(‘_L’)は命令が欲しいようです

Part6

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167 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:07:43 ID:WubQ7zgo0













「ありがとう」も

「おはよう」も「ごめんなさい」

        も

       ぜんぶ


  懐かしい言葉になるひが来るの




『ありふれたせかいせいふく』より


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168 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:08:26 ID:WubQ7zgo0










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169 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:09:17 ID:WubQ7zgo0






(‘_L’)

バラを抱えて正面玄関から入った。


顔認識のカメラに映るが各国の列席の場ですぐに黒服が飛んでくることはない。


贈り物ですとガードマンに手渡す。



係りの一人が恐る恐るそれに触れて、本物の生花だと確認するとすぐに返却された。


ブラック・ローズは一代かぎりの変種。作り出すにノーブル・ブランドの制約と権利に縛られているので取り扱いには特に注意された。


鉱石や稀少金属よりも価値があると認識されている。


つまり、ひたすら高価な花。フィレンクトの所持していたカードの残高は、これ一つで底をついた。


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171 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:10:17 ID:WubQ7zgo0



招待状もなしにパーティに潜り込むには誰もが疑わないプレゼントが必要だった。


宛名を著名な誰かにして、自分は配達のボーイを装う。


身体にぴったりとしたタキシード。シックなカラーで涼しげな顔立ち。

怪しまれることなく別室に案内される。


このような配達は直接本人に渡すことを前提にしているため、センサーの門を通ることなく控え室に入ることができた。


花の特性、過剰な光は花弁を痛ませるのだという説明はすんなり通る。



( ^ω^)「こちらで簡単な身体検査を行います」



花束を持ったままうなずく。

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172 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:11:09 ID:WubQ7zgo0



左手に持ち替えて、花束の隙間に隠していた小型の銃を掴んだ。

( ^ω^)「うぐッ」

火力のない銃なので、発射音はもちろん貫通さえしない。

返り血を浴びないように気をつけながら、額を撃った。弾丸は骨を砕き、脳かき混ぜて頭の内部に残る。


最低限の出血と、思考を奪うための殺し方。



( ^ω^)「あ、」


頭を撃っても即死しない。男は何が起きたのか理解できないでいる。


抵抗と叫びを無くして、今度は心臓にもう一度撃った。


びくんと痙攣して、身体がひきつる。

完全に膠着するまえに、引きずってクローゼットに押し入れた。少量の血痕を拭いて、ダストボックスに捨てる。

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173 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:12:17 ID:WubQ7zgo0
完全に絶命するまで約五分。

控え室の映像をチェックされるまではおそらく10分。

それまでに二階の通路へ急ぐこと。


再び花束に銃を込めて、フィレンクトは廊下にでた。

目的の方向へゆっくり歩き出す。


毎秒、不審に思われない程度の早さ。

招待客以外通れない入り口、係りは数分のあいだ姿を消している。

咎められないことは了解されたことだと受け取られる。


違和感なく、金を塗られた門を通り抜けた。

パーティドレスに身を包んだ人々がフィレンクトのバラに目を向ける。

その花が誰に届けられるかを予想して、
甲高い声を出した。


ブラック・ローズに注意を惹かれて、配達人の印象は誰にも残らなかった。



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174 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:13:31 ID:WubQ7zgo0





レッドカーペットの敷かれた階段をあがると、大広間にたどり着く。

下の階よりもランクがうえのハイ・ノーブルの人々。

使用される家具や食器などはすべて年数のあるアンティーク。

グラスを運ぶ使用人や、演奏する音楽団のさえ富裕層の立場にあった。


人を探しているそぶりで歩き回り、内部の作りを隅まで記憶する。

部屋の形で、隣り合う部屋数まで予測できた。出席者は社交することを目的としている立場の招待客ばかり。


さらに上の階に行かないと、ビルの内部には入れない。フィレンクトはしばらく眺めてひとりの女客に目をつけた。


壁際のファーコートに座っていて誰とも交流していない。

しかし周囲の客たちが皆彼女を気にしていた。はぐれたわけでなく、孤高を楽しんでいる。

カーストの上位に居ると検討をつけた。


花束のカードを抜いて、彼女の目の前に立つ。

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175 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:14:14 ID:WubQ7zgo0



(‘_L’)「お届けものです」

「……」

(‘_L’)「……お受け取りください」

「……」


フィレンクトは横に直り、静かに控えた。

女はバラを見て、フィレンクトを見て、



(*゚ー゚)「……どなたからかしら?」

そう聞いた。




(‘_L’)「お心あたりのあるお方からです」


(*゚ー゚)「……ありすぎてわからないわ。

こんな気の惹きかたするような可愛らしい方、居たかしら?」


(‘_L’)「どうぞ、思い出してくださいませ」


(*゚ー゚)「……こまったわねぇ。いまここでお名前をだして、違っていてたらどうしましょう」


(‘_L’)「お受けとりになられるだけでかまいません」

(*゚ー゚)「お返事はいらないの?」

(‘_L’)「お渡しするだけと伺っております」

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176 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:16:44 ID:WubQ7zgo0


女はフィレンクトを品定めをした。

シンプルな、それでいて野暮さのないスーツは長く整った手足によく似合っている。

取り繕うような無表情が少し気にくわない。その余裕を、崩したくなった。


(*゚ー゚)「……あなたお店の方?それとも」


(‘_L’)「使いです」


(*゚ー゚)「……ふふ。そうなの。ねえ、わたし人に酔ったのよ。だからさっきからここで休んでるの。お使いならカドも立たないし。どうか静かなところへ連れていってくださらない?」


そう言って、女は花を差し出したフィレンクトの腕を掴んだ。


(‘_L’)「……エスコートには慣れていませんし、私はただの配達です。どうか他の方と」

(*゚ー゚)「わたしはあなたがいいの。あなたはわたしの隣ではいや?」


(‘_L’)「いいえ。ただ身分不相応ですので」


(*゚ー゚)「いやだ、使用人の手を借りることに何の問題があって?いったい何を想像したのかしら」


フィレンクトは顔をそむけた。

初々しい反応に女は少しだけ気がはれる。

それでもフィレンクトの硬質な表情をもっとつつきたくなった。


(*゚ー゚)「お前の主人に叱られるというのなら大丈夫よ、さあ、手を引いて」


しなだれかかるようにフィレンクトの腕を組んで引き寄せる。

それからバラに顔を寄せた。


(*゚ー゚)「贈り主がいったい誰なのか、
時間をかけて聞きたいわ」
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177 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:17:57 ID:WubQ7zgo0



彼女に連れられた先はカーテンの深い長い廊下だった。

進むごとに人の気配が消える。


緊張するような強ばりを隣の腕から感じて、あやすように女がほほえむ。


通る人々は皆知らないふりをする。

なかには同性の連れ合いもあった



(*゚ー゚)「さあ、ここよ」


女がドアを示す。

あけて、引き入れると外からは想像できない優美な内装の部屋だった。彼女はソファに腰を落とす。


(*゚ー゚)「シャトー・ゴルーニュが飲みたいの。ついでちょうだい」


ラベルを選んでグラスに注いだ。

赤い液体の芳醇な香り。

酸味と木イチゴのような甘みと濃厚な熟成。味わうこともなく水のように流し込んだ。


(‘_L’)「……」

(*゚ー゚)「さ、誰があなたを寄越したのか、いっぱい聞かせてちょうだいね」

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178 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:18:41 ID:WubQ7zgo0


フィレンクトの喉元に手をかける。

女は襟カラーを引き抜き、ネクタイをほどきにかかった。

フィレンクトはこの部屋の階を計算した。

窓のない小部屋。

入り組んだ部屋の通路は角の右、隣の部屋には人がいない。

悲鳴をあげても、それが許される場所。


赤い唇がフィレンクトの口元に重なる。





袖口に仕込んだ針を引き抜いて、女の頸椎に突き刺した。


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179 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:22:30 ID:WubQ7zgo0



  _
( ゚∀゚)「……パスを使うんじゃなかったのか?」



(‘_L’)「リスクを犯せなくなりました」



侵入するのにフィレンクトのコードを使うつもりだったのだが、管制塔で出会った男のことを考えてやめにした。


すぐに特定される。



(‘_L’)「映像に映ることなく、エレベータに乗れるのはここしかありません」

  _
( ゚∀゚)「……」


ジョルジュは俯いて女の死体を眺めている。きれいな、眠っているような死体だった。


やすらかな苦痛さえない表情は、同じような過去の死体を連想させる。


  _
( ゚∀゚)「女をやるときはいつもこうなのか?」


(‘_L’)「状況次第です」


抱き寄せて、少ない動作で殺すのは小柄な、そんな場面でも違和感のない女が多かった。


男に比べて柔らかい肉なので、針は簡単に刺さり、短時間で騒ぐことなく死に至る。
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180 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:24:14 ID:WubQ7zgo0
_
( ゚∀゚)「……あいつも同じように殺したのか?」


彼の妹のことだろう。
そう予想して、はいと答えた。

  _
( ゚∀゚)「……」



(‘_L’)「……」

  _
( ゚∀゚)「……どのみちビルを吹き飛ばすんだ。ここに居るやつらも、みんな死ぬ」


(‘_L’)「……」


ジョルジュが激昂すると思ったが、そうでなかった。

彼は息を吐いて、大理石のテーブルに座った。
それから並べられた酒類をみて、顔をゆがませる。

  _
( ゚∀゚)「これひとつで、俺らは数年食っていける……
それを一度で飲み干すんだな、そう思えば同情も湧かねえ」

  _
( ゚∀゚)「ニトロは設置したか?」


フィレンクトはうなずいた。旧式の古すぎる形式だが、手に入る有効な爆破物はこれしかなかった。


原始的ではあるが、その分破壊力がすさまじい。

広大なビルの一室、側面に取り付けた、これが暴動開始の合図になる。

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181 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:24:56 ID:WubQ7zgo0



 _
( ゚∀゚)「エレベーターを降りたら軌道させる。そっから、時間との勝負だな」


階を上がればごまかしは効かない。

迅速に全力で進まなくていけなかった。

  _
( ゚∀゚)「going to crush……」




ぜんぶ ぜんぶ、ぶっ壊してやる

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182 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:31:00 ID:WubQ7zgo0





花びらがだいぶ散って寂しい花束になってしまった。

最後の仕上げにフィレンクトはそれを放り投げる。


黒いリボンを選んだのは光に反射されないため。遠くのカメラが映像を拾わないようささやかな気づかい。


投げられた警備員は一瞬それに注意を引かれ、受け取ろうと手を伸ばし、愚かさに気づいてすぐに身を守る銃に手をやったが遅すぎた。


開いた腹の隙間に三発。


今度はハンドガン、射程距離が短いがその分威力が大きい。

腹と胸に穴を開けて、血をまき散らしならが警備員は絶命した。

彼女も女だった。

少し離れた場所にジョルジュがいて、壁と障害物を交互にして進む。


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183 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:31:52 ID:WubQ7zgo0




(‘_L’)「クリア」


オールクリア。


エレベータの回線を切り、動力を壊した。これで下から上がってくることはまずない。降りてすぐの通路に女性警備員。


この階の主の好みだろう。

彼女たちは部屋と直線の道にひとりの割合で待機していた。


だから手早く、殺しにかかった。


通信はすべて繋がっていた。約二分。


ペニサスから連絡が入る。位置情報を把握され、その階の空間をハッキング。

妨害電波の混戦、二分だけ暴れることが許された。

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184 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:32:46 ID:WubQ7zgo0


(‘_L’)「何も、話さないでください」


エレベーターを降りるさいに、フィレンクトはジョルジュにそう言った。


階数が上の先は、空気の振動で会話が盗聴される。


物音には反応しないが、発生した声を録音し、不穏を感じれば即座に通報がいくシステム。

たとえば単語ーー計画、死ぬ、殺した、
などの直接した表現は対象に入っている。


フィレンクトは禁止ワードを覚えているが、ジョルジュがそれを選び、より分けるのを覚える時間はない。


指さしで、進み方を決めた。
とはいっても単純に、先方をフィレンクト、後方をジョルジュにしただけだ。


二分の間に銃撃戦を済ませる。


片手にハンドガン、もう片手にライフルを持って、近場と少し遠い距離にいる者を狙撃した。

まず胸を撃つ、それから頭を。即座に通報されても、二分だけ回線は繋がっていない。

助けは来ない。何が起きているかも伝わらない。


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185 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:33:31 ID:WubQ7zgo0




ジョルジュは腐敗した都市の片隅で生まれて育った。

先進国らしく義務教育はあった。

けれどそれは最低限の知識、算数や理科といった生きていくうえで役に立つものだけで、社会や政治といったものにはほとんど触れたことがない。


酸性雨のふった痩せた土地を地主たちから買い取った代わりに、企業は楽園を与えた。

選ばれた市民たち、優勢遺伝子の彼らは支配階級。


それ以外の現地住民は決められた土地で暮らすことを余儀なくされた。

巨大な三角。

砂の遺跡を見て感じたものは、この国の仕組みそのものだ。上は限りなく狭く、それでいて富が集中している。


わずかな少数があふれんばかりを独占し、下へ行くほど貧しくなる。

ピラミッドの底辺は、もはや管理された家畜でしかなかった。

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186 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:34:14 ID:WubQ7zgo0


  _
( ゚∀゚)「……きれいなものは、血を吸ってここまで成長したんだな」

上階へ行くのに使う、中央エレベーターから見えるガラスの外は、宝石をちりばめた絶景だった。


色とりどり、闇のなかに光がまぶしい。

一日中エネルギーを消費できる豊かさ。


スラムは排水処理さえ整っていない。


  _
( ゚∀゚)「……民族浄化って知ってるか?」



フィレンクトは首を振る。



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( ゚∀゚)「勉強したんだ……必死で」


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187 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:35:18 ID:WubQ7zgo0



人権保護団体はこの国でも仕事をしている。

彼らは土地を整備し、食料を運んで、病疫のためにワクチンを配給した。


ただでさえ貧しい状況のなか、それは住民たちに喜ばれ、感謝しーーーそして怠惰になった。


  _
( ゚∀゚)「働かなくても最低限生きていけるなら、誰も必死にならないさ。

必要以上に与えすぎないように上手に操った。もはやこの国で、俺たちに参政権なんてない」


合法的に、きわめて優しく、外国からやってきた企業は侵略をはじめた。


最初にビルを建て、指導者を支援して裕福にさせた。

それからゆっくりと、国の政権を奪っていった。

ジョルジュが幸運だったのは、当時の軍が企業と政府の癒着に危機感を抱いて、

反対勢力を作るために兵士を募集したためだ。

そこでジョルジュは現実を知った。


規制されていた貴重な情報は、ジョルジュに怒りと反発を覚えさせた。


この国しか知らない。他国の情報は制限されていて、ジョルジュは自分たちが太らされるまえの豚だということに気がついた。
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188 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:37:35 ID:WubQ7zgo0

  _
( ゚∀゚)「大陸だって見つけられたから征服された。ここもいずれそうなる。

そうなる前に、なんとかしたかった。

知らないまま、今を当然だって過ごしていたくなかった。この国の人間でもないのに、でかい顔してるなんて許せない」


  _
( ゚∀゚)「そうーー思ってたんだがなぁ」


敵は強すぎた。

金と法律はすべてにおいて味方している。

レジスタンス、聞こえはいいが、ただの犯罪者組織でしかない。


なんでもやった。

資金調達のために強奪、誘拐。


一線は越えていないつもりだ。

荒れた世間でもまだ倫理は残っていた。


少年兵は作らなかったし、娼婦を薬づけにもしなかった。


国のためという大儀だけで、組織をまとめて戦ってきた。


そんな戒めも、妹の死と殺されていく仲間の死体で簡単にくずれた。



敵がルールを守らないのに、こちらが守る理由があるか。

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189 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:38:57 ID:WubQ7zgo0


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( ゚∀゚)「それが当たりまえの世界じゃ、疑えないか。俺だって何も知らなかった」



何も知らなかった。

優秀な人間に、人間性を取り除いて、道具のように作り替える技術があったことも。


これは人じゃない。モノだ。


そばの男を眺める。
微動だにしない。

エレベーターは長い。
200階までは30分以上かかる。



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( ゚∀゚)「ここから飛び降りたら怖いな。
撃たれるのも痛いし。
人間の本能には、眉間を怖がるようにできてるんだって知ってたか?」



(‘_L’)「いいえ」

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( ゚∀゚)「反射的に脳を守るんだと。
ふつう、目をつぶるのは当然だよな」



唐突に腕を振り上げてフィレンクトの顔を殴ろうとした。拳が数センチ残して止まる。


まつげの先が、指に触れた。

フィレンクトはまばたきひとつしなかった。

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190 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/28(火) 00:39:54 ID:WubQ7zgo0



  _
( ゚∀゚)「無関心が一番腹がたつんだ。

女だってそうだ、反応があるから可愛くみえるもんだ」



(‘_L’)

ジョルジュはいつになく饒舌だった。

フィレンクトはジョルジュの変化に不穏なものが無いか探そうとした。


精神状態ーー安定。

しかし良好とはいえない。

常と違う態度。緊張とはまた違う様子。

フィレンクトはそれにふさわしい診断をつけられないでいる。


  _
( ゚∀゚)「愛を知らないものは、絶望に興味がない」



誰かの言葉をつぶやく。

もしかしたら自然にこぼれたものかもしれない。


ランプが点灯し、エレベーターが目的の階にたどり着いた。


扉が、開かれる。


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