これを魔女の九九というようです

三をただちに作れ、しからば汝は富まん

68 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:01:28 ID:v1Qmnnm20





三をただちに作れ、しからば汝は富まん





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69 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:02:41 ID:v1Qmnnm20
僕が使い魔になって一週間が経とうとしていた。
魔女の使いっ走りらしい仕事は意外な程少なかった。
せいぜいそれらしいことといえば庭から花を摘み取ってペニサスに渡すくらい。
普段は料理以外の家事ばかりを任されていた。

(´・_ゝ・`)「ペニサスくん」

('、`*川「なによ」

バウムクーヘンから目を離さず彼女は返事をした。
今は一枚ずつ生地を剥がす作業に夢中になっているらしかった。
ちなみに棒に巻きついている側からちまちまと剥がして食べていた。

(´・_ゝ・`)「行儀悪いよ」

('、`*川「え、バウムクーヘンってこうやって食べないの?」

(´・_ゝ・`)「食べないよ」

フォークで一口サイズに切って食べる様を見て、ペニサスはつまらなさそうな顔をした。

('、`*川「人生の半分は損してると思う」

(´・_ゝ・`)「そんなことで損するなんて君の人生どうなってるんだい」

('、`*川「これが楽しいんじゃないのー」

とうとう薄っぺらになったそれは、ぱたんと倒れてしまった。
ぶすりとフォークが突き刺さり、それは一口でペニサスの口へと吸い込まれていった。
ああ、本当に行儀が悪い。
僕は溜め息を吐いた。

70 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:03:31 ID:v1Qmnnm20
(´・_ゝ・`)「おかわりは?」

('、`*川「もういいわ。これ以上食べると夕飯食べれなくなっちゃう」

(´・_ゝ・`)「そうか」

切り分けたまま放ってあったバウムクーヘンに、僕はラップをかける。
そしてほとんど中身の入っていない冷蔵庫の中に仕舞った。

('、`*川「夕飯は内藤屋のメンチカツがいいなー」

紅茶を飲みながら言われた言葉に、僕は眉を顰めた。
内藤屋は恰幅の良い男がやっている総菜屋だ。
少し味付けは濃いが、大抵のものはうまい。
僕もあそこで作られた人参のきんぴらは絶賛したいくらい好きだった。
問題はメンチカツである。
あそこで取り扱っているメンチカツは二種類あるのだ。
一つはオーソドックスなメンチカツ。
細かく刻まれたキャベツと甘辛くにつけたひじきが入っていて、ソース無しでも食べられる自慢の逸品だ。
もう一つはチョコレート入りのメンチカツだ。
語るに恐ろしい一品だ。
一口だけ食べたことがあるが、あの甘ったるさとジューシーな肉汁が混ざったあの味はお世辞にも美味いと言えるものではなかった。
もちろん自ら食べたわけではない。
ペニサスの好物だから、無理矢理勧められて食べる羽目になったのだ。

はっきり言って、ペニサスは味オンチであった。

('、`*川「どうしたの?」

不思議そうな顔でペニサスは問う。

71 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:04:11 ID:v1Qmnnm20
(´・_ゝ・`)「いいや別に」

('、`*川「うそつき。主人に歯向かうのね」

(´・_ゝ・`)「それよりご飯はいくつ炊けばいいのかな」

('、`*川「二合」

(´・_ゝ・`)「わかった」

('、`*川「あっ」

待ちなさいこらー!などという言葉を背に浴びながら、僕はキッチンへと逃げ込んだ。
違う話を振るとすぐそれに乗せられてしまうから、彼女のあしらい方はかなり雑であった。
楽でいいのだが。

('、`*川「ちょっと!」

(´・_ゝ・`)「あれ?」

楽じゃなかったようである。

('、`*川「最近わたしの扱い雑じゃない?」

(´・_ゝ・`)「気の所為だよ」

('、`*川「気の所為じゃない」

真っ直ぐな視線が僕を射抜く。
ああ、このままでは負ける。
なぜかとっさにそう思い、僕も見つめ返した。

72 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:04:57 ID:v1Qmnnm20
('、`*川「やっぱり年下にこき使われるのが嫌なの?」

(´・_ゝ・`)「その言葉を使われるほど忙しかったためしはないね」

仕事をしていた時の方がよっぽど忙しかった、と僕は振り返る。
最初こそ慣れない家事に翻弄され、ペニサスに怒られたこともある。
しかし効率よくこなすコツさえ見つけてしまえば、のんびりする時間はいくらでも出来た。
つまり、暇を持て余していた。

('、`*川「むー……」

我に返ると、なにやらペニサスは唸っていた。
どうやらずっと考え事をしていたらしかった。
そしてくるりと背を向け、キッチンを出て行ってしまった。
いまいち何を考えているのか掴めない子である。
とりあえず米を研いでしまおうと、僕が炊飯釜を取り出した時だった。
とたとたと走る音とともに彼女は戻ってきたのだ。

('、`*川「決めた!」

(´・_ゝ・`)「何をだい?」

('、`*川「明日サバトに行く!」

(´・_ゝ・`)「鯖都?」

思わず新鮮な鯖が歩き回る街を思い浮かべる僕に、ペニサスは呆れたような顔をした。

('、`*川「サバトよサバト!魔女の集まり!夜会!」

(´・_ゝ・`)「井戸端会議みたいなものかね」

('、`*川「もっと高尚なものよ!」

73 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:05:49 ID:v1Qmnnm20
ふん、と鼻を鳴らし、それからこう付け加えた。

('、`*川「たぶん」

(´・_ゝ・`)「行ったことないのか」

('、`*川「師匠がダメっていうから……」

(´・_ゝ・`)「怒られるんじゃないのかそれ」

しばしペニサスは考え、真面目な顔をしてこう言った。

('、`*川「バレなきゃ平気よ」

(´・_ゝ・`)「不良だ」

('、`*川「好きに言ってなさい」

ふん、とペニサスは拗ねたように鼻を鳴らした。

(´・_ゝ・`)「君のお師匠さんはさ」

('、`*川「ん?」

(´・_ゝ・`)「どうして君が魔女になることに反対しているんだろうね」

ずっと疑問に思っていたことを僕は口に出した。
ペニサスは一瞬狼狽えたような顔をして、それからこう答えた。

('、`*川「知らないわ」

(´・_ゝ・`)「教えてくれないのか」

('、`*川「うん」

74 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:07:45 ID:v1Qmnnm20
でもね、と言葉は続く。

('、`*川「わたしはあの人の助けになりたいの」

(´・_ゝ・`)「助けか」

('、`*川「……って言ったって、師匠からは絶対魔法のことなんか教えてくれないし。教えてくれる友達もいるけど、その人もたまにしか帰ってこないし」

はあ、とため息が一つ漏れる。
それでも彼女の瞳は力強く光を宿していた。

('、`*川「でもわたしはあきらめない」

(´・_ゝ・`)「…………」

魔女のなにが彼女をそこまで魅了するのだろう。
そこまでの影響を与えた師匠はどんな人物なのだろう。
僕の興味はますます掻き立てられていった。

('、`*川「あー、そうだ」

ふと思い出したようにペニサスは言う。

('、`*川「あとで薬作らなきゃ」

(´・_ゝ・`)「薬?何の?」

('、`*川「いつも持ち歩いてる飴あるでしょ」

ああ、あの不味い飴ね、という言葉は飲み込む。
その代わりに頷いてみせた。

('、`*川「あれ眠気覚ましの薬なの」

(´・_ゝ・`)「へえ」

75 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:08:44 ID:v1Qmnnm20
あれを食べてもなお眠そうに目をこするペニサスの姿を僕は思い出す。
オーバードーズしそうな勢いで貪っても結局うたた寝してしまうのだから、効いているとは到底思えなかった。

('、`*川「あれがないと夜更かしできないのよ。そうしたら、サバトに行けなくなっちゃうでしょう?」

(´・_ゝ・`)「……ペニサスくん」

('、`*川「なあに?」

(´・_ゝ・`)「君はつくづく魔女に向いていないよね」

('、`*川「お黙りっ」

つかつかと詰め寄り、背伸びした彼女は僕の鼻を思いっきりつまんだ。
案外痛くて、僕は思わず声を漏らしてしまった。

(´・_ゝ・`)「悪かったよ」

('、`*川「デミタスなんか嫌い。嫌いったら嫌いよ」

ぶつぶつと呟きながら、彼女は出て行った。

(´・_ゝ・`)「まったく……」

すると再び足音が聞こえてきた。

('、`*川「これ、材料だからあとで棚から出して測っといて」

今度こそ、ペニサスはキッチンから去っていった。
走り書きのメモには、乾燥した馬酔木の花やヒヨスの根など植物の部位が記されていた。

そして僕は気付く。

(´・_ゝ・`)「ごめんペニサスくん、お米いくつ炊くんだっけ」

76 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:09:34 ID:v1Qmnnm20
ペニサスにどやされながら頼まれた用事を終えた僕は、薬作りを見学させてもらうこととなった。
真っ黒な服に身を包んだ彼女の表情は、真剣そのものであった。

('、`*川「わたしがいいって言うまで喋らないで」

分かったという代わりに、僕は頷いた。

手始めにペニサスはちりちりと小さなベルを鳴らした。
それを鳴らし終えると、次は乳鉢にいくつかの種を入れた。
ごりごりと種がすり潰される音がキッチンに響く。
手際よく作業は進み、次に小さな釜の中に潰した種や葉っぱや黒い塊などを入れ始めた。
なにやら小さなボトルをポケットから取り出し、それも加えてしまった。
ボトルの中に入っていたのはとろりとした液体であったが、正体はまったく分からなかった。

ボトルと入れ替わりに、今度は鞘に収まったナイフが出てきた。
凝った装飾が施されたそれで空を切りながら、ペニサスは言葉を紡ぎ出した。
なにを詠っているのか僕にはやはりわからない。
でも鼓膜を心地よく揺らすそれは、非常に穏やかで嫌いではなかった。

ペニサスはナイフをしまい、小さな釜を持ち上げた。
釜が向かった先はコンロだった。
歌は緩やかに、蛇行する川のように遅くなる。
と同時に火がつけられた。

('、`*川「  、    、 ……。  …………」

ちりん、ちりん。
ぐつり、ぐつり。
呪文は止み、ベルの音と釜が煮えかける音がキッチンを支配する。
僕は夢から醒めたような、不思議な気分になった。

('、`*川「もう喋ってもいいわ」

(´・_ゝ・`)「お疲れ様」

77 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:10:18 ID:v1Qmnnm20
労いの言葉に、ペニサスは一瞬驚いたような顔をした。
そして照れ臭そうに、短く礼を言った。

(´・_ゝ・`)「ところでさ」

('、`*川「うん?」

(´・_ゝ・`)「どうして魔女の言葉というのは、聞き取りにくいのかね」

僕の質問にペニサスは、しばし考え込んだ。
どうやって説明しようかを悩んでいるようだった。

('、`*川「呪文って実は祈りの言葉なの」

(´・_ゝ・`)「祈りか。誰に向けて願うんだい?」

('、`*川「力を貸してもらえそうなありとあらゆるものによ」

祈りというのは髪の毛よりも細い糸のようなものだと彼女は言う。
人一人が紡ぐそれは非常に脆い。
しかしあらゆる万物や現象に語りかけることで、その祈りの数を増やしていくのだという。

('、`*川「あらゆる境界線を知れば、その分わたしたちが認識できる他物は増えていく。知らなければそれに語りかけることはできないの」

(´・_ゝ・`)「知らなければいないのと一緒というわけか」

('、`*川「そういうこと」

(´・_ゝ・`)「じゃあ僕の時はなんて祈ってたんだい?」

するとペニサスは苦笑した。

78 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:11:04 ID:v1Qmnnm20
('、`*川「教えられないわ」

(´・_ゝ・`)「どうして?」

('、`*川「相手に知られてしまうとどんなに強い魔女でもその魔法を解くことは出来なくなるの」

(´・_ゝ・`)「まるで呪いだな」

('、`*川「まじないものろいも本質は同じよ」

多数の祈りが少数を飲み込むのなんてわけのない事だという。
その間に魔女が入ることで祈りを淘汰し、効きすぎないようにセーブするのだそうだ。

(´・_ゝ・`)「なるほど」

('、`*川「わかった?」

(´・_ゝ・`)「大体はね」

それよりも僕は気になることがあった。

(´・_ゝ・`)「ところでペニサスくん」

('、`*川「なに?」

(´・_ゝ・`)「これ本当に大丈夫なのかい」

79 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:11:44 ID:v1Qmnnm20
思わず釜を指差してしまった。
ありえない色合いの泡を噴き出しながら煮えるそれは、まさしく毒物であった。

('、`*川「大丈夫よ」

なんだそんなことかと言わんばかりのペニサスに、

(´・_ゝ・`)「あ、そう」

としか返せなかった。
一度はこの液体が凝り固まった物体を食べてしまったんだよな、と僕は暗い気持ちになった。

('、`*川「どうしたの?」

(´・_ゝ・`)「どうもしないよ」

もう二度とペニサスの勧めるものは食べるまいと僕は心に決めたのだった。

80 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:13:01 ID:v1Qmnnm20
薬が完成した後、慌ただしく食事と入浴を済ませてペニサスは床に就いた。
明日のサバトに備えてなるべく多く寝ようという魂胆であった。

一方僕はまったく眠れず、こまめに寝返りをうっていた。
生きていた頃は睡眠時間が全くとれず、四時間寝れば十分といった暮らしぶりだった。
しかし今は日付が変わる前に寝る体制が整ってしまう。
くわえてそれほど忙しくもないので、全く疲れなかった。
眠くなるわけがなかった。

(´・_ゝ・`)「はあ」

時刻は九時半過ぎ。
いつもならペニサスと一緒に風呂上がりのアイスをつつく頃合いだ。
特に会話もしないが、誰かがそばに居るだけでなんとなく安心感があった。
こういう時に限って、どうしてか人恋しく思っていた。
今まで一人で暮らしていたというのに、なぜ。

ごろんと再び寝返りを打つ。
衣擦れの音がやけに響く。
カチカチと時計の針が進む。
時間を無為にしているような気がした。
体が空虚に感じられる。
急き立てられるような気配によって胸の奥が焦土と化す。
僕はまた寝返りを打った。
私物が入った段ボール箱が目に入る。
住んでいた部屋から持ってきたものだ。
しかしこれといって、持っていきたいと思うものは少なかった。
まさか一箱で済んでしまうとは僕も思っていなかったのだが。

(´・_ゝ・`)「ああ」

81 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:13:56 ID:v1Qmnnm20
思わず声が漏れる。
カーテンを引いているのに、蔓に覆われているのに、窓から月光が射してくる。
白く、柔らかく、全てを暴くような月光。
こんなにも月は明るいものだっただろうか。
昔からそうだったのだろうか。
僕は全く、知らなかった。

ちなみに僕の寝床は居間である。
ペニサスが簡易ベッドを空いているスペースに設置してくれたのだ。
白家具で統一された部屋に、黒い鉄パイプベッド。
せっかく綺麗に誂えてあったのに、台無しであった。
かといってまさかペニサスの部屋に泊まりに行くわけにも行かないのだが。

(´・_ゝ・`)「…………」

軽く目を瞑る。
全てを遮断しようと試みた。
真っ暗だ。
何も見えない。

かつかつと靴音が聞こえる。
反射し、響いて、何人も歩いているような錯覚。
でも錯覚なのだ。
僕はこの音をよく知っている。
あのトンネルの中を歩いているとこんな風な音がするのだ。
僕は一人だ。
一人で歩いている。
エンジン音が遠くからやってくる。
加速してやってくる。
僕を殺しに、やってくる。

82 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:14:44 ID:v1Qmnnm20
あっという間にその時は訪れた。
僕の体は宙に舞い、壁へと激突した。
骨が折れる。
血が垂れる。
息を吐き切ったきり、吸うことができない。
息苦しい。
僕はまた死んだのか?

「おい」

と声がする。
無様に転がる体が持ち上げられる。

(,,゚Д゚)「てめぇなんか死んじまえばよかったんだ」

ギコくん、と呼びかけようとした。
しかし喋ることはできない。
僕は死んでいるからだ。

(,,゚Д゚)「くたばれ」

くたばっているよ。

(,,゚Д゚)「死に損ないが」

そうだね。

(,,゚Д゚)「二度と俺を苦しませるな」

そんなつもりはなかったんだ。

83 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:15:37 ID:v1Qmnnm20
(,,゚Д゚)「死ね」

うん。

(,,゚Д゚)「偽善者が」

本当に、すまなかったよ。

(,,゚Д゚)「みんなてめぇを見下してんだよ、クソ野郎が」

そうかもしれないね。
僕は、どうしようもない人間だったんだ。

体にナイフが埋もれていく。
何本も何本も。
それが誰の手によるものなのかはわからない。
わからなくてもよかった。
ただ奇妙なことに、責められると楽だった。
善人であろうとするには相当な労力がいるのに、こうしているととても心地よく感じられた。
もうクズでもバカでもいいのかもしれない。
僕はもう––––。


……?


「…………、デミタス!」

と、その時声がした。

84 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:16:21 ID:v1Qmnnm20
(´・_ゝ・`)「……うん?」

浅い眠りから覚めると、ペニサスがそばにいた。

('、`*川「寝てた、よね……?」

(´・_ゝ・`)「いや、うとうとしてた」

あまり眠れなくて、と欠伸しながら答えるとペニサスは少しホッとしたような顔をした。

('、`*川「わたしも眠れないの」

(´・_ゝ・`)「夜更かしが苦手な君が?」

茶化すように言うと、

('、`*川「そうね」

と素っ気なく返事が返ってきた。
どうやら真面目に悩んでいるようだった。

(´・_ゝ・`)「それで、何をしに来たんだい」

('、`*川「眠くなるまで話をしていたいの」

(´・_ゝ・`)「ああそう」

僕は体を隅に寄せた。
あまり広くないベッドだが、まぁなんとか寝れなくはないだろう。
などと考えていたのだが、ペニサスはキョトンとした顔でそれを眺めていた。

85 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:18:23 ID:v1Qmnnm20
('、`*川「え、一緒に寝るの?」

(´・_ゝ・`)「今はまだ暖かいけど段々これから冷えるから風邪ひくよ」

('、`*川「いいわよ、そんな……」

(´・_ゝ・`)「風邪引いたらサバトに行けなくなるかもしれないよ」

実際今日の彼女は薄手のTシャツであった。
ここ最近陽気が良かったので、あの着ぐるみは仕舞ってしまったのだろう。
ペニサスはしばし考え、体を動かした。

('、`*川「狭くない?」

(´・_ゝ・`)「僕は平気だけど、嫌なら床で寝るよ」

('、`*川「寝なくていい」

風邪引くといけないから。
背を向けて、小さく言葉が返ってきた。
僕もそれに習って背を向けることにした。
あまり他人の背中をじろじろ見るのも失礼だろう。

('、`*川「デミタス」

(´・_ゝ・`)「なんだい」

('、`*川「デミタスにも怖いものはあるの?」

86 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:19:13 ID:v1Qmnnm20
(´・_ゝ・`)「あるよ」

('、`*川「あるの?」

(´・_ゝ・`)「僕だって人間だよ。もう死んでるけどさ」

('、`*川「ふうん」

一瞬の沈黙。
ペニサスの呼吸だけが聞こえる。
浅く息を吸って吐く音だけが。

('、`*川「実は」

(´・_ゝ・`)「実は?」

('、`*川「……サバトに行くのが怖いの」

師匠と友達以外の魔女に会ったことがないのだとペニサスは言う。
彼女の知識は書庫にある本と師匠から聞いた一握の話だけ。
どんな魔女がいるのか、果たして師匠に認められなかった自分を彼らは受け入れてくれるのか。

('、`*川「今までは師匠に追いつこうとするのに必死で、そんなの考えたこともなかった」

ゆっくりと、息が吐き出される。
憂いを含んだそれは部屋に淀み、僕らを取り囲む。
僕はなんとなく片手を振り回した。
散り散りになって消えてしまえばいいと思った。

('、`*川「デミタス?」

(´・_ゝ・`)「いや、少し暑くなったような気がして」

87 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:21:56 ID:v1Qmnnm20
適当なことを言って誤魔化す。
納得したかどうかはわからない。
彼女はなにも言わないからだ。

('、`*川「…………デミタスが怖いと思うものって、なに?」

(´・_ゝ・`)「今度は僕か」

('、`*川「いつも飄々としてるし、なに考えてるかわからないもの」

(´・_ゝ・`)「…………」

そんな風に思われていたのか。
少しショックだったが、思い返すとそうだったかもしれない。
彼女の前で笑ったことも怒ったこともない。
ただペニサスに言いつけられた通りに仕事をして、決まった時間に食事を摂っていただけだった。
そこに会話はない。
僕もまたペニサスがなにを考えているのかわからなくて、なにもしなかった。

……いや違う。
怖かったのだ。
ちょっとした立ち振る舞いが、他人にどう受け止められるのかが。
優しくしたつもりが、相手にとって不服だったら?
または傷付けてしまったら?
他人が僕の挙動をどう見ているのか、考えているのか。
その恐怖はだんだんと僕の手足を拘束し、脳に染み込んでいった。

('、`*川「デミタス?」

魔女の声が聞こえる。

88 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:24:05 ID:v1Qmnnm20
(´・_ゝ・`)「僕は他人が怖いよ」

('、`*川「怖いの?」

(´・_ゝ・`)「僕の行動の一つ一つが他人にどう思われているのか、すごく怖いよ」

告白と共に、毒を吐瀉したような気分になった。
自覚すればするほどその毒は溢れ、僕の体はますます重くなった。

('、`*川「そんなこと考えてたの?」

そんなこと、と一蹴されてしまった。
君にとっては些細なのかもしれないけど、僕にとっては深手なんだよ。
と口から出掛けて飲み込んだ。
怒るかもしれないと思ったからだ。

('、`*川「あ、今なんか言いかけてやめたでしょ」

バレている。

(´・_ゝ・`)「何故、そう思ったんだい」

('、`*川「そういう時って臆病になるから」

がさごそともがく音。
寝返りを打ったのかもしれない。
僕は振り向けずにいた。

('、`*川「わたしが魔女になりたいと師匠に言った日、」

(´・_ゝ・`)「…………」

('、`*川「すごく怒られたわ」

89 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:25:30 ID:v1Qmnnm20
『どうしてそんなことを言うんだい。君は、ただ生きているだけでいいのに』
そう言われた瞬間、ペニサスは憧憬や願望を持つことが悪い事なのかと悩んだ。
どうして魔女になってはいけないかを問うても、師匠は口を噤むばかり。
けれどもどうしても助けたかった。
師匠は世界中の不幸を摘み取ろうとしているのだそうだ。
無数に散らばる全ての不幸を。

('、`*川「みんなに幸せでいてほしいって、師匠は言うけど。でも、帰ってくるとすごく疲れた顔をしてる時があるの」

(´・_ゝ・`)「つまり君はお師匠さんの幸せを願っているんだね」

('、`*川「うん」

(´・_ゝ・`)「いい子だね、ペニサスくんは」

('、`*川「でも魔女になることで師匠を不幸にするのかなとも思うの」

(´・_ゝ・`)「だけど君は師匠のためになにかしたいんだろう?」

('、`*川「そうね」

(´・_ゝ・`)「生きているだけでいいなんて、ずっとそのままそこで留まるのは無理だよ。ペニサスくんは若いんだし先があるんだから、やりたい事なんて幾らでも思いつくだろう」

そういえば、と僕は聞きそびれていたことを思い出した。

(´・_ゝ・`)「ペニサスくんは一体いくつなんだい?」

('、`*川「…………」

ペニサスは黙してしまった。
もしかして聞いてはいけないことだったんだろうか。
背中をつぅっと冷や汗が流れた。

90 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:26:20 ID:v1Qmnnm20
('、`*川「実は、わからないの」

(´・_ゝ・`)「え?」

予想外の返答に僕は戸惑う。

('、`*川「記憶喪失なの。師匠に拾われる前のことはさっぱり覚えてなくて」

(´・_ゝ・`)「ああ……。てっきり長生きしすぎて年がわからないとかそういうのかと」

('、`*川「勝手におばさんにしないでよ」

(´・_ゝ・`)「ぐぇっ」

背中を勢いよく蹴飛ばされ、思わず噎せる。

('、`*川「というか、他人が怖いって言う割には遠慮がないよね!」

(´・_ゝ・`)「いだだだ、痛いよペニサスくん」

先ほどよりは軽い蹴りが僕を襲う。
掛け布団がもみくちゃになり、ずれて、床へ吸い込まれていった。
かわりに凛と冷えた空気が落ちてきた。

(´・_ゝ・`)「ああもう、埃だらけになっちゃうよ」

('、`*川「じゃあ明日掃除してよ」

(´・_ゝ・`)「君が散らかしたのに」

('、`*川「でもあなたが使い魔なのよ?」

(´・_ゝ・`)「職権乱用だ」

91 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:27:09 ID:v1Qmnnm20
ふざけた会話をしていくうちに、僕は一つ気付いたことがあった。
ペニサスはとても素直だ。
建前もなにもなく、いつだって本音で僕にぶつかってくる。

だからどうしても、からかいたくなってしまうのかもしれない。
それがとても楽しくて仕方がなかったのだ。

(´・_ゝ・`)「やれやれ」

僕は落ちた布団を拾いに起き上がった。
気付けば月光はさらに青白さを増していた。

(´・_ゝ・`)「今日の満月はずいぶん大きいね」

思わず口に出すと、ペニサスが答える。

('、`*川「満月は明日よ。今日は小望月」

(´・_ゝ・`)「そうなの?」

('、`*川「サバトは満月の夜に開かれるんだって」

ベッドから降りて、ペニサスは窓へと近付いた。
鍵が外され、カラカラと窓が開かれる。
甘ったるい花の匂いが部屋に雪崩れ込んだ。
ペニサスはほんの少し蔦をどけて、手招いた。

('、`*川「ほら、見て。ほんの少しだけ欠けてるでしょ」

(´・_ゝ・`)「……わかんないな」

92 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:28:19 ID:v1Qmnnm20
('、`*川「えー、わかんないの?」

(´・_ゝ・`)「うん」

('、`*川「老眼?」

(´・_ゝ・`)「老眼は近くが見えなくなるんだよ」

('、`*川「そうなの?」

(´・_ゝ・`)「きっと僕のは仕事でパソコンとにらめっこしてたから、目が悪くなったんだよ」

('、`*川「ふーん」

そのまま僕たちは、ずっと話をしていた。
真っ黒な空が瑠璃色に変わっても、月が薄ぼけても、ペニサスに眠気は訪れなかった。
結局、彼女が眠くなり始めたのはすっかり夜が明けてしまった頃だった。

('、`*川「夜の九時までには起こしてね……」

そう言い残して、ふらついた足取りでペニサスは部屋へと戻っていった。
僕もまた眠気に襲われ、ベッドに突っ伏した。

そして起きた頃には、夜の十時を少し過ぎていた。

93 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:30:17 ID:v1Qmnnm20
('、`*川「デミタスのバカ」

(´・_ゝ・`)「すまなかった」

('、`*川「アホ」

(´・_ゝ・`)「まさか寝過ごすとは思わなくて」

('、`*川「オタンコナス」

(´・_ゝ・`)「だからごめんって」

('、`*川「ドテカボチャ」

(´・_ゝ・`)「ずいぶん懐かしい罵り言葉だねそれ」

('、`*川「うどんで首吊って死んじゃえ」

(´・_ゝ・`)「うどんが勿体無いよ」

ふざけているように見えるが、必死であった。
僕はきいきいと音を立てながら自転車を漕いでいるし、ペニサスは振り落とされまいと必死にしがみついていた。
そろそろ太ももが限界であった。
しかし漕ぐのを止めるわけにはいけなかった。
昨日の話を聞いてしまったら、彼女の決断をふいにするわけにもいかなかった。

('、`*川「次の角を右!」

吹き荒れる春風に、彼女の声が巻き上げられる。
僕はそれに従ったが、もはやどこをどう走っているのかわからなかった。
今まで何回も細かく角を曲がり続けていたからだ。
ただ何故か、人にも車にも出会うことはなかった。
路地にも大きな通りにも、だ。
一人くらい見かけても不思議ではないはずなのだが。

94 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:31:31 ID:v1Qmnnm20
('、`*川「そのままずっとずっと真っ直ぐ走って!」

(´・_ゝ・`)「はいはい」

それなら楽である。
二人乗りしている自転車を倒さずスピードを落とさずに曲がるのは難しいのだ。

暗闇を煮詰めたような色のアスファルトは街灯に照らされていた。
ずっとずっとそれは続いていて、こんなに長い道があるんだろうか、と思い始めていた。
そういえば分岐も十字路もなにもない。
ふと顔を上げて、周りの家を見まわそうとした。
しかしそこには、灰色の塀が立ちはだかっていた。
天まで届きそうな高さのそれによって、空が切り取られている。
見たこともない大きさの月が、僕たちを見下ろしていた。
薄ら寒さを感じ、僕は真正面を見据えることにした。

(´・_ゝ・`)「うわ、」

強烈な風が駆け抜け、自転車が揺れる。
なんとか体勢を整える。
再び風が吹く。
今度は無数の紙を孕んだ紙だ。

極彩色の服に身を包んだマネキンのチラシ。
小さな硝子に根を生やす植物の絵。
こちらに笑いかける少女と「探しています」の文字。
箱に納められた箱の中から更に箱が納められている箱の写真。
様々な情報が僕の網膜を焼いていく。

(´・_ゝ・`)「っ!」

('、`*川「ひゃっ!」

ガタンと自転車が揺れる。

95 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:33:58 ID:v1Qmnnm20
いつの間にかアスファルトは消え去り、砂利道と化していた。
思わずパンクの心配をしてしまうほどの悪路は思ったより短く終わった。
でもまだその方がマシだったかもしれないと僕は思った。
いかにも滑りそうな、赤茶けた地面の下り坂が待ち受けていたのだ。

(´・_ゝ・`)「待て待て待て」

僕は、ジェットコースターが大っ嫌いである。
幼少期に親父に乗せられて以来、もう二度と乗るものかと誓ったのだ。
それがどうして、自転車で再現されなければいけないのか!

(´・_ゝ・`)「……………………」

僕は悲鳴の一つも出せないまま、坂を下った。
なされるがままである。
後ろでペニサスがなにか叫んでいるような気がしたが、聞き取る余裕などなかった。

がっ、ごんっ!!!

勢いよく自転車が着地する。
君も大変だね、こんな目に遭うと思わなかっただろう。
なんてことを考えながら、無意識に自転車を漕ぐ。
気付けば道は消え失せていた。
その代わりに両側から現れた躑躅の木にはさまれていた。
鮮やかな桃色の花は、僕たちを押し潰さんばかりの勢いで咲き誇り、ギリギリまで迫る。

「……ヒータ パッサチーマ フィーラ フィーラ !」

「ヤッアヒータ パッサチーマ フィーラ フィーラ!!」

(´・_ゝ・`)「フィーラ、フィーラ?」

96 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:35:32 ID:v1Qmnnm20
終わりは唐突にやってきた。
躑躅の花が竜巻のように集まり、僕たちの前に立ちはだかった。

从 ∀从「上出来!上出来!!」

それはあっという間に人の形を成した。
緑がかった闇色の別珍で出来たドレスを纏ったその女は、にっこりと微笑んで見せた。

从 ゚∀从「ようこそ、サバトへ!」

躑躅と同じ色の瞳が僕を貫く。
目が合ったのはほんの一瞬だ。
しかしその僅かな時間で、人定めをしているのがわかった。

从 ゚∀从「随分デカい猫だね」

('、`*川「猫じゃないわ、死体なの」

自転車から降りたペニサスに、躑躅の魔女は桃色の髪を揺らした。

从 ゚∀从「ハッハー! ちょっとした言葉遊びだよお嬢ちゃん!」

彼女はペニサスの手を取ると、さっさと歩き始めた。

从 ゚∀从「よくここまで来たね。あんなの無鉄砲か馬鹿しか乗らないぜ」

97 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:36:16 ID:v1Qmnnm20
(´・_ゝ・`)「彼女は箒に乗れないんだよ」

从 ゚∀从「だろうな。アタシも乗れねえもん」

('、`*川「乗れないの?」

从 ゚∀从「向き不向きがあるんさね。アタシは盥が一番安定して遠くまで飛べるよ」

体育座りで盥の中に収まる様を想像して、僕は笑いそうになった。
まさか初対面の相手にそんな失礼なことをするわけにはいかないので、?を噛んで凌いだが。

从 ゚∀从「ま、チャリはおよしよ。せっかく魔女になるんだったら人間の移動道具なんか使っちゃいけないよ」

('、`*川「知らなかったのよ、箒以外にも空を飛べる道具があるなんて」

从 ゚∀从「誰か教えてくれる奴はいないのか?」

('、`*川「いるけど、でも……」

さあ着いた、と躑躅の魔女はペニサスの手を離す。
そこはどうやら、教会のようだった。
すっかり朽ち果てているが、屋根の天辺についた十字架で僕はそう判断した。
潰れた教会が魔女の集まりになっているとは、なんとも皮肉であった。

〈::゚−゚〉「それが例の魔女かい?」

角ばった顔の魔女が、くぐもった声でしゃべった。
よく見ると顔は石で出来ていた。
いや、顔ばかりではなく体も石であった。
真っ黒なローブから見えた手はキラキラと輝きを放っていた。
どうも水晶かなにかで出来ているようだった。

从 ゚∀从「そうそ、さぁ自己紹介をどうぞ。お嬢さん」

98 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:38:21 ID:v1Qmnnm20
恭しく、滑稽な言い回しで躑躅の魔女は頭を下げた。
ペニサスは戸惑ったように一歩前へと出た。

('、`*川「ペニサス、です。彼はわたしの使い魔のデミタス」

軽く会釈をすると、石の魔女はじっと僕は見つめた。

〈::゚−゚〉「死体か」

(´・_ゝ・`)「轢き逃げされたところをペニサスくんに見つけてもらいましてね」

〈::゚−゚〉「そりゃおもしれえ」

石の魔女は目を細めてそう言った。

('、`*川「えっと、ほとんど独学で勉強してるのであんまり魔法は使えないです」

〈::゚−゚〉「師匠抜きで勉強してサバトに来れるなんて大した奴だね」

('、`*川「そんな、わたしなんて……」

从 ゚∀从「こいつなんて途中の道でビビって帰っちまったんだぜ」

〈::゚−゚〉「それを言うならお前だって行き方を間違えて三ヶ月は出そびれたじゃねえか」

('、`*川「あ、あの……」

从 ゚∀从「要するに一発で来れたペニサスはスゲーってことだよ」

躑躅の魔女の褒め言葉に、ペニサスは複雑そうな顔をした。

('、`*川「わたしはすごくないです。運転したのはデミタスだし……」

(´・_ゝ・`)「でも地図は君が持ってたじゃないか」

〈::゚−゚〉「地図?」

从 ゚∀从「んー? 独学だったんじゃねえの?

('、`*川「独学といっても、師匠の書庫から本を読んでて……」

99 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:39:49 ID:v1Qmnnm20
〈::゚−゚〉「その人に教えて貰えばいいのに」

('、`*川「師匠からは魔女にならなくていいって言われてて……」

从 ゚∀从「へえ、じゃあアタシから一発ガツンと言ってやるよ!」

その言葉にペニサスは慌てたように首を振った。

('、`*川「そんな、いいです!」

从 ゚∀从「よくねーよ」

〈::゚−゚〉「もしかしたらその才能に嫉妬してるのかもね」

('、`*川「で、でも」

〈::゚−゚〉「いいかいお嬢ちゃん」

石の魔女は優しく語りかける。

〈::゚−゚〉「実は今日、ここでのサバトはないんだ」

('、`*川「え」

从 ゚∀从「今日は何日?」

('、`*川「四月の、三十日」

〈::゚−゚〉「その日から明日にかけて、ドイツで大規模な祭があるのさ」

从 ゚∀从「ヴァルプルギスの夜ってやつだね」

('、`*川「ヴァルプルギスの夜……!」

100 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:41:24 ID:v1Qmnnm20
しまった、というような表情でペニサスは言った。

(´・_ゝ・`)「悪いんだけどもそのナントカの夜ってなんだい?」

('、`*川「春の訪れを祝うお祭よ……」

気の抜けたような声で、ペニサスは答える。

('、`*川「魔女にとっては大事なお祭だから、日本にいる魔女もみんなそこへ行くんだわ……」

从 ゚∀从「そーゆーコト」

(´・_ゝ・`)「でもなんで貴女がたはここに?」

〈::゚−゚〉「体そのものはドイツにいるんだけどもね、魔法でこちらに魂を投影させているのさ」

从 ゚∀从「こいつが占いで『偉大なる才能現る』って出したからな。抜け駆けしてこっちにきたってわけよ」

つまり大事な祭よりもペニサスのほうがよっぽど物珍しいということだ。

(´・_ゝ・`)「ペニサスくん、僕にはさっぱりわからないけど凄かったんだね君は」

('、`*川「そうなのかなぁ」

自信なさげにペニサスは返す。
いつもより元気がない。
師匠のことを考えているのだろうか。

从 ゚∀从「卑下すんなよ。普通一人じゃ猫一匹だって使い魔にできる魔女なんざいねえんだぜ?」

〈::゚−゚〉「だから教えておくれ。頑固な師匠を説得したくなるほどの力が君には秘められているんだよ」

('、`*川「…………」

101 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:42:19 ID:v1Qmnnm20
しばし考え、ペニサスは口を開いた。

('、`*川「ショボンさん」

从 ゚∀从「…………」

〈::゚−゚〉「…………」

サァッ、と風が吹いた。
先ほどまでの涼やかな風ではない。
生暖かく、ゆっくりとすべるような風だ。

〈::゚−゚〉「…………あいつか」

石の魔女がようやくそう呟いた。
その声はとても暗く、どこか敵意が込められていた。

从 ゚∀从「……なぁ、ペニサス。アタシんとこに来ないか? アタシだったら意地悪しないでいくらでも教えてやるよ!」

('、`*川「でも、」

从 ゚∀从「はっきり言うけど、あいつはお前が思ってるような奴じゃねえよ」

('、`*川「!!」

その瞬間、ペニサスは躑躅の魔女へと詰め寄った。

('、`*川「あの人のこと、そんな風に言わないで!!」

从 ゚∀从「で、でも」

102 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:43:25 ID:v1Qmnnm20
(´・_ゝ・`)「ペニサスくん!」

僕は振り上げた手を掴み、躑躅の魔女からペニサスを引き剥がした。
ひんやりとした熱が僕の手に伝わる。

('、`*川「離して!」

(´・_ゝ・`)「駄目だ」

('、`*川「でも!」

(´・_ゝ・`)「少し落ち着きなさい。君はお師匠さんのことをどれだけ知っているのかな?」

('、`*川「会ったこともないくせにデミタスも師匠のことを悪く言うの?」

(´・_ゝ・`)「そういうわけじゃないさ」

('、`*川「だったら……」

(´・_ゝ・`)「魔女になるなという理由も知らずに、君はお師匠さんの擁護をするのかい?」

('、`*川「っ…………」

反論できず、ペニサスは僕から視線を逸らした。
硬く握り締められていた拳が緩められ、僕は手放した。

从 ゚∀从「悪かったよ……」

('、`*川「…………」

うつむいたままのペニサスは返事をしなかった。
完全にふてくされていた。

103 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:44:18 ID:v1Qmnnm20
〈::゚−゚〉「誤解しないでくれ、僕たちは君のためを思って……」

「そう思ってるならほっといてくれない?」

その声は、聞いたことのないものだった。

ペニサスは顔を上げた。
二人の魔女はハッとした表情で、口を噤んだ。
見る見る間に人型が崩れていく。
がらがらと、はらはらと。
躑躅の花と石の山を残し、二人は消え去ってしまった。

(´・_ゝ・`)「今のは……」

誰の声、と言う前にその声は再び聞こえた。

「久しぶり、ペニサスちゃん」

石と躑躅を踏みつけ、その女性は現れた。

ζ(゚ー゚*ζ「いい子にしてた?」

三日月のように細められる目と釣り上がる口。
二つに分けられた長い黒髪が風に揺れている。
赤、白、黄色のシフォンが幾重にも重ねられたスカートもそれにつられ、ふんわりと空気を含んだ。

('、`*川「デレさん……」

そう言うペニサスの口調は、どこか陶酔めいていて。
僕はこの子をしっかり見ていなければ、という気持ちになった。

104 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:45:24 ID:v1Qmnnm20







三をただちに作れ、しからば汝は富まん 了





.

105 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/05/08(金) 17:48:13 ID:v1Qmnnm20
登場人物紹介

(´・_ゝ・`) 盛岡 デミタス
絶叫マシンなんかクソ食らえ。好きな乗り物はデパートの屋上にある謎のパンダ

('、`*川 ペニサス
遊園地に行った記憶がない。憧れの乗り物は観覧車

从 ゚∀从 躑躅の魔女
遊園地よりも植物園に行きたい。石の魔女との付き合いは長い

〈::゚−゚〉 石の魔女
遊園地よりも家にいたい引きこもり。こう見えても男である

ζ(゚ー゚*ζ デレ
好きな人と一緒ならどこでも楽しい。たとえそこが地獄だとしても

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