从 ゚∀从魔法使いとハゲのようです

第十三話

167 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:45:34 ID:C38e.tqc0

前日は酷い嵐だった。
シタラバニアには、ヴィップの他にシベリャという街が近くにある。
近いとは言っても、シタラバニアとシベリャの間には巨大な谷があり、そこにある橋を渡った場合の事だ。
それが前日の嵐によって壊されてしまったそうだ。
という事で、現在シベリャに行くには谷を大きく迂回して行かなければならない状況になっている。


( ;ФωФ)「そ、そうは言われても……」

('、`*川「あの、どうしてもシベリャに行かなければならないんです」


町長に頼み込んでいるのは、ペニサス伊藤という女性であった。
彼女にはシベリャに住んでいる姉がいるのだが、その姉が重い病気を患ってしまったのだ。
その姉の看病をするため、彼女はすぐにでもシベリャへと行きたいという事であった。
しかし、シタラバニアとシベリャを繋ぐ橋は壊れてしまっている。

そして迂回していく道は整備もされておらず、魔物も出る可能性が高く危険であった。
だが彼女はその迂回していく道を使う許可を取りに、町長の元へ来ていたのだった。
シタラバニアでは、危険な道を使う場合は町長の許可が必要だったからだ。

168 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:46:32 ID:C38e.tqc0

('、`*川「馬を使えば魔物が出ても逃げることは出来ると思いますし」

( ФωФ)「しかし、住民をそんな危険な場所に行かせる訳にはいかないのである」


伊藤の気持ちも分かる町長であるが、行かせる訳にもいかなかった。
だが、このままではきっと伊藤はこっそりと迂回する道を使うだろう。

どうにか別の方法を見つけて提案しなければ、と町長は頭を使ってみるが良い案が浮かばない。
魔物に襲われても大丈夫なように護衛をつける事も考えるが、この街にそんな腕を持つものはいない。
どうしたら良いのだろうか。町長は頭を悩ませる。


そんな時である。
町長の家のドアが勢い良く開かれたのは。


从 ゚∀从「こんちはー。町長、今日は何か依頼はあるか?」

(´・_ゝ・`)「どうも」

169 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:47:12 ID:C38e.tqc0

( ФωФ)「む、ハインか」

('、`*川「こんにちはハインちゃん」

从 ゚∀从「あれ、伊藤さんどうしたんだ?何かあったのか?」

('、`*川「あぁ、実はね」

( ФωФ)「伊藤」

('、`*川「分かってますよ。いくらなんでもハインちゃんに頼むつもりはありません」

从 ゚∀从「ん?」

170 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:47:54 ID:C38e.tqc0

('、`*川「────という訳なの」

('、`*川「ハインちゃんからもこのクソ町長に頼んであげてくれない?」

( ;ФωФ)「クソ?」

('、`*川「そんな事言ってませんよ」

( ;ФωФ)「いや思いっきり言ってた気が……」

('、`*川「ついに幻聴が聞こえるようになったんですね。可哀想に」

('、`*川「ね、ハインちゃんからも言ってあげてよ」

('、`*川「馬を使えば大丈夫だ。ってね?」

( ;ФωФ)「だ、ダメである。絶対に許可は出せないである」

('、`*川「でも、迂回する道を使うしか方法はありませんし」

从 ゚∀从「オレが護衛していくのは?」

( ФωФ)「それはダメである」

('、`*川「流石に私もそれは反対よ」

171 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:49:02 ID:C38e.tqc0

( ФωФ)「馬を使っても迂回する道は何日かかかってしまうのである」

( ФωФ)「整備もされてないから危険もあるし、最近は魔物も活発になってるのである」

('、`*川「いくらハインちゃんが魔法使いだからって、危険な場所につれていく気はないわよ」

( ФωФ)「他に護衛できそうな大人がいれば話は別なのであるが……」

('、`*川「そんな、魔物を倒せるくらいに強い人なんてそうそういませんよ……」

从 ゚∀从「……」

(´・_ゝ・`)「……」

从 ゚∀从「いや、いるよ」

( ФωФ)「え?」

('、`*川「え?」

(´・_ゝ・`)「え?」

从;゚∀从「お前まで『え?』って言うなよ!! 」

从 ゚∀从「お前だよ、お前がいるだろ?盛岡」

172 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:51:52 ID:C38e.tqc0

( ФωФ)「はは、冗談はダメであるよハイン」

('、`*川「そうよ、こんな寂しげな人が魔物を倒せるくらい強いわけないじゃない」

(´・_ゝ・`)「おいその寂しげってどこを見て言ってるんだ」

从 ゚∀从「そんな事ねーよ」

(´・_ゝ・`)「だよね。寂しくないよね」

从 ゚∀从「お前に言ったんじゃない……」

( ФωФ)「本当に強いのであるか?」

从 ゚∀从「まぁ……オレより強いよ」

( ;ФωФ)「えぇ?失礼であるが、とてもそうは見えないのであるが」

('、`*川「そうよ。こんな、一部貧相な人、きっと体も貧相なんでしょうし」

(´・_ゝ・`)「絶対に護衛しないからな。絶対にだ」

从 ゚∀从「じゃあちょっと外に出てくれよ、みんな」


ハインの提案により、一旦外に出る4人。
一体何をするのだろうか、一体何が出来るのだろうか。町長と伊藤は前を歩く盛岡の姿を見て思った。
そして町長の家の前にある大きな木の前まで来ると、ハインが振り向いてこう言った。


从 ゚∀从「今からこの木を盛岡が倒すから。すぐに」

173 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:52:41 ID:C38e.tqc0

( ФωФ)「え?」

('、`*川「まさか。出来るわけ無いわよ」


2人がそう思うのも無理はなかった。
木の太さは大体、体格の良い大人3人分もある。
斧を使っても、一人で倒すには大分時間がかかる。


(;´^_ゝ^)「この巨木を僕が?無理無理。何言ってるのハイン」


そして当の本人でさえこんな事を言う始末だ。


从;゚∀从「お前なら普通に倒せるだろ! 」

(´・_ゝ・`)「えぇ……」

174 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:53:22 ID:C38e.tqc0

从;゚∀从「街の人が困ってんだ。何とかしてやりてーんだよ」

从 ゚∀从「そりゃ、オレが行けるなら行きたいけど」

从;-∀从「正直、今のオレで何日も伊藤さんを守りながら魔物と戦うってのも出来る気がしないしな」

从;-∀从「あの骸骨のヤツが出たら、お終いだし。他にも強い魔物はいるだろうし」

(´・_ゝ・`)「……」

从 ゚∀从「頼むよ、盛岡」

(´・_ゝ・`)「……」

(´・_ゝ・`)「……分かったよ、仕方無い」


そして木の前に立つ盛岡。
それを見守る3人。
風が一つ吹いた。


(´・_ゝ・`)「よいしょ」


気負いの欠片も入ってない声を出しながら腕を横一文字に振る。
町長と伊藤からしたら、準備体操か何かかと思うその行動。
盛岡は木に触れてさえいない。

175 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:54:09 ID:C38e.tqc0

しかし、木は何か鋭い刃物の一撃を受けたかのように、スッパリと切れたのであった。
ズシン、と音を立てて倒れる巨木。
ポカン、と口をあけるのは町長と伊藤であった。


( ;ФωФ)「え!? 」

('、`;川「ちょ、この人何をしたの!? 」

从 ゚∀从「だから言ったろ、盛岡は強いんだって」

(´^_ゝ^`)「評価を改めたまえよ君たち」


そういう訳で、盛岡がシベリャまでの護衛として付いて行く事になったのである。


(´・_ゝ・`)「あ、帰りは?」

从 ゚∀从「橋が直るまでシベリャに滞在すれば良いよ」

(´・_ゝ・`)「お金は……」

从 ゚∀从「町長が出してくれるよ」

( ;ФωФ)「え!? 」

176 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:54:50 ID:C38e.tqc0

────────
────




そうして伊藤と共にシベリャへと向った盛岡を見送ったあと、町長がハインに声をかけた。


( ФωФ)「あぁ、それでハインには用があったのである」

从 ゚∀从「ん?」

( ФωФ)「ハインはリリちゃんを知っているであるか?」

从 ゚∀从「あぁ、勿論知ってるけど」

( ФωФ)「どうやら、朝外に遊びに行くと出て行ったきり姿が見えなくなってしまったらしいのである」

( ФωФ)「街の大人達が何人かで隅々まで探したのであるが……」

从 ゚∀从「なるほど、森に入った可能性もあるのか」

( ФωФ)「すまないのである。では、よろしく頼むのである」

177 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:55:54 ID:C38e.tqc0

〜キターの森〜


从 ゚∀从「んじゃ、リリちゃんを探すとするか」

从 ゚∀从「……手伝ってくれてありがとな、デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「ううん。私も心配だし」

从 ゚∀从「でも森の中に入るからな。危ない目に合わせるつもりはないけど、用心はしてくれよな」

ζ(゚ー゚*ζ「うん、分かった! 」

从 ゚∀从「雨でぬかるんでるからな。気をつけろよ?」

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫! 」

ζ(゚ー゚*ζ ズルッ

ζ(;д;ζ「ひぅ! 」 ベシャッ

从;゚∀从「言ったそばから滑るなよ……」

ζ(゚ー゚;ζ「ご、ごめんね」



そしてしばらく森の中を探してみたが、リリを見つけることは出来なかった。

178 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:56:35 ID:C38e.tqc0

从;゚∀从「くそ、見つからなかったか」

ζ(゚ー゚*ζ「もう一度街の中探してみよう?」

从 ゚∀从「あぁ、大人が探してない場所もあるだろうしな」

ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ、私は西を探すからハインちゃんは東をお願い」

从 ゚∀从「おう、任せとけ」


西のほうへ走っていくデレを見送ると、ハインも東へと走り出す。
まずは人目につきにくい場所。
子供だけが入れそうな場所。
リリが良く遊んでいた場所を探してみる。

しかし、それでもやはりリリを見つけることは出来なかった。


从 ゚∀从「一応、聞き込みもしてみるか」

179 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:57:17 ID:C38e.tqc0

( ´ー`)「リリちゃん?すまねーよ、見てねーよ」

从 ゚∀从「ありがと、シラネーヨさん」



(‘_L’)「リリさんですか?すみません、見てないですね」

从 ゚∀从「そっかー」

(‘_L’)「神のご加護がありますように」

从 ゚∀从「ん?十字架のネックレス?」

(‘_L’)「えぇ。きっと神様が導いてくれるでしょう」

从 ゚∀从「ありがと、フィレンクトさん」



(-@∀@)「見てないよ」

从 ゚∀从「そっかー」

(-@∀@)「私も朝から探しているんだが、見つからなくてね」

(-@∀@)「何か分かったらすぐに伝えるよ」

从 ゚∀从「ありがと、アサピーさん」

180 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 15:58:18 ID:C38e.tqc0

(´・ω・`)「リリちゃん?んー、見てないよ。ごめんね」

从 ゚∀从「ありがと、ショボさん」

(´・ω・`)「怪我したらすぐに来るんだよ?良いね?」

从 ゚∀从「わかってるよ! 」


  _、_
( ,_ノ` )「ん?リリちゃんか」

从 ゚∀从「見かけてないか?」
  _、_
( ,_ノ` )「そういえばあいつと居たのを見たな」

从 ゚∀从「え!? 」
  _、_
( ,_ノ` )「ほら、ハインちゃんのとこにいる、盛岡さん」

从 ゚∀从「 」

181 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:06:34 ID:C38e.tqc0

────────
────




ζ(゚ー゚;ζ「どう?見つかった?」

从;-∀从「いや、全然」

ζ(゚ー゚;ζ「そっか……」

从;゚∀从「強いて分かったことと言えば」

ζ(゚ー゚*ζ「?」

从 ゚∀从「盛岡がリリちゃんと会ってたって事かな」

ζ(゚ー゚ ζ「 」

从 ゚∀从「まぁ4日くらい前の事なんだけどな」

ζ(゚ー゚;ζ「な、なんだぁ。もう、吃驚しちゃったよ! 」

182 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:07:21 ID:C38e.tqc0

从 ゚∀从「オレも最初は『まさかついに……』とは思ったよ」

ζ(゚ー゚;ζ「それは酷いよ」

从 ゚∀从「デレの方は何か分かったか?」

ζ(゚ー゚*ζ「ごめんね、全然分からなかったよ」

从 ゚∀从「そうか……」

从 ゚∀从「よし」

ζ(゚ー゚*ζ「?」

从 ゚∀从「もう一度、森を探してみよう」

从 ゚∀从「こう、何にも情報が無くて、他に見つかる可能性があるとすれば」

ζ(゚ー゚*ζ「森、だね。全部しっかりと探せたわけでもないし」

从 ゚∀从「んじゃ、行くか」

ζ(゚ー゚*ζ「うん」


そして森へと向うハインとデレ。
キターの森に辿り着くと、森の中から誰かが出てきた。


( ・∀・)「おや」

183 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:08:08 ID:C38e.tqc0

( ・∀・)

ζ(゚ー゚*ζ

ζ(゚ー゚*ζ「あ、モララーさん」

从 ゚∀从「……?」

( ・∀・)「2人ともこんな所でどうしたんだい?」

ζ(゚ー゚*ζ「実はリリちゃんが行方不明になっちゃってて」

ζ(゚ー゚*ζ「森に入っちゃった可能性があるから、探しに来たんです」

( ・∀・)「なるほど。だけど森の中は危ないよ」

( ・∀・)「あ、そうだ! 僕も一緒に探すよ」

ζ(゚ー゚*ζ「え、ホントですか!? ありがとうございます! 」

( ・∀・)「良いよ良いよ。気にしないで」

从 ゚∀从「な、なぁデレ」

184 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:09:33 ID:C38e.tqc0

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたのハインちゃん?モララーさんが一緒に探してくれるんだって! 」

ζ(゚ー゚*ζ「心強いよね! 」

( ・∀・)「いやぁ、そう言って貰えると嬉しいよ」

从 ゚∀从「だ、だからデレ」

ζ(゚ー゚*ζ「?」

从 ゚∀从「このモララーさんとやけに親しいようだけど」










从 ゚∀从「こんな人、街にいたか?」









( ・∀・)

185 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:10:20 ID:C38e.tqc0

ζ(゚ー゚*ζ「もう、失礼だよハインちゃん」

ζ(゚ー゚*ζ「ほら、小さい頃一緒に遊んでくれたじゃん」

ζ(゚ー゚*ζ「魔物とかも倒せるくらい強いんだよ?」

从;゚∀从「何言ってんだよ。小さい頃こんな人と遊んだ事なんて……」


記憶に無い男。
記憶に無い事を喋るデレ。
どうなっているんだ。この状況に困惑するハインだが、ふと目に入ったものがある。
昨日の嵐で出来た、大きな水溜り。

そこに映るのは、ハインとデレだけである。


( ・∀・)


この男の姿は、映っていなかった。

186 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:11:10 ID:C38e.tqc0

从;゚∀从「!!! 」


その瞬間、ハインはこの男の正体に気づく。


从 ゚∀从「デレ、そいつから離れろ! 」


ぐい、とデレの腕を掴み近くに引き寄せる。
目の前の男は微動だにしなかった。
しかし、小さく舌打ちをして、酷く残念そうに息をついた。


( ・∀・)「なんだ、催眠が効かないと思ったら」

( ・∀・)「お前、魔法使いか」

( -∀-)=3「ったく、面倒だなぁ」

从 ゚∀从「お前、吸血鬼だな?」


吸血鬼。
特徴として牙がある、川を渡れない、太陽が苦手等がある強力な魔物。
そしてその他にある特徴として、鏡などの姿を映す物には、姿を映せないというものがあった。


( ・∀・)「ははっ。正解」

187 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:12:29 ID:C38e.tqc0

にたぁと笑う吸血鬼。
牙はまだ小さい物で、そして日はやや傾いてはいるが出ている。
それらの情報から


从 ゚∀从(太陽にはまだ耐性があって、牙は小さい)

从 ゚∀从(つー事は、吸血鬼としての力は弱いな)

从 ゚∀从(吸血鬼になったばかりか……?)


と判断した。
吸血鬼になったばかりだと、太陽に耐性がある事が多いのである。


( ・∀・)「せっかく獲物が手に入ったと思ったのになぁ」

( ・∀・)「そこのお嬢ちゃんは、前から狙ってたんだよね」

( ・∀・)「だから」

(::::・∀・)「お前、邪魔なんだよ!!! 」


地面を蹴り、人には決して出せない速さで迫る吸血鬼。
人のものだった肌の色は青白いものとなり、目は黒く、そして赤くなっていた。

188 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:14:56 ID:C38e.tqc0

从;゚∀从「デレ! 」


吸血鬼の接近を、ハインはデレを担いで躱す。
ぽや〜っとしている、未だに催眠にかかっているだろうデレの頬を叩くハイン。


ζ(゚ー゚*ζ「ん?あれ?ハインちゃんどうしたの?」


吸血鬼としての力が弱かったおかげか、催眠はすぐに解けたようだった。
ハインの腕の中で状況をイマイチ把握出来ていないデレに、ハインは急いで伝える。


从;゚∀从「お前は急いで街に逃げろ」

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

189 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:15:55 ID:C38e.tqc0

从;゚∀从「あの吸血鬼は、オレが相手をしてやる」

(::::・∀・)「はははっ」


爪を伸ばし、また地面を蹴る吸血鬼。
デレを遠くに飛ばし、吸血鬼の一撃を魔力で包んだ蹴りで弾いてハインは叫ぶ。


从;゚∀从「行けデレ!! 早く!!! 」

ζ(゚ー゚;ζ「は、ハインちゃん!! 」

从;^∀从「な、なぁに。オレは大丈夫だから」

从;゚∀从「こんな吸血鬼、オレがあっという間に倒して見せるから」

从;゚∀从「だから、早く行け!! 」

ζ(゚ー゚;ζ「う、うん! 」


ハインの意思を受け、デレは街へと走り出す。

190 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:17:34 ID:C38e.tqc0

从;゚∀从(大丈夫とは言ったものの……)

(::::・∀・)「何だ。友達思いなんだな」

从;゚∀从「あ?お前に褒められても嬉しくねーよ」

从;゚∀从(吸血鬼の力は弱いといっても、吸血鬼だ)

从;゚∀从(オレが敵う相手じゃねぇな……)

(::::・∀・)「魔法使いってのはホント邪魔だな」

(::::・∀・)「血は不味いから飲めないし、無駄に強くて。あぁ面倒だ」

(::::・∀・)「お前をバラッバラにしたら、あの子でたっぷりと楽しむと


(::::・∀・)「するかな!!! 」


从;゚∀从「させねーよ、ハゲ!!! 」

(::::・∀・)「ハゲじゃねーよ!!! 」


ハインの魔力で包まれた拳と、吸血鬼の爪が交差する。

191 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:19:06 ID:C38e.tqc0

从 ゚∀从(クソ、外した)

(::::・∀・)「魔法使いのクセに物理ばっかだなぁお前」

(::::・∀・)「そら、もういっちょおおおおおぉぉぉぉ!!! 」


先ほどと同じように爪での攻撃。
それを蹴りで弾き、そのまま回転して回し蹴りをお見舞いするハイン。
しかし、その蹴りは吸血鬼に受け止められてしまう。


从;゚∀从「しまっ」

(::::・∀・)「はははっ捕まえた」


足を掴んだ吸血鬼がハインを地面に叩きつける。
一回。二回。三回。四回……何度も何度も叩きつける。

魔力で体を包んではいるが、確実に大きなダメージとなる。


从;゚∀从「は、なっ……せ!!! 」


体を捻り、足をバタつかせて何とか脱出するハイン。
しかし吸血鬼は追い討ちをかけようと、襲い掛かる。

192 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:20:15 ID:C38e.tqc0

从;゚∀从「くっ」


吸血鬼の爪が一線、ハインの頬を掠める。


从;゚∀从(こ、こいつ)

(::::・∀・)「ん〜?今のは避けれなかったかな?」

从;゚∀从(さっきより速く……!? )

(::::・∀・)「もうちょっとで殺せるかな」


先ほどよりも明らかに速くなっている吸血鬼。


从;゚∀从(そうか、日が暮れてきて力が強くなってんのか)


大きく横へ跳び、吸血鬼から距離をとる。


从;-∀从(これは、ちょっと不味いな)

(::::・∀・)

焦るハインとは裏腹に、吸血鬼はにたぁと笑っていた。

193 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:20:58 ID:C38e.tqc0

────────
────




ζ(゚ー゚;ζ「どうしよう、どうしよう」

ζ(;д;ζ「ハインちゃんが……」

( ФωФ)「む?どうしたデレ」

ζ(;д;ζ「あ、町長さん! 大変なの! 助けて!! 」

( ;ФωФ)「む、むぅ!? 」

ζ(;д;ζ「ハインちゃんが吸血鬼と戦ってて! 」

( ;ФωФ)「な!? 吸血鬼!? 」

ζ(;д;ζ「どうしよう、どうしよう!? 」

( ФωФ)「落ち着くである、デレ」

( ФωФ)「デレはすぐに家に帰って、街から逃げる準備をするのである」

ζ(;д;ζ「え?」

194 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:22:11 ID:C38e.tqc0

( ФωФ)「私は街の住民にこの事を伝えたあと、何人か連れてハインを助けに行くである」

( ФωФ)「なぁに、すぐに助けて帰ってくるであるよ」

( ФωФ)「だからデレは早く家に帰って両親と逃げるであるよ」

ζ(;д;ζ「で、でも」

( ФωФ)「さ、心配はいらないのである」

( ФωФ)「子供は安心して大人を頼るのであるよ」

ζ(;д;ζ「……」

( ФωФ)「……早く、行くである」

ζ(ぅд;ζ「う、うん」

ζ(゚- ゚ ζ タッタッタッタ

( ФωФ)

( ФωФ)「……」

( ФωФ)「うむ、では早速住民に呼びかけるであるか」

195 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:23:02 ID:C38e.tqc0

ζ(゚- ゚ ζ タッタッタッタ

ζ(゚- ゚ ζ(町長さん……)

ζ(゚- ゚ ζ(街から”逃げろ”って……)

ζ(;- ゚ ζ(すぐに助けて帰ってくるんでしょ……?)

ζ(ぅ- ゚ ζ(……)

ζ(゚ー゚*ζ「安心して大人を頼れって……」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

ζ(゚ー゚*ζ「私だって、ハインちゃんを助けに行くんだから!! 」

ζ(゚ー゚*ζ「ただいまお母さん! 」 ガチャッ

ξ゚听)ξ「あら、どうしたのデレ」

196 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:23:54 ID:C38e.tqc0

ξ゚听)ξ「そんなに息を切らせちゃって」

ζ(゚ー゚*ζ「お母さん! 吸血鬼が出たから早く逃げて!! 」

ξ;゚听)ξ「え!? 」

ζ(゚ー゚*ζ「えっと、確か」

ζ(゚ー゚*ζ(確か、あの時この薬草を嫌そうな顔で見てたよね……)

ζ(゚ー゚*ζ「それならきっと……吸血鬼だし、いけるはず」

ξ;゚听)ξ「ちょっと、デレ! あんた何処に行くの!? 」

ζ(゚ー゚*ζ「ちょっとハインちゃん助けに行って来る! 」 バタンッ

ξ;゚听)ξ「あ、デレ!!! 」

( ^ω^)「お?どうしたんだおツン?」

ξ;゚听)ξ「あ、ブーン! デレが、デレが!! 」

( ^ω^)「お?」

197 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:24:43 ID:C38e.tqc0

────────
────




从メ゚∀从「くそっ……」

(::::・∀・)「あははは! さっきまでの威勢はどこに行ったのかなぁ!? 」


森の入り口近く。
既に辺りは暗くなっており、吸血鬼の動きはハインでは追いつくことが困難となっていた。

魔力で身を固め、耐え続けるハイン。
しかし、体はもうボロボロであった。

198 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:25:40 ID:C38e.tqc0

(::::・∀・)「ッチ。面倒だな、魔法使いは本当に」

从メ゚∀从「へへへ、そりゃどうも」

(::::・∀・)「しぶっといんだよ!!! 」

从メ ∀从「グッ……」


うずくまるハイン。
その時、ポケットに違和感を覚えた。
ポケットの上から触ると、見覚えのある形にそれが何かを思い出し、閃く。


从メ ∀从(……やってみる、か)

从メ ∀从(だけど問題は、そのタイミングだ)


どんどん素早さを増していく吸血鬼。
ハインが閃いた方法は、その吸血鬼の動きとタイミングを合わせる必要があった。

199 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:26:38 ID:C38e.tqc0

从メ ∀从(……思い出せ、オレ)

从メ ∀从(あいつとの、今までの特訓を……!! )

(::::・∀・)「早く死ねって!! 」


吸血鬼の攻撃が続く。
一撃、二撃、不規則な動きでハインを追い詰める。


从メ ∀从(まだだ……まだ……)


背中に。
頭に。
頬に。
横っ腹に。

吸血鬼の攻撃は止まらない。


从メ ∀从(……)

从メ ∀从(……)

从メ ∀从(……)

从メ ∀从(……)

从メ ∀从(……)

200 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:27:30 ID:C38e.tqc0

(::::#・∀・)「しぶといんだよぉぉぉぉぉ!!! 」

从メ ∀从(……)



从メ ∀从(ふぅ……)



(::::#・∀・)「バラバラにしてやるからさぁあああああ!!! 」




从メ ∀从(こう来たら……)




(::::#・∀・)「死ねえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!! 」


















从メ゚∀从「こうだああああああああああああああああああああ!!!!! 」

201 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:28:12 ID:C38e.tqc0

(::::;・∀・)「!? 」


今まで身を固めるだけであったハイン。
そのハインが振り向き、カウンターのように拳を振りぬく。

しかし、吸血鬼にダメージは与えられなかった。


(::::;・∀・)「な、なんだよ。やっぱりオレの早さには付いて来れなかったか」

从メ゚∀从「アホめ」

(::::;・∀・)「な!? 」


しかし、ハインの狙いはそうではなかった。
吸血鬼の首には、あるものがかけられていた。


(::::;・∀・)「じゅ、十字架のネックレスだとおおおぉぉォォォ────!? 」

202 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:28:56 ID:C38e.tqc0

十字架が、まるで高熱でも発しているかのように吸血鬼の肌に張り付く。
そこから煙があがり、白い炎が燃え上がる。


从メ゚∀从「吸血鬼になったばかりでも、十字架には弱いまんまだったか」

(::::;・∀・)「こ、このクソ餓鬼がああああああああああ!!!! 」


怒りを露に、吸血鬼はハインに向って走り出す。
牙をむき出しにし、爪を鋭く伸ばす。


从;゚∀从「チッ」


しかし


ζ(゚ー゚;ζ「ハインちゃん!!! 」

203 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:30:11 ID:C38e.tqc0

デレが、吸血鬼に向って玉を放り投げる。
それはデレが以前、持ってきた薬草で作ったもの。
以前、モララー……吸血鬼と会った時に彼が嫌な顔をした薬草。
それで作った、ハーブ玉を真似たデレのオリジナルの玉。


それが、吸血鬼に当たり、破裂する。
煙が吸血鬼を包み込んだ。


(::::;・∀・)「ぐぁ!? こ、これっ……は!!! 」


吸血鬼が最も苦手とする、シスラナという薬草の成分が詰まった煙である。
もがき、その場から動けなくなる吸血鬼。


そこへ




从メ゚∀从「サンキュー、デレ」

(::::;・∀・)「あ」

从メ゚∀从「じゃあな、吸血鬼」




ハインの、


ありったけの魔力を込めた一撃が、



吸血鬼を捉えた。

204 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:32:45 ID:C38e.tqc0

────────
────




ハインの強烈な一撃を受けた吸血鬼は、派手に吹き飛ばされた。
そしてその後、真っ黒な霧となって消えたのであった。

直後、デレに遅れてやってきた大人達。
住民に呼びかけていたのもあってデレに遅れてしまったが、それを考慮しても迅速な動きであった。
なにせ、街の大人達全員が駆けつけたのである。

ハインのピンチに、街の住民は急いで来たのであった。


从メ^∀从「はは、みんな心配しすぎだって」


それを見て、ハインは笑った。

その後、吸血鬼であるモララーが通ってきたであろう森の中をたどってみると
洞窟があり、その中に眠るリリがいた。


⌒*リ´- -リ スゥスゥ.....


幸い噛まれておらず、どこにも怪我はなかった。
無事に、リリを助けることが出来たのである。



こうして、吸血鬼騒動は幕を閉じたのであった。

205 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:33:26 ID:C38e.tqc0

────────
────












〜とある廃城〜



( ー )「あら、私の眷属の気配が一匹途絶えたわ……」

( ー )「ふふ、眷属でも私の子に変わりは無いわ」

( ー )「うふふふふ。一体、誰が倒してしまったのかしら」

( ー )「うふふふふふふふふふふふふふ」

206 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/02/23(土) 16:35:39 ID:C38e.tqc0


〜数日後〜



('、`*川「さ、ここがシベリャよ」

(´・_ゝ・`)「へぇ、結構大きいんですね」

('、`*川「自然が多くて良い所でしょ?」

( <●><●>)「私が町長なのはワカッテマス」

(´・_ゝ・`)「え?」

( <●><●>)「私が町長なのはワカッテマス」

(´・_ゝ・`)「そ、そうですか……」

( <●><●>)「私が町長なのはワカッテマス」

(´・_ゝ・`)「……」



第十三話『十字架』『ハゲしい戦い』
      『特訓の成果』『「私が町長です」』『物理』 完

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