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749 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/06/29(月) 20:01:31 ID:S3VH05es0
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从'ー';从三「しぃちゃ〜ん!」
三从;'ー'从「どこ〜!?」
パタパタと、普段の彼女のおっとり具合からすれば充分早い方だと言える速度で
暮れつつある夕日に照らされた廊下を走る、渡辺の姿があった。
これまでに、本館の1階から3階まで、閉まっている教室も含め一つずつ覗き
図書室のある別校舎まで探したが、しぃは見つからない。携帯も繋がらない。
せめて行先だけでも聞いておけば良かったと、1時間以上前の自分に後悔しながら
渡辺は息を切らし、人の少ない学校内を走り回っていた。
しぃと交わした約束の時間はとっくに過ぎている。
念の為に靴箱も確認してみたが、彼女の外靴は置かれたままだった。
なのにしぃは何処にもいない。連絡も無い。絶対に、何かがおかしい。
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750 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:02:26 ID:S3VH05es0
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从;'ー'从「うう、ここにもいないや……」
最後の望みをかけてやってきた南館で、渡辺はがっくりと肩を落とした。
室内プールを始めとし、体育設備が中心に整っているこの建物は
今の時間帯、体育会系クラブの生徒達が大勢集まって練習場となっている。
一階食堂は既に閉まっているし、一般の生徒が探せそうな場所は限られていた。
从;'ー'从「どうしよう、一度教室に戻った方がいいかな……」
時を刻む時計の針がじわじわと胸に暗雲を生む。
もしかしたら、もう教室に戻っているかもしれない。
閉ざされた扉の前で途方に暮れて、彼女は再び本館の方へ戻ることに決めた。
(・∀・ )「ん?」
从;'ー'从「あっ、モ……モララー先生」
別校舎と南館を繋ぐ、グラウンドに面した長い渡り廊下を走っている時
向い側からこちらへ歩いてくる人物に気がついて、渡辺は立ち止まった。
息切れでよろめきそうになりつつも、膝に手をつきなんとか息を整える。
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751 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:03:26 ID:S3VH05es0
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(・∀・ )「おや、渡辺さん。まだ残っていたのかい?
それに、どうしたの?そんなに慌てて」
从;'ー'从「あ、あのっ、モララー先生。
しぃちゃん……。しぃちゃん見ませんでした?」
(・∀・ )「しぃちゃん……羽生さんを探しているのかい?」
モララーは微かに首を傾げた。
(・∀・ )「……どうして羽生さんを探しているの?そんなに慌てて」
从;'ー'从「あ、えっと……。
あの、しぃちゃん、約束した時間になっても帰ってこないから……。
携帯も繋がらないし、心配になっちゃって」
(・∀・ )「ああ、そうなんだ。それは心配だねぇ」
从;'ー'从「はい……」
(・∀・ )「……あ!そうだ、そういえば。さっき見かけたよ、羽生さん」
数秒の間、黙って渡辺を見つめていたモララーだったが
不意に声をあげて、にこりと渡辺に笑いかけた。
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752 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:04:09 ID:S3VH05es0
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从;'ー'从「えっ、本当ですか!ど、どこで?」
(・∀・ )「本館の方で見たよ。職員室へ向かっているようだったけど」
从;'ー'从「本館?ふえぇ、行き違いになっちゃったのかな……」
(・∀・ )「みたいだね。今ならまだ間に合うよ、早く行ってあげて」
从;'ー'从「ありがとうございます、モララー先生!
じゃ……、さよならっ」
(・∀・ )「うん、さようなら。気をつけてね。
あんまり暗くならないうちに帰るんだよ」
从'ー';从三「「はーい!」
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753 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:06:13 ID:S3VH05es0
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(・∀・ )「……渡辺さん、渡辺さん」
从'ー';从「へ?」
(・∀・ )σ「そっちは南館の方だよ。君が来た方でしょ。
本館はあっちね」
Σ从'ー';从「あっ、いけない!」
三从;'ー'从「しぃちゃ〜ん!」
( ・∀・)「……」
(;・∀・)「大丈夫かなぁ……」
おぼつかない足取りでフラフラと本館へ突撃していく
渡辺の背を見送りながら、モララーは不安げに呟いた。
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754 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:07:28 ID:S3VH05es0
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渡り廊下を抜けて本館に行くには、横道から別校舎を経由すると近道だ。
息を切らしながら校舎の廊下を突っ切って、石階段を駆け下りる。
从;'ー'从「はぁ、はぁ……」
―――だが、彼女は慌てすぎていた。
从;'ー'从「きゃっ……!」
不意によろめき、その拍子に大きくバランスを崩してしまう。
段差の方へ重心を移した足がもつれた。
踏み外す階段。
一瞬の浮遊感。
.
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755 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:09:37 ID:S3VH05es0
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(;´_ゝ`)「あれ」
職員室の扉を開けて、兄者は困惑した。
室内を見渡しても、馴染みの席にも、ブーンの姿が見当たらない。
いつも、割と遅い時間まで職員室の自分の机で作業していることを知っていたし
特に今日は5,6時間目がマインドBクラスでの授業の時間割だったので
きっとまだ残っている筈だと、予想をたてていたのだが。
壁にかけてある時計を見ると、もう5時半を回ったところだった。
流石に、既に仕事を済ませて帰ってしまったのかもしれない。
どうしよう。
隣でつーが不安そうな顔をする。兄者も困って、お互い顔を見合わせた。
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756 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:11:03 ID:S3VH05es0
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ブーンがいないとなると、どうやってつーに人格交代させたらいいのか分からない。
一応立ち直ったとはいえ、まだまだ精神的に不安定で
疲れきっている状態の今のつーでは、交代もいつも通りとはいかないだろう。
フとしたきっかけでまた困ったことになってしまう可能性だって充分にある。
なんとかしぃを目覚めさせ家に帰すことができればいいのだが
うっかり間違ったことをして、これ以上つーを動揺させたくなかった。
このまま彼女を家に帰すことはできない。
ブーンの助けが必要だった。
('_L')「ああ、ブーン先生なら確か第二保健室ですよ」
戸口にて立ち竦む2人に気がついて、フィレンクトが声をかけてくれた。
('_L')「相談室を借りたいと言って、鍵を持って行かれた筈ですよ。ほら」
そう言って、扉横の鍵棚を指さす。
確かに、「第二保健室」と文字の書かれた鍵が無くなっている。
教えてくれたフィレンクトに礼を言って、兄者は職員室の戸を閉めた。
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758 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:12:21 ID:S3VH05es0
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(*゚∀゚)「第二保健室ってどこ?」
( ´_ゝ`)「保健室の隣だよ確か。綺麗な校舎の方だな」
(*゚∀゚)「そこに先生いんの?」
( ´_ゝ`)「みたいだな。先生カウンセラーだから、誰かの相談に乗ってるのかもな」
(*゚∀゚)「?相談?」
( ´_ゝ`)「第二保健室ってそういうとこなんだよ。怪我した時に行くのとは違うの」
(*゚∀゚)「ふーん」
( ´_ゝ`)「お悩み相談の邪魔して悪いけど、こっちも緊急だしな。行こっか」
(*゚∀゚)「うん!」
( ´_ゝ`)「よし、じゃ……」
「しぃちゃん!」
(*゚∀゚)「!?」
背後から突如あがった声に驚いて、つーはびくりと肩を跳ねさせた。
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759 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:13:49 ID:S3VH05es0
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从*'ー'从「見つけた!」
(;゚∀゚)
(;´_ゝ`)「ナベちゃん?」
从*'ー'从「良かったぁ。ここにいたんだ!」
ずっと探していたしぃの姿を見つけ、安心を顔に浮かべる渡辺。
(;゚∀゚)「……?」
(;´_ゝ`)
突如現れた予想外の人物を前に、兄者は焦った。
よく特別クラスまで迎えに来てくれる渡辺に、しぃはある約束を交わしている。
待っている間教室の中は決して覗かないでほしい。
自分が出てくるまで離れて待っていてほしいと。
自分が”つー”でいる時の姿を、大事な親友に見られてしまうことを恐れ
しぃが常日頃、何よりそのことを気にかけているのを兄者は知っていた。
今、この状況で渡辺と会うのはまずい。
戸惑う2人の胸中を知らず、渡辺は嬉しそうに近づいた。
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760 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:15:19 ID:S3VH05es0
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(;゚∀゚)、
つーは、自分に親しげに声をかけてくる女の子が誰か分からなくて一歩後退った。
从'ー'从「あっ、弟者先輩も一緒だったんですね!」
(;´_ゝ`)「あ、俺兄者の方ね」
Σ从;'ー'从「え?あ!ごめんなさい!」
(;´_ゝ`)「いやいいよ。それよりナベちゃん、今ちょっと……」
从;'ー'从「そうだしぃちゃん!大丈夫?」
(;゚∀゚)「へ?」
急に切羽詰まった表情になり、渡辺がつーに詰め寄った。
从;'ー'从「どこも怪我とかしてない?何かあったとか、ない?」
(;゚∀゚)「??」
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761 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:16:38 ID:S3VH05es0
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从;'ー'从「何も無かった?大丈夫??」
( ´_ゝ`)「……?」
しきりに、つーの―――しぃのことを心配する渡辺に、兄者は疑問を感じた。
まるで、もう少しで危ないことになりかねなかった先程の事件を
その場にいなかったにも関わらず、見越していたかのような口ぶりだ。
もしくは、何か大変なことがしぃの身に起きようとしていたことを、知っていたかのような。
(;゚∀゚)「な、なんもないよ」
大丈夫かと繰り返す渡辺にたじろいで、ぼそぼそと答えるつー。
从'ー'从「ほんと?……良かったぁ」
(;゚∀゚)「……」
その答えを聞いて、渡辺はほっと胸を撫でおろした。
从^ー^从「心配したんだよぉ。でも、何も無かったなら良かった」
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762 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:18:16 ID:S3VH05es0
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心配した?一体何を?
渡辺はしぃの親友だ。姿が見えなければ、探すのは当然だろう。
だが先程の様子は、とてもただ探していたという風ではなかった。
一体渡辺は何を案じて、しぃのことをそこまで必死に探していたのだろう……
从^ー^从「じゃあ、ほら!もう遅いし」
从^ー^从「帰ろ、しぃちゃん」
1人惟る兄者を置いて渡辺はつーに手を差し伸べる。
そうしてそっと、その手を掴んだ。
(;゚−゚)「!」
―――それは決して力をこめてはいなかったし、不意をつくような動きでもなかった。
だがその瞬間
つーの頭に、いつかの何処かでの光景が、フラッシュバックした気がした。
無意識に 反射的にその手を払いのける。
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763 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:19:43 ID:S3VH05es0
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从'−'从
(;゚−゚)「ぁ……」
驚く渡辺の顔を見て、つーの胸に後悔が生まれた。
そんなつもりは無かった、のに。
从;'ー'从「……あっ、ごめんねしぃちゃん。びっくりさせちゃった?」
(;´_ゝ`)「お、おい!つー」
(;´_ゝ`)「あ」
しまった、と兄者は顔に出したが既に遅かった。
从'ー'从「”つー”?」
渡辺が兄者の顔を見る。
きょとんとした顔で、その名を繰り返した。
そうして次に、目の前に居る―――親友によく似た誰かの顔を見つめた。
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764 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:21:20 ID:S3VH05es0
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(;゚−゚)「……」
从'ー'从「”つー”って、しぃちゃんの……」
最初の驚きが、ゆっくりと理解に変わっていく。
从'ー'从「……」
从'ー'从「もしかして……」
从'ー'从「あなたが、そうなの?」
(*゚−゚)「……」
(*゚−゚)「……あたし、しぃじゃないよ」
从'ー'从「……つーちゃん、なの?」
犯した罪を認めるかのように、ばつが悪そうな顔で つーは小さく頷いた。
怒られるとでも思っているのだろうか、緊張した面持ちで渡辺の反応を伺う。
傍で事の成り行きを見守る兄者も、どうしていいか分からずただ口を噤むしか無かった。
沈黙が流れる。
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765 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:23:15 ID:S3VH05es0
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(*。。)「……」
(;´_ゝ`)「……」
从'ー'从「……」
从*'ー'从「……そうなんだ!初めましてだね」
(;゚−゚)「へっ?」
渡辺はぱっと顔を輝かせた。
きょとんとするのは、今度はつーの番だった。
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766 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:24:41 ID:S3VH05es0
-
从*'ー'从「しぃちゃんはあなたのこと、あんまり教えてくれないし……。
ずっと、会ってみたいと思ってたんだよぉ。
会って、お話したいなって」
(;゚−゚)「??」
从*^ー^从「やっと会えたね!つーちゃん。
私、しぃちゃんの友達の、渡辺っていうの。ナベって呼んでね」
(;゚−゚)
(;゚−゚)「……し……しぃじゃなくて、がっかりしないの?
……あたしのこと、怖くないの?」
恐る恐る、つーが尋ねる。
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767 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:26:02 ID:S3VH05es0
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从*^ー^从「がっかりなんかしないよぉ。こうして、会えて嬉しいもの。
だって、友達の友達は友達だもん。ですよね?兄者先輩」
(;´_ゝ`)「え?あ、はい!そう、そうだね!?」
どうやって上手くこの場を切り抜けようかと思考を巡らしていた兄者は
渡辺に邪気の無い笑顔を向けられ、思わず声を裏返した。
从*^ー^从「よろしくね〜、つーちゃん!」
(;゚∀゚)「あ、あひゃっ……」
(;゚∀゚)「あひゃひゃ……
へ、変な奴だなー。お前」
从*^ー^从「あはは、なにそれ。つーちゃんこそ、変わった笑い方〜」
(;´_ゝ`)(天然パワーすげぇ……)
思わぬ展開に面食らったが、兄者は安堵の息を吐き、つーは気が抜けたようだった。
どうやら、天衣無縫な性格の渡辺の前では
どんな思慮や誤魔化しも策するだけ意味の無いことらしい。
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768 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:27:04 ID:S3VH05es0
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从*'ー'从「じゃあ、つーちゃん、兄者先輩。みんなで一緒に帰りましょ!」
(;´_ゝ`)「あ……ごめんナベちゃん。俺らちょっと、ブーン先生に用があって。
帰る前に先生んとこ行かなきゃいけないんだ」
从'ー'从「そうなんですか?じゃ、待ってますね!
ちょっとくらい遅くなっても平気ですよ私、門限ゆるいから」
(;´_ゝ`)「いやっ、でもあの、時間かかるかもしれないから。
ナベちゃんは、先に帰っててほしいなー。つーは、後でちゃんと送ってくからさ」
从'ー'从「えー、一緒に帰りたかったのに……」
(;´_ゝ`)「ごめんね。つーとはまた今度、仲良くしてやってよ」
从'ー'从「はい!
……じゃあまた今度、一緒に帰ろうね、つーちゃん。約束ね」
(*゚∀゚)「う……うん!」
少しまごつきながらも元気よく返事するつーは、どことなく嬉しそうだった。
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769 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:28:12 ID:S3VH05es0
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( ´_ゝ`)「あ、そうだナベちゃん。
つーの……、しぃちゃんの鞄、どこにあるか知らない?」
从'ー'从「鞄?う〜ん、教室には無かったと思いますけど……」
( ´_ゝ`)、「そっかー」
从'ー'从「しぃちゃん、教室を出る時は確か持ってましたよ。無いんですか?」
(*。。)、「……あ、あたし……どこかに落としちゃったかもしれない。
……よく覚えてないんだ」
从'ー'从「そうなんだ。
大丈夫だよつーちゃん、落し物なら事務局に届いてるかもしれないし!
あたし、見てきますね兄者先輩。待っててください!」
( ´_ゝ`)「あ、じゃあ俺が行くよ。2人はここで―――」
( ´_ゝ`)「?……ナベちゃん、血が」
(*。。)「?」
(;´_ゝ`)「……ってナベちゃん!?怪我してるじゃん!」
渡辺が体の向きを変えた拍子に、スカートで隠れていた右足の膝が見えた。
擦りむき、皮の捲れた膝頭から血が出ているのを見て、兄者が驚きの声をあげる。
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770 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:29:57 ID:S3VH05es0
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<从;'ー'从「あっ、さっきちょっと転んじゃって〜……。えへへ、私っていっつもドジで」
(;゚∀゚)「大丈夫か!?ナベ!」
从'ー'从「へーきへーき、大したことないよ。今まで、痛いのも忘れてたくらいだもん」
兄者は慌てて、残っていたポケットティッシュを手渡した。
渡辺が軽く血を拭く。傷はほとんど乾いていたが、損傷箇所からはまだ血が滲み出ていた。
(;´_ゝ`)「保健室行かないと」
从;'ー'从「そんなぁ、大丈夫ですって。
それに、今の時間じゃ保健室もう閉まってると思うし」
(;´_ゝ`)「あ、そっか」
从^ー^从「それにほら、バンドエイド持ってるんですよ。女子力!
私しょっちゅうどこか怪我するから、すぐ無くなっちゃうんですけどね」
(;。。)「……ごめん、ナベ。あたしのせいだよな」
从'ー'从「ふぇ?なんで??」
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771 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:31:42 ID:S3VH05es0
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(;。。)「しぃのこと探して、走り回ってたんだろ?だから、こけたんだろ?
あたし……、あたしが勝手に、どこか行こうなんて思ったから……。
それで……」
从'ー'从「……つーちゃん」
つーは項垂れた。
ほら見ろ。いつだって、自分は人を傷つけてばかりいるじゃないか。
そんなつもりが無くたって、気づけばいつも周りの誰かを傷つけてしまう。
しぃが自分のことを恐れ、毛嫌いするのも当然だった。
こんな奴、いない方が良いに決まってる。
どうして自分はいつもこうなんだろう。
つー自身、どうしようもないこんな自分が大嫌いだし、悲しかった。
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772 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:33:03 ID:S3VH05es0
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从'ー'从「……」
そんなつーの顔をひょいと覗きこんで、渡辺は笑った。
从^ー^从「なに言ってるの、つーちゃん何も悪くないでしょ?
私が一人で勝手に慌てて、ぼうっとして転んじゃっただけだよ」
从^ー^从「つーちゃんは悪くないよ。だからそんな顔しないで」
(;。。)「……でも」
从'ー'从「ほらほら、元気出して。ねっ。
そうだ、可愛いお花柄のバンドエイドあげる。怪我した時使ってね」
そう言って、ポーチから取り出したポップな小花模様の絆創膏を優しくつーの手に握らせる。
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773 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:34:11 ID:S3VH05es0
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(*゚−゚)「……いいの?」
从*'ー'从「いいよ。お友達になった記念」
しばらく渡辺の顔をじっと見つめた後、つーは頷いて
貰ったそれを大事そうにスカートのポケットに仕舞った。
(*゚∀゚)「……ありがと」
渡辺もにっこりと微笑んで、擦りむいた膝小僧にぺたり、バンソウコウを貼りつける。
(*゚ー゚)「……」
(;´_ゝ`)「消毒とかしなくて大丈夫かなぁ」
从^ー^从「心配しすぎですよ〜兄者先輩。
こんなもん、唾つけときゃ治る!って昔、おばあちゃんも言ってたし」
(;´_ゝ`)「やだ、おばあちゃん男前……」
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774 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:35:25 ID:S3VH05es0
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从'ー'从「あっ、そうだ。そんなことより、しぃちゃんの鞄」
( ´_ゝ`)「うん、俺見てくるよ。ナベちゃんはここで、つーと一緒にいてくれる?」
从'ー'从「でも、ブーン先生に用事あるんでしょ?
先にそっち行った方が良くないですか?」
( ´_ゝ`)「あ、確かに」
从'ー'从「でしょ?やっぱり私が……」
(*゚ー゚)「ナベちゃん」
从'ー'从「へ?」
兄者と渡辺がつーの方を振り返る。
彼女はどこかぼうっとした表情で、渡辺の方を見つめていた。
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776 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:36:19 ID:S3VH05es0
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(*゚ー゚)「……?」
(*゚ー゚)「……あれ……、なんで」
从'ー'从「?」
( ´_ゝ`)「?どうした?」
声をかけても反応が無い。
まるで、たった今目が覚めたばかりとでもいう風に瞬きを繰り返し
呆然とした様子で、どこか視線を彷徨わせている。
不思議に思い、2人は顔を見合わせた。
( ´_ゝ`)「……」
从'ー'从「どうかしたの?つーちゃん」
(;゚ー゚)「え」
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777 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:37:25 ID:S3VH05es0
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―――渡辺が何気なく名前を呼んだ瞬間、その表情が凍りついた。
从'ー'从「?」
(;゚−゚)「……!?」
(;゚−゚)「あ……」
(;´_ゝ`)(まさか)
明らかに、先程までのつーと様子が違う。
困惑し言葉を失う彼女を前に、渡辺は首を傾げ、兄者はドキリとした。
嫌な予感がする。
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778 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:38:34 ID:S3VH05es0
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(;゚−゚)「うそ……嘘、なんで……」
(;゚−゚)「なんで?……そんな……嫌……!」
ほとんど聞き取れない独り言をブツブツと繰り返しながら
彼女は怯えたように、兄者と渡辺を交互に見た。
从'ー'从「……」
从'ー'从「……しぃちゃん?」
渡辺が不意に、彼女―――”しぃ”の名を呼ぶ。
从'ー'从「しぃちゃんなの?」
(;゚−゚)
ぎこちない動きでそちらへ顔を向けた、しぃの視線が
瞬間、渡辺の持っている、血のついたティッシュを捉えた。
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779 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:41:07 ID:S3VH05es0
-
从'ー'从「大丈夫?……しぃちゃん」
(;゚−゚)「……血……!?」
(;゚−゚)「ナベちゃん、怪我……!?」
从'ー'从「え?ああ、これ」
从^ー^从「大丈夫、大したことないよ。少し血が出ただけ」
―――しぃの顔が一気に青褪めた。
目を見開き、ガタガタと震えだす。
渡辺の言葉も耳に入らないのか、恐怖に顔を引き攣らせた。
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780 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:42:59 ID:S3VH05es0
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(|li゚−゚)「……うそ……」
信じられない思いで、小刻みに震える自らの手を見る。
瞬く間に、恐ろしい考えが彼女の頭を支配した。
(|li゚−゚)「そんな……!!」
从'ー'从「しぃちゃん……?」
(;´_ゝ`)「しぃちゃん、違う!違うよ!!」
咄嗟に兄者が弁明しようとする。だがその声は届かない。
しぃはただ力無く首を振り、拒絶するかのように2人から距離をとった。
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781 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:44:05 ID:S3VH05es0
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:(|li゚−゚):「い、いや……」
从;'ー'从「しぃちゃん?どうし―――」
(|li −)「いやあああああぁぁっ!!!!」
从;'ー'从「あ……、待って!」
(;´_ゝ`)「しぃちゃん!!」
呼び止める声を振りきり、2人に背を向けて
認めたくない現実と心を襲う恐怖から、しぃは逃げ出した。
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782 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:46:19 ID:S3VH05es0
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(|li;−;)「うそ、嘘だ……嘘だよ……、そんなの嫌……!!」
泣きながら、薄暗い廊下をふらふらと歩く。
どうして?何故急に、こんなことに??
1年A組の教室に辿り着いた。渡辺の姿を見つけて安心した。
そこから先の記憶が一切無い。何がなんだか訳が分からない。
茜色した陽は暮れて、校舎内は既に薄暗く
明らかに、あれから時間が経っているのが分かる。
移動した記憶も無いのに、全然違う場所に突然居た。
何故か渡辺も一緒に。そして。
そして彼女は、自分のことを”つー”と呼んだ。
ここまで条件が揃えば、何が起こったのか嫌でも理解してしまう。
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783 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:47:35 ID:S3VH05es0
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(|li;−;)(……ナベちゃんに見られた……!!)
ついに。とうとう。見られてしまったのだ。大好きな渡辺に。
これまで隠してきたことが、なにもかも無駄になってしまった。
一番見られたくなかった姿を知られてしまった。
信じたくない。しぃは顔を覆った。
それに、血。渡辺は怪我をしていた。
優しい彼女は平気だと言って笑っていたけれど、あれは……あれは、まさか。
(|li∩−∩)(嫌!)
認めたくない。理解するのが怖い。
だが、そうとしか考えられなかった。
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784 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:48:27 ID:S3VH05es0
-
また―――やってしまったんだ。
中学生の時の記憶が、感情が、まざまざと蘇る。
耳を塞いでも、目を閉じても、何処に居ても逃げられない。
ざわざわ。ざわざわ。ざわざわ。
教室での事件を書き立てたスクープ誌。家に、学校にと無遠慮に押しかけるマスコミ。
“生徒4名・教師1名負傷” “凶暴な二面性” ”隠された裏の顔” “心の闇”
好き勝手噂を流し、興味本位で自分をなじる世間の人々の声が聞こえる。
まただ。あの時と同じ。2年前の悪夢と同じ。
知らぬ間に自分の世界はぐちゃぐちゃにされて、踏み躙られて、もう二度と戻ってこない。
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785 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:49:10 ID:S3VH05es0
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こうなる日が来ることを恐れていた。
ゆらゆらと不安定だけれどそれでも幸せで、満たされた平穏な日々を
大切なものを。また滅茶苦茶に壊されて、自分1人置き去りにされる日が来るんじゃないか。
それをずっと恐れていた。いつだって心の奥底で、ずっと、ずっと恐れ続けていた。
壊された。また、奪われたのだ。
親友の渡辺を。誰より愛情深く、暖かく笑いかけてくれる優しいあの子を。
“つー”が傷つけた。
許さない。
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786 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:49:59 ID:S3VH05es0
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(|li;−;)(許さない、許さない!!)
大切な、大切な親友だったのに。それなのに。
“つー”のことを知った彼女は、きっともう友達でいてくれない。
だって怪我までさせられたのだ。気味悪がって、距離を置いて当然だ。
しぃの世界が音を立てて崩れていく。
底の無い井戸に1人落ちていくような
どこまでも孤独で真っ暗な絶望が襲った。
頭の中で声がする。五月蠅い。五月蠅い!
(|li;−;)(消えて!お願い!!)
お前なんか知らない。
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787 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:50:51 ID:S3VH05es0
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救いを求めて、苦しみから逃れたくて―――
その足は無意識に、ある教室へと向かっていた。
開かれた扉。
何かの力が働いて、しぃはふらふらとその中へ誘われていく。
「やぁ、羽生さん」
救いを求める彼女に、闇の中から声がした。
天使のような顔をした男が、机に寄りかかり微笑んでいる。
( ・∀・)「迷いは消えたかな?」
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788 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:51:49 ID:S3VH05es0
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(|li;−;)「”つー”を消して!お願い、今すぐ!!」
そう懇願した後すぐ、彼女は手で顔を覆った。
(∩−∩)「―――嫌だっ!嫌!やめろ!!」
(∩−∩)「お願い早く消して。早く!!」
( ;−;)「やだ!あたし消えたくない!!」
( ;−;)「早く!」
( ;−;)「兄者」
(∩−∩)「お願い!!」
( ・∀・)「いいだろう。”君の”願いを叶えてあげる」
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789 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:52:31 ID:S3VH05es0
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歪んだ三日月が、星ごと夜を飲みこんだ。
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790 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/06/29(月) 20:55:22 ID:S3VH05es0
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( ^ω^)「?今、誰か叫んでるような声が聞こえなかったかお?」
(`・ω・´)「……いえ?僕は何も」
( ^ω^)「そうかお?」
(`・ω・´)「……」
(;´_ゝ`)「つー!!」
从;'ー'从「しぃちゃん!!」
兄者と渡辺が、横たわる人影を見つけその教室に駆けこむ。
仄暗くがらんとした広い空間の中心。
誰もいない教室で、しぃが。つーが。眠るようにして倒れていた。