(‘_L’)は命令が欲しいようです

Part14

620 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:00:48 ID:Iajk2B0I0



ロマネスコ・アレクセーレフはこの国で傭兵団を率いている。
おおよそ治安の一定しない国特有の、力が法であり、秩序だった。
彼はロシアとメキシコのハーフであり、外見と同じように内部にも凍えた粛清を持っていた。傭兵団といえば聞こえはいいが、実際犯罪者の集団だ。

ただ金稼ぎと利権のためにとある会社と契約することもある。

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621 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:01:33 ID:Iajk2B0I0

生きていくためには金が必要だ。

そしてこの国ではユダヤのように、商人はまともに生きていけない。
傭兵と手を組み、互いに協定を結ぶことが前提になる。契約してさえいれば、襲われることはない。
それは観光客も含まれる。ツアー客でさえ、大手のパックに入っていないと、行方知らずは当然だった。
そのための自警団。
仕事を得るためには、仕事を作り出さないといけない。

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622 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:02:21 ID:Iajk2B0I0

そして彼らはもっとも実入りのいい仕事をつい最近見つけた。ビルが倒壊するほどの、大惨事。
被害はたいへんに大きかったが、この国の人間が受けた傷ではない。
みな冷静に、どれほどの儲けが出るかを考えた。株式は下がったはずだが、周辺地域の経済は活性化した。

混乱のさなか、めずらしく後手に回った企業の応対。傭兵団という兼業は、強盗に様変わりする。
たとえ登録されていない商品だろうと、分解して売却すれば金にはなる。
需要があり供給がある。

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623 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:03:02 ID:Iajk2B0I0

日常的に、そのような嗅覚が発達している者たち。束ねるためにも、ロマネスコは強面であり、タフガイであり、信頼されている。

彼らの傘下にいる限り、食いっぱぐれることはない。区域にもよるが、簡素な作りの銃も振る舞った。

銃を持てない者これに殺到した。
しかし、犯罪数が増えることはない。ある程度管理する社会のほうが、もめ事は少なかった。警察が機能していない以上、取り締まるのは彼らでもあるのだ。

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624 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:04:16 ID:Iajk2B0I0

この国は政治に混乱はないが、重要な役職をある一族に牛耳られている。

そのため国民が外貨を得るには、こういう事でなくば方法がない。正しくないと非難されるであろう行為だが、正しさだけでいえば企業が正義となる。

抑圧された国民たちは反乱を起こしてもよいはずだ。しかし国の多くが企業の技術に依存している現状。誰もが企業の顔色を伺うことに疑問を持たない。
撤退され不便になるのは、自分たちであるから。誰も難民にはなりたくはない。
国民は上手に飼い殺しにされていた。
飼われたくないのが、傭兵団だ。
立場上、自警団と呼んでもいい。
外資系に侵略されないがための。

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625 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:05:04 ID:Iajk2B0I0
そのためには法律が間違いであり、反抗することが正義だった。

そも、法とは強者のための、強者が制定したものである。


だからいつまでたっても、改正されない。

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626 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:14:44 ID:Iajk2B0I0







( ФωФ)「依頼かね」


 ( ´_ゝ`)「そーいうこと」


( ФωФ)「残党がまだ多い。我々がここを離れてしまうと、責めいる手数が増えるぞ。」


 ( ´_ゝ`)「べつにいいよ。突破されるわけじゃないし」


ロマネスコは傷のついた両眼で男を睨んだ。


( ФωФ)(……頭が悪そうなわけではないのに、このゆるさはなんだ)


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627 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:15:26 ID:Iajk2B0I0

ロマネスコは不機嫌な様子を隠さない。
彼にとってこの男は理解の範囲外にあった。


( ФωФ)「ならば早々に移動しよう。敵の予測の裏をかけば、襲撃もうまくいくだろう」


 ( ´_ゝ`)「ああ。でもべつに、強硬しなくてもいいからさ。威嚇行動になってればそれで」


( ФωФ)「叩かないのか?」


 ( ´_ゝ`)「だって一ヶ所に集めてからじゃないと漏らすし。面倒くさいじゃんちまちま削るの。」


( ФωФ)「そんな弱腰のうちでは侮られるぞ」


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628 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:17:13 ID:Iajk2B0I0

奇妙な胸騒ぎと、まるで見透かされているような態度。


どこか気味が悪い。この男の言葉には真あがない。どれも正しく、間違っているような気がする。

しかし言葉だけでみれば、ただの不精者。富にあぐらをかいただけの、企業の坊主。

しかし、先ほどから、契約途中の話し合いのさなか、この男がよい位置に来ることは一度もなかった。


ふらふらと、適当に部屋のなかに入り、ソファーに座り。だされた酒を飲む。

その間スナイパーは男の急所に狙いをつけることができない。

身体を揺らしたり、首を傾げたり、ソファーの背中に座ったりと、自由に動き回っている。

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629 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:18:15 ID:Iajk2B0I0

ロマネスコは部下に窓のひさしを閉じさせた。
これを偶然と考えるほどおめでたくはない。頭のゆるそうな男だが、隙というものがなかった。
しかし意識しているわりに、こちらからの出したものに口をつけるのも不気味だ。
本当に警戒しているのか、わからない。それが気味が悪い。


承知のうえで行っているのか。ただただ。運のよいだけの男か。

いいや、そんなものが、司令官であるはずがない。ロマネスコは己の認識を改めた。なにかある。

あるからこそ、これほど自分たちにとって都合のいい展開になるはずがない。

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630 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:18:56 ID:Iajk2B0I0


( ФωФ)「作戦概要があれば伝えてくれ。仲間を消耗させたくはない」


 ( ´_ゝ`)「これといったことはないなー。でもスーツ着た奴は無駄に追いかけなくていいぜ」


( ФωФ)「なぜだ。あれが一番、目障りではないか」


 ( ´_ゝ`)「行動が読みやすい。近場にいるなら、問題が起きてるのは遠くのほうだ。」



( ФωФ)「というと」


 ( ´_ゝ`)「そのまんまだよ」



( ФωФ)「……」


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631 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:19:41 ID:Iajk2B0I0

ロマネスコは黙る。

男もそれ以上口にしなかった。

パワーゲームを真似るつもりはなかったが、あれこれ口にすれば無知のようにも見られ、また相手に疑問を持たれる。
所有権を渡したまま素直に承諾したほうが疑いは少ない。
どれほど気がついているのか、さぐりを入れたかったが、それ以上は難しい。

駆け引きなのか、そうでないのか。
見分けるのが困難な時は乗ってはいけない。

632 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:20:23 ID:Iajk2B0I0


( ФωФ)「それだけか」


 ( ´_ゝ`)「うん」


( ФωФ)「では我々は仕事をしよう」


 ( ´_ゝ`)「……うん?」


( ФωФ)「我々が居なくなったぶん、負担が増えるだろうが、それで潰されるお前たちではないだろう。」


( ФωФ)「せいぜい足止めを踏ん張るのだな。勝手に死ぬのではないぞ。契約中なのだ。金がもらえん」


 ( ´_ゝ`)「あー、うん、まぁ」

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633 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:22:55 ID:Iajk2B0I0

協力体制。裏切りと罠。ロマネスコは腹芸が得意というわけでなく。

嘘を言わない代わりに真実も言わない。味方のふりをしているだけだ。

ただあまりに厳しい対応では、見限られるし信用されない。

実直で真面目な見方をされれば幸いだった。



( ФωФ)「少し警備のために残していくか?」


 ( ´_ゝ`)「いや、べつに……」


残念だ。警護と称して見張りをつけられたのに。
案じているふりをして、手を休めるようにと警告をする。
あわよくば、そのまま逃げ切れるかもしれない。

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634 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:23:54 ID:Iajk2B0I0



( ФωФ)「同じことを繰り返すが、撃退せよとは言わん。ただいまの現状で追撃するのは控えるんだな。

破れかぶれになった奴が特攻すれば、どんなに厳重でも死なない保証などない。ここの人間ほど、テロをやり慣れているものなどいないのだ」


 ( ´_ゝ`)「お、おう」


( ФωФ)「我々はいずれ革命軍となる。お前たちと連携しなくばならんのだ。その時まで生きていてとらわんと困るのでな」


あやふやな将来だが、目的は間違っていない。利権さえ得られれば、それで安泰。

ロマネスコが治める一体が、豊かであれさえすればよかった。

裏切りの裏切り。ドクオとの共闘が終われば、次はまた敵になるかもしれない。
そのときに背後を守る存在が必要だった。

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635 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:24:49 ID:Iajk2B0I0

ある程度まで信頼させる。

傭兵団の使い勝手のよさ。社会の裏の秩序を保っているのは、ロマネスコたちだという自信がある。


ロマネスコ・アレクセーレフはそういう男だ。
東西冷戦の時代のように。同盟と嘘と裏切りは、使い分けるためにある。












 ( ´_ゝ`)「……」


 ( ´_ゝ`)「え?フラグ?……」


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636 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:26:29 ID:Iajk2B0I0








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637 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:27:12 ID:Iajk2B0I0






('A`)「それでビビって逃げ帰ってきたわけかよ」


( ФωФ)「恐れてなどいない。ただ気味が悪かっただけだ」


('A`)「なにがだよ。飄々としたような奴なんだろ?扱い易そうじゃないか」



2台のトラックを、擦れ違うようにして挟む。二人は別の車両に乗って、窓から会話していた。

交通量の少ない、視界も限れる道路の脇に寄せる。通信手段は、この国では覗かれても文句は言えない。

厳重にカギをかけたとしても、製造元の管理は現在の敵だ。

うかつに受信されてはならない内容。確実な密談はいまだにアナログが有効だった。


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638 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:28:06 ID:Iajk2B0I0




( ФωФ)「あれは扱いやすいわけではないぞ。対面しなければ、あの気持ち悪さはわからん」


('A`)「どうだか。そっちはただの人間だろう?」


('A`)「こっちのほうが得体がしれねぇぜ」


( ФωФ)「しかし、扱いのほうは難しくなさそうだな」


('A`)「わからねぇよ。キレさせた時のこと考えるとな。爆発物なみの慎重さで対応してるが」


( ФωФ)「そうか。こちらの方は一応、手出しは控えるようにと苦言を刺しておいた」


('A`)「素直に聞いたか?」


( ФωФ)「恐らくは。ただ気づかれているのか、いないのかの判断がつかない。どれほど特攻しても、まるで被害がないというような顔をしている」


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639 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:28:48 ID:Iajk2B0I0



('A`)「なるほど。そいつはたしかに気味が悪い。どっちかわからないんだな?」


( ФωФ)「ああ。軍なら除隊じゃすまさない」



( ФωФ)「どちらでもいいとは、そういうことだろう」



('A`)「やつら、なにか企ててるんじゃないのか」


( ФωФ)「その様子も見られないから、気味が悪いのだ。ゲリラ戦に対して、防衛はするものの迎撃にこない」


( ФωФ)「俺が言うまえから、そのようなスタンスだった」


('A`)「ふぅん。そりゃ、おかしな話だ」


( ФωФ)「……」


('A`)「なんだよ?」


( ФωФ)「あの子どもたち、どうなった?」


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640 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:29:41 ID:Iajk2B0I0

ロマネスコが尋ねたのは、スラムから拾われてきた少年兵たちのことだ。

彼らの多くは仕事を得るために銃を持たされる。そして教育された。

ロマネスコは少年兵の存在を憂いたわけではない。

ただ彼らは、この国の人間である。
ロマネスコが収める地域での、将来は一員であったかもしれない存在だった。



('A`)「……生きてるのも、いる」


( ФωФ)「……見せしめか」


('A`)「冗談やめろ、って思わず笑っちまったぜ」


('A`)「まさか躊躇なく撃って来るたぁな思いもしなかった」



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641 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:30:37 ID:Iajk2B0I0

ドクオが乾いた笑みを浮かべる。

どこか自嘲めいていて、ロマネスコはそれでこの男を信用に足りると判断した。
何を惜しむかの価値観は似ていなければ協力はとれない。背中を預けることもできない。

そしてひとつのことに気がつく。




( ФωФ)「そこだ」



( ФωФ)「奴らには慈悲がない。容赦さえもない。我々を人だと、思ってすらないのだ。この国はもう我らの国ではない」


( ФωФ)「武器を持たされた子供を、衆人の目のまえで残酷に射殺した」


( ФωФ)「なのにこちらがわからの攻撃に、焦りが見られない。
余裕がないからこそ、あそこまで配慮なくやれたのではないのか?事実、いまは誰もが我々を支持している。それもあの一斉射撃があってこそだ」


巨大な勢力と反乱。

弱者を踏みにじる様子は誰もの怒りと反発を招く。

大使館は沈黙しているが、表だっていないだけで、このやり方に賛成というわけではないはずだ。

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642 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:32:39 ID:Iajk2B0I0


( ФωФ)「矛盾している。なにか、なにがある。いまここで、我々を殲滅しないだけのなにかが」


口に出せばその考えはかちりとはまった。

不気味に沈黙し始めた、敵の様子にしっくりと来る。

ただそのなにか、が分からない。



('A`)「……潮時だな。最後のコンテナを運べたら、俺は引き上げる。この国からな」


('A`)「おまえも考えたほうがいい。まともな奴は、こんなところで生きられない」


( ФωФ)「……」


ロマネスコはしばし沈黙した。この男から愁傷な言葉を聞くことになるとは。



( ФωФ)「それは惜しまれていると、考えてもいいのか」


('A`)「そうだ」


('A`)「ここにゃなんたって、あるべきものがない」


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643 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:33:31 ID:Iajk2B0I0


('A`)「先進国のふりをしているのに、法律が機能してない」



( ФωФ)「ああ……独占禁止法、消費者法……」


('A`)「それだけじゃないさ」


ドクオはそこで初めて哀れみを見せた。諸外国から来た男の、偽りない同情。
この国の生まれでは、持ち得ない世界観。


生まれた時から、管理された肥溜めに生きる気分はどうだ?



('A`)「たぶん倫理観。豊かなのに、餓えることなんてないのに」


品物はある。作物も。輸入も頻繁で、国は、国だけは豊かだった。

ただ、下位のものが、それを入手する手だてがない。
奪うことでしか。

ドクオは当たり前のことを口にした。


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644 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:34:12 ID:Iajk2B0I0

('A`)「人が死ぬことが日課になっている」


( ФωФ)「外は違うのか」


('A`)「……少なくとも、意識はある」


( ФωФ)「意識?」


('A`)「犯罪という、意識がな」


('A`)「ここにはそれがない。」


('A`)「意識がないから、問題にさえならないだろう」


( ФωФ)「よくわからんな」


('A`)「まぁな。本当はどこかの、えらい学者さんが言うべきなんだろう」


('A`)「俺みたいなのがそう思うくらいに、この国は歪んでるんだ」



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645 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:35:05 ID:Iajk2B0I0

( ФωФ)「だから我々は戦っている。いずれ国を取り返すさ」


('A`)「……そうじゃないんだよなぁ。なんてーかさ、」


('A`)「救われたいとか、思ってないのが問題なんだよ



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646 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:38:04 ID:Iajk2B0I0






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647 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:39:48 ID:Iajk2B0I0





 ( ´_ゝ`)「そんで?」


( ´∀`)「なにがだ」


 ( ´_ゝ`)「話の続き。まだあるだろ。その重大なプロジェクトは、なぜ未完のまま放置されてたんだ?」


( ´∀`)「……なに、簡単なことさ。」


( ´∀`)「時間が足りなかったんだよ」


 ( ´_ゝ`)「そういや年数たつのを待ってたって言ってたな。なんでだ?」


 ( ´_ゝ`)「いくらでも、好きなように育てられただろうに」

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648 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:40:38 ID:Iajk2B0I0


試験管のなかのホムンクルス(人工生命)

生まれたての成人
設定され、カスタムされる身体。

年数を待つことなどない。ただ老化を促進させ、望みの姿で止めればいい。

命を弄ることに抵抗もなく。技術がありながらなぜ、行わなかったのか。

純粋な疑問を兄者が尋ねる。



( ´∀`)「まあ意識の違いだ。できるだけ自然に育つことを待っていたのだ。弄ればいろいろと噛み合わないこともある」


( ´∀`)「脳の作用や筋肉の発達、神経系の影響、成長ホルモンの過剰分泌。
メンテナンスが難しく、完全にコントロールできないのならば、やはり時間をかけてでも穏やかに進めたほうがいい」

( ´∀`)「なにせ、失敗はできないからな」


 ( ´_ゝ`)「なんで?」


間違えたのなら、やりなおせばいいのでは?


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649 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:41:24 ID:Iajk2B0I0

( ´∀`)「突然変異とは、進化だと思うか?」


 ( ´_ゝ`)「また講義?学説では、枝のように別れた可能性の一つ。ただ、それが大多数ではないかぎりに、一代のみの変種であることが前提だったような」


( ´∀`)「さすがに、よく知っている。ヒトノゲムを解析した遺伝子実験の果てに、わたしはたどり着いたのだ。」


( ´∀`)「種の起源とも言えるべきものにね」


 ( ´_ゝ`)「大袈裟な」


( ´∀`)「なにを言う。真面目に主張するさ。有性生殖を繰り返して進化してきた歴史を真っ向からひっくり返すほどの衝撃なのだぞ」


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650 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:42:11 ID:Iajk2B0I0



( ´∀`)「そも、
子を生むのが片方だけというのはじつに効率が悪いとは思わんかね?」


 ( ´_ゝ`)「男が妊娠する世界のほうが狂喜だろうがよ」


( ´∀`)「否定はしない。わたしもそう思う」


( ´∀`)「ただ少し考えてみてくれ。両性を持つ者がいたら、どうなのかと」


 ( ´_ゝ`)「両性具有、半陰陽?」


( ´∀`)「none、それは染色体に原因があるから母体のホルモンが影響する場合だ。



( ´∀`)「わたしのは違う」


( ´∀`)「哺乳類動物、ヒト科の、完全なる両性体だ」


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651 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:43:17 ID:Iajk2B0I0




 ( ´_ゝ`)「……逆に聞きたいんだけどさ」


 ( ´_ゝ`)「なんでそれがうまくいくと思ったの?」


( ´∀`)「固定概念を捨てることだ。むしろ。あらゆることに対して、うまくいく」


 ( ´_ゝ`)「生理的嫌悪は理性で抑えることはできないよ」


 ( ´_ゝ`)「第三の性別みたいなもんだろそれ」


( ´∀`)「いや、それの問題は克服ずみでもある」


( ´∀`)「ヒトに好かれる、というのは特別な才能でな。ごくまれに反発する者が居たとしても、大多数に受け入れられたならば、問題はないのだ」



( ´∀`)「悪魔的に、あれはそういうことが上手だった」

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652 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:44:34 ID:Iajk2B0I0


 ( ´_ゝ`)「ふぅん。そういや捜索すんのに具体的なこと聞いてなかったな」


 ( ´_ゝ`)「どんな奴なんだ?その成功例って」


( ´∀`)「外見ならばデータに残っているはずだ。サルベージできる。必要なのは特性か?」


 ( ´_ゝ`)「そうだな。メンタルと習性を教えてくれれば、それで範囲の特定ができるし」


( ´∀`)「ふむ……」


( ´∀`)「自らは動かずに、他人の手を使って行動する。好まれると言ったろう。そういうことに長けている」


 ( ´_ゝ`)「珍しいな。命令主体型じゃないのか」


( ´∀`)「蝶よ花よと育てあげたらな、いつの間にか人を利用することを覚えよった。逃げたのも、たらしこんだからだ」

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653 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:45:24 ID:Iajk2B0I0



( ´_ゝ`)「ああ。じゃあ潜伏先もすぐわかる。ここで居場所のない奴を匿うなんて、限られるしな」


( ´∀`)「いや。恐らく見つけるのは難しいな。たぶん庇われているはずだ」


 ( ´_ゝ`)「?愛人とかなら、新顔を検索することもできるけど」


( ´∀`)「そうではない。先も言ったが、あれは好かれるだけではないのだ。本人の特性ゆえか、そういう風に生まれたのか」


( ´∀`)「ひたすらに、ただ愛されるのだ」


( ´∀`)「愛しかたに、違いはあれどな」



 ( ´_ゝ`)「コミュニケーションレベルが高く、他人の支配がうまいってこと?」



( ´∀`)「そうだ。そしてそれは無自覚な献身に変わる」


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654 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:46:05 ID:Iajk2B0I0




( ´∀`)「身代わりになってでも、庇ってやろうとする。あれを救うために」


 ( ´_ゝ`)「なんか精神病質者みたいだな。嘘がうまく、人に頼るのが得意で、自己中心的にしかものを考えられない」


( ´∀`)「それも、生き残るためだけにだ」


( ´∀`)「あれのために40年費やした。簡単に死なれては困る。」


 ( ´_ゝ`)「確かに、争いあってもその輪から外れていれば危険は少ない」


 ( ´_ゝ`)「しかし不思議だな。庇護される生き物に、自分からなったってこと?」


( ´∀`)「それも無意識に。そのように育ったのだ。どれほどわたしが歓喜したか、わかるだろう?」


( ´∀`)「この世で生物の頂点は人間だ。そのために、人間を攻略することとなった。これもまた進化なのだよ」


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655 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:46:56 ID:Iajk2B0I0




 ( ´_ゝ`)「外見的特徴に、特別なものは?平均的美格数値とか」


( ´∀`)「特にない。強いて言えば美形ということだが、そんなものありふれている」


 ( ´_ゝ`)「たしかに」


シリーズ、ナンバーズ、その他の人工的生命体。共通しているのは、平均的な造形があるということ。個性的な面というものは、あまりない。量産される人形たち。


( ´∀`)「昔は羽根を背中につけた愛玩生物が人気だったんだが、すぐに生産は中止になった。」


( ´∀`)「人気がいまひとつでな。鳥の習性をそっくり真似るうえに、感情表現が豊かではなかった。天使を眺めるのはいいが、懐かないということで廃棄になったんだ」


( ´∀`)「しかし耳としっぽをつけた別のシリーズを売り出したらこれが売れに売れた。やはり、犬や猫は歴史が長いぶん、人に懐きやすい」


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656 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:48:17 ID:Iajk2B0I0




 ( ´_ゝ`)「そいつに耳やしっぽがあるのか?」


( ´∀`)「いいや」


 ( ´_ゝ`)「それなのに、好まれる」


( ´∀`)「そう。なぜか。独占もしくは支配、束縛、それから従順」


( ´∀`)「だれもが愛と呼ぶべきかもしれないことのように、ただ好まれるのだ」



 ( ´_ゝ`)「ふーん。じゃあさ、過去のケースを教えてくれよ。そこまで具体的ならなにかあるだろ?」


 ( ´_ゝ`)「うちんとこってさ、ギャングとマフィアの抗争とか多いんだけど、おかしな事件なんかは起こんないから探しやすいんだ」



死体と、犯人。

被害者と殺人者。犯人がいない、該当に値しない人物が犯人であることは滅多になく。
人が密集している地帯だからこそ、監視は多い。

人々は、事件を起こした犯人を知っている。知りながら生活している。

そこからたどれば、逃げた個体を探すのも容易だろう。

民衆に溶け込んだ手先は、いくらでもいる。


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657 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:49:16 ID:Iajk2B0I0





( ´∀`)「……ふむ。しかしそこまで特殊なケースというものでもないが。参考になるかわからん」



( ´∀`)「研究員が一人死んでな」


( ´∀`)「調べた結果、他の個体に指示して殺させたことがわかった」


( ´∀`)「それだけだよ」



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658 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/06(金) 23:57:31 ID:Iajk2B0I0











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659 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/07(土) 00:01:09 ID:4CVnIR9g0







(A^ν^)「……」

(A^ν^)「一止めが囮」

(A^ν^)「二度めも囮……」

(A^ν^)「じゃあ三度めは……?」

(A^ν^)「囮を使うなら、本命はどこなんだ……?」

(A^ν^)「あの人を足止めするのに、なぜわざわざ交通網を麻痺させる必要がある……」


(A^ν^)「考えなきゃ」

(A^ν^)「役に経たないと、意味がない」

(A^ν^)「生きている意味がないと、」





処分される




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