忌談百刑

第4話 鬼婆≪オニババ≫

74 名前:語り部 ◆B9UIodRsAE[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:48:25 ID:KyntKJDU0
【第4話 鬼婆≪オニババ≫】

"('A`) "





――俺かぁ。

みんなにゃ悪いけど、正直そんな怖い話って持ってないんだよなぁ。



ξ゚听)ξ「ちょっと、この状況でそんな事言わないでよ」



待ってくれよ、そんな簡単に出てこないんだよ。

えーっと……。

あ、

あるわ。怖い話っつーか、怖かった話な。





あの頃の話だから、ブーンくらいしか知らないかもしれないけど、
俺、中二の頃、同居してた祖母ちゃんが死んでるんだよね。

死因は普通に老衰なんだけど、俺結構祖母ちゃん子だったから、数日ふさぎ込んだよ。



( ^ω^)「あの時何度かプリント届けにいってやったお」



そうそう、あの時の話だ。

75 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:49:01 ID:KyntKJDU0

――俺の祖母ちゃんって、なんていうか、"苛烈"な人だったらしくてさ。


俺が生まれる前は、ウチの実質的支配者だったんだよ。
いや、生まれてからもそういう側面はあったんだけど、だいぶ丸くなったってみんな口を揃えて言ってたな。

兎に角、細かく家の中の出来事に口出しする割には大胆な行動もとったりして、
みんな嫌いではないし、ある意味では尊敬していたけど、同時に"厄介"だって気持ちは当然あったんだって。


それが、俺、――あ、俺一応祖母ちゃんにとって初孫なんだけど――
俺が生まれてから、一気に好々爺ならぬ好々婆に変わったんだ。


俺は、その優しくて温和な祖母ちゃんしか知らないから、凄い好きだったんだよね。
小さい頃はいつも祖母ちゃんと一緒に寝てたよ。

襦袢っていうのか? なんか厚手の着物みたいなのを羽織った祖母ちゃんに抱かれて寝るんだけど
虫食いを防ぐため防虫剤っていうのか、その匂いが、鼻腔をくすぐる様なソレが、凄く落ち着くんだ。




でも、祖母ちゃんと寝る時、唯一嫌だったのが、その"場所"なんだ。

76 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:49:39 ID:KyntKJDU0

祖母ちゃんは、決まって仏間で寝た。

仏間は、壁の一部が四角く凹んでいて、そこに仏壇が備え付けられていた。
それ以外にも、先祖っていうと大仰過ぎるけど、かなり代を遡った遺影が壁の上部に並べられて飾られていたんだ。

部屋のど真ん中に布団を敷いて寝ると、そのご先祖たちが俺を見下ろしてくるから、
俺はそれが怖くて、必ず布団を顔まで被って、朝まで出ない様にしていた。

仏壇には、俺が生まれる前に死んだ爺さん――祖母さんの旦那だな――の遺影が飾られていて、
祖母さんはたまに、夜中に目を覚ましては、寝たかっこのままその遺影を見つめてたのを覚えているよ。




祖母さんの"苛烈"エピソードにちょっと戻るんだけど、
俺が生まれるからって言って、祖母さん主導で、家を改築することにしたんだ。
自慢じゃないけど、俺んちってデカいじゃん?

ショボとブーンは知ってるよな?



(´・ω・`)「うん、なんていうか古き良き日本家屋って感じだよね」



( ^ω^)「二階がないのに、馬鹿みたいに広いから、ちょっと迷子になりかけるお」



そうそう。

77 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:50:25 ID:KyntKJDU0
元々デカかったんだけど、その分だけ老朽化しててさ。

俺が"ハイハイ"で移動したら、床のささくれが柔らかい赤ん坊の皮膚に刺さったりするだろうって、
祖母ちゃんが今まで溜めたお金を全部使って一大リフォームって訳だ。



だから、その計画の中心は祖母ちゃんだった。

まぁ、激しい性格だけど理性的でもあったから、家族全員祖母ちゃんに全て任せたらしい。
勿論、祖母ちゃん側から、家族に要望を聞くこともあったけど八割は祖母ちゃんの希望通りの家に作り替えられた。



ただ、家族が唯一反対したのが、仏間の位置なんだと。



リビングから、台所を通って、トイレとか風呂を通過して、更にその奥に、ちょこんと押し込めるような位置に作られた仏間。
祖母ちゃんは、『自分の自室を兼ねてるから、あんまり五月蠅い道路に近い玄関側は嫌だ』って。

仏間と祖母ちゃんの私室は別にしたほうがいいとか、位置的にあんまり良くないのではとか家族が説得しようとしたんだけど、
どうせ老い先短い私が、ここで良いと言っているんだから、ここで問題ないんだ、と最終的にその要望は通されたんだ。



ξ゚听)ξ「あんまり水回りと仏間って近くない方がいいらしいわね」



そう聞くな。



ともかく、祖母ちゃんは、自分の理想通りの部屋を、仏間を、終の棲家を、手に入れたわけだ。



そして俺が生まれて、人が変わったように落ち着いた祖母ちゃんは、
俺の育児と、仏壇の手入れと、裏庭のプチ農園の手入れと、そうやって死ぬまで穏やかな日々を過ごしたんだ。

78 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:52:30 ID:KyntKJDU0
祖母ちゃんが死んでから、仏間にはあんまり行かなくなった。


爺さんの隣に、祖母ちゃんの遺影が並んでて、それを見たくなかったのかもしれない。

祖母ちゃんの死を、実感してしまうから。

何故か爺さんの遺影の3倍くらいのデカさで、父さんも、母さんも、『あの人らしい』なんてそれを見て笑ってた。
何でも遺言で、『あっちに行っても、爺さんを尻の下に敷けるようにデカくしてくれ』なんて自分の遺影に注文を付けたんだと。



仏間には、他の部屋に無いもう一つの特徴があってさ。



雨戸もふすまも、全て閉めると、昼間でも、光の一切入らない作りになっていたんだ。


祖母ちゃんは生前から光に敏感でさ。ちょっとでも光が入ってくると眠れないんだ。

小さい頃祖母ちゃんと寝てるときは、俺が寝付くまでは、あのオレンジのちっちゃい電球をつけてくれてたんだけど
俺が寝た後はそれも消して、真っ暗の中で寝てたんだ。

たまに祖母ちゃんよりも早く目を覚ました時なんて、今が朝なのか夜中なのか分からずに、
とんでもない暗闇の重圧を感じて、泣いたこともあったくらいに真っ暗なんだよな。

79 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:53:12 ID:KyntKJDU0
――あれは祖母ちゃんが死んでから、三か月後くらいだったかな。


昼間、飯を食い終わった後、俺は自室でゲームでもしようと思ってたんだけど、
急に眠気に襲われたんだ。

あ、別に飯に睡眠薬が――みたいなそういう人為的な睡魔じゃなくて、
本当にただ腹がいっぱいになったから、ちょっと寝ようかな、みたいな。



んで、どうせ寝るなら、暗い方がいいなと思って、久しぶりに仏間で寝ることにしたんだ。



俺も祖母ちゃんの孫らしく、若干光に敏感でさ。




(´・ω・`)「知ってる。修学旅行の時アイマスク持ってきてたもんね」




アイマスクも、若干下の方の隙間から光が入ってくるからな。

その分、仏間なら完璧に光を追い出せるから、それならそれに越したことはないだろうって寸法よ。

80 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:53:47 ID:KyntKJDU0
久しぶりに入った仏間は、相変わらず祖母ちゃんの防虫剤の匂いがしてた。
恥ずかしい話だけど、ちょっと泣きそうになったよ。

匂いっつーのは、意外と鋭敏に人の記憶の底をつつき回すものらしい。
祖母ちゃんとの思い出のあれこれが吹き出してきて、俺は半泣きで雨戸を閉めて布団を敷いた。

そうして布団に寝転ぶと、改めてこの部屋の暗さを実感する。
本当に一切の光が入ってこない。

いや、実際首を入り口のふすまに向けると、そのふすまの下には、糸一本分くらいの隙間があって
うっすらと光ってるのは見えるんだけど、例えば自分の手とか、どんなに眼前に近づけても、全く見えないんだ。



人間ってさ、本当の真っ暗になると、眼を閉じなくても眠れるって知ってるか?



いや、眼を閉じなくってもって言うのとは少し違うかも。



正しくは、"自分の眼が、開いているのか、閉じているのか分からない"んだ。



眠るって行為は、起きている間に溜め込んだ情報を整理するためのものなんだろ?

だから、その時に追加で情報が入ってこない様に遮断する。
嗅覚もそう、聴覚もそう、視覚もそう。

そして人間は、視覚情報遮断の為に目を瞑る訳だけど、
暗闇ではそんなことしなくても、情報なんて一切入ってこないから、眼を瞑らなくてもいいんだ。

なんか新鮮な発見だった。

頭の片隅では、"あ、多分今俺目を開けてる"って思うんだけど、
同時に、どんどんと眠りに引っ張られていく自分も感じた。

81 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:54:39 ID:KyntKJDU0
どれぐらいの時間が経ったのか分からんけど、
急に、"夢を見ている"って思った。

視界は相変わらずドス黒いんだけど、現実世界ではない感じ。

説明しにくいんだけど、自分の周りに一枚薄い、けど丈夫な膜があって
なんか耳の中は水が詰まったみたいにぼやけてて。


全部の感覚が二段階くらい落とされてるような、劣化した自分が布団に寝転んでる、そういう感覚。


でな、なんで"夢"だって思ったのかっていうと、そういう感覚以前に、
闇に濃淡が出てきたからなんだ。

いや、暗いんだよ。黒いんだ。光なんてないんだから。

全部真っ黒で、真っ暗で、何にも見えないのに、
俺の目の前の暗闇が、もっと暗くなった気がした。

それは徐々に集まってきて、粘土みたいにまとまったり、くっついたりして。




真っ暗な視界の中に、更に昏い、昏い塊が生まれた。

82 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:55:22 ID:KyntKJDU0
その塊は、俺の頭のみぎっかわに、べとりと落ちた。

不思議だったよ。

はっきりと"べとり"って音がしたんだ。

丁度、肉の塊でも落としたような。



次に、その闇の塊が、俺の布団を中心に、ぐるぐると回り出すんだ。

最初は、回転しながら、コロコロと。

次の周は、自身を引きずるように、ズリズリ。

その次の周は、トコトコ。


――トコトコ?


俺は、顔は天井に向けたまま、自分自身と空気の境界線を徐々に広げていく。
夢の世界なんだから、出来ると思った。

目を開けながら、目を閉じてるんだ。

変な話だけど、"だったら、自分全体が眼球なんじゃないか"って思ったんだ。



――夢っぽい、とりとめのない思考だろ?

ともかく、ゆっくりと、俺は"ソレ"を感じられるようになった。

83 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:56:00 ID:KyntKJDU0

"ソレ"にはいつの間にか手と足が生えていた。

とはいっても、人間よりもむしろ獣に近い、手の方が脚よりも長く、太いようだった。

チンパンジーとか、ゴリラみたいな。
四足歩行ではなく、腕を伸ばして、前の地面を掴み、その後に脚を引き寄せる。



――ナックルウォークっていうんだっけ?



そんな風に、俺の周りを回るんだ。



川 ゚ -゚)「――頭は?」


おお、丁度その話をしようと思ってたんだ。

頭はな、冷蔵庫が二台横に並んでるって感じ

「はぁ?」






いや、だから、体に対して、明らかにバカでかい頭が、乗っかってるんだよ。

84 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:57:02 ID:KyntKJDU0

さっきの歩き方をすると、"ソレ"の頭が前後に大きく触れる。

その度に、うわん、という大気の唸り声が聞こえた気がした。


いや、実際に、『ぅわん』『ぅろろぉん』って声が、そのデカい頭から漏れているようだった。


視界的指標が何処にもない空間で、自分の周りを、よく分からない"ソレ"が唸り声を上げながら歩き回る。
そのうち、"ソレ"が俺の周りを回っているのか、俺がぐるぐると回転しているのか分からなくなってきた。

恐怖はないんだ。

あったのは、自分の感覚が暴虐に狂わされていく不快感だけだった。



『ぅるぉろろん』『ぉらろろぉん』



耳の傍で、近くなったり遠くなったりする唸り声が、正確な判断力を削いでいく。




ただ、一つ気付いたことがあった。

"ソレ"が行っているのは、円運動ではない。



"渦"だ。



俺を中心として、渦を巻いている。



つまり、徐々に、俺に向かって、それは、近づいてきている。

85 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:57:43 ID:KyntKJDU0



『わぉらろろん』『ぅぉうあろぉろん』




唸り声が、本当に耳の寸分先に聞こえる。

"ソレ"が動いた時に、押しのけられた空気が、俺の頬の産毛をなぜるのを感じる。



徐々に、徐々に。








――そして、終いには、俺の真上に、"ソレ"はいた。



目は開けっ放しだが、いかんせん闇だ。
いるのは分かっても、それがどんな形をしているのか分からない。

でも俺は、感覚を絞って、全身から360°方向に向けられている感知の針を、全て真上に向けて、
そうやって、全霊を持って、"ソレ"を見ようとした。

やっぱり夢は夢だな。俺の都合のいいように動くんだ。





俺は、"ソレ"を見ることが出来た。

86 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:58:39 ID:KyntKJDU0












――鬼、だった。



人間と同じ位の、霊長類じみたからだの上に、とてつもない大きさの鬼の頭が乗っかってる。

その顔は、丁度、能面の般若に似ていた。

アレを、もっと、生き物に寄せたような。

寄せられた眉には血管が浮き出し、見開かれた眼球は、黒目の大きさが都度変わって扇動している。

ひび割れた唇からはみ出した、牙には、唾液の雫が絡みついていて、つぅー、と顎先に流れる。



俺を見下ろしていた。



どれぐらい見つめ合っていたんだろう。

途方もない時間そうしていたような気がする。



やがて、そう、丁度、仏壇を観音開きしていくような、そんな蝶番の軋みの音と共に、
"ソレ"の口が開いていく。

87 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 03:59:17 ID:KyntKJDU0
.









                   ギ、キ、キ、キィ、キィィ――














.

88 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 04:00:30 ID:KyntKJDU0
俺の身体を、頭からつま先まで、全てのみ込めてしまうくらい開かれた口の中には
いっとう昏い闇が溜まっていた。

そして、その穴から、反物のように巻き取られた舌が、だらりと、俺の顔に向かって伸びてくる。

肉厚の、蛇の腹のように滑らかな、煌めく闇を反射して、俺に伸ばされる舌。

その先端が、俺の喉元に来たとき、俺は慄いた。



――舌の表面に、祖母ちゃんの顔が張り付いてた。



いや、ゴムの下から、祖母ちゃんが思いっきり顔面を押し付けているような、
そこから、出ようとしているような、苦しそうな表情の盛り上がりが、俺に向かってくる。



嘘だろ、何だよこれ、どうなってんだよ、何なんだよ、祖母ちゃんかよ、誰なんだよ。



どれも言葉にならずに、唾の代わりに俺の喉に落ちてく。





『うぉろろぉろおろろん』








あの唸りは、祖母ちゃんから、舌に張り付いた祖母ちゃんから発せられていたんだ。

89 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 04:01:11 ID:KyntKJDU0


『うぉろろぉおん、うろぉおろぉおん』



まるで俺に伝えたいことがあるように、祖母ちゃんはより舌肉を押し上げる。
もう目を瞑ってしまいたかった。

いや、もう瞑っていやのかもしれない。それなのに、祖母ちゃんは消えない。



『うぉくぅるるぉお』『おるるくぅろぉおおぉ』



『うろぁららうん、ぅいるぅららぁい』



祖母ちゃん、何だよ、何言ってるか、分かんねぇよ。

でも、段々、人の声に。



『どるぅうお、どぉるるくるぅおお』



『どぉくるるおぉ、どくるぅお』



俺を、呼んでいるのか。



『ど、く、お、どぉくぅおぉおおお』




そこから、一瞬だけ間があって、その後、もう、俺は、ムリだった。

90 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 04:02:20 ID:KyntKJDU0
                   『――クオ』




     『ドクォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!』



                     『お祖母ちゃん失敗しちゃったよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!』



 『ドクぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!!』



      『失敗しちゃったよォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』



                  『ごめんねぇッ!!!ごめんねぇッ! ドクオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』



『お祖母ちゃん、ダメだったんだよォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』


       『もう、戻れないヨォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』


  
『ドクオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』



                             『ごめんなさいッ!!! ごめんなさいッ!! ごめんなさいッ!!』


『失敗したッ! ドクオッ! お祖母ちゃん失敗したッ!!』




                『あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁああああああああああああああああッ!!!!』

91 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 04:03:04 ID:KyntKJDU0







瞬間、舌の下の祖母ちゃんの、丁度首辺りを、また別の何かの腕が、掴んだように見えた。





『ジッ、ジィ――』




それを最後に、"ゴキリッ!"っていう、"ああ、今あからさまに骨が折れたな"って音がして、




祖母ちゃんは、ゆっくりと、舌の肉の中に沈んだ。

92 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 04:03:50 ID:KyntKJDU0





――飛び起きたんだ。


はっきりと現実だって分かった。さっきまでは夢で、今は現実だって。


でも、昏いから、方向が分からなくて、仏間の間取りが分からなくて、
色んなものにぶつかりながら、ふすまを開けて、雨戸も開けた。




汗びっしょりで、気分は最悪だった。




ふと、仏壇を見ると、祖母ちゃんの遺影が、ぱたりと倒れていた。

丁度、写真の方を下にして。



さっき暗闇を手探りで移動したときにぶつかったのかもしれない。
俺は遺影に手を伸ばして、その表面を見た。










俺は、多分、その時、叫んだんだと思う。

93 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 04:04:41 ID:KyntKJDU0











遺影の中の祖母ちゃんは、白目を向いて、舌を額縁に向かってダランと垂らしていた。




まるで絞首刑か、首を捻り折られたみたいに――。














【鬼婆≪オニババ≫ 了】

94 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/12(水) 04:06:22 ID:KyntKJDU0

【幕間】








('A`) 「ふぅっ、こんなんでいいか?」

( ^ω^)「……怖いお」

ξ゚听)ξ「ちょっと苦手な話だったわ」

川 ゚ -゚)「お婆さんは何に失敗したんだ」

('A`) 「後で知ったんだけど、ウチの仏間ちょうど"鬼門"の方を向いてるみたい」

(´・ω・`)「あー……」

( ^ω^)「お察し、ってやつだお」

(´・ω・`)「中々上質なホラーだったね」

('A`) 「ホントか? ちょっと自信付いた」

ξ゚听)ξ「はぁ」

( ^ω^)「おっおっw 一週目最後のトリはツンだお」

ξ゚听)ξ「なんか緊張するわね」

('A`) 「"題"は>>100でいいな?」

( ^ω^)「おkだお」

ξ゚听)ξ「じゃあ、一週目の締めくくりは任せてもらうわ」




ξ゚听)ξ「さぁ、次の"解"を求めましょう」

100 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2017/07/12(水) 12:21:48 ID:pl40LrBE0


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