゚Д゚)「……!俺はもうあんたに協力しねーぞ!」
僅かに震えながらも、自らに拒絶を示すギコ。
そんな彼に向け、モララーはにっこりと不敵な笑みを浮かべた。
( ・∀・)「ああ、良いんだよギコ君」
( ・∀・)「君が嫌だと言うのなら、それはそれで良いんだ」
(;゚Д゚)「……?」
( ・∀・)「だって」
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30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:22:43 ID:.NwHTlaQ0
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(`・ω・´)「話ってなんだ?兄者」
( ´_ゝ`)「うん。ちょっと聞いてほしいことがあって」
つーの入院している病院へ見舞いに行った翌日。
兄者は3年生の教室へと赴きシャキンを廊下に呼び出していた。
( ´_ゝ`)「ちょっとしたことなんだけど。いいか?」
(`・ω・´)「ああ」
シャキンはここ数日、つーが倒れ原因不明の昏睡状態に陥ってからというもの
教室でも口数少なく、落ち込んでいる様子の兄者のことを心配していた。
その兄者が心に何か決めた様子で、こうして自分に相談を持ちかけてきたことに
少なからずその内容を察し、眉宇を引き締め頷く。
( ´_ゝ`)「つーが倒れた時のことで気になることがあるんだ」
(`・ω・´)「……」
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31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:23:47 ID:.NwHTlaQ0
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( ´_ゝ`)「あの日、しぃちゃんは俺らから離れた後
何故かモララー先生の教室で倒れてた。
そのことについてなんだけど……」
兄者がシャキンに聞きたかったこと。
それは一度は関係無いと突っぱねた、小さな疑問だった。
しぃがモララーの教室で倒れていたことは、果たして本当に偶然なのだろうか。
偶然だと言ってしまえば単にそれだけのことで
実際はその確立の方がずっと高いようにも思える。
だが、一度心に引っ掛かかったそれは
日が経つにつれ自らの心に何度も訴えかけてきて
兄者の中で既に無視できないまでに膨らんでいた。
それだけでは無論、モララーが、しぃが倒れた原因に繋がっているとまでは言えない。
だが、そうでは無くても何か知っていることがあるのではないか
もしあの日のことで知っていることがあるとすれば、何故黙っているのか
それを本人に確かめる前に、まずは信頼できる誰かの意見を聞きたかった。
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32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:25:31 ID:.NwHTlaQ0
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モララーのことは良い人だと思っている。
まだ知り合って日は浅いが、教師の卵として優秀なだけで無く
優しく、親切心と思いやりあるその姿勢に、人として好感を持っていた。
なので兄者自身、些細なことに無闇に突っかかるような形で
今回の件とは全く関係が無いかもしれない彼の名前を出したくは無かったのだ。
だが、何か重大な、隠されたヒントのようなものを見過ごしている気がしてならない。
慎重な弟者がわざわざそれを口に出したことが、兄者にとって一番気に掛かっていた。
弟者はそれ以上そのことについて話してはこない。
きっと彼も自分と同じく自信など無くて、何かを掴まない限りこのまま口を噤むつもりなのだろう。
ならば兄である自分が行動し、確かめようと思ったのだ。
とはいえ今の時点で、自分が感じている何かを人に上手く説明できる自信は無いし
つーのことで気が動転して、疑心暗鬼に陥っていると思われるのは嫌だった。
それに、モララーのことを信頼し しぃのことで奔走しているブーンやロマネスクに
悪戯に懸念材料を増やすだけの不用意な話を持ち出すことは憚られる。
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33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:26:26 ID:.NwHTlaQ0
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そこで”あの日”その場にいた人間であり、同じクラスの仲間であり
こうして相談できる相手はシャキンだけだったのだ。
例え自分が間違っていたとしても、何が正しいのか分からない今の状況で
心強い味方になってくれると信じることが出来るのは彼だけだった。
シャキンなら真剣に話を聞いてくれる。
兄者は自分の気になること、思っていることを短くまとめて話した。
先日のレモナの言葉が背中を押してはくれたものの
何と戦えば良いのかも分からないまま迷わず行動できるほどの自信は無くて
今はただ、頼りになる誰かに意見を聞いてほしかった。
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35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:27:34 ID:.NwHTlaQ0
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( ´_ゝ`)「……ってことなんだけど」
言葉を切り、シャキンの反応を伺う。
( ´_ゝ`)「シャキ兄はどう思う?偶然だと思うか?」
(`・ω・´)「……」
シャキンはしばらく口を開かなかった。
探るように、兄者の顔をじっと見返す。
(`・ω・´)「……なに?
しぃ君は、モララー先生の教室で倒れていたのか?」
―――だが、その次の言葉は
何であれ彼なりの答えを返してくれると期待していた兄者には予想外のものだった。
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36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:29:50 ID:.NwHTlaQ0
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( ´_ゝ`)「え?」
(`・ω・´)「それは知らなかったな。本館で倒れたとは聞いていたが……」
(;´_ゝ`)「いや、ちょ……え?」
兄者は戸惑った。
シャキンは普段通り真面目な顔をしていて、とぼけているようには見えない。
(`・ω・´)「?」
(;´_ゝ`)「いや、シャキ兄も見ただろ?あの教室で、しぃちゃんが倒れてるとこ……。
ブーン先生の後から教室に入って来たじゃん」
(`・ω・´)「なんだって?」
今度はシャキンが訝るような表情を浮かべた。
(`・ω・´)「僕はしぃ君が倒れた現場は見ていないぞ。話で聞いただけだ」
(;´_ゝ`)「っな」
(;´_ゝ`)「何言ってんだよ!?ブーン先生と一緒にいただろ?あの日の放課後だよ」
(;`・ω・´)「放課後?先生と一緒に?……なんの話だ?」
(;´_ゝ`)「……!?」
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37 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:32:01 ID:.NwHTlaQ0
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シャキンは本当に何のことか分からないようだった。困惑した顔で兄者を見る。
冗談や演技をしている風には見えないし、第一今この場において
そんなふざけた真似をするような不謹慎な男で無いことは確かだった。
(;´_ゝ`)「覚えてないの?」
答えはなかった。
気が急いてつい大声を出してしまったが、兄者にもわけがわからなかった。
どうすればいいか分からず、黙ったままお互い顔を見合わせる。
知らないって、どういうことだ?
兄者は、まるで自分の方がおかしな話をしているような
麻痺したような不思議な感覚に襲われて、脳内で辿られていく記憶を呆然と眺めていた。
確かにあの日、自分達と共に彼はその場に居合わせた筈なのに。
つーが倒れ、皆が慌て、彼女が騒々しく救急車で運ばれていくのを、傍らで……
………。
あれ?
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38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:33:26 ID:.NwHTlaQ0
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(;´_ゝ`)
自分はあの時つーを見ていた。駆けつけてきた先生も、渡辺も皆。
つーが倒れたことで気が動転して、正直上手く頭が回らなかった。
だから。気のせいか、見間違いだと思ったのだ。
混乱した頭が、咄嗟に記憶から何かを取り違えた錯覚だと。.
有り得ないことだったから、今まで思い返すことすら無かった。
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39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:34:18 ID:.NwHTlaQ0
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(`・ω・´)「僕は知らないよ。兄者」
(;´_ゝ`)「……」
―――だが。
意識を失い倒れた彼女を囲み
皆が狼狽え騒然となっていたあの場で。
その後ろに立っていたシャキンは
(`・ω・´)「だって、あそこにいたのは」
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40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:35:23 ID:.NwHTlaQ0
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(´^ω^`)「―――――”ボク”なんだから」
(;´_ゝ`)「………は?」
ほんの一瞬、笑みを浮かべていた、ように見えたのだ。
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41 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:36:21 ID:.NwHTlaQ0
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( ・∀・)「僕に協力してくれるお友達は、まだいるんだよね」
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42 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:37:23 ID:.NwHTlaQ0
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43 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:38:51 ID:.NwHTlaQ0
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( ^ω^)「協力してくれてありがとうシャキン。
気をつけて帰るんだお。また明日ね」
(`・ω・´)「はい、また明日!」
面談の為向かい合わせに置かれた席を立ち、ブーンに別れの挨拶をする。
教室の扉を開け、そこに待っていたフィレンクトにも一礼を済ませ
既に下校時刻を過ぎて人のいない廊下を彼は歩き出した。
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44 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:39:46 ID:.NwHTlaQ0
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「……あ、お待たせしましたおフィレンクト先生。
ご用件はなんでしたかお?」
「はい、ブーン先生に是非相談したいという方から先ほど電話がありまして。
間もなく学校に……」
後ろで、2人の声が遠ざかっていく。誰もいない廊下はひっそりと彼を見張っていた。
階段が見えてきた辺りで、それまで力強く歩んでいた手と足の動きが失速し
やがて彼は立ち止まった。首も動かさず、目の前の薄い空気に向かって口を開く。
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45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:41:07 ID:.NwHTlaQ0
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(´・ω・`)「……ボクは」
(´・ω・`)「知ってるんですよ。先生」
誰かに聞かせる用では無い、ぼそぼそとした小さな声だったが
その言葉には、自分だけが特別の秘密を知っている時のような
疑いようの無い自信がはっきりと含まれていた。
(´・ω・`)「先生ならボクたちを」
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46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/10/18(日) 22:42:07 ID:.NwHTlaQ0
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”無かったこと“にできるんでしょ?
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